JP3781456B2 - 金属管の熱間曲げ加工方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、金属管の熱間曲げ加工方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、原油あるいは天然ガス等を輸送するパイプラインの曲がり部などに使用される曲がり管は、主として誘導加熱方式にて直管を加熱して変形抵抗を低減させた状態で曲げ加工を行い、さらに水冷または空冷を行うことで製造されている。
【0003】
具体的には、図6(a) に示すように、被加工材であるストレートな金属管(以下、単に管という)1の一端は油圧シリンダ2のロッド部2aに固定され、もう一端は一対のピンチロール3の間を通り、環状の誘導加熱コイル4内を通って、ピボット5を中心に回転されるアーム6に固定される。そして、高周波発振電源7を介して誘導加熱コイル4に電力を投入し、管1を加熱しながら、油圧シリンダ2を操作して、管1の端面に加工荷重を加えて、矢示方向Fに押し出すことによって、アーム6を一定の曲率半径で回転して管1の曲げ加工を行い、その後図示しない冷却装置で冷却することによって、図6(b) に示すような曲がり管1Aが製造される。なお、誘導加熱コイル4には冷却水等の冷却媒体が供給管8を介して供給されて冷却され、排出管9を介して排出される。
【0004】
ところで、最近の品質面への高度な要求は、曲がり管に対しても直管と同等の材質を求められるようになっている。その場合、加熱温度と冷却速度が品質設計上重要な因子として配慮されることから、特に、降伏応力が40kgf/mm2 以上の高強度管では主に水冷が用いられる。
また、曲がり管の冷却と誘導加熱コイル4の冷却を兼用できる構造のものが例えば特開昭58−138522号公報に提案されている。すなわち、図7に示すように、誘導加熱コイル冷却と曲がり管冷却とを兼用した装置(以下、管冷却兼用誘導加熱コイルという)10は、その断面形状が外径面から内径面に向かって狭くなるようにテーパ形状とされ、その内部には冷却水の流路として中空冷却部10aが設けられ、かつその内径面の両端に冷却水を噴射するノズル11が取り付けられた水冷構造とされ、そのノズル11を介して噴射される冷却水によって曲がり管の加熱部が冷却されるのである。
【0005】
この管冷却兼用誘導加熱コイル10の断面形状およびノズル11の配置位置は、その円周方向に対して一定のものとされ、かつ冷却水の噴射角度は曲がり管からの跳ね返りや加熱ゾーンへの逆流が生じないような最適角度が設定される。したがって、冷却される位置は減肉側、増肉側とも管冷却兼用誘導加熱コイル10からその軸方向に同じ距離の位置となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特開昭58−138522号の手段を用いて管1に曲げ加工を施す際、曲げ外側は引張変形を受けて管厚が減肉となり、曲げ内側は圧縮変形を生じるため増肉となる。そのため昇温速度に差が生じ、冷却位置が同じ箇所では最高到達温度に差が生じるとともに、水量が一定のため冷却速度に差が生じることになり、材質がそれらに応じて変動するという問題があった。その結果、最高到達温度の低いまたは冷却速度の小さい増肉側は焼入れが不十分なため強度が低めとなり、曲がり管全周について最低強度を確保するためには、管の成分でCやその他合金元素を強化元素として多く添加する必要があった。しかし、この対応処置では、現地での曲がり管の円周溶接において硬化性を増し、溶接割れや腐食割れなどの問題を誘起する原因となり望ましくないのである。また、最高強度も併せて要求される場合は減肉側の強度が高くなりすぎるという問題もある。
【0007】
なお、例えば特開昭55−144332号公報には、上記のような曲がり管の曲げ外側の減肉を防止するために、加熱中に曲げ外側の一定領域を冷却しつつ加熱する方法が開示されているが、この方法では温度勾配のコントロールが難しく、そのため減肉を完全に安定して防止することができず、一方、内側の増肉が従来と同様に生じてしまうため、上記のような問題を解決するに至っていない。
【0008】
本発明は、上記したような従来技術の有する課題を解決すべくなされたものであって、最高到達温度および冷却速度の変動を低減させるのに好適な金属管の熱間曲げ加工方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、曲げ加工すべき金属管の外周に配置した環状の誘導加熱コイルを用いて金属管を局部的に塑性変形可能温度に加熱し、該加熱部を管軸方向に相対的に移動させながら曲げモーメントを付与するとともに冷却水を噴射して冷却操作を行う金属管の熱間曲げ加工方法において、金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置にそれぞれ冷却水を噴射することを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法であり、あるいはさらに、この冷却水の噴射流量を金属管の曲げ外側に対応する減肉側から曲げ内側に対応する増肉側に向けて徐々に多くすることを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法である。
また、本発明は、前記金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置は、該金属管の外径や肉厚、材質、曲げの曲率半径によって、予め実験によって求めたものであることを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法としてもよいし、前記金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置は、非接触式の表面温度計を、該金属管の円周方向に複数台設置して測定するものであることを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法としてもよい。
【0010】
また、本発明は、曲げ加工すべき金属管の外周に配置して金属管を局部的に塑性変形可能温度に加熱する環状の中空冷却部を備えた管冷却兼用誘導加熱コイルと、金属管の一端側に結合されて金属管に管軸方向への押し出す力を付与する押し出し装置と、金属管の他端側に結合されて金属管の加熱部に曲げモーメントを付与する曲げ加工装置とからなる金属管の熱間曲げ加工装置において、前記管冷却兼用誘導加熱コイルはその断面形状が四角の中空冷却部とされ、該中空冷却部の金属管の曲げ側に面する側面の周方向に、金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置にそれぞれ冷却水が到達するような噴射角度で複数のノズルが取り付けられてなることを特徴とする金属管の熱間曲げ加工装置である。
あるいはさらに、前記ノズルの孔径を、前記金属管の曲げ外側に対応する減肉側から曲げ内側に対応する増肉側に向うに従い徐々に大きくしてもよい。
【0011】
なお、前記ノズルが取り付けられる前記管冷却兼用誘導加熱コイルの側面を、その断面形状が外径面から内径面に向かって狭くなるようなテーパ形状にしてもよい。
また、前記ノズルは、前記管冷却兼用誘導加熱コイルの、前記金属管の曲げ側に面する側面上に、前記金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置にそれぞれ冷却水が到達するように、前記金属管の表面からの取り付け高さを決めて、形成されたものであるようにしてもよい。
【0012】
【作用】
本発明者は、上記した熱間曲げ加工工程における減肉側と増肉側とで最高加熱温度に到達する時間が異なることから、その時間的なずれを冷却位置に置き換えて、減肉側と増肉側との冷却位置を異にすればよいことを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、図8(a) に示すように、管冷却兼用誘導加熱コイル10Aによる管1の冷却位置として、減肉側1aでは加熱温度が最高値に到達するコイル幅方向中心Cから距離La の位置aを、また増肉側1bでは加熱温度が最高値に到達するコイル幅方向中心Cから距離Lb の位置bをそれぞれ冷却するようにする。ここで、双方の距離の差(Lb −La )は最高加熱温度に到達する時間の差に相当する。そうすると、減肉側1aの管体温度は図8(b) に示すように最高加熱温度に到達した位置aから冷却するのに対し、増肉側1bの管体温度は図8(c) に示すように最高加熱温度に到達した位置bから、位置aよりも遅れて冷却することになる。なお、図8(c) に点線で示した温度特性曲線は従来例の場合である。
【0014】
このように、曲がり管の減肉側と増肉側では昇温速度の違いにより最高加熱温度に達する位置が異なるため、減肉側と増肉側のそれぞれが最高加熱温度に達した位置に冷却水が到達するようにし、あるいはさらに、その流量を減肉側よりも厚肉側を多くするようにそれぞれ噴射するようにすることで、管周方向に均一性の高い材質を得ることが可能となる。
【0015】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
本発明に係る管の熱間曲げ加工装置の構成は図1に示すごとくで、管冷却兼用誘導加熱コイル10A以外は従来例と同一構成とされる。この管冷却兼用誘導加熱コイル10Aは、図2に拡大して示すように、管1の曲げ側に面した周面にそれぞれ孔径がDa , Db , Dc , Dd なる4個のノズル11a,11b,11c,11dが所定のピッチp(ここでは90°)で、それぞれから噴射される冷却水が管1の最高加熱温度に到達する管外周位置a,b,c,dに到達するような噴射角度θa ,θb ,θc ,θd で取り付けられる。
【0016】
なお、管1の最高加熱温度に到達する管外周位置a,b,c,dの決定に当たっては、管1の外径や肉厚、材質、曲げの曲率半径などによってその減肉や増肉の程度が異なることから、それらを予め実験によって求めてもよく、あるいは非接触式の表面温度計などを管の円周方向に複数台設置して測定するようにしてもよい。また、噴射角度は基本的に一定であるから、θa =θb =θc =θd であるものとする。
【0017】
これらノズル11a〜11dは、図3の断面にその一部を示すように、中空部10aの曲げ側に対応する側面10bに、管外周位置a,b,c,dにおけるノズルからの噴射角度θa , θb , θc , θd がそれぞれ等しくなるような高さha , hb , hc , hd に取り付けられる。このとき、管冷却兼用誘導加熱コイル10Aの幅方向の中心Cから管外周位置a,b,c,dまでの距離をそれぞれLa , Lb , Lc , Ld とし、中心Cからノズルまでの距離をWa , Wb , Wc , Wd とすると、各ノズル11a〜11dの管1の表面からの取り付け高さは、それぞれ下記のように決定することができる。
【0018】
ha =(La −Wa )・tan θa
hb =(Lb −Wb )・tan θb
hc =(Lc −Wc )・tan θc
hd =(Ld −Wd )・tan θd
そこで、孔径がDa =Db =Dc =Dd とされる各ノズル11a〜11dを用いて、管外周位置a,b,c,dを冷却するようにすると、ほぼ目標通りの冷却を行うことができる。ここで、さらにノズルの冷却能を管厚に応じて設定させるために、ノズルの孔径を増肉側を減肉側よりも大きくすると、冷却速度の差を減じることが可能となる。
【0019】
また、図4に示すように、中空部10aの曲げ側に対応する側面10bを、その断面形状が外径面から内径面に向かって狭くなるようにテーパ形状にした管冷却兼用誘導加熱コイル10Bを用いるようにすれば、管外周位置a,b,c,dへの4個のノズル11a〜11dからの冷却水の噴射角度を容易に同じとすることができる。
【0020】
パイプラインに用いられる規格がAPI 5LX65 で、サイズが30″(762 mm) φ×30mmtの直管に管外径の5倍の曲げ半径Rの曲げ加工を施して曲がり管を製造する際に、本発明法を適用した。なお、各ノズルの孔径がDa =Db =Dc =Dd の条件である場合を本発明例1とし、Da <Dc (Dd )<Db の条件である場合を本発明例2とした。
【0021】
そして、製造された曲がり管の周方向を減肉側と厚肉側と中立部に4分割して、それぞれの降伏応力を測定した結果を図5に示した。なお、従来法によって曲がり管を製造した際の降伏応力を比較のために同図に併せて示した。この図から明らかなように、従来例に比べ本発明例はいずれも管厚差による降伏応力の差が小さく、材質の均質性が向上していることがわかる。
【0022】
なお、上記実施例において、管冷却兼用誘導加熱コイル10A(10B)の周方向に取り付けるノズルの数を減肉側と増肉側の各1本と中立部2本の計4本を用いるとして説明したが、さらに本数を増やしてピッチpを細かくすれば管全周をむらなく冷却することができる。
また、上記実施例においてノズルの孔径を減肉側よりも増肉側を大きくするとして説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば管冷却兼用誘導加熱コイル10A(10B)の中空部10aでの冷却水の経路を分割し、個々に噴射する冷却水の圧力を変えるようにしても同様の目的を達成することができる。
【0023】
また、上記の実施例では、一般的な方法として誘導加熱コイルと管冷却治具を兼用するように一体化した管冷却兼用誘導加熱コイル10A(10B)を用いるとして説明したが、別個に設けられた誘導加熱コイルと管冷却治具とを組み合わせて使用する場合も本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
さらに、冷却水を噴射するノズルの噴射角度は基本的には一定であるとして説明したが、管の曲げ位置に対応してノズル毎の最適角の微調整がなされるならば、さらに好適な冷却が得られることはいうまでもない。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、減肉側と増肉側のそれぞれが最高加熱温度に達した位置に冷却水が到達するように、かつ、その流量を減肉側よりも厚肉側を多くするようにそれぞれ噴射するようにしたので、管周方向に均一性の高い材質を得ることが可能となり、従来法に比較して材質の均質性を向上させることができる。その結果、現地溶接性に優れた比較的低成分での厚肉高強度の要求にも対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る管の熱間曲げ装置の構成を示す概要図である。
【図2】 本発明に用いられる管冷却兼用誘導加熱コイルの一例を拡大して示す正面図である。
【図3】 図2のA−A矢視断面図である。
【図4】 本発明に用いられる管冷却兼用誘導加熱コイルの他の例を示す断面図である。
【図5】 曲がり管の降伏強さを示す特性図である。
【図6】 (a) 従来例を示す概要図、(b) 曲がり管の側面図である。
【図7】 他の従来例を示す断面図である。
【図8】 本発明の原理を説明する(a) 模式図、(b) 減肉側の管体温度特性図、(c) 増肉側の管体温度特性図である。
【符号の説明】
1 管(金属管)
1A 曲がり管
1a 減肉側
1b 増肉側
2 油圧シリンダ(押し出し装置)
3 ピンチロール
6 アーム(曲げ加工装置)
7 高周波発振電源
8 供給管
9 排出管
10,10A 管冷却兼用誘導加熱コイル
10a 中空冷却部
10b 側面
11a〜11d ノズル
a〜d 管外周位置
Claims (8)
- 曲げ加工すべき金属管の外周に配置した環状の誘導加熱コイルを用いて金属管を局部的に塑性変形可能温度に加熱し、該加熱部を管軸方向に相対的に移動させながら曲げモーメントを付与するとともに冷却水を噴射して冷却操作を行う、金属管の熱間曲げ加工方法において、
金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置にそれぞれ冷却水を噴射することを特徴とする金属管の熱間曲げ加工方法。 - 前記冷却水の噴射流量を金属管の曲げ外側に対応する減肉側から曲げ内側に対応する増肉側に向けて徐々に多くすることを特徴とする請求項1に記載の金属管の熱間曲げ加工方法。
- 前記金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置は、該金属管の外径や肉厚、材質、曲げの曲率半径によって、予め実験によって求めたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属管の熱間曲げ加工方法。
- 前記金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置は、非接触式の表面温度計を、該金属管の円周方向に複数台設置して測定するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属管の熱間曲げ加工方法。
- 曲げ加工すべき金属管の外周に配置して金属管を局部的に塑性変形可能温度に加熱する環状の中空冷却部を備えた管冷却兼用誘導加熱コイルと、金属管の一端側に結合されて金属管に管軸方向への押し出す力を付与する押し出し装置と、金属管の他端側に結合されて金属管の加熱部に曲げモーメントを付与する曲げ加工装置とからなる金属管の熱間曲げ加工装置において、前記管冷却兼用誘導加熱コイルはその断面形状が四角の中空冷却部とされ、該中空冷却部の金属管の曲げ側に面する側面の周方向に、金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置にそれぞれ冷却水が到達するような噴射角度で複数のノズルが取り付けられてなることを特徴とする金属管の熱間曲げ加工装置。
- 前記ノズルの孔径を、前記金属管の曲げ外側に対応する減肉側から曲げ内側に対応する増肉側に向うに従い徐々に大きくしてなることを特徴とする請求項5に記載の金属管の熱間曲げ加工装置。
- 前記ノズルが取り付けられる前記管冷却兼用誘導加熱コイルの側面は、その断面形状が外径面から内径面に向かって狭くなるようにテーパ形状とされることを特徴とする請求項5又は6に記載の金属管の熱間曲げ加工装置。
- 前記ノズルは、前記管冷却兼用誘導加熱コイルの、前記金属管の曲げ側に面する側面上に、前記金属管の加熱部の温度が最高値に到達する管外周位置にそれぞれ冷却水が到達するように、前記金属管の表面からの取り付け高さを決めて、形成されたものであることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の金属管の熱間曲げ加工装置。
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