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JP3762339B2 - 空気調和方法と空気調和装置 - Google Patents

空気調和方法と空気調和装置 Download PDF

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JP3762339B2
JP3762339B2 JP2002200744A JP2002200744A JP3762339B2 JP 3762339 B2 JP3762339 B2 JP 3762339B2 JP 2002200744 A JP2002200744 A JP 2002200744A JP 2002200744 A JP2002200744 A JP 2002200744A JP 3762339 B2 JP3762339 B2 JP 3762339B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物において、上記活動空間に対する冷房をなすための空気調和方法と空気調和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの人々が集まる、たとえばゲームセンターやショッピングセンター、あるいは展示場等を構成する建築物は、デザイン性を重視するばかりでなく、人々に閉塞感(=不安感)を与えてはならないことが必須の要件である。
その意味から、フロア面から屋根部分までの吹き抜け状をなす建築物は、内部に広い空間を作り出し、内部にいる人に対して開放感(=安心感)を与えるので、好まれている。
このような建築物の内部は、人々がゲームし、買い物あるいは観賞等の活動をなす空間である活動空間が下部に形成され、この活動空間の上方部位は吹き抜け状となり屋根内部に高天井空間が形成されることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物の上記活動空間に対する空気調和運転として、暖房運転をなす時間(もしくは期間)よりも冷房運転をなす時間(もしくは期間)が極めて長い。
すなわち、ゲームセンターのゲーム機器によっては発熱量が大であり、かつゲームする人による発熱量も無視できない。ショッピングセンターや展示場では、照明にともなう発熱やショーケース等の機器からの発熱があり、同様に、人が集まることによる発熱量が大である。
【0004】
これらの熱気は上昇して高天井空間に溜まる熱負荷となる。さらに、天井はその外側が太陽光による直射を受けるため内面側の温度も上昇し、高天井空間の温度をさらに上昇させてしまう。したがって、上記建築物においては極めて有効な冷房運転を行う必要がある。
図10は、従来の上記建築物の活動空間に対する空気調和運転、実際には冷房運転を模式的に説明する図である。
【0005】
図中1は、いわゆる半ドーム状に形成された屋根2を有する建築物である。この建築物のフロア面3には、たとえばパチンコ台等のゲーム機器(以下、機器類と呼ぶ)4が配置される。
上記機器類4は、所定間隔を存して複数列配列されていて、これら機器類列間にたとえばゲームする人が存在する。したがって建築物1内は、フロア面3から上記機器類4のある程度上部までの空間が活動空間5となる。さらに、この活動空間5の上方部位は吹き抜け状をなし、屋根2内部が高天井空間6となる。
【0006】
活動空間5より上部位置に吹出し用ダクト7と吸込み用ダクト8が並行に設けており、それぞれのダクト7,8に所定間隔を存して吹出し口を形成する吹出し口体7aと、吸込み口を形成する吸込み口8aが突設される。
吹出し用ダクト7と吸込み用ダクト8は、それぞれの端部が建築物1の外部に延出され、ここに配置される装置本体9の吹出し部aおよび吸込み部bに接続される。
【0007】
上記吹出し口体7aは、機器類4列の相互間に対向した位置で、かつ斜め下方に向けて設けられる。また、上記吸込み口8aは吸込みダクト7の左右両側に、かつそれぞれ水平方向に向けて設けられる。
冷房運転時に、活動空間5の上部にある吹出し口体7aから冷却空気が斜め下方に向かって吹き下ろされ、機器類4列間にいる人は冷風にさらされる。したがって、人は冷却空気の吹出し流による直接的な冷熱感が得られる。
【0008】
冷却空気の吹出し流は活動空間5の人や機器類4、あるいはフロア面3に衝突し、温度上昇するとともに流れにともなう上昇気流となる。そして、吹き抜け状に形成される高天井空間6に導かれ、さらにこの高天井空間に沿って下降し、ついには吸込み口8aに吸込まれる。
このようにして、上記吹出し口体7aから吹出される冷却空気の吹出し流が活動空間5を冷却したあと、吹き抜け状に形成される上記高天井空間6を介して吸込み口8aに導かれるので、建築物1内部に鉛直方向に大きな循環流Rが形成される。
【0009】
図11は、上記吹出し口体7aから吹出される冷却空気の風向きと流速を、建築物1内部の一部断面で吹出し口体7a部分を表したシュミレーション結果の図である。風向きと流速の大きさを、矢印の向きと大きさに置き換えて示している。
図から分かるように、活動空間5において吹出し口体7aが向いた方向では流速が大であり、この部分では極めて強い冷房効果が得られる反面、吹出し口体7aが向いていない方向では流速が小さくて冷房効果が低い。
すなわち、活動空間5の各部位における冷却ムラが顕著である。そして、流速が大である範囲にいる人にとって、常に強い吹出し流にさらされることになり、急流ドラフト感があって空調快適性が損なわれている。
【0010】
図12は、図11と同一断面において、建築物内の各部の温度をシュミレーションにより求め、得られた結果の温度分布図である。
上記吹出し口体7aから吹出される流速の最も大なる部位では最も低い温度(20℃)となっているが、流速の低下とともに温度変化が徐々に現れている。また、活動空間5の状態によっては、吹出し口体7aの吹出し方向とはある程度ずれた部位においても最も低温が計測されている。
【0011】
一方、高天井空間6は最も高い温度(40℃)が計測されることは当然であるが、この高温度帯範囲は高天井空間6の容量と比較して小さいことが特徴である。すなわち、高温度帯と低温度帯との間が広く、ここで緩やかな温度変化をなしている。
これは、再び図10に示すように、活動空間5から吹き抜け状に形成される高天井空間6に導かれる鉛直方向に大きな循環流Rが形成されることで、吹出し口体7aから吹出される冷却空気が高天井空間6へと流れ出すと同時に、この高天井空間6に溜まっていた熱気の一部が循環流Rにのって下部側の活動空間5までに導かれるのが要因であると考えられる。
【0012】
本来、活動空間5のみを冷房すればよく、高天井空間6については全く冷房対象外であるところを、結果として高天井空間6に溜まった熱気までも熱交換することとなり、無駄なエネルギーの消費がある。
さらに、活動空間5に対する熱交換効率を上げるために送風量を増大すると、より大きい循環流Rが生じて建築物1内部を上下方向にかき混ぜる傾向が強くなり、上述の不具合が増大してしまう。
【0013】
また、活動空間5において、たとえば遊技場では活動者の喫煙による煙の分散や、ショッピングセンターではショーケース内の食品などからの臭いの発生がある。
従来の空気調和運転において、このような煙や臭いは、再び図10に示す循環流Rに乗って高天井空間6まで導かれ、かつ撹拌される。そして、そのまま高天井空間6に充満し、高天井の内面に付着するという問題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、いわゆる活動空間の上部に高天井空間が形成される建築物において、上記活動空間に対して有効で効率のよい冷房作用を得られ、省エネ性に優れ、高天井空間での煙や臭いの撹拌を低減した空気調和方法と、空気調和装置を提供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明の空気調和方法は、内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物において、上記活動空間より高い位置から略水平方向に向けて冷却空気を吹出すことで、上記活動空間の上部に一定方向に周回させる周回気流を作り、上記冷却空気の吹出し位置よりも高くかつ上記一定方向に周回する旋回気流の内側となる高天井空間の下部略中央位置において複数ヶ所で建築物内部空気を吸込むことで上記活動空間を冷房する。
【0016】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明の空気調和装置は、内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物における、上記活動空間を冷房する空気調和装置において、その下辺高さが上記活動空間より高い位置に配置され、吹出し方向を建築物内壁面に沿うとともに略水平に向けられた吹出し口と、この吹出し口よりも高い位置で、かつ上記高天井空間の略下部に複数設けられ吸込み作用をなす吸込み口と、上記吹出し口および吸込み口とそれぞれ通風路を介して連通され、上記吹出し口から冷却空気を吹出し上記活動空間上部において冷却空気を一定方向に周回させる周回気流を作り、この周回気流を周回したあとの冷却空気を複数の吸込み口から吸込ませる装置本体とを具備した。
【0017】
さらに、上記吸込み口と上記装置本体とを連通する上記通風路中に、冷却空気を新鮮化する空気清浄手段が介設される。
さらに、上記周回気流の気流経路中に気流速度を上げるサーキュレータが配置される。
これによって、いわゆる高天井空間を備えた建築物の活動空間に対して有効で効率のよい冷房作用を得られ、省エネ性に優れた空気調和方法と、空気調和装置を得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は高天井空間を備えた建築物において、人の活動する活動空間に対する空気調和方法を説明するための建築物内部の透視図であり、図2は建築物の断面図であり、いずれも模式的に示している。
建築物1自体は、いわゆる半ドーム状の屋根2を載せていて、フロア面3には機器類4が所定間隔を存して複数列配列され、これら機器類列間にたとえばゲームする人が存在する。
【0019】
建築物1内部は、フロア面3から上記機器類4の上部までの空間が活動空間5であり、この活動空間の上部が吹き抜け状となっていて、屋根2内部が高天井空間6となる。
これら活動空間5上部と高天井空間6下部との間に、後述する空気調和装置を構成する吹出しユニット10と吸込みユニット11が配置され、建築物1外部には装置本体12が配置される。
【0020】
上記吹出しユニット10は機器類4よりも高い位置で、かつ建築物1内壁の各隅部に複数(建築物の平面視が矩形であるので4組)取付けられる。この吹出しユニット10は矩形箱体であり、一側面に吹出し口10aを備えている。
上記吹出し口10aの最下辺は上記機器類4の上端面よりも高い位置にあり、全て同一高さに揃えられる。そして、吹出し口10aは内壁面に沿って水平方向に吹出すように開口している。
【0021】
各吹出し口10aは個々の吹出しユニット10において互いに異なる側面に設けられていて、全ての吹出し口10aから冷却空気が一斉に吹出されることによって、一定方向に吹出し気流が向くよう吹出し方向が設定されている。
上記吸込みユニット11は、高さ位置が吹出しユニット10の上部にあり、かつ上記高天井空間6の略下部に位置する矩形箱体である。そして、平面視で建築物1内部の約中央部に、互いに所定間隔(約1.5M)離間した状態で、複数(ここでは2組)備えられる。
【0022】
各吸込みユニット11には、その下面に吸込み口11aが設けられている。すなわち、上記吸込みユニット11における吸込み作用は下方から行うことに限定される。
各吹出しユニット10の吹出し口10aが設けられる面以外の面、および吸込みユニット11の吸込み口11aが設けられる面以外の面には、通風路を構成するダクト13,14が接続されていて、建築物1外部に配置される上記装置本体12の吹出し部aと吸込み部bにそれぞれ連通される。
【0023】
上記装置本体12は、特に詳細は図示していないが、圧縮機、室外熱交換器および室内熱交換器他が収容され、これらは冷媒管を介して冷凍サイクルを構成するよう連通される。
さらに、室外熱交換器と対向して室外送風機が配置され、室内熱交換器と対向して室内送風機が配置される。室内送風機の吹出し側と吸込み側に、上記吹出し部aと吸込み部bが形成されている。
【0024】
このように、太陽光が直射する屋根2の内側である高天井空間6と、発熱条件の揃った活動空間5とを備えた建築物1であり、上記活動空間5に対して空気調和をなす空気調和装置の作用は以下に述べるように行われる。
操作者が冷房運転を指示すると、冷凍サイクル運転が開始されるとともに室内・室外送風機が駆動され、各吹出しユニット10の吹出し口10aから一斉に冷却空気である冷却空気が吹出される。
【0025】
全ての吹出し口10aが略水平方向に向き、かつ建築物1の内壁面に沿うよう開口され、しかも互いに所定方向に向くよう設定されているところから、吹出される冷却空気は活動空間5上部において建築物1内部をほぼ水平で、かつ一定方向に周回する周回気流Sとなる。
この周回気流Sは、吹出し口10aから離間することで徐々に流速が弱まり、時間の経過とともにその傾向が強くなる。また、吹出し空気は冷却されているため、周囲の空気よりも比重が重く、下方に沈むようになる。
【0026】
そして、周回気流Sとしての直径が徐々に縮小し、かつ周辺空気と熱交換して温度上昇する。したがって、周回気流Sは比重が軽くなり、周回を継続しながら高さ位置が徐々に高くなる。
上記吹出し口10aの上部で、ほぼ中央部位に設けられる2つの吸込み口11aには負圧がかかっていて、直径が徐々に縮小しかつ上昇してきた周回気流Sは、吸込み口11aとその周囲に集められ、ついには吸込まれる。
【0027】
このようにして、吹出し口10aから吸込み口11aに亘る、ほぼスパイラル状に形成される周回気流Sが得られ、冷凍サイクル運転中は継続して形成される。そして、この周回気流Sから活動空間5に下りてきた冷気によって、活動空間5に対する冷房作用をなす。
上記周回気流Sが形成される吹出し口10aの高さ位置から吸込み口11aの高さ位置に至る範囲の建築物1内部空間を、ここでは「周回気流空間」15と呼ぶ。これに対して、周回気流空間15の下部側に上記活動空間5があり、周回気流空間15の上部側に高天井空間6がある。
【0028】
すなわち、建築物1内部は、フロア面3から屋根2頂部に亘る高さ方向に、活動空間5と、周回気流空間15および、高天井空間6との、3つの空間が形成される。実質的に、上記周回気流空間15が、下部側の活動空間5と上部側の高天井空間6を分断する。
一方、冷房作用の対象空間である活動空間5には、人が存在するので人体負荷があり、さらには配置された機器類が発熱源となる機器負荷がある。また、太陽光が屋根2を直射するので、ここには日射負荷がある。
【0029】
図3は、周回気流空間15における吸込みユニット11近傍部位を横断面して平面視で表すとともに、この周回気流空間15における冷却空気の風向きと流速の大きさをシュミレーションした結果を表す流速分布図である。風向きと流速の大きさを、矢印の向きと大きさに置き換えて示している。
上記吹出し口10aから吹出された直後の冷却空気の流速が大であり、かつ内壁面に沿って導かれるうちに徐々に流速が落ちるとともに、徐々に直径を縮めて略スパイラル状に流れる。
【0030】
一方、吸込みユニット11相互間においては、他の吸込みユニット周辺部よりも流速が弱まっている様子が分かる。これは、それぞれの吸込みユニット11近傍で形成されるスパイラル状の流れが、吸込みユニット11相互間の部位で互いに衝突して流速を減衰させられ、この部分においてスパイラル状の流れが崩れて吸込まれることによる。
図4は、建築物1内部を1つの吸込みユニット11部分で断面し、かつ多数の部位における流速の大きさをシュミレーションした結果を表す図である。
すなわち、上述の構成を採用することにより、吹出し口10aと対向する部位においては流速が比較的大であるものの、この側部から下部に亘って流速が徐々に落ちる。吹出し口10aからさほど離れていない部位で、流速が極端に落ちて最も遅い流速となっている。
【0031】
上記吸込み口11a付近においても同様であり、この直下部においては流速が大であるが、わずかでも離れた部位では流速が落ちていて、さほど離れていない部位では流速が極端に落ち最も遅い流速となっている。
上述したような吹出しと吸込み作用をなすことにより、建築物1の内部空間のほとんど大部分は最も流速の遅い部分で占められている。したがって、特に活動空間5の機器類4列間にいる人にとって、ドラフト感がほとんどない状態での冷房運転が行われることになる。
【0032】
一方、1つの大型の吸込みユニットを周回気流空間15のほぼ中央部に配置して吸込み作用を行わせると、吹出し口10aから吹出されてスパイラル状に形成される周回気流がそのままの状態で吸込み口へ吸込まれることになる。
この場合、周回気流空間15から活動空間5に至る縦長の、いわゆる竜巻状の強い気流が形成され、流速の衰えがほとんど無い状態で吸込まれてしまう。したがって、この周回気流が活動空間5にいる人に衝突してドラフト感を与える虞れがあり、快適空調が損なわれてしまう。
【0033】
これに対して上述のように複数の吸込みユニット11を所定間隔を存して備えることにより、吸込みユニット11相互間部位で流速が減衰する。この影響が活動空間5全体に波及してソフトな流れとなり、活動空間にいる人にドラフト感を与えずにすみ、快適空調を得られる。
このようにして、高天井空間6を備えた建築物1において、空気の流れの状態が互いに異なる活動空間5と、周回気流空間15および高天井空間6が形成されるが、これら3つの空間には明確な境界面を持って分かれていると言えず、周回気流Sが支配的な周回気流空間15によって上下に高天井空間6と活動空間5が分断されたと考えるべきである。
【0034】
空調温熱環境の見地から述べるならば、周回気流空間15により上下に空間を分断するには、まず、周回気流空間15内に安定した周回気流Sが作られていなければならない。そして、吹出し口10aの下辺高さは、人や機器類4が存在する活動空間5よりも高い位置になるように設定する。
一方、高天井空間6には、特に流れを大きく妨げるものは存在していないので、周回気流Sの安定と言う意味ではこの上限を決める条件はない。周回気流空間15の上端は、吸込みユニット11の下面もしくは吹出し口10aの最上辺高さのいずれか高い方になる。
【0035】
上記吸込みユニット11部分において崩される周回気流Sは、下方の活動空間5においては弱い気流の周回気流を誘引し、上部の高天井空間6においては空気の流れをほとんど誘引せず、高天井空間6の空気と周回気流空間15間での空気の流れを遮断する形となる。
本来、冷房が不要な高天井空間6を空調しないことで、その分の被空調容積の低減が可能となり、省エネ効果に寄与する。さらには、高天井空間6を冷房せず高い温度のままとすることで、太陽光の日射によって高温となった屋根2との間に温度緩衝空間ができ、屋根2を冷却してしまうことによるエネルギー浪費もなくなって、この点においても省エネ効果の高い空調を得ることができる。
【0036】
図5は、建築物1内部の吸込みユニット11部分での断面における温度をシュミレーションしてまとめた温度分布図である。
最も低い温度(20℃)の範囲は吹出し口10aと対向する極く一部となり、フロア面3から吸込み口11aに至る高さ方向のほとんど大部分、すなわち活動空間5と周回気流空間15のほとんど大部分は冷房感覚を得るのに最適な温度(26℃)の範囲で占められている。
【0037】
一方、高天井空間6においてはその全域に亘りほぼ均一で最も高い温度(40℃)となっている。そして、この高温度帯と先に説明した低温度帯との間が極く狭く、急激に温度変化している。
これは、吹出し口10aから吹出されて活動空間5を冷房したあとの温度上昇した冷却空気が周回気流空間15から吸込み口10aに吸込まれ、ほとんど高天井空間6に導かれていないことを意味する。
【0038】
高天井空間6に溜まっている熱気はそのままの状態で溜り、吸込み口11aに導かれることがほとんど無い。換言すれば、活動空間5のみの有効な冷房運転が行えてエネルギーが有効に使われる。
以上によって、高天井空間6を備えた建築物1であっても、活動空間5に対して省エネ性に優れ、かつ快適性の高い空調を提供できることとなる。
【0039】
なお上述の実施の形態では、活動空間5と高天井空間6とが周回気流空間によって区画されるため、活動空間5で生じた煙草の煙や食品などの臭いなどが活動空間5から高天井空間6に流れ出すことを極力防止できる。
すなわち、図6(A)、(B)は、それぞれ本発明の実施の形態と、図10で示した従来の空気調和運転における活動空間5において所定量の発煙物質を発生させたときの安定時の高天井内面における物質濃度分布をシュミレーションして表した図である。
【0040】
図6(B)の従来例においては、表面濃度が0.13〜0.14mg/m3程度を示しているのに対して、図6(A)の本実施の形態では最も高いところで0.08mg/m3となっていて、活動空間5から上空の天井面へ舞い上がる物質の量が大幅に削減できることを示している。
したがって、従来、高天井空間6を含めた建築物1の内部空間全体に亘って拡散した煙草の煙や食品の臭いのほとんどを、本発明では高天井空間6に至らせることなく、吸込み口11aで捕捉可能となっている。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、半ドーム状の屋根2を備えた建築物1として説明したが、これに限定されるものではなく、通常の屋上が形成される屋根を備えた建築物であってもよく、要は、建築物内部に活動空間5と、この上部に吹き抜け状に形成される高天井空間6を備えた建築物であれば、全て本発明が適用される。
また、上記実施の形態においては、活動空間5と周回気流空間15を満たした冷却空気を吸込みユニット11からダクト14を介して装置本体12に導くようにしたが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、上記実施の形態においては、2つの吸込みユニット11を備えたが、これに限定されるものではなく、3つもしくはそれ以上備えていても全く支障がなく、要は、複数備えていればよい。
図7は、他の実施の形態の空気調和装置の構成を示す。なお、同図において先に図1、図2で説明したのと同一部位においては同番号を付して新たな説明を省略する。(以下、同様)
装置本体12は、室内熱交換器20と室内送風機21を収容する室内ユニット22と、圧縮機と、室外熱交換器および室外送風機(いずれも図示しない)を収容する室外ユニット23とから構成され、室内・室外ユニット22,23は冷媒管Pを介して互いに連通される。
上記室内ユニット22に設けられる冷却空気吹出し部aと、活動空間5に取付けられる吹出しユニット10とは通風路であるダクト13で連通され、吸込み部bと吸込みユニット11とは通風路であるダクト14で連通される。
【0043】
そのうえで、上記吸込み側のダクト14の中途部に空気清浄手段24を備え、必要に応じて冷却空気を新鮮化すれば、さらに快適な空調運転が行われる。大人向けの遊技場では喫煙量が多く建築物1内部空気が汚れ易いので、このような構成を採用すれば特に有効である。
上記空気清浄手段24として、吸込み側ダクト14に導かれる冷却空気をイオン化作用で清浄化する空気清浄機でもよく、外部の新鮮空気を取り入れて吸込み側ダクト14に導かれる冷却空気に混合させる換気扇であってもよい。
【0044】
さらに、空気清浄手段24として、外部の新鮮空気を取り入れる一方で吸込み側ダクト14に導かれる冷却空気を外部に排出し、互いの空気を熱交換させる、いわゆる全熱交換器であってもよい。
また、上述の実施の形態では、吹出しユニット10を建築物1内の隅部に取付けることにより合計4組備えたが、これに限定されるものではない。
たとえば、図8(A)に示すように、対向する隅部に合計2組の吹出しユニット10を備え、残りの対向する隅部に合計2組のサーキュレータ25を備えてもよい。
【0045】
これら吹出しユニット10とサーキュレータ25は一定方向に周回気流Sを形成するように吹出し方向が揃えられており、空気調和装置の能力に関係なく十分に気流速度を上げた周回気流Sを形成できる。
あるいは、建築物1の面積が小さい場合には、図8(B)に示すように、吹出しユニット10を1つの隅部だけに取付け、他の3つの隅部は全てサーキュレータ25を備えるようにしても、同様の作用効果が得られ、かつ設備費の削減化を図れる。
【0046】
また、上述した空気調和装置は1つの建築物を対象としたが、これに限定されるものではない。すなわち、上述した空気調和装置の構成を1ユニットとし、建築物のフロア形態など必要に応じて追加することができる。
具体的には、図9(A)に示すように、上述のように構成された空気調和装置Kを備える既存の1ブロックBaに隣接して、他の1ブロックBbを増築し、ここにも空気調和運転をなす計画があるとする。
【0047】
建築物1A自体は、既存のブロックBaにおける増設ブロックBb側の壁を除去して、他の1ブロックBbを隣接する。そして、増設側ブロックBbに同様構成の空気調和装置Kを1ユニット備える。
ただし、互いの空気調和装置Kにおける吹出しユニット10は、既存のブロックBaと隣接するブロックBbのそれぞれに互いに逆方向の周回気流Sが得られるように配置する必要がある。
【0048】
なお説明すれば、各ブロックBa,Bbの互いに隣接する境界部Nにおいて、一方の端部では互いの吹出しユニット10の吹出し方向を同一に揃え、他方の端部では互いの吹出しユニット10の吹出し方向を互いに逆方向に向ける。
図において、既存のブロックBaでは反時計回り方向の周回気流Sが形成され、増設側のブロックBbでは時計回り方向の周回気流Sが形成される。結局、各ブロックBa,Bbの境界部Nでは互いに同一方向に周回気流S,Sが導かれ、互いの気流が助成しあって流速が増大し、空調効率の向上を得られる。
【0049】
あるいは、図9(B)に示すように、変形状態で組み合わされるブロックB1,B2…においても、それぞれのブロックに上記空気調和装置Kのユニットが配置され、かつ互いに隣接するブロックの境界部Nでは同一方向に周回気流Sが導かれるように構成すれば、同様の作用効果が得られる。
このようにして、建築物1の形態に応じて、たとえば長方形床面やL字形床面、あるいは大正方形床面などであっても、いずれにも支障なく対応できる空気調和が行える。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、高天井空間を備えた建築物において、下部の人が活動する活動空間と上部の高天井空間との間に中央で崩れる周回気流を作り出すことで、活動空間と高天井空間との空気の流れを抑制し、高天井空間の空調は行わないことで省エネ化するとともに、活動空間においては弱い気流によって冷房することで気流ドラフト感を低減し、快適性の向上を得られる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る、建築物の活動空間に対する空気調和方法を説明する図。
【図2】同実施の形態に係る、建築物の概略の断面図。
【図3】同実施の形態に係る、吸込みユニットの近傍部位を横断面にして冷却空気の吹出し方向と流速の大きさをシュミレーションして表した図。
【図4】同実施の形態に係る、1つの吸込みユニット部分で断面にして冷却空気の流速の大きさをシュミレーションして表した図。
【図5】同実施の形態に係る、図4と同一部位で断面にして温度分布をシュミレーションして表した図。
【図6】本発明の実施の形態と、従来例の高天井空間における物質濃度分布をシュミレーションして表した図。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る、空気調和装置の構成図。
【図8】さらに他の実施の形態に係る、互いに異なる空気調和装置の構成図。
【図9】さらに他の実施の形態に係る、互いに異なる空気調和装置の構成図。
【図10】従来の、高天井屋根を備えた建築物の活動空間に対する空気調和方法を説明する図。
【図11】同従来の、吹出し口体部分の断面で冷却空気の吹出し方向と流速の大きさをシュミレーションして表した図。
【図12】同従来の、図11と同一部位で断面にして温度分布をシュミレーションして表した図。
【符号の説明】
2…屋根、
5…活動空間、
6…高天井空間、
1…建築物、
10a…吹出し口、
11a…吸込み口、
13,14…ダクト(通風路)、
S…周回気流、
15…周回気流空間、
25…サーキュレータ、
24…空気清浄手段。

Claims (4)

  1. 内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物において、
    上記活動空間より高い位置から略水平方向に向けて冷却空気を吹出すことで、上記活動空間の上部に一定方向に周回させる周回気流を作り、上記冷却空気の吹出し位置よりも高くかつ上記一定方向に周回する旋回気流の内側となる高天井空間の下部略中央位置において複数ヶ所で建築物内部空気を吸込むことで上記活動空間を冷房することを特徴とする空気調和方法。
  2. 内部に人が活動する活動空間および、この活動空間から上方に吹き抜け状に形成される高天井空間を備えた建築物における、上記活動空間を冷房する空気調和装置において、
    その下辺高さが上記活動空間より高い位置に配置され、吹出し方向を建築物内壁面に沿うとともに略水平に向けられた吹出し口と、
    この吹出し口よりも高い位置で、かつ上記高天井空間の略下部に複数設けられ吸込み作用をなす吸込み口と、
    上記吹出し口および吸込み口とそれぞれ通風路を介して連通され、上記吹出し口から冷却空気を吹出し上記活動空間上部において冷却空気を一定方向に周回させる周回気流を作り、この周回気流を周回したあとの冷却空気を上記複数の吸込み口から吸込ませる装置本体と
    を具備したことを特徴とする空気調和装置。
  3. 上記吸込み口と上記装置本体とを連通する上記通風路中に、冷却空気を新鮮化する空気清浄手段が介設されることを特徴とする請求項2記載の空気調和装置。
  4. 上記周回気流の気流経路中に、気流速度を上げるサーキュレータが配置されることを特徴とする請求項2記載の空気調和装置。
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