JP3778971B2 - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度および/または高抵抗のシースを有する酸化物超電導線材およびその製造方法に関し、特に、ビスマス系酸化物超電導線材の臨界電流密度の向上を図るとともに、高磁界コイルや電流リード、さらには交流用途に有利な線材を提供するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、より高い臨界温度を示す超電導材料として酸化物超電導材料が注目されている。たとえば、ビスマス系酸化物超電導材料には、高い臨界温度を示す相として臨界温度が110Kのものと臨界温度が80Kのものがあることが知られている。110K相は、Bi−Sr−Ca−CuまたはBiの一部をPbで置換したBi−Pb−Sr−Ca−Cu系において2223組成を有しており、他方、80K相は、同様の系において2212組成を有していることが知られている。
【0003】
酸化物超電導体を製造する方法において、酸化物超電導体またはその原料の粉末を金属シースに充填した状態で塑性加工および熱処理を施す方法がある。このプロセスにより、金属シース内の粉末は焼結され超電導体となる。この方法は、パウダー・イン・チューブ法と呼ばれ、たとえば長尺の超電導線材を製造するとき有利に適用される。得られた線材は電力ケーブルや各種コイルへの応用が可能となる。
【0004】
パウダー・イン・チューブ法において、粉末が充填されたシースは、伸線および圧延等の塑性加工を受ける。シースとして純銀を用いた場合、銀の強度は相対的に低いため、1回の塑性加工において粉末に理想的な圧縮力を加えることは望めない。また、純銀シースを用いた線材について酸化物超電導体の焼結のため熱処理を行なう際、銀の軟化温度よりも高い温度を用いるため、焼結後の銀は強度が低くなる。このため、得られた線材を取扱うときや線材からコイルを形成するとき、過大な歪みが加わりやすく、臨界電流密度などの超電導特性が劣化しやすいという課題が生じている。
【0005】
特開平2−8335号公報は、1〜10at%のMnを含有するAg合金製パイプよりなる酸化物超電導線材製造用シースを開示する。このような合金は、Agよりも硬度が高い。同公報は、1〜10at%のMnを含有するAg合金パイプをシースに用いることにより、Agシースよりも肉厚が薄いものを使用することができ、そのため伸線加工が容易となり、酸化物超電導体の酸素欠損の回復が容易である旨記載する。また、同公報は、このシースが、断面圧縮率が2〜50となるごとに100〜300℃の中間焼鈍を加える延伸加工法のシースとして適している旨記載する。しかしながら、このように高濃度のMnを含有するシースは840℃〜850℃の高温での熱処理を必要とするプロセスにおいては超電導体との反応が著しく適していない。
【0006】
日本金属学会秋季大会一般講演概要、1987年10月、p236も、Y−Ba−Cu−O系のパウダー・イン・チューブ法におけるシース材としてAg−2at%MnおよびAg−5at%Mnを開示する。しかし、これらのシースも、840〜850℃の熱処理には適しておらず、特にビスマス系酸化物超電導線を作製する場合、このようなシースでは高い臨界電流密度を得ることは困難である。
【0007】
一方、酸化物超電導体を用いた線材を液体ヘリウムを冷媒として用いる超電導マグネットの電流リードとして使用する場合、電流リードからの熱侵入量を十分抑制することが望まれる。しかし、銀をシースとして用いた線材では、熱伝導率の高い銀を介する熱侵入量は大きく、この改善が望まれる。
【0008】
また、超電導線材に臨界電流密度以下の直流を通電する場合、損失は実質的に発生しないが、交流を通電する場合には、臨界電流密度以下の電流であっても損失が発生する。特に、銀シース線材において、シース部で発生する渦電流損失や結合損失を低減することは課題であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、パウダー・イン・チューブ法によって形成される酸化物超電導線において、上記問題点を解決し、次のような特性を兼ね備える線材を提供することにある。
【0010】
(1) シース内により高い密度で酸化物超電導体が保持されている。
(2) 高い臨界電流密度(JC )を示す。
【0011】
(3) 曲げ歪みや取扱い時の応力、コイルとして使用する時のフープ応力等によってJC 等の超電導特性が低下しにくい。
【0012】
(4) 電流リードとして用いた場合の熱侵入量が小さい。
(5) 交流損失が低い。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の線材は、焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末が充填された、安定化金属からなるシースに、塑性加工および焼結を施して得られる酸化物超電導線材であって、酸化物超電導体からなるフィラメントと、それを覆う安定化金属とからなる。この線材において安定化金属は、機械的強度および比抵抗の少なくともいずれかが銀よりも高い銀合金を含む。この線材は、100K以上の臨界温度および104 A/cm2 以上の臨界電流密度(77K,0T)を有し、かつ引張試験における室温での降伏点が5kg/mm2 以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明において、線材の臨界温度は100K以上、好ましくは105K以上であり、臨界電流密度(77K,0T)は104 A/cm2 以上、好ましくは20,000A/cm2 以上であり、引張試験における室温での降伏点は、5kg/mm2 以上、好ましくは10kg/mm2 以上である。また本発明において、安定化金属シースに、たとえば0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金および/または1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金が含まれる場合、本発明に従う線材は臨界温度直上の温度において0.60μΩ・cm以上の比抵抗を有することができる。本発明に従ってSb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合にも線材の比抵抗を上げることができる。本発明において、臨界温度直上の温度での比抵抗は、電気抵抗の温度変化を測定した時、抵抗が直線領域からはずれて急激に低下し始める温度における比抵抗として定義することができ、引張試験における室温での降伏点は、引張試験において明らかな降伏現象が認められることから容易に定義することができる。臨界温度直上での比抵抗を向上させることによって、交流損失や電流リードとして用いたときの熱侵入量を低減することができる。また、引張試験における降伏点が5kg/mm2 未満の場合、シース内において酸化物超電導体の密度は顕著に向上しておらず、曲げ歪みや取扱い時の応力に対する機械的強度の向上も顕著でない。機械的強度および/または比抵抗を高くするため、安定化金属シースに用いられる銀合金については、後に詳しく述べていく。
【0015】
またもう1つの局面において、本発明に従う酸化物超電導線材は、焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末が充填された安定化金属からなるシースに塑性加工および焼結を施して得られる酸化物超電導線材であって、酸化物超電導体からなるフィラメントと、それを覆う安定化金属とを備え、該安定化金属は、機械的強度および比抵抗の少なくとも何れかが銀よりも高い銀合金を含み、さらに該安定化金属は、フィラメントを直接覆う第1の部分と、第1の部分を覆う第2の部分とを備え、第1の部分は、第2の部分の成分が酸化物超電導体へ拡散し酸化物超電導体と反応することを防止するものであることを特徴とする。このような構造の線材において、100K以上の臨界温度および104 A/cm2 以上の臨界電流密度(77K,0T)を有し、かつ引張試験における室温での降伏点が5kg/mm2 以上である線材を提供することができる。
【0016】
さらなる局面において、本発明に従う酸化物超電導線材は、焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末が充填された安定化金属からなるシースに、塑性加工および焼結を施して得られる酸化物超電導線であって、酸化物超電導体からなる複数のフィラメントと、それを覆う安定化金属とを備え、該安定化金属は、銀よりも機械的強度および比抵抗の高い銀合金を含み、さらに該安定化金属は、フィラメントを直接覆う第1の部分と、第1の部分を覆う第2の部分とを備え、該第1の部分は、複数のフィラメント間に生じる交流損失を低減するため銀よりも比抵抗の高い銀合金からなることを特徴とする。このような構造の線材において、100K以上の臨界温度および104 A/cm2 以上の臨界電流密度(77K,0T)を有し、かつ引張試験における室温での降伏点が5kg/mm2 以上であることを特徴とする線材を提供することができる。
【0017】
本発明に従って酸化物超電導線材の製造方法が提供される。この方法は、焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末が充填された安定化金属シースに、塑性加工および焼結を施す工程を備える。このような方法において、安定化金属シースには、下記の(a)〜(h)からなる群から選択される銀合金が用いられる。またこの方法において、安定化金属シースにMnを含む銀合金を用いる場合、焼結工程は、0.01気圧以上の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれる。一方安定化金属シースにSb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合、焼結工程は、0.08気圧以下の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれる。
【0018】
(a) 0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金、
(b) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金、
(c) 0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金、
(d) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金、
(e) 0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金、
(f) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金、
(g) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金、ならびに
(h) 0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Bi合金。
【0019】
さらに本発明に従って多芯酸化物超電導線材の製造方法が提供される。この方法は、焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末を第1の安定化金属シースに充填し、かつ塑性加工を施して素線を得る工程と、前記素線を複数本、第2の安定化金属シースに嵌合し、次いで塑性加工を施して多芯線を得る工程と、酸化物超電導体の焼結体を得るため多芯線を熱処理する工程とを備える。この方法において第1の安定化金属シースには、Ag、Ag−Zr合金、Ag−Ti合金、Ag−Au合金、ならびに上述した(a)〜(h)からなる群から選択される材料を用いる。第2の安定化金属シースには、Ag、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金、Ag−Zr合金ならびに上述した(a)〜(h)からなる群から選択される材料を用いる。第1および第2の安定化金属シースの少なくともいずれかに上述した群から選択される銀合金が用いられる。したがって、第1および第2の安定化金属シースがともに銀からなることはない。この方法において、安定化金属シースにMnを含む銀合金を用いる場合、熱処理工程は、0.01気圧以上の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれる。一方安定化金属シースにSb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合、熱処理工程は、0.08気圧以下の分圧で酸素を含む雰囲気下において850以下の温度で行なわれる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に従う線材には、安定化材中に酸化物超電導体からなるフィラメントが埋込まれた構造を有するテープ状酸化物超電導単芯線または多芯線がある。酸化物超電導体には、たとえば、イットリウム系、ビスマス系またはタリウム系酸化物超電導体がある。本発明は、特にビスマス系セラミックス超電導体に好ましく適用することができる。本発明の線材は、酸化物超電導体の原料粉末の焼成および粉砕、粉末の安定化材シースへの充填、塑性加工ならびに焼結のプロセスを経て製造される。原料粉末の調製では、超電導体を構成する元素の酸化物または炭酸塩の粉末が所定の配合比で混合され、かつ焼結された後、焼結物が粉砕されて原料粉末を得る。粉末を充填するシースは、後述するような銀合金から形成できる。塑性加工には、伸線加工および圧延加工等が用いられる。圧延加工の後、テープ状にされた線材は、約800℃〜約850℃、好ましくは約840℃〜850℃の温度において焼結が施され、シース材中の超電導体が、高い配向性および高い臨界電流密度を得るようになる。多芯線を製造する場合、伸線加工の後得られた複数の線材が嵌合され、塑性加工および焼結に供される。上述したプロセスにおいて、塑性加工と焼結の組合せにより、高い配向性を有するほぼ単一の超電導相を生成することができる。このプロセスにより製造されたテープ状超電導線のフィラメントは、テープ線の長手方向にわたってほぼ均一な超電導相を有し、超電導相のc軸はテープ線の厚み方向にほぼ平行に配向している。また、フィラメントにおける結晶粒は、テープ線の長手方向に延びるフレーク状であり、結晶粒同士は強く結合している。フレーク状の結晶粒は、テープ線の厚み方向に積層される。テープ状超電導線のサイズは特に限定されるものではないが、たとえば幅1.0mm〜10mm、好ましくは2mm〜6mm、厚み0.05mm〜1mm、好ましくは0.1mm〜0.4mmである。
【0021】
本発明に従う酸化物超電導線材で安定化金属を構成する好ましい銀合金として次の(A)〜(H)を挙げることができる。
【0022】
(A) 0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金で固溶体中にMnの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(B) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金で固溶体中にMnの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(C) 0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金で固溶体中にSbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(D) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金で固溶体中にSbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(E) 0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金で固溶体中にPbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(F) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金で、固溶体中にPbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(G) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金で固溶体中にBiの一部が酸化物粒子として析出しているもの、ならびに
(H) 0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Bi合金で固溶体中にBiの一部が酸化物粒子として析出しているもの。
【0023】
以下、それぞれの銀合金についてより詳しく説明する。
【0024】
本発明において、銀よりも機械的強度および比抵抗の高い安定化金属のための銀合金には、0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金であり、かつMnの一部が酸化物粒子として析出しているものを用いることができる。AgとMnの固溶体を主とする銀合金は、高い強度を有する。またMnの一部が酸化物粒子として析出している場合は、その強度はより高くなる。Mnはあらかじめ酸化させておいても良いが、線材の製造工程中に酸化させることも可能である。この場合、Mnの一部は固溶状態を保つので比抵抗向上に効果がある。この銀合金において、Mnの濃度が0.01at%未満では、高い機械的強度および比抵抗等の所望する特性の向上が得られない。一方、Mnの濃度が1at%以上では、線材の製造プロセスにおいてMnと超電導体との反応が顕著となり、臨界温度、臨界電流密度の優れた線材を得ることはできない。
【0025】
銀合金として、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金であり、かつMnの一部が酸化物粒子として析出しているものを用いることができる。固溶体を主とする銀合金は、高い機械的強度を有する。この銀合金において、Mnの濃度は上述した理由により0.01〜1at%の範囲とされる。この合金ではAuの添加により、電気抵抗のさらなる増加をもたらすことができる。Auの添加量が1at%未満では、より顕著な電気抵抗の増加をもたらすことは困難である。一方、コストと得られる効果とを考慮すれば、Auの濃度は30at%までが望ましい。
【0026】
銀合金として0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金であり、かつSbの少なくとも一部(一部または全部)が酸化物粒子として析出しているものを好ましく用いることができる。SbはMnに比べて酸化物超電導体との反応性が低く、シースの比抵抗をより高めることが可能である。AgとSbの固溶体を主成分とする銀合金は、高い強度を有する。またSbの少なくとも一部が酸化物粒子として析出している場合、強度はより高くなる。Sbはあらかじめ酸化させておいても良いが、線材の製造工程中で酸化させることも可能である。この場合、Sbの少なくとも一部は固溶状態を保つので比抵抗向上に効果がある。比抵抗向上のためには、固溶状態を十分保持することが望ましい。この銀合金においてSbの濃度が0.01at%未満では、高い機械的強度および比抵抗等の所望する特性の向上は得られない。一方、Sbの濃度が5at%以上では、線材の製造プロセスにおいてSbと超電導体との反応が顕著となり、臨界温度、臨界電流密度等の優れた線材を得ることはできない。
【0027】
銀合金として、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金であり、かつSbの少なくとも一部(一部または全部)が酸化物粒子として析出しているものを好ましく用いることができる。固溶体を主成分とする銀合金は、高い機械的強度を有する。この銀合金において、Sbの濃度は上述した理由により0.01〜5at%の範囲とされる。この銀合金では、Auの添加により、電気抵抗のさらなる増加をもたらすことができる。Auの添加量が1at%未満では、より顕著な電気抵抗の増加をもたらすことは困難である。一方、コストと得られる効果とを考慮すれば、Auの濃度は30at%までが望ましい。
【0028】
銀合金として0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金であり、かつPbの少なくとも一部(一部または全部)が酸化物粒子として析出しているものを好ましく用いることができる。AgとPbの固溶体を主成分とする銀合金は、強い強度を有する。またPbの少なくとも一部が酸化物粒子として析出している場合はより高い強度が得られるい。Pbはあらかじめ酸化させておいても良いが、線材の製造工程中で酸化させることも可能である。この場合、Pbの少なくとも一部は固溶状態を保つので比抵抗向上に効果がある。比抵抗向上のためには、固溶状態を十分保持することが望ましい。この銀合金においてPbの濃度が0.01at%未満では、高い機械的強度および比抵抗等の所望する特性の向上は得られない。一方、Pbの濃度が3at%以上では、線材の製造プロセスにおいてPbと超電導体との反応が顕著となり、臨界温度、臨界電流密度等の優れた線材を得ることはできない。
【0029】
銀合金として、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金であり、かつPbの少なくとも一部(一部または全部)が酸化物粒子として析出しているものを好ましく用いることができる。固溶体を主成分とする銀合金は、高い機械的強度を有する。この銀合金において、Pbの濃度は上述した理由により0.01〜3at%の範囲とされる。この銀合金では、Auの添加により、電気抵抗のさらなる増加をもたらすことができる。Auの添加量が1at%未満では、より顕著な電気抵抗の増加をもたらすことは困難である。一方、コストと得られる効果とを考慮すれば、Auの濃度は30at%までが望ましい。
【0030】
銀合金として0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Bi合金であり、かつBiの少なくとも一部(一部または全部)が酸化物粒子として析出しているものを好ましく用いることができる。AgとBiの固溶体を主成分とする銀合金は、高い強度を有する。またBiの少なくとも一部が酸化物粒子として析出している場合、強度はより高くなる。Biはあらかじめ酸化させておいても良いが、線材の製造工程中で酸化させることも可能である。この場合、Biの少なくとも一部は固溶状態を保つので比抵抗向上に効果がある。比抵抗向上のためには、固溶状態を十分保持することが望ましい。この銀合金においてBiの濃度が0.01at%未満では、高い機械的強度および比抵抗等の所望する特性の向上は得られない。一方、Biの濃度が3at%以上では、線材の製造プロセスにおいてBiと超電導体との反応が顕著となり、臨界温度、臨界電流密度等の優れた線材を得ることはできない。
【0031】
銀合金として、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金であり、かつBiの少なくとも一部(一部または全部)が酸化物粒子として析出しているものを好ましく用いることができる。固溶体を主成分とする銀合金は、高い機械的強度を有する。また、Biを酸化物粒子として析出させることで、より高い強度が得られる。この銀合金において、Biの濃度は0.01〜3at%の範囲とされる。Biの濃度が0.01at%未満では、高い機械的強度および比抵抗等の所望する特性の向上は得られない。一方、Biの濃度が3at%以上では、線材の製造プロセスにおいてBiと超電導体との反応が顕著となり、臨界温度、臨界電流密度等の優れた線材を得ることはできない。この銀合金では、Auの添加により、電気抵抗のさらなる増加をもたらすことができる。Auの添加量が1at%未満では、より顕著な電気抵抗の増加をもたらすことは困難である。一方、コストと得られる効果とを考慮すれば、Auの濃度は30at%までが望ましい。Biはあらかじめ酸化させておいても良いが、線材の製造工程中で酸化させることも可能である。一方、比抵抗をより向上させるためには、固溶状態を十分保持することが望ましい。
【0032】
本明細書において、濃度を示す「at%」は、原子百分率(atomic percentage )を表わすものであり、すなわち組成物または混合物中の全原子数に対する特定の原子の割合(百分率)を示すものである。
【0033】
一方、本発明の酸化物超電導線材において、安定化金属は、フィラメントを直接覆う第1の部分と、この第1の部分を覆う第2の部分とを備えることができる。この構造において、第1の部分は、第2の部分の成分が酸化物超電導体へ拡散し、反応することを防止する材料から形成される。このような構造において、第1の部分は、酸化物超電導体との反応性に乏しい材料からなり、酸化物超電導体と実質的に反応しないものである。このような第1の部分は、上述した(A)〜(H)のいずれかからなるか、または、Ag、Ag−Zr合金、Ag−Sb合金、Ag−Ti合金およびAg−Au合金からなる群から選択される材料で形成することが好ましい。複合のため、第1の部分と第2の部分とは異なる材料で形成することができる。第1の部分による保護効果のため、第2の部分には、酸化物超電導体と反応性のある元素を相当量含む材料を用いてもよい。したがって、このような構造とすることで、安定化金属マトリックスに用いることのできる材料の範囲が広がり、線材の機械的強度および/または比抵抗をさらに向上させるべく、より効果的な材料を用いることが可能になる。第2の部分は、たとえば上述した(A)〜(H)、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金およびAg−Zr合金からなる群から選択される少なくとも1つから構成することができる。特に、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金およびAg−Mg−Ni合金は、酸化物超電導体との反応性が高いため第1の部分に用いることは好ましくないが、これらの合金を第2の部分に用いることで、線材の機械的な強度および/または比抵抗をより向上させることができる。
【0034】
また、フィラメントを直接覆う第1の部分と、第1の部分を覆う第2の部分とを備える安定化金属において、第1の部分が複数のフィラメント間に生じる交流損失を低減するため銀よりも比抵抗の高い銀合金からなる構造を採用することができる。この場合、第1の部分は、酸化物超電導体との反応性に乏しく、かつ比抵抗の高い材料から形成されることが好ましい。この点から、第1の部分は、上述した(A)〜(H)の少なくともいずれかから形成することが好ましい。また第1の部分は、Ag−Zr合金、Ag−Ti合金またはAg−Au合金から構成することものできる。一方、第2の部分は、上述した(A)〜(H)、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金およびAg−Zr合金からなる群から選択される材料から構成することができる。安定化金属を複合構造とするため、第1の部分と第2の部分とを異なる材料で形成することができる。
【0035】
上述したAg−Zr合金には、たとえばZrを0.01at%〜5at%含む銀合金、Ag−Ti合金には、たとえばTiを0.01at%〜5at%含む銀合金、Ag−Au合金には、たとえばAuを1at%〜30at%含む銀合金をそれぞれ用いることができる。また、Ag−Mg合金には、たとえばMgを0.01at%〜20at%含む銀合金、Ag−Ni合金には、たとえばNiを0.01at%〜0.5at%含む銀合金、Ag−Mg−Ni合金には、たとえばMgおよびNiをそれぞれ0.01at%〜5at%含む銀合金を用いることができる。
【0036】
また、本発明において、酸化物超電導体のフィラメントを覆うマトリックス全体を銀合金で構成することができる一方、マトリックスの一部を銀合金とし残りを銀とすることもできる。銀合金の配置は、線材の機械的強度、銀合金の酸化物超電導体への影響および線材の交流損失等を考慮して決定することができる。たとえば、銀合金成分の酸化物超電導体への拡散および反応を防止するため、酸化物超電導体フィラメントを直接覆う部分に銀を用い、その周りに銀合金を配置することもできる。すなわち、安定化金属は、フィラメントを直接覆いかつ銀からなる部分と、それを覆いかつ銀合金からなる部分とからなることができる。また、本発明において安定化金属は、フィラメントを直接覆いかつ銀からなる部分と、それを覆いかつ銀合金からなる部分と、それをさらに覆いかつ銀または銀合金からなる部分とからなることもできる。一方、交流損失低減の観点から、フィラメントを銀合金で直接覆うこともできる。この場合、安定化金属は、フィラメントを直接覆いかつ銀合金からなる部分と、それを覆いかつ銀からなる部分とからなることができる。以上のように、安定化金属のマトリックスとして銀と銀合金とを複合させることができる。
【0037】
以上述べてきた安定化金属の複合化は、多芯超電導線において容易に得られる。多芯線の製造では、酸化物超電導体の原料粉末が第1の金属シースに充填され、塑性加工の後素線が得られる。得られた素線を複数本、第2の金属シース内に束ねて充填し、塑性加工および熱処理を経て多芯線が調製される。このとき、第1のシース、第2のシースをそれぞれ形成する材料を選択することによって、銀と銀合金または異なる種類の銀合金の複合化が行なわれる。図1(a)は、第1のシースに銀合金を用い、第2のシースに銀を用いた例を示している。テープ線材1aにおいて、フィラメント2は、たとえばAg−SbまたはAg−Au−Sb合金からなる銀合金3により直接覆われ、その周囲は銀4によって覆われる。図1(b)は、第1のシースに銀、第2のシースに銀合金を用いた例を示して
いる。テープ線材1bにおいてフィラメント2は、銀4によって直接覆われ、その周りはたとえばAg−SbまたはAg−Au−Sb合金の銀合金3によって被覆される。図1(c)は、第1のシースとして内側が銀、外側が銀合金のものを用い、第2のシースとして銀または銀合金を用いる例を示している。テープ線材1cにおいてフィラメント2は銀4によって直接覆われ、銀4はたとえばAg−SbまたはAg−Au−Sbの銀合金3によって覆われる。銀合金3は、銀または上述した銀合金からなる安定化マトリックス5により被覆される。また、上述した構造において、第1および第2の金属シースにそれぞれ銀合金を用いてもよい。
【0038】
また、本発明に従う多芯酸化物超電導線の製造方法では、原料粉末を充填するための第1の安定化金属シースを、上述した(a)〜(h)、Ag−Zr合金、Ag−Ti合金およびAg−Au合金からなる群から選択される銀合金から構成することができる。また、素線を嵌合するための第2の安定化金属シースは、上述した(a)〜(h)、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金およびAg−Zr合金からなる群から選択される銀合金で構成することができる。上述したおとり、安定化金属シースにMnを含む銀合金を用いる場合には、0.01気圧以上の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以上の温度で熱処理することが好ましい。安定化金属シースにSb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合、0.08気圧以下の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で熱処理を行なうのが好ましい。またAg−Zr合金、Ag−Ti合金、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金を用いる場合、熱処理は、たとえば、0.08気圧以下の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で熱処理を行なうことが好ましい。一方、Ag−Au合金を用いる場合、熱処理雰囲気における酸素分圧について特に制限はない。
【0039】
一方、多芯線の製造プロセスにおいて、第1の安定化金属シースを銀合金から構成し、第2の安定化金属シースを銀から構成することができる。また、第1の安定化金属シースを銀から構成する一方、第2の安定化金属シースを銀合金から構成することもできる。一方、第1の安定化金属シースは、原料粉末に直接接触する部分に銀、その他の部分に銀合金を用いた複合材料からなり、第2の安定化金属シースは、銀合金または銀からなることができる。
【0040】
上述した多芯線の製造プロセスにおいて、安定化金属シースとして、予め内部酸化によりMn、Sb、PbおよびBiからなる群から選択される金属が少なくとも一部酸化されたものを好ましく用いることができる。
【0041】
本発明の製造方法では、安定化金属シースに用いる銀合金の種類に応じて、酸素を適当量含有する雰囲気下で熱処理を行なうことにより、銀合金からなる安定化金属シースの酸化、特に内部酸化を引起こし、その機械的強度を増加させる。Mnを含む銀合金を用いる場合、熱処理雰囲気における酸素分圧は0.01気圧以上が好ましい。この場合、酸素分圧が0.01気圧未満ではMnの酸化が十分に進まず、強度の十分な増加を図ることは困難である。また、酸素が0.01気圧未満であると、Mnが酸化物超電導体と反応しやすくなり、得られる線材についてJC 等の超電導特性が劣化する。なお、Mnを含む銀合金を用いる場合、比較的酸素を高い濃度で含む雰囲気、たとえば大気(酸素分圧約0.2気圧)においても熱処理により好ましい特性の線材を得ることができる。一方、Sb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合、熱処理雰囲気における酸素分圧は0.08気圧以下が望ましい。これらの金属の一部を酸化させずに固溶体として保持し、比抵抗を増加させる効果を得ようとするためである。これらの金属はMnよりも酸化されやすい一方、これらの金属の一部を酸化させずに残した方が比抵抗をより増加させることができる。以上の点から、Sb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合、酸素分圧は0.08気圧以下が望ましい。また、熱処理温度は850℃以下、好ましくは840〜850℃である。熱処理のため850℃を超える温度を用いると、得られる線材のJC は顕著に低下する。
【0042】
所定の範囲の濃度でMn、Sb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含むAg−Mn合金、Ag−Au−Mn合金、Ag−Sb合金、Ag−Au−Sb合金、Ag−Pb合金、Ag−Au−Pb合金、Ag−Bi合金およびAg−Au−Bi合金からなる群から選択される合金をシースに用いれば、シース材の強度は高くなる。このように強度の高められたシース材中で、超電導体の原料粉末に圧力をかければ、粉末には圧力がかかりやすく、その充填密度は高められる。粉末の高密度化により、高いJC を示す線材が得られる。
【0043】
また、酸素を含む雰囲気下において熱処理を行なえば、シースの強度は向上し、機械的強度の高い線材が得られる。
【0044】
本発明に従って強度、たとえば引張試験における降伏点の向上した線材は、曲げ歪みや取扱い時の応力に対して超電導特性の劣化が少ない。このような線材は、導体やコイルの作製時に張力を大きく取れるため、精度よく導体またはコイルにおいて配置することができ、ワイヤムーブメントの少ない導体またはコイルをもたらすことができる。また、コイル化した時には電磁力によるフープ応力は線材に引張力として作用するが、降伏点の高い本発明の線材は特別な強化をしなくても高い応力までJC が劣化することがない。本発明によれば、ステンレステープ等による強化が不要なため、コイル電流密度も高くとることが可能である。更に線材の降伏応力は、低温において室温よりも増大し、コイルが使用される77K、20K、4.2Kといった低温では、室温の降伏点よりも高い応力までJC が劣化することがない。
【0045】
また、原料粉末を充填する前に上述した銀合金を含むシースの内部を酸化しておくことにより、シースの強度を高めることができる。このようなシースを用いれば、塑性加工において超電導部の密度は向上しやすく、最終的に得られる線材のJC は大きくなる。また、内部酸化により、超電導部に対して反応し得るMn、Sb、PbおよびBiからなる群から選択される金属の濃度はより低くなり、焼結プロセスにおける超電導部と合金成分との反応はより抑制される。
【0046】
また、シースに上述した銀合金を用いることにより、シースの電気抵抗は高められ、線材に発生する交流損失は低減される。電気抵抗が大きくなると、ウィーデマン−フランツの法則により、熱伝導度も小さくなる。したがって、本発明を電流リードに応用した場合、熱侵入量は小さくなる。
【0047】
一方、フィラメントを直接覆う第1の安定化金属に拡散防止機能および/または交流損失低減機能を持たせ、それを任意の第2の安定化金属で覆うことにより、機械的強度、比抵抗、超電導特性などの点でより優れた線材を得ることができる。第1の安定化金属に拡散防止機能を持たせることで、第2の安定化金属として選択される材料の範囲は広がり、線材の機械的強度および比抵抗の増加のため、より効果の高い材料を採用できるようになる。また、第1の安定化金属に比抵抗の高い銀合金を用いることで、線材の交流損失は効果的に低減される。
【0048】
また、上述したように銀と銀合金を複合することにより、安定性が高く、かつ交流損失の低減された線材が得られる。複合方法は、たとえば上述したとおりであり、フィラメントと直接接触する部分に銀を用い、その周りに銀合金を配置すれば、合金成分との反応による超電導特性の劣化は阻止される。一方、フィラメントの周りに銀合金を配置すれば、線材の交流損失、特に結合損失は効果的に低減される。また、多芯線において、粉末充填用のシースに内側が銀、外側が銀合金のものを用いれば、超電導特性の劣化を防ぎ、かつ結合損失を低減することができる。
【0049】
本発明は、特にBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系等のビスマス系酸化物超電導体を用いた線材に適用され、中でも(Bi,Pb)2 Sr2 Ca2 Cu3 O10-X(0≦X<1)等のビスマス系2223酸化物超電導相をフィラメントとして用いる線材に適用される。
【0050】
【実施例】
例1
Bi2 O3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを用いて、Bi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2:2:3の組成比を有する粉末を配合した、この粉末を700℃で12時間、および800℃で8時間熱処理を行なった後、850℃で8時間の熱処理をさらに行なった。それぞれの熱処理の後、配合物はボールミルで粉砕した。粉砕により得られた粉末を800℃で15分間加熱処理して脱気した後、外径12mmφ、内径10mmφの銀合金パイプに充填した。用いた銀合金パイプの組成を表1に示す。また比較のため、銀パイプも用いた。粉末を充填したパイプを1.02mmφまで伸線した後、得られた線材を切断し、61本の線材を外径12mmφ、内径9mmφの最初と同じ組成を有するパイプに嵌合した。これを1.15mmφまで伸線した後、厚さ0.24mmまで圧延した。圧延した線材を表1に示す温度で50時間、それぞれ1次熱処理した後、さらに厚さ0.2mmまで圧延した。次に、表1に記載の温度でそれぞれ50時間2次熱処理を行なった。なお1次熱処理、2次熱処理とも大気中で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、臨界温度直上の温度(臨界温度+1K)での比抵抗、および液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。さらに室温で引張試験を行ない降伏点を求めた。降伏点の測定のため、作製した線材から長さ150mmをサンプリングし、チャック間距離100mm、引張速度20mm/hでインストロン型試験機により室温で引張試験を行なった。降伏点は、図2に示すような荷重−変位チャートから降伏荷重を決定し、それを引張前の断面積で割り算することにより求めた。それらの結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
例2
例1のNo.1の組成を有する銀合金パイプを用い、1次および2次熱処理を20Torrの真空中(酸素分圧0.005気圧)で各々835℃、840℃で行なった以外は例1と同様にして線材を作製した。得られた線材のTC は100Kであり、JC は10,000A/cm2 であった。このように得られた線材の超電導特性は例1のものより劣っていた。また、得られた線材の室温での降伏強度も6kg/mm2 と小さかった。
【0053】
例3
予め大気中で850℃×70時間の熱処理を行なったAg−0.5at%Mn−10at%Au合金パイプを用い、例1のNo.6と同様にして線材を作製した。得られた線材のTC および降伏点はNo.6と同じであった。一方、シース中の超電導部の密度は例1のNo.6が6.1g/cm3 であったのに対し、本例では6.35g/cm3 と高く、JC も26,000A/cm2 と高い値が得られた。
【0054】
例4
Bi2 O3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを用いてBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2:2:3の組成比を有する粉末を配合した。この粉末を、700℃で12時間、800℃で8時間、850℃で8時間、順に熱処理した。それぞれの熱処理の後、配合物はボールミルで粉砕した。粉砕して得られた粉末を800℃で15分間加熱処理して脱気した後、外径12mmφ、内径10mmφの銀合金パイプに充填した。用いた銀合金パイプの組成を表2に示す。また比較のため、銀パイプを用いた実験も行なった。粉末を充填したものを1.02mmφまで伸線した後、得られた線材を切断し、61本の線材を外径12mmφ、内径9mmφの最初と同じ組成を有するパイプに嵌合した。これを1.15mmφまで伸線した後、厚さ0.24mmまで圧延した。圧延した線材を表2にそれぞれ示す温度で50時間、1次熱処理した後、さらに厚さ0.2mmまで圧延した。次に、表2に記載の温度で50時間の2次熱処理を行なった。なお1次熱処理、2次熱処理とも大気中で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、臨界温度直上の温度(臨界温度+1K)での比抵抗、および液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。さらに、上述した通り室温において引張試験を行ない降伏点を求めた。それらの結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
例5
例4におけるNo.1のパイプを用いて、1次および2次熱処理を20Torrの真空中(酸素分圧0.05気圧)で各々835℃、840℃で行なった以外は例4と同様にして線材を作製した。得られた線材のTC は106K、JC は20,000A/cm2 であり、TC 直上の比抵抗は1.5μΩ・cmと高い値が得られた。
【0057】
例6
予め大気中で850℃×70時間の熱処理を施したAg−0.5at%Sb−10at%Au合金パイプを用い、例4のNo.6と同様にして線材を作製した。得られた線材についてTC および降伏点は例4のNo.6と同じであったが、シース中の超電導部の密度は例4のNo.6が6.1g/cm3 であったのに対し、本例では6.35g/cm3 と高く、JC も42,000A/cm2 と高い値が得られた。
【0058】
例7
Bi2 O3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを用いてBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2:2:3の組成比を有する粉末を配合した。この粉末を、700℃で12時間、800℃で8時間、850℃で8時間、順に熱処理した。それぞれの熱処理の後、配合物はボールミルで粉砕した。粉砕して得られた粉末を800℃で15分間加熱処理して脱気した後、外径12mmφ、内径10mmφの銀合金パイプに充填した。用いた銀合金パイプの組成を表3に示す。また比較のため、銀パイプを用いた実験も行なった。粉末を充填したものを1.02mmφまで伸線した後、得られた線材を切断し、61本の線材を外径12mmφ、内径9mmφの最初と同じ組成を有するパイプに嵌合した。これを1.15mmφまで伸線した後、厚さ0.24mmまで圧延した。圧延した線材を表3にそれぞれ示す温度で50時間、1次熱処理した後、さらに厚さ0.2mmまで圧延した。次に、表3に記載の温度で50時間の2次熱処理を行なった。なお1次熱処理、2次熱処理とも大気中で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、臨界温度直上の温度(臨界温度+1K)での比抵抗、および液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。さらに、上述した通り室温において引張試験を行ない降伏点を求めた。それらの結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
例8
例7におけるNo.1のパイプを用いて、1次および2次熱処理を20Torrの真空中(酸素分圧0.01気圧)で各々835℃、840℃で行なった以外は例7と同様にして線材を作製した。得られた線材のTC は105K、JC は20,000A/cm2 であり、TC 直上の比抵抗は1.8μΩ・cmと高い値が得られた。
【0061】
例9
予め大気中で850℃×70時間の熱処理を施したAg−0.5at%Pb−10at%Au合金パイプを用い、例7のNo.6と同様にして線材を作製した。得られた線材についてTC および降伏点は例7のNo.6と同じであったが、シース中の超電導部の密度は例7のNo.6が6.1g/cm3 であったのに対し、本例では6.35g/cm3 と高く、JC も26,000A/cm2 と高い値が得られた。
【0062】
例10
Bi2 O3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを用いてBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2:2:3の組成比を有する粉末を配合した。この粉末を、700℃で12時間、800℃で8時間、850℃で8時間、順に熱処理した。それぞれの熱処理の後、配合物はボールミルで粉砕した。粉砕して得られた粉末を800℃で15分間加熱処理して脱気した後、外径12mmφ、内径10mmφの銀合金パイプに充填した。用いた銀合金パイプの組成を表4に示す。また比較のため、銀パイプを用いた実験も行なった。粉末を充填したものを1.02mmφまで伸線した後、得られた線材を切断し、61本の線材を外径12mmφ、内径9mmφの最初と同じ組成を有するパイプに嵌合した。これを1.15mmφまで伸線した後、厚さ0.24mmまで圧延した。圧延した線材を表4にそれぞれ示す温度で50時間、1次熱処理した後、さらに厚さ0.2mmまで圧延した。次に、表4に記載の温度で50時間の2次熱処理を行なった。なお1次熱処理、2次熱処理とも大気中で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、臨界温度直上の温度(臨界温度+1K)での比抵抗、および液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。さらに、上述した通り室温において引張試験を行ない降伏点を求めた。それらの結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
例11
例10におけるNo.1のパイプを用いて、1次および2次熱処理を20Torrの真空中(酸素分圧0.01気圧)で各々835℃、840℃で行なった以外は例10と同様にして線材を作製した。得られた線材のTC は108K、JC は20,000A/cm2 であり、TC 直上の比抵抗は0.8μΩ・cmと高い値が得られた。
【0065】
例12
粉末充填用金属シースと素線嵌合用金属シースとをそれぞれ異なる材料から構成し、例4と同様にして線材を作製した。これらのシースの組合せは表5に示すとおりである。シースの組成については、添加元素のat%のみを記載しており、残部は銀である。1次熱処理および2次熱処理は、それぞれ845℃、840℃で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。また、TC 直上の比抵抗を測定し、さらに室温において上述した通り引張試験を行ない、降伏点を求めた。これらの結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
例13
粉末充填用金属シースとして、内側がAg、外側がAg−3at%Sb合金である銀合金シース、嵌合用金属シースとしてAgシースを用い、例12と同様に線材を作製した。得られた線材のTC は110K、JC は20,000A/cm2 、降伏点は13.0kg/mm2 と高い値が得られた。交流損失は、10Aの通電時で1.5×10-4W/mであり、純銀シースを用いた場合(2.9×10-3W/m)よりも低い値が得られた。
【0068】
例14
粉末充填用金属シースと素線嵌合用金属シースとをそれぞれ異なる材料から構成し、例7と同様にして線材を作製した。これらのシースの組合せは表6に示すとおりである。シースの組成については、添加元素のat%のみを記載しており、残部は銀である。1次熱処理および2次熱処理は、それぞれ845℃、840℃で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。また、TC 直上の比抵抗を測定し、さらに室温において上述した通り引張試験を行ない、降伏点を求めた。これらの結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
例15
粉末充填用金属シースと素線嵌合用金属シースとをそれぞれ異なる材料から構成し、例10と同様にして線材を作製した。これらのシースの組合せは表7に示すとおりである。シースの組成について表には添加元素のat%のみを記載しており、残部は銀である。1次熱処理および2次熱処理は、それぞれ845℃、840℃で行なった。得られた線材について、臨界温度(TC )、液体窒素中における外部磁場印加なしの状態での臨界電流密度(JC )を直流4端子法により測定した。また、TC 直上の比抵抗を測定し、さらに室温において上述した通り引張試験を行ない、降伏点を求めた。これらの結果を表7に示す。
【0071】
【表7】
【0072】
例16
粉末充填用金属シースとして、内側がAg、外側がAg−3at%Bi合金である銀合金シース、嵌合用金属シースとしてAgシースを用い、例15と同様に線材を作製した。得られた線材のTC は110K、JC は20,000A/cm2 、降伏点は13.0kg/mm2 と高い値が得られた。交流損失は、10Aの通電時で1.5×10-4W/mであり、純銀シースを用いた場合(2.9×10-3W/m)よりも低い値が得られた。
【0073】
上述したプロセスによって製造されたいくつかの線材について、それらの引張応力特性を図3に、Tcの測定結果を図4にそれぞれ示す。図3において、横軸は張力(kg/mm2 )、縦軸は、張力のかかっていないときの臨界電流(Ic0 )に対する張力がかけられたときの臨界電流(Ic)の比(Ic/Ic0 )を示している。図中、Ag、Ag−Mn0.1%およびAg−Sb0.3%は、それらの材料を充填用および嵌合用シースにそれぞれ用いて作製した多芯酸化物超電導線を表しており、Ag/Ag−Mn0.5%は、充填用シースにAg、嵌合用シースにAg−Mn0.5%を用いた多芯酸化物超電導線を表している。パーセンテージはすべてat%である。製造プロセスにおいて、1次熱処理は大気中845℃×50時間、2次熱処理は大気中840℃×50時間であった。また図4は、それぞれの線材について温度(K)と抵抗(μΩcm)との関係を示している。
【0074】
さらに、異なるシース材を用いて以下に示す実験を行なった。
例17
Bi2 O3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuOを用いてBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2:2:3の組成比を有する粉末を配合した。この粉末を700℃で12時間、800℃で8時間、850℃で8時間、熱処理を行なった。その後、ボールミルで粉砕した粉末を800℃で15分加熱処理して脱気した後、外径12mmφ、内径10mmφの銀合金パイプに充填した。使用した銀合金パイプの組成を、以下に示す表8〜13では縦の列に「内側」として表し、表14では「第1」として表している。その後、1.02mmφまで伸線した後、得られた線材を切断し、61本の線材を外径12mmφ、内径10mmφの銀合金パイプに嵌合した。使用した合金パイプの組成を、以下に示す表8〜13では横の行に「外皮」として表し、表14では「第2」として表わす。それを1.15mmφまで伸線した後、厚さ0.25mmまで圧延した。その後845℃、50時間大気中において熱処理した後、さらに厚さ0.2mmまで圧延した。次に840℃、50時間、大気中において熱処理を行なった。得られた線材について、臨界温度、115Kでの比抵抗、および液体窒素中での自己磁場下での臨界電流密度(Jc)を直流4端子法で測定した。さらに室温において引張試験を行ない降伏点を求めた。結果を表8〜14に示す。
【0075】
【表8】
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【0079】
【表12】
【0080】
【表13】
【0081】
【表14】
【0082】
例18
熱処理を酸素分圧0.04気圧下で行なった以外は、例17と同様の材料を用い同様の工程において多芯酸化物超電導線材を作製した。得られた線材について臨界電流密度(Jc)および臨界温度直上(Tc+1K)での比抵抗を測定した。結果を表15に示す。表15No.1〜13の線材を作製するため用いたシース材料は表14に示すものと同じである。表15では、第2のシース材料の記載を省略している。
【0083】
【表15】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う線材の具体例を模式的に示す断面図である。
【図2】引張試験における降伏点を求めるための荷重−変位チャートを示す図である。
【図3】実施例において得られた線材の耐引張応力特性を示す図である。
【図4】実施例で得られた線材について、温度と比抵抗の関係を示す図である。
【符号の説明】
1a、1b、1c テープ線材
2 フィラメント
3 銀合金
4 銀
5 銀または銀合金
Claims (9)
- 焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末が充填された安定化金属からなるシースに、塑性加工および焼結を施して得られる酸化物超電導線材であって、
酸化物超電導体からなる複数のフィラメントと、それらを覆う安定化金属とを備え、
前記安定化金属は、各前記フィラメントを直接覆う銀からなる第1の部分と、各前記フィラメントごとに前記第1の部分の全周を覆いかつ銀よりも機械的強度および比抵抗の少なくともいずれかが高い銀合金からなる第2の部分を含み、
前記銀からなる第1の部分は、前記第2の部分の銀合金の成分が前記酸化物超電導体へ拡散し前記酸化物超電導体と反応することを防止するものであり、
前記安定化金属は、前記第2の部分を覆いかつ銀または銀合金からなる第3の部分をさらに含み、
100K以上の臨界温度および104 A/cm2 以上の臨界電流密度(77K,0T)を有し、かつ引張試験における室温での降伏点が5kg/mm2 以上であることを特徴とする、酸化物超電導線材。 - 焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末が充填された安定化金属からなるシースに、塑性加工および焼結を施して得られる酸化物超電導線であって、
酸化物超電導体からなる複数のフィラメントと、それを覆う安定化金属とを備え、
前記安定化金属は、銀よりも機械的強度および比抵抗の高い銀合金を含み、さらに
前記安定化金属は、前記フィラメントを直接覆う第1の部分と、前記第1の部分を覆う第2の部分とを備え、
前記第1の部分は、前記複数のフィラメント間に生じる交流損失を低減するため、銀よりも比抵抗の高い銀合金からなり、
100K以上の臨界温度および104 A/cm2 以上の臨界電流密度(77K,0T)を有し、かつ引張試験における室温での降伏点が5kg/mm2 以上であることを特徴とする、酸化物超電導線材。 - 前記第2の部分が銀からなることを特徴とする、請求項2記載の酸化物超電導線材。
- 前記第1の部分が、
(A) 0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金で固溶体中にMnの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(B) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金で固溶体中にMnの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(C) 0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金で固溶体中にSbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(D) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金で固溶体中にSbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(E) 0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金で固溶体中にPbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(F) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金で、固溶体中にPbの一部が酸化物粒子として析出しているもの、
(G) 1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金で、固溶体中にBiの一部が酸化物粒子として析出しているもの、および
(H) Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金、およびAg−Zr合金、
からなる群から選択される少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項2または3記載の酸化物超電導線材。 - 前記第1の部分が、Ag−Sb合金、Ag−Zr合金、Ag−Ti合金およびAg−Au合金からなる群から選択される少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項2または3記載の酸化物超電導線材。
- 前記安定化金属が、前記第2の部分を覆い、かつ銀または銀合金からなる第3の部分を備えることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載の酸化物超電導線材。
- 焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末を第1の安定化金属シースに充填し、かつ塑性加工を施して素線を得る工程と、前記素線の複数本を第2の安定化金属シースに嵌合し、次いで塑性加工を施して多芯線を得る工程と、酸化物超電導体の焼結体を得るため前記多芯線を熱処理する工程とを備える、酸化物超電導線材の製造方法において、
前記第1の安定化金属シースに、Ag−Zr合金、Ag−Ti合金、Ag−Au合金、0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金、0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金、0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金、0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Bi合金、ならびに1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金からなる群から選択される銀合金を用い、
前記第2の安定化金属シースに、Agを用い、
前記安定化金属シースにMnを含む銀合金を用いる場合に前記熱処理工程が、0.01気圧以上の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれ、一方前記安定化金属シースにSb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合に前記熱処理工程が、0.08気圧以下の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれることを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。 - 焼結により酸化物超電導体を生成し得る原料粉末を第1の安定化金属シースに充填し、かつ塑性加工を施して素線を得る工程と、前記素線の複数本を第2の安定化金属シースに嵌合し、次いで塑性加工を施して多芯線を得る工程と、酸化物超電導体の焼結体を得るため前記多芯線を熱処理する工程とを備える、酸化物超電導線材の製造方法において、
前記第1の安定化金属シースは、原料粉末に直接接触する内周層に銀を用い、かつその外周層にAg−Zr合金、Ag−Ti合金、Ag−Au合金、0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金、0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金、0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金、0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Bi合金、ならびに1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金からなる群から選択される銀合金を用いた複合材料からなり、
前記第2の安定化金属シースに、Ag、Ag−Mg合金、Ag−Ni合金、Ag−Mg−Ni合金、Ag−Zr合金、0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Mn合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上1at%未満のMnを含むAg−Au−Mn合金、0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Sb合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上5at%以下のSbを含むAg−Au−Sb合金、0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Pb合金、1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のPbを含むAg−Au−Pb合金、0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Bi合金、ならびに1at%以上30at%以下のAuおよび0.01at%以上3at%以下のBiを含むAg−Au−Bi合金からなる群から選択される材料を用い、
前記安定化金属シースにMnを含む銀合金を用いる場合に前記熱処理工程が、0.01気圧以上の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれ、一方前記安定化金属シースにSb、PbおよびBiからなる群から選択される金属を含む銀合金を用いる場合に前記熱処理工程が、0.08気圧以下の分圧で酸素を含む雰囲気下において850℃以下の温度で行なわれることを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。 - 前記安定化金属シースとして、あらかじめ内部酸化によりMn、Sb、PbおよびBiからなる群から選択される金属が少なくとも一部酸化されたものを用いることを特徴とする、請求項7または8記載の製造方法。
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