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JP3784456B2 - 燃料電池発電装置およびその運転方法 - Google Patents

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裕 中島
剛一 白石
憲浩 冨岡
さ紀 泉澤
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Aisin AW Co Ltd
Equos Research Co Ltd
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池発電装置およびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子固体電解質型燃料電池またはリン酸型燃料電池等の燃料電池は水素を燃料ガスとして利用し、これを酸化剤ガスである酸素と電気化学的に反応させて発電している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池から排出される余剰水素ガスは、水素を生成する改質器の燃料として再利用することも可能であるが、水/メタノールを原料として改質反応を経て水素を生成させる場合には、改質ガス中に水素の他に二酸化炭素等の副生成物が多量に混入してしまう。このため、改質ガスを燃料電池の燃料ガスとして利用する場合には水素濃度の低いものとなり、また一定の水素濃度が得られないため、定常的に高出力を得ることが困難である。
【0004】
そこで、水素ボンベからの純水素を燃料ガスとして用いることが好適とされるが、従来技術によるときは、発電反応後に残存する余剰水素ガスを燃料電池から系外に排出していた。しかしながら、このような水素ガスのいわば垂れ流しは、水素ガスの利用効率の面で好ましくないだけでなく、燃料電池が電気自動車の駆動源として利用される場合には、ガレージや地下駐車場等の空気循環の悪い空間に水素を排出することとなる。
【0005】
余剰水素ガスを燃料電池から排出させないようにシステム構成することは可能であるが、この場合には燃料ガス中の窒素や水蒸気の分圧が徐々に上昇し、相対的に水素分圧が減少するため、発電性能が劣化する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、水素ガスを外気に放出しないクローズドシステムを採用することにより安全性および水素の利用効率を向上させ、しかも安定した発電性能を維持することのできる燃料電池発電装置を提供することを目的とする。
【0007】
すなわち本発明は、水素を燃料ガスとする燃料電池を用いた発電装置において、燃料電池の発電に伴い水素分圧が低下した燃料ガスを、バルブ手段を介して燃料極側から空気極側に排出する閉ラインと、前記バルブ手段を開閉制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここに閉ラインとは、バルブ手段以外には出口のない流路を意味している。したがって、燃料極から排出された燃料極排出ガスは、バルブ手段が閉とされているときは、その全量が空気極に供給されることとなる。
【0009】
制御手段はバルブ手段を常時は閉としつつもこれを間欠的に開とするよう制御する。
【0010】
好ましくは、燃料電池の出力電圧を測定する電圧測定手段が設けられ、制御手段は、該電圧測定手段による測定結果を受けて、燃料電池の出力電圧に実質的な低下を生じさせないようにバルブ手段を開閉制御する。
【0011】
あるいは、燃料電池の出力電圧を測定する電圧測定手段が設けられ、制御手段は、該電圧測定手段による測定結果を基に、バルブ手段を閉として燃料電池を運転したときに出力電圧に実質的な低下が見られるまでの時間間隔のデータを予め作成しており、この時間間隔と実質的に同一または若干短い周期でバルブ手段を開とするようバルブ手段を開閉制御する。
【0012】
さらに好適な実施例によれば、燃料電池の空気極の吸気側と排気側とに接続される循環路が設けられ、該循環路には系外より空気を導入するための吸気口と、空気極から排出される反応生成水を含む空気極排出ガスを系外に排出するための排気口が接続され、これら吸気口と排気口の少なくとも一方の開度を制御することにより反応生成水を含む空気極排出ガスを循環路を介して空気極に再導入するように構成されてなる。
【0013】
また、本発明による燃料電池発電装置の運転方法は、バルブ手段を閉とした状態で起動運転した後、所定の周期で所定時間該バルブ手段を間欠的に開とすることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による燃料電池発電装置の構成例を示す概略図であり、燃料電池1の燃料極2には水素ガスボンベ5からの純水素ガスが調圧弁6を介して供給されるとともに、空気極3には酸化剤ガスとしての酸素が供給される。公知のように、燃料極2で得られる水素イオンがプロトンの形態で電解質4中を空気極3へと伝達されることにより発電が行われる。
【0015】
燃料極2に供給された水素ガスは、発電反応に利用されてその多くが消費されるが、なお残存する余剰水素ガスは閉ライン7を流れてバルブ8を介して空気極3に導入される。
【0016】
空気極3に導入された水素ガスは、空気触媒(Pt)上で燃焼して水に転化する。これにより、電解質4に高分子固体イオン交換膜が用いられる高分子固体電解質型燃料電池の場合に、空気極3での通常の電池反応による生成水および余剰水素ガスの燃焼による回収水が、水の濃度差により、水濃度が希薄である電解質膜4に向けて流れるため、電解質膜4が加湿される。すなわち、高分子固体電解質膜4の加湿を、従来の燃料極2側からの加湿に加えて空気極3側から行うことができ、あるいは空気極3側からのみ行うことも可能となる。燃料極2側からの加湿を行わない場合には、燃料極2に供給する水素ガス中に水蒸気を導入して加湿する必要がなくなるため、水素ガスの利用効率が更に向上され且つ安定される。
【0017】
燃料電池1の出力電圧は電圧計9で監視される。制御装置10は、後述のようにして、調圧弁6およびバルブ8の開閉および開度を制御する。
【0018】
図1に示される燃料電池発電装置の運転について説明すると、まず起動時には、バルブ8を閉に保持し、調圧弁6で爆発限界以下の一定の流速で水素が燃料極2に供給されるよう微調整する。
【0019】
バルブ8を閉とした状態で燃料電池1を運転すると、水素ガス中に微量含まれる窒素および水蒸気の分圧が徐々に上昇する。すなわち、燃料極2で消費される水素の分圧は反対に徐々に低下するため、これに伴って出力電圧も低下し、安定した出力が得られなくなる。
【0020】
そこで、バルブ8を閉とした状態で燃料電池1を運転したときに出力電圧が低下し始める時間間隔を予め計測しておき、その時間間隔と実質的に同一または若干短い周期でバルブ8を開とするように、バルブ8を間欠的に開閉制御しながら、燃料電池1を運転する。
【0021】
あるいは、制御装置10は、出力電圧を常時監視する電圧計9からの入力データを解析して、出力電圧の低下開始と同時にバルブ8を一定時間開とするように制御してもよい。
【0022】
図2は本発明の他の実施例による燃料電池発電装置の構成を示し、図1の実施例が水素ガスボンベ5からの純水素を燃料ガスとして供給するのに対して、水/メタノール混合液等の改質原料を改質器12にて改質反応させて水素リッチな改質ガスを生成させ、この改質ガスをタンク13に貯留しておいて、調圧弁6およびバルブ8を介して燃料極2に供給するものである。
【0023】
この実施例による燃料電池発電装置の運転方法も図1に関連して前述したところと同様であるので説明を省略するが、改質ガスを燃料ガスとして用いる場合には水素ガス以外に水蒸気、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等が比較的多量に含まれており、バルブ8を閉として燃料電池1を運転するときの水素分圧低下およびそれに起因する出力電圧低下が比較的短時間に開始されるため、閉とされているバルブ8を開とするまでの周期を短く設定する必要がある。
【0024】
図3は図1または図2に示す実施例の変形として、空気極3から排出される排出ガスを空気極3に循環させる循環流路として構成した実施例を示す。このような構成は、電解質4として高分子固体電解質膜が用いられ、且つ、この電解質膜に対する加湿を専ら空気極3側から行う場合に好適に採用される。
【0025】
すなわち、空気極3からの排出ガスは空気排出ライン14に送り込まれるが、この空気排出ライン14は空気導入ライン15に合流して循環路16を形成しているため、電池反応により空気極3で生成される反応生成水を含む排出ガスを空気極3に導入して、電解質膜4を加湿することが可能とされる。
【0026】
循環路16に接続して排気バルブ17が設けられ、空気極からの排気ガスは、そのうちの排気バルブ17の開度に応じた一定量が系外に排出され、残量は循環路16および空気導入ライン15を介して空気極3に再導入される。排気バルブ17の開度は、燃料電池1に最適な水バランス条件を与えるよう、前述の制御装置10により制御される。
【0027】
このような構成によれば、バルブ8が開のときに閉ライン7を通って空気極3に導入される水素ガスが空気触媒上で燃焼することにより生成される水に加えて、循環路16を経て空気極3に再導入される排気ガス中に含まれる反応生成水が空気極3において水分として存在し、これが水濃度差により電解質膜4に浸透して燃料極2側へと移動し、さらに燃料極2側に移動した水分は電気浸透水として空気極3側へと移動することとなり、これら水分の往復移動によって電解質膜4の加湿が効率的且つ平均的に行われる。このため、燃料極2側からの加湿は不要となり、燃料ガス自体を加湿する必要がないため、水素分圧を高め、発電効率の向上を図ることができる。
【0028】
なお図1ないし図3に示す実施例においては、いずれも、バルブ8が開とされたときに燃料極2から閉ライン7を通じて送り込まれる余剰水素ガスが、酸素とは別の経路で空気極3に導入されるように図示されているが、この余剰水素ガスを酸素導入ラインに合流させるように構成してもよい。特に、空気極3に隣接して設けられる空気供給用マニホールド(図示せず)に余剰水素ガスを導入して空気(酸素)と共に空気極3に導入するよう構成することが、構成の簡略化および小型化の上で好ましい。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、電池反応において未消費の余剰水素ガスを燃料極より外気に放出することなく、燃料電池発電装置の系内において消費するため、きわめて安全性の高いものであるため特に電気自動車の駆動源として搭載するに適している。
【0030】
また、燃料極に供給する燃料ガス中の水蒸気や窒素等、水素以外の成分の分圧増加が抑制され、燃料ガス中の水素利用効率が向上し、且つ安定化する。
【0031】
さらに、高分子固体イオン交換膜を電解質に用いる高分子固体電解質型燃料電池においては、空気極に導入される余剰水素ガスが空気触媒上で燃焼して水に転化し、これを利用して電解質膜を加湿することができるため、燃料極側からの加湿が不要となる。したがって、燃料ガス中の水素分圧を高め、発電効率の向上および安定化により一層寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による燃料電池発電装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の変形例による燃料電池発電装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明のさらに別の実施例による燃料電池発電装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 燃料極
3 空気極
電解質(電解質膜)
5 水素ガスボンベ
6 調圧弁
閉ライン
8 バルブ
9 電圧計
10 制御装置
12 改質器
13 改質ガスタンク
14 空気排出ライン
15 空気導入ライン
16 循環路
17 バルブ

Claims (6)

  1. 水素を燃料ガスとする燃料電池を用いた発電装置において、燃料電池の発電に伴い水素分圧が低下した燃料ガスを、バルブ手段を介して燃料極側から空気極側に排出する閉ラインと、前記バルブ手段を開閉制御する制御手段とを備えたことを特徴とする燃料電池発電装置。
  2. 前記制御手段は前記バルブ手段を常時は閉としつつもこれを間欠的に開とするよう制御するものであることを特徴とする請求項1の燃料電池発電装置。
  3. 前記燃料電池の出力電圧を測定する電圧測定手段が設けられ、前記制御手段は、該電圧測定手段による測定結果を受けて、燃料電池の出力電圧が低下したときに前記バルブ手段を開くように該バルブ手段を制御することを特徴とする請求項2の燃料電池発電装置。
  4. 前記燃料電池の出力電圧を測定する電圧測定手段が設けられ、前記制御手段は、該電圧測定手段による測定結果を基に、前記バルブ手段を閉として前記燃料電池を運転したときに出力電圧に実質的な低下が見られるまでの時間間隔のデータを予め作成しており、この時間間隔と実質的に同一または若干短い周期で前記バルブ手段を開とするよう前記バルブ手段を開閉制御するものであることを特徴とする請求項2の燃料電池発電装置。
  5. 前記燃料電池の空気極の吸気側と排気側とに接続される循環路が設けられ、該循環路には系外より空気を導入するための吸気口と、空気極から排出される反応生成水を含む空気極排出ガスを系外に排出するための排気口が接続され、これら吸気口と排気口の少なくとも一方の開度を制御することにより反応生成水を含む空気極排出ガスを循環路を介して空気極に再導入するように構成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの燃料電池発電装置。
  6. 請求項1の燃料電池発電装置の運転方法であって、前記バルブ手段を閉とした状態で起動運転した後、所定の周期で所定時間前記バルブ手段を間欠的に開とすることを特徴とする燃料電池発電装置の運転方法。
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