JP3781941B2 - 印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷版に対しインキを供給してインキ画像を形成した後に印刷用紙に転写する印刷装置に関し、特に画像データに基づいて印刷版に画像を形成する製版手段と、当該印刷版の幅方向に沿って複数に分割した各領域毎にインキ供給量を可変することができるインキ供給手段とを備えた製版機構付き印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル画像データに基づいて印刷版上に画像を形成する製版装置、いわゆるCTP(Computer-To-Plate)装置を機内に組み込んだ印刷装置が実用化されており、例えば特開平10−272756号公開公報などに開示されている。このような印刷装置はデジタル印刷機と呼称されており、画像データから直接印刷物が得られるため作業時間が短い多品種少部数印刷などに適している。このデジタル印刷機では、非熟練者でも容易に扱えるように製版工程などが自動化されているが、印刷工程におけるインキ供給制御等については更なる自動化が望まれている。
【0003】
従来の印刷装置におけるインキ供給制御では、印刷装置に接続された色見台を使用するのが一般的であるが、この場合、オペレータが適宜の印刷サンプルを取り出して印刷物の色測定を行わなければならないという問題がある。なお通常、色見台では印刷物に設けられたカラーチャートを測定する。
【0004】
この問題を解決するために、特許第2824334号に開示されているように、印刷装置に印刷物の画像を撮像する手段を備える印刷装置が開示されている。この従来技術では、印刷装置の圧胴上で印刷物を撮像して画像データを得るとともに、この画像データと予め制御の基準となる印刷物を読んだ基準画像データとの比較によってインキ供給量を制御するようにしている。この従来技術では、印刷装置内で印刷物の画像を撮像するようにしているので、色見台を用いる場合のようにオペレータが介在しなくてもよいという利点がある。また印刷物の画像を用いるため、カラーチャートが不要であるという利点もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来技術では予め基準となる印刷物を準備しなければならない。このような印刷物は、例えば予め準備された校正刷りもしくは印刷中に得られた良好な印刷物、いわゆるOKシートと称される印刷物である。ところが、近年では前記校正刷りをインクジェットプリンターなどの簡易校正装置で行う場合も多く、印刷装置で使用できるような基準となる印刷物を予め準備することができない場合がある。また印刷中にokシートを得る方式は、当該OKシートを得るまでは手動でインキ制御を行わなければならず、多部数印刷であれば良いが少部数印刷では時間的・印刷枚数的に不経済である場合が多い。従って、多品種少部数印刷に適した前記デジタル印刷機には不適である。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基準となる印刷物を予め準備しなくても適切なインキ供給量の制御を自動で行える印刷装置を提供することを目的とする。
【0007】
一方、前記従来技術では印刷物を撮像する手段を圧胴の近辺に備えている。この場合、印刷用紙を全面に渡って安定して撮像するのは困難である。すなわち印刷用紙の後端部を撮像する時点では当該印刷用紙の先端部は既に他の胴(例えば排紙胴)に咥えられていて、印刷用紙の終端側が圧胴に対し固定されていないためである。このような場合、印刷用紙の移動にともなって後端側がばたついて適切に撮像できない可能性がある。
【0008】
さらに、前記特開平10−272756号公開公報で示された印刷装置のように、圧胴に対し複数のブランケット胴が当接するようなサテライト型印刷装置では、圧胴近辺に撮像手段自体を配置するスペースがない場合が考えられる。
【0009】
この発明は、さらに上記課題を解決するためになされたものであり、圧胴近辺以外に撮像手段を配置して印刷物の後端部であっても良好な撮像を行える印刷装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、印刷物を構成する第1画像データに基づいて印刷版に画像を形成する製版手段と、当該印刷版の幅方向に沿って複数に分割したインキ領域毎にインキ供給量を可変することができるインキ供給手段とを備えた印刷装置であって、前記第1画像データを実際に印刷版に画像を記録するよりも低解像度に変換した第2画像データを、所定の表色系により数値変換し、得られた表色値を標準色データとして記憶する標準色データ演算手段と、この印刷装置に配置され、印刷用紙に印刷された画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された第3画像データを、前記インキ領域毎において前記表色系により数値変換して印刷色データを求める印刷色データ演算手段と、前記標準色データと印刷色データとを比較して、前記インキ領域毎に差分データを得る差分データ演算手段と、前記差分データに基づいてインキ供給量の修正データを得る修正データ演算手段と、前記修正データに基づいて前記インキ供給手段の供給するインキ供給量を制御するようにした制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記印刷装置はシート状の印刷用紙の前端部を咥えて排出する排出手段と、前記排出中の印刷用紙の搬送状態を安定させる安定手段と、を備えており、前記撮像手段は、前記安定手段によって搬送状態が安定している印刷用紙を撮像するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記印刷装置は、印刷されたシート状の印刷用紙を順次平台上に積載して貯留する排出貯留部を備えており、前記撮像手段は、前記排出貯留部に積載された印刷用紙の画像領域の全面を撮像範囲とする2次元撮像手段であることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、この発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る印刷装置の一例を示す側面概要図であり、図2はこの印刷装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
まず図1に示すように、この印刷装置は、印刷機構として、印刷版を保持する第1および第2の版胴1、2と、それぞれの版胴からインキ画像を転写するための第1および第2ブランケット胴3、4と、印刷用紙を保持して両ブランケット胴3、4からインキ画像が転写される圧胴5と、圧胴5に対し印刷用紙を供給または排出する給紙胴6および排紙胴7と、前記第1および第2の版胴1、2上の印刷版に対し湿し水またはインキを供給する湿し水供給手段8およびインキ供給手段9と、積載された未印刷の印刷用紙を順次供給する給紙部10と印刷された印刷用紙を順次積載する排紙部11とを備える。
【0019】
一方、この印刷装置は、製版機構として、前記第1および第2の版胴1、2に対し未露光の印刷版を供給する印刷版供給部12と、版胴上の印刷版に対し画像を記録する画像記録部13と、画像が記録された印刷版を現像処理する現像部14と、使用済みの印刷版を排出する印刷版排出部15とを備える。
【0020】
また、この印刷装置は、印刷された印刷用紙上の画像を撮像する撮像部16と、図2に示すように、印刷装置の各部を制御するための制御部17と、前記撮像部16で得た画像を画像処理する画像処理部18とを備える。
【0021】
以下、各部の詳細について説明する。第1の版胴1は、図示しない版胴駆動機構によって図1の実線で示す第1の印刷位置と二点鎖線で示す画像記録位置との間を移動可能なように構成されており、第2の版胴2についても同様に図示しない版胴駆動機構によって図1の実線で示す第2の印刷位置と二点鎖線で示す画像記録位置との間を移動可能なように構成されている。すなわち第1および第2の版胴1、2は、印刷作業を実行する時にはそれぞれ第1または第2の印刷位置に配置され、製版作業を実行する時には、順次交代して画像記録位置に配置されて各版胴上での印刷版の製版処理が行われる。この第1の版胴1と第2の版胴2とは、それぞれ2色分の印刷版を保持可能な周面を有し、各印刷版をその周面上で180度対向した位置に固定するための図示しない咥え手段を2組ずつ備える。
【0022】
第1のブランケット胴3は、前記第1の印刷位置にて第1の版胴1と当接して回転するように構成されており、第2のブランケット胴4についても同様に前記第2の印刷位置にて第2の版胴2と当接して回転するように構成されている。この第1および第2のブランケット胴3、4は、前記第1および第2の版胴1、2と同じ直径を有し、各版胴から2色分のインキ画像を転写可能なブランケットをその周面に装着している。
【0023】
圧胴5は、前記第1および第2の版胴1、2の1/2の直径を有し、第1および第2のブランケット胴3、4の両方と当接して回転するように構成されている。この圧胴5には、前記印刷版に対応する大きさの印刷用紙を1枚保持可能な図示しない咥え手段を備えている。この咥え手段は図示しない開閉機構によって所定のタイミングで開閉して、前記印刷用紙の前端部を挟持することができる。
【0024】
給紙胴6および排紙胴7は、圧胴5と同じ直径を有し、前記圧胴5に備えられた咥え手段と同様の図示しない咥え手段を備える。この給紙胴6および排紙胴7の咥え手段は、前記圧胴5の咥え手段と同期して印刷用紙を受け渡し可能なように配置されている。
【0025】
上記第1および第2の印刷位置に配置された第1および第2の版胴1、2と、第1および第2のブランケット胴3、4と、圧胴5と、給紙胴6および排紙胴7とは、それぞれの胴に対し各胴の直径と同じ大きさの図示しない駆動ギアが胴端に備えられており、各々当接する胴の間で各ギアが噛合している。従って、このギアを図示しない印刷駆動用モータにより駆動することで、上記各胴を同期して回転駆動することができる。
【0026】
なお、本実施の形態の印刷装置では、圧胴5に対し版胴1、2およびブランケット胴3、4が2倍の周長を有するため、版胴1、2およびブランケット胴3、4が1回転する毎に圧胴が2回転する。従って、圧胴5が印刷用紙を保持したまま2回転すると、第1および第2の版胴1、2から、2色+2色の合計4色の多色印刷が行える。
【0027】
湿し水供給手段8は、第1および第2の印刷位置における各版胴1、2に対しそれぞれ2組づつ配置されており、各版胴1、2上の2つの印刷版に対し選択的に湿し水を供給することができる。この湿し水供給手段8は、湿し水を貯留する水舟と、水舟内の湿し水を汲み上げて印刷版面に渡す湿し水ローラ群とからなり、湿し水ローラのうち少なくとも印刷版面に当接するローラは、図示しないカム機構によって版胴面に対し当接または離間するように構成されている。なお印刷版が湿し水を不要とするタイプの印刷版であれば、湿し水供給手段8は不要となる。
【0028】
インキ供給手段9は、第1および第2の印刷位置における各版胴1、2に対しそれぞれ2組づつ配置されており、各版胴1、2上の2つの印刷版に対し選択的に異なる色のインキを供給することができる。例えばこの実施の形態では、第1の版胴1に対しては、K色(ブラック)とM色(マゼンタ)のインキ供給手段8が配置され、第2の版胴2に対しては、C色(シアン)とY色(イエロー)のインキ供給手段8が配置される。
【0029】
なお、湿し水供給手段8とインキ供給手段9のいくつかは、前記第1および第2の版胴1、2の移動にともない、その移動経路から待避できるように構成されている。
【0030】
このインキ供給手段9の構成を図3を用いて説明する。図3は、インキ供給手段9の一例を示す側面概要図である。図3において、インキ供給手段9は、インキつぼ装置を構成するインキ出しローラ20およびインキキー21と、アーム22により揺動自在に設けられたインキ移しローラ23と、複数のインキローラ24と、印刷版面に当接してインキを供給するインキ着けローラ25とを備える。なお図3ではインキローラ24は1本のみ図示している。
【0031】
インキつぼ手段は、版胴の軸線に沿って設けられたインキ出しローラ20の周面に対し金属薄板からなるインキキー21を当接させたものであり、当該インキキー21は、前記インキ出しローラ20の軸線方向に沿って複数に分割されている。このインキ出しローラ20とインキキー21と図示しない側板とによって形成されたインキ溝空間にインキが貯留される。
【0032】
各インキキー21は、図示しない駆動ネジ等によって独立してインキ出しローラ20の表面に対し当接または離間する方向に駆動するよう構成されており、これによってインキ出しローラ20とインキキー21との隙間(開度)を調整することができる。そしてインキ出しローラ20を図の反時計方向に回転させることによって、前記開度に基づいた膜厚でインキ出しローラ20の表面にインキが出される。
【0033】
インキ移しローラ23は、アーム22の移動によってインキ出しローラ20とインキローラ24との間を往復し、インキ出しローラ20とインキローラ24とに交互に当接することでインキ出しローラ20上のインキをインキローラ24に移す。
【0034】
インキローラ24は、金属製またはゴム製の複数のローラが順次当接するよう配置され、そのいくつかはローラの軸線方向に揺動移動する。このインキローラによってインキ練り動作が行われる。
【0035】
インキ着けローラ25は、少なくとも1つのインキローラ24に対し当接した状態で、図示しないカム機構によって第1の版胴1または第2の版胴2の周面に対し当接または離間する。これにより版胴上の対応する印刷版に対応する色のインキを供給することができる。
【0036】
このインキ供給手段9では、前記インキキー21の開度調整によって、版胴の軸線方向(印刷方向に対し直交する方向)に沿って各色のインキ供給量を制御することができる。
【0037】
図1に戻って、給紙部10は、未使用の印刷用紙を積載したパイルから印刷用紙を一枚ずつ取りだして給紙胴6に渡すものであって、この実施の形態では、給紙胴の2回転毎に1回印刷用紙を供給するよう動作する。また排紙部11は、印刷された印刷用紙を排紙胴7から受け取って積載するものである。この排紙部11の詳細については後述する。
【0038】
次に、この印刷装置の製版機構について説明する。この印刷装置では、製版作業を実行する時には、第1および第2の版胴1、2を交互に画像記録位置に移動させる。この画像記録位置では、図示しない摩擦ローラが版胴に当接されて回転駆動するように構成されている。
【0039】
印刷版供給部12は、ロール状の未露光印刷版を遮光して保管したカセットロールと、引き出した印刷版を版胴1、2まで搬送する搬送ローラおよび搬送ガイドと、前記印刷版をシート状に切断する切断手段と、を有する。この実施の形態では、印刷版としては銀塩感材を用いており、レーザ光によって画像を記録するものである。なお印刷版の供給動作手順は、まず前記カセットロールから引き出した印刷版の先端を前記版胴1、2の図示しない咥え手段に挟持させ、この状態で版胴1、2を回転させて印刷版を版胴1、2上に巻回し、この後、所定長で印刷版を切断して印刷版の後端を他方の咥え手段により挟持するものである。
【0040】
画像記録部13は、レーザ光のon/offによって印刷版上に露光を施して画像を記録するものである。この実施の形態では、図示しないレーザ発信源から発射されたレーザ光を図示しないポリゴンミラーなどの偏光器によって版胴の軸線方向に沿って走査するとともに、版胴を回転させることで印刷版面を走査する構成になっている。なお、印刷版および画像記録部13としては、露光により画像を記録するものだけでなく、熱や放電加工によって画像を記録するものであってもよい。
【0041】
現像部14は、前記画像記録部13により露光された印刷版を現像処理するものである。この実施の形態では、現像部14は、図示しない処理槽に貯留された処理液を塗布ローラにより汲み上げて印刷版に対し塗布して現像処理を行う構成になっており、版胴から待避する位置と版胴へ近接する位置とに移動する図示しない昇降手段が備えられている。なお現像処理が要らない画像記録方法を採用すれば、現像部14はなくてもよい。
【0042】
この印刷装置では、第1および第2の版胴1、2を画像記録位置へ移動させ、印刷版の供給と画像の記録および現像とを行って製版作業を実行する。製版作業が完了すれば、第1および第2の版胴1、2を第1および第2の印刷位置に配置して印刷作業を行うことができる。
【0043】
一方、この印刷装置は印刷作業の終了後に印刷版を自動で排出することができる。この実施の形態では、印刷版排出部15は、画像記録位置にある版胴から印刷版を剥離する剥離手段と、剥離された印刷版を搬送する搬送手段と、搬送された使用済みの印刷版を排出する排出カセットとを備える。
【0044】
次に、図4を用いて本発明に係る撮像部16と前記排紙部11との構成について説明する。なお、図4は排紙部11近傍の側面概要図である。
まず排紙部11は、前記排紙胴7と、この排紙胴7と略同径の2つのギア7’との間に掛け回された2本の無端状のチェーン30と、この2本のチェーンによって搬送され、印刷用紙Sを搬送するための複数の咥え手段31と、これらの咥え手段31により搬送された印刷用紙Sを積載するための排紙台32とからなる。
【0045】
前記排紙胴7の両端部には、それぞれチェーン30と係合するための図示しないギア部を備えており、このギア部に対向して略同径の2つのギア7’が配置されている。そして排紙胴7のギア部とギア7’とにおいて無端状のチェーン30が掛け回されている。このチェーン30の長さは、前記排紙胴の周長の整数倍の長さに設定されている。
【0046】
咥え手段31は、印刷用紙Sの先端を挟持するための開閉可能な爪部材を有し、複数の咥え手段31が前記2つのチェーン間に渡って固定されている。この咥え手段の間隔は前記排紙胴7の周長に相当する。従って、前記排紙胴7の回転にともない同期して咥え手段31がループ状に走行する。一方、各咥え手段31は、図示しないカム機構によって前記排紙胴7に設けられた咥え手段と同期して開閉するように構成されており、排紙胴7から印刷用紙Sを受け取り、排紙台32上で印刷用紙Sを排出する。
【0047】
排紙台32は、複数の印刷用紙Sを積載可能なパレット状部材であって、図示しない昇降手段によって上下移動をする。すなわち印刷用紙Sが排出されるに従って順次排紙台32が下降することにより印刷用紙Sの排出高さを一定にし、印刷用紙Sの排出動作を円滑に行なうことができる。
【0048】
上記排紙部11では、印刷用紙Sの先端を咥え手段31で挟持して搬送するため、印刷用紙Sの後端は固定されていないフリーの状態で搬送されるため、搬送にともない印刷用紙Sのばたつきが発生する。本実施の形態では、この印刷用紙Sのばたつきを抑制するために、排紙台32の前方側において印刷用紙Sの搬送状態を安定させる安定手段としての吸着ローラ33を備える。
【0049】
この吸着ローラ33は、その表面に微細な吸着孔を多数備えており、図示しない真空ポンプと接続されている。この吸着ローラ33は、そのローラ軸線が前記咥え手段31と平行になり、前記チェーン30の下方通過位置と略同じ高さにローラの頂部が位置するように配置されている。なお、吸着ローラ33は、前記咥え手段31の通過速度に合わせて回転駆動するか、もしくは回転自在にのみ構成されている。従って、印刷用紙Sは、吸着ローラ33上を通過する際には吸着ローラ表面に吸着された状態となって搬送されるので、この吸着ローラ33上の部分での印刷用紙Sはばたつかない。なお吸着ローラ33に代えて、前記印刷用紙Sを平面的に吸着するような吸着板部材を採用してもよい。
【0050】
撮像部16は、搬送される印刷用紙を照明する照明手段34と、照明された印刷用紙上の画像を撮像して画像データを得るための撮像手段35とからなる。
照明手段34は、前記吸着ローラ33に沿って配置され、前記吸着ローラ33上の印刷用紙を照明する複数の線状光源からなり、前記チェーン30の間に設けられている。なお、前記光源の中央部には撮像用のスリットが形成されている。
【0051】
撮像手段35は、遮光および防塵のための筐体36と、この筐体内部に配置されたミラー37、レンズ38、CCDラインセンサ39とを備える。この撮像手段35は、前記吸着ローラ33上の印刷用紙の画像を前記照明手段34のスリットを通して撮像するものであり、ミラー37で折り返された画像の入射光は、レンズ38を通ってCCDラインセンサ39で受光される。なお、CCDラインセンサはRGBの3色に対応して画像を読み取る。この実施の形態では、印刷用紙の移動にともない、印刷用紙上の画像が順次ライン毎に読み取られることになる。
【0052】
次に図2に示される制御部17と画像処理部18とを説明する。図2のブロック図で示されるように、この印刷装置は、前記インキ供給手段9、画像記録部13、撮像部16ならびに画像処理部18などを含む印刷装置の各部を制御するための制御部17が備えられている。この制御部17は、各種入出力手段、表示手段、記憶手段ならびに入出力インターフェイスなどを備えるマイクロコンピュータシステムからなり、LANなどによって外部の画像データ作成装置DTに接続されている。
【0053】
画像データ作成装置DTは、例えば印刷物を構成する画像データを作成するためのDTP装置(Desk-Top-Publishing)および前記画像データをビットマップ形式の2値の画像データに変換するRIP装置(Raster-Image-Processing)であって、当該画像データを印刷装置に供給する。なお、この実施の形態では、供給する画像データは、RIP処理済みの2値の画像データd0と、インキ供給量制御用の画像データd1である。
【0054】
2値の画像データd0は、前記画像記録部13に送出され、この画像データに基づいて印刷版上に画像が記録される。すなわち画像データd0の2値に応じてレーザ光がon/off制御されて、画像が記録される。
【0055】
インキ供給量制御用の画像データd1は、この実施の形態ではCIP3(International Cooperation for Integration of Prepress, Press, and Postpress)規格におけるPPF(Print Production Format)データであり、実際に印刷版上に画像を記録するための画像データ、すなわち前記2値の画像データd0をRIP処理する前の画像データ、を低解像度に変換した画像データであって、各画素値はRGB毎に多値で表されている。この画像データd1は画像処理部18によって画像処理されてインキ供給量の制御に用いられる。
【0056】
なお、本実施の形態では、外部の画像データ作成装置DTから2値の画像データd0とインキ供給量制御用の画像データd1を得るようにしているが、例えばRIP前の画像データを得て印刷装置内部でRIP処理を行ない、また同様に印刷装置内部でインキ供給量制御用の画像データを作成するようにしてもよい。さらに、画像データd1は、以後の演算の軽減を行うために低解像度の画像データを用いているが、低解像度にせずにそのままの解像度の画像データを用いてもよい。
【0057】
画像処理部18は、前記画像データd1と前記撮像部16により撮像した画像データd2とに基づいて、インキ供給手段9のインキキー開度を調整するための修正データd3を演算するものであって、各種入出力手段や記憶手段などを備えるマイクロコンピュータシステムからなる。なお、この実施の形態では、制御部17と画像処理部18とを別のマイクロコンピュータシステムで構成しているが、共通のマイクロコンピュータシステムで構成してもよい。
【0058】
以下、画像処理部18の機能的な構成を図5の機能ブロック図を用いて説明する。図5において、画像処理部18は、画像データd1を所定の表色系により数値化して標準色データdaを演算する標準色データ演算手段41と、この標準色データdaを記憶する記憶手段42と、前記撮像部16で撮像した画像データd2を前記表色系により数値化して印刷色データdbを演算する印刷色データ演算手段43と、前記標準色データdaと印刷色データdbとを比較して差分データdcを演算する差分データ演算手段44と、得られた差分データdcから前記インキ供給手段9のインキキー21の開度を調整する修正データd3を演算する修正データ演算手段45とを備える。
【0059】
標準色データ演算手段41は、まず前記PPF形式の画像データd1を、前記インキ供給手段9の各インキキー21の領域幅に合わせて複数の領域に分割する。この分割は図7に示されるように行われる。図7は、画像データd1の分割を説明するための図であり、理解が容易なように印刷幅方向のインキキー領域を5個にし、印刷進行方向を4つの領域に分割している。そして各領域のRGB値で示された平均色をL*a*b*表色系で数値変換する。次にインキキーの幅領域ごとに印刷進行方向の領域の表色系数値を加算平均して、すなわち図7の例では、図の縦方向の4つの領域の表色系数値を加算平均して、標準色データdaを得る。なお、印刷進行方向の分割幅は適宜演算しやすい幅に設定すればよい。
【0060】
この標準色データdaは、一般的に印刷版の版替えを行わない限り同一のものを使用するので、記憶手段42により記憶しておく。なお、上記表色系の変換は既知のRGBからL*a*b*への変換であるから具体的な演算方法は省略する。
【0061】
印刷色データ演算手段43は、前記撮像手段により読み取った画像データd2を、前記標準色データdaの演算と同様の手法で処理し、印刷色データdbを得る。前記画像データd2は、予め定められたサンプリング間隔で得られるため、それに合わせて印刷色データdbが順次演算される。なお、前記画像データd2の読取解像度は、前記画像データd1の解像度に合わせて設定しておくのが好ましい。
【0062】
差分データ演算手段44は、前記標準色データdaと印刷色データdbとをインキキー領域毎に比較して、差分データdcを演算する。すなわち標準色データdaと印刷色データdbとから、実際の印刷物の色合いが、元の画像データどおりに仕上がっているかどうかの差分を、表色系数値により表したものが前記差分データdcである。
【0063】
修正データ演算手段45は、まず前記差分データdcからYMCKの各インキの濃度値を演算する。つまり前記差分データdcは、表色系による色の差を表しているので、この色の差を実際に使用するYMCKの4色のインキの濃度値に変換する。この変換は、予め用意した変換テーブルに基づいて行う。この変換テーブルは、予め使用するインキの濃度値を複数ステップ毎に印刷したカラーチャートを測色計により測色してL*A*B*表色系数値を得て、前記インキ濃度値と表色系数値とを対応づけたものである。
【0064】
前記差分データdcに基づいて各インキキー領域毎に各色のインキの濃度値が得られたら、この濃度値に対応したインキキー31の開度の修正量を表す修正データd3を各色毎に求める。例えば、インキキーの開度の修正量に基づいて印刷されるインキ濃度の変化量を求めておいて変換テーブルを定めておけばよい。
【0065】
得られた修正データd3に基づいて、前記制御部17は各インキ供給手段9のインキキー毎にその開度を調整する。
【0066】
次に本実施の形態におけるインキ供給量の制御手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、オペレータによりステップS1では印刷装置の各部の設定が行われる。例えば、前記撮像部16のサンプリング間隔や印刷枚数、印刷速度などの諸条件を設定する。
【0067】
次のステップS2では、印刷装置が外部の画像データ作成装置DTから画像データd0、d1を受け取る。そして画像データd1は画像処理部18に転送され、標準色データ演算手段41によって画像データd1から標準色データdaが演算される。得られた標準色データdaは記憶手段42により記憶される。
【0068】
ステップS3では、まず印刷装置において前記画像データd0に基づき製版作業が実行され、次いで印刷作業が行われる。なお、初期のインキ供給手段9のインキキー開度の設定は、前記標準色データdaに基づいて設定される。
【0069】
ステップS4から本発明に係るインキ供給量の制御手順が実行される。まずステップS4では、図示しないセンサーにより印刷用紙の位置が検出される。これは例えば、排紙部11の咥え手段31の位置をセンサーにより検出したり、また搬送される印刷用紙の位置を光学的に検出することで達成される。
【0070】
ステップS5では、前記印刷用紙の位置の検出に基づくタイミングにより、前記撮像部16が印刷用紙上の画像を撮像開始する。そして画像データd2が得られる。なお画像データd2は、印刷用紙の搬送タイミングのズレや機械の振動などによって読取位置に誤差が生じる可能性がある。この不具合を解決するには、印刷された見当合わせマークなどを画像処理により抽出して位置決め処理を行うのが好ましい。
【0071】
ステップS6では、印刷色データ演算手段43によって前記画像データd2を変換し、印刷色データdbを求める。
ステップS7では、差分データ演算手段44によって前記標準色データと印刷色データとを比較し、差分データdcを求める。
ステップS8では、修正データ演算手段によって、まず前記差分データdcから目標となるインキ濃度値を算出する。そしてステップS9では、求めたインキ濃度値からインキキー開度の調整を行うための修正データd3を求める。得られた修正データd3は制御部17に転送される。
ステップS10では、求めた修正データd3に基づいて、制御部17が各インキ供給手段9のインキキー31の開度を調整する。
【0072】
ステップS11は印刷作業が終了したかどうかを判断し、終了すればこの手順を終了する。印刷作業が続行すれば、ステップS4以下の手順に戻り、予め定められたサンプリング間隔でインキ供給量の調整を続行する。
【0073】
上記実施の形態によれば、印刷版に画像を記録する画像データから基準となる標準色データを得るようにしているので、予めokシートなどの印刷物を準備しなくてもよい。
【0074】
[第2の実施の形態]
図8は第2の実施の形態に係る撮像部の一例を示す側面概要図である。上述した第1の実施の形態では、撮像手段35にCCDラインセンサー39を用いているが、この第2の実施の形態では、撮像手段として印刷用紙上の画像を一括して撮像可能な平面CCDカメラからなる2次元撮像手段35’を採用している。この2次元撮像手段35’が使用できるのは、前記画像データd2はインキ供給量の制御のために使用されるので低解像度でも十分であるという技術的背景からである。従って、当該2次元撮像手段35’はそれほど高解像度なものが必要ではなく、例えば70万画素程度のCCDカメラでも使用できる。
【0075】
この実施の形態では、搬送中の印刷用紙を走査読み取りする必要がないため、印刷用紙の搬送を安定させる機構が不要であるという利点がある。この他に、図8に示す第2の実施の形態では、照明手段34’を2次元撮像手段35’の撮像領域から待避した位置へ移動させた以外は第1の実施の形態と同じ構成である。
【0076】
[第3の実施の形態]
前記第1および第2の実施の形態は、印刷用紙上の画像を撮像してインキ供給量を制御するようにしているが、印刷版に予めインキ制御用のカラーチャートを形成し、印刷用紙上に印刷されたカラーチャートを撮像するようにしてもよい。
【0077】
この実施の形態の場合、予め画像記録部13で記録するカラーチャートデータを一定にしておけば、第1および第2の実施の形態のように、印刷版毎に画像データd1から基準色データdaを作成しなくても基準色データdaは一定である。従って、予めカラーチャートに対応する基準色データdaを求めておいて記憶手段42に記憶しておくだけでよいという利点がある。
【0078】
なお、印刷版上に一定のカラーチャートを形成しておかなければならないという条件があるが、これは製版機構を備えた印刷装置では容易に達成することができる。例えば、予め定められたカラーチャートを表す画像データを制御部17のメモリまたはディスクなどに記憶しておきカラーチャート記憶手段(図示しない)とする。このカラーチャートの画像データは予めRIP処理された2値の画像データである。そして印刷版上に画像を形成する時には、印刷物を構成する画像データd0に対しカラーチャートに対応する画像データを加算してから記録すればよい。このような画像データの加算は、カラーチャートが印刷版の余白部(画像データがない端部)に形成されるので容易である。
【0079】
なお、この例では印刷装置においてカラーチャートの画像を組み込むようにしているが、画像データ作成装置DTにおいて予め画像データd0に前記カラーチャートを組み込んでおいてもよい。
【0080】
この実施の形態の場合でも、撮像手段としては第1の実施の形態で示すラインセンサーを用いてもよいし、第2の実施の形態で示す平面型センサーを用いても良い。ただし後者の場合、印刷版面の全面ではなく、予めカラーチャートが形成される既知の位置だけを撮像するように配置すればよい。
【0081】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、第1画像データに基づいて印刷版上に画像を記録する製版機構を備える印刷装置において当該第1画像データを低解像度にした第2画像データを所定の表色系数値に変換して実際の印刷物の印刷色と比較するようにしているので、予め標準となる印刷物を準備しなくてもインキの供給を自動化することができる。
【0082】
請求項2に記載の発明によれば、圧胴近辺にスペースのない印刷装置にでも撮像手段を配置することができ、搬送中の印刷用紙の搬送状態を安定させる安定手段を備えることで排出搬送中の印刷用紙でも正確に撮像することができる。
【0083】
請求項3に記載の発明によれば、印刷された印刷用紙を貯留する排出貯留部に、印刷用紙のほぼ全面を一括して撮像できる2次元撮像手段を備えたので、安定して印刷用紙を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る印刷装置の一例を示す側面概要図である。
【図2】この印刷装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この印刷装置におけるインキ供給手段を示す側面概要図である。
【図4】この印刷装置における排紙部と撮像部とを示す側面概要図である。
【図5】この印刷装置における画像処理部の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図6】この印刷装置におけるインキ供給量制御手順を示すフローチャートである。
【図7】画像の領域を説明するための説明図である。
【図8】別の実施の形態における撮像部を示す側面概要図である。
【符号の説明】
1 第1の版胴
2 第2の版胴
3 第1のブランケット胴
4 第2のブランケット胴
5 圧胴
6 給紙胴
7 排紙胴
9 インキ供給手段
11 排紙部
13 画像記録部
17 制御部
18 画像処理部
21 インキキー
31 咥え手段(排紙部)
33 吸着ローラ
34、34’ 照明手段
35 撮像手段
35’ 2次元撮像手段
41 基準色データ演算手段
42 記憶手段
43 印刷色データ演算手段
44 差分データ演算手段
45 修正データ演算手段
d1 インキ供給量制御用の画像データ
d2 印刷用紙を撮像して得た画像データ
d3 修正データ
da 標準色データ
db 印刷色データ
dc 差分データ
S 印刷用紙
Claims (3)
- 印刷物を構成する第1画像データに基づいて印刷版に画像を形成する製版手段と、当該印刷版の幅方向に沿って複数に分割したインキ領域毎にインキ供給量を可変することができるインキ供給手段とを備えた印刷装置であって、
前記第1画像データを実際に印刷版に画像を記録するよりも低解像度に変換した第2画像データを、所定の表色系により数値変換し、得られた表色値を標準色データとして記憶する標準色データ演算手段と、
この印刷装置に配置され、印刷用紙に印刷された画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された第3画像データを、前記インキ領域毎において前記表色系により数値変換して印刷色データを求める印刷色データ演算手段と、
前記標準色データと印刷色データとを比較して、前記インキ領域毎に差分データを得る差分データ演算手段と、前記差分データに基づいてインキ供給量の修正データを得る修正データ演算手段と、
前記修正データに基づいて前記インキ供給手段の供給するインキ供給量を制御するようにした制御手段と、を備える印刷装置。 - 前記印刷装置はシート状の印刷用紙の前端部を咥えて排出する排出手段と、
前記排出中の印刷用紙の搬送状態を安定させる安定手段と、を備えており、
前記撮像手段は、前記安定手段によって搬送状態が安定している印刷用紙を撮像するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。 - 前記印刷装置は、印刷されたシート状の印刷用紙を順次平台上に積載して貯留する排出貯留部を備えており、
前記撮像手段は、前記排出貯留部に積載された印刷用紙の画像領域の全面を撮像範囲とする2次元撮像手段であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
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