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JP3774638B2 - インクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法 - Google Patents

インクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法 Download PDF

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JP3774638B2
JP3774638B2 JP2001125967A JP2001125967A JP3774638B2 JP 3774638 B2 JP3774638 B2 JP 3774638B2 JP 2001125967 A JP2001125967 A JP 2001125967A JP 2001125967 A JP2001125967 A JP 2001125967A JP 3774638 B2 JP3774638 B2 JP 3774638B2
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雅行 上田
頼重 松葉
憲明 畑
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット印刷法を利用する、導電性金属ペーストによる回路パターンの形成方法に関し、より具体的には、リジッドおよびフレキシブルなプリント基板、ICチップ、ガラス基板、セラミック基板等におけるデジタル高密度配線に対応した低インピーダンスでかつ極めて微細な回路パターンを、超ファイン印刷用導電性金属ペーストにより、インクジェット印刷法を利用して形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板上に回路パターンを描画して形成する方法としては、多くの場合、スクリーン印刷、特には、メタルマスクを用いて、導電性金属ペーストを塗布し、次いで加熱硬化させることにより、所望の低抵抗な回路パターン形成を行っている。このスクリーン印刷法を利用する描画方法は、形成される回路パターンの線幅が極端に狭くない分野に広く適用され、用いる導電性金属ペーストとしては、平均粒子径が0.5〜20μmの金属粉を熱硬化性樹脂組成物に分散したものが通常用いられている。また、描画される回路パターンの膜厚は、形成される最小線幅に応じて、膜厚/最小線幅の比、アスペクト比が極端に小さくならない範囲に選択されている。
【0003】
一方、近年の情報端末の急速な小型化に伴い、それに搭載されるプリント配線板の配線ピッチの狭小化も進み、具体的には、半導体内回路のファイン化に伴い、プリント配線板上に形成される回路パターンの最小線幅、膜厚もますます狭くなる。例えば、数ミクロン程度の膜厚になると、平均粒子径が0.5μm以上の金属粉を利用する従来の金属ペーストを利用する際には、含有される金属粉の粒径が相対的に大きすぎるため、十分な対応ができなくなる。具体的には、場合によっては、数ミクロン程度しかない厚さ方向には、金属粒子が2〜3個しか存在しない状態になり、結果として、膜厚分布が相対的に大きく、導通性のバラツキが顕著となることもある。加えて、金属粒子が数個しか存在しない場合、部分的に粒子同士の接触に不良が生じた際、導通性が大きく損なわれる要因ともなる。
【0004】
また、スクリーン印刷に用いるメタルマスク自体、その構造上、所望の機械的強度を保持するため、その薄膜化には限度があり、メタルマスク自体の厚さに応じて、隣り合う回路間の幅にも自ずから限界がある。例えば、回路間の間隔が0.3mm以下の高密度な電子部品の実装を行うことを目指す際には、スクリーン印刷法を利用する回路パターンの描画を、高い再現性で行うことは困難となる。それに対して、インクジェット方式の描画法、あるいは、ノズルまたはニードルを利用して金属ペーストを吐出する方法では、吐射する微小な液滴状の金属ペーストを用いて、直接描画を行うので、描画可能な最小線幅、ならびに、回路間の最小間隔は、噴射することにより塗布する液滴状の金属ペースト量のみに依存するものとなる。従って、吐射する液滴状の金属ペーストをより微小なものとすると、選択的に、極めて狭い範囲のみに塗布することが可能となり、例えば、回路間の間隔が0.3mm以下の高密度な回路パターンの作製にも適用できる。
【0005】
加えて、インクジェット方式の描画法を利用すると、回路パターン形状が複雑なもの、例えば、細い線幅部と広いベタ印刷領域が混在する際にも、原理的には、その膜厚は、単位面積当たりに塗布する液滴状の金属ペースト量のみで決定されるため、高い膜厚の均一性を達成することも可能となる。なお、その際にも、例えば、数ミクロン程度の膜厚になると、平均粒子径が0.5μm以上の金属粉を利用する従来の金属ペーストを利用すると、上述するスクリーン印刷法を用いる際と同様に、含有される金属粉の粒径が相対的に大きすぎるため、十分な対応ができなくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
つまり、回路パターンの形成にインクジェット方式の描画法を利用する際、その高い描画分解能を十分に発揮する上では、利用する導電性金属ペーストとして、含有される金属粉の粒径も十分に微細なものとする必要がある。例えば、利用する導電性金属ペーストとして、極めて粒子径の小さな金属超微粒子を含有するものを利用することが必要となる。
【0007】
極めて粒子径の小さな金属超微粒子、少なくとも、平均粒子径が100nm以下である金属超微粒子の製造方法の一つとして、特開平3−34211号公報には、ガス中蒸発法を用いて調製される10nm以下の金属超微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。また、特開平11-319538号公報などには、還元にアミン化合物を用いる還元析出法を利用して、平均粒子径が数nm〜数10nm程度の金属超微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。この特開平11−319538号公報などに開示される平均粒子径数nm〜数10nm程度の金属超微粒子は、コロイド状態を維持するためにその表面が高分子樹脂などで被覆されているものである。
【0008】
このような平均粒子径が1〜100nmと非常に細かい金属微粒子で構成される金属ペーストを利用すると、微細な線幅、それに対応する薄い膜厚とした際にも、原理的には用いる金属粒子の粒子径に起因する厚さの不均一性を大幅に低減することが可能となる。この利点を生かし、平均粒子径が数nm〜数10nm程度の金属超微粒子を含有する導電性金属ペーストを、回路パターンの形成にインクジェット方式の描画法に利用することが望まれる。換言するならば、インクジェット方式の描画法に利用するに適する形態の金属超微粒子を含有する導電性金属ペーストとし、それを用いるインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法の開発が望まれる。
【0009】
一般に平均粒子径数nm〜数10nm程度の金属超微粒子はその融点よりも格段に低い温度(例えば、銀であれば200℃)で焼結することが知られている。この低温焼結は、金属の超微粒子においては、十分にその粒子径を小さくすると、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の全体に占める割合いが大きくなり、金属原子の表面拡散が無視し得ないほど大きくなる結果、この表面拡散に起因して、粒子相互の界面の延伸がなされ焼結が行われるためである。一方、この性質は、室温近傍においても、金属超微粒子の表面相互が直接接触すると、凝集体を形成するという現象を生じさせる。前記の凝集体形成は、極めて微細な金属微粒子が密な充填状態を形成する結果達成される、厚さの均一性向上効果を損なう要因となる。さらに、密な充填状態を形成することで、全体として、所望の導電性を達成している効果を、予め部分的に凝集体を形成した構造が混入すると、密な充填状態を高い再現性で達成できなくなる一因となる。
【0010】
加えて、金属の超微粒子表面では、通常の金属塊表面より、金属原子の表面拡散が活発であるだけでなく、化学的な反応性も増しており、例えば、酸素に曝されるとより速やかに表面酸化が進行する。その際には、金属の超微粒子表面における低温焼結の利点は損なわれ、表面酸化で形成される酸化皮膜の影響を排するに必要な、比較的高い温度での加熱処理によって、初めて、超微粒子相互の焼結が達成できる状態となる。従って、形成される酸化皮膜の多少に依存して、導電性のバラツキを生じさせる要因となる。
【0011】
特に、インクジェット法を利用して、金属超微粒子を含有する導電性金属ペーストを噴射・塗布する際には、吐出される微細な液滴中に含有される金属超微粒子量の均一性が不可欠である。すなわち、導電性金属ペースト中に含有される金属超微粒子は、分散溶媒中に、均一に分散された状態であることも必須な要件となる。具体的には、利用するインクジェット・プリンター・ヘッドに付属する容器中に保持する間に、金属超微粒子の凝集分離が生じる、あるいは、沈降分離を生じるなどの現象を抑制する必要もある。また、インクジェット・プリンター・ヘッドの吐出ノズル先端などに、上述する凝集体形成した金属超微粒子の塊が付着する事態が生じてはならないことは勿論のことである。以上に述べたインクジェット法を利用する際に固有な不具合を回避でき、高い膜厚の均一性で、加えて、良好な導電性をも達成できる、金属超微粒子を含有する導電性金属ペーストを用いるインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法の開発が望まれる。
【0012】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、導電性金属ペーストを構成する導電性媒体として、金属超微粒子を用いて、保管した際にも含有される金属超微粒子の凝集体形成、あるいは、沈降分離を抑制しつつ、かかる金属超微粒子を均一に分散する導電性金属ペーストを、インクジェット印刷法を利用して基板上に噴射・塗布し、また、焼成した際、密着力が良く、表面形状がなめらかで、また、低抵抗かつ超微細な回路パターンを形成できる、新規なインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、鋭意研究を進めた結果、導電性金属ペーストを構成する導電性媒体として、平均粒子径が1〜100nmの金属超微粒子を用いる場合、導電性金属ペースト自体を調製する際には、安定化されたコロイド状態は、耐凝集性を向上する上では好ましいものの、バインダー成分として含有される熱硬化性樹脂を加熱硬化させる際、前記コロイド状態の維持に貢献している、金属の超微粒子表面を被覆する分子層がそのまま残留していると、優れた導電性を達成する上で不可欠な、金属の超微粒子相互間での、低温度における焼結に因る接触界面の融着が阻害を受けることを見出した。かかる知見に基づき、さらなる研究・検討を進めた結果、導電性金属ペースト自体を調製し、室温近くで保管する間は、安定化されたコロイド状態の維持に貢献する、金属の超微粒子表面を被覆する分子層を設け、一方、低温硬化型の熱硬化性樹脂を加熱硬化させる時点では、前記表面を被覆する分子層を有効に除去することが可能な構成とすると、適正な温度において加熱硬化させた熱硬化性樹脂(有機バインダー)成分により、十分な基板との接着性を持ち、均一にコロイド状に分散している金属超微粒子を用いていることによる、表面形状の平滑性、また、インクジェット法による超微細な回路描画性の利点を保持しつつ、形成される薄膜配線パターンに付与される導電性は十分に高く、またその再現性も高く保つことが可能であることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明のインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法は、インクジェット方式を利用して、導電性金属ペーストにより配線基板の回路パターンの描画形成を行う方法であって、
用いる前記導電性金属ペーストは、有機溶剤を含む樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストであり、
前記微細な平均粒子径の金属超微粒子は、その平均粒子径が1〜100nmの範囲に選択され、金属超微粒子表面は、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆されており、
インクジェット方式の描画手段で微小な液滴として、基板上に噴射・塗布して、前記導電性金属ペーストの塗布膜からなる回路パターンを描画する工程と、
描画された導電性金属ペーストの塗布膜を、少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程とを有することを特徴とするインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法である。その際、前記樹脂組成物は、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分、加熱した際、前記窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上に対して、その窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、ならびに少なくとも一種以上の有機溶剤を含んでいることが好ましい。
【0015】
さらには、回路パターンを描画する工程において、
前記窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆された金属超微粒子を有機溶剤中に分散してなる液と、
前記樹脂組成物を構成する、熱硬化性樹脂成分、窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、ならびに有機溶剤を含む液とを、
個々のインクジェット方式の描画手段を利用して、基板上に噴射・塗布し、両液を基板上において混和して、導電性金属ペーストによる塗布膜を形成することを特徴とする回路パターンの形成方法とすることもできる。なお、前記窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分として、有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸を用いることが好ましい。
【0016】
一方、導電性金属ペーストに含有される、微細な平均粒子径の金属超微粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される、一種類の金属からなる微粒子、または、2種類以上の金属からなる合金の微粒子であることを特徴とする回路パターンの形成方法とすることができる。
【0017】
また、本発明の回路パターンの形成方法では、少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程において、
更に、描画された塗布膜中の導電性金属ペーストに含有される前記金属微粒子同士の焼結をも行うこともでき、且つ好ましい。
【0018】
例えば、インクジェット方式の前記描画手段は、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行うサーマル方式の描画手段であり、
用いる前記導電性金属ペースト中に含有される一種以上の有機溶剤は、その沸点が、前記加熱発泡の加熱温度未満であることを特徴とする回路パターンの形成方法とすることができる。あるいは、インクジェット方式の前記描画手段は、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行うピエゾ方式の描画手段であり、
用いる前記導電性金属ペースト中に含有される一種以上の有機溶剤は、その沸点が、前記の少なくとも熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度以下であることを特徴とする回路パターンの形成方法とすることもできる。
【0019】
好ましくは、回路パターンの形成に用いる前記導電性金属ペースト中、金属超微粒子100質量部当たり、前記有機溶剤を含む樹脂組成物が、50〜300質量部の範囲で含まれ、
うち、前記有機溶剤は、20〜270質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0020】
本発明の回路パターンの形成方法では、例えば、前記樹脂組成物に用いる、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分は、前記有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸を、重合剤として、加熱重合可能な熱硬化製樹脂であることがより好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法をより詳細に説明する。
【0022】
本発明の回路パターンの形成方法は、その主な用途は、従来のスクリーン印刷法やディスペンス印刷法では高い再現性で描画することが容易ではなかった、最小ドット状の印刷を用いて、デジタル高密度配線に対応した低インピーダンスでかつ極めて微細な回路形成、層間接合の形成に利用される超ファイン印刷用であるため、導電性媒体として含有する金属超微粒子は、目標とする超ファイン印刷の線幅、ならびに、加熱硬化後の膜厚に応じて、その平均粒子径は1〜100nmの範囲に選択する。好ましくは、平均粒子径を2〜10nmの範囲に選択する。
【0023】
このように、極めて微細な金属超微粒子を用いる際には、分散溶媒中に浸された状態であっても、金属粒子同士が接触すると、各々の金属超微粒子が付着することにより凝集をおこし、そのような凝集体は、本発明が目的とする超ファイン印刷用には適さないものとなる。この粒子同士の凝集を防ぐために、金属超微粒子の表面に低分子による被覆層を設け、熱硬化性樹脂成分を溶解する溶液中に分散された状態となっているものを利用する。
【0024】
加えて、本発明の回路パターンの形成方法においては、基板上に塗布された導電性金属ペーストについて、含有される熱硬化性樹脂成分を加熱硬化する際、導電性媒体として含有する金属超微粒子同士、その接触界面における融着を起こすように、金属超微粒子の表面には、酸化膜が実質的に存在しない状態となっているものを利用する。具体的には、金属超微粒子自体の表面は酸化皮膜は存在しないものの、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆された状態とすることで、金属超微粒子が互いにその金属表面が直接接触しない状態とする。
【0025】
この表面の被覆に利用される化合物は、金属元素と配位的な結合を形成する際、窒素、酸素、イオウ原子上に孤立電子対を有する基を利用するもので、例えば、窒素原子を含む基として、アミノ基が挙げられる。また、イオウ原子を含む基としては、スルファニル基(−SH)、スルフィド型のスルファンジイル基(−S−)が挙げられる。また、酸素原子を含む基としては、ヒドロキシ基、エーテル型のオキシ基(−O−)が挙げられる。
【0026】
利用可能なアミノ基を有する化合物の代表として、アルキルアミンを挙げることができる。なお、かかるアルキルアミンは、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上となるものが好ましい。ただし、焼結・合金化を行う際には、速やかに、表面から離脱することが可能であることが必要であり、少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるものが好ましい。例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。一般に、かかる配位的な結合を形成する上では、第一級アミン型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級アミン型、ならびに、第三級アミン型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジアミン型、1,3−ジアミン型など、近接する二以上のアミノ基が結合に関与する化合物も利用可能である。
【0027】
また、利用可能なスルファニル基(−SH)を有する化合物の代表として、アルカンチオールを挙げることができる。なお、かかるアルカンチオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、好ましくは100℃以上となるものが好ましい。ただし、焼結・合金化を行う際には、速やかに、表面から離脱することが可能であることが必要であり、少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるものが好ましい。例えば、アルカンチオールとして、そのアルキル基は、C4〜C20が用いられ、さらに好ましくはC8〜C18の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にスルファニル基(−SH)を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C18の範囲のアルカンチオールは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。一般に、第一級チオール型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級チオール型、ならびに、第三級チオール型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジチオール型などの、二以上のスルファニル基(−SH)が結合に関与するものも、利用可能である。
【0028】
また、利用可能なヒドロキシ基を有する化合物の代表として、アルカンジオールを挙げることができる。なお、かかるアルカンジオールも、金属元素と配位的な結合を形成した状態で、通常の保管環境、具体的には、40℃に達しない範囲では、脱離しないものが好適であり、沸点が60℃以上の範囲、通常、100℃以下の範囲となるものが好ましい。ただし、焼結・合金化を行う際には、速やかに、表面から離脱することが可能であることが必要であり、少なくとも、沸点が300℃を超えない範囲、通常、250℃以下の範囲となるものが好ましい。例えば、1,2−ジオール型などの、二以上のヒドロキシ基が結合に関与するものなどが、より好適に利用可能である。
【0029】
加えて、本発明の回路パターンの形成方法においては、利用する導電性金属ペーストには、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分が必須成分として含有される。かかる熱硬化性樹脂成分は、塗布された導電性金属ペーストを加熱・硬化した際、含まれる金属超微粒子相互の接触と、基板に対する接着性を付与する機能を有する。従って、一般の導電性金属ペーストに利用される有機バインダー、熱硬化性樹脂を利用することができる。例えば、以下に例示する熱硬化性樹脂成分から、目標とする加熱・硬化温度に応じて、かかる温度での加熱処理により、十分な硬化がなされる樹脂成分を1種類以上選択して利用するとよい。具体的には、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。なかでも、フェノール樹脂、エポキシ樹脂は、超微細な回路形成をする際にも、密着性が良好であり、勿論、硬化物物性も導電性ペーストに適するので、本発明に利用する樹脂成分としてより好ましいものである。
【0030】
これら熱硬化性樹脂成分の含有量は、金属超微粒子の全体体積と、その粒子間に存在する空隙の比率に応じて、適宜選択すべきものであるが、通常、金属超微粒子100質量部当たり、1〜30質量部、好ましくは、3〜20質量部の範囲に選択するとよい。この有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂に加えて、加熱した際、前記金属超微粒子の表面を被覆する分子層を形成する窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上に対して、その窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、例えば有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸、好ましくは、酸無水物または酸無水物誘導体を含有させる。
【0031】
この窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、例えば酸無水物または酸無水物誘導体は、主に、上述する金属超微粒子の表面を被覆する、金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物による付着層を除去するために利用される。すなわち、加熱した際、室温付近では付着層を形成している化合物中の、窒素、酸素、イオウ原子を含む基と反応する結果、その反応後、前記窒素、酸素、イオウ原子を含む基は、金属超微粒子表面において、表面の金属原子と配位的な結合を形成することが困難となり、結果的に除去がなされる。この除去機能は、導電性金属ペーストの塗布膜形成を終了するまでは発揮されず、その後、含有される熱硬化性樹脂成分の熱硬化を行う加熱過程において、初めて発揮されるものとなる。なお、用いられる熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂などでは、かかる用途で含有される酸無水物または酸無水物誘導体は、その硬化剤となる場合もある。その際には、この酸無水物または酸無水物誘導体は、熱硬化の際、前記窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物、例えば、アミン化合物、チオール化合物、ジオール化合物などと反応し、アミド、チオエステル、エステルを形成するために利用される以外に、エポキシ樹脂などに対する硬化剤としても消費される。従って、上記アミン化合物、チオール化合物、ジオール化合物などに含まれる末端アミノ基、スルファニル基(−SH)、ヒドロキシ基の総和に従って定まる添加量を超えて添加するとよい。なお、例えば、アミン化合物の末端アミノ基も、エポキシ樹脂などと反応するため、この酸無水物または酸無水物誘導体の含有量は、用いるアルキルアミンなどの種類と、その含有量に応じて、さらには、利用される熱硬化性樹脂の種類、その反応性をも考慮に入れ、適宜選択される。
【0032】
従って、金属超微粒子表面を被覆する化合物を、前記熱硬化性樹脂成分に対する加熱硬化時に、熱的な離脱に加えて、前記窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、例えば、酸無水物または酸無水物誘導体と反応させて、効率的にかかる被覆層を排除して、金属超微粒子が相互に直接接触可能とする。その結果、熱硬化性樹脂成分の硬化とともに、金属超微粒子自体の特質である、低温での焼結が進行し、全体として、金属微粒子は密に充填した状態で、焼結による融着が達成でき、形成される緻密なネットワーク状の導通経路が、良好な電導性を与える。
【0033】
前記の反応性を示す限り、利用される有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸は特に限定されるものではない。例えば、利用可能な有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクチル酸などのC1〜C10の直鎖または分岐した飽和カルボン酸、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、安息香酸、ソルビン酸などの不飽和カルボン酸、ならびに、シュウ酸、マロン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基酸など、種々のカルボン酸に加えて、カルボキシル基に代えて、リン酸基(−O-P(O)(OH)2)あるいは、スルホ基(−SO3H)を有する、リン酸エステル、スルホン酸などのその他の有機酸を挙げることができる。
【0034】
また、好適に利用できる有機の酸無水物もしくは酸無水物の誘導体として、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などの芳香族酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物などの環状脂肪族酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物などの脂肪族酸無水物を挙げることができる。この中でも、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、およびこれらの誘導体は、本発明が目的とする比較的に低い加熱硬化温度においても、例えば、アミン化合物の末端アミノ基などに対して適度な反応性を有することから好適に用いられる。
【0035】
本発明の回路パターンの形成方法において、利用する導電性金属ペーストは、塗布後に加熱硬化処理を行うものの、その塗布する際には、前記表面に分子の被覆層を設けた金属超微粒子を、溶液形状の樹脂組成物、すなわち、上記有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分、加熱した際、窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、例えば有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸、ならびに少なくとも一種以上の有機溶剤を含んでいる溶液を分散媒体として、その中に均一に分散したものとする。その際に利用する有機溶剤は、樹脂組成物を調製する際、その溶媒としての機能を有し、また、用いる金属超微粒子の表面を被覆している、アミン化合物などの化合物の付着層を溶出することのない有機溶剤が好適に利用される。
【0036】
この二種の用途に用いられる有機溶剤は、異なる種類のものを用いることもできるが、同じ有機溶剤を用いることが好ましい。なお、前記の二種の用途に利用できる限り、その種類は限定されるものではないが、金属超微粒子の表面に付着層を形成している化合物、例えば、アルキルアミンなどの溶解性が高すぎ、金属超微粒子表面の付着層が消失するような高い極性を有する溶剤ではなく、非極性溶剤あるいは低極性溶剤を選択することが好ましい。加えて、本発明の回路パターンの形成方法では、塗布後、導電性金属ペーストを加熱硬化を行う温度において、かかる有機溶剤は、比較的速やかに蒸散でき、その間に熱分解などを起こすことがない程度には熱的な安定性を有することが好ましい。また、微細なラインを形成する際、その塗布の工程において、導電性金属ペーストをインクジェット法を利用して、微小な液滴として噴射・塗布するため、前記の吐出に好適な液粘度範囲に維持することも必要となる。そのハンドリング性の面を考慮すると、室温付近では容易に蒸散することのない、比較的に高沸点な非極性溶剤あるいは低極性溶剤、例えば、テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンなどが好適に利用でき、さらには、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタンなども用いることができる。
【0037】
かかる有機溶剤の含有量は、それが溶解すべき、前記熱硬化性樹脂成分、有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸などの量に拠って選択させる。その際、通常、回路パターンの形成に用いる前記導電性金属ペースト中、金属超微粒子100質量部当たり、前記有機溶剤を含む樹脂組成物が、50〜300質量部範囲で含まれ、うち、前記有機溶剤は、20〜270質量部の範囲で含まれていることが好ましい。この樹脂組成物は、熱硬化性樹脂成分として、上記の熱硬化性樹脂と、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、さらには、その他の汎用される添加成分をも含むことができる。例えば、重合剤(硬化剤)として、有機の酸無水物またはその誘導体を利用して、加熱重合可能な熱硬化性樹脂なども好ましい。
【0038】
その際、導電性金属ペーストに含有される、微細な平均粒子径の金属超微粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される、一種類の金属からなる微粒子、または、2種類以上の金属からなる合金の微粒子を、目的に応じて、適宜選択することができる。通常の目的では、金、銀、銅、白金など、それ自体の電気伝導性に優れる金属からなる微粒子を利用することが多い。なお、合金微粒子を用いる際には、通常、熱硬化性樹脂成分の熱硬化温度より、かかる合金の融点が高いものを用いる際に、本発明の効果が発揮されるものとなる。
【0039】
本発明の回路パターンの形成方法では、これらの成分を含む導電性金属ペーストをインクジェット法を利用して、微小な液滴として、基板上に目的とするパターン形状となるように噴射・塗布する。目標とする最小線幅、ライン間隔に応じて、例えば、塗布されるドットの平均径を10〜20μmの範囲に選択し、また、このドットの平均径の選択に併せて、前記微小な液滴量は自ずから定まる。すなわち、インクジェット法を利用して微小な液滴を吐出する際、その微小な液滴量は、利用するインクジェット・プリンター・ヘッド自体の性能に依存するため、目的とする液滴量に適合するプリンター・ヘッドを選択して用いる。例えば、吐出用のノズル内径は、平均液滴量を2〜100plの範囲とする際、それに対応させて、適宜選択する。
【0040】
なお、塗布膜を形成する導電性金属ペーストは、予め樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストとした上で、インクジェット法を利用して描画する形態をとることができるのは勿論のことであるが、例えば、金属超微粒子を有機溶剤中に分散した液と、その他の樹脂組成物を構成する成分を含む液とに分け、この二液を個々に微小な液滴として塗布し、両液を混和して、導電性金属ペーストの塗布膜とすることも可能である。この二液混合型の導電性金属ペースト塗布膜形成法を用いる際には、両液滴の密な接触・重ね合わせが達成されるように、利用するインクジェット・プリンター・ヘッドそれぞれの吐出用のノズルの位置合わせ制御を行う。また、両液の液滴量は、混和がなされた状態において、各成分が所望とする含有比率となるように調整することは勿論のことである。その後、加熱し、熱硬化樹脂成分の熱硬化と、金属超微粒子相互の低温焼結・融着は、予め混合した一液型の導電性金属ペーストを用いる際と、実質的に同じものとなる。
【0041】
加えて、かかる二液混合型の導電性金属ペーストを利用する際には、金属超微粒子を有機溶剤中に分散した液と、その他の樹脂組成物を構成する成分を含む液とを個々に噴射・塗布するため、それぞれの液粘度は、適正な吐出が達成可能な範囲に選択することが必要となる。場合によっては、それぞれに含有される有機溶剤の量を合計すると、予め混合した一液型の導電性金属ペーストにおける有機溶剤の量と比較して、より多くなることもあるが、その際には、塗布膜形成中、あるいは、塗布膜形成後、後の加熱工程において、好適となる有機溶剤の含有比率まで減ずるため、有機溶剤の蒸散を行う工程を設けることが好ましい。
【0042】
また、利用するインクジェット・プリンター・ヘッドには、加熱発泡(バブル)を利用してインクを吐出するサーマル方式と、圧電素子を利用してインクの吐出を行うピエゾ方式の二つがあり、本発明の回路パターンの形成方法では、用いる金属微粒子ペーストのドット状噴射・塗布による描画には、前記サーマル方式、ピエゾ方式のいずれの方法をも用いることができる。利用するインクジェット・プリンター・ヘッドの方式に依存して、利用する導電性金属ペーストの液粘度を調製する必要があり、例えば、有機溶剤の添加量を調整して、最終液粘度を、0.5〜30Pa・sの範囲、好ましくは、1〜5Pa・sの範囲に選択することが望ましい。また、サーマル方式を利用する場合、加熱発泡(バブル)が可能な有機溶剤、具体的には、その沸点がサーマル方式の加熱温度より低い有機溶剤を選択する必要がある。
【0043】
本発明の回路パターンの形成方法においては、以上に述べたインクジェット法を利用する際に適合する組成を選択した導電性金属ペーストを、インクジェット・プリンター・ヘッドの液溜(容器)に入れ、前記する微細なドッド状の塗布を行い、各ドットが互いに重なり合うようにすることで、所望の最小線幅から、広い範囲のパターンまで、パターンの形状に依らず、同じ精度で回路形成を行うことができる。加えて、形成される回路膜厚に関しても、複数層の塗布を行うことで、高い自由度で膜厚を選択できる利点をも有する。さらには、同一工程において作製される回路パターン中に、設計膜厚が異なる領域を有する際にも、それらを同じ精度で形成することが可能となる。
【0044】
一方、インクジェット・プリンター・ヘッドの液溜(容器)に入れられる導電性金属ペーストは、室温あるいは、保管する際、想定される上限温度の範囲においては、前記する有機の酸無水物などと金属微粒子表面を被覆する化合物の末端アミノ基などとの反応は実質的に進行しないため、本発明の導電性金属ペーストにおいて、含有される熱硬化性樹脂成分を加熱硬化するため、所定の温度まで加熱しない限り、金属超微粒子の表面を緻密に被覆しているアミン化合物などの分子層は安定に維持される。その作用により、保管時の耐凝集性は高く維持され、また、水分や大気中の酸素分子に因る金属超微粒子の表面の自然酸化膜の形成も抑制される。加えて、含有されている金属超微粒子は、吐出されるまでの間、均一な分散状態を維持されているので、吐出用ノズル部に付着して、塗布液滴量のバラツキを起こすこともなく、凝集分離や沈降により、分散濃度のバラツキを生じさせることもないものとなる。
【0045】
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。この実施例は、本発明の最良の実施の形態の一例ではあるものの、本発明はこの実施例により限定を受けるものではない。
【0046】
(実施例1)
市販されている銀の超微粒子分散液(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトシルバー、真空冶金(株))、具体的には、銀微粒子100質量部、アルキルアミンとして、ドデシルアミン15質量部、有機溶剤として、ターピネオール75質量部を含む平均粒径8nmの銀微粒子の分散液を利用して、銀超微粒子の導電性金属ペースト(インク)を調製した。
【0047】
導電性金属インクは、銀微粒子の分散液と、その分散液中の銀微粒子100質量部当たり、樹脂組成物を形成する各成分として、酸無水物として、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Me−HHPA)を6.8質量部、熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂(群栄化学(株)製、PL−2211)を5質量部、有機溶剤として、トルエン35質量部とを混合し、攪拌して、均一化を図った。混合して得られる、樹脂組成物中に銀微粒子が均一に分散した状態とした後、調製された導電性金属インクを、メッシュサイズ:0.5μmのポリテトラエチレンフィルターを用いてろ過し、混入している気泡を除く処理を施した。なお、調製された導電性金属インクの液粘度は、10Pa・sである。
【0048】
次いで、インクジェット方式のプリント・ヘッドのインクカートリッジに、脱気泡処理済みの導電性金属インクを充填した。この導電性金属インクを充填したプリント・ヘッドは、専用のプリンターに装着した。本実施例では、このインクジェット方式のプリント・ヘッドとして、サーマル方式とピエゾ方式の双方について、それぞれ印刷性を検証した。サーマル方式ならびにピエゾ方式では、それぞれ、噴射される液滴の平均液量は4plならびに4plである。従って、この液滴の噴射・塗布により、それぞれ平均外径16μmならびに18μmのドット状の印字が可能である。サーマル方式ならびにピエゾ方式のそれぞれにおいて、この導電性金属インクを用いて、ガラス基板上に、膜厚μm、100μmの線幅の直線パターンをインクジェット方式で印刷した。この印刷後、ガラス基板上の導電性金属インクを、150℃×30分、更に210℃×60分の二段階の熱処理を施し、含まれる熱硬化性樹脂の硬化を行った。
【0049】
熱硬化処理後、線幅、ライン間隔、熱硬化後の表面平坦性、膜厚などの項目を測定し、その印刷性を評価した。描画されたパターンの形状・寸法の再現性は非常に高く、また、目標との変移なく、安定している。より具体的には、線幅の変移は、前記サーマル方式ならびにピエゾ方式のそれぞれにおけるドット状の印字の密度(分解能)、600dpiと720dpi(ドット/インチ)の条件下で、最大で、前記ドット径の10%以下であり、また、熱硬化に伴い、若干の収縮はあるものの、平均膜厚はμm、膜厚のバラツキは20%以下である。加えて、用いたインクジェット方式のプリント・ヘッドの吐出ノズル部における、導電性金属インクの目詰まりも全く生じなかった。なお、前記の二段階熱処理により、得られる金属配線パターンの比抵抗は、2.8×10-5 Ω・cmと良好な値を、高い再現性で示した。
【0050】
【発明の効果】
本発明のインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法では、インクジェット方式を利用して、導電性金属ペーストにより配線基板の回路パターンの描画形成を行う際、用いる導電性金属ペーストは、樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストであり、微細な平均粒子径の金属超微粒子は、その平均粒子径が1〜100nmの範囲に選択され、金属超微粒子表面は、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、イオウ原子を含む基を有する化合物1種以上により被覆された状態とし、一方、樹脂組成物は、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分、加熱した際、窒素、酸素、イオウ原子を含む基との反応性を有する成分、例えば有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸、ならびに少なくとも一種以上の有機溶剤を含んだものとした上で、インクジェット方式の描画手段で導電性金属ペーストを微小な液滴として、基板上に噴射・塗布して、回路パターンを描画する工程、描画された導電性金属ペーストの塗布膜を、少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程とを経て、回路パターンを形成する結果、熱硬化性樹脂成分の熱硬化に併せて、金属超微粒子表面を被覆する化合物分子層を、例えば、有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸との反応によって除去し、金属超微粒子相互の低温での融着を行わせ、緻密な電気的接触を有するネットワーク状の導電性層を形成するので、金属超微粒子を利用することに伴い、微細な線幅のパターンを高い精度で、また、優れた導電性を示す配線回路を高い再現性で作製できる利点を有する。加えて、前記構成の導電性金属ペーストを用いることに付随して、単なる粒子の接触による導通経路においては得られない、高い導通安定性とその再現性が確保でき、さらには、加熱硬化する樹脂を含むので、基板に対する密着力も良く、しかも、膜厚のバラツキも実質的にない超ファイン回路を簡便に印刷作製できる。

Claims (10)

  1. インクジェット方式を利用して、導電性金属ペーストにより配線基板の回路パターンの描画形成を行う方法であって、
    用いる前記導電性金属ペーストは、熱硬化性樹脂と有機溶剤を含む樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストであり、
    前記微細な平均粒子径の金属超微粒子は、その平均粒子径が1〜100nmの範囲に選択され、金属超微粒子表面は、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素原子のいずれかを含む基を有する化合物1種以上により被覆されており、
    インクジェット方式の描画手段で微小な液滴として、基板上に噴射・塗布して、前記導電性金属ペーストの塗布膜からなる回路パターンを描画する工程と、
    描画された導電性金属ペーストの塗布膜を、少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程とを有し、
    前記窒素、酸素原子のいずれかを含む基は、アミノ基、ヒドロキシ基(−OH)から選択されており、
    該窒素、酸素原子のいずれかを含む基を有する化合物1種以上による前記金属超微粒子表面の被覆は、かかる金属超微粒子表面に含まれる金属元素に対する前記窒素、酸素原子のいずれかを含む基との配位的な結合を介してなされている
    ことを特徴とするインクジェット印刷法を利用する回路パターンの形成方法。
  2. 前記樹脂組成物は、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分、加熱した際、前記窒素、酸素原子のいずれかを含む基を有する化合物1種以上に対して、その窒素、酸素原子のいずれかを含む基との反応性を有する成分、ならびに少なくとも一種以上の有機溶剤を含んでおり
    前記窒素、酸素原子のいずれかを含む基との反応性を有する成分として、有機の酸無水物またはその誘導体、あるいは有機酸を用いる
    ことを特徴とする請求項1に記載される回路パターンの形成方法。
  3. 回路パターンを描画する工程において、
    前記窒素、酸素原子のいずれかを含む基を有する化合物1種以上により被覆された金属超微粒子を有機溶剤中に分散してなる液と、
    前記樹脂組成物を構成する、熱硬化性樹脂成分、窒素、酸素原子のいずれかを含む基との反応性を有する成分、ならびに有機溶剤を含む液とを、
    個々のインクジェット方式の描画手段を利用して、基板上に噴射・塗布し、両液を基板上において混和して、導電性金属ペーストによる塗布膜を形成することを特徴とする請求項2に記載される回路パターンの形成方法。
  4. 前記窒素、酸素原子のいずれかを含む基との反応性を有する成分として、有機の酸無水物を用いる
    ことを特徴とする請求項2または3に記載される回路パターンの形成方法。
  5. 導電性金属ペーストに含有される、微細な平均粒子径の金属超微粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、アルミニウムからなる群より選択される、一種類の金属からなる微粒子、または、2種類以上の金属からなる合金の微粒子であることを特徴とする請求項または3に記載される回路パターンの形成方法。
  6. 少なくとも前記熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度において、加熱処理する工程において、
    更に、描画された塗布膜中の導電性金属ペーストに含有される前記金属微粒子同士の焼結をも行うことを特徴とする請求項または3に記載される回路パターンの形成方法。
  7. インクジェット方式の前記描画手段は、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行うサーマル方式の描画手段であり、
    用いる前記導電性金属ペースト中に含有される一種以上の有機溶剤は、その沸点が、前記加熱発泡の加熱温度未満であることを特徴とする請求項または3に記載される回路パターンの形成方法。
  8. インクジェット方式の前記描画手段は、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行うピエゾ方式の描画手段であり、
    用いる前記導電性金属ペースト中に含有される一種以上の有機溶剤は、その沸点が、前記の少なくとも熱硬化性樹脂の熱硬化がなされる温度以下であることを特徴とする請求項または3に記載される回路パターンの形成方法。
  9. 前記導電性金属ペースト中、金属超微粒子100質量部当たり、前記有機溶剤を含む樹脂組成物が、50〜300質量部の範囲で含まれ、
    うち、前記有機溶剤は、20〜270質量部の範囲で含まれていることを特徴とする請求項または3に記載される回路パターンの形成方法。
  10. 前記樹脂組成物に用いる、有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分は、前記有機の酸無水物またはその誘導体あるいは有機酸を、重合剤として、加熱重合可能な熱硬化製樹脂であることを特徴とする請求項2または3に記載される回路パターンの形成方法。
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