JP3745988B2 - 窒素酸化物を接触還元する方法とそのための触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物(主として、NOとNO2 とからなる。以下、NOx という。)の触媒による接触還元、即ち、触媒的還元のための方法に関する。詳しくは、本発明は、周期的なリッチ/リーン燃料供給行程(excursion: 行程)にて燃料を供給して燃焼させ、生成した排ガスを触媒に接触させることによって、排ガス中のNOx を接触還元する方法に関する。この方法は、例えば、自動車からの排ガスに含まれる有害な窒素酸化物を低減し、除去するために適している。
【0002】
また、本発明は、特に、硫黄酸化物(主として、SO2 とSO3 とからなる。以下、SOx という。)の存在下に、周期的なリッチ/リーン燃料供給行程にて燃料を供給して燃焼させ、その燃焼によって生成する排ガス中のNOx を接触還元するための触媒に関する。
【0003】
ここに、本発明は、
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する表面触媒層と、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する内部触媒層と
からなる触媒を用いる排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法とその触媒とに関する。
【0004】
本発明において、上記「行程」(excursion) なる用語は、空気/燃料比率が時間軸に沿ってその平均値から両方に動くこと又はそのような作業を意味する。上記「リッチ」なる用語は、問題とする燃料の空気/燃料比率が化学量論的な空気/燃料比率よりも小さいことを意味し、上記「リーン」なる用語は、問題とする燃料の空気/燃料比率が化学量論的な空気/燃料比率よりも大きいことを意味する。通常の自動車ガソリンでは、化学量論的な空気/燃料比率は約14.5である。また、本発明において、「触媒」は、燃料のリッチ/リーン燃焼の間、NOx を除去するのために作動する触媒又はこれを含む構造体を意味する。
【0005】
従って、本発明において、「周期的なリッチ/リーン燃料供給行程にて燃料を供給する」とは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンの燃焼室に、燃料の燃焼を主としてリーン条件(燃焼後の排ガス中の酸素濃度は、通常、5%から10%程度である。)で行い、上記リッチ条件とリーン条件との間で交互に雰囲気を周期的に振動させるように、空気/燃料比率を調整しながら、燃料を供給、注入又は噴射することをいう。従って、リッチ/リーン行程は、リッチ/リーン条件と同義である。
【0006】
従来、排ガスに含まれるNOx は、例えば、これを酸化した後、アルカリに吸収させる方法や、還元剤としてアンモニア、水素、一酸化炭素又は炭化水素を用いて、窒素に還元する等の方法によって除去されている。しかし、これらの従来の方法には、それぞれ欠点がある。
【0007】
即ち、前者の方法によれば、環境問題を防止するために、生成するアルカリ性の廃水を処理する手段が必要である。後者の方法によれば、例えば、アンモニアを還元剤として用いる場合であれば、アンモニアが排ガス中のSOx と反応して塩類を形成し、その結果、低温で触媒活性が低減する。また、とりわけ、自動車のような移動発生源からのNOxを処理する場合、その安全性が問題となる。
【0008】
他方、還元剤として水素、一酸化炭素又は炭化水素を用いる場合であれば、それら還元剤は、排ガスがNOx よりも酸素を高濃度で含むので、その酸素と優先的に反応することとなり、かくして、NOx を実質的に低減しようとすれば、多量の還元剤を必要とすることとなり、燃費が大きく低下する。
【0009】
そこで、還元剤を用いることなしに、NOx を接触分解することが提案されている。しかし、NOx を直接に分解するために、従来知られている触媒は、その低い分解活性の故に、未だ実用化されていない。他方、還元剤として、炭化水素や酸素含有有機化合物を用いるNOx 接触還元触媒として、種々のゼオライトが提案されている。特に、銅イオン交換ZSM−5やH型(水素型又は酸型)ゼオライトZSM−5(SiO2 /Al2 O3 モル比=30〜40)が最適であるとされている。しかし、H型ゼオライトでさえ、十分な還元活性を有しておらず、特に、排ガス中に水分が含まれるとき、ゼオライト触媒は、ゼオライト構造の脱アルミニウムのために速やかに性能が低下することが知られている。
【0010】
このような事情の下、NOx 接触還元のための一層高活性な触媒の開発が求められており、例えば、EP−A1−526099やEP−A1−679427(JP−A2−5317647に相当する。)に記載されているように、最近、無機酸化物担体材料に銀又は銀酸化物を担持させてなる触媒が提案されている。この触媒は、酸化活性は高いものの、NOx に対する選択還元活性が低いので、NOx の窒素への変換速度が遅いことが知られている。しかも、この触媒は、SOx の存在下に速やかに活性が低下する問題がある。これらの触媒は、完全なリーン条件下に炭化水素を用いてNOx をある程度選択的に還元する触媒作用を有するが、しかし、三元触媒に比べて、NOx 除去率が低く、作動する温度ウインドウ(温度域)が狭いために、このようなリーンNOx 触媒の実用化を困難にしている。かくして、NOx 接触還元のための一層高耐熱性で高活性の触媒が緊急に求められている。
【0011】
上述した問題を克服するために、「自動車技術者協会」(Society of Automotive Engineers) 誌(SAE)(1995年8月9日)に記載されているように、最近、NOx 貯蔵−還元システムが最も有望な方法として提案されている。この提案(トヨタ自動車(株))によれば、燃料を周期的に短時間、化学量論量を上回る量にて燃焼室に供給する。リーン燃焼エンジンを備えている自動車は、非常に小さい燃料/空気比率で駆動することができるので、従来のエンジンを備えた自動車よりも燃料消費率を低くすることができる。このようなリーン燃焼エンジンのNOx 貯蔵−還元システムは、1〜2分間隔の周期的な2工程によってNOx を低減する。
【0012】
即ち、第1の工程においては、(通常の)リーン条件下、白金やロジウム触媒上でNOはNO2 に酸化され、このNO2 はK2CO3 やBaCO3 のようなアルカリ化合物に吸着される。次いで、第2工程のためのリッチ条件が形成され、このリッチ条件が数秒間、持続される。このリッチ条件下、上記吸着(貯蔵)されたNO2 は、白金やロジウム触媒上で炭化水素、一酸化炭素又は水素を用いて効率よく窒素に還元される。このNOx 貯蔵−還元システムは、SOx の不存在下であれば、長期間にわたってよく作動する。しかし、SOx が存在すれば、リーン及びリッチいずれの条件下においても、アルカリ化合物上のNO2 吸着サイトにおけるSOx の不可逆的吸着によって、触媒システムは急激に劣化する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸素、硫黄酸化物又は水の存在下においても、また、広範囲の反応温度においても、周期的なリッチ/リーン条件の下で燃料を燃焼させ、この燃焼によって生成した排ガス中のNOx を高い耐久性にて接触還元する方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の方法によれば、リッチ行程、即ち、還元条件下において、リーン工程で酸化された内部触媒層中の白金、ロジウム又はパラジウムの貴金属触媒成分が還元され、これらの貴金属触媒上でNOxが接触還元される。
【0015】
更に、このリッチ工程において重要なことは、次のリーン行程に備えて、上記内部触媒層の貴金属触媒成分の高い還元力の助けによって、OSC(酸素貯蔵能)を有する表面触媒層の第1の触媒成分が効率よく酸素貯蔵機能を発揮し得るように速やかに還元されること、即ち、リーン時に排ガス中の酸素を吸蔵し、その結果として、リーン時に表面触媒層中の貴金属触媒成分の反応雰囲気がリッチ乃至ストイキ条件に保たれるように再生されることである。
【0016】
次いで、これに続くリーン行程、即ち、酸化条件下においては、NOx が表面触媒層の前記貴金属触媒成分上で選択的に還元される。即ち、上記内部触媒層の貴金属触媒成分の高い還元力の助けによって還元された上記表面触媒層の第1の触媒成分が第2の触媒成分であるロジウム等のリーン時の酸化を防止する結果、上記表面触媒層の第2の触媒成分上での排ガスからのNOxの還元反応が高い効率で続けられるのである。
【0017】
また、本発明は、酸素、硫黄酸化物又は水の存在下においても、とりわけ、NOx吸蔵触媒の深刻な問題点であった硫黄酸化物共存下での劣化がなく、広い温度域において、周期的なリッチ/リーン燃焼のリーン行程において、NOx を還元するための耐久性にすぐれた触媒を提供することを目的とする。本発明による触媒が硫黄酸化物共存下において高い耐久性をを示す理由については、共存するSOxがリーン時にSO2 として表面触媒層に吸着され、リッチ時に気相中に脱離され、NOx吸蔵触媒のように触媒中に非可逆的に吸蔵されないことによる。
【0018】
更に、本発明は、不活性な支持用の基材に触媒を担持させてなるNOx 接触還元のための触媒構造体を提供することを目的とする。
【0019】
かくして、本発明によれば、周期的なリッチ/リーン条件下に燃料を供給して燃焼させ、生成する排ガスを触媒に接触させて、その排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法において、上記触媒が
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(d)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する表面触媒層と、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する内部触媒層と
からなる排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法と、上記触媒を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、周期的なリッチ/リーン条件下に燃料を供給して燃焼させ、生成する排ガスを触媒に接触させて、その排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法において、上記触媒が
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する表面触媒層と、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する内部触媒層と
からなることを特徴とする排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法が提供される。
【0021】
更に、本発明によれば、周期的なリッチ/リーン条件下に燃料を供給して燃焼させ、生成する排ガスを触媒に接触させて、その排ガス中の窒素酸化物を接触還元するための触媒であって、
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する表面触媒層と、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する内部触媒層と
からなることを特徴とする排ガス中の窒素酸化物を接触還元するための触媒が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明による窒素酸化物を接触還元するための触媒は、表面触媒層と内部触媒層とを有し、上記表面触媒層は排ガスと直接に接触するように露出している。本発明によれば、好ましくは、このような触媒は、不活性な基材上に内部触媒層と表面触媒層とがこの順序で積層された触媒構造体として用いられる。
【0023】
本発明において、窒素酸化物の接触還元とは、触媒反応によってNOx の大部分が窒素と酸素に直接分解されることをいう。NOx の一部は、還元剤との反応によって、窒素と水、一酸化炭素、二酸化炭素等に変換される。
【0024】
本発明による触媒の上記表面触媒層は、
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する。
【0025】
他方、上記内部触媒層は、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する。
【0026】
本発明による触媒は、このような表面触媒層と内部触媒層とを有し、それが上述した方法によって作動する限りは、任意の触媒構造体とすることができる。本発明の触媒はまた、その効率を改善するための添加剤を含むことができる。
【0027】
本発明によれば、表面触媒層は、表面触媒成分を少なくとも50重量%、特に好ましくは、少なくとも80重量%を含む。表面触媒層において、表面触媒成分の割合が50重量%を下回るときは、得られる表面触媒層の酸素貯蔵能が、通常のリーン時間(1分から2分)の間、内部触媒層の還元雰囲気を保持するのに不十分となり、リーン時、ロジウム又はパラジウム上でのNOx 還元能が低下すると共に、SOx 耐久性が低下することになる。
【0028】
本発明によれば、表面触媒層の第1の触媒成分は、短時間のリッチ条件下に、表面触媒層の第2の触媒成分と共に、内部触媒層を構成する白金等の前記貴金属触媒成分の高い還元力の助けによって、速やかに還元されて、酸化物(例えば、セリア)中の酸素の一部を失う一方、リーン条件下において、気相中の酸素を貯蔵する。即ち、酸素貯蔵能を有する物質(以下、OSC機能物質という。)として機能する。かくして、リーン条件下において、表面触媒層の第1の触媒成分、即ち、OSC機能物質は、表面触媒層の第2の触媒成分であるロジウム又はパラジウムの酸化を抑制して、ロジウム又はパラジウム上でのNOx 還元反応が高効率で進行することを可能とする。
【0029】
本発明によれば、このように、表面触媒層において、OSC機能物質として機能する上記第1の触媒成分として、
(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物(固溶体)からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)が用いられる。
【0030】
ここに、上記混合物は、均一な混合物であることが好ましい。しかし、本発明によれば、上記酸化物の混合物よりは、上記元素の複合酸化物が好ましく用いられ、特に、二元系又は三元系の複合酸化物が好ましく用いられる。
【0031】
例えば、二元系複合酸化物の場合、固溶体における各元素の酸化物基準重量比は、セリア/酸化テルビウム複合酸化物やセリア/酸化サマリウム複合酸化物であれば、好ましくは、80/20から60/40の範囲である。また、三元系複合酸化物の場合、固溶体における酸化物基準重量比は、セリア/酸化ガドリニウム/ジルコニア複合酸化物、セリア/ジルコニア/酸化ガドリニウム複合酸化物、セリア/ジルコニア/酸化ランタン複合酸化物、セリア/ジルコニア/酸化サマリウム複合酸化物、セリア/ジルコニア/酸化テルビウム複合酸化物等であれば、好ましくは、45/30/30から75/20/5の範囲である。但し、本発明において、これらの複合酸化物中のそれぞれ元素の酸化物基準重量比は、セリア、ジルコニア、酸化テルビウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム及び酸化ランタンをそれぞれCeO2、ZrO2、Tb2O3、Ga2O3、Sm2O3及びLa2O3として計算するものとする。
【0032】
本発明によれば、表面触媒層は、上記第1の触媒成分と共に、更に、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種
からなる第2の触媒成分を有し、本発明によれば、このような第2の触媒成分は、好ましくは、上述したOSC機能物質である第1の触媒成分上に担持されている。本発明によれば、このような第2の触媒成分は、表面触媒層の触媒成分の0.05〜3重量%の範囲で含まれる。
【0033】
このような第2の触媒成分は、リッチ時にOSC機能物質の還元速度を速めると共に、それ自身が還元されて、リーン時にNOx 分解反応の活性種として機能し、速やかにNOx を還元分解する役割を担っている。
【0034】
表面触媒層の厚みは、本発明による触媒のリッチ/リーン工程におけるNOx 還元能及び耐SOx 被毒性に大きい影響を及ぼす。表面触媒層の最適の厚みは、温度、酸素濃度、空間速度(SV)等のような反応条件にもよるが、リッチ/リーン工程の中で高いNOx 還元能を得ることができる好ましい表面触媒層の厚みは、20μmから80μmの範囲である。しかし、通常、40μm程度が好ましい。表面触媒層の厚みを80μm以上としても、それに見合って性能が向上せず、むしろ低能が低下する。また、表面触媒層の厚みを20μmより小さくしたとき、リーン時にNOx が内部触媒層上で酸化されて、NOx 還元能が低下する。
【0035】
ここに、本発明によれば、触媒層の厚みは、便宜的に触媒層の見かけ密度を1.5g/cm3 とし、触媒成分を含むスラリーの基材への塗布量から計算にて求めることができる。
【0036】
本発明において、表面触媒層を形成する表面触媒成分は、例えば、次のような方法によって得ることができる。即ち、先ず、セリウム、テルビウム、サマリウム、ランタン、ガドリニウム等の第1の触媒成分を構成する元素の水溶性塩、例えば、硝酸塩の水溶液を中和し、又は加熱加水分解して、水酸化物を形成させた後、得られた生成物を酸化性又は還元性雰囲気中、300〜900℃の温度で焼成して、第1の触媒成分を得る。しかし、市販されているセリウム、テルビウム、サマリウム、ランタン、ガドリニウム等の水酸化物や酸化物を上述したように焼成することによっても、第1の触媒成分を得ることができる。次いで、このようにして得た第1の触媒成分上に、従来より知られている含浸法やイオン交換法等の適宜の手段によって、第2の触媒成分を構成する元素の水溶性塩、例えば、硝酸塩の水溶液を担持させた後、酸化性又は還元性雰囲気中、500〜900℃の温度で焼成すれば、第1と第2の触媒成分からなる表面触媒成分を粉体として得ることができる。
【0037】
本発明の方法によれば、リッチ行程、即ち、還元条件下において、次のようにして、窒素酸化物の還元が行われる。リーン行程において酸化された内部触媒層の貴金属触媒成分が還元され、これら触媒上でNOx が還元分解され。更に、この貴金属触媒成分上で酸素が還元剤にて速やかに還元されるので、表面触媒層中の第1の触媒成分、即ち、OSC機能物質の酸素が内部触媒層にスピルオーバーし、その結果、OSC機能物質が表面触媒層中の第2の触媒成分と共に効率よく部分還元され、かくして、次のリーン行程に備えて再生される。
【0038】
次いで、このようなリッチ行程に続くリーン行程、即ち、酸化条件下において、次のようにして、窒素酸化物の還元が行われる。即ち、リーン行程において、表面触媒層中に拡散してきた酸素は、表面触媒層の第1の触媒成分、即ち、OSC機能物質によって吸蔵されるので、表面触媒層中の第2の触媒成分の反応雰囲気がリッチ乃至ストイキ条件に保持される。その結果、リーン条件下においても、NOx は、表面触媒層の第2の触媒成分上で速やかに還元分解される。
【0039】
また、本発明によれば、SOx が表面触媒層に捕捉され、それがリッチ時に脱離排出されて、内部触媒層の助触媒に吸着され難いので、SOx による助触媒の劣化は、前述したNOx 貯蔵−還元システムに比べて非常に小さく、かくして、本発明による触媒は、SOx 共存下での使用においても、劣化が殆ど起こらない。また、リーン時に吸着されたNOx は、リッチ時に簡単に再生される。
【0040】
本発明によれば、内部触媒層は、内部触媒成分を少なくとも50重量%、特に好ましくは、少なくとも80重量%を含む。内部触媒層において、内部触媒成分の割合が50重量%を下回るときは、内部触媒層のリッチ時のNOx 接触還元能が低下すると共に、表面触媒層の貴金属触媒成分とOSC機能物質の還元を助ける効果が低下する。
【0041】
内部触媒層は、白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と担体とからなる内部触媒成分を有し、上記触媒成分は、内部触媒層中、金属換算にて、0.05〜5重量%の範囲で含まれている。内部触媒層中、触媒成分の割合が金属換算にて5重量%を越えるときは、リッチ時のNOx と還元剤との反応の選択性が低下し、他方、0.05重量%よりも少ないときは、触媒反応の雰囲気がリーンからリッチに転換するときに、リーンからリッチへの反応の雰囲気の転換速度が低下し、その結果、本発明の触媒によるNOx 還元分解能が低下する。
【0042】
本発明によれば、このような触媒成分は、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ゼオライト、チタニア等の従来より知られている担体に担持されている。
【0043】
内部触媒成分は、1つの方法として、例えば、アルミナ等の担体を触媒成分である白金等の水溶性塩の水溶液に加えてスラリーとし、混合、攪拌した後、乾燥させ、酸化性又は還元性雰囲気中、500〜900℃の温度で焼成すれば、担体上に触媒成分を有する粉体として得ることができる。
【0044】
特に、好ましい方法として、触媒成分である白金等のイオン交換可能な水溶液塩の水溶液(例えば、テトラアンミン白金(II)硝酸塩(Pt(NH3)4 (NO3)2 )やジニトロジアンミン白金(II)(Pt(NO2)2(NH3)2) 等)を用いて、イオン交換法にてアルミナ等の担体に触媒成分を担持させた後、乾燥させ、酸化性又は還元性雰囲気中、500〜900℃の温度で焼成すれば、担体上に触媒成分を有するものを粉体として得ることができる。
【0045】
内部触媒層は、内部触媒成分のNOx 還元性が高く、従って、その厚みがリッチ/リーン工程におけるNOx 還元能に及ぼす影響は、表面触媒層の厚み程には大きくはないが、しかし、通常は、10μmから50μmの範囲が適当である。内部触媒層の厚みを50μmよりも厚くしても、それに見合って性能が向上せず、他方、内部触媒層の厚みを10μmより小さくしたときは、NOx 還元能が低下する。
【0046】
本発明によれば、表面触媒層と内部触媒層のための触媒成分は、前述したように、粉末や粒状物のような種々の形態にて得ることができる。従って、従来からよく知られている任意の方法によって、このような内部触媒成分を用いて、内部触媒層を、例えば、ハニカム、環状物、球状物等のような種々の形状に成形し、その後、表面触媒成分を用いて、上記内部触媒層の表面に表面触媒層を形成することによって、種々の形状の触媒構造体とすることができる。このような触媒構造体の調製に際して、必要に応じて、適当の添加物、例えば、成形助剤、補強材、無機繊維、有機バインダー等を用いることができる。
【0047】
特に、本発明による触媒は、任意の形状の支持用の不活性な基材の表面に、例えば、ウォッシュ・コート法によって、(例えば、塗布して、)その表面に内部触媒層と表面触媒層とを有する触媒構造体とするのが有利である。上記不活性な基材は、例えば、コージーライトのような粘土鉱物や、また、ステンレス鋼のような金属、好ましくは、Fe−Cr−Alのような耐熱性の金属からなるものであってよく、また、その形状は、ハニカム、環状、球状構造等であってよい。
【0048】
このような本発明による触媒はいずれも、熱に対する抵抗にすぐれるのみならず、硫黄酸化物に対する抵抗性にもすぐれており、ディーゼルエンジンやリーンガソリンエンジン自動車排ガス中のNOx の還元、即ち、脱硝するための触媒として用いるのに好適である。
【0049】
本発明においては、触媒は、好ましくは、燃料の燃焼雰囲気が前述したようなリッチ条件とリーン条件の間で振動する条件下での触媒反応において用いられる。ここに、触媒反応の周期(即ち、リッチ雰囲気(又はリーン雰囲気)から次のリッチ雰囲気(又はリーン雰囲気)までの時間)は、好ましくは、5〜150秒、特に好ましくは、30〜90秒である。また、リッチ/リーン幅、即ち、リッチ時間(秒)/リーン時間(秒)は、通常、0.5/5〜10/150の範囲であり、好ましくは、2/30〜5/90の範囲である。
【0050】
リッチ条件は、燃料としてガソリンを用いる場合には、通常、エンジンの燃焼室に重量比で10〜14の空気/燃料比率で燃料を周期的に噴射することによって形成される。リッチ条件下の典型的な排ガスは、数百容量ppmのNOx 、5〜6容量%の水、2〜3容量%のCO、2〜3容量%の水素、数千容量ppmの炭化水素及び0〜0.5容量%の酸素を含む。一方、リーン条件は、燃料としてガソリンを用いる場合には、通常、エンジンの燃焼室に重量比で20〜40の空気/燃料比率で燃料を周期的に噴射することによって形成される。リーン条件下の典型的な排ガスは、数百容量ppmのNOx 、5〜6容量%の水、数千容量ppmのCO、数千容量ppmの水素、数千容量ppmの炭化水素及び5〜10容量%の酸素を含む。
【0051】
本発明による触媒を用いるNOx 接触還元のために好適な温度は、個々のガス組成にもよるが、リッチ行程において、長期間にわたってNOx に対して有効な触媒反応活性を有するように、通常、150〜550℃の範囲であり、好ましくは、200〜500℃の範囲である。上記反応温度域においては、排ガスは、好ましくは、5000〜100000hr-1の範囲の空間速度で処理される。
【0052】
本発明の方法によれば、上述したように、NOx を含む排ガスを周期的なリッチ/リーン工程において、上述した触媒に接触させることによって、酸素、硫黄酸化物又は水分の存在下においても、排ガス中のNOx を安定に且つ効率よく接触還元することができる。
【0053】
【実施例】
以下に内部触媒成分と表面触媒成分である粉体触媒の製造例と共に、これらを用いるハニカム触媒構造体の製造例とそれらハニカム触媒構造体の窒素酸化物還元性能を実施例として挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、すべての「部」及び「%」は、特に明示しない限り、重量基準である。
【0054】
(1)内部触媒成分の調製
【0055】
製造例1
イオン交換水100mLにPt(NH3)4 (NO3)2 水溶液(白金として9.0%)8.40gを加えて、水溶液とし、これにγ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)60gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、γ−アルミナ上に白金1%を担持させてなる触媒粉体を得た。
【0056】
製造例2
イオン交換水100mLにPt(NH3)4 (NO3)2 水溶液(白金として9.0%)8.40gと硝酸ロジウム水溶液(ロジウムとして9.0%)4.20gを加えて、水溶液とし、これにγ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)60gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、γ−アルミナ上に白金1%とロジウム0.5%とを担持させてなる触媒粉体を得た。
【0057】
製造例3
イオン交換水100mLに硝酸パラジウム水溶液(パラジウムとして9.0%)4.20gとPt(NH3)4 (NO3)2 水溶液(白金として9.0%)8.40gを加えて、水溶液とし、これにγ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)60gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、γ−アルミナ上に白金1%とパラジウム0.5%とを担持させてなる触媒粉体を得た。
【0058】
(2)表面触媒成分の調製
【0059】
製造例4
イオン交換水100mLに硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)151.37gとオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)32.09gと硝酸ガドリニウム(Gd(NO3)3・6H2O)21.41gを加えて、水溶液とし、これに0.1規定のアンモニア水を加えて、セリウムイオンを中和加水分解し、1時間熟成した。得られたスラリーを濾過し、120℃で24時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成して、セリア/ジルコニア/酸化ガドリニウム複合酸化物粉体(酸化物基準重量比70/20/10、比表面積182m2/g)を得た。
【0060】
イオン交換水100mLに硝酸ロジウム水溶液(ロジウムとして9.0%)4.20gを加えて、水溶液とし、これに上記セリア/ジルコニア/酸化ガドリニウム粉体30gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、セリア/ジルコニア/酸化ガドリニウム粉体上にロジウム1%を担持させてなる触媒粉体を得た。
【0061】
製造例5
イオン交換水100mLに硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)103.77gと硝酸テルビウム(Tb(NO3)3・6H2O)40.96gとを溶解させて、水溶液を調製した。この水溶液に0.1規定のアンモニア水を加え、上記セリウム塩とテルビウム塩を中和加水分解した後、1時間熟成した。得られたスラリーから生成物を濾過にて分離し、これを120℃で24時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成して、セリア/酸化テルビウム複合酸化物粉体(酸化物基準重量比70/30、比表面積139m2/g)を得た。
【0062】
イオン交換水100mLに硝酸ロジウム水溶液(ロジウムとして9.0%)2.10gを加えて、水溶液とし、これに上記セリア/酸化テルビウム複合酸化物粉体30gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、セリア/酸化テルビウム複合酸化物上にロジウム0.5%を担持させてなる触媒粉体を得た。
【0063】
製造例6
イオン交換水1700mLに硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)34.59gとオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)84.45gと硝酸ランタン(La(NO3)3・6H2O)7.97gとを溶解させて、水溶液を調製した。この水溶液に0.1規定のアンモニア水を加え、上記セリウム塩とジルコウム塩とランタン塩を中和加水分解した後、1時間熟成した。得られたスラリーから生成物を濾過にて分離し、これを120℃で24時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成して、セリア/ジルコニア/酸化ランタン複合酸化物粉体(酸化物基準重量比22/73/5、比表面積80m2/g)を得た。
【0064】
イオン交換水100mLに硝酸ロジウム水溶液(ロジウムとして9.0%)2.10gを加えて、水溶液とし、これに上記セリア/ジルコニア/酸化ランタン複合酸化物粉体30gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、セリア/ジルコニア/酸化ランタン複合酸化物上にロジウム0.5%を担持させてなる触媒粉体を得た。
【0065】
製造例7
イオン交換水1700mLに硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)121.06gとオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)28.12gと硝酸サマリウム(Sm(NO3)3・6H2O)3.40gとを溶解させて、水溶液を調製した。この水溶液に0.1規定のアンモニア水を加え、上記セリウム塩とジルコウム塩とサマリウム塩を中和加水分解した後、1時間熟成した。得られたスラリーから生成物を濾過にて分離し、これを120℃で24時間乾燥した後、空気中、500℃で3時間焼成して、セリア/ジルコニア/酸化サマリウム複合酸化物粉体(酸化物基準重量比72/24/4、比表面積187m2/g)を得た。
【0066】
イオン交換水100mLに硝酸ロジウム水溶液(ロジウムとして9.0%)2.10gを加えて、水溶液とし、これに上記セリア/ジルコニア/酸化サマリウム複合酸化物粉体30gを投入し、攪拌しながら、100℃で乾燥させた後、空気中、500℃にて3時間焼成して、セリア/ジルコニア/酸化サマリウム複合酸化物上にロジウム0.5%を担持させてなる触媒粉体を得た。
【0067】
(3)ハニカム触媒の調製
【0068】
触媒層厚みは、触媒層の見かけ密度を1.5g/cm3 、ハニカムの機械的接触面積を2500m2 /gとして、計算によって求めた。
【0069】
実施例1
製造例1で得たγ−アルミナ上に白金1%を担持させてなる粉体触媒30gにシリカゾル(日産化学工業(株)製スノーテックスN、シリカとして20重量%)3gと適量の水とを混合した。ジルコニアボール50gを粉砕媒体として用い、この混合物を遊星ミルで5分間粉砕して、ウォッシュコート用スラリーを得た。1平方インチ当りのセル数400のコージーライト製ハニカム基体に上記ウォッシュコート用スラリーを塗布して、上記粉体触媒からなる厚み30μmの内部触媒層を有するハニカム構造体を得た。
【0070】
次に、製造例4で得たセリア/ジルコニア/酸化ガドリニウム複合酸化物上にロジウム1%を担持させてなる粉体30gにシリカゾル(日産化学工業(株)製スノーテックスN、シリカとして20重量%)3gと適量の水とを混合し、上記と同様にして、スラリーを調製した。このスラリーを上記内部触媒層上にコーティングして、セリア/ジルコニア/酸化ガドリニウム複合酸化物上にロジウム1%を担持させた触媒からなる厚み60μmの表面触媒層を有するハニカム触媒構造体を得た。
【0071】
実施例2
実施例1と同様にして、製造例1で得たγ−アルミナ上に白金1%を担持させた触媒からなる厚み30μmの内部触媒層と、製造例5で得たセリア/酸化テルビウム複合酸化物(酸化物基準重量比70/30)上にロジウム0.5%を担持させてなる触媒からなる厚み60μmの表面触媒層を有するハニカム触媒構造体を得た。
【0072】
実施例3
実施例1と同様にして、製造例2で得たγ−アルミナ上に白金1%とロジウム0.5%とを担持させた触媒からなる厚み30μmの内部触媒層と、製造例6で得たセリア/ジルコニア/酸化ランタン複合酸化物(酸化物基準重量比22/73/5)にロジウム0.5%を担持させた触媒からなる厚み60μmの表面触媒層とを有するハニカム触媒構造体を調製した。
【0073】
実施例4
実施例1と同様にして、製造例3で得たγ−アルミナ上に白金1%とパラジウム0.5%とを担持させた触媒からなる厚み30μmの内部触媒層と、製造例7で得たセリア/ジルコニア/酸化サマリウム複合酸化物(酸化物基準重量比72/24/4)上にロジウム0.5%を担持させ触媒からなる厚み60μmの表面触媒層を有するハニカム触媒構造体を得た。
【0074】
比較例1
製造例5で得たセリア粉体15gとγ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)15gとを乾式混合し、この混合物上に白金1%を担持させた触媒粉体30gを用いて、実施例1と同様にして、ウォッシュコート用スラリーを調製した。このスラリーを実施例1と同じコージーライト製ハニカム基体に実施例1と同様にコーティングして、厚み60μmの触媒層を有するハニカム触媒構造体を得た。
【0075】
比較例2
苛性バリウム水溶液と炭酸ソーダ水溶液から炭酸バリウムを調製し、この炭酸バリウム(BaCO3) とγ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)との混合物(重量比8/2)上に白金1%を担持させて、触媒粉体を調製した。γ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)を炭酸カリウム水溶液に投入、混合し、乾燥させた後、空気中、1100℃で3時間焼成して、K2O・12Al2O3 (比表面積18m2/g)を調製した。別に、γ−アルミナ(住友化学工業(株)製KC−501)と上記K2O・12Al2O3 と混合して、γ−アルミナ/K2O・12Al2O3 重量比9/1の混合物を調製し、これに白金1%を担持させて、触媒粉体を得た。
【0076】
上記BaCO3/γ−アルミナ上に白金1%を担持させた触媒粉体48gと、上記γ−アルミナ/K2O・12Al2O3 上に白金1%を担持させた触媒粉体12gとを乾式混合して、実施例1と同様にして、ウォッシュコート用スラリーを調製した。このスラリーを実施例1と同じコージーライト製ハニカム基体に実施例1と同様にコーティングして、厚み80μmの触媒層を有するハニカム触媒構造体を得た。
【0077】
(4)性能試験
【0078】
上記実施例と比較例による触媒構造体をそれぞれ用いて、窒素酸化物を含むガスを以下の条件下に還元した。窒素酸化物から窒素への変換率(除去率)はケミカル・ルミネッセンス法にて求めた。
【0079】
試験方法
リッチ条件下のNOx の還元実験に用いた混合ガスの組成は次のとおりである。
NO : 500ppm
SO2 : 20ppm
O2 : 0.4%
CO : 2%
C3H6(プロピレン): 2000ppm
H2 : 2%
H2O : 6.0%
【0080】
リーン条件下のガスは、リッチ条件下の混合ガスに酸素を注入して調製したものであって、その組成は次のとおりである。
NO : 500ppm
SO2 : 20ppm
O2 : 9.0%
CO : 0.2%
C3H6(プロピレン): 500ppm
H2 : 0%
H2O : 6.0%
【0081】
リッチ/リーン幅を3〜30(秒/秒)から12/120(秒/秒)の範囲として、触媒反応を行って、それぞれの触媒の性能を調べた。
【0082】
(i)空間速度:
70000hr-1(リーン条件下)
70000hr-1(リッチ条件下)
【0083】
(ii)反応温度:
200、250、300、350、400、450及び500℃
結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明による触媒は、窒素酸化物の除去率が高い。これに対して、比較例による触媒は、概して、窒素酸化物の除去率が低い。
【0084】
【表1】
【0085】
更に、実施例1、比較例1及び2による触媒構造体をそれぞれ用いて、上記ガス条件、リッチ/リーン幅(秒/秒)を55/5、反応温度350℃として、50時間の耐久試験を行った。結果を表2に示す。表2から明らかなように、本発明による触媒は、硫黄酸化物に対しても、従来のNOx 貯蔵−還元システムに比べて、非常に高い耐性を有する。
【0086】
【表2】
Claims (6)
- リッチ時間(秒)/リーン時間(秒)を0.5/5〜10/150の範囲として、周期的なリッチ/リーン条件下に燃料を供給して燃焼させ、生成する排ガスを触媒に接触させて、その排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法において、上記触媒が
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選 ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコ ニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる 少なくとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する表面触媒層と、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム 酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する内部触媒層と
からなることを特徴とする排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法。 - リッチ時間(秒)/リーン時間(秒)を2/30〜5/90の範囲とする請求項1に記載の方法。
- 触媒において、表面触媒層の第2の触媒成分が第1の触媒成分に担持されている請求項1に記載の方法。
- リッチ時間(秒)/リーン時間(秒)を0.5/5〜10/150の範囲として、周期的なリッチ/リーン条件下に燃料を供給して燃焼させ、生成する排ガスを触媒構造体に接触させて、その排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法において、上記触媒構造体が不活性な基材上に
(A)(a)セリウム酸化物と
(b)ジルコニウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム及びランタンから選 ばれる少なくとも1つの元素の酸化物と
の混合物又は複合酸化物からなる第1の触媒成分(但し、セリウム酸化物とジルコ ニウム酸化物との混合物又は複合酸化物を除く。)と、
(c)ロジウム、パラジウム、ロジウム酸化物及びパラジウム酸化物から選ばれる少な くとも1種
からなる第2の触媒成分と
を表面触媒成分として有する表面触媒層と、
(B)(a)白金、ロジウム、パラジウム、白金酸化物、ロジウム酸化物及びパラジウム 酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒成分と
(b)担体と
を内部触媒成分として有する内部触媒層と
を有するものである排ガス中の窒素酸化物を接触還元する方法。 - リッチ時間(秒)/リーン時間(秒)を2/30〜5/90の範囲とする請求項4に記載の方法。
- 触媒構造体において、表面触媒層の第2の触媒成分が第1の触媒成分に担持されている請求項4に記載の方法。
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