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JP3744084B2 - 冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金 - Google Patents

冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金 Download PDF

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JP3744084B2
JP3744084B2 JP30122496A JP30122496A JP3744084B2 JP 3744084 B2 JP3744084 B2 JP 3744084B2 JP 30122496 A JP30122496 A JP 30122496A JP 30122496 A JP30122496 A JP 30122496A JP 3744084 B2 JP3744084 B2 JP 3744084B2
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Daido Steel Co Ltd
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車エンジン用排気バルブ,耐熱ボルト,自動車エンジン用排気ガス触媒ニットメッシュ等に用いて好適な析出硬化型の耐熱合金、特に冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金に関し、詳しくは冷間加工後において固溶化熱処理を施すことなく、そのまま時効処理して用いることのできる耐熱合金に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車エンジン用排気バルブ等に用いる耐熱材料としては、従来高Mn系のオーステナイト耐熱鋼JIS SUH35(Fe−9Mn−21Cr−4Ni−0.5C−0.4N)或いはNi基超合金JIS NCF751(Ni−15.5Cr−0.9Nb−1.2Al−2.3Ti−7Fe−0.05C)等が使用されてきた。
【0003】
後者のNi基超合金は高温強度,高温酸化,高温腐食に優れた合金であるが、Niを70%強含んでいることからコストが高いといった問題がある。
そこで高価なNi量を低減する試みが従来なされており、Ni含有量40%或いはそれ以下の含有量の合金の開発も行われている。
【0004】
しかしながらNi含有量を更に低減するとなると性能的な問題が生じ、現実的にはそれ以上にNi含有量を低減することは困難である。
【0005】
Ni含有量を更に低減した場合、Feの増加によって高温における組織安定性が劣化してしまい、高温で長時間使用すると脆化相であるη相(NiTi)が析出し、高温強度の低下、室温での靱性低下をもたらしてしまう。
このようにNi含有量の低減は性能的な問題から自ずと限界がある。
【0006】
ところで上記自動車エンジン用排気バルブ等の耐熱部品は、従来これを熱間でのアプセット加工,熱間押出加工等の熱間加工にて製造しているが、例えば自動車エンジン用排気バルブ等の耐熱部品は表面傷その他の要求特性が厳しく、熱処理後において機械加工による仕上げ加工の加工量,加工工数が多くなって加工に要する時間が長く、このことがコストを高めてしまう1つの要因となっていた。
そこでこれを冷間加工にて製造できるようにすれば、コストを更に低減できて望ましい。
【0007】
しかしながら従来提供ないし提案されている耐熱材料は熱間加工を前提としており、そのまま冷間加工にて耐熱部品を製造することのできない材料である。
即ち冷間加工にて耐熱部品を製造するには、耐熱材料が冷間加工性に優れたものであることが要求される。
【0008】
ところで、析出硬化型の耐熱合金に優れた冷間加工性を付与し、これを用いて冷間加工することを可能となし得た場合であっても、通常はその後において一旦固溶化熱処理を施した上で時効処理を行い、析出成分を析出させて所要の強度を発現させることが必要で、熱処理のための工数が多い問題がある。
【0009】
これは、冷間加工をしてそのまま時効処理を行うと冷間加工時に合金内部に残留した歪によって時効が過度に促進されてしまい、Ni含有量が低く、Feが多くなるとピーク硬さに到達した後急激に軟化して脆化相であるη相を析出させてしまうからであり、そこで冷間加工後に一旦固溶化熱処理を施して歪を取り、その上で時効処理を行うことが必要となるのである。
【0010】
しかしながらこのようにした場合、熱処理のための工数が多くなって、そのことが耐熱部品のコストを高める要因となってしまう。
従って耐熱部品の製造コストの更なる低減を図る上で、上記熱処理のための工数を少なくすることが望ましい。
【0011】
析出硬化型の耐熱合金を用いて自動車エンジン用排気バルブ等の耐熱部品を製造した場合、その他に次のような問題点が内在する。
即ち、この種の析出硬化型の耐熱合金から成る耐熱部品を高温度で長時間使用すると経時的に時効が進んでしまい、いわゆる過時効状態となって合金が軟化・劣化してしまう。
【0012】
従って耐熱部品に用いられる耐熱合金としては、高温度で長時間使用され続けても軟化・劣化を特に起さない、過時効特性に優れたものであることが求められる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願の発明はこのような課題を解決するためになされたものである。
而して本願の請求項1の耐熱合金は、質量%で、C:0.01〜0.1%,Si:≦2%,Mn:≦2%,Cr:12〜25%,Nb+Ta:0.2〜2.0%,Ti:1.5%未満,Al:0.5〜3.0%,Ni:25〜45%,Cu:0.1〜5.0%でTiとAlとの原子%の比率Ti/Alが、Ti/Al=0.115〜1.0であり、残部不可避的不純物及びFeからなる合金組成を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、更にW,Mo,Vの何れか1種若しくは2種以上を質量%で、W:≦3%,Mo:≦3%,V:≦1%、且つ1/2W+Mo+V:≦3%の範囲で含有していることを特徴とする。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、質量%で、Ni+Co:25〜45%,Co:≦5%の範囲で含有することを特徴とする。
【0016】
請求項4のものは、請求項1,2,3の何れかにおいて、Ti,Al,Nb,Taが原子%で、Ti+Al+Nb+Ta:4.5〜7.0%であることを特徴とする。
【0017】
請求項5のものは、請求項1,2,3,4の何れかにおいて、下記式で表されるMが、M:≦0.95であることを特徴とする。
M=(0.717Ni+0.858Fe+1.142Cr+1.90Al+2.271Ti+2.117Nb+2.224Ta+1.001Mn+1.90Si+0.615Cu)/100(但し各元素は原子%)
【0018】
請求項6のものは、請求項1,2,3,4,5の何れかにおいて、更にB,Zrの1種若しくは2種を質量%で、B:0.001〜0.01%,Zr:0.001〜0.1%の範囲で含有することを特徴とする。
【0019】
請求項7のものは、請求項1,2,3,4,5,6の何れかにおいて、Ca+Mgを質量%で、Ca+Mg:0.001〜0.01%の範囲で含有することを特徴とする。
【0020】
請求項8のものは、請求項1,2,3,4,5,6,7の何れかにおいて、P,S,O,Nがそれぞれ質量%で、P:≦0.02%,S:≦0.01%,O:≦0.01%,N:≦0.01%であることを特徴とする。
【0021】
【作用】
本発明の耐熱合金は、Ni含有量が低レベルでコストが安価であり、加えて冷間加工性に優れたもので、自動車エンジン用排気バルブ等の耐熱部品を冷間加工にて製造することが可能であり、耐熱部品の製造コストを低廉化することができる。
即ち耐熱合金材料自体のコストと、これを用いた耐熱部品の製造コストの両方を低減することができる。
【0022】
本発明の耐熱合金は、Cuを所定範囲で含有させた点を1つの特徴とするもので、このCuが積層欠陥エネルギーを高めて加工硬化を抑制する働きをなすことにより、耐熱合金における冷間加工性が効果的に高められる。
【0023】
本発明の耐熱合金はまた、次のような特長を有する。
即ちこの耐熱合金は、冷間加工後において固溶化熱処理することなくそのまま直接時効処理したときに、過時効を起すことなく合金内部に残留した歪によって時効が適正に進行する。
【0024】
また高温度で長時間使用されたときにも過時効状態となるのが抑制され、耐熱部品の寿命が高寿命化する。
これは専らAl:0.5〜3.0%に対してTi:1.5%未満と低く抑えられ、特にTi/Al=0.115〜1.0(原子%の比率)とされていることによる。
【0025】
このTiとAlとの比率(原子%の比率)Ti/Alは、合金内部に残留した歪とともに合金の時効速さを左右する重要な因子であり、Ti/Alの値が大きくなるほど時効が促進され、また逆にTi/Alの値が小さくなるほど時効が遅延する。
【0026】
本発明では、冷間加工時に生じた歪を原動力として時効処理時に時効が適正に進行するようにTi/Alの値が小さく抑えられている。
そして本発明において耐熱部品の製造時に冷間加工後の固溶化熱処理を省略できることから、耐熱部品の製造コストをより一層低廉化することができる。
【0027】
本発明においては、C,Si,Mn,Cr,Nb+Ta,Ti,Al,Ni,Cuに加えて、更にW,Mo,Vの1種若しくは2種以上を、W:≦3%,Mo:≦3%,V:≦1%且つ1/2W+Mo+V:≦3%の範囲で含有させることができる(請求項2)。
これらは固溶強化元素であり、これら元素を含有させることで耐熱合金の強度を効果的に高めることができる。
【0028】
本発明では、更にNi+Co:25〜45%の範囲内で、Co:≦5%の範囲で含有させることができる(請求項3)。
CoはNiとほぼ同じような作用があり、そこでNiの一部を置換する形でCoを5%の範囲内まで含有させることができる。
【0029】
本発明では、Ti,Al,Nb,Taを原子%でTi+Al+Nb+Ta:4.5〜7.0%とすることができ(請求項4)、更にγ相の安定性を示す指標であるM:≦0.95とすることができる(請求項)。
また必要に応じてB,Zrの1種若しくは2種をB:0.001〜0.01%,Zr:0.001〜0.1%の範囲で含有させることができる(請求項)。
これらB,Zrを含有させることによって粒界を強化することができる。
【0030】
本発明では、更に、Ca+MgをCa+Mg:0.001〜0.01%の範囲で含有させることができ(請求項)、これによって熱間加工性も向上させることができる。
【0031】
更にP,S,O,NをP:≦0.02%,S:≦0.01%,O:≦0.01%,N:≦0.01%に規制することができる(請求項)。
これらは不純物成分であり、そしてこれら不純物成分を上記範囲内に規制することで、耐熱合金の特性を更に良好となすことができる。
【0032】
本発明の耐熱合金は、上記説明から明らかなように冷間加工後において固溶化熱処理を施すことなく、直接時効処理した場合において本来の特長を発揮する。
【0033】
次に本発明における各化学成分の限定理由を詳述する。
C:0.01〜0.1%
Cは0.01%以上含有させることでTi,Nb,Crと結合して炭化物を形成することにより合金の高温強度を改善する。一方において0.1%より多く含有させるとMC炭化物を多量に析出して合金の熱間加工性を低下させ、また加工時にその炭化物が起点と成って疵を発生させる。従って本発明ではその含有量を0.01〜0.1%の範囲内に規定する。
【0034】
Si:≦2%
Siは脱酸元素として有用であり、耐酸化性を改善する。しかし2%を超えて含有させると合金の冷間加工性が低下するため上限値を2%とする。
【0035】
Mn:≦2%
MnはSiと同様に脱酸元素として有用であるが、多量に含有させると合金の高温酸化性を損なうばかりでなく、靭性を害するη相(NiTi)の析出を助長するため上限値を2%とする。
【0036】
Cr:12〜25%
Crは合金の高温酸化及び腐食を改善する上で有用な元素であり、そのために12%以上含有させることが必要である。
しかし含有量が25%を超えるとオーステナイト相が不安定と成り、脆化相であるσ相が析出して合金の靭性が低下する。そこで本発明ではCrの上限値を25%とする。Crの望ましい範囲は12〜20%である。
【0037】
Nb+Ta:0.2〜2.0%
Nb及びTaは何れもNiとともに重要な析出相である金属間化合物のγ´相(γプライム相)Ni(Al,Ti,Nb,Ta)を形成する元素であり、そのγ´相の析出によって合金の高温強度を効果的に高くすることができる。但しその効果を得るためにはNb+Taとして0.2%以上含有させる必要がある。
しかしながら含有量が2.0%を超えるとδ相Ni(Nb,Ta)が析出して合金の靭性が低下する。そこで本発明では上限値を2.0%とする。
【0038】
Ti:1.5%未満
TiはAl,Nb,TaとともにNiと結合してγ´相を形成する。但し1.5%以上含有させるとAl含有量に対してTiの含有量が相対的に多くなり、時効が過度に促進されてしまうようになる。そこで本発明ではTiの含有量を1.5%を限度としてそれより少ない量に規制する。
【0039】
Al:0.5〜3.0%
AlはNiと結合してγ´相を形成する最も重要な元素である。その含有量が0.5%未満であるとγ´相の析出量が不十分となり、そこで本発明では下限値を0.5%とする。
一方において含有量が3.0%を超えて多くなると合金の熱間加工性が低下する。そこで本発明では上限値を3.0%とする。
【0040】
Ni:25〜45%
Niは合金のマトリックスであるオーステナイトを形成する元素であり、合金の耐熱性及び耐食性を向上させる。また強化相であるγ´相を析出させる上で必須の成分である。
加えてNiは高温における組織を安定させる働きがあり、これらの効果を十分に発揮させる上で25%以上含有させることが必要である。
一方においてこれを45%を超えて多く含有させると、かかるNiが高価な元素であることから合金のコストを高めてしまい、ひいては本発明の目的を達成できなくなる。加えてこのNiは本合金では固溶化状態での硬さを上昇させてしまい、冷間加工性を低下させる。そこで本発明ではその含有量の上限値を45%とする。
【0041】
Cu:0.1〜5.0%
Cuは合金の冷間加工性を高める上で必須の成分である。
このCuは上述したように積層欠陥エネルギーを高めて加工硬化を抑制する働きがあり、そしてその作用によって冷間加工性を効果的に向上させる。
但しその含有量が0.1%未満では十分な効果を期待できず、また5.0%を超えて含有させても効果の向上が少なく、加えて熱間加工性が劣化する。そこで本発明ではCuの含有量を0.1〜5.0%とする。望ましい含有量範囲は0.5〜3.0%である。
【0042】
W :≦3%
Mo:≦3%
V :≦1%
1/2W+Mo+V:≦3%
W,Mo,Vは固溶強化により高温強度を向上させる元素である。
W,Moについては3%超、Vは1%超添加しても効果は飽和傾向を示すとともに、コスト上昇,冷間加工性低下となるためにその含有量を1/2W+Mo+V:≦3%とする。
【0043】
Ni+Co:25〜45%
Co:≦5%
CoはNiとほぼ同じような作用があり、そこでNiを一部置換する形で合金に含有させることができる。即ちNi+Co:25〜45%の条件を満たす範囲内でCoを合金中に含有させることができる。しかしながらCoはNiに較べても高価な元素であるため上限を5.0%とする。
【0044】
Ti+Al+Nb+Ta:4.5〜7.0原子%
Ti,Al,Nb,Taは何れもγ´相の構成元素である。十分なNi量が存在する場合、γ´相の析出量はこれら元素の含有量の総和に比例する。そして合金の高温強度はγ´相の析出量に比例する。本発明において合金の高温強度を十分に発現させる上で4.5原子%以上含有させる必要がある。
一方においてその総和が7.0原子%を超えると強度は上昇するものの熱間加工性が低下する。そこで本発明ではそれらの元素の総和の上限値を7.0原子%とする。
【0045】
Ti/Al:0.115〜1.0(各元素は原子%)
高温下で長時間使用中に析出する金属間化合物のη相(NiTi)は合金の機械的性質を劣化させる。η相の析出はTi含有量とAl含有量との比(Ti/Al)に依存する。即ちTi/Alの比率が大きくなるほどη相の析出が起こり易くなる。そこで本発明では長時間使用後においてη相が析出しないように、また冷間加工後において直接時効処理したときに時効が過度に進まないようにTi/Alの値を1.0以下とする。
尚Ti/Alの望ましい下限値は0.2である。
【0046】
M:≦0.95
ここでM=(0.717Ni+0.858Fe+1.142Cr+1.90Al+2.271Ti+2.117Nb+2.224Ta+1.001Mn+1.90Si+0.615Cu)/100(但し各元素は原子%)
このMはγ相の安定性を示す指標であり、このMが0.95より大きくなると金属間化合物σ相が析出するようになる。このσ相は合金の機械的性質を劣化させる。またMが0.95より大きくなると熱間加工性も劣化する。そこで本発明ではMを0.95以下に規制する。
【0047】
B :0.001〜0.01%
Zr:0.001〜0.1%
B,Zrは結晶粒界に偏析して粒界を強化する。その効果が十分現れるのはそれぞれ0.001%以上含有させた場合である。但しBについては0.01%、Zrについては0.1%を超えて含有させると熱間加工性を損なうため、含有量をそれぞれの上限値以下とする。
【0048】
Ca+Mg:0.001〜0.01%
これらの元素は何れも合金の溶解時に脱酸,脱硫元素として添加される元素であり、合金の熱間加工性を改善する効果がある。その効果が現れるのはCa+Mgとして0.001%からである。但し0.01%を超えて含有させると熱間加工性を劣化させる。そこで上限値を0.01%とする。
【0049】
P:≦0.02%
S:≦0.01%
O:≦0.01%
N:≦0.01%
これらは何れも不純物としてのものであって、このうちP,Sは合金の熱間加工性を低下させる。またO,Nは酸化物又は窒化物(非金属介在物)を形成し、合金の機械的性質を劣化させる。そこで本発明ではそれぞれの上限値を0.02%,0.01%,0.01%,0.01%とした。
【0050】
【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳しく説明する。
表1に示す化学組成の各種合金50kgを図1の工程に従って真空誘導炉にて溶解し、インゴットを得た。そしてそのインゴットを1100℃で16時間ソーキングした後、引き続いて1100℃〜900℃の温度範囲で鍛造,圧延し、直径16mmの丸棒とした。そしてその丸棒を1050℃×30分加熱後油冷の条件で熱処理し、次いでその熱処理した丸棒を用いて据込率70%,75%で冷間圧縮試験(温度:室温)を行い、その際の割れ発生率を調べることによって冷間加工性を調べた。ここで冷間での圧縮試験は下記に示す日本塑性加工学会冷間鍛造分科会基準に従って行った。
【0051】
【表1】
Figure 0003744084
【表2】
Figure 0003744084
【0052】
一方、上記熱処理した丸棒に対して750℃×4時間又は100時間加熱後空冷の条件で時効処理したものと、800℃×100時間加熱後空冷の条件で時効処理したものとのそれぞれについて、室温におけるビッカース硬さ測定(荷重(P)1kgf)を行った。
【0053】
また併せて上記熱処理した丸棒に対して据込率70%で圧縮試験(冷間加工)を行い、その後これを用いて750℃×4時間又は100時間加熱後空冷の条件で時効処理したものと、800℃×100時間加熱後空冷の条件で時効処理したものとのそれぞれについて室温におけるビッカース硬さ測定(荷重1kgf)を行い、また併せて圧縮及び時効処理後の試料のミクロ組織観察を行った。
【0054】
また上記熱処理した丸棒に対して絞り50%の前方押出しを施し、その後750℃×4時間加熱後、空冷の条件で時効処理したものについて800℃における回転曲げ疲れ試験を行った。
【0055】
これらの結果が表2,表3に示してある。
尚各試験は下記の条件で行った。
【0056】
【表3】
Figure 0003744084
【0057】
【表4】
Figure 0003744084
【0058】
<試験条件>
冷間圧縮鍛造試験
直径15mm,高さ22.5mmの試験片を軸方向に据込鍛造し、据込率70%,75%で加工を行ったときの割れ発生率を調べることで冷間加工性の評価を行った。
ここで据込率εは次式で表される。
ε=(h−h)/h×100
但しh:試験片の元の高さ,h:試験片の変形後の高さ
尚各試験はn=5個の試験片についてそれぞれ行った。
【0059】
硬さ測定
ビッカース式硬さ計を用い、測定荷重1kgでビッカース硬さを測定した。
【0060】
疲れ試験
前方押出し後の各試験材より直径8mmの平滑試験片を切り出し、小野式回転曲げ疲労試験機を用い、回転曲げ疲れ試験を行った。応力振幅を294MPaとしたときの繰返し数を各試料2本の平均で求めた。
【0061】
表2の結果から、本発明例の耐熱合金の場合冷間加工性に優れていること、また冷間加工を施した後に時効処理することで十分な硬さが得られること、一方において冷間加工後に直接時効処理を施してもη相が析出せず過時効状態とならないこと、更に長時間高温状態の下においても硬さがそれほど低下しないこと、即ち過時効状態となるのが抑制されることが分る。
また表3の疲れ試験の結果から、本発明例の耐熱合金の場合、耐疲労特性においても同等若しくは優れていることが分る。
【0062】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【0063】
【発明の効果】
上記本発明の耐熱合金は、Ni含有量が低レベルでコストが安価であり、加えて冷間加工性に優れていて自動車エンジン用排気バルブ等の耐熱部品を冷間加工にて製造することが可能であり、耐熱部品の製造コストを低廉化することができる。
即ち耐熱合金材料自体のコストと、これを用いた耐熱部品の製造コストの両方を低減することができる。
【0064】
本発明の耐熱合金は、Cuを所定範囲で含有させた点を1つの特徴とするもので、このCuが積層欠陥エネルギーを高めて加工硬化を抑制する働きをなすことにより、耐熱合金における冷間加工性が効果的に高められる。
【0065】
また本発明の耐熱合金は、Al含有量に対してTiの含有量を低くすることで時効速さが抑制されており、詳しくは冷間加工後に直接時効処理したときに適正に時効が進むものとされており、特にTi/Al値:0.115〜1.0とすることで、時効速度が最適化されて冷間加工後直接時効処理したときに過時効を起すことなく最適の硬さ・強度が発現され、また高温下で長時間使用されたときに経時的に時効が進行して過時効状態となるのが抑制され、耐熱部品の寿命を高寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例における耐熱合金の製造工程と熱処理及び各種試験片の作成工程を説明する工程説明図である。

Claims (8)

  1. 質量%で
    C :0.01〜0.1%
    Si:≦2%
    Mn:≦2%
    Cr:12〜25%
    Nb+Ta:0.2〜2.0%
    Ti:1.5%未満
    Al:0.5〜3.0%
    Ni:25〜45%
    Cu:0.1〜5.0%
    でTiとAlとの原子%の比率Ti/Alが
    Ti/Al=0.115〜1.0
    であり、残部不可避的不純物及びFeからなる合金組成を有することを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
  2. 請求項1において、更にW,Mo,Vの何れか1種若しくは2種以上を質量%で
    W :≦3%
    Mo:≦3%
    V :≦1%
    且つ
    1/2W+Mo+V:≦3%
    の範囲で含有していることを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、質量%で
    Ni+Co:25〜45%
    Co:≦5%
    の範囲で含有することを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
  4. 請求項1,2,3の何れかにおいて、Ti,Al,Nb,Taが原子%で
    Ti+Al+Nb+Ta:4.5〜7.0%
    であることを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
  5. 請求項1,2,3,4の何れかにおいて、下記式で表されるMが
    M:≦0.95
    であることを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
    M=(0.717Ni+0.858Fe+1.142Cr+1.90Al+2.271Ti+2.117Nb+2.224Ta+1.001Mn+1.90Si+0.615Cu)/100(但し各元素は原子%)
  6. 請求項1,2,3,4,5の何れかにおいて、更にB,Zrの1種若しくは2種を質量%で
    B :0.001〜0.01%
    Zr:0.001〜0.1%
    の範囲で含有することを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
  7. 請求項1,2,3,4,5,6の何れかにおいて、Ca+Mgを質量%で
    Ca+Mg:0.001〜0.01%
    の範囲で含有することを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
  8. 請求項1,2,3,4,5,6,7の何れかにおいて、P,S,O,Nがそれぞれ質量%で
    P :≦0.02%
    S :≦0.01%
    O :≦0.01%
    N :≦0.01%
    であることを特徴とする冷間加工性及び過時効特性に優れた耐熱合金。
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