JP3765000B2 - 軟弱地盤における地盤改良基礎工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、広域の地盤沈下を生ずるような未圧密状態の粘性土、又は構造物の荷重により過大な圧密沈下を発生する正規圧密状態ないしそれに近い状態にある軟弱な粘性土が厚く堆積し、堅固な支持層が深い地盤条件(以下、この条件を前提として軟弱地盤と称する。)の下で或る程度重量が大きい構造物を構築するにあたり、地盤沈下や地震等に対して安全性が高い地盤改良基礎工法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、構造物の基礎は、杭を使用せずに荷重を基礎版から直接地盤へ伝える直接基礎と、杭を使用した杭打ち基礎に大別され、両者の併用型も知られている。軟弱地盤における直接基礎の一態様として構造物直下の地盤を改良した地盤改良基礎を採用することも公知に属する(例えば特開昭61ー151326号公報の第4図、又は本願の図6を参照)。
【0003】
更に具体的に説明すると、特開平8ー49245号公報には、杭打ち基礎であって、杭の複数本を包含する地盤改良体を液状化発生のおそれがある地層よりも深く造成した構成の液状化抑止基礎構造が記載されている。
特開昭61ー151326号公報には、フローティング工法であって、不同沈下を防止するために摩擦杭を造成し、該摩擦杭の上端に設けたヨークから地中梁を吊る不同沈下修正方法が記載されている。
【0004】
特許第2645899号公報には、液状化する可能性がある地盤上に建てる構造物の杭打ち基礎工法であって、表層地盤中に平面形状が格子状の難透水性壁構造体を地盤改良体として造成し、前記格子の中に支持層に届く支持杭を構築した高水平耐力杭基礎工法が記載されている。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
軟弱地盤上に構造物を構築する場合には、軽微な構造物を除いて、通常は支持杭基礎が採用される。しかし、支持層の深さが地下50mを超えるような場合には、支持杭が長くなることに起因する工事費の増大が大きな問題になる。また、広域の地盤沈下を無視できない場合には、負の摩擦力に対処するために、より大径の杭を採用するか、杭本数を増やすか、負の摩擦力低減対策を施した杭を採用する等々の対処が必要となり、一層のコストアップとなる。
【0006】
杭を使用しない基礎工法としては、構造物の重量に見合う重量の土を掘削して構造物重量とバランスさせるフローティング基礎が採用される。しかし、構造物重量が大きいと掘削深さを大きくする必要があるから、地下が深い建物以外には適用性に乏しい。
重量が或る程度まで大きい構造物の構築においては、図6のように構造物2の直下地盤を改良して地盤改良基礎1を造成し、根入れ深さHによる排土重量を考慮して直接基礎としての支持力を確保する。その上で、過大な圧密沈下に伴う不同沈下に対しては、構造物2とベース3(建物基礎)との間にジャッキアップ装置4を設置して対処する直接基礎工法が実施されている。しかし、この直接基礎形式では、構造物2とベース3との間にジャッキアップ装置4の保守、点検用の空間5を確保しなければならず、この空間5を確保する為の地下躯体の構築にかなりな費用がかかる。図6の地盤15は表層が埋土層で、その下に粘土層7が在り、更に深い位置に砂礫層(支持層)6が在る場合を示している。
【0007】
同様な既往技術として、図7Aに例示したように支持層6が地下20m〜30m程度に浅い地盤の場合には、同支持層6に到達する地盤改良基礎1を造成する。逆に図7Bに例示したように支持層6が地下50m以上も深い地盤の場合には、支持層6には届かないが、有害な不同沈下に対する抵抗力を十分に発揮する深さまで地盤改良した地盤改良基礎1を造成する直接基礎工法が実施されている。
【0008】
しかし、地盤改良基礎1の場合には、不同沈下により地盤改良体の内部に過大なせん断応力、引張応力が発生し、同地盤改良体に亀裂が生じ、更には地震時の付加応力により地盤改良体を破壊に至らしめるおそれもある。よって,図7Aの場合は例外として、図7Bのように支持層6が深い条件下では、地盤改良基礎1は、構造物2の鉛直荷重及び水平力を負担し支持する働きに加えて、不同沈下を防ぐ働きの分を加算した深さまでの地盤改良を要求される。よって、施工費が増大し工期が長引く問題がある。
【0009】
直接基礎形式で支持できる構造物2の荷重は不同沈下量からきまり、その値は通常地盤の許容支持力よりもかなり小さい値となる。よって或る程度重量が大きい構造物の構築は難しいという問題もある。
従って、本発明の目的は、図7Bのように支持層が深い軟弱地盤上に構造物を構築するにあたり地盤改良基礎を採用すること、その場合に地盤沈下や地震等に対する安全性が高く、しかも地盤改良基礎を割合に浅く安価に短工期で施工できる地盤改良基礎工法を提供することである。
【0010】
本発明の異なる目的は、地盤改良基礎の不同沈下を防ぐ杭を補完的に採用した杭併用型の地盤改良基礎工法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明に係る軟弱地盤における地盤改良基礎工法は、
支持層6が深い軟弱地盤15上に構築される構造物2の直接基礎工法において、
構造物直下の地盤を根入れ深さHまで掘削し、更にその直下地盤を構造物2の鉛直荷重及び水平力を負担し支持する強度及び規模で改良した地盤改良基礎1を造成し、構造物2の基礎スラブ2aを前記根入れ深さHを底面とするフローティング基礎として前記地盤改良基礎1との境界面を一体化して構築すること、
構造物2の前記根入れ深さHに基づく排土重量を上回る構造物2の荷重を地盤に伝達させ前記地盤改良基礎1の沈下を防止する荷重補完用の杭体10を、前記地盤改良基礎1の範囲内に、杭頭部を前記構造物2の基礎スラブ2aと結合して造成し併用することをそれぞれ特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態及び実施例】
請求項1に記載した発明に係る軟弱地盤における地盤改良基礎工法は、軟弱地盤15の上に構築される構造物の直接基礎工法(フローティング基礎工法)として実施される。
具体的には、図1及び図2に例示したように、構造物2の直下地盤を改良した地盤改良基礎1を、構造物2の鉛直荷重及び水平力を負担し支持する強度及び規模で造成する。構造物2の根入れ深さHを基礎底面とするフローティング基礎として実施される。前記フローティング基礎の底面下に例えば深層混合処理工法などにより固結状態の地盤改良基礎(地盤改良体)1を造成する。この地盤改良基礎1の平面的な形状、大きさ、垂直方向の断面積(改良深さ)などは次のように条件づける。
【0013】
地盤改良基礎1の平面形状と大きさは、構造物2の全荷重を支持地盤(支持土層)へ伝達するのに十分な大きさ、形状とする。通例、構造物2の平面形状と略相似形状で少し大きいものとなる。地盤改良基礎1の垂直断面積とその下端深さは、前記平面積の大きさを考慮しつつ、構造物2の荷重に対して、軟弱地盤15の許容支持力が上回る下端深さとする。
【0014】
次に、この地盤改良基礎1の圧密沈下の原因となる、フローティング基礎の根入れ深さHに基づく排土重量を上回る構造物2の荷重は、荷重補完用に設けた杭群10を通じて地盤に伝達させる。図1では杭群10を圧密層11を貫通してその下の非圧密層12に届く深さまで構築した実施例を示している。図2は非圧密層がない場合で、支持層6には届かないものの、補完するべき荷重を伝達可能であるように杭群10を十分に深く(長く)構築した例を示している。各杭10の杭頭部は基礎スラブ2aと結合する。
【0015】
杭群10を施工するための準備として、地盤改良基礎1の改良施工に際しては同地盤改良基礎1内部の杭10を打設するべき位置に、予め杭10の外径よりも少し大径で孔状の未改良部を残しておき、杭用孔の掘削を容易ならしめる。杭10は、地盤改良基礎1の範囲内において、同地盤改良基礎1に圧密沈下(不同沈下)の発生が懸念される場所へ集中的に配置してその働きの効率化を図ることが有益であり、杭の設計、施工に自在性がある。
上述のように構成して、構造物2の荷重のうち根入れ深さHの排土重量に相当する荷重は、フローティング基礎の基礎スラブ2aから地盤改良基礎1を通じて直接軟弱地盤15へ伝達させる。そして、前記排土重量を超える荷重は、地盤改良基礎1に併用した杭群10を通じて地盤へ伝達する。従って、構造物2の荷重が排土重量よりもかなり大きい場合でも、杭群10の併用によって地盤に過大な圧密沈下は発生せず、沈下量は弾性変形の範囲、又はそれに近い値となるため、不同沈下も小さい値となる。その結果、地盤改良基礎1に発生するせん断応力、引張応力も小さくなり、ひび割れが生ずることもなく、地盤改良基礎1自体が持つ高い曲げ、せん断剛性を構造物2のフローティング基礎2aの剛性の一部として長期的に利用できる。
【0016】
従ってまた、図3に全体像を示し、図4A,Bに部分詳細を示したように、地盤改良基礎1とフローティング基礎(基礎躯体)との境界面に、図4Aに示したコッター13、或いは図4Bに示したようなスタッド14を設けて地盤改良基礎1とフローティング基礎とを一体化することにより、基礎は全体として地盤改良基礎1の下端を底面とする剛性の高いベタ基礎として挙動することになり、不同沈下がより小さく安定性が高い基礎を実現できる。
【0017】
しかも、地盤改良基礎1とフローティング基礎2aとの境界面が一体化されると、地震時の構造物2の慣性力に対しては、基礎に生ずる水平力及びある程度の大きさの引き抜き力についても、フローティング基礎2aから地盤改良基礎1へ確実に伝達され、更に地盤改良基礎1の底面及び側面を介して地盤へ伝達させて処理出来る。
【0018】
従って、杭群10に関しては、基本的に水平抵抗を期待しなくてもよく、小径の杭でこと足りる。但し、地震時の地盤の水平変位により杭体が破壊しないように、杭材には靭性が大きいものを使用するなどして対処する。また、杭群10は構造物2の重量の一部を地盤改良基礎1より下方の地盤へ伝達することのみを目的としているものであり、支持力としては考慮されない。それ故に通常の杭基礎の杭体に比較して安全率を小さく見込めるので、杭の仕様は支持杭に比して直径が小さく、長さも短いものでこと足りる。
【0019】
広域の地盤沈下が生ずる場合には、本発明の基礎形式は地盤と共に沈下するので、支持杭基礎において不可避である、地表面からの構造物2の抜け上がりを防ぐこともでき、地盤面との段差を生じないから、機能面からも有利である。
本発明の基礎工法は、既往の地盤改良直接基礎、例えば図6又は図7Bに示す基礎工法と比較すると、より大きな重量の構造物2の基礎として適用できる。また、構造物2の荷重分布が極端に偏って不均一な場合には、その荷重分布に応じて杭群10の配置を工夫することにより自在に対処でき適用範囲が広い。
【0020】
そして、本発明の基礎工法は、支持層6が深い場合には、既往の地盤改良直接基礎に比較して工事費がはるかに安価で、経済的に短工期で施工することができる。
図5はモデルによる比較の計算例を示す。その前提条件として、支持層6は地下50mの位置に在り、その上の表層はN値が0〜1程度の軟弱粘性地盤である。構造物2の平面形状は30m×60mの長方形であり、その重量は10トン/m2の大きさである。根入れの深さHが2.5mであるとき、既往の地盤改良直接基礎による場合には、左図のように地盤改良基礎1の深さは10mにも達する。これが本発明の基礎工法によれば、地盤改良基礎1の深さは半分の5mで足りる。使用した杭10は直径が60cm、長さが30m、本数は66本である。このような杭群10の施工を含めても、本発明は25〜40%のコストダウンを達成出来る。
【0021】
因みに、本発明の基礎工法が有利な条件は、次の通りである。
(1)軟弱地盤における構造物2の建設であること。
(2)支持層が地下40m〜50m以上に深いこと。杭打ち基礎に対しての有利性である。
(3)構造物2の根入れが2m以上に深いこと。従って、構造物2に地下室がある場合は更に有利である。
(4)構造物2の重量が7〜8トン/m2以上に大きいこと。
【0022】
【発明の効果】
本発明に係る軟弱地盤における地盤改良基礎工法によれば、支持層が深い軟弱地盤上に地盤改良基礎を採用して構造物を構築する場合に、地盤沈下や地震等に対する安全性が高く、しかも地盤改良基礎を浅く安価に短工期で施工できる。
構造物の根入れが深く、構造物の重量が大きい場合の基礎工法として広く実施出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地盤改良基礎工法の実施例を示した立面図である。
【図2】本発明に係る地盤改良基礎工法の異なる実施例を示した立面図である。
【図3】本発明に係る地盤改良基礎工法の異なる実施例を示した立面図である。
【図4】AとBは本発明に係る地盤改良基礎工法におけるフローティング基礎と地盤改良基礎との一体化手段の例を示した部分拡大図である。
【図5】本発明に係る地盤改良基礎工法と既往の地盤改良直接基礎工法との費用見積もりの計算例のモデル図である。
【図6】従来の地盤改良基礎工法の例を示した立面図である。
【図7】AとBは従来の地盤改良基礎工法の例を示した立面図である。
【符号の説明】
15 軟弱地盤
2 構造物
1 地盤改良基礎
10 杭
Claims (1)
- 支持層が深い軟弱地盤上に構築される構造物の直接基礎工法において、
構造物直下の地盤を根入れ深さまで掘削し、更にその直下地盤を構造物の鉛直荷重及び水平力を負担し支持する強度及び規模で改良した地盤改良基礎を造成し、構造物の基礎スラブを前記根入れ深さを底面とするフローティング基礎として前記地盤改良基礎との境界面を一体化して構築すること、
構造物の前記根入れ深さに基づく排土重量を上回る構造物の荷重を地盤に伝達させ前記地盤改良基礎の沈下を防止する荷重補完用の杭体を、前記地盤改良基礎の範囲内に、杭頭部を前記構造物の基礎スラブと結合して造成し併用することをそれぞれ特徴とする、軟弱地盤における地盤改良基礎工法。
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