JP3750742B2 - ポリプロピレン系合成紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリプロピレン系合成紙に関する。詳しくは、オフセット印刷適性及び溶融型熱転写印刷適性に優れ、かつ溶融型熱転写印字後の耐水性、耐薬品性に優れ、印字層と基材フィルムとの密着が良好なポリプロピレン系合成紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融型熱転写印刷法は、熱溶融性インキを擁する熱転写リボンと転写用紙をサーマルヘッドとプラテンロールの間に通し、サーマルヘッドで押圧しながら熱転写リボンに熱を加え、軟化、溶融させたインキを転写用紙に融着させる印刷方法である。この印刷方法に用いられる転写用紙としては高光沢紙、上質紙、白色プラスチックシート、OHPシート、合成紙等があるが普通紙にクレー、炭酸カルシウム等の無機顔料が内添された上質紙が多く使用される。しかしながら高光沢紙や上質紙は耐水性、耐薬品性に劣り、屋外に使用する用途や薬品ビン等のラベル等には不向きであった。また白色プラスチックシートはクッション性がないため印字性に劣っていた。
【0003】
内部にボイドを有するポリプロピレン系合成紙は印字性に優れるが、印字層と支持体となる合成紙間の密着性が不十分であり、また薬品の種類によっては印字部分が脱落する等の問題があるため使用用途が限定されていた(例えば、引用文献1参照)。これを改善するため、表層にプライマー層が設けられたポリプロピレン系合成紙が提案された(例えば、引用文献2参照)が、更に改善が求められていた。
【0004】
【特許文献1】
特許第3003847号公報
【特許文献2】
特開平8−80684号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、オフセット印刷適性及び溶融型熱転写印刷適性に優れ、かつ溶融型熱転写印字後の耐水性、耐薬品性に優れ、印字層と基材フィルムとの密着が良好なポリプロピレン系合成紙を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり空洞を含有する基層フィルムと、基層フィルムの両面に積層された結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり実質的に空洞を含有しない表層フィルムとからなる基材フィルム(A)の少なくとも片面上に、架橋性共重合体層(B)を設け、架橋性共重合体層(B)の上に、無機充填剤粉末を含有した特定の水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)を設けたポリプロピレン系合成紙によって本課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下の構成を有する。
(1)結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり空洞を含有する基層フィルムと、基層フィルムの両面に積層された結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり実質的に空洞を含有しない表層フィルムとからなる基材フィルム(A)の少なくとも片面上に、架橋性共重合体層(B)を設け、架橋性共重合体層(B)の上に、無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)を設けたポリプロピレン系合成紙であり、該インキ受容層(C)を構成する無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物が、アクリル樹脂(C 1 )及びエポキシ樹脂(C 2 )を主成分としてなり、アクリル樹脂(C 1 )がカルボキシル基を含有するモノマー5〜50重量%、アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)50〜95重量%、塩基性窒素原子を含有するモノマー35重量%以下、及びその他の共重合可能なビニルモノマー30重量%以下からなり、かつカルボキシル基の0.5モル%以上がイミダゾール化合物で中和されたアクリル樹脂であり、中和前のアクリル樹脂(C 1 )のカルボキシル基/エポキシ樹脂(C 2 )のエポキシ基の当量比が0.90〜1.50であり、インキ受容層(C)の単位面積当り重量(固形分)が0.5〜10g/m 2 であることを特徴とするポリプロピレン系合成紙。
【0008】
(2)架橋性共重合体層(B)が、アクリル共重合体(B1)と多官能エポキシ誘導体(B2)との共重合体であって側鎖に4級アンモニウム塩基及びカルボキシル基を含有する架橋性共重合体からなり、架橋性共重合体層(B)の単位面積当り重量(固形分)が0.005〜0.5g/m2であることを特徴とする前記(1)項記載のポリプロピレン系合成紙。
【0009】
(3)基材フィルム(A)が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、軟化点(環球法)160〜200℃のジシクロペンタジエン石油樹脂5〜195重量部、無機充填剤粉末195重量部以下かつジシクロペンタジエン石油樹脂と無機充填剤粉末の合計量15〜200重量部が配合された樹脂組成物からなるフィルムを基層フィルムとし、その両面に結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる表層フィルムを積層した後、面積倍率9倍以上に延伸した空洞含有積層延伸フィルムであることを特徴とする前記(1)または(2)項記載のポリプロピレン系合成紙。
【0010】
(4)基材フィルム(A)が、前記空洞含有積層延伸フィルムを、50〜160℃の温度でかつ空洞が消滅しない圧力で、加熱圧縮することにより得られる圧縮処理済み空洞含有積層延伸フィルムである前記(3)項記載のポリプロピレン系合成紙。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
本発明のポリプロピレン系合成紙においては、優れたオフセット印刷適性と溶融型熱転写印刷適性を付与し、更に溶融型熱転写印字後の耐水性、耐薬品性、印字層と基材合成紙との密着性を良好にするため、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり空洞を含有する基層フィルムと、基層フィルムの両面に積層された結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり実質的に空洞を含有しない表層フィルムとからなる基材フィルム(A)の印字に供される側の面の表層フィルム面上に、順次、接着プライマーである架橋性共重合体層(B)、及び、無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)が積層して設けられる。
【0013】
本発明のポリプロピレン系合成紙において、基材フィルム(A)の基層フィルムまたは表層フィルムを構成する結晶性ポリプロピレン樹脂組成物に用いられる結晶性ポリプロピレン樹脂は、プロピレンの結晶性単独重合体、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれる1種以上との二元以上の結晶性共重合体、またはそれらの混合物である。具体的には、沸騰n−ヘプタン不溶部を70重量%以上、好ましくは80重量%以上含有する結晶性ポリプロピレン、プロピレン成分を70重量%以上含有する結晶性エチレン/プロピレン共重合体、結晶性プロピレン/1−ブテン共重合体、結晶性プロピレン/1−ヘキセン共重合体、結晶性エチレン/プロピレン/1−ブテン三元共重合体等の結晶融点を有するプロピレン共重合体が挙げられる。
【0014】
尚、基材フィルム(A)の基層フィルム用樹脂組成物に用いられる結晶性ポリプロピレン樹脂と表層フィルム用樹脂組成物に用いられる結晶性ポリプロピレン樹脂は、同一でも別々でもよい。また、本発明においてフィルムとは、フィルムとシートの総称である。
本発明で用いられる結晶性ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(JISK−7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」表1の条件14(試験温度230℃、試験荷重21.18N)により測定、以下MFRという)は、0.5〜20g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分である。
【0015】
本発明においては、合成紙に紙状の外観や隠蔽性、及び印刷に適したクッション性を付与するために、基材フィルム(A)の基層フィルムとして、結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり空洞(微細なボイド)を含有するフィルムが用いられる。空洞を含有するフィルムとしては、実質的に結晶性ポリプロピレン樹脂に対する相溶性を有しない有機充填剤または無機充填剤の粉末が添加された結晶性ポリプロピレン樹脂組成物のフィルムを延伸し空洞を形成させたフィルムが好適に用いられる。
【0016】
前記基材フィルム(A)の基層フィルム用の結晶性ポリプロピレン樹脂組成物に配合される有機充填剤としては、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートアセタール類、ポリアミド類等が挙げられるが、微細で均質な空洞が得られやすいため、軟化点(環球法)が160〜200℃であるジシクロペンタジエン石油樹脂が好ましく用いられる。結晶性ポリプロピレン樹脂組成物における有機充填剤の添加量は、有機充填剤の種類や延伸の条件によって適宜選択することができる。
【0017】
前記基材フィルム(A)の基層フィルム用の結晶性ポリプロピレン樹脂組成物に配合される無機充填剤粉末としては、平均粒径が0.01〜20μm、好ましくは0.01〜10μm、更に、好ましくは0.1〜5μmの炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、及びシリカ等が挙げられるが、コスト面から炭酸カルシウムが有利であり、隠蔽性の点では酸化チタンが優れる。これら無機充填剤粉末は2種以上を併用しても良く、屈折率の違う2種類以上の無機充填剤粉末を併用すると基層フィルムに高い不透明度が得られる。結晶性ポリプロピレン樹脂組成物における無機充填剤粉末の添加量は、無機充填剤粉末の種類や延伸の条件によって適宜選択することができる。
【0018】
本発明においては、基層フィルム用結晶性ポリプロピレン樹脂組成物として、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、軟化点(環球法)160〜200℃のジシクロペンタジエン石油樹脂5〜195重量部、無機充填剤粉末195重量部以下かつジシクロペンタジエン石油樹脂と無機充填剤粉末の合計量15〜200重量部、好ましくは30〜150重量部が配合された樹脂組成物(以下、空洞含有延伸フィルム用樹脂組成物という)が好適に用いられる。
【0019】
本発明においては、基材フィルム(A)に対する架橋性共重合体層(B)等の密着性を高めるため、基層フィルムの両面に結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり実質的に空洞を含有しない表層フィルムが積層される。基材フィルム(A)の好ましい例としては、上記の空洞含有延伸フィルム用樹脂組成物から得られた単層未延伸フィルムを基層フィルムとし、その両面に結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる表層フィルムを積層した積層未延伸フィルムを、面積倍率9倍以上に延伸して得られる空洞(微細なボイド)含有積層延伸フィルムが挙げられる。
本発明において、延伸における面積倍率とは縦方向(MD)の延伸倍率と横方向(TD)の延伸倍率の積である。
【0020】
前記空洞含有延伸フィルム用樹脂組成物において、ジシクロペンタジエン石油樹脂と無機充填剤粉末の配合量の合計が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して15〜200重量部であると、得られる空洞含有延伸フィルムの隠蔽性は十分であり、未延伸フィルムを延伸する時に破断が発生することもない。
【0021】
前記の軟化点(環球法)160〜200℃のジシクロペンタジエン石油樹脂としては、石油ナフサ等のスチームクラッキング等から得られるシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、それらのアルキル置換体及びオリゴマー及びそれらの混合物から選ばれる1種以上(以下、シクロペンタジエン系成分という)を主成分(最も多い成分)とする留分を重合させて得られる石油樹脂(HR)の中で、シクロペンタジエン系成分を50重量%以上含有し、その軟化点(環球法)が160〜200℃の範囲にある高分子で高軟化点の石油樹脂(HSHR)、ならびに石油樹脂(HR)の中でシクロペンタジエン系成分を50重量%以上含有するものを、バナジウム、ニッケルもしくはコバルト等の金属またはその酸化物等の触媒を用いて、溶剤の存在下で、温度150〜300℃、水素圧1〜15MPaの条件下で水素化して得られる軟化点(環球法)160〜200℃、ヨウ素価20以下の水素化ジシクロペンタジエン石油樹脂(HGHR)またはそれらの混合物が挙げられる。
【0022】
基材フィルム(A)の基層フィルムまたは表層フィルムを形成する結晶性ポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じてポリプロピレンに添加することが公知の各種添加剤、例えばフェノール系、チオエーテル系及び燐系の加工安定剤・酸化防止剤、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド等の潤滑剤、顔料、発泡剤、添加ポリマーとしてポリエチレン類やエチレン−プロピレンゴム等を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0023】
前記の結晶性ポリプロピレン樹脂組成物は、結晶性ポリプロピレン樹脂及び添加剤を通常のブレンダーまたはミキサーで攪拌混合し調合することができる。また、一般的な押出機を用いて溶融混練し、ペレットにすることもできる。
【0024】
本発明において、基層フィルム用の樹脂組成物及び表層フィルム用の樹脂組成物から未延伸の積層フィルムを得る方法としては、Tダイ押出成形法やインフレーション押出成形法等の公知の方法が例示でき、具体的には、ダイス内で溶融樹脂が複層化される共押出成形法、押出成形された基層フィルムの上に更に表層フィルムを重ねる押出ラミネート成形法等の公知の積層加工方法が用いられる。
【0025】
未延伸フィルムから延伸フィルムを得るための延伸方法及び延伸条件は格別限定されない。延伸方法は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、好ましくは二軸延伸である。また、公知の一軸または二軸延伸機のいずれも使用することができる。延伸条件は使用する延伸機により異なるが、組成物中に含まれる石油樹脂の軟化点以下の温度にし、面積倍率9倍以上に延伸する。尚、二軸延伸機の場合、同時延伸方式でも逐次延伸方式でもよい。
【0026】
本発明において、基材フィルム(A)である空洞含有積層延伸フィルムに腰の強さが求められる場合には、50〜160℃の温度で、かつ、空洞が消滅しない圧力で、空洞含積層延伸フィルムを加熱圧縮することにより得られる圧縮処理済み空洞含有積層延伸フィルムであることが好ましい。加熱圧縮は、加熱プレスもしくは加熱圧縮ロール等を用いて行うことができる。
加熱圧縮の条件は、空洞含有積層延伸フィルムが50〜160℃になるように加熱し、更に加熱圧縮ロールでは、0.3〜4kN/cmの線圧で、加熱圧縮前の厚さ100に対して50〜95の厚さまで加熱圧縮する。ただし、加熱し過ぎると空洞が消滅してしまうので、加熱圧縮温度が、空洞が消滅する温度より低い温度で加熱圧縮しなければならない。また、圧力によっても空洞が消滅することがあるので、温度と圧力を調整しながら、厚さ方向の復元や空洞の消滅が起こらない条件で加熱圧縮を行わなければならない。
【0027】
本発明のポリプロピレン系合成紙においては、基材フィルム(A)と、印字層であるインキ受容層(C)との密着性を付与するため、基材フィルム(A)の少なくとも片面の表層フィルム面上に接着プライマーである架橋性共重合体層(B)が設けられる。架橋性共重合体層(B)を構成する架橋性共重合体としては、アクリル共重合体(B1)と多官能エポキシ誘導体(B2)との共重合体であって側鎖に4級アンモニウム塩基及びカルボキシル基を含有する架橋性共重合体が好適である。具体的には基材フィルム(A)の表面に、固形成分として、好ましくは0.005〜0.5g/m2、より好ましくは0.01〜0.3g/m2の架橋性共重合体が塗工され、塗膜層として架橋性共重合体層(B)が形成される。架橋性共重合体層(B)の単位面積当り重量が0.005g/m2〜0.5g/m2であれば、均一な塗膜層が形成され基材フィルム(A)とインキ受容層(C)との密着性も十分である。
【0028】
架橋性共重合体層(B)を形成するために用いられる重合体は、アクリル樹脂、ポリビニルアルコ−ル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体エマルジョン樹脂、ポリウレタン樹脂等を例示することができるが、重合体が、ジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)4級化物、アクリル酸(メタクリル酸を含む)、及びアクリル酸エステル(メタクリル酸エステルを含む)の共重合体(B1)と多官能エポキシ誘導体(B2)との架橋反応生成物である、側鎖に4級アンモニウム塩基及びカルボキシル基を含有する重合体であると基材フィルム(A)とインキ受容層(C)との密着性が向上するため好ましい。
【0029】
共重合体(B1)は、ジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)4級化物(対イオンとしてのアニオンを含む)を直接コモノマーと共重合させる方法、もしくはジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)4級化物に代えてその前駆体であるジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)とコモノマーを共重合させ、得られた共重合体をカチオン化剤で処理して4級アンモニウム塩基にする方法のいずれかによって得ることができる。
前記のコモノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの少なくとも1種、及びアクリル酸エステル(メタクリル酸エステルを含む)の他、必要に応じて他のコモノマーを用いることもできる。
【0030】
前記のジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)4級化物は、ジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)をカチオン化剤で4級化したものである。
前記のカチオン化剤としては、塩化メチル、ジメチル硫酸等が例示できる。
前記アクリル酸エステル(メタクリル酸エステルを含む)としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
また、前記の共重合体(B1)の原料として用いることができる他のモノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、オレフィン等のビニルモノマーを挙げることができる。
【0031】
共重合体(B1)は、これらのモノマーを、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合法もしくは溶液重合法により重合させて得られる。溶液重合法の場合に用いる溶媒としては、水とイソプロパノールの混合物が挙げられる。
共重合体(B1)において、各々のモノマーの組成比率は特に限定するものではないが、前記共重合体用全モノマーに対するジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)4級化物の組成比率は15〜40モル%、アクリル酸もしくはメタクリル酸の組成比率は3〜13モル%が好ましい。ジメチルアミノエチルアクリレート(メタクリレートを含む)4級化物の組成比率が15〜40モル%であれば、架橋性共重合体層(B)の帯電防止性、親水性、基材フィルムへの密着性が共に十分である。
【0032】
多官能エポキシ誘導体(B2)としては、グリセリンジグリシジルエーテル等の2官能エポキシ誘導体やトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の3官能エポキシ誘導体が挙げられる。エポキシ誘導体(B2)の開環反応触媒としては、2−メチルイミダゾールや2−エチル、4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、及びアミン類等エポキシ開環反応触媒が挙げられる。
塗膜形成に用いるエポキシ誘導体(B2)の添加量は共重合体(B1)に対して5〜15重量%が好ましい。開環反応触媒の添加量はエポキシ誘導体(B2)に対して3〜10重量%が好ましい。
【0033】
本発明のポリプロピレン系合成紙において、基材フィルム(A)の表層フィルム面上に架橋性共重合体を塗工し塗膜層を形成させるには、塗工後適当な温度で乾燥・硬化させる必要がある。塗工方法は、格別限定されず、加熱・乾燥設備を備えたグラビアコーター等の公知の設備と方法を使用することができる。
【0034】
本発明のポリプロピレン系合成紙においては、基材フィルム(A)の表層フィルム面上に架橋性共重合体を塗工し塗膜層を形成させるには、塗布剤の十分な接着が必要である。そのためフィルム表面濡れ性改良の方法として、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの公知の処理を行なうことができる。
【0035】
本発明において、基材フィルム(A)の表層フィルム面上に架橋性共重合体層(B)を形成するための共重合体(B1)、多官能エポキシ誘導体(B2)及びその開環反応触媒は、塗工剤として市販されている品を利用することができる。市販塗工剤の例としては、コニシ(株)のBONDEIP(商品名)等が挙げられる。
【0036】
本発明のポリプロピレン系合成紙においては、基材フィルム(A)の表層フィルム面上に架橋性共重合体層(B)が設けられ、更に架橋性共重合体層(B)の上に無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)が設けられる。
【0037】
無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)を構成するアクリル樹脂組成物は、アクリル樹脂(C1)及びエポキシ樹脂(C2)を主成分(最も多い成分と次に多い成分)としてなり、アクリル樹脂(C1)は、アクリル樹脂を構成する全モノマーに対して、カルボキシル基を含有するモノマー5〜50重量%、アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)50〜95重量%、塩基性窒素原子を含有するモノマー35重量%以下、及びその他の共重合可能なビニルモノマー30重量%以下からなり、かつカルボキシル基の0.5モル%以上がイミダゾール化合物で中和されたアクリル樹脂であり、中和前のアクリル樹脂(C1)のカルボキシル基/エポキシ樹脂(C2)のエポキシ基の当量比が0.90〜1.50となるように調製される。
【0038】
アクリル樹脂(C1)に用いられるカルボキシル基を含有するモノマーの使用量は、アクリル樹脂(C1)を構成する全モノマーに対して5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%となるように調製される。使用量が5〜50重量%であれば、アクリル樹脂(C1)の水分散性及びエポキシ樹脂( C2)との架橋性が十分であり、エポキシ樹脂(C2)との架橋反応後の耐水性及び耐アルカリ性も良好である。カルボキシル基を含有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0039】
アクリル樹脂(C1)に用いられるアクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)の使用量は、アクリル樹脂(C1)を構成する全モノマーに対して50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%である。使用量が50〜95重量%であれば、得られる水性架橋型アクリル樹脂組成物層(C)の耐溶剤性と耐水性とのバランスが良好である。
アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)として は、アルキル基の炭素数が8以下のアクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)等が挙げられる。前記アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、これらは通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0040】
また、本発明においては、得られるアクリル樹脂(C1)とエポキシ樹脂(C2)との架橋反応性を向上させるために、塩基性窒素原子を含有するモノマーを用いることができる。塩基性窒素原子を含有するモノマーの使用量は、アクリル樹脂(C1)を構成する全モノマーに対して35重量%以下、好ましくは5〜35重量%である。塩基性窒素原子を含有するモノマーとしては、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等が挙げられ、これらは通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0041】
また、本発明においては、アクリル樹脂(C1)とエポキシ樹脂(C2)との架橋反応性の向上、顔料混和性の向上、接着性の向上等の目的で、アクリル樹脂(C1)を構成するモノマーとして前記以外の共重合可能なモノマー(その他の共重合可能なビニルモノマー)を用いることができる。その他の共重合可能なビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。前記その他の共重合可能なビニルモノマーの使用量は、アクリル樹脂(C1)を構成する全モノマーに対して30重量%以下となるように調整される。使用量が30重量%以下であれば、得られる水性架橋型アクリル樹脂組成物層(C)の耐溶剤性及び耐水性のバランスが良好である。
【0042】
本発明に用いられるアクリル樹脂(C1)は、前記モノマーを調合したのち、ラジカル重合開始剤を用いて溶液重合法、乳化重合法等により得られる。溶液重合法を採用する場合には、後の水溶性付与の工程を考慮して水溶性の有機溶剤中で重合を行うことが好ましく、この場合に用いる水溶性の有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。重合時のモノマー濃度は、溶液重合法及び乳化重合法のいずれの場合においても通常30〜70重量%、好ましくは35〜65重量%とすることが適当である。
【0043】
上記のようにして得られるアクリル樹脂(C1)は、次にそのカルボキシル基の0.5モル%以上がイミダゾール化合物で中和される。前記イミダゾール化合物は、アクリル樹脂(C1)のカルボキシル基とエポキシ樹脂(C2)のエポキシ基との架橋反応の促進剤として用いられるものである。
前記イミダゾール化合物の具体例としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、イミダゾール等が挙げられる。
【0044】
尚、アクリル樹脂(C1)のカルボキシル基の0.5モル%以上が中和されるのは、得られる樹脂組成物に水溶性及び水分散性を付与するためであるが、そのためにはカルボキシル基の20モル%以上、好ましくは30モル%以上が中和されていることが望ましい。また、中和量が過剰である場合には、pHが高くなりすぎてエポキシ樹脂を配合したときのポットライフが短くなるので、通常90モル%以下とすることが好ましい。
【0045】
次に、アクリル樹脂(C1)は、エポキシ樹脂(C2)と混合されるが、予め中和された状態で更に水を加えて水分散液または水溶液とすることが好ましい。エポキシ樹脂(C2)としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等公知のものが用いられる。これらのエポキシ樹脂は通常単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0046】
アクリル樹脂(C1)とエポキシ樹脂(C2)の配合比は、中和前のアクリル樹脂(C1)のカルボキシル基/エポキシ樹脂(C2)のエポキシ基の当量比が0.90〜1.50となるように調整することが好ましい。前記当量比が0.90〜1.50であれば、架橋反応が十分で得られるインキ受容層(C)の耐溶剤性、耐水性が良好である。
尚、アクリル樹脂(C1)とエポキシ樹脂(C2)は市販品を用いても良く、例としては、中央理化工業(株)のリカボンドSA−513(商品名、アクリル樹脂)とリカボンドEX−8(商品名、エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0047】
無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)を構成する無機充填剤粉末としては、平均粒径が0.01〜20μm、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.1〜5μmの炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、酸化チタン、及びシリカ等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上を併用してもよいが、好ましくは粒径の異なる2種類以上の無機充填剤を添加するとインキ受容層(C)の不透明度が得られる。特にコスト面から炭酸カルシウムとクレーの併用が有利である。
【0048】
水性架橋型アクリル樹脂組成物における無機充填剤粉末の含有量は、水性架橋型アクリル樹脂組成物の固形分の重量基準で25〜90重量%が好ましい。また、水性架橋型アクリル樹脂組成物に無機充填剤粉末を含有させる方法としては、予め中和された状態のアクリル樹脂(C1)とエポキシ樹脂(C2)との水分散液または水溶液に無機充填剤粉末を加えて攪拌し混合する方法が挙げられる。得られた混合物は、インキ受容層(C)を形成するための塗工剤として用いることができる。
【0049】
架橋性共重合体層(B)面上に設けられるインキ受容層(C)は、固形成分として、0.5〜10g/m2、好ましくは1〜5g/m2の重量の、無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなる塗膜層である。インキ受容層(C)の単位面積当り重量が0.5〜10g/m2であれば、得られるポリプロピレン系合成紙の耐水性、耐溶剤性が十分で、インキ受容層(C)と基材フィルム(A)との密着性も十分である。
【0050】
インキ受容層(C)を形成するには、塗工剤を塗工後適当な温度で乾燥・硬化させる必要がある。塗工方法は、格別限定されず、加熱・乾燥設備を備えたグラビアコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター等の公知の設備と方法を使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるべきものではない。尚、以下実施例及び比較例で用いた評価方法は下記の通りである。
【0052】
1)隠蔽性
JIS P 8138「紙の不透明度試験方法」に準じて、TECHNI BRITE MICRO TB−1(商品名、TECHNIDYNE社製)にて不透明度を測定し、下記の基準で判定した。
○:80%以上(実用性満足)
×:80%未満(実用性不満足)
【0053】
2)オフセット印刷適性
印刷適性試験器RI−2型(商品名、石川島産業機械(株)製)を用いて、ポリプロピレン系合成紙サンプルのインキ受容層(C)形成面にUV硬化型オフセットインキ ベストキュア161 藍 S(商品名、T&K TOKA(株)製)を4分割ロールにて各ロールのインキ盛り量0.075ccで展色し、以下の評価を行った。
(a)インキ密着性
インキ展色後、サンプルを温度23℃、相対湿度50%の状態で3日間放置後、展色部をセロテープ(登録商標)で貼り付け一気に引き剥がし、イメージアナライザーV10(商品名、東洋紡績(株)製)で印刷部の剥離率を計測し、以下の基準で判定した。
○:剥離率が5%未満(実用性満足)
×:剥離率が5%以上(実用性不満足)
(b)インキ転移性
インキ展色後、展色部のインキ濃度をカラー反射濃度計KR−3200(商品名、伊藤電子工業(株)製)で測定し、以下の基準で判定した。
○:均一にインキが転移し、濃度値が1.8以上のもの。
△:均一にインキが転移しているが、濃度値が1.8未満のもの。
×:均一にインキが転移されないもの。
【0054】
3)熱転写印字適性
熱転写印刷型プリンターZ4M(商品名、Zebra Technologies Coporation製)を用いて、ポリプロピレン系合成紙サンプルのインキ受容層(C)形成面にレジン系の熱転写リボンB110C(商品名、(株)リコー製)で印字熱量(Darkness)+23、印字速度4インチ/秒でバーコードの印字(CODE39)し、以下の評価を行った。
(c)印字性
印字後の外観を以下の基準で判定した。
◎:極めて良好な印字性が得られる。(実用性満足)
○:良好な印字性が得られる。(実用性満足)
△:文字に一部かすれが見られる。(実用可)
×:線切れが生じたり、印字不良が見られる。(実用性不満足)
(d)印字密着性
印字後、サンプルを温度23℃、相対湿度50%の状態で3日間放置後、展色部をセロテープ(登録商標)で貼り付け一気に引き剥がし、以下の基準で判定した。
◎:バーコードに剥離がなく、良好な印字を保持する。(実用性満足)
○:僅かな剥離があるが、ほぼ良好な印字を保持する。(実用可)
△:一部文字やバーコードにかすれがみられる。(実用可)
×:バーコードが剥離して認識困難または認識不可能。(実用性不満足)
(e)耐水・耐薬品擦過性
印字後、サンプルを温度23℃、相対湿度50%の状態で3日間放置後に綿布に表1の薬品を2mlしみ込ませ、学振型摩擦色落ち試験機((株)安田精機製作所製)により荷重500gで100往復擦過し、以下の基準で判定した。
◎:極めて良好な印字性を保持する。(実用性満足)
○:僅かな剥離があるが、ほぼ良好な印字を保持する。(実用可)
△:文字やバーコードに一部かすれが見られる。(実用可)
×:印字部に半分以上の剥離が生じる。(実用性不満足)
【0055】
実施例1
[基材フィルム用樹脂組成物作成]
基材フィルム用樹脂組成物として、n−ヘプタン不溶部を96重量%含有するMFRが2g/10分の結晶性ポリプロピレン粉末100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤BHTを0.2重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、軟化点172℃のジシクロペンタジエン石油樹脂(以下、DCPDという)13重量部、及び炭酸カルシウム(平均粒径1.0μm)13重量部、酸化チタンを(平均粒径0.8μm)7重量部をヘンシェルミキサー(商品名)に投入し混合攪拌した後に同方向回転型二軸押出機に供給し240℃で溶融混練してストランドとして押出し、これを冷却しカットしてペレット状の樹脂組成物を得た。
【0056】
積層フィルムの表層フィルム用組成物として、n−ヘプタン不溶部を96重量%含有するMFR2g/10分の結晶性ポリプロピレン粉末100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤BHTを0.2重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部を、ヘンシェルミキサー(商品名)に投入し混合攪拌した後、同方向回転型二軸押出機に供給し240℃で溶融混練してストランドとして押出し、これを冷却しカットしてペレット状の表層フィルム用組成物を得た。
【0057】
[空洞含有積層延伸フィルム作成]
多層Tダイを備えた3種3層フィルム押出機(押出機は、口径65mmφ基層用単軸押出機が1台、口径50mmφの表層用単軸押出機が2台)及びテンター法二軸延伸機を用いて、前記の基層フィルム用樹脂組成物を基層用押出機に、前記の表層フィルム用組成物を表層用単軸押出機に供給し、Tダイ温度240℃で溶融し共押出を行い、表面温度30℃の鏡面冷却ロールで急冷して、表層/基層/表層の構成の(厚さ構成比1:3:1)2種3層の未延伸積層シートを得た。得られた未延伸シートを縦延伸機に導き加熱ロール間で140℃の温度で縦方向に5倍延伸し、次にテンター内温度160〜210℃で横方向に8倍延伸した後、巻取り、合計厚さが89μmの空洞含有積層延伸フィルムを得た。引続き前記の延伸フィルムを、100℃に加熱された一対の金属ロールを用いて、線圧0.6kN/cmにて加熱圧縮し、厚みが加熱圧縮前の90%に当る80μmの圧縮処理済み空洞含有積層延伸フィルムサンプルを得た。
【0058】
[架橋性共重合体層の形成]
このフィルムの両面に、40ワット・分/m2のコロナ処理を施し、水100重量部に対して、イソプロピルアルコール100重量部、BONDEIP−PA100(商品名、コニシ(株)製)2重量部とBONDEIP硬化剤(商品名、コニシ(株)製)2重量部を攪拌混合して得た、固形分量0.4重量%の架橋性共重合体塗工液を、グラビアコーターで片面の塗工量が8g/m2になるように両面塗工し、100℃で乾燥・硬化させて固形分として片面が0.032g/ m2の架橋性共重合体層(B)を有するフィルムを得た。
【0059】
[インキ受容層の形成]
更にその架橋性共重合体層(B)の上に、水100重量部に対してリカボンドSA−513(商品名、中央理化工業(株)製、固形分29重量%)41.1重量部とリカボンド EX−8(商品名、中央理化工業(株)製、固形分98重量%)3.8重量部、カオリンクレーKAOGLOSS−90(商品名、白石カルシウム(株)製)41.1重量部、炭酸カルシウムCALSHITEC Brilliant−15(商品名、白石カルシウム(株)製)13.7重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンスルホン酸ナトリウムを共重合してなる帯電防止剤SPP−3A(商品名、松本油脂製薬(株)製、固形分22重量%)8.2重量部、酸化チタンを含む水系顔料分散体LIOFAST WHITE H201(商品名、東洋インキ製造(株)製、固形分65重量%)13.7重量部、無機充填剤の分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムアロンT−40(商品名、東亞合成(株)製、固形分43重量%)0.3重量部、イソプロピルアルコール52.1重量部をホモジナイザー((株)SMT製)を用いて混合して得た塗料組成物を、グラビアコーターで塗工量が8g/m2になるように塗工し、100℃で乾燥・硬化させて固形分として2.4g/m2のインキ受容層(C)を有するポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。
【0060】
[評価試験]
このサンプルを、23℃、相対湿度50%の室内で24時間状態調節した後、隠蔽性を評価し、次に熱転写印字特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例2
基材フィルム用樹脂組成物のDCPDと炭酸カルシウムを表1のように変えた以外は実施例1に準拠してポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0062】
実施例3
[架橋性共重合体型塗膜層の形成]
この基材フィルム(A)の両面に塗工する架橋性共重合体層(B)の組成比と乾燥後の固形分量を表1のように変えた以外は実施例1に準拠してインキ受容層(C)を有するポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0063】
実施例4、5
[インキ受容層の形成]
水性架橋型アクリル樹脂組成物層に無機充填剤粉末を含有したインキ受容層(C)の乾燥後の固形分重量を表1のように変えた以外は実施例1に準拠して架橋性共重合体層(B)を有するポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0064】
比較例1
基材フィルム用樹脂組成物のDCPDと炭酸カルシウムを添加しなかったこと以外は実施例1に準拠してポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0065】
比較例2
架橋性共重合体層(B)の塗布を行なわなかったこと以外は実施例1に準拠してポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0066】
比較例3
水性架橋型アクリル樹脂組成物の代わりにウレタン系樹脂ネオタンUE−1100(商品名、東亞合成(株)製、固形分35重量%)を用いて、表1のように無機充填剤粉末を含有したインキ受容層(C)を形成した。それ以外は実施例1に準拠して架橋性共重合体層(B)を有するポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0067】
比較例4
インキ受容層(C)を設けなかったこと以外は実施例1に準拠してポリプロピレン系合成紙サンプルを得た。評価結果を表1に示した。
【0068】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明のポリプロピレン系合成紙は、酸化重合型インキやUV硬化型インキを用いたオフセット印刷ができ、かつワックス系やレジン系の溶融熱転写リボンで良好な溶融熱転写方式の印字が可能で、印字後の耐水性、耐薬品性が優れ、印字層と基材フィルムとの密着が良好でラベル等の印字の溶融型熱転写記録用途に好適に使用できる。
【0069】
【表1】
Claims (4)
- 結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり空洞を含有する基層フィルムと、基層フィルムの両面に積層された結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなり実質的に空洞を含有しない表層フィルムとからなる基材フィルム(A)の少なくとも片面上に、架橋性共重合体層(B)を設け、架橋性共重合体層(B)の上に、無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物からなるインキ受容層(C)を設けたポリプロピレン系合成紙であり、該インキ受容層(C)を構成する無機充填剤粉末を含有した水性架橋型アクリル樹脂組成物が、アクリル樹脂(C 1 )及びエポキシ樹脂(C 2 )を主成分としてなり、アクリル樹脂(C 1 )がカルボキシル基を含有するモノマー5〜50重量%、アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステル含む)50〜95重量%、塩基性窒素原子を含有するモノマー35重量%以下、及びその他の共重合可能なビニルモノマー30重量%以下からなり、かつカルボキシル基の0.5モル%以上がイミダゾール化合物で中和されたアクリル樹脂であり、中和前のアクリル樹脂(C 1 )のカルボキシル基/エポキシ樹脂(C 2 )のエポキシ基の当量比が0.90〜1.50であり、インキ受容層(C)の単位面積当り重量(固形分)が0.5〜10g/m 2 であることを特徴とするポリプロピレン系合成紙。
- 架橋性共重合体層(B)が、アクリル共重合体(B1)と多官能エポキシ誘導体(B2)との共重合体であって側鎖に4級アンモニウム塩基及びカルボキシル基を含有する架橋性共重合体からなり、架橋性共重合体層(B)の単位面積当り重量(固形分)が0.005〜0.5g/m2であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系合成紙。
- 基材フィルム(A)が、結晶性ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、軟化点(環球法)160〜200℃のジシクロペンタジエン石油樹脂5〜195重量部、無機充填剤粉末195重量部以下かつジシクロペンタジエン石油樹脂と無機充填剤粉末の合計量15〜200重量部が配合された樹脂組成物からなるフィルムを基層フィルムとし、その両面に結晶性ポリプロピレン樹脂組成物からなる表層フィルムを積層した後、面積倍率9倍以上に延伸した空洞含有積層延伸フィルムであることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン系合成紙。
- 基材フィルム(A)が、前記空洞含有積層延伸フィルムを、50〜160℃の温度でかつ空洞が消滅しない圧力で、加熱圧縮することにより得られる圧縮処理済み空洞含有積層延伸フィルムである請求項3記載のポリプロピレン系合成紙。
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