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JP3781247B2 - 炎検出装置 - Google Patents

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JP3781247B2
JP3781247B2 JP01753999A JP1753999A JP3781247B2 JP 3781247 B2 JP3781247 B2 JP 3781247B2 JP 01753999 A JP01753999 A JP 01753999A JP 1753999 A JP1753999 A JP 1753999A JP 3781247 B2 JP3781247 B2 JP 3781247B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、火災によって生じた物理現象(熱、煙、炎)を利用し、自動的に火災の発生を検出する火災検出装置のうちの赤外線式炎検出装置(以下、単に「炎検出装置」という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の炎検出装置としては、例えば、図16に示すようなものが知られている。図16において、1は光学的な波長バンドパスフィルタ、2は検知素子、3は周波数フィルタ、4は比較器である。なお、実際には、信号増幅用のアンプなども構成に含まれるが、説明の簡単化のために省略する。
【0003】
この従来の炎検出装置は、有効検知エリア(後述)内の赤外線エネルギーを検知素子2で電気信号に変換し、周波数フィルタ3によって、その電気信号の「所定の低域周波数成分」を取り出すとともに、その低域周波数成分のレベルが基準レベルを越えた場合に、火災検出信号を出力するというものである。ここで、「所定の低域周波数成分」とは、炎から放射される赤外線エネルギーのゆらぎ(又はちらつき)の周波数fcを含む成分である。
【0004】
図17は、有炎燃焼に伴う赤外線エネルギーの放射強度を時間軸上で観測した場合のグラフである。炎から放射される赤外線エネルギーは熱源からのエネルギーEと内外炎のエネルギーeとを足し合わせたもので、Eはほぼ一定のレベルで推移しほとんど変動しないのに対して、eはCO2共鳴放射や燃焼に伴う酸素の消耗と周囲からの供給のサイクルに従って数Hz程度の低い周波数(上記のfcに相当)で周期的に変動することが知られており、周波数フィルタ3の通過中心周波数をfcに合わせておけば、火災による「炎」を検出できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の炎検出装置にあっては、検知素子2が一つ設けられ、その検知素子2の検知面前面に設定される検知エリア内の赤外線エネルギーを検知して、例えば、その変動成分(上記の周波数fcに相当する成分)を検出するものであるが、検知素子2の検知面に到達する赤外線エネルギーの強さは検知エリア内の火点位置に応じて大きく変化(例えば、検知面からの距離の二乗に反比例)するため、例えば、微弱な赤外線エネルギーを検知しようとすれば、検知素子2を含む検知系の検出感度を高くしなければならないものの、そうすると、距離が近い火点からの赤外線エネルギーに対して感度オーバーとなってしまい、検知系の出力範囲を越えて出力が飽和するという不都合がある。さらに、一つの検知素子2の担当する検知エリア内の火点位置をまったく把握できないという不都合がある。
【0006】
このことを詳説すると、図18は、検知素子2の検知エリアを平面的に見た図であり、6は検知素子2の検知面の法線5に対して所定の角度2θ(θは一般に50度程度)で放射状に広がる検知エリアである。Lmaxは検知素子2を含む検知系の遠距離検知限界距離(一般に20m程度)であり、規定の火災モデル(例えば、0.1又は0.5平方メートルの角皿に入れられたノーマル・ヘプタン燃料の燃焼炎)を火災として検知できる限界の距離である。検知素子2の検知面に到達する赤外線エネルギーの強さは、火点から検知素子2までの距離の二乗に反比例し、また、上記法線5に対する赤外線入射角が大きくなるにつれて減少するため、同赤外線エネルギーの強さは、結局、検知エリア6内の火点位置に応じて大きく変化することになる。
【0007】
いま、火災モデルの位置を検知エリア6内の「イ」とすると、その火点からの赤外線エネルギーの変動成分は検知素子2を含む検知系によってぎりぎり火災として検知できるが、一方、火災モデルよりも小さな炎、例えば、ライターの炎等であっても、検知素子2に近い、例えば、「ロ」にあれば、検知素子2の検知面に到達する赤外線エネルギーは大きいので、検知系は同様に検知し、火災と判断してしまう場合がある。また、「ロ」の位置に前述の火災モデルに相当する規模の炎がある場合には、検知素子2の検知面に到達する赤外線エネルギーが過大となって、検知系の出力範囲を越えてしまい、その火点からの赤外線エネルギーの変動成分を抽出して火災判断するような信号解析はできなくなる。
【0008】
位置ロを含む範囲6aは無効検知エリア(火災と非火災とを適切に判断して火災のみを検出できることを保証できないエリア)と呼ばれており、有炎燃焼に伴う赤外線エネルギーを検知し、火災と非火災とを適切に判断して火災のみを検出できることを保証できる範囲は検知エリア6から無効検知エリア6aを除外したハッチングで示すエリア(有効検知エリア)6bである。
【0009】
言うまでもなく、炎検出装置の目的は検知エリア6内の、所定規模を超える炎を検知することにあり、遠距離検知限界距離Lmaxをできるだけ長くして、有効検知エリア6bを拡大するとともに、無効検知エリア6aをできるだけ狭くすることが求められるものの、検知系の検出感度を高めてLmaxを長くして有効検知エリア6bを拡大しようとすると、結果、無効検知エリア6aも広がり、一方、検知系の検出感度を低くして無効検知エリア6aを狭くしようとすると、結果、Lmaxが短くなって有効検知エリア6bも縮小するという相反する結果となり、有効検知エリア6bの拡大と無効検知エリア6aの縮小という二つの命題をともに達成できないという第一の問題点がある。
【0010】
また、実質的な検知エリア(有効検知エリア)6bで発生した炎の検知は可能であるものの、その検知エリア内での火点位置は大雑把にせよ把握できないため、例えば、放水銃との連動システムを構成した場合、放水銃装置に対してピンポイントの放水地点情報を提供できず、有効検知エリア6bの全範囲に対して万遍なく放水することを余儀なくされるから、給水設備の大規模化を招き、設備コストがアップすると共に消火までに時間がかかるという第二の問題点がある。
【0011】
そこで本発明は、有効検知エリアの拡大と無効検知エリアの縮小を共に達成することを第一の目的とし、検知エリアで発生した炎の位置を大まかに把握することを第二の目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、赤外線エネルギーを電気信号に変換する検知素子を含む検知系を複数備え、複数の検知系毎の検出感度をそれぞれ異ならせるとともに、複数の検知系毎の検知素子を直近且つ同方向を向くように配置するようにした。
【0013】
具体的には、赤外線エネルギーを電気信号に変換する検知素子と、前記検知素子の出力信号から炎の赤外線成分を抽出する抽出手段と、前記抽出手段の出力信号を所定の増幅率により増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段から出力される出力信号により火災の判定を行う判定手段とを含む検知系を複数備え、前記複数の検知系毎の検出感度をそれぞれ異ならせるとともに、前記複数の検知系毎の検知素子を直近且つ同方向を向くように配置することを特徴とする。
また、前記増幅手段の増幅率、又は、検知波長帯域、又は、前記判定手段の火災判定を行うためのしきい値を前記複数の検知系毎に異ならせることで検出感度をそれぞれ異ならせることを特徴とする。
また、前記増幅手段の増幅率、前記判定手段の火災判定を行うためのしきい値、検知波長帯域のうちの少なくとも2つを組み合わせて前記複数の検知系毎に異ならせることで検出感度をそれぞれ異ならせることを特徴とする。
また、前記複数の検知系の判定手段での判定結果に基づいて火災発生位置を特定する位置判定部を備えたことを特徴とする。
また、前記複数の検知系の増幅手段から出力される出力信号のレベルの相関関係に基づいて火災発生位置を特定する位置判定部を備えたことを特徴とする。
また、前記複数の検知系毎の有効検知エリアの広がり角を略同一にする有効検知エリア制限手段を備えたことを特徴とする。
また、前記複数の検知系毎の検知素子は、一体的にパッケージ化されたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、赤外線式炎検出装置(以下、単に「炎検出装置」)に適用した実施例として図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態における炎検出装置10の概念的な構成図である。この図において、11A及び11Bは赤外線エネルギー12を電気信号13A、13Bに変換する検知素子(特に限定しないが例えば焦電体を用いたもの)、14A、14Bは炎の赤外線エネルギーのゆらぎ周波数を含む所定周波数域の信号を抽出する周波数フィルタ(抽出手段に相当;以下「フィルタ」と略す)、15A、15Bはフィルタリングされた信号を増幅する増幅部(増幅手段に相当)、16A、16Bは増幅後の信号S1、S2を所定のしきい値TH1、TH2と比較して火災の発生を判定した際に検出信号を出力する判定部(判定手段に相当)、17は判定部16A又は判定部16Bから検出信号が出力されたときに火災検出信号を出力する出力部である。
【0016】
ここで、符号に“A”を付した構成要素、すなわち、検知素子11A、フィルタ14A、増幅部15A及び判定部16AをA系の検知系と呼称し、同様に“B”を付した検知素子11B、フィルタ14B、増幅部15B及び判定部16BをB系の検知系と呼称することにすると、これら二つの検知系は、以下に説明する目的のため、検出感度が異なるように調節されている点に特徴がある。
【0017】
図2はA系の検知系(以下「A系」と略す)の検知エリア平面図、図3はB系の検知系(以下「B系」と略す)の検知エリア平面図である。これら両図において、20はA系の遠距離検知限界線、21はB系の遠距離検知限界線、22はA系の近距離検知限界線、23はB系の近距離検知限界線、24はA系の有効検知エリア、25はB系の有効検知エリアである。A系の遠距離検知限界線20が最も遠く、B系の遠距離検知限界線21、A系の近距離検知限界線22及びB系の近距離検知限界線23の順に炎検出装置10(検知素子11A、11B)に近くなっている。
【0018】
A系の遠距離検知限界線20と近距離検知限界線22の位置は例えばA系の検出感度で決まり、同様に、B系の遠距離検知限界線21と近距離検知限界線23の位置はB系の検出感度で決まる。そして、各検知系の検出感度は、A系の増幅部15AとB系の増幅部15Bで各々独立して調節できる。例えば、A系の増幅部15Aの増幅率を、B系の増幅部15Bの増幅率より高く設定すれば、B系の検出感度に比べてA系の検出感度が高く設定されるため、これら四つの限界線20〜23を図示の位置関係にすることができる。
【0019】
図4は、検出感度を高く設定した場合(図4(a))と低く設定した場合(図4(b))で距離との受信信号レベルとの関係を示す図である。この図において、OVFは検知系の出力飽和レベル、LCは火炎からの赤外線エネルギーを同一とした場合の距離に応じた受信レベルの変化を示す線(実際には指数関数曲線であるが図では便宜的に直線で表している)である。なお、THはレベルで火災と判断する場合のしきい値である。
【0020】
図4(a)に示すように、検出感度が充分に高い場合、近距離L1からの赤外線エネルギーによる受信レベルM1がOVFを超えるような場合でも、遠距離L2からの赤外線エネルギーによる受信レベルM2は、その離隔距離だけLCに沿って減少する結果、M2<M1となり、OVFを下回る小さなレベルになる。一方、図4(b)に示すように、同一の条件で検出感度を低くした場合を考えると、近距離L1と遠距離L2からの赤外線エネルギーによる受信レベルM3、M4は、検出感度を高くした場合のM1、M2に比べて当然低くなる。なお、受信レベルM4は、当然、受信レベルM3に比べて低くなる。
【0021】
以上のことから、
(a)検出感度を高くした場合
利点:遠距離L2からの赤外線エネルギーの信号レベルM2が大きいため、有効検知エリアを拡大できる。
欠点:近距離L1からの赤外線エネルギーの信号レベルM1がOVFを超えるため、無効検知エリアも拡大する。。
(b)検出感度を低くした場合
利点:近距離L1からの赤外線エネルギーの信号レベルM3がOVFを超えないため、無効検知エリアを縮小できる。
欠点:遠距離L2からの赤外線エネルギーの信号レベルM4が小さいため、有効検知エリアも縮小する。
という相反する特性が得られることが分かる。このことから、A系とB系の検出感度を異ならせることにより、両系の合成特性として、遠距離L2からの赤外線エネルギーの信号レベルが大きく、且つ、近距離L1からの赤外線エネルギーの信号レベルがOVFを超えない、という両系の利点を兼ね備えた好ましい特性を得られるのである。すなわち、この好ましい特性を持つことにより、有効検知エリアを拡大でき、且つ、無効検知エリアを縮小できるのである。
【0022】
図5は、以上のように設定したA系及びB系の検知エリアを重畳させた平面図であり、A系の有効検知エリア24とB系の有効検知エリア25が一部でオーバラップ(符号24/25で示すクロスハッチング部分)している様子が示されている。この図において、a〜fは規定の火災モデルによる火点であり、検知素子11A、11Bの検知面に到達する赤外線エネルギーL*(*はa〜f)を強さ順に並べると、La<Lb<Lc<Ld<Le<Lfである。ここに、LaはA系の火災判定のためのしきい値TH1以下のレベル、LbはA系のしきい値TH1を若干上回るレベル、LcはB系の火災判定のためのしきい値TH2を若干上回るレベル、LdはA系の出力飽和レベルOVF1を若干下回るレベル、LeはB系の出力飽和レベルOVF2を若干下回るレベル、LfはB系の出力飽和レベルOVF2を完全に上回るレベルである。なお、火災判定のためのしきい値TH1及びTH2の適切なレベルは、各検知系の有効検知エリア24、25の遠距離検知限界線20、21上に火災モデルを置いたときに、その有炎燃焼に伴う赤外線エネルギーを、他の赤外線放射源(例えば、ランプ類やライターの炎)が近距離検知限界線22、23上のどこにあっても、それらと誤認することなく検知できるレベルで与えられる。
【0023】
図6は、図5の各火点位置(a〜f)に対応する赤外線エネルギーレベル(La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf)と、しきい値(TH1、TH2)及び出力飽和レベル(OVF1、OVF2)との関係を示す概念図である。なお、図中の赤外線エネルギーレベル(La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf)の順番は、図面の下から上になるにつれて強く(大きく)なっているが、その間隔やスケールは実際の強度レベルを表すものではない。単に強度の順位を示しているにすぎない。
【0024】
この図において、DR1はA系の火災として適切に判別できる範囲、DR2はB系の火災として適切に判別できる範囲である。DR1の出力飽和レベルOVF1に対してDR2の出力飽和レベルOVF2は強(大)レベル側にシフトし、同様に、DR1の下限を決めるしきい値TH1に対してDR2の下限を決めるしきい値TH2も強(大)レベル側にシフトしている。
【0025】
以上の構成を有する本実施の形態の炎検出装置10によれば、その動作フローチャートを図7に示すように、A系の増幅部15Aの出力信号S1がしきい値TH1を越えた場合(STEP1のYES判定)、または、B系の増幅部15Bの出力信号S2がしきい値TH2を越えた場合(STEP2のYES判定)に火災検出信号を出力する(STEP3)という作用が得られる。
【0026】
すなわち、図6のLd、Lc又はLbで考えると、これらはA系のしきい値TH1を越えるとともにA系の出力飽和レベルOVF1を下回っているから、Ld、Lc又はLbの検知に伴って火災検出信号を出力でき、また、Le、Ld又はLcで考えると、これらはB系のしきい値TH2を越えるとともにB系の出力飽和レベルOVF2を下回っているから、Le、Ld又はLcの検知に伴って火災検出信号を出力でき、結局、従来技術では検知できなかった位置「e」の火点を加えて、「d」、「c」及び「b」の各位置の火点を検出できるという作用効果が得られる。
【0027】
かかる効果は、炎検出装置10に二つの検知系を備えるとともに、各検知系の検出感度を異ならせたことによって、遠距離検知限界線を遠くに置くことと近距離検知限界線を近くに置くことを両立できたからであり、遠距離検知限界距離Lmaxを犠牲にすることなく、無効検知エリアを縮小することができ、実質的な有効検知エリア(有効検知エリア24+有効検知エリア25)を拡大できたからである。
【0028】
なお、上記実施の形態では、A系とB系の検出感度を異ならせる方法として増幅部の増幅率を調節しているが、本発明はこれに限らない。要は、A系とB系の検出感度を異ならせて、検知エリアを図2や図3のようにすればよく、例えば、A系とB系の検知波長帯域を異ならせたり、しきい値レベルを異ならせたりしてもよい。
【0029】
図8は、有炎燃焼の赤外線エネルギーのスペクトル分布図であり、4.5μm付近のピークは、いわゆるCO2共鳴放射によるものである。今、A系とB系の増幅率やしきい値レベル等の検知波長帯以外の条件を同一にするとともに、A系の検知素子11Aの検知面前面に広帯域(例えば3〜5μm)の光学波長フィルタを設け、且つ、B系の検知素子11Bの検知面前面に挟帯域(例えば4.5μmを中心とするもの)の光学波長フィルタを設ければ、これら二つの検知系で同一の炎を検出したときに得られる赤外線エネルギーの強度は、A系の場合に右下がりハッチング部分、B系の場合にクロスハッチング部分の面積相当となって、広帯域側(A系)で強く、挟帯域側(B系)で弱くなるから、結果的に検出感度を異ならせることとなり、上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、この実施の形態の場合には、光学波長フィルタ以外の回路構成を同一にでき、且つ、回路特性を揃えることができるので、製造コストを抑制できるというメリットが得られる。
【0030】
図9は、火点位置を大まかに把握できるように改良した炎検出装置の構成図であり、上記実施例と共通する構成要素に同一の符号を付すことにすれば、相違点は、A系の判定部16Aの火災判定結果とB系の判定部16Bの火災判定結果に基づいて火点位置を三つの領域EA〜ECに判定する位置判定部31と、位置判定部31による火災位置の判定結果を火点検出信号として出力する位置情報出力部32とを備えた点にある。
【0031】
図10は、位置判定部31における判定概念図であり、位置判定部31は、A系とB系の火災判定結果の組み合わせ(A系だけの火災判定、AB両系の火災判定、B系だけの火災判定、両系の非火災判定)のうちの(4)を除く、(1)〜(3)について、火点エリアEA、EB及びECにおける火災発生を判定する。
【0032】
これらの組み合わせを図5の検知エリア平面図に当てはめると、(1)はECに相当し、(2)はEBに相当し、(3)はEAに相当し、(4)はエリア外又は無効検知エリアに相当するから、結局、A系の火災判定結果とB系の火災判定結果を利用することにより、火点位置の判定を行うことができる。
【0033】
図11は、火点位置を大まかに把握できるように改良した炎検出装置の他の構成図であり、上記実施例と共通する構成要素に同一の符号を付すことにすれば、相違点は、A系の増幅部15Aの出力信号S1とB系の増幅部15Bの出力信号S2の相関値を六つのしきい値TH3〜TH8と比較して火点位置を三つの領域EA〜ECで判定する位置判定部31′と、火災検出信号の出力時に位置判定部31′による火災位置の判定結果を火点検出信号として出力する位置情報出力部32′とを備えた点にある。
【0034】
図12は、位置判定部31′及び位置情報出力部32′の動作フローチャートであり、このフローでは、まず、S1/S2を変数Rにセット(STEP10)した後、TH3<R<TH4、TH5<R<TH6及びTH7<R<TH8の各判定条件を順次に評価し(STEP11〜STEP13)、それぞれの条件を満たしたときに火災検出位置EA、EB又はECを判定し、火災検出信号の出力に合わせて各検出位置の情報を出力する(STEP14〜STEP16)というものである。
【0035】
S1/S2は、火災を判定した検知系がA系であるか又はB系であるか若しくはその両方の系であるかを判定するための演算値である。すなわち、A系のみで火災を検出した場合はS2は0に近づきRは最大となり、B系のみで火災を検出した場合はS1は0に近づきRは最小となり、AB両系で火災を検出した場合はS1とS2は近づきRが1に近づくから、R(=S1/S2)の値を適当なしきい値と比較することにより、火災発生の位置(領域)を判定することができる。なお、実際の演算処理テクニックでは、S2=0の場合のゼロ除算エラーを回避するために、S1/S2の演算前にRに無限大若しくは事実上無限大とみなすことのできる最大値(以下、便宜的に∞)をセットするが、ここでは特に言及しない。
【0036】
ここで、六つのしきい値(TH3〜TH8)の大小関係は、TH3<TH4<TH5<TH6<TH7<TH8であり、これらのしきい値のレベルを適切に設定することによって、検出位置EAをB系の近距離検知限界線23とA系の近距離検知限界線22の間に置くことができ、また、検出位置EBをA系の近距離検知限界線22とB系の遠距離検知限界線21の間に置くことができ、さらに、検出位置ECをB系の遠距離検知限界線21とA系の遠距離検知限界線20の間に置くことができる(図4参照)。
【0037】
したがって、図9又は図11に示す実施の形態の場合、火点位置を三つの領域(EA、EB、EC)に分けて把握できるので、例えば、放水銃に対する放水ポイントを同領域の大きさで指定することができ、従来技術に比べて狭い範囲への放水指示が可能になるので、放水量を節約して給水設備の簡素化を図ることができるという格別な効果が得られる。
【0038】
なお、上記の各実施の形態において、図13に示すように、二つの検知素子11A、11Bを一つのパッケージ40に収めるようにすると、炎検出装置への実装が容易になるうえ、小型化も図れるから望ましく、さらに、パッケージ40を焦電薄膜型赤外線素子を用いたアレイ構造とすれば、従来型の焦電素子に比べて熱応答がよくなり、良好な感度特性が得られるので好ましい。
【0039】
図14は、二つの検知素子11A、11Bのレイアウト図である。検知素子11A、11Bはできるだけ接近して隣り合うように、且つ、その検知面が同方向を向くように配置されている。具体的には、検知素子11A、11Bは、パッケージ41A、41B内に実装され、パッケージ41A、41Bの前面に設けられた受光窓42A、42Bを介して入射される赤外線を受光する。43A、43Bは光学波長バンドパスフィルタで、受光窓42A、42Bに実装されている。検知素子11A、11Bと受光窓42A、42Bとの位置関係等で決まる検知素子11A、11Bの各々の検知角度(有効検知エリアの広がり角)はともに2θであるが、充分に離れた場所で見た場合、これら二つの検知素子11A、11Bの合成検知角度は正確には≒2θであるものの単一の検知角度2θと等値とみなして差し支えない。
【0040】
なお、検知素子毎の検知角度のバラツキにより、合成検知角度と単一の検知角度との差を無視できない場合は、図15に示すように、二つの検知素子11A、11Bの周囲に適当な遮光部材(有効検知エリア制限手段に相当)50、51を設けることが望ましい。遮光部材50、51の位置や高さなどを調節することにより、二つの検知素子11A、11Bの合成検知角度を2θ′に設定することができる。
【0041】
なお、上記実施の形態にあっては、検知系をA系とB系の二系統にしているが、三系統若しくはそれ以上の多系統にして、各系の検知系毎に検出感度を異ならせてもよい。また、検知系を増やすことで、図9や図11に示す実施の形態の場合、更に細かく火点位置を特定することができる。
【発明の効果】
本発明によれば、赤外線エネルギーを電気信号に変換する検知素子を含む検知系を複数備え、複数の検知系毎の検出感度をそれぞれ異ならせるとともに、複数の検知系毎の検知素子を直近且つ同方向を向くように配置するようにしたので、遠距離検知限界線を遠くに置くことと近距離検知限界線を近くに置くことを両立でき、実質的な有効検知エリアを拡大できる。
【0042】
また、前記検知系は、検知素子の出力信号から炎の赤外線成分を抽出する抽出手段、抽出手段の出力信号を所定の増幅率により増幅して出力する増幅手段、及び、増幅手段から出力される出力信号により火災の判定を行う判定手段を備え、前記複数の検知系の判定手段での判定結果に基づいて火災発生位置を特定する位置判定部、若しくは、前記複数の検知系の増幅手段から出力される出力信号のレベルの相関関係に基づいて火災発生位置を特定する位置判定部を有するので、検知エリアで発生した炎の位置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態のブロック図である。
【図2】A系の検知エリア平面図である。
【図3】B系の検知エリア平面図である。
【図4】検出感度と受信信号レベルの関係を示す図である。
【図5】AB両系を合わせた検知エリア平面図である。
【図6】AB両系のしきい値及び出力飽和レベルのレベル関係図である。
【図7】実施の形態の火災判定フローチャートである。
【図8】有炎燃焼の赤外線エネルギーのスペクトル分布図である。
【図9】火点位置判定のための構成図である。
【図10】火点位置判定の判定概念図である。
【図11】他の実施の形態のブロック図である。
【図12】他の実施の形態の火点位置判定フローチャートである。
【図13】パッケージ化された検知素子を含む要部ブロック構成図である。
【図14】検知素子のレイアウト図である。
【図15】遮光部材を含む検知素子のレイアウト図である。
【図16】従来例の概念的な構成図である。
【図17】有炎燃焼に伴う赤外線エネルギーの放射強度を示すグラフである。
【図18】従来例の検知エリア平面図である。
【符号の説明】
11A 検知素子
11B 検知素子
14A 周波数フィルタ(抽出手段)
14B 周波数フィルタ(抽出手段)
15A 増幅部(増幅手段)
15B 増幅部(増幅手段)
16A 判定部(判定手段)
16B 判定部(判定手段)
31、31′ 位置判定部
50、51 遮光部材(有効検知エリア制限手段)

Claims (9)

  1. 赤外線エネルギーを電気信号に変換する検知素子と、
    前記検知素子の出力信号から炎の赤外線成分を抽出する抽出手段と、
    前記抽出手段の出力信号を所定の増幅率により増幅して出力する増幅手段と、
    前記増幅手段から出力される出力信号により火災の判定を行う判定手段とを含む検知系を複数備え、
    前記複数の検知系毎の検出感度をそれぞれ異ならせるとともに、
    前記複数の検知系毎の検知素子を直近且つ同方向を向くように配置することを特徴とする炎検出装置。
  2. 前記増幅手段の増幅率を前記複数の検知系毎に異ならせることで検出感度をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  3. 検知波長帯域を前記複数の検知系毎に異ならせることで検出感度をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  4. 前記判定手段の火災判定を行うためのしきい値を前記複数の検知系毎に異ならせることで検出感度をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  5. 前記増幅手段の増幅率、前記判定手段の火災判定を行うためのしきい値、検知波長帯域のうちの少なくとも2つを組み合わせて前記複数の検知系毎に異ならせることで検出感度をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  6. 前記複数の検知系の判定手段での判定結果に基づいて火災発生位置を特定する位置判定部を備えたことを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  7. 前記複数の検知系の増幅手段から出力される出力信号のレベルの相関関係に基づいて火災発生位置を特定する位置判定部を備えたことを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  8. 前記複数の検知系毎の有効検知エリアの広がり角を略同一にする有効検知エリア制限手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
  9. 前記複数の検知系毎の検知素子は、一体的にパッケージ化されたことを特徴とする請求項1記載の炎検出装置。
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