JP3783546B2 - 車両のサイドシル構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のサイドシル構造、特に、車両の前面衝突、オフセット衝突、側面衝突に対応し適正な変形を行えるようにした車両のサイドシル構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両は走行時に外部より各種の衝撃を受けるため、基本的に、車体骨格構造部は所定の剛性を保持するように形成されるが、特に、過荷重を受けた場合に衝撃吸収のため変形を許容する部分と、車室周り骨格構造部のように乗員空間確保のため剛性強化を優先させる部分とを備える。
ところで、車体の側部を成す車体骨格構造部は車体上部のルーフレールと車体下部のサイドシルとこれらを上下に結ぶフロントピラ、センタピラ及びリアピラ等を備え、通常、これら各部材は断面構造が閉空間を成す閉断面構造を採るよう形成され、これにより各部の剛性強化が図られている。この内、特に、サイドシルは車両の前面衝突時やオフセット衝突時に前後方向の過荷重(圧縮荷重)を受けるが、この際にサイドシル自身の屈曲変形及び座屈変形を十分に抑え、荷重分散を図る必要があり,更に、側面衝突時に車幅方向の過荷重を受けた際には、車幅方向の折れモード(サイドシル自身の折れ曲がり方)のコントロールを実施できることが望ましい。
【0003】
そこで、サイドシルの剛性強度を増大させるために、たとえば、図7に示すサイドシル100の場合、アウタ及びインナーパネル110、120で閉空間130を形成し、それら部品の板厚アップを図っている。しかも、「コ」の字断面の内外厚板リンフォースメント140、150をアウタ及びインナーパネル110、120に沿わせて延設したり、あるいはこれらに変えて、あるいは加えて用いられるパイプ160(2点鎖線で示した)や、閉鎖空間130を複数の室に仕切るバルクヘッド170等の補強部材の使用が行われ、更に、車体変形モードコントロール用のV溝180が部分的に形成されたリンフォースメント190を取付けることが行われている。
【0004】
なお、特開平6−99851号公報には、サイドシルとその中間部に接合されるセンターピラ一との逆T字型結合部における剛性アップと、側面衝突時の同部の変形を抑制する逆T字型のパイプ部材を逆T字型空間内に配備したものや、特開昭64−18784号公報に開示されるように、サイドシルの長手方向に連続する閉空間内に複数のバルクヘッドを介してパイプ部材を取り付け、これによりサイドシルの前後方向の過荷重(圧縮荷重)を受けた際における荷重分散を図ったものが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の車体側部の車体骨格構造部は各種の剛性強化対策が成されており、特に、サイドシル100の場合、前面衝突時やオフセット衝突時及び側面衝突時の変形量抑制用として内外厚板リンフォースメント140,150、パイプ160、バルクヘッド170等を用い,これに加え.車体変形モードコントロール用としてリンフォースメント190を用いている。
【0006】
しかし、このような多数の補強部材を取り付けたサイドシル100に車体変形モードコントロール用のリンフォースメント190が付加される場合、重量増加や部品点数増加、及び、溶接作業工数の増加により構造の複雑化を招くこととなる。
本発明は、上述の課題に基づき、部品点数の削減、溶接作業工数の低減や設備の簡略化を図れる車両のサイドシル構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、車体の側部に車体前後方向に延びて略閉断面形状を成すサイドシル部が設けられている車両のサイドシル構造において、上記サイドシル部の内部に上記車体前後方向に延びるよう配設されるとともに側面部の少なくとも2個所に脆弱部が形成されているパイプ部材と、上記パイプ部材の上記側面部に略沿って配設されるとともに上記脆弱部を被覆するよう設けられて上記側面部と協働して第2の閉断面形状を成すリンフォース部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
このように、パイプ部材とその少なくとも2個所の脆弱部を被覆するリンフォース部材とが協働することで第2の略閉断面形状を成すことができ、この第2の略閉断面形状部が脆弱部における剛性を強化できる。このため、前面衝突時やオフセット衝突時に第2の略閉断面形状部が圧縮荷重を受けると、脆弱部における座屈変形を十分に抑制するよう剛性強化でき、更に、側面衝突時にパイプ部材の各脆弱部及びこれを被覆するリンフォース部材とが変形量を抑制できると共に脆弱部を基点とする折れモードコントロール(制御)機能を確保できる。しかも、比較的部品点数の削減を図れ、溶接作業工数の低減と金型や設備の簡略化が図れ、製造コスト低減を図れる。
好ましくは、上記リンフォース部材には上記パイブ部材に接合された部位より上下方向に延出し上記サイドシル部に接合される上下フランジが形成され、同上下フランジには上下方向に延びるビードが車体前後方向に沿って複数形成されても良い。この場合、前面衝突時やオフセット衝突時にリンフォース部材に加わる圧縮荷重が上下フランジ上の複数のビードによりそれぞれ受け取られ、衝撃吸収機能を各ビードが分散して発揮でき、荷重分散機能を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項lに記載の車両のサイドシル構造において、上記第2の閉断面形状は、車体外側へ向かって張り出す略凸形状に形成されていることを特徴とする。
このように、パイプ部材の脆弱部の形成されている側面部とリンフォース部材とが協働して形成する第2の閉断面形状を、車体外側へ向かって張り出す略凸形状に形成することにより、略凸形状の突端部が側突時の早期から過荷重を受けて変形をし始めてエネルギ吸収を行なうことができるので、単純にリンフォース部材を追加する場合よりも、より好適に衝撃吸収機能を向上できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項lに記載の車両のサイドシル構造において、上記第2の閉断面形状は、車体内側へ向かって張り出す略凸形状に形成されていることを特徴とする。
このように、パイプ部材の脆弱部の形成されている側面部とリンフォース部材とが協働して形成する第2の閉断面形状を、車体内側へ向かって張り出す略凸形状に形成することにより、側突によってサイドシル部の変形が進んだ際に略凸形状の突端部がサイドシル部の車体内側の内壁面に座付して支持されることとなり、単純にリンフォース部材を追加する場合よりも、より好適に衝撃吸収機能を向上できる。
【0011】
好ましくは、上記車両のサイドシル構造のうちのいずれか一つを有する車体側部骨格構造を構成しても良い。
この場合、車体側部骨格構造が上記車両のサイドシル構造のうちのいずれか一つを選択的に採用したので、この車体側部骨格構造が上記車両のサイドシル構造と同様に、剛性強化できるとともに、折れモードコントロール(制御)機能を確保できるので、各種の折れモードに合わせた好適な車体側部骨格構造として利用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1、図2には本発明の一実施形態としての車両のサイドシル構造が適用された車体側部骨格構造1を示す。
この車体側部骨格構造1は図示しない乗用車の車室及びトランクと対向する部位にわたり連続配備される単一の側部アウタパネル2と、複数構成部材から成る側部インナーパネル3とが溶接等で一体的に接合されることで構成されている。なお、図1には左側の車体側部骨格構造1が示されているが、この車体側部骨格構造1にはこれと左右対称な形状の右側の車体側部骨格構造(図示せず)や、車室対向部,トランク対向部、エンジンルーム対向部等に配備される多数の各骨格構成部材(図示せず)が組み合わされることで図示しない乗用車の車体骨格構造全体が形成されるようになっている。
【0013】
ここで、側部アウタパネル2の上部横長部201とサイドルーフレールインナ301とで車体前後方向Xに長い閉断面形状のサイドルーフレール(図示せず)が形成され、側部アウタパネル2の前部縦柱202と上下フロントピラインナー302a,302bとで上下方向に延びる略閉断面形状のフロントピラ(図示せず)が形成され,側部アウタパネル2の後部縦柱203と後部クォータパネル303とで上下方向に延びる略閉断面形状のリアピラ(図示せず)が形成され、側部アウタパネル2の下部横長部(以後サイドシルアウタと記す)204及びサイドシルインナー304とで車体前後方向Xに長い閉断面形状のサイドシルSS(図3参照)が形成され、側部アウタパネル2のセンタピラ部205とセンタピラインナー306とでセンタピラ((図4参照))CPが形成される。
【0014】
なお、上述の各部材は鋼板のプレス加工によりそれぞれ成形され、これら各部材の周縁部の適所より延出する複数のフランジfや各種形状の重合部が互いに接合されることで、側部骨格構造1が形成されている。
図2、図3に示すように、サイドシルSSは、側部アウタパネル2の下部横長部であるサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の各上下フランジf1、f2を互いに接合することで車体の前後方向X(図3で紙面垂直方向)に長い第1閉空間e1を形成する。しかも,サイドシルアウタ204とサイドシルインナー304とが閉断面形状を成すように互いに結合されることで形成された第1閉空間e1にはサイドシルSSの前後方向Xの全域にわたり補強フレーム4が配備される。
【0015】
補強フレーム4は金属製のパイプ部材5と同パイプ部材5の車体外側(図3で右側)の側面部501に沿って配設されるリンフォース部材6とで形成される。
パイプ部材5はその前後端に前後ブラケット7、8をそれぞれ接合し、各前後ブラケット7、8の主部や端部フランジf3の複数箇所がサイドシルアウタ204とサイドシルインナー304の前後端部にそれぞれ重合し、各重合部が一体接合されている。なお、ここでのパイプ部材5はその前後端に前後ブラケット7、8を取り付けたので,パイプ部材5が前後方向Xの過荷重を受けた際に前後方向Xへ突き抜けることを防止できる。なお、前後ブラケット7、8は、パイプ部材5に作用する前後方向Xの過荷重の度合いを考慮して必要に応じて設ければ良い。
【0016】
パイプ部材5の側面部501の中央部には所定間隔dを保って2つの脆弱部としての凹まし部9が車外側に向けて形成される。凹まし部9はパイプ部材5の断面視で内径の1/6程度の溝深さhで形成され、これを基点とする折れモードコントロール(制御)を可能としている。なお、パイプ部材5の2つの凹まし部9の中間部はセンタピラCPの下端部とサイドシルSSとが逆T字状の結合構造を採る部位であり、このように設定することで、後述のように側面衝突時にセンタピラの下端部での屈曲を抑え、2つの凹まし部9での屈曲を誘発できるようにしている。
【0017】
リンフォース部材6はパイプ部材5とほぼ同等の長さを有し、パイプ部材5の側面部501に連続して重合され,相互に図示しない複数箇所で溶接される上下接合部601と、上下接合部601間に形成され、車体外側へ向かって張り出し、突端pがすき間tを介してサイドシルアウタ204と対向する凸形状の膨出部602と、上下接合部601の上下端より上下方向に延出する上下延出板部603、604とを備え、これらは鋼板のプレス成型により形成される。
リンフォース部材6の上延出板部603は縦板状を成し、その基端部には上下方向に延びるビード11が車体前後方向Xに沿って所定間隔bを保って複数形成され、これらビード11の上端より上側部位がフランジf4を成し、同部がサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の各上フランジf1の重合部に挟まれた状態で一体接合される。
【0018】
リンフォース部材6の下延出板部604は屈曲板状を成し、その基端部には上下方向に延びるビード11が車体前後方向Xに沿って所定間隔bを保って複数形成され、これらビード11の下端より下側部位が更に段状に屈曲され、その先端がフランジf5を成し、同部がサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の各下フランジf2の重合部に挟まれた状態で一体接合される。なお、図3中,符号W1はアーク溶接点を示すとともに、符号W2はインダイレクト溶接点を示し、W1及びW2の各々の点において接合処理が成されている。
図2、図3に示す補強フレーム4ではパイプ部材5の車体外側の側面部501に沿って連続してリンフォース部材6が接合される。このため、パイプ部材5とリンフォース部材6とが協働することで第2閉空間e2を形成する閉断面形状を成すことができ、補強フレーム4の剛性を強化できる。特に、リンフォース部材6はパイプ部材5の2箇所に形成された凹まし部9をそれぞれ橋渡した状態で被覆することにより、同部の圧縮荷重に対する剛性をその他の部位と略同レベルに保持できる。
【0019】
このようにサイドシルSSはサイドシルアウタ204とサイドシルインナー304とで閉断面形状部を成すと共に車体前後方向Xに長い第1閉空間e1を形成し、基本的な剛性を確保できる。しかも、第1閉空間e1内の補強フレーム4を成すパイプ部材5とリンフォース部材6とが閉断面形状を成すよう結合されることで第2閉空間e2を形成するので、過剰な圧縮荷重に対しても十分に座屈変形を抑制するよう機能できる。
【0020】
このように、サイドシルSSの骨格内に、補強フレーム4を追加した車体側部骨格構造1を用い製造された乗用車が走行時に、前面衝突やオフセット衝突したとする。この際、サイドシルSSの前端に前後方向の過荷重が加わるが、この過剰な圧縮荷重を受けても、丸パイプであるパイプ部材5による強固な補強が可能となる。しかも、第1閉空間e1を形成するサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の剛性に加え、第2閉空間e2を形成する補強フレーム4の剛性により、過剰な圧縮荷重はサイドシルSS全体に分散して、即ち、車体の後部のリアピラ側にまで分散して伝達される。
【0021】
更に、過剰な圧縮荷重は補強フレーム4上に複数形成された複数のビード11にそれぞれ受け取られ、各ビード11が衝撃吸収機能を分散して発揮できる。更に、パイプ部材5の2箇所の凹まし部9にはリンフォース部材6が橋渡し状態に被覆されているので、同部の座屈変形に対する剛性がその他の部位とほぼ同様のレベルに保たれており、この部位が座屈を早めるということを防止できる。
なお、ここでは前方衝突時を説明したが、後方衝突時の場合、前後逆転してほぼ同様の変形動作が行われ、ほぼ同様の効果が得られる。
【0022】
一方、乗用車が走行時に、サイドシルSSの中間部に側面衝突したとする。 サイドシルSSの中間部はセンタピラCPの下端部が一体結合されており、逆T字状の結合構造を採る部位であり、図4に示すように、この部位のパイプ部材5には2つの凹まし部9が所定間隔dで配設されている。
このため、車幅方向Yの過荷重FがサイドシルSSの中間部に加わると、この際、サイドシルアウタ204がすき間t(図3参照)だけつぶれる。
次いで,補強フレーム4は、側方からの荷重により圧縮荷重と比べると比較的容易に変形する。この際、パイプ部材5が2つの凹まし部9を基点として車体中央側(図4で下方)に変形し、サイドシルインナー304も変形する。
【0023】
このように、リンフォース部材6の膨出部602を車外側(外向け)とした場合、側面衝突後より早く、剛性の高い補強フレーム4にエネルギを効率良く伝達し、エネルギ吸収機能を発揮できる。
更に、側面衝突においてパイプ部材5が一点で屈曲すること無く、2つの凹まし部9を基点にして屈曲を誘発できることより、サイドシルSS中間部及びセンタピラCPの車室内への侵入量(変形量)や侵入速度を大幅に低減でき、即ち、狙い通りの変形モードを作れ,折れモードコントロール(制御)機能を発揮でき、この点で乗員の安全性を向上できる。
更に、サイドシルSSの中間部が側面衝突を受けた場合、リンフォース部材6の膨出部602やパイプ部材5が順次側面衝突時の過荷重を吸収でき、衝撃吸収機能を向上できる。
【0024】
更に、図1のサイドシルSSはサイドシルアウタ204とサイドシルインナー304とで車体前後方向Xに長い第1閉空間e1を形成し、その内部に補強フレーム4を配備することより、従来のような複数のコ字断面のリンフォースメントを順次接合する場合と比べて部品点数の削減を図れ、溶接作業工数の低減と金型や設備の簡略化が図れ、製造コスト低減を図れる。更に、外表面を形成するサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の板厚を全体的に薄くし、トータルの軽量化を図ることができる。
【0025】
図5には第2の実施形態としての車両のサイドシル構造を適用した車体側部骨格構造1a(図示せず)中のサイドシルSSaを示した。
このサイドシルSSaは図1の車体側部骨格構造1で用いるサイドシルSSと比べて、補強フレーム4aを成すパイプ部材5aとリンフォース部材6aとの内外位置(図5で左右位置)関係が逆転する以外は同様の構成を採ることより、重複説明を簡略化する。
図5のサイドシルSSaはサイドシルアウタ204とサイドシルインナー304とで第1閉空間e1を形成し、その第1閉空間e1に補強フレーム4aを前後方向X(図5で紙面垂直方向)の全域にわたり配備する。
【0026】
補強フレーム4aはパイプ部材5aと同パイプ部材5aの車体内側(図5で左側)の側面部502に沿って配設されるリンフォース部材6aとで形成される。パイプ部材5aはその前後端を図示しない前後ブラケットを介してサイドシルアウタ204とサイドシルインナー304の前後端部に一体接合される。パイプ部材5aの側面部502の中央部には所定間隔d(図6参照)を保って2つの凹まし部9aが車室中央側に向けて形成され、これを基点とする折れモードコントロール(制御)を可能としている。
【0027】
リンフォース部材6aはパイプ部材5aの車体内側の側面部502に溶接される上下接合部601aと、車体内側へ向かって張り出し、突端pがすき間t1を介してサイドシルインナー304と対向する凸形状の膨出部602aと、上下延出板部603a、604aとを備える。リンフォース部材6aの上下延出板部603a,604aは縦板状の基端部にビード11が形成される。上延出板部603aの上側部位はフランジf4を成し、サイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の各上フランジf1に一体接合される。下延出板部604aの基端部にはビード11の下端より段状屈曲部が延出形成され、その先端のフランジf5がサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の各下フランジf2に接合される。
【0028】
このように、サイドシルSSaの骨格内に補強フレーム4aを追加した車体側部骨格構造1aを用いた乗用車が前面衝突やオフセット衝突したとする。
この場合、図5、図6に示すサイドシルSSaは、図1のサイドシルSSの場合と同様に、第1閉空間e1を形成するサイドシルアウタ204及びサイドシルインナー304の剛性に加え、第2閉空間e2を形成する補強フレーム4aの剛性により、過剰な圧縮荷重をサイドシルSSa全体に分散して伝達でき、過剰な圧縮荷重を各ビード11が吸収できる。この際、2箇所に形成された凹まし部9aにはリンフォース部材6が橋渡し状態に被覆されているので、同部が座屈を早めることを抑え、圧縮荷重に対する剛性をその他の部位と略同レベルに保持できる。
【0029】
一方、乗用車が走行時に、サイドシルSSaの中間部に側面衝突した場合、車幅方向Yの過荷重FがサイドシルSSaの中間部に加わると、まず、サイドシルアウタ204がつぶれ、次いで、補強フレーム4aに過荷重が加わる(図5、図6参照)。この際、パイプ部材5aが2つの凹まし部9aを基点として車体中央側(図5で左側)にすき間t1だけ変形し、膨出部602aの突端pがサイドシルインナー304に座付する。
【0030】
図5に示した車体側部骨格構造1a(図示せず)中のサイドシルSSaは図1の車体側部骨格構造1と同用の作用効果が得られる。特に、リンフォース部材6aの膨出部602aを車室側(内向け)としたので、この場合、膨出部602aのサイドシルインナー304への底付きにより、耐荷重を増加することができる。しかも、それ以後の変形速度や変形量が大幅に低減されることとなり、即ち、折れモードコントロール(制御)機能を発揮でき、この点で乗員の安全性を向上できる。更に、側面衝突時の過荷重Fが大きな場合、リンフォース部材6の膨出部602やパイプ部材5が順次過荷重Fを吸収でき、衝撃吸収機能を十分に向上できる。
【0031】
上述のところにおいて、本発明の車両のサイドシル構造は乗用車の車体側部骨格構造1に適用されていたが、その他のサイドシルを有する車両に適用でき、この場合も、図1の車体側部骨格構造1と同様の作用効果が得られる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、前面衝突時やオフセット衝突時に第2の略閉断面形状部が圧縮荷重を受けると、脆弱部における座屈変形を十分に抑制するよう剛性強化でき、更に、側面衝突時にパイプ部材の各脆弱部及びこれを被覆するリンフォース部材とが変形量を抑制できると共に脆弱部を基点とする折れモードコントロール(制御)機能を確保できる。しかも、比較的部品点数の削減を図れ、溶接作業工数の低減と金型や設備の簡略化が図れ、製造コスト低減を図れる。
【0033】
第2の閉断面形状を、車体外側へ向かって張り出す略凸形状に形成することにした場合には、特に、略凸形状の突端部が側突時の早期から過荷重を受けて変形をし始めてエネルギ吸収を行なうことができるので、好適に衝撃吸収機能を向上できる。
また、第2の閉断面形状を、車体内側へ向かって張り出す略凸形状に形成することにした場合には、特に、略凸形状の突端部が、側突によってサイドシル部の変形が進んだ際にサイドシル部の車体内側の内壁面に座付して支持されることになり、好適に衝撃吸収機能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての車両のサイドシル構造が適用された車体側部骨格構造の分解斜視図である。
【図2】図1の車体側部骨格構造中のサイドシル部分の分解斜視図である。
【図3】図1中のサイドシルの拡大断面図である。
【図4】図1のサイドシル中の補強フレームの変形説明図である。
【図5】図1の車体側部骨格構造中のサイドシルに代えて用いられる他のサイドシルの拡大断面図である。
【図6】図5のサイドシル中の補強フレームの変形説明図である。
【図7】従来の車両のサイドシルの断面図である。
【符号の説明】
1 車体側部骨格構造
204 サイドシルアウタ
304 サイドシルインナー
4 パイプ部材
501 側面部
502 側面部
6 リンフォース部材
602 膨出部
9 凹まし部(脆弱部)
e1 第1閉空間
e2 第2閉空間
p 突端
SS サイドシル部
X 車体前後方向
Y 車幅方向
Claims (3)
- 車体の側部に車体前後方向に延びて略閉断面形状を成すサイドシル部が設けられている車両のサイドシル構造において、
上記サイドシル部の内部に上記車体前後方向に延びるよう配設されるとともに側面部の少なくとも2個所に脆弱部が形成されているパイプ部材と、
上記パイプ部材の上記側面部に略沿って配設されるとともに上記脆弱部を被覆するよう設けられて上記側面部と協働して第2の閉断面形状を成すリンフォース部材と、を有することを特徴とする車両のサイドシル構造。 - 上記第2の閉断面形状は、車体外側へ向かって張り出す略凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドシル構造。
- 上記第2の閉断面形状は、車体内側へ向かって張り出す略凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドシル構造。
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