JP3756571B2 - 呼吸用保護装置の正圧/負圧アダプタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正圧式と負圧式との複合形の呼吸用保護装置に関し、特に、呼吸用保護装置で使用される正圧/負圧アダプタにする。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
呼吸用保護装置は、塗装ブース、穀物貯蔵設備、実験室、汚染物質が存在する生産設備等の、様々な危険環境において使用される。一般に呼吸用マスクは、様々な異なる危険環境において同一構造のフェースマスクを使用できるように、呼吸可能な空気源を装着者に供与するための多様なフィルタカートリッジ又は給気コネクタを受容するようになっている。
【0003】
呼吸用保護装置は、正圧式呼吸用保護装置と負圧式呼吸用保護装置との2種類に大別される。一般に正圧式呼吸用保護装置は、フェースマスク内に清浄空気を圧送するための外部のポンプ又は加圧槽等の正圧空気源を備える。正圧空気源は、清浄で呼吸可能な空気をフェースマスクに過剰に送給する。正圧空気源によってフェースマスク内に生じる正味正圧は、環境空気がマスクのフェースシール周辺に引き込まれることを防止する。
【0004】
正圧式呼吸用保護装置に使用される正圧空気源の一例は、動力付空気浄化式呼吸器(PAPR)である。一般に動力付空気浄化式呼吸器は、フェースマスクから使用者が着装した電池式送風装置まで延びる呼吸管を備える。この送風装置は一般に、環境空気から汚染物質を除去するためのフィルタを収容する。動力付空気浄化式呼吸器は、使用者が空気導管に束縛されることなく自由に動ける利点を有する。しかし動力付空気浄化式呼吸器は、定常流式呼吸器に比べて高価になる傾向がある。また動力付空気浄化式呼吸器は、電池作動式のため、限られた時間しか使用できない。しかも一般に動力付空気浄化式呼吸器は、電池式送風装置が小口径の呼吸管に対し充分な圧力を生じ得ないので、大口径(約25mm)の呼吸管を必要とする。このような大口径の呼吸管は、使用者にとって扱い難いものである。
【0005】
或いはまた、正圧空気源は、空気導管によって使用者に連結されるコンプレッサ又は圧力槽であることもできる。一般にこのようなシステムは、使用者に呼吸可能な空気を供給するためのフィルタをコンプレッサに備える。しかし適用によっては、空気導管が使用者の特定の動作遂行能力を制限する場合がある。また、空気導管がもつれたり、加圧空気の供給が不意に停止したりして、使用者を汚染物質に曝す可能性がある。
【0006】
他の種類に大別される呼吸用保護装置は、使用者の吸い込みにより空気がフィルタカートリッジを通してフェースマスク内に引き込まれるので、負圧式呼吸用保護装置と呼ばれる。フィルタカートリッジは、気体及び蒸気に対する防護用の吹込微小繊維や炭素式システム等の多様な濾過要素を備える。負圧式呼吸用保護装置は、装着者が空気導管を引きずらずにすみ、また高価な動力付空気浄化式呼吸器を着装する必要がないという利点を有する。負圧式呼吸用保護装置の欠点は、使用者が濾過媒体を通して空気を吸い込むのに肺の力を用いなければならず、またそれにより生じたフェースマスク内の負圧が汚染物質をフェースシール周辺に引き込んでしまう可能性がある点にある。また、濾過媒体を通して空気を吸引するために肺の呼吸力を使用すると、フェースマスクの温度が上がり、装着者が不快感を被る傾向がある。したがって一般に負圧式呼吸用保護装置は、正圧式呼吸用保護装置に比べて保護能力が低くなっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、使用者に着装された携帯型の呼吸用保護装置に正圧空気源を流体流通可能に連結するための空気圧アダプタにおいて、呼吸用保護装置に直接に接続できるアダプタハウジングであって、正圧空気源に接続できる入口部と、呼吸用保護装置に流体流通可能に接続できる出入口領域とを、アダプタハウジングの内部で互いに流体流通可能に連結して備えるアダプタハウジングと、入口部と出入口領域との間に介在する多孔部材であって、空気導管騒音を低減するとともに、入口部から出入口領域への空気の流動を許容する多孔部材と、を具備することを特徴とする空気圧アダプタを提供する。
請求項2に記載の発明は、フィルタカートリッジを備えた呼吸用保護装置に正圧空気源を流体流通可能に連結するための正圧/負圧アダプタにおいて、フィルタカートリッジを呼吸用保護装置に流体流通可能に連結するための出入口領域と、正圧空気源を出入口領域に接続するための入口部と、正圧空気源からの正圧に応答して出入口領域からフィルタカートリッジへの空気の流れを制限する第1逆止弁とを有するアダプタハウジングを具備することを特徴とする正圧/負圧アダプタを提供する。
請求項3に記載の発明は、使用者に着装されて正圧空気源とともに使用される携帯型の呼吸用保護装置であって、排気口と少なくとも1つの吸入口とを備えたフェースマスクと、少なくとも1つの吸入口に流体流通可能に接続できるアダプタハウジングであって、正圧空気源に接続できる入口部と、フェースマスクに流体流通可能に接続できる出入口領域とを、アダプタハウジングの内部で互いに流体流通可能に連結して備えるアダプタハウジングと、入口部と出入口領域との間に介在する多孔部材であって、空気導管騒音を低減するとともに、入口部から出入口領域への空気の流動を許容する多孔部材と、を具備することを特徴とする呼吸用保護装置を提供する。
【0008】
呼吸用保護装置から出入口領域への空気の流れを制限するために、第2逆止弁を設けることができる。
本発明はまた、上記の正圧/負圧アダプタにおいて、第1逆止弁が、出入口領域をフィルタカートリッジに流体流通可能に連結するための吸入口に設置される正圧/負圧アダプタを提供する。
【0009】
第2逆止弁は、正圧/負圧アダプタ又は呼吸用保護装置に設けた吸入口に設置できる。
本発明はまた、上記の正圧/負圧アダプタにおいて、アダプタハウジングがさらに、入口部と出入口領域との間に介在される多孔部材を備える正圧/負圧アダプタを提供する。
【0010】
本発明はまた、上記の正圧/負圧アダプタにおいて、多孔部材が、焼結金属、多孔ポリプロピレン、多孔ポリエチレン、多孔アセタール、多孔セラミック及び多孔ガラスビーズ構造を含むグループから選択される正圧/負圧アダプタを提供する。
多孔部材は、マフラー、ディフューザ、又はそれら両方の機能を有することができる。
【0011】
本発明はまた、上記の正圧/負圧アダプタにおいて、アダプタハウジングと呼吸用保護装置とが1つのユニットとして形成される正圧/負圧アダプタを提供する。
アダプタハウジングとフィルタカートリッジとを1つのユニットとして形成することもできる。
【0012】
本発明はまた、上記の正圧/負圧アダプタにおいて、入口部を正圧空気源に連結する空気導管をさらに具備する正圧/負圧アダプタを提供する。
本発明はまた、上記の正圧/負圧アダプタにおいて、フェースマスク、排気口及び少なくとも1つの吸入口を備え、出入口領域が呼吸用保護装置の少なくとも1つの吸入口に流体流通可能に連結される正圧/負圧アダプタを提供する。
【0013】
正圧空気源は、小形の動力付空気浄化器か、又はコンプレッサ若しくは加圧槽から供給される定常空気流を有することができる。空気導管は、装着者を空気導管から離脱できるようにする急速解除機構を備えることができる。呼吸用保護装置は、正圧空気源から分離されると、負圧式呼吸用保護装置として作用する。逆止弁は、環境空気が呼吸用保護装置内に吸引されように、急速解除機構とフェースマスクとの間に配置されることが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、正圧空気源に接続可能な正圧/負圧式呼吸用保護装置であって、排気口と少なくとも1つの吸入口とを備えたフェースマスク、フィルタカートリッジを少なくとも1つの吸入口に流体流通可能に連結する出入口領域と正圧空気源に接続可能な入口部とを備えた正圧/負圧アダプタ、及び正圧空気源からの正圧に応答して出入口領域からフィルタカートリッジへの空気の流れを制限すべく配置された第1逆止弁を具備することを特徴とする正圧/負圧式呼吸用保護装置を提供する。
【0015】
本発明の正圧/負圧式呼吸用保護装置は、フェースマスクの吸引口に、正圧式呼吸用保護装置と負圧式呼吸用保護装置との両機能を付与する。第2逆止弁は、フェースマスク室から正圧/負圧アダプタへの空気の流れを制限するために、フェースマスクに近接して設置することができる。
さらに本発明は、正圧/負圧複合形呼吸用保護装置の操作方法であって、フィルタカートリッジを呼吸用保護装置に流体流通可能に連結するための正圧/負圧アダプタに正圧空気源を接続し、呼吸用保護装置が正圧式呼吸用保護装置として作動するように、正圧空気源からの正圧に応答して正圧/負圧アダプタからフィルタカートリッジへの空気の流れを制限し、少なくとも一部の空気がフィルタカートリッジを通して呼吸用保護装置に導入されるように、正圧空気源から正圧/負圧アダプタへの空気の流れを低減する各ステップを備えたことを特徴とする方法を提供する。
【0017】
なお本明細書において、「環境空気」という用語は周囲の空気を意味する。「逆止弁」という用語は、一方向への流れを自動的に制限するためのあらゆる装置を意味する。「汚染物質」という用語は、呼吸に有害な気体状、蒸気状又は粒子状の化学物質を意味する。「外部環境」という用語は、呼吸用保護装置の外部の環境空気を意味する。「フェースマスク」という用語は、使用者の顔、首、頭等を密着係合状態で完全に又は部分的に覆うマスクを意味する。「被覆成形」という用語は、付加的な成形構造を追加するために物体に成形工程を行うことを意味する。「正圧空気源」という用語は、呼吸用保護装置に呼吸可能な空気を圧送する装置を意味し、動力付空気浄化式呼吸器(PAPR)、定置空気ポンプないしコンプレッサ、加圧槽等の、小形空気ポンプを含む。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、正圧/負圧複合形の呼吸用保護装置20を示す。一対の正圧/負圧アダプタ22、24は、部分フェースマスク26にそれぞれの吸入口(図4)にて連結される。フェースマスク26は、逆止弁(図示せず)を有した排気口28と、使用者への着装用のストラップ30とを備える。部分フェースマスク26は使用者の口と鼻とを実質的に覆う。本発明に係る正圧/負圧アダプタは、あらゆる型式のフェースマスクとともに使用できる。
【0019】
一対のフィルタカートリッジ32、34は、正圧/負圧アダプタ22、24にそれぞれ取付けられる。Yコネクタ37を備えた空気導管36は、各アダプタ22、24を正圧空気源38に連結する。各一対の正圧/負圧アダプタ22、24及びフィルタカートリッジ32、34を使用したので、呼吸用保護装置20は実質的水平に平衡した状態に保持される。しかしながら本発明は、各1個のアダプタ及びフィルタカートリッジを備えた呼吸用保護装置を包含するものである。
【0020】
空気導管36は、逆止弁40と急速解除機構42とを備え、使用者と正圧空気源38との連結を迅速に解除できるようになっている。逆止弁40は、空気導管36を正圧空気源38から外したときに、環境空気がフェースマスク26内に吸い込まれることを防止する。逆止弁40は、急速解除機構42と呼吸用保護装置20との間の空気導管36に沿って、いかなる場所にも配置できる。この用途で好適に使用されるのは、ニュージャージ州バトラーのジェネラントカンパニーから商標名ICVシリーズで知られている逆止弁である。空気導管36又は逆止弁40は、低圧警報装置を内蔵することができる。低圧警報装置は、正圧空気源38からの空気流が所定レベルよりも低下したこと、及びフィルタカートリッジ32、34がそれらの空気の少なくとも一部を供与していることを、使用者に警告する。
【0021】
図2は、図1の呼吸用保護装置20の側面図であり、フェースマスク26から前方へ延びる空気導管36を示す。ベルトクリップ39は、空気導管36を使用者に取付けるために設けられ、呼吸用保護装置20が使用者の顔(図示せず)から不注意に引っ張られないようになっている。
図3は、正圧/負圧アダプタ22、24の断面斜視図であり、空気導管36から空気分配路50に流入する空気の流れを矢印で示す。図3に示す実施形態では、空気分配路50は後述するように出入口領域52を実質的に取り巻いて延びる。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な形状の空気分配路を使用できる。差込コネクタ60は、アダプタハウジング23の吸入口68に隣接して設けられる。
【0022】
供給された空気は、矢印で示すように空気分配路50に進入し、多孔部材54を径方向へ通り抜けて出入口領域52へ流入する。多孔部材54は、焼結材料(例えば黄銅)、多孔ポリプロピレン又はアセタール、多孔セラミック又はガラスビード構造、等の様々な多孔材料から形成できる。この用途で好適に使用されるのは、ペンシルバニア州リーディングのジェネラルポリメリックで生産されている平均孔径100μm の多孔ポリエチレンである。
【0023】
空気導管騒音減衰試験
呼吸用マスクを、空気導管、アダプタ、弁、及びフェースマスク金具類を通る空気流によって生じる騒音の大きさに関し、カーペット及び吸音天井処理を施した静粛な実験室で試験した。試験された呼吸用マスクは、マネキンの頭部に固着され、集音マイクは頭部表面から3.5cm離れて、模擬の耳に対応する位置に設置された。空気流によって生じた音は、マイク、プリアンプ、及びA特性の信号アンプ(デンマーク国ニーラムの Bruel&Kjaer社から入手可能なモデル2610)を用いて捕捉された。信号は、rms.(実効値)平均で1/3オクターブモードに設定されたダイナミックシグナルアナライザ(ワシントン州エベレットのヒューレットパッカード社から入手可能なモデル3561A )を用いて分析された。分析周波数帯域幅は12.5Hz〜20KHz であった。マイク、プリアンプ及びアンプは、音量校正器( Bruel&Kjaer社から入手可能なモデル4230)を用いて校正された。ハーフマスク形呼吸用保護具(ミネソタ州セントポールの3M社から入手可能な3MブランドのEasi-Air(商標名)7200)が、空気導管アダプタ(3M社W-3187)を備えたものと、本発明のアダプタ(多孔部材(すなわちマフラー)54を有するものと有しないもの)を備えたものとに関して、3.304リットル毎秒の空気流で試験された。多孔部材54の寸法は、外径4.0cm、内径3.3cm、高さ1.1cmであった。マイクで測定された音圧レベルを、以下の表に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上表が示すように、マフラーは、12.5Hz〜20KHz の周波数領域に亙って積分音圧レベルを典型的に20dB低減させる。これは、マフラー部材を持たないアダプタで得られた結果の4分の1の騒音レベルに相当する。さらに多孔部材54は、空気流の強さを分散させるディフューザとして作用し、フェースマスク26に進入する空気の最大速度を減少させる一方で、使用者の要求を上回る供給空気を間断無く流通させる。
【0026】
図4は、正圧/負圧アダプタ22又は24の断面側面図であり、フィルタカートリッジ32又は34をフェースマスク26の1つの吸入口62に流体の流通が可能なように連結する状態を示す。フィルタカートリッジ32(34)は、アダプタ22(24)の吸入口68に設けた差込コネクタ60に取付けられる。フェースマスク26の吸入口62に隣接して、対応の差込コネクタ60′が設けられる。好適な実施形態では、差込コネクタ60、60′は同一構造であり、フィルタカートリッジ32(34)をフェースマスク26に直接取付け可能となっている。しかし適用によっては、一方の差込コネクタ60、60′の構造を変更して、それに取付けられる部材の構造を限定することが望ましい場合もある。アダプタ22(24)とフィルタカートリッジ32(34)及びフェースマスク26との間には、それぞれシール64を介在させることが好ましい。これらシールは、様々な弾性材料から構成できるが、独立気泡ウレタンゴム又はシリコーンがこの用途では好適である。
【0027】
図示実施形態では差込コネクタ60、60′を開示したが、本発明は、様々な構成要素22、24、26、32、34を流体の流通が可能なように連結するために使用されるこのようなコネクタの形式を限定するものではない。所望によりガスケットを用いてシールされた状態で対応の一体形シリンダに螺着されるねじ付部材を恒久的又は着脱可能に受容する形式のコネクタも、本発明の範囲内で採用可能である。また、幾つかの構成要素を1つのユニットとして形成することもできる。例えば、フィルタカートリッジ32(34)とアダプタ22(24)とをユニット化できる。或いは、フェースマスク26の吸入口62とアダプタ22(24)とを1つのユニットとして形成できる。
【0028】
図4に示すように、空気が多孔部材54を通過して出入口領域52に進入すると、正圧弁66は、空気が吸入口68を通ってフィルタカートリッジ32(34)に進入するのを制止する。正圧弁66は、吸入口68にて形成された開口内に実質的に延びる支持部70に取付けられる。空気の圧力は、正圧弁66をアダプタハウジング23に設けた弁座72に押し付け、弁のシール力を増強する。正圧空気源38が使用者の要求を満たす空気流を供給しない場合は、使用者の吸入作用が、フェースマスク室84内に正味負圧を生じさせる。正味負圧は弁66を弁座72から引き離し、カートリッジ32(34)を通して空気を吸引することを可能にする。図示実施形態では、正圧弁66は、シリコーンゴム等の高可撓性材料から形成されるダイヤフラム弁である。この用途で様々な構造の逆止弁を好適に使用でき、本発明はこのような逆止弁を特定の形式に限定するものではない。
【0029】
吸入弁80は、吸入口62に隣接した開口82を横断するように配置され、出入口領域52内の空気が、フェースマスク26と使用者の顔(図示せず)との間に画成されるフェースマスク室84に進入することを可能にする。吸入弁80もまた、シリコーンゴム等の高可撓性材料から形成できる。図示構成の代わりに、吸入弁80をアダプタハウジング23に設置してもよい。使用者の呼気の間に生じるフェースマスク室84内の正味正圧は、吸入弁80を弁座86に対して押し付ける。フェースマスク室84内の過剰な圧力は、排気口28(図1参照)から放出される。
【0030】
正圧空気源38は、例えばコンプレッサの作動不良、空気導管36の偶発的なもつれや切断、機動性の向上を目的とした使用者による意図的な空気導管36の分離等の、様々な理由で縮小されたり終結されることがある。図5の矢印は、正圧空気源38が使用者の要求により縮小され、又は終結されたときの、呼吸用保護装置20を通る空気の流れを示す。出入口領域52に正圧が生じないので、正圧弁66は弁座72から持ち上げられて、空気がフィルタカートリッジ32(34)を通って流れることを可能にする。図5に示す状態では、呼吸用保護装置20は負圧装置として作用し、使用者の肺活量に依存して、空気をフィルタカートリッジ32(34)の開口90を通し、濾過媒体92を通過させて、フェースマスク室84内に吸い込む。図4に関連して説明したように、使用者の呼気時に吸入弁80が弁座86に押し付けられ、フェースマスク室84内の過剰な圧力は、排気口28(図1参照)から放出される。
【0031】
使用者が空気導管36を正圧空気源38から分離した場合、呼吸用保護装置20が負圧モードで作動しているときは、空気導管36内の逆止弁40が、汚染空気が空気導管に吸い込まれるのを防ぐ。図1に示す実施形態では、逆止弁40は、使用者が正圧空気源38から呼吸用保護装置20を分離することを可能にする急速解除機構42に隣接して配置される。
【0032】
図6(a)、(b)は、正圧/負圧アダプタ22、24の製造方法の一例を示す。アダプタの主要構成要素は、ベース100、カバー102、多孔部材54、及びガスケット55である。ベース100は、フェースマスク26の差込コネクタ60′に係合する雌差込コネクタ60Fを備える。さらにベース100は、空気導管36を保持するための嵌め輪又は他の許容できる固定手段を有した引っかけ付コネクタ104を備える。空気導管36を引っかけ付コネクタ104に保持するために、引張板ばね及び保持クリップを追加することもできる。ベース100及びカバー102は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の様々な高分子材料から形成できる。この用途では、ミネソタ州ミネアポリスのHimontから入手可能なポリプロピレン6323が好適である。
【0033】
空気導管36は一般に、引っかけ付コネクタ104の外径に相当する6mmの内径を有するが、内径3mmの空気導管も好適に使用される。小形の動力付空気浄化式呼吸器を使用するアプリケーションに関しては、一般に25mmの孔径を有した空気導管が要求される。引っかけ付コネクタ104の外径は、いかなる寸法の空気導管をも受容するように製造できる。この用途では、テキサス州ヒューストンのシェルケミカル社から入手可能なShell Kraton G2701及びG2705 の50/50 混合物から形成される管を使用できる。
【0034】
図6(b)は、空気導管36をコネクタ104に取付ける方法、及びベース100とカバー102との間に気密シールを形成する方法の一例を示す。空気導管36に取付けられたアダプタハウジング23は、型内に配置されて高分子材料106を被覆成形される。この用途では様々な高分子材料106を使用できるが、特定の高分子材料の適合性により、理想の機械的強度及び気密シールを形成する化学接着を生じることが分かっている。例えば、バーモント州セントアルバンスのクオリティサービステクノロジーから入手可能な商標名Monprene 2850Mで販売されている高分子材料、前述のKraton、又はポリプロピレンは、ポリプロピレンからなるベース100及びカバー102、並びにKraton又はMonpreneからなる空気導管36に特に適合する。
【0035】
図7(a)、(b)は、一対のアダプタ22、24を連結するためのYコネクタ37を形成する被覆成形技術の使用を示す。Y取付具110は、空気導管36の3つの部分に取付けられる。次いでY取付具110と空気導管36とは、上記材料を用いて、図7(b)に示すように被覆成形される。
図8及び図9は、呼吸用保護装置20の変形例を示す。この変形例では、空気導管36がフェースマスク26の後方に延長される。図9に示すように、空気導管36は使用者の背後に向けて延長され、使用者の活動を妨げないようになっている。
【0036】
図10は、呼吸用保護装置20の他の変形例を示す。この変形例では、フィルタカートリッジ32、34が取外され、代わりに弁蓋112、114が取付けられている。図10に示す構成では、呼吸用保護装置20は、図1に実質的に対応する正圧式呼吸用保護装置としてのみ作動する。
図11は、変形例としてフルフェースマスク式の呼吸用保護装置20′を示す。この装置は、正圧空気源38に接続された一対の正圧/負圧アダプタ22′、24′を備える。フルフェースマスク式の呼吸用保護装置20′は、一般に使用者の口、鼻及び両目を覆う。
【0037】
上記した種々の実施形態は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の他の様々な修正は上記説明から当業者に自明であろう。上記説明は、発明を明示するための特定の実施形態を例示するものであって、本発明は、上記実施形態、及びそれに含まれる特定の要素、寸法、材料、形状に限定されるものではない。本発明の様々な修正及び変形は、特許請求の範囲の記載に包含される。
【図面の簡単な説明】
【図1】正圧空気源に接続された正圧/負圧アダプタを備える呼吸用保護装置の概略図である。
【図2】図1の呼吸用保護装置の側面図である。
【図3】正圧/負圧アダプタの切り欠き斜視図である。
【図4】正圧空気源に接続された正圧/負圧アダプタを備える呼吸用保護装置の断面側面図である。
【図5】正圧空気源が縮小又は終結された状態の、図4の呼吸用保護装置の図である。
【図6】(a)被覆成形前の正圧/負圧アダプタの断面側面図、及び(b)被覆成形後の正圧/負圧アダプタの断面側面図、である。
【図7】(a)被覆成形前の正圧/負圧アダプタ用のY取付具の斜視図、及び(b)被覆成形後の正圧/負圧アダプタ用のY取付具の斜視図、である。
【図8】図1の呼吸用保護装置の変形形態を示す図である。
【図9】図8の呼吸用保護装置の側面図である。
【図10】フィルタカートリッジを取り外した図1の呼吸用保護装置の変形形態を示す図である。
【図11】正圧空気源に接続された正圧/負圧アダプタを備えるフルフェースマスク式の呼吸用保護装置の変形形態を示す図である。
【符号の説明】
20…呼吸用保護装置
22、24…正圧/負圧アダプタ
26…フェースマスク
32、34…フィルタカートリッジ
36…空気導管
38…正圧空気源
40…逆止弁
54…多孔部材
66…正圧弁
80…吸入弁
Claims (3)
- 使用者に着装された携帯型の呼吸用保護装置に正圧空気源を流体流通可能に連結するための空気圧アダプタにおいて、
前記呼吸用保護装置に直接に接続できるアダプタハウジングであって、前記正圧空気源に接続できる入口部と、前記呼吸用保護装置に流体流通可能に接続できる出入口領域とを、該アダプタハウジングの内部で互いに流体流通可能に連結して備えるアダプタハウジングと、
前記入口部と前記出入口領域との間に介在する多孔部材であって、空気導管騒音を低減するとともに、該入口部から該出入口領域への空気の流動を許容する多孔部材と、
を具備することを特徴とする空気圧アダプタ。 - フィルタカートリッジを備えた呼吸用保護装置に正圧空気源を流体流通可能に連結するための正圧/負圧アダプタにおいて、
前記フィルタカートリッジを前記呼吸用保護装置に流体流通可能に連結するための出入口領域と、前記正圧空気源を該出入口領域に接続するための入口部と、該正圧空気源からの正圧に応答して該出入口領域から該フィルタカートリッジへの空気の流れを制限する第1逆止弁とを有するアダプタハウジングを具備することを特徴とする正圧/負圧アダプタ。 - 使用者に着装されて正圧空気源とともに使用される携帯型の呼吸用保護装置であって、
排気口と少なくとも1つの吸入口とを備えたフェースマスクと、
前記少なくとも1つの吸入口に流体流通可能に接続できるアダプタハウジングであって、前記正圧空気源に接続できる入口部と、前記フェースマスクに流体流通可能に接続できる出入口領域とを、該アダプタハウジングの内部で互いに流体流通可能に連結して備えるアダプタハウジングと、
前記入口部と前記出入口領域との間に介在する多孔部材であって、空気導管騒音を低減するとともに、該入口部から該出入口領域への空気の流動を許容する多孔部材と、
を具備することを特徴とする呼吸用保護装置。
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