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JP3742203B2 - 半導体レーザ - Google Patents

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JP3742203B2
JP3742203B2 JP20693797A JP20693797A JP3742203B2 JP 3742203 B2 JP3742203 B2 JP 3742203B2 JP 20693797 A JP20693797 A JP 20693797A JP 20693797 A JP20693797 A JP 20693797A JP 3742203 B2 JP3742203 B2 JP 3742203B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は化合物半導体材料を用いた半導体レーザに係わり、特にInGaAlBN系材料を用いた半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクの高密度化等で必要とされる短波長光源として、InGaAlN系材料を用いた半導体レーザの開発が進められている。この種の材料による半導体レーザでは、短波長化により小さなビームに絞ることが可能となり、光ディスクなどの高密度情報処理用の光源として期待されている。この材料系で電流注入による発振を実現した構造として、多重量子井戸構造を用いた半導体レーザが報告されている(例えば下記文献)。
【0003】
1)S.Nakamura, M.Senoh, S.Nagahama, N.Iwasa, T.Yamada, T.Matsushita, H.Kiyoku and Y.Sugimoto:"InGaN-based multi-quantum-well-structure laser diodes",Jpn.J.Appl.Phys.,35(1996)pp.L74-L76.
2)S.Nakamura, M.Senoh, S.Nagahama, N.Iwasa, T.Yamada, T.Matsushita, H.Kiyoku and Y.Sugimoto:"InGaN multi-quantum-well-structure laser diodes with cleaved mirror facets",Jpn.J.Appl.Phys.,35(1996)pp.L217-L220.
バルク活性層に対して薄膜活性層を用いた多重量子井戸構造は、しきい値を大幅に低減できることが知られている。しかしながら、InGaAlN系材料では未だしきい電流密度は高く、動作電圧も高いため、連続発振を実現するためには多くの課題がある。
【0004】
InGaAlN系材料で動作電圧が高い原因の一つは、p型のコンタクト抵抗が極めて大きいことである。既に報告されている電極ストライプ構造では、p型電極ストライプにおける電圧降下が大きく、動作電圧が高くなると共に、この領域での熱の発生が無視できない。コンタクト抵抗を低減するには電極面積を大きくすれば良いが、上記電極ストライプ構造では、電極面積を広げるとしきい電流値も大きくなってしまい、また電流注入領域が大きいために基本横モード発振も不可能となる。
【0005】
光ディスクシステム等への応用では、半導体レーザの出射ビームを極小スポットに絞ることが必要となるため、基本横モード発振は不可欠であるが、InGaAlN系レーザでは横モード (transverse-mode)制御構造が実現されていない。従来の材料系では、例えばInGaAlP系でリッジストライプ型のSBRレーザが報告されているのみである(下記文献)。
【0006】
3)M.Ishikawa et al.:Extended Abstracts,19th Conf.Solid State Devises and Materials,Tokyo(1987)pp.115-118.
しかしながら、InGaAlN系レーザでは、上記SBRレーザとは材料系が異なるために、この構造をそのまま適用することはできない。InGaAlN系レーザにおける電流狭窄構造としては、
4)特開平8−111558号公報(半導体レーザ素子)
に、GaNを電流狭窄層に用いた構造が開示されている。この構造は、電流狭窄は可能であるが光閉込め作用はないため、非点収差等のない良質の出射ビームを得るのは困難である。
【0007】
一般に、クラッド層中に設けた電流狭窄層を光閉込め層としても作用させるためには、その組成や厚さ、活性層からの距離等を所定の値に設定する必要がある。特にInGaAlN系レーザでは、発振波長が短いために、たとえ組成が同じであっても、厚さや位置によって全く異なる導波機構となってしまう。このため、単に電流狭窄層を設けただけでは安定な基本横モード発振は得られない。
【0008】
また、InGaAlN系の結晶成長では、GaAlNのようなAlを含む層を厚く成長させると、下地のGaNとの格子定数が異なるために、Alを含む層にクラックが発生するという問題がある。このため層方向(垂直方向)の横モード閉込めがうまく行なわれず、しきい値が増大するか、場合によっては導波モード自体が存在し得ない場合も起こる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のInGaAlN系の半導体レーザにおいては、横モード制御構造の作成が難しく、基本横モードで連続発振するレーザの実現が困難である
【0018】
本発明の目的は、基本横モードで連続発振することができ、光ディスクシステム等の光源に適した非点収差のない良質の出射ビームを得ることのできるInGaAlBN系の半導体レーザを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る半導体レーザでは、クラッド層より屈折率の大きい光閉込め層を設け、その損失導波効果又は反導波効果によって横モードを制御することにより、動作電圧が低くかつ安定な基本横モードでの連続発振を可能としている。
【0024】
即ち本発明は、窒素を含むIII-V族化合物半導体からなり、第1導電型のクラッド層とストライプ状のリッジを有する第2導電型のクラッド層で活性層部を挟んだダブルへテロ構造部と、このダブルへテロ構造部の第2導電型クラッド層側に接して少なくともリッジ部以外の領域に形成された光閉込め層とを備えた半導体レーザであって、光閉込め層が窒素を含むIII-V族化合物半導体からなり、該光閉込め層の屈折率が第2導電型のクラッド層の屈折率より大きいことを特徴とする。
【0025】
また本発明は、第1導電型のInx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなるクラッド層とストライプ状のリッジを有する第2導電型のInu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなるクラッド層で活性層部を挟んだダブルへテロ構造部と、このダブルへテロ構造部の第2導電型クラッド層側に接して少なくともリッジ部以外の領域に形成された光閉込め層とを備えた半導体レーザであって、光閉込め層がInp Gaq Alr 1-p-q-r N(0≦p≦1,0≦q<1,0≦r≦1,0<p+r≦1,0<p+q+r≦1)からなり、該光閉込め層の屈折率が第2導電型のクラッド層の屈折率より大きいことを特徴とする。
【0026】
ここで、本発明の望ましい実施態様としては次のものがあげられる。
【0027】
(1) 活性層部が、少なくともIna Gab Alc 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIne Gaf Alg 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸又は多重量子井戸を備えていること。
【0028】
(2) 障壁層の厚さが井戸層の厚さを越えないこと。
【0029】
(3) コア領域の総厚dとレーザ発振波長λに対し、第1導電型クラッド層の厚さH1及び第2導電型クラッド層の厚さH2が、
0.18(zd/λ)-1/2≦H1/λ≦0.27(zd/λ)-1/2
0.18(wd/λ)-1/2≦H2/λ≦0.27(wd/λ)-1/2
を満たす範囲にあること。
【0030】
(4) 井戸層の総厚dact は、0.5μm未満であること。
【0031】
(5) 井戸層の総厚dact は、0.045μm以下であること。
【0032】
(6) 各クラッド層のAl組成xAl、コア領域の平均In組成yIn、両組成の和Δx(=xAl+yIn)、コア領域の総厚Hcoreおよび各クラッド層の厚さHcladは、発振波長λに対し、
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≧0.08を満たしていること。
【0033】
(7) 上記パラメータが、さらに、
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≧0.1を満たしていること。
【0034】
(8) 上記パラメータが、
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≦0.2を満たしていること。
【0035】
(9) 上記パラメータが、
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≦0.15を満たしていること。
【0036】
(10)各クラッド層のAl組成xAlと厚さHcladとは、
Al・Hclad≦0.1μmを満たしていること。
【0037】
(11)各クラッド層のAl組成xAlと厚さHcladとは、
Al・Hclad≦0.06μmを満たしていること。
【0038】
(12)コア領域は、活性層を挟むように形成されたInu Gav Alw 1-u-v-w N(0<u≦1,0≦v<1,0≦w<1)からなる複数の導波層を含んでいる。このとき、コア領域の総厚Hcoreおよびコア領域の平均In組成yInは、発振波長λに対し、(yIn1/2 ・(Hcore/λ)≧0.15を満たしていること。
(13)上記パラメータが、さらに、
(yIn1/2 ・(Hcore/λ)≧0.2を満たしていること。
【0039】
(14)光閉込め層が第2導電型クラッド層と同じ導電型であること。
【0040】
(15)光閉込め層のバンドギャップエネルギーが活性層部のバンドギャップエネルギーより小さいこと。
【0041】
(16)第2導電型クラッド層上のコンタクト層と光閉込め層とが同一材料であり、ストライプ領域の第2導電型クラッド層とコンタクト層との間に、両者の中間のバンドギャップを有するキャップ層が設けられていること。
【0042】
(17)量子井戸と各クラッド層との間に、屈折率が量子井戸の平均屈折率より小さくクラッド層の屈折率より大きい導波層をそれぞれ備え、少なくとも一方の導波層中又は導波層と量子井戸との間に、バンドギャップエネルギーが導波層のバンドギャップエネルギーより大きいIns Gat Alh 1-s-t-h N(0≦s,t,h,s+t+h≦1)からなるキャリアオーバーフロー防止層が少なくとも1層設けられていること。
【0043】
(18)キャリアオーバーフロー防止層のAl組成hが、
0<h<0.2
を満たす範囲にあること。
【0044】
(19)第1導電型及び第2導電型の各クラッド層はGaAlNからなり、光閉込め層はInGaNまたはクラッド層よりAl組成の小さいGaAlNからなること。
【0045】
ここで、光閉込め層は、次の(i) 〜(iii) のいずれかに示すように形成可能である。(i) 光閉込め層は、Inp Gaq Alr 1-p-q-r N(0.2≦p≦0.3,0≦q≦0.8,0≦r≦0.8,0.2≦p+q+r≦1)からなり、該光閉込め層の屈折率が第2導電型クラッド層の屈折率より大きい。
【0046】
(ii)光閉込め層は、Inp Gaq Alr 1-p-q-r N(0≦p≦0.95,0≦q≦0.95,0.05≦r≦0.3,0.05≦p+q+r≦1)である。
【0047】
(iii) 光閉込め層は、Inp Gaq Alr 1-p-q-r N(0≦p,q,0.05≦r≦0.1,0.05≦p+q+r≦1)からなり、該光閉込め層の屈折率が第2導電型クラッド層の屈折率より大きい。
【0048】
(20)下地基板として、サファイア又はSiC基板を用いること。
【0049】
(21)第2導電型クラッド層のリッジ部は、基板側に下に凸、又は基板と反対側に上に凸に形成されていること。
【0050】
(22)コンタクト層吸収損失αが、
α≧100cm-1を満たしていること。
【0051】
(23)コンタクト層吸収損失αが、
α≧500cm-1を満たしていること。
【0058】
(作用)
本発明によれば、InGaAlBN系半導体レーザで、ダブルへテロ構造部の一方のクラッド層にリッジ部を設け、このリッジ部以外の領域に、Inp Gaq Alr 1-p-q-r N(0≦p≦1,0≦q<1,0≦r≦1,0<p+r≦1,0<p+q+r≦1)からなり、クラッド層より屈折率の大きい光閉込め層を設けている。この光閉込め層により、電流狭窄を行なうと共に、屈折率分布による導波構造を形成して横モードを制御するので、しきい電流密度が低減され、かつ基本横モードでの連続発振が可能となる。
【0059】
ここで、上記のような光閉込め層は、ダブルへテロ構造部とは格子定数が大きく異なるためこれを選択成長するのは不可能と考えられている。このため、従来のInGaAlN系半導体レーザにおいてクラッド層のリッジ部以外に光閉込め層を形成するという技術思想は全く存在しない。しかし、本発明者らの鋭意研究及び実験により、有機金属化学気相成長(MOCVD)法や分子線エピタキシー(MBE)法等で各種条件を最適化することにより、上記のような材料の光閉込め層の選択成長が可能であることが判明した。
【0060】
しかも、In組成が0より大きいInGaAlBN系光閉込め層を設けた構造では、その下のクラッド層のキャリア密度が高くなることが明らかになった。これは、H等によるMgアクセプタの不活性化が抑制されることに起因するもので、光閉込め層を設けない構造に比べてキャリアオーバーフローが大幅に低減されることが分った。そして、本発明のような光閉込め層を設けることによって、従来にないしきい電流密度の低減、基本横モードでの連続発振が可能となった。
【0064】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0065】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0066】
図中10はサファイア基板であり、この基板10の上にGaNバッファ層11,n型GaNコンタクト層12,n型GaAlNクラッド層13,n型GaN導波層14,n型GaAlNオーバーフロー防止層15,InGaN多重量子井戸(MQW)活性層16,p型GaAlNオーバーフロー防止層17,p型GaN導波層18,p型GaAlNクラッド層19が成長形成されている。なお、これらの結晶成長はMOCVD法或いはMBE法によって行われる。
【0067】
p型GaAlNクラッド層19はストライプ部分を除いてその途中までエッチング除去され、これによりクラッド層19にストライプ状のリッジ部が形成されている。p型GaAlNクラッド層19のリッジ部以外にn型InGaN光閉込め層20が選択的に埋込み形成され、さらにクラッド層19及び光閉込め層20上にはp型GaNコンタクト層21が形成されている。これらの結晶成長も、MOCVD法或いはMBE法によって行われる。
【0068】
p型GaNコンタクト層21からn型GaAlNクラッド層13までが部分的に除去され、n型GaNコンタクト層12の一部が露出している。そして、p型GaNコンタクト層21上にはp側電極22が形成され、n型GaNコンタクト層12の露出部上にはn側電極23が形成されている。
【0069】
本実施形態におけるレーザの活性層部(以下、コア領域ともいう)は、Ina Ga1-a N井戸層/Ine Ga1-e N障壁層(a≧e)からなる多重量子井戸(MQW)の活性層16の両側に、GaAlNオーバーフロー防止層15,17及びGaN導波層14,18を設けたSCH構造となっている。なお本明細書中、コア領域は、両クラッド層間に位置した多層構造部であり、具体的には、少なくとも活性層を含んでおり、所望により、導波層、キャリアオーバーフロー防止層又はその両方を備えている。
【0070】
また、本実施形態では、Inx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)系材料からなるn型クラッド層13はIn及びBを含まないためGa1-z Alz Nと表記され、さらに活性層16はAlを含まないため、MQWを構成する井戸層及び障壁層はそれぞれIna Ga1-a N及びIne Ga1-e Nと表記される。同様に、Inu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)系材料からなるp型クラッド層19はIn及びBを含まないためGa1-w Alw Nと表記される。
【0071】
次に、以上のように構成された半導体レーザの作用について説明する。なお、横モード制御、しきい値低減、キャリアオーバーフロー防止の順に述べる。
【0072】
(水平方向横モード制御)
本実施形態の半導体レーザでは、ストライプ外でn型InGaN光閉込め層20がコア領域に近接しているため、ストライプ外領域にて等価屈折率が小さくなり、水平方向に屈折率分布が形成されてモードの閉込めが行われる。
【0073】
ここで、n型InGaN光閉込め層20のIn組成は、活性層16におけるIna Ga1-a N井戸層のIn組成よりも高く設定されている。従って、光閉込め層20の屈折率は、井戸層の屈折率よりも大きい。また、光閉込め層20のバンドギャップエネルギーは、井戸層のバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0074】
さらに、光閉込め層20の屈折率はストライプ部のp型GaAlNクラッド層19の屈折率よりも大きく、光閉込め層20のバンドギャップエネルギーはストライプ部のp型GaAlNクラッド層19のバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0075】
このようにストライプ部より屈折率の大きい光閉込め層20があるにも拘らず等価屈折率は小さくなる。この理由は次の通りである。すなわち、光閉込め層20は発振波長に対して吸収損失が大であるために導波モードの減衰が大きい。このため、導波モード分布は光閉込め層20に占める割合が極めて小さい。すなわち、光閉込め層20の等価屈折率への寄与が小さいため、結果的にストライプ部より等価屈折率が小さくなる。
【0076】
まとめると、図1に示す構造の半導体レーザは、ストライプ外の等価屈折率が小さく、損失が大きい損失導波構造を有する。この損失導波構造は基本横モードの安定化に極めて有効である。すなわち、ストライプ外に損失領域があるため、しみだしの大きい高次モードが基本モードに比べて損失大またはカットオフとなるので、基本モードのみが安定に発振できる。
【0077】
このような損失導波構造は、光閉込め層20としてコア領域よりバンドギャップエネルギーの小さい材料を使用することにより、初めて実現できる。光閉込め層としては、例えばInGaNが大きな吸収損失をもつので適している。
【0078】
続いて、このような横モード制御のための条件について述べる。
【0079】
図2(a)は、ストライプ部とストライプ外との等価屈折率差Δneqに関し、ストライプ外での光閉込め層20とコア領域との距離(p型GaN導波層17までの距離)hout に対する依存性を示している。図2(b)は、基本モードに対する損失α0 及び1次モードと基本モードとの損失差Δαに関し、同hout に対する依存性を示している。
【0080】
これらの図では、ストライプ部の層構造をn型Ga0.85Al0.15N/n−GaN(0.1μm)/MQW/p型GaN(0.1μm)/p型Ga0.85Al0.15Nとし、ストライプ外の層構造をn型Ga0.85Al0.15N/n型GaN(0.1μm)/MQW/p型GaN(0.1μm)/p型Ga0.85Al0.15N(hout μm)/n型InGaNとした場合の導波機構が解析される。
【0081】
同図においてMQWは、In0.18Ga0.82N井戸層(2nm)/In0.04Ga0.96N障壁層(4nm)が、5対ある構成と、10対ある構成との2通りが使用された。
【0082】
基本横モードの安定化には、高次モードと基本モードとの損失差が大きい方が望ましい。図からわかるように、この観点からはhout を大きくした方が良い。しかしhout が大きすぎるとΔneqが小さくなる。10-4程度の屈折率変化はキャリア注入によるプラズマ効果によっても生じ得るため、この領域では屈折率分布による導波構造が不安定となる。従って、hout の値は0.3μm以下、さらに望ましくは0.2μm以下に設定するのが良い。
【0083】
図3(a)は、hout =0.2μmの場合のしきい電流密度Jthに関し、ストライプ幅に対する依存性を示している。図3(b)は、同hout の場合のα0 、Δαに関し、ストライプ幅に対する依存性を示している。
【0084】
ストライプ幅が大きいとΔαが小さくなるため高次モードが発生し易くなる。一方ストライプ幅が小さいと基本モードの損失α0 が大きくなってしきい電流密度Jthが上昇する。したがって、この場合ストライプ幅Wは3μm以上に設定することが望ましい。
【0085】
また図4(a)及び図4(b)に示すように、光閉込め層は、その組成も導波機構に大きく影響する。これらの図は、ストライプ部の層構造をn型Ga0.85Al0.15N/n型GaN(0.1μm)/MQW/p型GaN(0.1μm)/p型Ga0.85Al0.15Nとし、ストライプ外の層構造をn型Ga0.85Al0.15N/n型GaN(0.1μm)/MQW/p型GaN(0.1μm)/p型Ga0.85Al0.15N(0.05μm)/n型InGaAlNとした場合の導波機構を解析したものである。ストライプ外におけるn型InGaAlN層が光閉込め層に相当する。
【0086】
ここで、MQWは、In0.2 Ga0.8 N井戸層(2nm)/In0.05Ga0.95N障壁層(4nm)を5対とした構成である。
【0087】
ここで、図4(a)は、光閉込め層がInx Ga1-x NまたはGa1-x Alx Nの場合のストライプ内外の等価屈折率差Δneqと組成との関係を示している。xIn≧0.2の領域は、本実施形態の損失導波型に相当する。この損失導波領域は、図4(b)に示すように、非点隔差(ストライプ幅が5μmの場合)が小さいので、光ディスク応用に適したビーム特性を得ることができる。
【0088】
また、0≦xIn≦0.2の領域は、ストライプ外で垂直方向の導波モードが形成されない領域であり、発振モードが不安定となる。
【0089】
一方、光閉込め層は、導波層の屈折率よりも小さい屈折率のGa1-x Alx Nを用いた場合、図4(b)に示すように、導波機構が3つの領域に分類できる。第1の領域は、光閉込め層のAl組成がストライプ部のクラッド層のAl組成より大きく、すなわち光閉込め層の屈折率がクラッド層の屈折率よりも小さい範囲であり、いわゆる実屈折率導波構造となる。
【0090】
第2の領域は、光閉込め層のAl組成がクラッド層のAl組成に近い範囲であり、小さいΔneqのために利得導波構造となり、図示するように、極めて大きい非点隔差をもつ。この種の大きい非点隔差のビームは光ディスク応用には適さない。
【0091】
第3の領域は、図4(b)中で注目すべき内容であり、光閉込め層のAl組成がクラッド層のAl組成より小さく、且つ導波層のAl組成より大きく、すなわち屈折率がクラッド層より大きく導波層より小さい範囲であり、非点隔差が小さくなる“反導波領域”を有している。この反導波領域は、図4(a)に示すように、Δneqが負であり、ストライプ外の等価屈折率がストライプ内の等価屈折率より大きくなる。なお、この反導波領域を利用した実施形態については後述する。
【0092】
また、図4(b)では、光閉込め層のAl組成がクラッド層のAl組成より大きい実屈折率導波領域でも小さい非点隔差を得られることが示される。
【0093】
次に、本発明による損失導波構造あるいは反導波構造が基本横モードの安定化の点で優れていることについて説明する。
【0094】
図5(a)は、利得導波型、実屈折率導波型、損失導波型および反導波型の非点隔差について、ストライプ幅の依存性を示している。図5(b)は、同様に夫々の導波型について1次モードと基本モードとの導波損失差Δαについて、ストライプ幅の依存性を示している。ビーム特性は小さい非点隔差が望ましい。基本横モードの安定化の観点からは、大きいモード損失差が望ましい。
【0095】
図示されるように、利得導波型は、大きいモード損失差をもつが、極めて大きい非点隔差のため、光ディスク応用等では使用が困難である。また、実屈折率導波型は、小さい非点隔差をもつが、モード損失差も小さいため、ストライプ幅が大きくなると高次モードを発生させ易い。
【0096】
これに対し、損失導波型および反導波型は小さい非点隔差を有し、かつ大きいストライプ幅でも大きいモード損失差を確保できる。大きいストライプ幅の方が作製プロセスが容易であり、設計の自由度も大きくなることから、本発明による半導体レーザが特性及び作製の容易さの両方で優れていることがわかる。
【0097】
(垂直方向横モード制御)
ところで、InGaAlN系の結晶成長で問題となるのは、例えばGaAlN層の如き、Alを含む層を厚く成長させると、下地のGaNとの格子定数が異なるために、Alを含む層(GaAlN)にクラックが発生することである。この種のクラックを防ぐには、Al組成を低減するか或いはGaAlN層の厚さを低減する必要がある。一方、Alを含む層をレーザのクラッド層に用いるとき、光閉込めのためにある程度以上の屈折率差(即ち活性層とのAl組成差)、及びクラッド層厚Hcladが必要である。活性層総厚d、クラッド層厚Hclad、クラッド層−活性層のAl組成差ΔXA1と導波モード損失αとの関係を図6(a)及び図6(b)に示す。
【0098】
図から分かるように、ΔXA1が大きく、Hcladが大きい程、αは小さくできるが、実用的にはαは20cm-1程度まで小さくできれば十分である。そこで、αが100cm-1より小さく20cm-1より大きい範囲を求めると、次の(1)式のようになる。
【0099】
0.18(ΔXA1d/λ)-1/2≦Hclad/λ≦0.27(ΔXA1d/λ)-1/2…(1)
従って、クラッド層厚Hcladをこの範囲に設定することにより、結晶成長時にクラックが発生しない程度の厚さでかつ損失の少ないレーザ構造が得られる。
【0100】
ここで、上記(1)式のInGaAlN系レーザでもうーつ考慮すべき点は、クラッド層の外側の層であるコンタクト層等がクラッド層の屈折率よりも大きい屈折率を有し、かつ発振波長に対して透明である点である。このため、クラッド層厚Hcladが十分大きくないとき、層方向(垂直方向)の導波構造が反導波となり、場合によってはしきい値が著しく大きくなってしまうか、あるいは導波モードが存在しない場合があり得る。
【0101】
図7はSCH−MQW構造におけるクラッド層厚Hclad並びにガイド層厚Hguide と、導波モードの境界線との関係の一例を示している。ここでは層構造として、n型GaN/n型Ga0.85Al0.15N(Hcladμm)/n型In0.06Ga0.94N(Hguide μm)/MQW/p型In0.06Ga0.94N(Hguide μm)/p型Ga0.85Al0.15N(Hcladμm)/n型GaNの場合の計算例を示した。MQWはIn0.2 Ga0.8 N井戸層(2nm)/In0.05Ga0.95N障壁層(4nm)が10対の構成とした。また最外層のGaNの吸収係数は500cm-1とした。
【0102】
図7の斜線部領域は導波モードが存在しない領域である。導波モードが存在する領域では、右下りの曲線より上が反導波領域であり、右上りの曲線より下が通常の屈折率導波領域である。境界の曲線上では光閉込め係数Γが0となり、しきい電流密度Jthが無限大となる。この様子を図8(a)及び図8(b)に示した。
【0103】
また、図9(a)及び図9(b)に遠視野像強度分布のクラッド層厚依存性を示した。図9(a)はHguide =0.1μmの場合であり、図9(b)はHguide =0.2μmの場合である。反導波領域のパラメータでは、遠視野像が双峰となっていることがわかる。図10には井戸層のIn組成が他の値の場合について、導波モードが存在する領域の境界を示した。
【0104】
図8(a)及び図8(b)から明らかなように、しきい値低減のためには、クラッド層厚Hcladを、導波モードが存在しない領域の境界から十分離れた値に設定する必要がある。ここでの計算は最外層のGaNの吸収係数を500cm-1とした場合であるが、実際には不純物濃度等により、この値は変わり得る。吸収係数が小さいと、より反導波性が大きくなり、導波モードの存在しないパラメータ領域も広くなる。
【0105】
図11には最外層GaNの吸収係数が100cm-1の場合の導波モード存在領域の境界を示した。図10と比較してわかるように、導波モードの存在しない領域が大きくなっている。いずれの場合にも、クラッド層厚Hcladや導波層厚Hguide 等を所定の範囲に設定する必要があることが明らかである。このHclad等に対する条件は(1)式と同様の数式で指定可能である。但しこの条件は、(1)式が活性層厚dが小さい場合の近似であり、SCH構造では光が閉込められる領域が導波層を含む厚い領域となることから、(1)式の(ΔXAld/入)-1/2の代わりに(ΔxAld/λ)-1を用いた方が良好に近似できる。具体的には、図7、図10等からこの条件を以下のように近似できる。
【0106】
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≧0.08 …(2)
ここでHcoreは導波層を含めたコア領域(MQW+導波層)の総厚であり、またΔxはコア領域とクラッド層との組成差を表す量で、近似的にコア/クラッドの屈折率差に比例する。
【0107】
ここに示した層構造の例では、Δxを以下で定義する。
【0108】
Δx=xAl+yIn …(3)
ここでxAlはクラッド層のAl組成、またyInはコア領域の平均In組成を表す。クラッド層にInが含まれる場合には上のxAlの代わりにxAl−xIn(xInはクラッド層のIn組成)を用いればよい。またコア領域にAlが含まれる場合には同様にyInの代わりにyIn−yAl(yAlはコア領域の平均Al組成)を用いればよい。
【0109】
上に示したn型GaN/n型Ga0.85Al0.15N(Hcladμm)/n型In0.06Ga0.94N(Hguide μm)/MQW/p型In0.06Ga0.94N(Hguide μm)/p型Ga0.85Al0.15N(Hcladμm)/n型GaNの例では、xAl=0.15、yIn=0.069(Hguide =0.1 μm、井戸数10の場合)となる。この場合に(2)式で与えられるクラッド層厚の条件はλ=420nmの場合、Hclad≧0.244μmとなる。なお(2)式の左辺はコア部への光閉込めの度合を表す量に対応している。
【0110】
上記パラメータΔx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)に対するしきい値の依存性を図12に示す。この図で縦軸はしきい値を活性層の井戸総厚で割った値、Jth/dact である。図に示すように、Jth/dact はΔx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)に大きく依存している。また、この依存性は、図示されるように、最外層であるコンタクト層等の吸収係数の大きさによっても変わる。実際にコンタクト層は不純物濃度が極めて高い場合が多いので、吸収係数も変わり得る。なお、当然のことながらJthはdact にも依存する。低しきい値化にはdact も小さくした方が良い。例えば図12でΔx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)が十分大きい場合にJth/dact 〜2×109 cm-3となる。ここで、Jth<10kA/cm2 とするためには、dact <0.05μmとする必要がある。別の計算によれば、活性層総厚が0.05μm以上ではキャリアオーバーフローの影響も大きくなることがわかった。
【0111】
以上から、InGaAlN系レーザでは、(2)式に示した条件および活性層総厚に対する以下の範囲で作製することにより、低しきい値での発振が実現できる。
【0112】
act <0.05μm …(4)
また、さらに望ましくは、dact を次の範囲にすると良い。
【0113】
act ≦0.045μm …(5)
なお、図12からわかるように、Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)を次の範囲に設定すれば、コンタクト層等の吸収係数によらず、低しきい値が実現できる。
【0114】
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≧0.1 …(6)
(2)式あるいは(5)式はクラッド層厚Hcladの下限を与える式であるが、Hcladが大きくなりすぎてもクラッド層での電圧降下増大や前述のクラック発生等の問題が生ずる。これを回避するためには、Hcladを次の範囲に設定するのが望ましい。
【0115】
Al・Hclad≦0.1μm …(7)
さらに望ましくは次の範囲に設定するのが良い。
【0116】
Al・Hclad≦0.06μm …(8)
実際に図12からも分かるように、Hcladはあまり大きくする必要はなく、(2)式又は(6)式を満たす範囲であれば上限を次の(9)式で設定することにより、クラッド層での電圧降下を低減できる。
【0117】
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≦0.2 …(9)
さらに図12から、以下の範囲でも十分低いしきい値が得られる。
【0118】
Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≦0.15 …(10)
以上をまとめると、クラッド層厚Hcladの範囲として、下限は(2)式、さらに望ましくは(6)式で設定し、上限は(7)式、さらに望ましくは(8)式の範囲、もしくは(9)式、さらに望ましくは(10)式の範囲に設定すれば良い。
【0119】
これに加えて、活性層井戸層厚dact を(4)式さらに望ましくは(5)式の範囲に設定することにより、低しきい値での発振を実現できる。
【0120】
図7〜図11でもう1つ注目すベき点は、導波層のIn組成がある程度大きく、かつ導波層厚が大きい場合には、クラッド層厚にかかわらず、しきい値が無限大とはならない場合があることである。このような場合には、導波構造が通常の屈折率導波から反導波に変わる領域でもしきい値があまり大きく変わらない(図8(a)及び図8(b)参照)。従って、このような構造パラメータの範囲でレーザを作製すれば、しきい値が低く、かつパラメータの許容度も大きいため、極めて有効である。この範囲は以下の近似式で与えられる。
【0121】
(yIn1/2 ・(Hcore/λ)≧0.15 …(11)
さらに望ましくは、以下の範囲に設定すればより許容度が大きい。
【0122】
(yIn1/2 ・(Hcore/λ)≧0.2 …(12)
すなわち、導波層がInを含み、かつ(11)式または(12)式を満たすように設定すれば、低しきい値で、作製許容度も大きいレーザを実現できる。
【0123】
以上に述べた低しきい値化のための層構造設計例を図13に示す。この例ではMQWの構造としてIn0.2 Ga0.8 N井戸層(2nm)/In0.05Ga0.95N障壁層(4nm)を1周期とする場合の例を挙げたが、勿論これ以外の構成も可能である。図13の例は全て(2)式および(5)式の条件を満たしている。また[2]〜[8]はこれに加えて(11)式の条件も満たしている。[6]はさらに(12)式の条件も満たしている例である。層構造は対称である必要はなく、[7]、[8]のように非対称であってもよい。
【0124】
図10と図11を比較してわかるように、コンタクト層等のクラッド層外側の層の屈折率がクラッド層の屈折率より大きい場合には、吸収係数が大きい方が望ましい。この吸収係数の値は、図12に基づき、次の(13)式で示される。
【0125】
α≧100cm-1 …(13)
さらに望ましくはα≧500cm-1 …(14)
の範囲にあるのがよい。吸収係数を大きくする方法としては、不純物濃度を高くする以外にも、InGaNコンタクト層を用いることが有効である。特に井戸層のバンドギャップよりも小さいバンドギャップをもつInGaNの使用も有効である。
【0126】
(しきい値の低減)
多重量子井戸(MQW)構造はレーザのしきい値低減に有効である。本発明に係るInGaAlN系の半導体レーザは、このMQW構造を横モード制御構造と共に用いたことにより、しきい値低減効果を顕著に示す。これは、MQWによるしきい値低減に加え横モード制御構造によるしきい値低減の効果が加わり、またInGaAlN系で大きな問題であるコンタクト抵抗も大幅に低減できるからである。
【0127】
この効果を、図14(a)〜図14(c)を用いて説明する。図14(a)は従来の電極ストライプ構造のInGaAlNレーザにおける電流分布を示している。この構造では、利得導波による基本横モード発振を実現するために、電極ストライプ幅を数μmオーダーの極めて小さい値にする必要がある。しかし、ストライプ幅を極めて小さくするととp型コンタクト抵抗が著しく増大し、この部分における熱の発生によって室温での連続発振は殆ど不可能になる。
【0128】
これを防ぐには、ストライプ幅を大きくするか、しきい値を下げればよい。しかし、前者では基本横モード発振が得られなくなり、後者では電流密度低減により、図14(b)のようにコア領域で電流が広がってしまい、やはり基本横モード発振が得られなくなる。
【0129】
これに対して、本発明による横モード制御構造では、光閉込め層により発振横モードが決定されるため電流値によるモードへの影響は殆どなく、また光閉込め層が電流狭窄層の役割も果たしているために、電流値も低減できる。これとMQWによるしきい値低減効果により、動作電流は大幅に低減できる。さらに、図14(c)に示したようにp型コンタクト層で電流が広がるので、コンタクト抵抗は大幅に低減でき、熱の発生もなくなる。従って、この構造によって初めて室温での連続発振が可能となる。
【0130】
(キャリアオーバーフロー防止)
InGaAlN系では、前述した成長時のクラックの問題に加え、高キャリア濃度のp型結晶を得ることが難しいという問題がある。p型クラッド層のキャリア濃度が低いと、活性層からp型クラッド層への電子のオーバーフローが起こり、しきい値を著しく増大させてしまう。特に、クラッド層キャリア濃度が1017cm-3より低いと、これが顕著である。実際の結晶では、クラッド層に用いるようなAl組成の大きい結晶で特に高キャリア濃度を得るのが困難のため、問題である。
【0131】
低キャリア濃度でもキャリアオーバーフローが起こるのを防ぐため、本実施形態では、MQW活性層16と導波層14,18との間に、GaAlNからなるキャリアオーバーフロー防止層15,17を設けている。このオーバーフロー防止層15,17は5nm〜500nmの非常に薄い層であるため、導波モード分布の形状には殆ど影響を与えないが、活性層とのへテロバリアの効果により、キャリアオーバーフローを効果的に防止することができる。
【0132】
このオーバーフロー防止層は、クラッド層のキャリア濃度が低い場合に特に効果が顕著である。InGaAlN系では、比較的高いキャリア濃度のn型GaAlN層を形成できるため、n側のオーバーフロー防止層はなくても良い。但し、結晶のモフォロジー改善等の目的でキャリア濃度を低減する場合には、n側のオーバーフロー防止層があった方が良い。これは、p側キャリアオーバーフロー防止層についても同様であって、1017cm-3程度或いはそれ以上のキャリア濃度のp型クラッド層を用いる場合には、キャリアオーバーフロー防止層は不要となる。
【0133】
p型クラッド層19のキャリア濃度が低い場合のp側オーバーフロー防止層17の効果を図15及び図16に示す。図15はp型クラッド層19のキャリア濃度が1×1016cm-3で、オーバーフロー防止層が入っていない場合について、バンド構造及び電子と正孔の分布を示したものである。図から明らかなように、活性層からp型クラッド層側に著しい電子のオーバーフローが起こっている。
【0134】
これに対して、図16はMQW活性層16とp側導波層18との間にGa0.85Al0.15Nオーバーフロー防止層17を設けた場合を示している。この層17によりp側への電子のオーバーフローが殆どなくなっていることが分かる。この図では、p側導波層18はノンドープとし、オーバーフロー防止層17もノンドープとした。ノンドープのオーバーフロー防止層でも、この図に示したように顕著な効果があるが、p型にドーピングすれば、さらに効果は大きい。
【0135】
キャリアオーバーフロー防止の効果は、オーバーフロー防止層Ga1-h Alh NのAl組成hが大きい程顕著になるが、一方hが大きすぎると、p側から活性層への正孔の注入が妨げられ、動作電圧上昇の要因となる。特に、hが0.2を越えると動作電圧上昇が顕著になる。従って、オーバーフロー防止層のAl組成hは、
0<h<0.2 …(15)
の範囲にあることが望ましい。
【0136】
なお、キャリアオーバーフロー防止層はGaAlNに限るものではなく、更にInを含むものであってもよく、また更にBを含むものであってもよい。即ちキャリアオーバーフロー防止層は、Ins Gat Alh 1-s-t-h N(0≦s,t,h,s+t+h≦1)からなり、導波層よりもバンドギャップエネルギーが大きいものであればよい。また、必ずしもMQW層に接して設ける必要はなく、導波層の途中にあってもよい。さらに、一層のみである必要もなく、複数層を多段に設けてもよい。
【0137】
上述したように本実施形態によれば、InGaAlBN系半導体レーザにおいて、ダブルへテロ構造部にクラッド層のリッジ部を形成し、その側面にクラッド層より屈折率の高い光閉込め層を設けることにより、しきい電流密度の低減と共に、基本横モードでの連続発振を実現することができる。また、光ディスクシステム等の光源に適した非点収差のない良質の出射ビームを得ることができる。
【0138】
(第2の実施形態)
図17は、本発明の第2の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0139】
図中30はサファイア基板であり、この基板30の上にGaNバッファ層31,n型GaNコンタクト層32,n型GaAlNクラッド層33,n型GaN導波層34,n型GaAlNオーバーフロー防止層35,InGaNからなる単一量子井戸(SQW)活性層36,p型GaAlNオーバーフロー防止層37,p型GaN導波層38,p型GaAlNクラッド層39が成長形成されている。なお、これらの結晶成長はMOCVD法或いはMBE法によって行われる。
【0140】
p型GaAlNクラッド層39はストライプ部分を除いてその途中までエッチング除去され、これによりクラッド層39にストライプ状のリッジ部が形成されている。p型GaAlNクラッド層39のリッジ部以外に、n型InGaN光閉込め層40が選択的に埋込み形成され、さらにクラッド層39及び光閉込め層40上には、p型GaN層41,p型InGaNコンタクト層42が成長形成されている。これらの結晶成長も、MOCVD法或いはMBE法によって行われる。
p型InGaNコンタクト層42からn型GaAlNクラッド層33までが部分的に除去され、n型GaNコンタクト層32の一部が露出している。そして、p型GaNコンタクト層42上にはp側電極43が形成され、n型GaNコンタクト層32の露出部上にはn側電極44が形成されている。
【0141】
本実施形態が図1に示した第1の実施形態と異なる点は、活性層部が多重量子井戸ではなく、InGaNからなる単一量子井戸となっていることである。単一量子井戸とすることにより、しきい値を低減する設計が可能である。この場合、光閉込めが小さくなるため、通常は導波損失増大によりしきい値が上昇してしまうが、導波層厚を最適化することにより導波損失を低減でき、しきい値も下げることが可能である。
【0142】
この実施形態では、さらにコンタクト層42としてp型InGaNを用いている。p型InGaNはp型GaNに比べてバンドギャップが小さいので、電極との間のショットキー障壁を低減でき、コンタクト抵抗をより低減することが可能となる。
【0143】
(第3の実施形態)
図18は、本発明の第3の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0144】
図中50はn型SiC基板であり、この基板50の上にn型ZnOバッファ層51,n型GaN層52,n型GaAlNクラッド層53,n型GaN導波層54,n型GaAlNオーバーフロー防止層55,InGaN多重量子井戸(MQW活性層)56,p型GaAlNオーバーフロー防止層57,p型GaN導波層58,p型GaAlNクラッド層59が成長形成されている。なお、これらの結晶成長はMOCVD法、MBE法、或いは両者の組合わせによって行われる。
【0145】
p型GaAlNクラッド層59はストライプ部分を除いてその途中までエッチング除去され、これによりクラッド層59にストライプ状のリッジ部が形成されている。p型GaAlNクラッド層59のリッジ部以外に、n型InGaN光閉込め層60が選択的に埋込み形成され、さらにクラッド層59及び光閉込め層60上には、p型GaNコンタクト層61が成長形成されている。そして、p型GaNコンタクト層61上にはp側電極62が形成され、n型SiC基板50の裏面にはn側電極63が形成されている。
【0146】
本実施形態では、基板50として導電性のn型SiC基板を用いている。これにより、電流を上下方向に流すことができるため、マウント等がより容易となり、また熱抵抗も低減される。
【0147】
以上の実施形態では光閉込め層としてInGaNの場合を示したが、本発明はこれに限定するものではなく、バンドギャップエネルギーが活性層よりも小さいInp Gaq Alr 1-p-q-r N(0<p≦1,0≦q,r<1,0<p+q+r≦1)であれば良い。また、クラッド層もGaAlNのみならず、Inx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)を用いることができる。
【0148】
図15及び図16で示されているようにMQWへの電子,正孔の注入は一般に不均一となり、しきい値増加の要因の一つとなる。これは、MQWの層数が多いほど顕著になる。この不均一を低減するには障壁層の厚さを小さくすることが有効である。特に、障壁層の厚さが井戸層の厚さを越えないように設定すると、比較的均一な注入が得られ、しきい値が低減される。
【0149】
(第4の実施形態)
図19は本発明の第4の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0150】
図中70はサファイア基板であり、この基板70の上にGaNバッファ層71,n型GaNコンタクト層72,n型GaAlNクラッド層73,n型GaN導波層74,InGaN多重量子井戸75,p型GaN導波層76,p型GaAlNクラッド層77,p型GaNキャップ層78,p型InGaN光閉込め層79が形成されている。p型InGaN光閉込め層79は同時にp型コンタクト層の役割も果たしている。これらの結晶成長はMOCVD法或いはMBE法によって行われる。
【0151】
p型GaNキャップ層78及びp型GaAlNクラッド層77はストライプ部分を除いてクラッド層の途中までエッチング除去され、これによりクラッド層77にストライプ状のリッジ部が形成されている。この上にp型InGaN光閉込め層/コンタクト層79が形成される。この結晶成長もMOCVD法或いはMBE法によって行われる。
【0152】
p型InGaN光閉込め層/コンタクト層79からn型GaAINクラッド層73までが部分的に除去され、n型GaNコンタクト層72の一部が露出している。この後、p型InGaN光閉込め層/コンタクト層79上にはp側電極80、n型GaNコンタクト層72の露出部上にはn側電極81が形成される。p側電極80には、例えばPt/TiN/Ti/Pt/Auの積層構造、n側電極81には、例えばTi/Auの積層構造等が用いられる。
【0153】
このレーザの活性層部はIna Ga1-a N井戸層/Ine Ga1-e N障壁層(a≧e)からなる多重量子井戸、及びGaN導波層を設けたSCH構造となっている。
【0154】
図19に示した構造の特徴はp型InGaN光閉込め層79がコンタクト層を兼ねていることである。このため、結晶成長は2回で済み、2回目の再成長も選択成長である必要はない。従って、極めて簡単なプロセスで横モード制御構造が実現できることになる。この構造では、発振波長に対して吸収係数の大きいInGaN層がストライプ外で活性層に近接して設けられているので、ストライプ外の等価屈折率実数部がストライプ部より小さくなり、これにより水平方向の横モード閉込めが実現される。
【0155】
一方、この構造における電流狭窄は、p型GaAlNクラッド層77とp型InGaN光閉込め層79との間のヘテロ障壁により実現される。即ち、図20(a)に示したように、p型GaAlNクラッド層とp型InGaNコンタクト層との界面における価電子側のバンド不連続により生じるヘテロ障壁のために、この界面では電流が殆ど流れない。一方、ストライプ部では、p型GaAlNクラッド層77とp型InGaNコンタクト層79との間に両者の中間のバンドギャップエネルギーを有するp型GaNキャップ層78が設けられているために、図20(b)に示したようにヘテロ障壁高さが低減され、電流が容易に流れる。
【0156】
InGaN層を光閉込め層/コンタクト層に用いることの、もう一つの利点は、その下のクラッド層のキャリア密度として高い値を実現できることである。本発明者らの実験によれば、In組成が0より大きいInGaAlNを設けた構造では、その下のクラッド層のキャリア密度が高くなることが明らかになった。例えば、GaNコンタクト層のみの場合にはp型クラッド層のキャリア密度が1×1016cm-3以下であったものが、InGaN層を設けることにより、5×1016cm-3以上とすることができた。これは水素(H)等によるMgアクセプタの不活性化が抑制されることに起因するものである。これにより、InGaAlN光閉込め層を設けない構造に比べてキャリアオーバーフローが大幅に低減されることが分った。
【0157】
図20の計算例では、p型クラッド層がキャリア密度5×1016cm-3のGa0.85Al0.15N、p型コンタクト層がキャリア密度1×1017cm-3のIn0.15Ga0.85N、pキャップ層がキャリア密度1×1017cm-3のGaNの場合を示している。これらの組み合わせは、これに限ったものではなく、p型クラッド層とp型コンタクト層とのヘテロ障壁が電流阻止に十分な大きさを持っていれば良い。
【0158】
図20(a)のp型クラッド層とp型コンタクト層が、それぞれp型Ga0.85Al0.15N(キャリア密度5×1016cm-3)、p型Inx Ga1-x N(キャリア密度1×1017cm-3)の場合の電流密度−電圧特性を図21に示す。図20(b)のキャップ層はx=0のGaNで、この場合には電圧〜3.7Vでレーザ発振が得られる(この電圧にはコンタクト抵抗等は含めていない)。一方、In組成xが大きくなると電流が流れ難くなることが分る。xが0.1より大きい動作電圧(〜3.7V)での電流値は1/2以下となり、図19に示す構造のときに十分な電流狭窄効果が得られる。
【0159】
このヘテロ障壁による電流阻止効果は、p型クラッド層とp型コンタクト層とのバンドギャップ差だけでなく、2つの層のキャリア密度にも依存する。例えば、p型クラッド層のキャリア密度が1×1017cm-3より大きくなると、電流阻止の効果は低減する。従って、図19に示す構造においてヘテロ障壁による電流阻止効果を十分得るためには、p型クラッド層のキャリア密度を1×1017cm-3以下、p型クラッド層のAl組成とp型コンタクト層のIn組成の和を0.25以上とすることが望ましい。また、キャリアオーバーフロー低減の観点からはp型クラッド層キャリア密度は低すぎない方が良く、望ましくは5×1016cm-3以上が良い。
【0160】
また、ヘテロ障壁による電流阻止効果はp型GaAlN/p型InGaNの組み合わせに限るものではない。この材料系は組成によりバンドギャップ差を大きくとることができるので、価電子帯側のバンド不連続と同様に、伝導帯側のバンド不連続も大きくなる。図22に、n型Ga0.85Al0.15N(キャリア密度5×1017cm-3)、n型Inx Ga1-x N(キャリア密度1×1018cm-3)をそれぞれクラッド層及びコンタクト層に用いた場合の電流密度−電圧特性を示す。nコンタクト層のIn組成xが大きくなると電流が流れ難くなることが明らかである。この場合にはx≧0.15で十分な電流阻止効果が得られる。
【0161】
(第5の実施形態)
図23は、本発明の第5の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0162】
図中90はサファイア基板であり、この基板90の上にGaNバッファ層91,p型GaNコンタクト層92,p型GaAlNクラッド層93,p型GaN導波層94,InGaN多重量子井戸95,n型GaN導波層96,n型GaAlNクラッド層97,n型GaNキャップ層98,n型InGaN光閉込め層99が形成されている。n型InGaN光閉込め層99は同時にn型コンタクト層の役割も果たしている。
【0163】
n型GaNキャップ層98及びn型GaAlNクラッド層97はストライプ部分を除いてクラッド層の途中までエッチング除去され、これによりクラッド層97にストライプ状のリッジ部が形成されている。この上にn型InGaN光閉込め層/コンタクト層99が形成される。
【0164】
n型InGaN光閉込め層/コンタクト層99からp型GaAlNクラッド層93までが部分的に除去され、p型GaNコンタクト層92の一部が露出している。この後、n型InGaN光閉込め層/コンタクト層99上にはn側電極100、p型GaNコンタクト層92の露出部上にはp側電極101が形成されている。
【0165】
図23に示した構造では、n型InGaN光閉込め層99がコンタクト層を兼ねている。従って、図19の場合と同様に、結晶成長は2回で済む。横モード制御の原理は図19の場合と同じであり、また電流狭窄は、n型GaAlNクラッド層97とn型InGaN光閉込め層99との間のヘテロ障壁により実現される。このヘテロ障壁による電流阻止の効果は図22に示した通りである。
【0166】
ヘテロ障壁による電流阻止効果は、2種類の材料のバンドギャップ差が大きい程顕著であるので、組成差の大きい組み合わせが望ましい。しかしながら、一方でストライプ部では、バンドギャップ差が大きすぎると、例え中間のバンドギャップを持つキャップ層を設けたとしても、電流が流れ難くなる場合もある。これを改善するには、中間のバンドギャップを持ち、そのバンドギャップの値が異なる複数のキャップ層を設けると良い。
【0167】
(第6の実施形態)
図24は、本発明の第6の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0168】
図中110はサファイア基板であり、この基板110の上にGaNバッファ層111,n型GaNコンタクト層112,n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層113,n型GaN導波層114,InGaN多重量子井戸115,p型GaN導波層116,p型Ga0.85Al0.15Nクラッド層117,p型GaN第1キャップ層118,p型In0.07Ga0.93N第2キャップ層119,p型In0.15Ga0.85N光閉込め層120が形成されている。p型InGaN光閉込め層120は同時にp型コンタクト層の役割も果たしている。また、図中の121はp側電極、122はn側電極である。
【0169】
この図に示した構造ではp型Ga0.85Al0.15Nクラッド層117とp型In0.15Ga0.85N光閉込め層120との組成差が大きくバンドギャップ差が大きいために、ヘテロ障壁による電流阻止効果が大きい。一方、ストライプ部のクラッド層上には、p型Ga0.85Al0.15Nクラッド層117とp型In0.15Ga0.85N光閉込め層120との中間のバンドギャップを持つ2種類のキャップ層を設けてある。バンドギャップはp型クラッド層,第1キャップ層,第2キャップ層,光閉込め層の順に小さくなっていくため、ヘテロ障壁が段階的に低減され、より電流が流れ易い構造となっている。
【0170】
図24の実施形態では中間バンドギャップを持つキャップ層を2層としたが、これに限るものではなく、クラッド層と光閉込め層とのバンドギャップ差に応じて、さらに多段階のキャップ層を導入することも勿論可能である。
【0171】
(第7の実施形態)
図25は、本発明の第7の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0172】
図中130はサファイア基板であり、この基板130の上にGaNバッファ層131,n型GaNコンタクト層132,n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層133,n型GaN導波層134,InGaN多重量子井戸135,p型GaN導波層136,p型Ga0.85Al0.15N第1p型クラッド層137,p型Ga0.85Al0.15N第2p型クラッド層138,p型GaN第1キャップ層139,p型In0.07Ga0.93N第2キャップ層140,p型In0.15Ga0.85N光閉込め層141が形成されている。p型InGaN光閉込め層141は同時にp型コンタクト層の役割も果たしている。また、図中の142はp側電極、143はn側電極である。
【0173】
各層のキャリア密度は、第1p型クラッド層137が5×1017cm-3、第2p型クラッド層138が5×1016cm-3、また第1キャップ層139,第2キャップ層140,光閉込め層/コンタクト層141はいずれも1×1017cm-3とした。
【0174】
この図に示した構造の特徴は、活性層側の第1p型クラッド層137のキャリア密度を大きくして動作時のキャリアオーバーフローを低減すると共に、光閉込め層141と接する第2p型クラッド層のキャリア密度を比較的低くして、ヘテロ障壁による電流阻止効果を確保している点である。ストライプ部で電流が流れる原理は図19、図23及び図24の場合と同様である。
【0175】
(第8の実施形態)
図26は、本発明の第8の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0176】
図中150はサファイア基板であり、この基板150の上にGaNバッファ層151,n型GaNコンタクト層152,n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層153,n型GaN導波層154,InGaN多重量子井戸155,p型GaN導波層156,p型Ga0.85Al0.15N第1p型クラッド層157,p型Ga0.85Al0.15N第2p型クラッド層158,p型Ga0.85Al0.15N第3p型クラッド層159,p型GaNキャップ層160,p型In0.1 Ga0.9 N光閉込め層161が形成されている。p型InGaN光閉込め層161は、同時にp型コンタクト層の役割も果たしている。また、図中の162はp側電極、163はn側電極である。
【0177】
この実施形態における各層のキャリア密度は、第1p型クラッド層157が5×1017cm-3、第2p型クラッド層158が5×1016cm-3、第3p型クラッド層159が5×1017cm-3、また、キャップ層160、光閉込め層/コンタクト層161はいずれも1×1017cm-3である。
【0178】
この図に示した構造の特徴は、活性層側の第1p型クラッド層157のキャリア密度を大きくして動作時のキャリアオーバーフローを低減すると共に、光閉込め層161と接する第2p型クラッド層のキャリア密度を比較的低くして、ヘテロ障壁による電流阻止効果を確保し、さらにキャップ層160と接する第3p型クラッド層のキャリア密度を高くして、ストライプ部でより電流が流れ易いようにしていることである。
【0179】
(第9の実施形態)
図27は、本発明の第9の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0180】
図中170はサファイア基板であり、この基板170の上にGaNバッファ層171,n型GaNコンタクト層172,n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層173,n型GaN導波層174,InGaN多重量子井戸175,p型GaN導波層176,p型Ga0.85Al0.15N第1p型クラッド層177,p型Ga0.85Al0.15N第2p型クラッド層178,p型Ga0.85Al0.15N第3p型クラッド層179,p型GaNキャップ層180,p型In0.1 Ga0.9 N光閉込め層181,p型In0.1 Ga0.9 Nコンタクト層182が形成されている。また、図中の183はp側電極、184はn側電極である。
【0181】
この実施形態における各層のキャリア密度は、第1p型クラッド層177が5×1017cm-3、第2p型クラッド層178が5×1016cm-3、第3p型クラッド層179が5×1017cm-3、キャップ層180が1×1017cm-3、光閉込め層181が1×1017cm-3、コンタクト層182が5×1017cm-3である。
【0182】
この図に示した構造の特徴は、図26に示した第8の実施形態における特徴に加えて、p電極側に、さらにキャリア密度の高いコンタクト層182を設けていることである。これにより、コンタクト抵抗が低減されるために、動作電圧を大幅に低減することができる。
【0183】
なお、このようなキャリア密度の高いコンタクト層を設ける構造は、この実施形態に限るものではなく、第4〜第7の実施形態構造に対しても適用できることはいうまでもない。
【0184】
(第10の実施形態)
図28は、本発明の第10の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0185】
図中190はサファイア基板であり、この基板190の上にGaNバッファ層191,n型GaNコンタクト層192,p型InGaN光閉込め層193が形成されている。p型InGaN光閉込め層193及びn型GaNコンタクト層192の上部は、その一部がエッチングされ、ストライプ状の溝が形成される。この上に、n型GaAlNクラッド層194,n型GaN導波層195,InGaN多重量子井戸196,p型GaN導波層197,p型GaAlNクラッド層198,p型GaN層199,p型InGaNコンタクト層200が形成されている。つまり、n型GaAlNクラッド層194に下側に凸のリッジ部が形成されている。また、図中の201はp側電極、202はn側電極である。
【0186】
この実施形態では、光閉込め層193が活性層より基板側に位置している。ストライプ両側では光閉込め層193と量子井戸活性層196とが近接しているために、光閉込め層193の吸収損失の影響で等価屈折率の実数部が小さくなり、これにより形成された等価屈折率分布によって、水平方向の横モード閉込めが実現される。また、この光閉込め層193は同時に、電流狭窄層としての働きも持っている。
【0187】
図28の構造を作製する際の結晶成長は、1回目の成長及び2回目の成長共にMOCVD法又はMBE法で行われる。この構造も結晶成長が2回で済むという利点がある。
【0188】
(第11の実施形態)
図29は、本発明の第11の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0189】
図中210はサファイア基板であり、この基板210の上にGaNバッファ層211,p型GaNコンタクト層212,p型InGaN光閉込め層213が形成されている。p型InGaN光閉込め層213及びp型GaNコンタクト層212の上部は、その一部がエッチングされ、ストライプ状の溝が形成される。この上に、p型GaAlNクラッド層214,p型GaN導波層215,InGaN多重量子井戸216,n型GaN導波層217,n型GaAlNクラッド層218,n型GaN層219,n型InGaNコンタクト層220が形成されている。また、図中の221はp側電極、222はn側電極である。
【0190】
この実施形態では、各層の導電型が図28に示した実施形態とは一部を除いて逆になっている。横モード閉込めが光閉込め層213により実現されている点は図28の場合と同様であるが、図29の実施形態における電流狭窄はp型GaAlNクラッド層214とp型InGaN光閉込め層213とのヘテロ障壁により実現されている。この原理は、前記図19、図24〜図27等で示したものと同様である。
【0191】
これまでの実施形態では、コンタクト層としてInGaNを用いた場合を示したが、この材料に限定されるものではなく、InGaBN或いはInGaAlBNとしても良い。特にp型コンタクト層の場合、p型InGaBN或いはp型InGaAlBNとすることによって、低抵抗のコンタクト層が得られた。また、他の各層も本発明の条件を満たす範囲で、InGaAlBNを用いることができる。
【0192】
また、基板もサファイア基板に限定されるものではなく、SiC,ZnO,MgAl2 4 ,NdGaO3 ,LiGaO2 、Y3 Al5 12(YAG),Y3 Fe5 12(YIG)等を用いることができる。
【0193】
(第12の実施形態)
図30は、本発明の第12の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0194】
図中230はサファイア基板であり、この基板230の上にGaNバッファ層231,n型GaNコンタクト層232,n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層233,n型GaN導波層234,InGaN多重量子井戸235,p型GaN導波層236,p型Ga0.85Al0.15Nクラッド層237,p型GaNキャップ層238,p型InGaNコンタクト層239,n型In0.1 Ga0.9 N光閉込め層240,p型InGaNコンタクト層241が形成されている。また、図中の242はp側電極、243はn側電極である。
【0195】
この実施形態のレーザは次のように作製される。即ち、まずサファイア基板230の上にGaNバッファ層231,n型GaNコンタクト層232,n型GaAlNクラッド層233,n型GaN導波層234,InGaN多重量子井戸235,p型GaN導波層236,p型GaAlNクラッド層237,p型GaNキャップ層238,p型InGaNコンタクト層239までを順次成長する。この上にSiO2 膜を形成し、フォトリソグラフィ等によりストライプ部を除いてp型InGaNコンタクト層239,p型GaNキャップ層238及びp型GaAlNクラッド層237の一部をエッチングで除去することによって、ストライプ状のリッジを形成する。
【0196】
次に、2回目の成長でn型InGaN光閉込め層240及びp型InGaNコンタクト層241を形成する。この2回目の成長はストライプ部のSiO2 膜を残したまま行われ、これによりSiO2 上には結晶成長は起こらず、ストライプ外領域のみに成長する、いわゆる選択成長によって行われる。なお、n電極側のエッチングは2回目の成長の前でも後でも可能である。
【0197】
本実施形態の特徴は、一見複雑な構造にも拘らず、結晶成長が2回で済む点である。また、コンタクト層がストライプ部及びストライプ外にも形成されているために、全面電極構造をとることができ、p型InGaNコンタクト層241にも電流が広がることによって、コンタクト抵抗を低減することができる。
【0198】
(第13の実施形態)
図31は本発明の第13の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す斜視図である。
【0199】
本実施形態における層構造は図30に示した第12の実施形態とほぼ同じであるので、その詳しい説明は省略する。異なる部分は、図30におけるp型InGaNコンタクト層239及び241の代わりにp+ 型GaN層250及び251を用いていることである。この層はp型GaNキャップ層238よりキャリア密度を高く(例えば7×107 cm-3)設定してあるため、電流が広がり易いと共に、コンタクト抵抗も低減できる。
【0200】
また、図31の実施形態では、n側電極を両側に設けた対称構造としている。これにより、ストライプ部での電流分布も対称性が良くなり、より安定な基本横モード発振を実現できる。
【0201】
(第14の実施形態)
図32は本発明の第14の実施形態に係る半導体レーザの構成を示す断面図である。図中260はサファイア基板であり、この基板260の上にGaNバッファ層261、n型GaNコンタクト層262、n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層263、n型GaN導波層264、InGaN多重量子井戸(MQW)活性層265、p型GaN導波層266、p型Ga0.85Al0.15Nクラッド層267、p型GaNキャップ層268が成長形成されている。p型GaNキャップ層268およびp型GaAlNクラッド層267はストライプ部分を除いてその途中までエッチング除去され、これによりクラッド層267にストライプ状のリッジ部が形成されている。p型GaAlNクラッド層267のリッジ部以外の領域にn型Ga0.93Al0.07N光閉込め層269が選択的に埋込み形成され、さらにキャップ層268、クラッド層267及び光閉込め層269上にはp型GaNコンタクト層270が形成されている。なお、271はp電極、272はn電極である。
【0202】
本実施形態の特徴は光閉込め層269にクラッド層267よりAl組成の小さいGaAlNを用いていることである。これにより水平方向に反導波構造が形成され、水平横モードが安定化される。
【0203】
反導波構造は基本的にはストライプ外の等価屈折率が大きい場合に実現されるが、良好なビーム特性を得るためにはストライプ内との等価屈折率差の絶対値を所定の値より大きく設定することが重要である。前述した図4からわかるように、|Δneq|≧2×10-3の領域に設定することにより、非点隔差の小さい特性が得られる。図32の実施形態の例では、光閉込め層のAl組成を0.05≦xAl≦0.1の領域に設定することにより、ビーム特性としても優れた反導波構造を実現できる。
【0204】
上述したように本実施形態によれば、InGaAlBN系半導体レーザにおいて、ダブルヘテロ構造部の一方のクラッド層にリッジ部を形成し、このリッジ部側面にクラッド層より屈折率の高い光閉込め層を設けることにより、しきい電流密度が低減され、かつ安定な基本横モードでの連続発振が可能となる。
【0205】
(第15の実施形態)
図33は本発明の第15の実施形態に係る半導体レーザの構成を示す断面図である。図中280はサファイア基板であり、この基板280の上にGaNバッファ層281、n型GaNコンタクト層282、n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層283、n型GaN導波層284、InGaN多重量子井戸(MQW)活性層285、p型GaN導波層286、p型Ga0.85Al0.15Nクラッド層287、p型GaNキャップ層288が成長形成されている。p型GaNキャップ層288およびp型GaAlNクラッド層287はストライプ部分を除いてエッチング除去され、これによりクラッド層287にストライプ状のリッジ部が形成されている。p型GaAlNクラッド層287のリッジ部以外の領域にn型Ga0.93Al0.07N光閉込め層289が選択的に埋め込み形成され、さらにキャップ層288、クラッド層287及び光閉込め層289上にはp型GaN層290、p型InGaNコンタクト層291が形成されている。292はp電極、293はn電極である。
【0206】
本実施形態では光閉込め層289がp型GaN導波層286に接して形成されている点が図32の実施形態とは異なる。このような構造においても反導波構造が実現されることは言うまでもない。
【0207】
(第16の実施形態)
図34は本発明の第16の実施形態に関わる半導体レーザの構成を示す断面図である。図中300はサファイア基板であり、この基板300の上にGaNバッファ層301、n型GaNコンタクト層302、n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層303、n型GaN導波層304、InGaN多重量子井戸(MQW)活性層305、p型GaN導波層306、p型InGaNキャップ層307、p型GaN層308、p型Ga0.85Al0.15Nクラッド層309が成長形成されている。p型GaAlNクラッド層309、p型GaN層308はストライプ部分を除いてエッチング除去され、これにより、クラッド層309にストライプ状のリッジ部が形成されている。この上にp型Ga0.93Al0.07N光閉込め層310、p型GaNコンタクト層311が形成されている。312はp電極、313はn電極である。
【0208】
本実施形態では、光閉込め層310がp型であるため、結晶成長は2回で済む。この構造では、p型Ga0.93Al0.07N光閉込め層310とp型InGaNキャップ層307とのヘテロ障壁により電流狭窄が行なわれる。すなわち、ストライプ外では、このヘテロ障壁により電流は流れない。一方、ストライプ部ではp型GaN層308がp型InGaNキャップ層307とp型GaAlNクラッド層309との間に形成されているため、ヘテロ障壁が低減されて電流が流れる。また、p型Ga0.93Al0.07N光閉込め層310の屈折率がp型Ga0.85Al0.15Nクラッド層309より大きいので、これによる反導波構造で光閉込めが実現される。
【0209】
(第17の実施形態)
図35は本発明の第17の実施形態に係る半導体レーザの構成を示す断面図である。図中320はサファイア基板であり、この基板320の上にGaNバッファ層321、n型GaNコンタクト層322、n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層323、n型GaN導波層324、InGaN多重量子井戸(MQW)活性層325、p型GaN導波層326、p型Ga0.85Al0.15N第1クラッド層327、p型Ga0.9 Al0.1 N第2クラッド層328が成長形成されている。p型Ga0.9 Al0.1 N第2クラッド層328、p型Ga0.85Al0.15N第1クラッド層327は、ストライプ部分を除いてエッチング除去され、これにより、クラッド層にストライプ状のリッジ部が形成されている。クラッド層327、328のリッジ部以外の領域にp型InGaN光閉込め層329が選択的に埋込み形成され、さらに、クラッド層328及び光閉込め層329上にはp型GaNコンタクト層330が形成されている。331はp電極、332はn電極である。
【0210】
本実施形態の導波機構は第1の実施形態と同様に損失導波型であるが、リッジ形状が上部で広くなっている点がこれまでの実施形態と異なる。このようなリッジ形状とすることにより、第2クラッド層328中で電流が広がるために、素子の直列抵抗を低減することができる。この構造は、クラッド層をAl組成の異なるGaAlNで構成した多層構造とし、化学エッチングによるエッチング速度の差を利用して実現できる。
【0211】
図36は上記実施形態の構造を作成するエッチング方法を示したものである。図中、反応容器340は、内部の側壁に沿ってコイル状の金属電極341が設けられ、且つスターラー342及びNaOH溶液343を保持している。ここで、スターラー342は、図示しない容器外のコントローラから回転磁場を受けて回転し、NaOH溶液343を攪拌する。NaOH溶液343には、GaN系多層構造を形成した基板344が浸される。
【0212】
この基板344は、容器外の直流電源345の正側に接続されている。また、容器内の金属電極341は、直流電源345の負側に接続されている。ここで、直流電源345をオン状態とすると、基板344は電気化学的にエッチングされる。
【0213】
このような電気化学的エッチングにより、エッチングプロファイルを図35の実施形態に示したような形状に制御することが可能である。すなわち、図37に示したように、Al組成の高いGaAlN程エッチング速度が大きいために、図35に示した形状が実現される。また、本実施形態ではp型GaN導波層326がエッチング停止層としての役割も果たしている。
【0214】
なお、エッチングプロファイルを制御するための多層構造は、図35に示した2層構造に限らず、3層以上でも良く、さらに例えばGa0.85Al0.15NからGaNまで連続的に組成を変化させたグレーデッド層であっても良い。また、エッチング溶液もNaOHに限定されるものではなく、KOH、HF系溶液、HPO3 等の溶液を用いることができる。
【0215】
(第18の実施形態)
図38は本発明の第18の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。図中350はサファイア基板であり、この基板350の上にGaNバッファ層351、n型GaNコンタクト層352、n型Ga0.85Al0.15Nクラッド層353、n型GaN導波層354、InGaN多重量子井戸(MQW)活性層355、p型GaN導波層356、p型Ga0.85Al0.15N第1クラッド層357、p型Ga0.9 Al0.1 N第2クラッド層358、p型GaNキャップ層359が成長形成されている。p型GaNキャップ層359、p型Ga0.9 Al0. 1 N第2クラッド層358、p型Ga0.85Al0.15N第1クラッド層357は、ストライプ部分を除いてエッチング除去され、これにより、クラッド層にストライプ状のリッジ部が形成されている。クラッド層577、578のリッジ部以外の領域にp型InGaN光閉込め層360が形成されている。361はp電極、362はn電極である。
【0216】
本実施形態における電流狭窄は、p型Ga0.85Al0.15N第1クラッド層357とp型InGaN光閉込め層360とのヘテロ障壁により実現される。また、エッチングプロファイル制御に関しては上述した通りである。
【0217】
(第19の実施形態)
図39〜図40は、本発明の第19の実施形態に係る半導体レーザの製造工程図である。図39(a)に示すように、サファイア基板370上には、有機金属気相成長法(MOCVD法)により、GaNからなる10〜200nm厚のバッファ層371、Siドープのn型GaNからなる4μm厚のn型コンタクト層372、Siドープのn型Ga0.8 Al0.2 Nからなる250nm厚のn型クラッド層373、Siドープのn型GaNからなる200nm厚の導波層374、Siドープのn型GaAlNオーバーフロー防止層375が順次形成される。
【0218】
続いて、n型GaAlNオーバーフロー防止層375上には、1.5nm厚のノンドープIn0.25Ga0.75N及び3nm厚のノンドープIn0.05Ga0.95Nの2種類のInGaN層を50周期繰り返して構成される多重量子井戸(MQW)構造の活性層376が形成される。
【0219】
そして、活性層376上には、Mgドープのp型GaAlNオーバーフロー防止層377、Mgド一プのp型GaNからなる200nm厚の導波層378、Mgドープのp型Ga0.8 Al0.2 Nからなるp型クラッド層379、Mgドープのp型GaNからなる0.3μm厚のキャップ層380が順次形成される。
【0220】
次に、p型GaNキャップ層380上には、熱CVD法により、SiO2 膜からなる400nm厚の無機マスク層381が堆積される。続いて、無機マスク層381上には、レジスト(AZ4110)が1μm厚に塗布され、光露光プロセスにより、レジストにストライプパターンが転写される。現像後、ウェハーは、120℃の窒素雰囲気のオーブンに20分間保持され、ポストペーキングされる。その後、無機マスク層381のSiO2 膜がエッチングされ、無機マスク層とレジスト層からなる2層のマスク層が形成される。
【0221】
次に、図39(b)に示すように、反応性イオンビームエッチング(RIBE)法により、p型GaNキャップ層380は、p型GaAlNクラッド層379が露出するまでストライプ状にエッチングされる。
【0222】
ここで、p型GaAlNクラッド層の厚さは約0.3μmと薄いため、オーバーエッチングにより、僅かに薄くなっても光の閉込め効果に影響を与える。このため、本エッチング工程ではオーバーエッチングを極力小さくする必要がある。そこで、本実施形態では、エッチングガスとしてCl2 ガスと、SF6 との混合ガスを用いることにより、GaNとGaAlNの選択エッチングを行なった。
【0223】
マイクロ波パワー200W、イオン加速電圧500V、Cl2 ガス圧力0.4mTorr一定とし、SF6 ガスを添加した際のGaNとGa1-x Alx N(x=0.2)の選択比の変化を図41に示す。縦軸はエッチングにおけるGaNの選択比であり、横軸は混合ガスにおけるSF6 の分圧比である。
【0224】
SF6 ガスの圧力が増加するに従い、選択比が増加する。これは、SF6 ガスを添加することにより、GaAlN層のエッチングに際し、表面に脱離し難いエッチング反応生成物であるAlの塩化物が生成されるためである。
【0225】
これにより、GaAlN層のエッチング速度は遅くなり、結果としてGaNとの選択比が大きくなる。本実施形態では、添加ガスとしてSF6 ガスを用いたが、少なくともFを成分として含むガス、例えばCF4 等でも同じ効果が得られる。また、選択エッチングは、例えばO2 、CO、CO2 等の如き、少なくともOを成分として含むガスであれば実行可能である。理由は、GaAlN層のエッチングの際に、脱離し難いAlの酸化物が表面に生成されるためである。
【0226】
さらに、GaN層380とGaAlN層379との界面で精密にエッチングを停止するには、選択エッチングとエッチング過程のその場観察法とを併用することが好ましい。本実施形態では、レーザ干渉により、エッチング深さをモニタした。具体的には、エッチング試料表面に波長650nmのレーザ光を照射し、反射光を検出する。このとき、レーザ光は、試料表面および試料内部の界面から反射し、これらの反射光の間で干渉が生じるため、エッチングの進行に伴い、反射光強度が振動する。この振動の検出により、エッチング量及びヘテロ界面が観察可能となる。このその場観察法によると、選択エッチング法と併用したとき、GaAlNのエッチング速度が遅いため、GaN層380のエッチング時の反射光強度の振動の周期と、GaAlN層379のエッチング時の反射光強度の振動周期とでは大きな差が生じる。従って、周期が変化する時点でエッチングを終了すれば、最小のオーバーエッチング量でエッチングを終了できる。
【0227】
以上の方法により、本実施形態では、GaAlN層379のオーバーエッチング量40nm以下でエッチングを終了できる。エッチング工程の後、ウェハをH2 SO4 :H2 2 :H2 O溶液中に浸け、レジストマスクとエッチング残留物とが除去される。レジストマスク除去後、露出されたSiO2 マスクは、次の工程である選択成長のマスクとしても使用できる。
【0228】
以上の処理の後、図39(c)に示すように、MOCVDによる第2回目の成長により、Siドープのn型GaNからなる0.5μm厚の光閉込め層(電流狭窄層)382がp型GaNキャップ層380の側面に沿ってp型GaAlNクラッド層379上に形成される。第2回目の成長後、ウェハは、弗化アンモニウム溶液中に浸けられ、SiO2 マスクが除去され、p型GaNキャップ層380が露出される。
【0229】
次いで、図40(d)に示すように、MOCVDによる第3回目の成長により、p型GaNキャップ層380上及びp型GaAlNクラッド層379上にMgドープのp型GaNからなる0.5μm厚のコンタクト層383が形成される。次に、Cl2 ガスを用いたRIBEにより、n型GaNコンタクト層372が露出するまでウェハの一部がエッチングされ、メサが形成される。
【0230】
その後、図40(e)に示すように、n側の電極384およびp側の電極385が形成され、半導体レーザが作製された。
【0231】
従来、同様のレーザにおいては、第1回目の成長により、n型GaN電流狭窄層382までを成長させ、その後、ドライエッチングにより電流狭窄層382に開口部を開け、第2回目の成長によりp型GaNコンタクト層380を成長させるという製造方法もある。しかし、この従来方法の場合、成長中にn型GaN電流狭窄層382へMOCVD反応管周辺からのMgの取込まれが生じるため電流狭窄層を厚くする必要があり、そのため電流狭窄層の開口部のp型GaNコンタクト層を厚くしなければならず、素子抵抗を増大させるという問題がある。また、従来方法の場合、電流狭窄層開口部にドライエッチング/再成長界面ができ、この界面を電流が流れるため、界面でのリーク等の素子特性劣化が懸念される問題がある。
【0232】
しかし、本実施形態によれば、n型GaN電流狭窄層382は第2回目の成長で積層するため、MOCVD反応管周辺からのMgの取込まれが無く、n型GaN電流狭窄層382を薄く形成できる。また、ドライエッチング/再成長界面を電流が流れないため、界面でのリークの問題がない。
【0233】
上述したように本実施形態によれば、窒化ガリウム系化合物半導体層の選択エッチングを実現できる。さらに、エッチング量を精度よくモニタできるため、クラッド層にリッジ部を形成する工程において精度よくエッチング量を制御できる。これにより、電流狭窄層と活性層の距離を設計通りの値にできるので、閾値電流密度の低減と共に、基本横モードでの連続発振を実現する半導体レーザを製造することができる。
【0234】
(第20の実施形態)
図42〜図43は本発明の第20の実施形態に係る半導体レーザの製造工程図である。
【0235】
本実施形態は、次の2つの点で第19の実施形態とは異なる。1点目は、図42(b)に示すように、p型GaAlNクラッド層379に代えて、ドライエッチングにより、リッジとその両側の平坦部をもつp型GaAlNクラッド層390が形成されている。2点目は、図42(c)に示すように、p型GaAlNクラッド層390からなるリッジがその側部に沿ってn型InGaN電流狭窄層382により埋込まれたことである。
【0236】
この構造では、電流狭窄層382が、リッジの両側で活性層376に近接するため、InGaN電流狭窄層382の吸収損失の影響により生じる水平方向の実効屈折率分布により光閉込めが行われる。このとき、リッジの両側のGaAlNの厚さは、電流狭窄層382と活性層376との距離に影響するため、レーザを安定に横モードで発振させる観点から厳密に制御されなければならない。
【0237】
そこで前述同様に、図42(a)に示す積層工程の後、リッジの形成工程において、選択エッチング技術とレーザ干渉モニターとを組合わせて用いる。エッチングには、Cl2 ガスとSF6 との混合ガスと、RIBE法とを用いる。エッチング条件は、Cl2 ガス圧力0.4mTorr、SF6 ガス圧力0.15mTorr、マイクロ波パワー200W、イオン加速電圧500Vである。
【0238】
p型GaNキャップ層380上にはマスクが形成され、p型GaNキャップ層380におけるマスク以外の領域からエッチングが施される。エッチングの進行はレーザ干渉モニタにより観察される。上記条件では、GaN/GaAlNの選択比が1.25程度であり、GaAlNのエッチング速度が遅いため、GaNとGaAlNとの界面において、レーザ干渉モニタにおけるレーザ光の反射強度の振動周期が変化する。反射強度の振動周期が150nmに相当し、GaN/GaAlN界面が検出されてから、振動が1.3周期現れたとき、エッチングを停止した。その結果、図42(b)に示すように、リッジの両側のp型GaAlNクラッド層390の厚さとして設計通りの100nmを残してエッチングを停止できた。
【0239】
このドライエッチング工程において、本実施形態とは異なり、選択エッチング技術を適用せず、Cl2 ガスのみを用いた場合、GaNとGaAINとはほぼ等速エッチングとなる。この等速エッチングでは、レーザ干渉モニタにおける振動周期のGaN/GaAlN界面での変化が僅かであるため、界面の検出が不正確となる。このため、エッチング量のモニタの精度が不十分である。
【0240】
一方、本発明に係る製造方法では、選択エッチングを用いることにより、十分な精度でエッチング量を制御でき、本発明構造の半導体レーザの製造が可能となった。
【0241】
以上のようにリッジ形成の後、図42(c)に示すように、第2回目の成長でn型InGaN電流狭窄層382が選択形成される。さらにSiO2 マスク除去の後、図43(d)に示すように、第3回目の成長でp型GaNコンタクト層383が形成される。このp型GaNコンタクト層383は、ドライエッチングにより、n型GaNコンタクト層384が露出するまでエッチングされてメサが形成される。その後、図43(e)に示すように、p型GaNコンタクト層383上にp側電極385が形成され、n型GaNコンタクト層384上にn側電極384が形成され、半導体レーザが製造される。
【0242】
ここで、本実施形態では、電流狭窄層382としてn型InGaN層を埋込む場合について説明したが電流狭窄層382の材料としては、n型GaAlN層などの他の材料であっても良い。
【0243】
(第21の実施形態)
図44(a)〜図44(d)は本発明の第21の実施形態に係わる半導体レーザの製造工程図である。本実施形態が第20の実施形態と異なる点は、図44(c)に示すように、選択成長ではなくリッジ全体をn型InGaN電流狭窄層391により埋込んだことである。
【0244】
このレーザ構造でも、図44(a)に示す工程の後、図44(b)に示すように、ドライエッチングにより、p型GaAlNクラッド層390をリッジとその両側の平坦部とを有する形状にする必要がある。ここで、リッジの両側のGaAlNの厚さは、電流狭窄層391と活性層376との距離に影響を与えるので、第20の実施形態と同様に、レーザの安定な横モード発振の観点から厳密に制御される必要がある。
【0245】
本実施形態においても、第20の実施形態と同じく本発明による選択エッチング技術とレーザ干渉モニタとを組合せて用いる。その結果、図44(c)に示す如き構造の半導体レーザを製造できる。
【0246】
(第22の実施形態)
図45は、本発明の第22の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0247】
図中400はn型SiC基板であり、この基板400の上にn型ZnO層401,n型GaN層402,n型GaAlNクラッド層403,GaN導波層404,Inj Ga1-j Nからなる第1の活性層405,及びGaN導波層406が順次形成され、更に第1の領域Aを除く第2の領域Bには、Ink Ga1-k Nからなる第2の活性層407及びGaN導波層408が形成されている。そして、第1の領域A及び第2の領域Bにおいて、p型GaAlNクラッド層411a及びb,n型InGaN光閉込め層412a及びb,p型GaNコンタクト層413a及びbが形成されている。なお、これらの結晶成長はMOCVD法、MBE法、或いは両者の組合せによって行われる。また、414a及びbはp側電極、415はn側電極である。
【0248】
ここで、第1の活性層405のバンドギャップEg1 ,厚さd1と、第2の活性層407のバンドギャップEg2 ,厚さd2とは、
Eg1 >Eg2 …(16)
d1>d2 …(17)
となるように設定されている。具体的には、第1の活性層405のIn組成j=0.05,厚さ100nm、第2の活性層407のIn組成k=0.15,厚さ10nmとした。これは、発振波長でλ1=380nm,λ2=410nmに相当する。
【0249】
このレーザ構造の第1の領域Aでは、活性層が第1の活性層405のみであるため、この活性層405の波長380nmで発振する。一方、第2の領域Bでは第1の活性層405と第2の活性層407とが存在するが、第2の活性層407のバンドギャップの方が小さいため、誘導放出再結合は第2の活性層407で起こる。従って、この領域では410nmで発振することになる。
【0250】
第1の領域Aの活性層405は100nmと比較的厚いため、自励発振しやすい構造となっており、戻り光雑音の少ない特性が得られる。一方、第2の領域Bでは10nmと薄い活性層407のため、光パワー密度を低減でき、高出力での発振が可能である。従って、この構造のレーザは、光ディスク応用において第1の領域Aのレーザを読出し用、第2の領域Bのレーザを記録用として用いることができる。
【0251】
しかも本実施形態では、リッジを形成するクラッド層411の側面に活性層405,407よりもバンドギャップエネルギーの小さい光閉込め層412を埋込み形成しているので、各々の領域A,Bにおいてレーザの発振しきい電流密度が低減され、かつ基本横モードでの連続発振が可能となる。
【0252】
図45に示した半導体レーザの製造工程を図46〜図47を参照して説明する。まず、図46(a)に示すように、n型SiC基板400の上に、n型ZnO層401,n型GaN層402,n型GaAlNクラッド層403,GaN導波層404,Inj Ga1-j N活性層(第1活性層)405,GaN導波層406,Ink Ga1-k N活性層(第2活性層)407,GaN導波層408を順次成長する。
【0253】
次いで、図46(b)に示すように、第1の領域Aにおける導波層408と活性層407をエッチングで除去する。このとき、活性層405は導波層406で保護されているので、最終構造で界面再結合による非発光成分の増加は防止できる。
【0254】
次いで、図46(c)に示すように、全面にp型GaAlNクラッド層411を成長し、その上にSiO2 膜421をスパッタ法等で形成する。
【0255】
次いで、図47(d)に示すように、SiO2 膜421のパターニングを行って、これをマスクとして領域A及びBにそれぞれリッジを形成する。
【0256】
次いで、図47(e)に示すように、SiO2 マスクをつけたまま、選択成長によって電流狭窄を兼ねた光閉込め層412を成長する。
【0257】
次いで、図47(f)に示すように、SiO2 マスクを除去した後、p型GaNコンタクト層413を成長し、p側電極414、n側電極415を形成する。最後に、領域Aと領域Bとの間にドライエッチングで溝を形成して素子分離を行うことによって、前記図45に示した構造が完成する。
【0258】
上述したように本実施形態によれば、厚膜活性層の低出力レーザと薄膜活性層の高出力レーザとを同一基板上に形成しているため、活性層厚制御等の難しいプロセスを要することなく、光ディスクシステムにおける再生読出しと消去・記録の両方に要求されるレーザ性能を実現することができる。また、異なる波長のレーザを同一基板上に形成できるため、波長の違いによる非互換性の問題を解決できる。
【0259】
(第23の実施形態)
図48は、本発明の第23の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。なお、図19と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0260】
本実施形態の構造及び製造方法は第22の実施形態の場合とほぼ同様であるが、第22の実施形態と異なる点は、第1の活性層405に代えて膜厚d1の第1の活性層425を有し、且つ第2の活性層407に代えて、第1の活性層の膜厚よりも大きい膜厚d2をもつ第2の活性層427を備えたことである。
【0261】
すなわち、第1の活性層425の膜厚d1と第2の活性層427の膜厚d2との関係を、
d1<d2 …(18)
としたことである。即ち、d1=10nm,d2=100nmとした。また、第2の領域Bにp型InGaN吸収層428を設けた。この吸収層428は可飽和吸収体として働き、自励発振がより容易に起こる構造としてある。この構造の場合には、光ディスク応用において第1の領域Aのレーザを記録用、第2の領域Bのレーザを読出し用として用いることになる。
【0262】
(第24の実施形態)
図49は、本発明の第24の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0263】
図中430はサファイア基板であり、この基板430の上にGaNバッファ層431,n型GaNコンタクト層432,n型GaAlNクラッド層433,n型GaN導波層434,InGaN多重量子井戸からなる第1の活性層435,アンドープGaN導波層436,InGaN多重量子井戸からなる第2の活性層437,p型GaN導波層438,p型GaAlNクラッド層439,p型GaNキャップ層440,p型InGaN光閉込め層441,p型InGaNコンタクト層442が形成されている。また、図中の443及び444はp電極、445はn側電極である。
【0264】
ここで、第1の多重量子井戸活性層435のバンドギャップEg1 と第2の多重量子井戸活性層437のバンドギャップEg2 とは
Eg1 >Eg2
となるように設定されている。具体的には、第1の多重量子井戸活性層の井戸層のIn組成を0.15とし、第2の多重量子井戸活性層のIn組成を0.8とした。それぞれの発振波長は青色及び赤色に相当する。第2の多重量子井戸活性層のIn組成は通常のGaNレーザに比べて大きいが、むしろInNに近い組成であるために結晶としては高品質のものが得られる。
【0265】
このように青色及び赤色のレーザが集積されている構造が実現できるため、光ディスク応用において極めて有用である。即ち、高密度化に伴って異なる波長のレーザを用いるシステムの場合に、本実施形態のようなレーザを用いることにより、従来のシステムとの互換性が容易に実現されることになる。
【0266】
図50は、図49に示した実施形態のレーザにおける電極の配置例を示したものである。この例のようにn電極側は共通にできるため、例えばボンディングワイヤは3つで良い。
【0267】
(第25の実施形態)
図51は、本発明の第25の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0268】
図中450はサファイア基板であり、この基板450の上にGaNバッファ層451,n型GaNコンタクト層452,n型GaAlNクラッド層453,n型GaN導波層454,InGaN多重量子井戸からなる第1の活性層455,アンドープGaN導波層456,InGaN多重量子井戸からなる第2の活性層457,p型GaN導波層458,p型GaAlNクラッド層459,p型GaNキャップ層460,p+ 型GaNコンタクト層461,n型InGaN光閉込め層462,p+ 型GaNコンタクト層463が形成されている。また、図中の464及び465はp側電極、466はn側電極である。
【0269】
第1の多重量子井戸活性層455のバンドギャップEg11 と第2多重量子井戸活性層457のバンドギャップEg2 とは
Eg1 >Eg2
となるように設定されている。これにより左側のレーザではEg2 のバンドギャップに相当する波長で、また右側のレーザではEg1 のバンドギャップに相当する波長で発振する。
【0270】
(第26の実施形態)
図52は、本発明の第26の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0271】
レーザの基本層構造は前記図28に示したものと同じであるので、その詳しい説明は省略する。この実施形態においても、第1の多重量子井戸活性層196のバンドギャップEg1 と第2の多重量子井戸活性層470のバントギャップEg2 との関係を上述のように設定することによって、それぞれ異なる波長での発振が可能である。
【0272】
(第27の実施形態)
図53は、本発明の第27の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図である。
【0273】
この実施形態における半導体レーザの基本構造は図51に示した例と同様であるので、その詳しい説明は省略する。この実施形態では、接合面ダウンのマウント例を示してある。
【0274】
図中の480はヒートシンクである。ヒートシンク480としては、Cuなどの他、BNやダイヤモンド等、熱伝導率の高い材料を用いると効果的である。このヒートシンク480には図に示したような段差を設けてあり、その上にメタライズによる金属層(例えばTi/Pt/Au層)481〜484が形成されている。また、490は電極間を分離するための分離溝である。各メタライズ層と半導体レーザの電極とは、AuSn等の半田材485〜489により圧着されている。
【0275】
本実施形態のように接合面ダウンのマウントとすることにより、素子の熱抵抗が低減され、より高温での発振が可能となる。
【0276】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0277】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、基本横モードで連続発振することができ、光ディスクシステム等の光源に適した非点収差のない良質の出射ビームを得ることのできるInGaAlBN系の半導体レーザ及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図2】ストライプ内外の等価屈折率差Δneq、基本モードに対する損失α0 ,損失差Δαに関し、光閉込め層−コア領域間の距離hout に対する依存性を示す図。
【図3】しきい値電流密度Jth、損失α0 ,損失差Δαに関し、ストライプ幅Wに対する依存性を示す図。
【図4】ストライプ内外の等価屈折率差Δneqおよびビームの非点隔差と、光閉込め層の組成との関係を示す図。
【図5】各導波型における非点隔差および損失差Δαに関し、ストライプ幅に対する依存性を示す図。
【図6】活性層総厚d、クラッド層厚Hclad並びにクラッド層−活性層のAl組成差XA1と、導波モード損失αとの関係を示す図。
【図7】SCH−MQW構造におけるクラッド層厚clad並びに導波層厚Hguide と、導波モードとの関係を示す図。
【図8】しきい値電流密度Jth、光閉込め係数Γに関し、クラッド層厚clad並びに導波層厚Hguide との関係を示す図。
【図9】遠視野像強度分布のクラッド層厚依存性を示す図。
【図10】SCH−MQW構造におけるクラッド層厚clad並びに導波層厚Hguide と、導波モードの境界線との関係を示す図。
【図11】SCH−MQW構造におけるクラッド層厚clad並びに導波層厚Hguide と、導波モードの境界線との関係を示す図。
【図12】単位井戸層厚当りのしきい値電流密度Jth/dact に関し、光閉込め量Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)に対する依存性を示す図。
【図13】同実施形態における半導体レーザの層構造の設計例を示す図。
【図14】本発明によるしきい値低減効果を説明するための模式図。
【図15】オーバーフロー防止層を設けない場合のバンド構造及び電子と正孔の分布を示す図。
【図16】オーバーフロー防止層を設けた場合のバンド構造及び電子と正孔の分布を示す図。
【図17】本発明の第2の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図18】本発明の第3の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図19】本発明の第4の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図20】ヘテロ障壁による電流阻止効果の原理を示す図。
【図21】p−GaAlN/p−InGaN界面を持つ構成における電流密度−電圧特性を示す図。
【図22】n−GaAlN/n−InGaN界面を持つ構成における電流密度−電圧特性を示す図。
【図23】本発明の第5の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図24】本発明の第6の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図25】本発明の第7の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図26】本発明の第8の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図27】本発明の第9の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図28】本発明の第10の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図29】本発明の第11の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図30】本発明の第12の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図31】本発明の第13の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す斜視図。
【図32】本発明の第14の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図33】本発明の第15の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図34】本発明の第16の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図35】本発明の第17の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図36】同実施形態におけるエッチング方法を説明するための模式図。
【図37】同実施形態におけるエッチング方法を説明するための模式図。
【図38】本発明の第18の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図39】本発明の第19の実施形態に係わる半導体レーザの製造工程図。
【図40】同実施形態における半導体レーザの製造工程図。
【図41】同実施形態における選択比とガス組成との関係を示す図。
【図42】本発明の第20の実施形態に係わる半導体レーザの製造工程図。
【図43】同実施形態における半導体レーザの製造工程図。
【図44】本発明の第21の実施形態に係わる半導体レーザの製造工程図。
【図45】本発明の第22の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図46】同実施形態における半導体レーザの製造工程図。
【図47】同実施形態における半導体レーザの製造工程図。
【図48】本発明の第23の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図49】本発明の第24の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図50】図49に示した実施形態のレーザにおける電極の配置例を示す図。
【図51】本発明の第25の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図52】本発明の第26の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【図53】本発明の第27の実施形態に係わる半導体レーザの構成を示す断面図。
【符号の説明】
10,30,70,90,110,130,150,170,190,210,230,260,280,300,320,344,350,370,430,450…サファイア基板
11,31,52,71,91,111,131,151,171,191,211,231,261,281,301,321,351,371,402,431,451…GaNバッファ層
12,32,72,112,132,152,172,192,212,232,262,282,302,322,352,372,432,452…n型GaNコンタクト層
13,33,53,73,97,113,133,153,173,194,218,233,263,283,303,323,353,373,403,433,453…n型GaAlNクラッド層
14,34,54,74,96,114,134,154,174,195,217,234,264,284,304,324,354,374,404,434,454…n型GaN導波層
15,35,55,375…n型GaAlNオーバーフロー防止層
16,56,75,95,115,135,155,175,196,216,235,265,285,305,325,355,376,435,437,455,457…InGaN多重量子井戸(MQW)活性層
17,37,57,377…p型GaAlNオーバーフロー防止層
18,38,58,76,94,116,136,156,176,197,215,236,266,286,306,326,356,378,438,458…p型GaN導波層
19,39,59,77,93,117,137,138,157,158,159,177,178,179,198,214,237,267,287,309,327,328,357,358,379,390,411a,439,459…p型GaAlNクラッド層
20,40,60,79,99,120,141,161,181,193,213,213,240,269,289,310,329,412a,441,462…光閉込め層
21,41,61,78,92,118,139,160,180,199,250,251,268,270,288,308,359,360,380,383,413a,413b,440,460,461,462…p型GaN層
22,43,62,80,101,121,142,183,201,221,242,271,292,312,361,362,385,414a,414b,443,444,464,465…p側電極
23,44,63,81,100,122,143,184,202,222,243,272,293,313,384,415,445,466…n側電極
36…GaN単一量子井戸(SQW)活性層
42,119,140,200,220,239,241,307…p型InGaN層
50,400…n型SiC基板
51,401…n型ZnOバッファ層
98,219…n型GaN層
340…反応容器
341…金属電極
342…スターラー
343…NaOH溶液
345…直流電源
381…無機マスク層
382,391…電流狭窄層
405,407,425,427…活性層
406,408,436…GaN導波層
421…SiO2
428…吸収層
480…ヒートシンク
481〜484…金属層
485〜489…半田材
490…分離溝
Eg1 ,Eg2 …バンドギャップ
d1,d2…厚さ

Claims (12)

  1. 窒素を含むIII−V族化合物半導体からなる半導体レーザであって、
    基板と、
    前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、
    この第1導電型クラッド層上に形成された少なくとも活性層を含むコア領域と、
    このコア領域上に形成され、ストライプ状のリッジを有する第2導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層、前記コア領域及び前記第2導電型クラッド層からなるダブルヘテロ構造と、
    前記第2導電型クラッド層上に前記リッジの側部に沿って選択的に形成された光閉込め層と、
    この光閉込め層上及び前記第2導電型クラッド層のリッジ上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    この第2導電型コンタクト層上に形成された第1電極と、
    前記基板における前記第1導電型クラッド層とは異なる領域に形成された第2電極とを備え、
    前記コア領域内の活性層は、少なくともIn a Ga b Al c 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIn e Ga f Al g 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸又は多重量子井戸であり、
    前記光閉込め層は、窒素を含むIII−V族化合物半導体からなり、該光閉込め層の屈折率が前記第2導電型クラッド層の屈折率より大きいものであり、
    前記光閉込め層のバンドギャップエネルギーは、前記活性層のバンドギャップエネルギーより小さい関係にあり、
    前記第1導電型クラッド層がInx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなり、前記第2導電型クラッド層がInu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなり、
    前記第1導電型クラッド層と前記活性層とのAl組成差ΔZ Al (=前記第1導電型クラッド層のAl組成−活性層のAl組成)と、前記第2導電型クラッド層と前記活性層とのAl組成差ΔW Al (=前記第2導電型クラッド層のAl組成−活性層のAl組成)と、前記コア領域の総厚dと、前記井戸層から決まる発振波長λに対し、前記第1導電型クラッド層の厚さH1及び前記第2導電型クラッド層におけるリッジを含む厚さH2が、
    0.18(ΔZ Al d/λ)-1/2≦H1/λ≦0.27(ΔZ Al d/λ)-1/2
    0.18(ΔW Al d/λ)-1/2≦H2/λ≦0.27(ΔW Al d/λ)-1/2
    を満たす範囲にあることを特徴とする半導体レーザ。
  2. 窒素を含むIII−V族化合物半導体からなる半導体レーザであって、
    基板と、
    前記基板上に形成されたバッファ層と、
    前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
    前記第1導電型コンタクト層上に形成された第1導電型クラッド層と、
    この第1導電型クラッド層上に形成された少なくとも活性層を含むコア領域と、
    このコア領域上に形成され、ストライプ状のリッジを有する第2導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層、前記コア領域及び前記第2導電型クラッド層からなるダブルヘテロ構造と、
    前記第2導電型クラッド層上に前記リッジの側部に沿って選択的に形成された光閉込め層と、
    この光閉込め層上及び前記第2導電型クラッド層のリッジ上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    この第2導電型コンタクト層上に形成された第1電極と、
    前記第1導電型コンタクト層における前記第1導電型クラッド層とは異なる領域に形成された第2電極とを備え、
    前記コア領域内の活性層は、少なくともIn a Ga b Al c 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIn e Ga f Al g 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸又は多重量子井戸であり、
    前記光閉込め層は、窒素を含むIII−V族化合物半導体からなり、該光閉込め層の屈折率が前記第2導電型クラッド層の屈折率より大きいものであり、
    前記光閉込め層のバンドギャップエネルギーは、前記活性層のバンドギャップエネルギーより小さい関係にあり、
    前記第1導電型クラッド層がInx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなり、前記第2導電型クラッド層がInu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなり、
    前記第1導電型クラッド層と前記活性層とのAl組成差ΔZ Al (=前記第1導電型クラッド層のAl組成−活性層のAl組成)と、前記第2導電型クラッド層と前記活性層とのAl組成差ΔW Al (=前記第2導電型クラッド層のAl組成−活性層のAl組成)と、前記コア領域の総厚dと、前記井戸層から決まる発振波長λに対し、前記第1導電型クラッド層の厚さH1及び前記第2導電型クラッド層におけるリッジを含む厚さH2が、
    0.18(ΔZ Al d/λ)-1/2≦H1/λ≦0.27(ΔZ Al d/λ)-1/2
    0.18(ΔW Al d/λ)-1/2≦H2/λ≦0.27(ΔW Al d/λ)-1/2
    を満たす範囲にあることを特徴とする半導体レーザ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の半導体レーザにおいて、
    前記第2導電型クラッド層におけるリッジを含まない厚さHoutは、0.3μm以下であることを特徴とする半導体レーザ。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の半導体レーザにおいて、
    前記光閉込め層の導電型は、前記第2導電型クラッド層の導電型と同じであることを特徴とする半導体レーザ。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の半導体レーザにおいて、
    前記第2導電型クラッド層のリッジと前記第2導電型コンタクト層との間に形成され、前記第2導電型クラッド層のバンドギャップエネルギーと前記第2導電型コンタクト層のバンドギャップエネルギーとの中間の値のバンドギャップエネルギーをもつ第2導電型キャップ層を備えており、
    前記光閉込め層と前記第2導電型コンタクト層とは、同一材料からなる1つの層であることを特徴とする半導体レーザ。
  6. 請求項1又は請求項2に記載の半導体レーザにおいて、
    前記コア領域は、
    前記活性層を挟むように形成され、前記量子井戸の平均屈折率より小さくかつ各クラッド層の屈折率より大きい屈折率を有する複数の導波層と、
    少なくとも一方のクラッド層と前記活性層との間に形成され、Ins Gat Alh 1-s-t-h N(0≦s,t,h,s+t+h≦1)からなり、前記導波層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有するキャリアオーバーフロー防止層とを備えていることを特徴とする半導体レーザ。
  7. 請求項に記載の半導体レーザにおいて、
    前記キャリアオーバーフロー防止層のAl組成hは、0<h<0.2を満たす範囲にあることを特徴とする半導体レーザ。
  8. 窒素を含むIII−V族化合物半導体からなる半導体レーザであって、
    基板と、
    前記基板上に形成され、Inx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなる第1導電型クラッド層と、
    この第1導電型クラッド層上に形成された少なくとも活性層を含むコア領域と、
    このコア領域上に形成され、Inu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなり、ストライプ状のリッジを有する第2導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層、前記コア領域及び前記第2導電型クラッド層からなるダブルヘテロ構造と、
    前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    この第2導電型コンタクト層上に形成された第1電極と、
    前記基板における前記第1導電型クラッド層とは異なる領域に形成された第2電極とを備え、
    前記活性層は、Ina Gab Alc 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIne Gaf Alg 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸または多重量子井戸からなり、
    前記井戸層の総厚dactは、0.5μm未満であり、
    前記各クラッド層のAl組成xAl、コア領域の平均In組成yIn、両組成の和Δx(=xAl+yIn)、前記コア領域の総厚Hcoreおよび前記各クラッド層の厚さHcladは、発振波長λに対し、
    Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≧0.08を満たしていることを特徴とする半導体レーザ。
  9. 窒素を含むIII−V族化合物半導体からなる半導体レーザであって、
    基板と、
    前記基板上に形成されたバッファ層と、
    前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
    前記第1導電型コンタクト層上に形成され、Inx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなる第1導電型クラッド層と、
    この第1導電型クラッド層上に形成された少なくとも活性層を含むコア領域と、
    このコア領域上に形成され、Inu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなり、ストライプ状のリッジを有する第2導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層、前記コア領域及び前記第2導電型クラッド層からなるダブルヘテロ構造と、
    前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    この第2導電型コンタクト層上に形成された第1電極と、
    前記第1導電型コンタクト層における前記第1導電型クラッド層とは異なる領域に形成された第2電極とを備え、
    前記活性層は、Ina Gab Alc 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIne Gaf Alg 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸または多重量子井戸からなり、
    前記井戸層の総厚dactは、0.5μm未満であり、
    前記各クラッド層のAl組成xAl、コア領域の平均In組成yIn、両組成の和Δx(=xAl+yIn)、前記コア領域の総厚Hcoreおよび前記各クラッド層の厚さHcladは、発振波長λに対し、
    Δx・(Hcore/λ)・(Hclad/λ)≧0.08を満たしていることを特徴とする半導体レーザ。
  10. 窒素を含むIII−V族化合物半導体からなる半導体レーザであって、
    基板と、
    前記基板上に形成され、Inx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなる第1導電型クラッド層と、
    この第1導電型クラッド層上に形成され、Ina Gab Alc 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIne Gaf Alg 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸または多重量子井戸の活性層を含むコア領域と、
    このコア領域上に形成され、Inu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなり、ストライプ状のリッジを有する第2導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層、前記コア領域及び前記第2導電型クラッド層からなるダブルヘテロ構造と、
    前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    この第2導電型コンタクト層上に形成された第1電極と、
    前記基板における前記第1導電型クラッド層とは異なる領域に形成された第2電極とを備え、
    前記コア領域は、前記活性層を挟むように形成されたInh Gai Alj 1-h-i-j N(0<h≦1,0≦i<1,0≦j<1)からなる複数の導波層を含み、
    前記コア領域の総厚Hcoreおよびコア領域の平均In組成yInは、発振波長λに対し、(yIn1/2 ・(Hcore/λ)≧0.15を満たしていることを特徴とする半導体レーザ。
  11. 窒素を含むIII−V族化合物半導体からなる半導体レーザであって、
    基板と、
    前記基板上に形成されたバッファ層と、
    前記バッファ層上に形成された第1導電型コンタクト層と、
    前記第1導電型コンタクト層上に形成され、Inx Gay Alz 1-x-y-z N(0≦x,y,z,x+y+z≦1)からなる第1導電型クラッド層と、
    この第1導電型クラッド層上に形成され、Ina Gab Alc 1-a-b-c N(0≦a,b,c,a+b+c≦1)からなる井戸層とIne Gaf Alg 1-e-f-g N(0≦e,f,g,e+f+g≦1)からなる障壁層とで構成される単一量子井戸または多重量子井戸の活性層を含むコア領域と、
    このコア領域上に形成され、Inu Gav Alw 1-u-v-w N(0≦u,v,w,u+v+w≦1)からなり、ストライプ状のリッジを有する第2導電型クラッド層と、
    前記第1導電型クラッド層、前記コア領域及び前記第2導電型クラッド層からなるダブルヘテロ構造と、
    前記第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型コンタクト層と、
    この第2導電型コンタクト層上に形成された第1電極と、
    前記第1導電型コンタクト層における前記第1導電型クラッド層とは異なる領域に形成された第2電極とを備え、
    前記コア領域は、前記活性層を挟むように形成されたInh Gai Alj 1-h-i-j N(0<h≦1,0≦i<1,0≦j<1)からなる複数の導波層を含み、
    前記コア領域の総厚Hcoreおよびコア領域の平均In組成yInは、発振波長λに対し、(yIn1/2 ・(Hcore/λ)≧0.15を満たしていることを特徴とする半導体レーザ。
  12. 請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の半導体レーザにおいて、
    前記基板は、サファイア、SiC,ZnO,MgAl 2 4 ,NdGaO 3 ,LiGaO 2 、Y 3 Al 5 12 (YAG),又はY 3 Fe 5 12 (YIG)のいずれかからなることを特徴とする半導体レーザ。
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