JP3743330B2 - 内面溝付管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内面に複数の溝が螺旋状に形成された内面溝付管の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
空気調和機や冷凍機などの熱交換器には、管内に相変化する冷媒を流動させ、その冷媒と管外の流体とを熱交換させることにより冷媒に蒸発または凝縮を生じさせる伝熱管が用いられる。この伝熱管としては、例えばルームエアコンの熱交換器では、管内での冷媒の蒸発や凝縮による熱伝導を促進するために、内面に螺旋状の連続した複数の溝が形成された内面溝付管が知られている。
【0003】
そこ内面溝付管は、例えば特開平5−007920号公報、特開平5−329529公報、特開平6−015345号公報等に記述されているように、金属管内に溝付プラグを入れ、その溝付プラグが位置する金属管の外周面を押圧することで金属管の内面に多数の螺旋状の溝を形成する方法によって製造される。
【0004】
図2に従来の加工法を示す。外周面に複数の溝5が形成された溝付プラグ4は回転自由な状態で連結棒3を介してフローティングプラグ2と接続した状態で金属管1の内部に配置されている。この金属管1を引抜きダイス9を通して引き抜くことでフローティングプラグ2は金属管を介して引抜きダイス9の位置で止まり、それに伴って溝付プラグ4も引抜き方向での位置が固定される。この状態において、溝付きプラグ4の位置での金属管1の外周面を所定半径の軌道を公転する押圧手段6、例えば複数のボールまたはロールで圧迫することで、金属管1の内面は溝付プラグ4に押圧され、溝付プラグ4の溝5に応じたフィンによって隔てられた溝8が形成される。その後、仕上げダイス7を通して所定の外径に仕上げることで内面に複数の螺旋状の溝8が形成された内面溝付管が製造される。
【0005】
金属管1の内面に形成された螺旋状の溝8は管軸との間に所定のリード角をなすことになるが、内面の溝8にリード角をつけると、金属管内で液化した冷媒が溝8に沿って流れたときに環状流となり、管内の壁面に付着した液膜が薄くなるので、この内面溝付管を伝熱管に使用した熱交換器の伝熱特性の向上に寄与する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
内面の溝8のリード角が大きくなると凝縮性能が向上することは既知の事項である。しかし、従来の加工方法で内面溝のリード角を大きくするためには、溝付プラグ4の溝5と軸線とのなす角度βをそれだけ大きくしなければならないため、加工上はそれだけ金属管1を引き抜く荷重が増加することになり、断管に至るなどの問題もあり、リード角の大きな内面溝付管の生産性が阻害されているのが実情である。
【0007】
したがって、本発明の目的はリード角の大きな内面溝付管を容易に製造することのできる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明ではリード角の大きな内面溝付管の製造を容易にすることを特徴としている。
【0009】
所定外径の内面溝付管に仕上げるため、溝付プラグの部分で管内に溝を形成した後、引続き仕上げダイスを通して縮径することが行われるが、この時、内面溝付管は仕上げダイス部で軸方向に伸ばされると共に、溝を画定するフィンの影響でリード角が小さくなる方向にねじれ(より戻りと称する。)を生じる。本発明ではフローティングプラグを引き留める引抜きダイスを溝付プラグの回転方向と同方向に回転させることで前述のより戻りを拘束し、リード角の減少を抑えることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の実施の形態を示す。
【0011】
加工方法の基本的な部分は従来方法と差がない。即ち、溝付プラグ4とフローティングプラグ2が回転自由な状態で連結棒3を介して接続され、金属管1の管内に配置されている。そして、引抜きダイス9を通して金属管1を引き抜くことでフローティングプラグ2が金属管1を介して引抜きダイス9の位置で引き留められ、それにより溝付プラグ4は引抜き方向の位置が固定される。しかして位置の定まった溝付プラグ4の部分において金属管1の外周面を公転する押圧手段6としての複数のボールで順次押圧することで、そこを通過する金属管の内面に溝付プラグ4の溝5に応じた螺旋状のフィンが形成され、そのフィンによって画定された螺旋状の溝8を有する内面溝付管が成形される。内面溝付管は引続き仕上げダイス7を通して所定の外径に仕上げられる。
【0012】
この一連の加工において、本発明ではフローティングプラグ2を引き留める引抜きダイス9を溝付プラグ5の回転方向と同方向に回転させる。この引抜きダイス9の回転方法は問わないが、本形態では、ダイス受け10と引抜きダイス9の間にスラストベアリング11を配置すると共に、引抜きダイス9にパイプ12をつけたダイス回転治具13が接続してある。パイプ12にはプーリー15が設置してあり、図示しない他の駆動装置よりVベルト14でプーリー15を回転させることで引抜きダイス9が回転できる装置構成となっている。
【0013】
このような方式の装置で引抜きダイス9を溝付プラグ4の回転方向と同方向に強制的に回転させて内面溝付加工を行った場合、内面に溝8が形成された金属管が仕上げダイス7を通過するに伴っては生じるより戻りが拘束されて溝8のリード角の減少が抑えられ、引抜きダイスを回転させない場合に比べ、内面溝のリード角の大きな内面溝付管を得ることができる。
【0014】
因みに、図1に示す装置で、軸線とのなす角度βが39°の溝5を有する溝付プラグ4、金属管1として銅管を用い、溝付プラグ4が押圧手段としての複数のスチールボールを収納した加工リング(図示せず)の回転方向とは逆方向に回転する方式で内面溝加工を行った。最終段の引抜き速度を5m/分で一定、前記加工リングの回転数を3,000rpmで一定とし、引抜きダイス9を前記加工リングの回転方向とは逆方向に、その回転数を前記加工リングの回転数に対して0〜0.23まで変化させたて回転させたときの銅管内面に形成された溝のリード角の変化量を測定した。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
表1において、リード角の変化量は、引抜きダイス9が回転しない場合のリード角に対して増減した角度を示している。
【0017】
表1に示すように、内面溝のリード角は引抜きダイス9を固定した場合に比べ、溝付プラグ4と同一方向に引抜きダイス9を回転させることで大きくなる。
即ち、同じ溝付プラグ4を用いても引抜きダイス9を固定した場合に比べてリード角の大きな内面溝付管の加工が可能となることがわかる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、フローティングプラグを引き留める引抜きダイスを、溝付プラグの回転方向と同方向に回転させることで、溝付きプラグにおける溝の軸線に対する角度を変えることなく内面溝のリード角が大きな内面溝付管を加工性の低下を招くことなく容易に製造することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内面溝付管の製造方法の実施形態を示す概略図。
【図2】従来の内面溝付管の製造方法を示す概略図。
【図3】溝付プラグの平面概略図。
【符号の説明】
1 金属管
2 フローティングプラグ
3 連結棒(タイロッド)
4 溝付きプラグ
5、8 溝
6 押圧手段
7 仕上げダイス
9 引抜きダイス
10 ダイス受け
11 スラストベアリング
12 パイプ
13 回転治具
14 Vベルト
15 プーリー
Claims (3)
- 金属管内にフローティングプラグと、該フローティングプラグと連結棒を介して接続された溝付プラグとを配し、前記金属管を引抜きダイスを通すことで前記フローティングプラグを引抜きダイス部に留め、前記溝付プラグのある位置でそこを通過する金属管を押圧手段により溝付プラグ上に圧迫することにより前記金属管の内面に複数の溝を形成した後、引続き前記金属管を仕上げダイスに通して所定の外径に仕上げる内面溝付管の製造方法において、前記フローティングプラグを引き留める引抜きダイスを、前記金属管を引き抜くことで回転する溝付プラグの回転方向と同方向に回転させることを特徴とする内面溝付管の製造方法。
- 前記溝付プラグが前記押圧手段の回転方向とは逆の方向に回転することを特徴とする請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
- 前記引抜きダイスを前記押圧手段の回転速度以上の速度で回転させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内面溝付管の製造方法。
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