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JP3784513B2 - 熱成形用多層構造体およびそれを成形してなる熱成形容器 - Google Patents

熱成形用多層構造体およびそれを成形してなる熱成形容器 Download PDF

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JP3784513B2 JP26370997A JP26370997A JP3784513B2 JP 3784513 B2 JP3784513 B2 JP 3784513B2 JP 26370997 A JP26370997 A JP 26370997A JP 26370997 A JP26370997 A JP 26370997A JP 3784513 B2 JP3784513 B2 JP 3784513B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性、熱成形性、力学特性および外観等に優れた熱成形用多層構造体およびそれを熱成形してなる熱成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は食品や医薬品等、品質の保持が重要視される内容物を包装する材料として好適に用いられている。かかるEVOHを用いた包装容器の形態は多様であり、中でもEVOH層を有する多層体を熱成形して得られる容器は広く用いられている。
【0003】
特に、食品包装の分野では、店頭にて商品を購入した後、その内容物を他の容器に移し替えることなく、その容器のまま飲食ができるカップやトレーが盛んに使用されている。具体的には、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ジュース等を包装する容器がその代表例としてあげられる。また、その内容物を他の容器に移し替えることなく保存用容器として使用できる味噌カップなどの容器も使用されている。
【0004】
一般に、これらの包装材料として、熱成形容器が使用されている。熱成形容器は、内容物の品質維持のために、形態安定性や酸素バリア性が要求される。形態維持の観点から使用される樹脂の代表例としては、その剛性や耐衝撃性のバランスに優れたポリプロピレンの単独重合体(以下「ホモポリプロピレン」と略すことがある)があげられる。また、内容物の酸化劣化を防止するために、酸素バリア性にすぐれたEVOHをバリア層として使用することが一般的である。
【0005】
しかし、ホモポリプロピレンを内外層とし、EVOH層を中間層として使用した場合、透明性が不足し、中の内容物が見えにくかったり、ホモポリプロピレン層やEVOH層の耐衝撃性不足から、容器全体の耐衝撃性が不足する。さらには、EVOHの熱成形性不足から、容器の側面にクラックや波模様が発生し、外観に優れた熱成形容器を得られないこともある。これらの熱成形性や耐衝撃性を改善するためにEVOHにナイロンを添加する方法(米国特許第4079850号)など様々な提案がなされているが、熱成形性が十分でない、ガスバリア性が低下する、製膜時の熱安定性に問題がある、あるいは樹脂の種類や分散状態によっては透明性が低下する問題を有し十分な改善には至っていない。
【0006】
近年、プリンやゼリーの容器として、比較的薄くても形態保持性が優れ、光沢性も良好なポリスチレンを基材とする容器が用いられている。かかる場合に、例えばフルーツゼリーなどが内容物である時には、フルーツの味覚を損なうことを防止するために、バリア性が求められることから、ポリスチレンとEVOHとの積層体からなる熱成形容器も用いられている。しかしながら、ポリスチレンもホモポリプロピレンと比較すると熱成形に適した温度が低下するために、バリア層であるEVOHの熱成形性をさらに悪化させ、クラックや波模様が生じる結果を招いている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明の目的は、ガスバリア性、熱成形性、力学特性および外観等に優れた熱成形用多層構造体、およびそれを熱成形してなる熱成形容器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、エチレン含量20〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%および(メタ)アクリル酸含量1〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体40〜1重量%からなり、エチレン−ビニルアルコール共重合体のマトリックス中にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散している樹脂組成物層、およびポリスチレンからなる層を有する熱成形用多層構造体であり、樹脂組成物層においてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が多層構造体面に平行な一軸方向に引き延ばされた円柱状の形状で分散しており、その一軸方向に垂直な面で切断したときの粒子断面の平均径が0.2〜1.3μmである熱成形用多層構造体を提供することによって達成される。
【0009】
特に、EVOHが、エチレン含量の異なる2種類のEVOH(a)および(b)の混合物からなり、(a)のエチレン含量が20〜45モル%、(b)のエチレン含量が45〜65モル%、(a)と(b)のエチレン含量の差が8モル%以上であり、かつその配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1である熱成形用多層構造体を提供することによって好適に達成される。
【0011】
また、本発明の目的は上記多層造体を熱成形してなる熱成形容器を提供することによっても達成され、特に、容器の最も肉厚の厚い部分における全層厚みをTμm、最も肉厚の薄い部分における全層厚みをtμm、容器の絞り比をSとしたときに、下記式(1)〜(3)を満たす熱成形容器を提供することによって好適に達成される。
S≦T/t≦20S (1)
300<T≦3000 (2)
t≧100 (3)
但し、容器の絞り比Sは下記式(4)で示される値である。
S=(容器の深さ)/(容器の開口部に内接する最大径の円の直径) (4)
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のEVOHは、エチレンとビニルエステルからなる共重合体をアルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0013】
本発明におけるEVOHのエチレン含量は20〜60モル%であり、好適には25〜50モル%、より好適には25〜45モル%である。なおここで、EVOHがエチレン含量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含量とする。
エチレン含量が20モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化する。また60モル%を越えると十分なガスバリア性が得られない。
【0014】
また、本発明のEVOHのビニルエステル成分のケン化度は90%以上であり、好適には95%以上、より好適には98%以上である。なおここで、EVOHがケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
ケン化度が90モル%未満では、高湿度時のガスバリア性が低下するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成形物にゲルが発生しやすくなる。
【0015】
またEVOHには、本発明の目的が阻害されない範囲で他の単量体を少量共重合することもできる。共重合できる単量体の例としては、プロピレン、ブテン、イソブテン、4−メチルペンテン−1、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン、イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物、不飽和スルホン酸、その塩、アルキルチオール類、ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0016】
なかでも、EVOHに共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は共押し出しする際の基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な共押し出し多層フィルムの製造が可能なだけでなく、EVOH同士をブレンドに使用する際の分散性が改善され成形性などの改善の面でも有効である。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0017】
本発明のEVOH中のリン化合物濃度は、リン元素重量換算で1〜200ppm、好適には2〜150ppm、最適には5〜100ppmの範囲であることが製膜性や熱安定性の点から好ましい。
【0018】
さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを金属重量換算でEVOHに対し10〜500ppm含有させることも本発明の効果を増進させ、層間接着性や相溶性の改善のために効果的である。アルカリ金属化合物としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等があげられ、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩等があげられ、好適には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムがあげられる。
【0019】
また、本発明に用いるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下で測定した値)は、好適には0.1〜50g/10分、最適には0.5〜20g/10分である。なおここで、EVOHがメルトフローレートの異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をメルトフローレートとする。
【0020】
本発明で用いるEVOHとしては、エチレン含量および/またはケン化度の異なる2種以上のEVOHをブレンドして用いる事が好適である。
特に、EVOHが、エチレン含量の異なる2種類のEVOH(a)および(b)の混合物からなり、(a)のエチレン含量が20〜45モル%、(b)のエチレン含量が45〜65モル%、(a)と(b)のエチレン含量の差が8モル%以上であり、かつその配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1であることが、良好なガスバリア性と熱成形性の両立のために好ましい。
【0021】
このとき、EVOH(a)のエチレン含量は20〜45モル%であることが好ましい。より好適には25〜42モル%であり、さらに好適には30〜40モル%である。EVOH(a)のエチレン含量が20モル%未満では、熱成形性が悪化し、45モル%を超えるとガスバリア性が低下する。
【0022】
また、 EVOH(b)のエチレン含量は45〜65モル%であることが好ましい。より好適には47〜62モル%であり、さらに好適には50〜60モル%である。EVOH(b)のエチレン含量がかかる範囲にあることで、熱成形性が十分に改善される。
【0023】
さらに、 EVOH(a)と(b)のエチレン含量の差は8モル%以上であることが好ましい。より好適には12モル%以上であり、さらに好適には15モル%以上である。EVOH(a)のエチレン含量の差が8モル%未満では、熱成形性の改善効果が小さい。
【0024】
またEVOH(a)および(b)の配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1であることが好ましい。より好適には3/1〜40/1であり、さらに好適には4/1〜 30/1である。配合重量比が2/1未満では、ガスバリア性が低下し、50/1を超えると熱成形性の改善効果が小さい。
【0025】
本発明で用いられるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とは、エチレンを主成分としアクリル酸またはメタクリル酸を共重合した重合体のことをいう。本発明においては共重合体中のカルボキシル基がナトリウムや亜鉛などの金属の塩の形で存在している、いわゆるアイオノマーを含むものではない。かかるアイオノマーを用いた場合に本願発明の目的が達成されないことは、理由は明らかでないが、後述する比較例に示したとおりである。
【0026】
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中の(メタ)アクリル酸含量は、1〜30重量%であり、好適には2〜25重量%、より好適には3〜20重量%である。(メタ)アクリル酸含量が1重量%未満である場合は樹脂粒子の分散が不良となり、熱成形性が悪化する。また30重量%を超える場合には熱安定性が不良となる。
【0027】
また、本発明に用いるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下で測定した値)は、好適には0.1〜80g/10分、最適には0.5〜50g/10分である。本発明においてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、(メタ)アクリル酸含量および/またはMFRの異なる2種あるいはそれ以上のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体をブレンドして用いることもできる。
【0028】
本発明の樹脂組成物におけるEVOHの含有量は60〜99重量%、好ましくは70〜97重量%、より好ましくは80〜95重量%である。またエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の含有量は1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の配合比が1重量%より少ない場合には、優れた熱成形性が得られず、熱成形容器の側面部と底面部の交差部や、コーナー部の肉厚が薄くなりすぎるとともに、成形物の耐衝撃性が低下する。また、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の配合比が40重量%より多い場合には、ガスバリア性が著しく低下するとともに、得られる熱成形容器の成形収縮率が大きく、実使用に適さない。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、EVOHのマトリックス中にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散しているものである。かかる分散形態を有することで、良好なガスバリア性、熱成形性、力学特性を保有することができる。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のマトリックス中にEVOHが分散していたり、双方の樹脂が連続状につながっているような形態の時にはガスバリア性の低下が著しい。
【0030】
本発明に用いるEVOHとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下で測定した値)比としては、EVOHのMFR(A)とエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のMFR(B)の比(A)/(B)が0.1〜5.0であることが好ましく、より好適には0.15〜3.0、最適には0.2〜2.0である。かかる範囲のMFRの比の樹脂を組み合わせることによって、良好に分散され、本発明の目的を達成することができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を増進させ、また溶融安定性等を改善するためにハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の一種または二種以上を樹脂組成物に対し0.01〜1重量%添加することは好適である。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物に必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
【0033】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等。
【0034】
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
【0035】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等。
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等。
【0036】
また、他の多くの高分子化合物を本発明の作用効果が阻害されない程度にブレンドすることもできる。
【0037】
ここで、本発明の樹脂組成物はEVOHのマトリックス中に平均粒子径が0.3〜1.5μmのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散していることが好ましく、0.3〜1.0μmであることがより好ましい。かかる分散形態を有することで良好なガスバリア性、熱成形性、力学特性および透明性を得ることができる。平均粒子径が1.5μmより大きい場合には、組成物中での不均一な分散が発生しやすく熱成形時に不具合を生じるとともにガスバリア性が低下しやすい。また平均粒子径が0.3μm以下の場合、分散粒子を含有する効果が組成物の熱成形性に生かされず、良好な熱成形性が得られにくい。
【0038】
かかる分散形態は主に、フィルムまたはシート等の原料となるペレットの状態において観察される。観察は、破断面の走査型電子顕微鏡観察、あるいは薄片の透過型電子顕微鏡観察等によって行うことができる。これら電子顕微鏡観察等によって得られた写真を画像処理によりその輪郭を特定し、特定された粒子の輪郭の長径と短径の平均の値から各粒子ごとの粒径を求めた。こうして得られた各粒子の粒径の単純平均を分散粒子径とした。このとき、観察方向による粒径の相異を解消するために、互いに垂直な3方向から観察して得られた粒子の平均の値を採用した。
【0039】
このような分散形態を得るために、本発明における混練操作は重要である。高度な分散を有する組成物を得るための混練機としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向、あるいは異方向)などの連続型混練機が最適であるが、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機を用いることもできる。また別の連続混練装置としては石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用したもの、たとえば(株)KCK製のKCK混練押出機を用いることもできる。混練機として通常に使用されるもののなかには、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、あるいはブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機もあげることができる。
【0040】
この中で、本発明の目的に最も好ましいものとしては連続式インテンシブミキサーを挙げることができる。市販されている機種としてはFarrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIMあるいは(株)神戸製鋼所製KCM、LCMあるいはACM等がある。実際にはこれらの混練機の下に一軸押出機を有する、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用するのが好ましい。また、ニーディングディスクあるいは混練用ロータを有する二軸混練押出機、例えば(株)日本製鋼所製のTEX、Werner&Pfleiderer社のZSK、東芝機械(株)製のTEM、池貝鉄工(株)製のPCM等も本発明の混練の目的に用いられる。
【0041】
これらの連続型混練機を用いるにあたっては、ロータ、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップあるいはディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で狭すぎても広すぎても本発明の良好な分散性を有する組成物は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
【0042】
また、本発明の良好な分散性を有する組成物を得るためには混練機の比エネルギーとして0.1kWh/kg以上、望ましくは0.2〜0.8kWh/kgで混練することが最良であることが判明した。
比エネルギーは混練に使用されるエネルギー(消費電力量;kW)を1時間あたりの混練処理量(kg)で除して求められるものであり、その単位はkWh/kgである。比エネルギーが通常の混練で採用される値より高い値で混練することが本発明の組成物を得るためには必要であり、比エネルギー0.1kWh/kg以上とするためには、単に混練機の回転数をあげるだけでは不十分で、混練中の組成物をジャケットなどにより冷却して温度を下げ、粘度を上昇させることが好ましい。粘度を低くした状態で混練したのでは本発明の目的とする組成物を得ることは難しい。したがって、混練温度は混練部の出口の排出樹脂温度でEVOHの融点〜融点+40℃の範囲であることが効果的である。
【0043】
また、混練機のローターの回転数は100〜1200rpm、望ましくは150〜1000rpm、さらに望ましくは200〜800rpmの範囲が採用される。混練機チャンバー内径(D)は30mm以上、望ましくは50〜400mmの範囲のものが挙げられる。混練機のチャンバー長さ(L)との比L/Dは4〜30が好適である。また混練機はひとつでもよいし、また2以上を連結して用いることもできる。
【0044】
混練時間は長い方が良い結果を得られるが、EVOHの熱劣化変質あるいは経済性の点から10〜600秒、好適には15〜200秒の範囲であり、最適には15〜150秒である。
【0045】
以上のようにして得られた樹脂組成物は、熱成形用多層構造体として有用に用いられる。
本発明でいう熱成形とは、フィルムあるいはシート等を加熱して軟化させた後に、金型形状に成形することをいう。成形方法としては、真空あるいは圧空を用い、必要によりさらにプラグを併せ用いて金型形状に成形する方法(ストレート法、ドレープ法、エアスリップ法、スナップバック法、プラグアシスト法など)やプレス成形する方法などが挙げられる。成形温度、真空度、圧空の圧力または成形速度等の各種成形条件は、プラグ形状や金型形状または原料フィルムやシートの性質等により適当に設定される。
【0046】
成形温度は特に限定されるものではなく、成形するのに十分なだけ樹脂が軟化する温度であればよいが、原料フィルムやシートによってその好適な温度範囲は異なる。
例えば、フィルムを熱成形する際には、加熱によるフィルムの溶解が生じたり、ヒーター板の金属面の凹凸がフィルムに転写したりするほど高温にはせず、一方賦形が十分でない程低温にしないことが望ましく、具体的にはフィルム温度が50〜120℃、好適には60〜110℃、より好適には70〜100℃が示される。
一方、フィルムより厚みの大きいシートを熱成形する際にはフィルムの場合より高温でも成形が可能な場合があり、130〜180℃の温度範囲で成形が行われる。
【0047】
本発明の熱成形容器はフィルムあるいはシートの平面に凹部を形成した形の3次元状に熱成形されてなる容器である。凹部の形状は内容物の形状に対応して決定されるが、特に凹部の深さが深いほど、凹部の形状が滑らかでないほど通常のEVOH積層体では厚みムラを発生しやすく、コーナー部等が極端に薄くなるので、本願発明による改善効果が大きい。熱成形容器がフィルムを成形してなるものである場合、絞り比(S)は、好適には0.2以上、より好適には0.3以上、さらに好適には0.4以上のときに本願発明の効果はより有効に発揮される。また、熱成形容器がフィルムよりも厚いシートを成形してなるものである場合、絞り比(S)は、好適には0.3以上、より好適には0.5以上、さらに好適には0.8以上のときに本願発明の効果はより有効に発揮される。
【0048】
ここで、絞り比(S)とは、下記式(4)で示される値をいう。
S=(容器の深さ)/(容器の開口部に内接する最大径の円の直径) (4)
すなわち、絞り比(S)とは、容器の最深部の深さの値を、フィルムあるいはシートの平面に形成された凹部(開口部)の形状に接する最も大きい内接円の円の直径で割ったものである。例えば、凹部の形状が円である場合にはその直径、楕円である場合にはその短径、長方形である場合にはその短辺の長さがそれぞれ内接する最大径の円の直径になる。
【0049】
本発明の多層構造体は、上述の樹脂組成物層およびポリスチレンからなる層を含むものである。
かかるポリスチレンとしては、スチレンの単独重合体のみならず、スチレン以外の単量体成分を少量共重合したものや、スチレン以外の単量体を重合してなる樹脂を少量ブレンドしたものであってもよく、スチレン成分が80重量%以上であればよい。したがって、本発明のポリスチレンには少量のゴム成分を含むいわゆるHIPS(ハイインパクトポリスチレン)も含まれる。
【0050】
かかるポリスチレンは剛性が高いことから、薄肉で形態保持が可能である。また光沢性に優れていることから、透明または不透明の場合にかかわらず優れた外観の成形品を得ることができる。さらにスチレンの単独重合体は透明性に優れておりこれを用いた容器では内容物の視認性に優れる。
【0051】
ポリスチレンのメルトフローレートは特に限定されるものではないが、成形性等を考慮して好適には0.01〜20g/10分、より好適には0.1〜10g/10分である。また、ポリスチレン同志で種類の異なるものを配合して用いてもよい。
【0052】
ここで、ポリスチレンからなる層は、ポリスチレン単独のみならず、ポリスチレンを主成分とする組成物からなる層であっても良い。
例えば、EVOH、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、接着性樹脂等を含む回収組成物(リグラインド)層を用いることもできる。
【0053】
上記熱成形用多層構造体の樹脂組成物層中の各樹脂の分散状態は、EVOHのマトリックス中に分散しているエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が多層構造体面に平行な一軸方向に引き延ばされた円柱状の形状で分散されてい。ここで、1軸方向とは多層構造体の押出方向のことである。このとき、その一軸方向に垂直な面で切断したときの粒子断面の平均径が0.2〜1.3μmであ、0.3〜1.0μmであることがより好ましい。かかる粒子断面の平均径が1.3μmより大きい場合には、組成物中での不均一な分散が発生しやすく熱成形時に不具合を生じるとともにガスバリア性が低下する。また粒子断面の平均径が0.2μm未満の場合、分散粒子を含有する効果が組成物の熱成形性に生かされず、良好な熱成形性が得られない。
【0054】
本発明でいう粒子断面の平均径の測定方法としては、以下の手順が示される。まず、多層構造体の押出方向と垂直な面のサンプルの破断面を走査型電子顕微鏡、あるいは透過型電子顕微鏡観察等によって撮影する。続いてこれら電子顕微鏡観察等によって得られた写真を画像処理によりその輪郭を特定し、特定された粒子の輪郭の長径および短径の平均の値をその粒子の径とし、得られた各粒子の径の単純平均値を粒子断面の平均径として求めた。
【0055】
本発明の熱成形用多層構造体の層構成は、前述の樹脂組成物層およびポリスチレンからなる層を有する以外に特に限定されるものではないが、樹脂組成物層の内外層に接着性樹脂層を介してポリスチレンからなる層を有する構成が特に好ましいものとしてあげられる。
樹脂組成物層の両側をポリスチレンで覆うことで樹脂組成物層の吸湿によるガスバリア性の低下を防ぐことができるとともに、接着性樹脂層によって両層間の良好な接着性を確保できるからである。
【0056】
また接着性樹脂層に使用される樹脂は特に限定されるものではないが、ポリウレタン系、ポリエステル系一液型あるいは二液型硬化性接着剤、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸など)をオレフィン系重合体または共重合体に共重合またはグラフト変性したもの(カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂)が、好適に用いられる。このような接着性樹脂層を設けることにより、層間接着性の優れた熱成形容器を得ることができる。
【0057】
これらのうちでも、接着性樹脂がカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂であることが、EVOHを含む樹脂組成物層あるいは共重合ポリプロピレンとの接着性、あるいはスクラップ回収時の相溶性の観点からより好ましい。かかるカルボン酸変性ポリエチレン系樹脂の例としては、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)}、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル、またはエチルエステル)共重合体等をカルボン酸変性したものが挙げられる。
【0058】
本発明の熱成形用多層構造体の具体的構成例は、EVOH(EVOH組成物)、PS(ポリスチレン)、AD(接着剤)、REG(回収層)として表記すると、PS/AD/EVOH/AD/PS、PS/AD/EVOH/AD/REG、PS/AD/EVOH/AD/REG/PSなどが好適なものとして示される。ただし、本発明の熱成形用多層構造体の層構成は上記の層構成例に限定されるものではない。上記各構成例に、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドあるいはポリエステル等の他の樹脂層が付加されていてもよい。
【0059】
本発明の熱成形用多層構造体を得る方法としては、特に限定されるものではないが、一般のポリオレフィン等の分野において実施されている成形方法、例えばTダイ成形、インフレーション成形、共押出成形、ドライラミネート成形等を採用することができ、特に共押出成形が好適である。
【0060】
得られた多層構造体を熱成形する際の成形温度は特に限定されるものではなく、成形するのに十分なだけ樹脂が軟化する温度であればよいが、原料シートによってその好適な温度範囲は異なる。
例えば、シートを熱成形する際には、加熱によるシートの溶解が生じたり、ヒーター板の金属面の凹凸がフィルムに転写したりするほど高温にはせず、一方賦形が十分でない程低温にしないことが望ましく、具体的にはシート温度として130〜180℃、好適には135〜160℃、より好適には135〜155℃が示される。
【0061】
ホモポリプロピレンとEVOHを積層した場合には、ホモポリプロピレンの溶融温度が高いために、成形時のシート温度を高くすることが可能であり、それによりEVOHも高温下で柔軟性を増すために十分な熱成形性を得られるが、ポリスチレンとEVOHを積層した場合には、ポリスチレンの軟化点が低いために、比較的低いシート温度にて成形することが必要である。この場合、EVOHは、十分な柔軟性が得られず、多層シートとしての優れた熱成形性を得ることができない。
本発明は、かかるEVOHのかわりにEVOHを主成分とする特定の組成物を使用することで、ポリスチレンと積層しても優れた熱成形性を実現するものである。
【0062】
上述のようなポリスチレンからなる層を有する多層構造体、特にシート状の多層構造体を熱成形する場合の成形容器の好ましい形状は以下の通りである。すなわち得られた熱成形容器の最も肉厚の厚い部分(成形前の多層構造体厚と同じ部分)における全層厚みをTμm、最も肉厚の薄い部分における全層厚みをtμm、上述の容器の絞り比Sを用いて、以下の式を満たしていることが好ましい。
S≦T/t≦20S (1)
300<T≦3000 (2)
t≧100 (3)
ここで、(1)、(2)、(3)式はそれぞれより好ましくは
1.5S≦T/t≦15S (1’)
500≦T≦2000 (2’)
t≧200 (3’)
であり、さらに好ましくは
2S≦T/t≦10S (1”)
800≦T≦1500 (2”)
t≧300 (3”)
である。
【0063】
T/tの値がS未満である場合には本発明の構成を必要としないほど熱成形が容易な形状の容器であり、T/tの値が20Sを超えるほど大きい値であるときには、容器の厚みムラが大きく好ましい形状の容器とはならない。また、最も肉厚の厚い部分における全層厚み(T)が3000μmを超える場合には、必要以上に容器の重量が大きくなり、コストの点から好ましくないのみならず成形も困難になる。また、最も肉厚の厚い部分における全層厚み(T)が300μm未満では、成形容器の肉厚が薄くなりすぎ、剛性が不足してしまう。また、最も肉厚の薄い部分におけ全層厚み(t)が100μm未満である場合も、同様の理由から好ましくない。
【0064】
上述のようなシートから成形されてなる各種の熱成形容器は各種用途に用いられる。なかでも、ガスバリア性に優れるという本発明の樹脂組成物を用いることの優位性は、各種包装容器として用いられたときに大きく発揮される。食品、医薬品、農薬等、酸素の存在によって品質が悪化しやすいものの包装容器、例えばプリン、ゼリー、みそ等のカップとして特に好適である。
【0065】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに説明する。
実施例によって得られた熱成形用多層構造体、熱成形容器の評価は、以下の方法に従って行った。
【0066】
・熱成形用多層構造体中の分散粒子の粒子断面の平均径
多層構造体の押出方向と垂直な面のサンプルの破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、倍率3000〜20000倍の写真撮影を行った。分散粒子の観察に際しては、配合樹脂の種類により観察が困難な場合には必要に応じて、ペレット破断面をミクロトームで平滑にしたり、分散粒子をキシレン等により溶解して分散粒子の溶解後の痕跡を観察する方法を採用したりした。得られた写真中の分散粒子断面をケイオー電子工業製画像計測ツールシステムASPECTを用いてその輪郭を特定し、特定された粒子の輪郭の長径および短径の平均の値をその粒子の径とし、得られた各粒子の径の値の平均値を粒子断面の平均径として求めた。測定する分散粒子の数は30個以上になるようにした。
【0067】
・酸素透過量
熱成形用多層構造体の一部を切り取り、20℃−85%RHに湿度調整した後、バリア測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)にて、多層構造体の酸素透過量を測定した。ここでいう酸素透過量は、多層構造体で測定した酸素透過量(単位; ml/m2・day・atm)を、ガスバリア性樹脂層20μm当たりの酸素透過量に換算した値(ml・20μm/m2・day・atm)で示した。なお、内外層および接着性樹脂層の酸素透過量はガスバリア性樹脂層に比べて遙かに大きいので無視した上で計算した。
【0068】
・熱成形容器外観
シート加熱温度150℃で成形されたカップ(タテ:130mm、ヨコ:110mm、深さ:50mmの直方体形状の金型にて成形)の外観を目視にて観察し、賦形性、クラックの発生状況および波模様の発生状況を評価した。ここでの賦形性の評価基準は、角部(側面と底面の交線)が正確に成形されているかを目視にて判断し、全評価サンプルを4段階(良:A>B>C>D:悪)に分類した。クラックの発生状況は側面の底部付近に発生する長さ約2mm程度の亀裂(クラック)の発生状態を目視にて判断し、発生状態の目立ちやすさによって全評価サンプルを4段階(良:A>B>C>D:悪)に分類した。波模様の発生状況は、主としてカップの側面部に発生する波状の外観ムラを目視にて判断し、その目立ちやすさによって全評価サンプルを4段階(良:A>B>C>D:悪)に分類した。
また最も薄い部分の厚みは、成形品の底部と側面の交差部分付近での最も厚みの薄い部分を測定して求めた。
【0069】
・落下試験
成形されたカップに200ccの水を入れ、同じカップを逆向きに伏せて加熱溶着させた。この容器をコンクリート上に落下させ、容器の破壊(容器内部の水が漏れる)する高さをもとめた。破壊高さは、n=30の試験結果を用いて、JIS試験法(K7211の「8.計算」の部分)に示される計算方法を用いて、50%破壊高さとして求めた。
【0070】
実施例1
酢酸ナトリウムをナトリウム元素の重量換算で65ppm、リン化合物をリン酸塩の形でリン原子当たりの重量で100ppm含有するEVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1g/10分(210℃、2160g荷重)}90重量%と、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下EMAAと略する){メタクリル酸(MAA)含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル0903HC」、MFR=5.7g/10分(210℃、2160g荷重)}10重量%とをドライブレンドした後、ニーディングディスクを有する30mmφの2軸押出機(日本製鋼所製TEX30:L/D=30)を用いてシリンダー温度をフィード下部を190℃、混練部及びノズル付近を210℃に設定し、押出機のローターの回転数は610rpm、フィーダーのモーター回転数250rpmで、溶融混練しペレット化を行った。この時の押出量が1時間当たり20kgでシリンダー内部の樹脂圧力は20kg/cm2であった。このときの比エネルギーは0.6kWh/kgであった。
【0071】
得られたペレットを樹脂組成物層とし、ハイインパクトポリスチレン(HIPS){出光石油化学製「出光スチロールET61」、MFR=3g/10MFRn(2160g荷重)}を内外層、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分ケン化物{東ソー製「メルセンM−5430」、MFR=6g/10MFRn(210℃、2160g荷重)}を接着剤(AD)層とする構成で、T型ダイを備えた共押出機にて3種5層(HIPS/AD/樹脂組成物層/AD/HIPS=400μ/50μ/100μ/50μ/400μ)で全体厚みが1000μmの熱成形用シートを得た。得られたシートの組成物層中の分散粒子の断面径、シートのヘイズ値、シートの酸素透過度をそれぞれ測定した。
【0072】
こうして得られたシートを熱成形機(浅野製作所製)にてシート温度を変更して、カップ形状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=1.0)に熱成形(圧空:5kg/cm2、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、プラグ温度:150℃、金型温度:70℃を使用)を行った。成形されたカップの外観は目視にて評価した。
また最も薄い部分の厚みを、成形品の底部と側面の交差部分付近での最も厚みの薄い部分を測定して求めた。さらに得られた容器に水を入れてから落下試験に供した。
これらの熱成形用シート、熱成形容器の評価結果は表1および表2にまとめて示す。
【0073】
比較例1
実施例1において、樹脂組成物層のかわりに実施例1で用いたのと同じEVOH樹脂を単独で用いた以外は、実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表2にまとめて示す。
【0074】
実施例2、3、比較例2
実施例1において使用したものと同じEVOHとEMAAを用い、その混合比をEVOH95重量%、EMAA5重量%(実施例2)、EVOH80重量%、EMAA20重量%(実施例3)、EVOH50重量%、EMAA50重量%(比較例2)に変更した以外は、実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表2にまとめて示す。
【0075】
実施例4、5
実施例1において使用したEVOHをエチレン含量の異なるEVOH{エチレン含量27モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.9g/10分(210℃、2160g荷重)}(実施例4)、{エチレン含量44モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.5g/10分(210℃、2160g荷重)}(実施例5) に変更した以外は実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表2にまとめて示す。
【0076】
実施例6〜9
実施例1において使用したEVOH90重量%の代わりに、以下に示す割合で配合した2種類のEVOHを用いた以外は実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表2にまとめて示す。
実施例6;
エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH85重量部
エチレン含量51モル%、ケン化度96%、MFR=15.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH5重量部
実施例7;
エチレン含量38モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.8g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH85重量部
エチレン含量51モル%、ケン化度96%、MFR=15.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH5重量部
実施例8;
エチレン含量38モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.8g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH85重量部
エチレン含量44モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.5g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH5重量部
実施例9;
エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH50重量部
エチレン含量51モル%、ケン化度96%、MFR=15.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH40重量部
【0077】
実施例10〜12、比較例3〜7
実施例1において用いたEMAA{メタクリル酸含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル0903HC、MFR=5.7g/10分(210℃、2160g荷重)}のかわりに、以下に示す樹脂を用いた以外は実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表3にまとめて示す。
実施例10;EMAA{メタクリル酸含有量:4重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレルAN4214C」、MFR=12.2g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例11;EMAA{メタクリル酸含有量;12重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル1207C」、MFR=13.4g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例12;エチレン−アクリル酸共重合体(以下EAAと略する){アクリル酸(AA)含有量:9.0重量%、ダウケミカル「プリマコール1430、MFR=8.7g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例3;エチレンーメチルメタクリレート共重合体{メチルメタアクリル酸(MMA)含有量:18重量%、住友化学「アクリフトWH303、MFR=12.1g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例4;無水マレイン酸変性ポリエチレン{MFR=3.6g/10分(210℃、2160g荷重)、三井石油化学製「アドマーNF500」}
比較例5;アイオノマー{三井デュポンケミカル「ハイミラン1652、MFR=7.6g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例6;LDPE{三井石油化学製「ミラソンB324、MFR=3.4g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例7;ナイロン{ナイロン6(PA−6){MFR=7.2g/10分(230℃、2160g荷重)、宇部興産製「UBEナイロン1022B」}
【0078】
実施例13〜16
以下に示すEVOHとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を組み合わせて用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。このとき、用いるEVOHとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のMFRを変更することで、その比MFR(A)/MFR(B)を調整した。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表3にまとめて示す。
実施例13
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=1.2g/10分(210℃、2160g荷重)}、EMAA{メタクリル酸含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレルNC0908HG」、MFR=15.3g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例14
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=33.0g/10分(210℃、2160g荷重)}、EMAA{メタクリル酸含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル0903HC、MFR=5.7g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例15
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=1.2g/10分(210℃、2160g荷重)}、EAA{アクリル酸含有量:9重量%、ダウケミカル「プリマコール3440」、MFR=18.0g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例16
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=33.0g/10分(210℃、2160g荷重)}、EAA{アクリル酸含有量:9重量%、ダウケミカル「プリマコール1420」、MFR=5.6g/10分(210℃、2160g荷重)}
【0079】
実施例17
実施例1において、EVOHとEMAAの溶融混練を2軸押出し機を用いる替わりに、1軸押出し機(プラコー製GT−40−A:L/D=26、フルフライトタイプスクリュー使用)を用いてシリンダー温度をフィード下部で190℃、混練部及びノズル付近で210℃に設定し、押出機のローターの回転数は1500rpmで、溶融混練しペレット化を行い、この時の押出量が1時間当たり20kgでシリンダー内部の樹脂圧力は8kg/cm2で、このときの比エネルギーは0.1KWh/Kgであった以外は、実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表3にまとめて示す。
【0080】
実施例18
スクリューをフルフライトタイプスクリューから、先端に混練部を有したタイプのスクリューに交換した以外は実施例17と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。このとき、シリンダー内部の樹脂圧力は10kg/cm2で、このときの比エネルギーは0.15KWh/Kgであった。得られた樹脂組成物ペレット、熱成形用フィルム、熱成形容器の評価結果は表1および表3にまとめて示す。
【0081】
実施例19、比較例8
実施例1において用いた内外層のハイインパクトポリスチレン(HIPS)を以下に示す樹脂あるいは樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られたシート、熱成形容器の評価結果は表4および表5にまとめて示す。
実施例19;スチレンの単独重合体(PS){出光石油化学製「出光スチロールHH30E、 MFR=4g/10分(200℃、2160g荷重)」
比較例8;ホモポリプロピレン{グランドポリマー製「J103」、MFR=3.0g/10分(230℃、2160g荷重)、ビカット軟化点155℃}
【0082】
実施例20、比較例9
実施例6において用いた内外層のハイインパクトポリスチレン(HIPS)を以下に示す樹脂あるいは樹脂組成物に変更した以外は実施例6と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られたシート、熱成形容器の評価結果は表4および表5にまとめて示す。
実施例20;スチレンの単独重合体(PS){出光石油化学製「出光スチロールHH30E、 MFR=4g/10分(200℃、2160g荷重)」
比較例9;ホモポリプロピレン{グランドポリマー製「J103」、MFR=3.0g/10分(230℃、2160g荷重)、ビカット軟化点155℃}
【0083】
比較例10、11
比較例1において用いた内外層のハイインパクトポリスチレン(HIPS)を以下に示す樹脂あるいは樹脂組成物に変更した以外は比較例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られたシート、熱成形容器の評価結果は表4および表5にまとめて示す。
比較例10;スチレンの単独重合体(PS){出光石油化学製「出光スチロールHH30E、 MFR=4g/10分(200℃、2160g荷重)」
比較例11;ホモポリプロピレン{グランドポリマー製「J103」、MFR=3.0g/10分(230℃、2160g荷重)、ビカット軟化点155℃}
【0084】
実施例21
実施例1において得られた熱成形用シートを粉砕、再溶融ペレット化した回収組成物を外層のハイインパクトポリスチレン(HIPS)のかわりに用いた以外は実施例1と同様にして、(HIPS/AD/樹脂組成物/AD/回収組成物=400μ/50μ/100μ/50μ/400μ)の構成のシートを作成し、回収物層が外側に来るようにして実施例1と同様に熱成形容器を作成した。得られたシート、熱成形容器の評価結果は表4および表5にまとめて示す。
【0085】
【表1】
Figure 0003784513
【0086】
【表2】
Figure 0003784513
【0087】
【表3】
Figure 0003784513
【0088】
【表4】
Figure 0003784513
【0089】
【表5】
Figure 0003784513
【0090】
【発明の効果】
本発明の熱成形用多層構造体は、熱成形性が良好であり、ガスバリア性、力学特性に優れた熱成形容器を提供することができる。かかる熱成形容器は、外観が良好で、力学性能に優れ、優れたガスバリア性を保有するので、各種包装容器として優秀な性能を有している。

Claims (4)

  1. エチレン含量20〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%および(メタ)アクリル酸含量1〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体40〜1重量%からなり、エチレン−ビニルアルコール共重合体のマトリックス中にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散している樹脂組成物層、およびポリスチレンからなる層を有する熱成形用多層構造体であり、樹脂組成物層においてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が多層構造体面に平行な一軸方向に引き延ばされた円柱状の形状で分散しており、その一軸方向に垂直な面で切断したときの粒子断面の平均径が0.2〜1.3μmである熱成形用多層構造体
  2. エチレン−ビニルアルコール共重合体が、エチレン含量の異なる2種類のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a)および(b)の混合物からなり、(a)のエチレン含量が20〜45モル%、(b)のエチレン含量が45〜65モル%、(a)と(b)のエチレン含量の差が8モル%以上であり、かつその配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1である請求項1記載の熱成形用多層構造体。
  3. 請求項1または2に記載の多層構造体を熱成形してなる熱成形容器。
  4. 容器の最も肉厚の厚い部分における全層厚みをTμm、最も肉厚の薄い部分における全層厚みをtμm、容器の絞り比をSとしたときに、下記式(1)〜(3)を満たす請求項記載の熱成形容器。
    S≦T/t≦20S (1)
    300<T≦3000 (2)
    t≧100 (3)
    但し、容器の絞り比Sは下記式(4)で示される値である。
    S=(容器の深さ)/(容器の開口部に内接する最大径の円の直径) (4)
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