JP3778899B2 - 給電計画システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定需要予測モデルを用いて予測した来期における需要部の受電量である来期予測受電量に基づいて、前記来期における前記需要部への給電量である計画給電量を決定する計画給電量決定手段を備えた給電計画システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
電力市場の部分自由化により、特定規模電気事業者は、自由化対象の大口の需要家(特定規模需要家:原則使用規模2,000KW以上で20KV特別高圧送電線から受電する需要家)に小売託送することが可能となった。
【0003】
よって、需要家における電力調達形態としては、従来からある一般電気事業者(以下、「電力会社」と呼ぶ。)及び新規参入した特定規模電気事業者の何れか一方から電力を調達する形態のほかに、例えば、需要家の受電量の一部分を、上記特定規模電気事業者から託送される比較的安価な電力により補い、需要家の受電量に対する前記特定規模電気事業者の給電量の不足分を、上記電力会社から給電される電力により補うという部分供給形態を採用することが可能である。
【0004】
後者の部分供給形態では、需要家に対する特定規模電気事業者からの給電量を事前に決定する必要がある。即ち、上記部分供給形態における電力小売託送のルールでは、特定規模電気事業者は、電力託送実施日の前日の正午までに、電力託送実施日の0時から24時までの給電量に関する給電計画を、送電線を運営管理する電力会社等に申告する必要がある。したがって、特定規模電気事業者は、電力託送実施日の前日の正午までの適当な時期に、電力託送実施日において需要家に託送する計画給電量を決定し、電力託送実施日において、前日に決定した計画給電量の電力を需要家に託送する必要がある。
【0005】
上記計画給電量を決定するための給電計画システムは、電力託送実施日の0時から24時までにおける需要家(需要部)の受電量である予測受電量を、所定の需要予測モデルを用いて予測し、このように予測した予測受電量に基づいて、電力託送実施日において需要家に対して給電する計画給電量を決定する計画給電量決定手段として機能するコンピュータで構成される。
【0006】
尚、上記需要予測モデルとは、翌日等の予測対象時期における需要家の受電量を予測するための関数や計算式を示し、この需要予測モデルと、それに加えて、予測対象時期の季節、月、曜日、最高気温、最低気温等の説明変数とを用いて、予測対象時期における需要家の予測受電量やその誤差幅(最大値及び最小値等)を導出することができる。
【0007】
従来の給電計画システムの計画給電量決定手段は、上記需要予測モデルを用いて予測した電力託送実施日の予測受電量が、電力託送実施日における実際の受電量であると仮定し、所定の時間帯毎等に設定されている上記特定規模電気事業者の電力価格と上記電力会社の電力価格とを比較して、電力託送実施日における各時間帯の電力の調達先が上記電力価格が安い方となるように、電力託送実施日における特定規模電気事業者からの計画給電量を決定するように構成される場合がある。そして、このように計画給電量を決定することで、電力託送実施日における需要家の電力調達コストが見かけ上最小化されることになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように需要予測モデルにより予測した電力託送実施日の予測受電量は、予測誤差を含んだものであるため、電力託送実施日における実際の受電量に対して乖離が生じることがある。
【0009】
したがって、電力託送実施日において、上記実際の受電量が上記予測受電量よりも大きくなった場合には、その誤差分の電力を、電力会社から比較的高い電力価格で調達する必要があり、上記特定規模電気事業者から電力を調達する場合に対する電力価格差により、上記予測受電量が正確であったときよりも電力調達コストが増加することがある。逆に、上記実際の受電量が上記予測受電量よりも小さくなった場合でも、需要家はその差分の電力に対する料金を、実際には受電していないにも関わらず特定規模電気事業者に支払うこととなるため、上記予測受電量が正確であったときよりも電力調達コストが増加することがある。
【0010】
したがって、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電力調達コストの増加リスクができるだけ最小となるように、給電計画を行うことができる給電計画システムを実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係る給電計画システムの特徴構成は、特定需要予測モデルを用いて予測した来期における需要部の受電量である来期予測受電量に基づいて、前記来期における前記需要部への給電量である計画給電量を決定する計画給電量決定手段を備えた給電計画システムであって、
前記特定需要予測モデルを用いて予測した既往期における前記需要部の受電量である既往期予測受電量と、前記既往期における前記需要部の実際の受電量である既往期実受電量とを比較して、前記特定需要予測モデルの予測精度を導出する予測精度導出手段を備え、
前記計画給電量決定手段が、前記特定需要予測モデルにより予測した前記来期予測受電量と、前記特定需要予測モデルの予測精度と、前記来期における前記需要部の受電量に対する前記計画給電量の過不足分についての電力価格情報とを用いて、前記過不足に起因するリスク量についての計量を行い、前記リスク量が最適となるように計画給電量を決定する点にある。
尚、本願において、所定の電力託送実施期間(現状では1日(0時から24時まで))毎に電力託送を実施するものとし、過去の電力託送実施期間を既往期と呼び、次の電力託送実施期間を来期と呼ぶ。
【0012】
即ち、上記特徴構成の給電計画システムによれば、上記予測精度導出手段により、需要部の既往期に対して特定需要予測モデルを用いた需要予測を行い、その既往期の実際の既往期実受電量に対する既往期予測受電量の偏差である予測誤差、又は、複数の既往期について求めた複数の上記予測誤差から求めた予測誤差の確率分布、又は、複数の上記予測誤差の平均、標準偏差、歪度、尖度等のモーメント等を、上記特定需要予測モデルの需要部に対応した予測精度として導出することができる。
【0013】
よって、上記来期予測受電量と上記予測精度とから認識される来期予測受電量の確率分布を、来期における需要部の受電量の確率分布と仮定し、上記電力価格情報に基づいて、来期における需要部の受電量に対する計画給電量の過不足に起因する電力調達コスト等に関するリスク量を把握することができる。
【0014】
したがって、上記計画給電量決定手段により、上記リスク量についての解析又はシミュレーション等による計量を行うことで、上記リスク量が最小又は所定の範囲内等の最適な状態となるように計画給電量を決定することができる。
【0015】
本発明に係る給電計画システムの更なる特徴構成は、前記計画給電量決定手段が、所定の確率で発生し得る最大リスク量が許容値以下となる範囲内で前記需要部における電力調達コストが最小となるように前記計画給電量を決定する点にある。
【0016】
即ち、上記特徴構成の給電計画システムによれば、上記所定の確率で発生し得る最大リスク量を導出し、その最大リスク量が所定の許容値以下となる制約条件下において、上記電力調達コストが最小となるように計画給電量を決定することで、来期における電力調達コストが許容以上に増加する可能性をできるだけ小さくすることができる。
【0017】
本発明に係る給電計画システムの更なる特徴構成は、前記来期における前記需要部の受電量に対する前記計画給電量の過不足により発生する電力調達コストの増加リスクに関する量である点にある。
【0018】
即ち、上記特徴構成の給電計画システムによれば、計画受電量が来期における需要部の受電量と一致した場合の電力調達コストを基準に、計画受電量の過不足により需要部において余計に支払われる電力調達コストの増加分を示す上記増加リスクに関する量をリスク量とし、そのリスク量が最小又は所定の範囲内となるなどの最適な状態となるように、計画給電量を決定することで、来期における電力調達コストの増加リスクを最小又は所定の範囲内とするように給電計画を行うことができる。
【0019】
本発明に係る給電計画システムの更なる特徴構成は、前記予測精度導出手段が、複数種の需要予測モデルの前記予測精度を夫々導出し、前記予測精度が最適となる需要予測モデルを前記特定需要予測モデルとして選定する点にある。
【0020】
即ち、上記特徴構成の給電計画システムによれば、複数種の需要予測モデルを用いた需要予測を行うことができる場合において、上記予測精度導出手段により、上記複数種の需要予測モデルの内、予測精度が最適である需要予測モデルを、特定需要予測モデルとして選定することで、需要家の来期予測受電量を需要家に対応して正確に予測することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る給電計画システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、特定規模電気事業者(以下、「PPS」(Power Producer and Supplier)と呼ぶ。)20が管理する発電設備21が発電した電力を、需要家10(需要部の一例)の電力負荷11へ、電力会社50が運営管理する送電線55を利用して託送する電力小売託送事業において、需要家10の実際の実受電量の一部分を、上記PPS20の発電設備21から給電される比較的安価な電力により補い、需要家10の実受電量に対する上記PPS20からの実給電量の不足分に相当するインバランス電力を、上記電力会社50の発電所51からの給電により補うという部分供給形態の様子を示した概略構成図である。
図2は、本発明に係る給電計画システム(以下、本システムと略称する。)31の概略構成及び外部通信状態を示す図である。
尚、上記インバランス電力は、電力会社50ではなく、他の電気事業者から需要家10に給電するように構成しても構わない。
【0022】
そして、上記部分供給形態の電力小売託送事業において、上記PPS20は、電力託送実施日において需要家10に給電する計画給電量を決定するための本システム31を用い、電力託送実施日の前日の正午までに、翌日の電力託送実施日の0時から24時まで(以下、「来期」と呼ぶ。)の給電量である計画給電量を決定し、その計画給電量に関する給電計画を電力会社50に申告する。そして、上記PPS20は、来期において前日に決定した計画給電量に対して同時同量を達成するように発電設備21を運転制御し、送電線55を介して需要家10の電力負荷11に給電する。
【0023】
一方、電力会社50は、送電線55の系統安定性を確保するように、発電所51から送電線55への給電量を調整することで、需要家10の実受電量に対するPPS20からの給電量の不足分に相当するインバランス電力を、需要家10の電力需要に追従して給電することになる。
【0024】
また、通常、上記PPS20から需要家10へ給電される電力の価格(以下、「PPS電力価格」と呼ぶ。)は、上記電力会社50から需要家10へ給電されるインバランス電力の価格(以下、「インバランス電力価格」と呼ぶ。)よりも安く設定されており、この価格差が、需要家10に対して、電力調達先を既存の電力会社50から新規参入のPPS20に切り替えるインセンティブとして働く。
【0025】
本システム31は、図1及び図2に示すように、需要家10側に設置された需要家端末13及び電力会社50側に設置された電力会社受付端末52等との間で、インターネットやプライベートネットワーク等の公知の通信ネットワーク60を介して通信可能に構成されており、更に、各種データを格納した複数のデータベース(以下、DBと略称する。)が割り当てられた不揮発性の記憶装置32、及び、発電設備21の給電制御を行うための給電制御部33との間で通信線を介して通信可能に構成されている。
尚、本システム31は、所定のコンピュータプログラムを実行することにより各種手段として機能するコンピュータシステムで構成されている。
【0026】
また、上記記憶装置32には、需要家10の過去の電力託送実施日(以下、「既往期」と呼ぶ。)における各需要家10の実際の単位時間毎の受電量(以下、「既往期実受電量」と呼ぶ。)等を格納した受電情報DB32aと、PPS20が管理する発電設備21の既往期における実際の単位時間毎の給電量(以下、「既往期実給電量」と呼ぶ。)等を格納した給電情報DB32bと、需要家10の電力託送実施日における受電量を予測するための複数種の需要予測モデル等を格納した需要予測モデルDB32cと、上記受電量を予測するために用いる説明変数となる各電力託送実施日の日付、季節、曜日、最高気温、最低気温等の説明変数等を格納した予測用説明変数DB32dとが割り当てられている。
【0027】
上記需要予測モデルDB32cに格納されている複数種の需要予測モデルとは、予測対象日における需要家10の予測受電量を予測するための回帰分析の種類等の関数や計算式を示し、この需要予測モデルと、それに加えて、予測説明変数DB32dに格納されている予測対象日の説明変数とを用いて、予測対象日における需要家10の予測受電量やその誤差幅(最大値及び最小値等)を導出することができる。
【0028】
PPS20が発電設備21において発電した電力を需要家10に託送する場合において、需要家10側の送電線55から分岐した電力線上には検針メータ12が設置され、一方、PPS20側の送電線55への電力線上には計測メータ22が設置される。
【0029】
需要家10側に設置されている検針メータ12は、送電線55から電力負荷11への受電量の積算値を計測するように構成されている。
【0030】
需要家10側に設置された需要家端末13は、通信ネットワーク60に接続された通信部13aを有するコンピュータからなり、更に、検針メータ12により単位時間毎の受電量を計測し、その単位時間毎の受電量に関する検針データを本システム31に送信する受電量送信手段13bとして機能するように構成されている。
【0031】
一方、電力会社50側に設置された電力会社受付端末52は、通信ネットワーク60に接続された通信部52aを有するコンピュータからなり、更に、電力託送実施日の前日の正午までに、PPS20側から送信されてきた電力託送実施日の計画給電量に関する給電計画を受信して、送電線55を利用した電力託送の実施の申請を受け付ける給電計画受付手段52bとして機能し、このように受け付けたPPS20の給電計画は、電力託送実施日における各PPS20の実給電量及び需要家10の実受電量の監視及びインバランス電力の料金清算等に用いられる。
【0032】
PPS20側に設置された本システム31は、計測メータ22により単位時間毎の給電量を計測し、その単位時間毎の給電量に関する計測データを上記給電情報DB32bに格納するように構成されている。
【0033】
また、本システム31には、電力託送実施日において、発電設備21から送電線55への実給電量を計測メータ22で計測しながら、その実給電量が電力託送実施日の前日に予め決定した計画給電量となるように、発電設備21の出力制御を行う給電制御部33が接続されている。
【0034】
本システム31は、上記需要家端末13及び電力会社受付端末52等との間で所定のデータについて送受信可能な通信部31aと共に、所定のプログラムを実行することにより、後述の検針手段31b、受電量予測手段31c、予測精度導出手段31d、及び、計画給電量決定手段31eとして機能するように構成されている。
【0035】
本システム31に構成された検針手段31bは、通信部31aで受信した需要家10の単位時間毎の受電量に関する検針データを受電情報DB32aに登録するように構成されている。尚、上記需要家10に需要家端末13が設けられていない場合には、需要家10の検針メータ12を目視等で検針して検針データを入手し、その検針データを手入力で上記受電情報DB32aに登録しても構わない。
【0036】
また、本システム31は、受電量予測手段31c、予測精度導出手段31d、及び、計画給電量決定手段31eを働かせて、図3の給電計画の処理フロー図に示すように、上記需要予測モデルDB32cに格納されている複数種の需要予測モデルから需要家10の受電量を予測するのに適した特定需要予測モデルを選定し、その特定需要予測モデルの予測精度を導出する予測精度導出処理、その特定需要予測モデルを用いて来期の需要家10の受電量を予測する需要予測処理、及び、その需要予測処理の結果に基づいて来期の計画給電量を決定する計画給電量決定処理を順に実行して給電計画を行うように構成されている。
【0037】
以下に、本システム31に構成された各手段の詳細構成と共に、上記各処理の詳細について説明する。
【0038】
本システム31に構成された受電量予測手段31cは、来期又は既往期を予測対象日として、その予測対象日の単位時間毎の受電量(以下、「予測受電量」と呼ぶ。)を導出する、所謂需要予測処理を実行可能に構成されている。
【0039】
即ち、上記受電量予測手段31cにより実行される需要予測処理においては、図4の需要予測処理の処理フロー図に示すように、予測用説明変数DB32dから予測対象日の説明変数を抽出し(ステップ201)、その抽出した説明変数と需要予測モデルとを用いて、需要家10の予測対象日の予測受電量を導出する(ステップ202)。
【0040】
上記ステップ202において、詳しくは、受電情報DB32aから、需要家10の複数の既往期実受電量を抽出し、その複数の既往期実受電量を正規化し、その正規化パターンの平均値等が、需要家10の受電量のパターンであると同定する。
【0041】
一方、需要予測モデルDB32cから需要予測モデルを抽出し、上記抽出した説明変数について特定需要予測モデルが示す適切な回帰分析等を行って、予測対象日における需要家10の受電量の最大値及び最小値を求める。
【0042】
そして、上記のように求めた需要家10の受電量のパターンと上記予測対象日における受電量の最大値及び最小値とから、需要家10の予測対象日における予測受電量が導出される。
尚、前述の図3のステップ200に示す、来期に対する需要予測処理は、上記需要予測処理において予測対象日を来期に設定して実行される。
【0043】
本システム31に構成された予測精度導出手段31dは、前述の図3のステップ100に示す予測精度導出処理を実行するに、図5の需要予測処理の処理フロー図に示すように、先ず、需要予測モデルDB32cに格納されている複数種の需要予測モデルの1つを、需要家10の需要予測をするための需要予測モデルに設定し(ステップ101)、過去1ヶ月等の一定期間内の複数の既往期を予測対象として、その設定した需要予測モデルにより、その複数の既往期の予測受電量(以下、「既往期予測受電量」と呼ぶ。)を導出する(ステップ102)と共に、上記受電情報DB32aからその複数の既往期の実受電量(以下、「既往期実受電量」と呼ぶ。)を抽出する(ステップ103)。そして、上記既往期予測受電量と上記既往期実受電量とを比較して、上記需要予測手段31cで用いた特定需要予測モデルの予測精度を導出する(ステップ104)ように構成されている。
【0044】
詳しくは、予測精度導出手段31dは、上記特定需要予測モデルの予測精度を、予測誤差の相対的な大きさとして計量する。
予測誤差とは、ある時刻の実受電量を基準とした予測受電量の乖離を表すものである。ここで、実受電量をDr、予測受電量をDpとすると、予測誤差としては、下記の数1に示す対数予測誤差LPVを用いることができる。
【0045】
【数1】
LPV={ln(Dp/Dr)}×100(%)
【0046】
そして、上記予測誤差を過去の一定期間収集して、そのばらつきをヒストグラムへプロットし、それを代表的な確率密度関数にあてはめて、上記予測誤差の確率密度関数を求めることができ、上記予測精度導出手段31dは、上記予測誤差の確率密度関数を、需要予測モデルの需要家10に対する予測精度として導出するのである。
【0047】
また、需要予測モデルDB32cに、上記需要家10の需要家属性区分に対応した需要予測モデルが複数種格納されている場合には、上記予測精度導出処理において、その複数種の需要予測モデルの夫々の需要家10に対する予測精度を夫々導出し、夫々の予測精度を比較して、需要家10の予測受電量を導出するのに最も適した需要予測モデルを、後述の給電計画に用いる特定需要家モデルとして決定する(ステップ105)。
【0048】
本システム31に構成された計画給電量決定手段31eは、上記受電量予測手段31cを働かせて、需要家10の来期の予測受電量(以下、「来期予測受電量」と呼ぶ。)を導出し、その来期予測受電量に基づいて、来期において需要部に対して給電する計画給電量を決定する所謂図3のステップ300に示す計画給電量決定処理を実行するように構成されている。
【0049】
詳しくは、上記計画給電量決定手段31eが上記計画給電量決定処理を実行するに、図6の計画給電量決定処理の処理フロー図に示すように、先ず、PPS電力価格及びインバランス電力価格とに関する情報を、入力部からの入力情報又はインターネット上に公開された情報から取得する(ステップ301)。
【0050】
そして、上記需要予測処理を行って導出した上記来期予測受電量と、上記予測精度導出処理を行って導出した特定需要予測モデルの予測精度と、上記のように取得したPPS電力価格及びインバランス電力価格とを用いて、来期における需要家10の実受電量(以下、「来期実受電量」と呼ぶ。)に対する計画給電量の過不足に起因する電力調達コストの増加等のリスク量を記述する数学モデルのパラメータの同定を行い(ステップ302)、そのリスク量が最小又は所定の範囲内等の最適な状態となるように計画給電量を決定する(ステップ303)。
【0051】
例えば、上記ステップ302において、上記リスク量の計量を行うに、PPS電力価格及びインバランス電力価格に基づいて、適切な電力調達(即ち、計画給電量が来期実受電量と一致する電力調達)を行った場合の支払い料金(電力調達コスト)をベーシスとして、実際の電力調達で発生する電力調達コスト差をベーシスリスクとし、このベーシスリスクが、来期実受電量に対する計画給電量の過不足により発生する電力調達コストの増加リスクに関する量といえる。
来期実受電量をDNr、予測受電量をDNp、PPS電力価格をPpps、インバランス電力価格をPimbとすると、来期実受電量が来期予測受電量よりも大きかったときのベーシスリスクBRo、及び、来期実受電量が来期予測受電量よりも小さかったときのベーシスリスクBRuは、下記の数2に示すようになる。
【0052】
【数2】
BRo=(DNr−DNp)×(Pimb−Ppps)
BRu=(DNp−DNr)×Ppps
【0053】
即ち、上記のように規定されるベーシスリスクは、需要家10の来期予測受電量の予測に用いる特定需要予測モデルの予測誤差の確率密度関数として求められる予測精度に起因するものであるので、上記ステップ302において、上記ベーシスリスクの期待値が、電力託送実施日の前日に計画給電量を決定する場合に生じるリスク量として認識することができる。
【0054】
よって、計画給電量決定手段31eは、上記ステップ302において、上記ベーシスリスクを特定需要予測モデルの予測精度に起因する確率過程として計量し、それを解析又はシミュレーションして、上記ステップ303において、上記ベーシスリスクの期待値であるリスク量が最小化するような給電量を求め、それを計画給電量に決定する。また、本システム31は、計画給電量決定手段31eで決定した計画給電量に関する給電計画を作成し、それを前述の電力会社受付端末52側に送信して、電力託送実施日における電力託送実施を申請する。
【0055】
そして、PPS20は、上記のような給電計画を実行して計画給電量を決定することで、来期における電力調達コストの増加リスクができるだけ小さくなるように、給電計画を行うことができる。
【0056】
さらに、上記ステップ303において、来期における電力調達コストが許容以上に増加する可能性をできるだけ小さくするために、上記計画給電量決定手段31eは、5%等の所定の確率で発生し得る最大のリスク量(以下、「5%VaR値」と呼ぶ。)が許容値以下となる制約条件を設定し、上記制約条件の範囲内で、電力調達コストを最小化する計画給電量を決定するように構成することもできる。尚、上記制約条件の範囲内で電力調達コストを最小化する計画給電量を導出できない場合には、上記制約条件等を緩和するように構成しても構わない。
【0057】
上記実施の形態では、来期実受電量が来期予測受電量と一致する適切な電力調達を行った場合の電力調達コストをベーシスとして、来期実受電量の来期予測受電量の過不足により発生する電力調達コスト差をベーシスリスクとして、そのベーシスリスクの期待値であるリスク量の最小化を目的とした給電計画を行ったが、別に、来期実需電量に対する来期予測受電量の過剰によるリスクを考慮する必要が無ければ、来期における電力調達コストそのものの期待値をリスク量として取り扱い、そのリスク量の最小化を目的とした給電計画を行っても構わない。
【0058】
尚、本システム31を構成するコンピュータシステム等の数量及び相互間の接続状態、及び、記憶装置32に割り当てた各種データベースの数及び格納する情報の種別等は、上記実施の形態で説明したもので限定されず、あらゆる形態を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電力事業における電力の部分供給の様子を示した概略構成図
【図2】給電計画システムの概略構成図
【図3】給電計画処理フロー図
【図4】需要予測処理フロー図
【図5】需要予測処理フロー図
【図6】計画給電量決定処理フロー図
【符号の説明】
10:需要家
11:電力負荷
12:検針メータ
13:需要家端末
13a:通信部
13b:受電量送信手段
20:特定規模電気事業者(PPS)
21:発電設備
22:計測メータ
31:給電計画システム(本システム)
31b:検針手段
31c:受電量予測手段
31d:予測精度導出手段
31e:計画給電量決定手段
32:記憶装置
32a:受電情報DB
32b:給電情報DB
32c:需要予測モデルDB
32d:予測用説明変数DB
33:給電制御部
50:電力会社
51:発電所
52:電力会社受付端末
52a:通信部
52b:給電計画受付手段
55:送電線
60:通信ネットワーク
Claims (4)
- 特定需要予測モデルを用いて予測した来期における需要部の受電量である来期予測受電量に基づいて、前記来期における前記需要部への給電量である計画給電量を決定する計画給電量決定手段を備えた給電計画システムであって、
前記特定需要予測モデルを用いて予測した既往期における前記需要部の受電量である既往期予測受電量と、前記既往期における前記需要部の実際の受電量である既往期実受電量とを比較して、前記特定需要予測モデルの予測精度を導出する予測精度導出手段を備え、
前記計画給電量決定手段が、前記特定需要予測モデルにより予測した前記来期予測受電量と、前記特定需要予測モデルの予測精度と、前記来期における前記需要部の受電量に対する前記計画給電量の過不足分についての電力価格情報とを用いて、前記過不足に起因するリスク量についての計量を行い、前記リスク量が最適となるように計画給電量を決定する給電計画システム。 - 前記計画給電量決定手段が、所定の確率で発生し得る最大リスク量が許容値以下となる範囲内で前記需要部における電力調達コストが最小となるように前記計画給電量を決定する請求項1に記載の給電計画システム。
- 前記リスク量が、前記来期における前記需要部の受電量に対する前記計画給電量の過不足により発生する電力調達コストの増加リスクに関する量である請求項1又は2に記載の給電計画システム。
- 前記予測精度導出手段が、複数種の需要予測モデルの前記予測精度を夫々導出し、前記予測精度が最適となる需要予測モデルを前記特定需要予測モデルとして選定する請求項1から3の何れか1項に記載の給電計画システム。
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