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JP3741384B2 - 同期機のサイリスタ始動制御装置 - Google Patents

同期機のサイリスタ始動制御装置 Download PDF

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JP3741384B2
JP3741384B2 JP09194195A JP9194195A JP3741384B2 JP 3741384 B2 JP3741384 B2 JP 3741384B2 JP 09194195 A JP09194195 A JP 09194195A JP 9194195 A JP9194195 A JP 9194195A JP 3741384 B2 JP3741384 B2 JP 3741384B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、同期機のサイリスタ始動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、他励式のサイリスタ整流器を応用したサイリスタ始動制御装置の一例を示す構成図である。
【0003】
図において、三相電源に一次側が接続される入力変圧器1の二次側が三相のサイリスタ素子による順変換器2に接続されている。
【0004】
順変換器2は、直流リアクトル3を介して順変換器2に対応するサイリスタ素子による逆変換器4に接続され、逆変換器4の各アームから交流リアクトル5を介して負荷として同期機6に接続されている。
【0005】
同期機6は、界磁巻線7へ界磁電流Ifを図示省略する手段によって供給できるように構成されると共に、回転子軸に連動して回転する速度パルス発生器8が取付けられ、速度検出器14へ接続されている。
【0006】
また、入力変圧器1の一次側には、順変換器2の同期のための順変換器同期電源変圧器9が設けられ、逆変換器4の出力側には、逆変換器4の同期のための逆変換器同期電源変圧器10が設けられ、電圧検出器19へ接続され、さらに、順変換器2の交流側には変流器11が設けられて電流検出器16へ接続されている。
【0007】
速度検出器14は、速度パルス発生器8が出力する同期機6の回転数に比例した周波数のパルスを入力し、同期機周波数信号fsを出力する。電流検出器16は、変流器11の交流出力を整流し、変換器電流Idに比例した変換器電流信号Iを出力する。
【0008】
電圧検出器19は、逆変換器同期電源変圧器10の交流出力を整流し逆変換器電圧信号V2を出力する。
【0009】
順変換器パルス発生器18は、順変換器同期電源変圧器9の交流出力を入力し、同期電源位相を検出すると共に、順変換器位相制御信号Θr1を入力し、順変換器位相制御信号Θr1に対応したタイミングで順変換器2の各サイリスタ素子を順次点弧させる点弧パルス信号P1を出力する。
【0010】
逆変換器パルス発生器22は、逆変換器同期電源変圧器10の交流出力を入力し、同期電源位相を検出すると共に、逆変換器位相制御信号Θr2を入力し、逆変換器位相制御信号Θr2に対応したタイミングで逆変換器4の各サイリスタ素子を順次点弧させる点弧パルス信号P2を出力する。
【0011】
制御装置13は、速度調整器15と電流調整器17と余裕角演算器20とから構成されている。
【0012】
速度調整器15は、同期機周波数信号fsと周波数設定値frとを入力し、その偏差信号を増幅して偏差信号が小さくなるように電流基準信号Irを出力する。電流調整器17は、電流基準信号Irと変換器電流信号Iを入力し、その偏差信号を増幅して偏差信号が小さくなるように順変換器位相制御信号Θr1を出力する。
【0013】
余裕角演算器20は、同期機周波数信号fsと変換器電流信号Iと逆交換器電圧信号V2と転流余裕角γ2とを入力して所定の演算を行って逆変換器4の転流重なり角を見込んだ後述する逆変換器位相制御信号Θr2を逆変換器パルス発生器22へ出力する。
【0014】
以上の構成で、同期機6を加速するときのサイリスタ始動制御装置の動作を説明する。
【0015】
なお、同期機6の停止状態から所定の周波数まで加速される間では同期機6の出力電圧Vsおよび周波数fが十分大きな値に達していないため、逆交換器電圧信号V2と同期機周波数信号fsとを入力しても余裕角演算器20によって、逆変換器位相制御信号Θr2を演算出力することができない。
【0016】
このため、同期機6を停止状態から所定の周波数まで加速する間は、図示省略する別途設けられた同期機6の回転子位置検出器から出力される回転子位置信号に基づいて逆変換器4の点弧パルス信号P2を生成する。
【0017】
次に、同期機6が所定の周波数まで加速された後のサイリスタ始動制御装置の動作を説明する。
【0018】
まず、界磁巻線7に所定の界磁電流Ifを流すと、同期機6の回転周波数fに比例した出力電圧Vsが誘起される。
【0019】
逆変換器4は、逆変換器パルス発生器22による点弧パルス信号P2によって各サイリスタ素子が点弧され同期機6によって誘起する逆の出力電圧Vsが各サイリスタ素子へ印加され転流させる。この場合、各サイリスタ素子が転流失敗なく転流するために速度検出器14からの同期機周波数信号fsと電圧検出器19からの逆交換器電圧信号V2と変換器電流信号Iと予め設定された転流余裕角γ2とが余裕角演算器20によって次の式(1)に基づいて演算がされ、逆変換器4の転流重なり角を見込んだ逆変換器位相制御信号Θr2が出力される。
【0020】
【数1】
Figure 0003741384
【0021】
ここで、Liは交流リアクトル5と同期機6のインダクタンスの和であり、Li,fs,I,V2はいずれもPU値で表現している。
【0022】
次に、逆変換器4は、この出力電圧Vsを交流電源として逆変換器運転を行い、電力を同期機6に送出する。逆変換器4の直流側には、同期機6の出力電圧Vsと逆変換器位相制御信号Θr2に応じた直流電圧Vdc2に対して電流調整器17は変換器電流信号Iが電流基準信号Irと一致するように順変換器位相制御信号Θr1を調整し、順変換器直流電圧Vdc1を制御する。
【0023】
速度調整器15は、同期機周波数信号fsが周波数設定値frと一致するように電流基準信号Irを増減し、同期機6を所定の周波数に維持する。なお、図8中、入力変圧器1は電圧レベルの変換および順変換器2のサイリスタ素子を短絡電流から保護するために、直流リアクトル3は変換器電流Idのリップル抑制のために、交流リアクトル5は逆変換器4のサイリスタ素子を短絡電流から保護するために設けてある。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術で説明した同期機のサイリスタ始動制御装置は、同期機6の出力トルクの急変によってタービン発電機等に損傷を与えるおそれがあるという問題がある。
【0025】
一般に、同期機のサイリスタ始動制御装置の出力トルクTeは、次の式(2)によって表される。
【0026】
【数2】
Figure 0003741384
ここで、Vs:同期機6の出力電圧
fs:同期機6の周波数
Id:変換器電流
Θr2:逆変換器位相制御信号
γ2:転流余裕角
Te,Vs,fs,IdはいずれもPU値表現とする。
【0027】
通常、同期機のサイリスタ始動制御装置の電流調整器17は順変換器2や逆変換器4の交流電源電圧の突変に対して変換器電流Idが過電流となったり、断続したりしないようにするため高速応答が得られるように設定されている(例えば、交差角周波数で100rad/sec程度)。
【0028】
上記の如く、高い応答性を持つ電流調整器17に対し電流基準信号Irを急変させると変換器電流Idが突変し、さらに、(2)式より出力トルクTeも急変する。速度調整器15の指令周波数信号である周波数設定値frは、同期機6の始動運転で急上昇させることが多く電流基準信号Irが急変することが多い。
【0029】
このような場合、被駆動機が揚水機の如く軸系が単純な場合にはサイリスタ始動制御装置の出力トルクが急変しても特に問題とはならないが、コンバインドサイクル機の如く軸系が複雑な場合には特定の回転数に共振点が存在し、この共振点付近でサイリスタ始動制御装置の出力トルクが急変すると、軸系の振動を増長して共振が拡大し、軸系の共振の拡大によってタービン発電機等に損傷を与えるおそれがある。
【0030】
そこで、本発明は、同期機のサイリスタ始動制御装置の出力トルクの急変を防止してタービン発電機等に損傷を与えることを回避する同期機のサイリスタ始動制御装置を提供することを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、順変換器位相制御信号に基づくパルス制御信号により交流を直流へ変換する順変換器と、該順変換器の直流出力を逆変換器位相制御信号に基づくパルス制御信号により可変周波数の交流電力へ変換し同期機へ供給するサイリスタ素子による他励式の逆変換器と、同期機の回転周波数信号が指令周波数信号となるように電流基準信号を生成する速度調整器と、順変換器が出力する電流信号が電流基準信号となるように順変換器位相制御信号を出力する電流調整器と、転流重なり角を演算し、この転流重なり角と予め設定された逆変換器の転流余裕角とから転流重なり角を見込んだ逆変換器位相制御信号を演算出力する余裕角演算器と、同期機の出力トルクの急な変化を抑制するために所定の演算式に従って同期機の電流許容変化率を算出する変化率演算器と、この変化率演算器により演算された電流許容変化率内に電流基準信号を制限する変化率制限器とを設けるようにしたものである。
【0033】
請求項の発明は、請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置において、変化率演算器は、同期機の出力電圧とその周波数と逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め出力トルク許容変化率とを用いて、同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように電流許容変化率を演算するようにしたものである。
【0034】
請求項の発明は、請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置において、変化率演算器は、同期機の界磁電圧あるいは界磁電流のいずれかと逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め出力トルク許容変化率とを用いて、同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように電流許容変化率を演算するようにしたものである。
【0035】
請求項の発明は、請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置において、変化率演算器は、同期機の出力電圧とその周波数と予め定めた出力トルク許容変化率とを用いると共に、逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号とに基づく所定の固定値とを用いて、同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように電流許容変化率を演算するようにしたものである。
【0036】
請求項の発明は、請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置において、変化率演算器は、同期機の界磁電流あるいは界磁電圧のいずれかと予め定めた出力トルク許容変化率とを用いると共に、逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号とに基づく所定の固定値とを用いて、同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように電流許容変化率を演算するようにしたものである。
【0037】
【作用】
請求項1の同期機のサイリスタ始動制御装置によれば、変化率演算器により所定の演算式に従って電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。そして、電流基準信号が電流許容変化率以内のとき、そのまま電流基準信号が出力される一方、電流基準信号が電流許容変化率以外のとき電流基準信号が制限される。これにより、運転状況に応じた電流許容変化率が設定される。従って、同期機の軸系の回転数が共振点付近にあっても軸系の振動が拡大するのを防止し、軸系に損傷を与えたり、軸系の疲労を拡大させることを回避できる。
【0039】
請求項の同期機のサイリスタ始動制御装置によれば、変化率演算器により、
同期機の出力電圧とその周波数と逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め定めた出力トルク許容変化率を用いて電流許容変化率が演算され、電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0040】
請求項の同期機のサイリスタ始動制御装置によれば、同期機の界磁電圧または界磁電流のいずれかと逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め定めた出力トルク許容変化率とによって電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0041】
請求項の同期機のサイリスタ始動制御装置によれば、変化率演算器により同期機の出力電圧とその周波数と予め定めた出力トルク許容変化率と所定の固定値とを用いて電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0042】
請求項の同期機のサイリスタ始動制御装置によれば、変化率演算器により同期機の界磁電圧あるいは界磁電流のいずれかと予め定めた出力トルク許容変化率と所定の固定値とを用いて電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【0045】
図1が従来例を示す図8と同一符号は、同一部分または相当部分を示し、図1が図8と異なる主な点は、変化率制限器30を追設し、同期機6の出力トルクの変動を抑制するようにしたことである。
【0046】
変化率制限器30は、予め設定された所定の変化率内に電流基準信号Irを制限して出力するものである。
【0047】
まず、界磁巻線7に所定の界磁電流Ifを流すと、同期機6の回転周波数fに比例した出力電圧Vsが誘起される。
【0048】
逆変換器4は、逆変換器パルス発生器22による点弧パルス信号P2によって各サイリスタ素子が点弧され同期機6によって誘起する逆の出力電圧Vsが各サイリスタ素子へ印加され転流させる。この場合、各サイリスタ素子が転流失敗なく転流するために速度検出器14からの同期機周波数信号fsと電圧検出器19からの逆変換器電圧信号V2と変換器電流信号Iと予め設定された転流余裕角γ2とを取込んで余裕角演算器20により演算がされ、逆変換器4の転流重なり角を見込んだ逆変換器位相制御信号Θr2が出力される。
【0049】
次に、逆変換器4は、この出力電圧Vsを交流電源として逆変換器運転を行い、電力を同期機6に送出する。電流調整器17は変換器電流信号Iが電流基準信号Irと一致するように順変換器位相制御信号Θr1を調整制御する。
【0050】
速度調整器15は、同期機周波数信号fsが指令周波数信号である周波数設定値frと一致するように電流基準信号Irを増減し、同期機6を所定の周波数に維持する。この場合に速度調整器15から出力される電流基準信号Irが変化率制限器30へ入力される。
【0051】
変化率制限器30では、予め所定の変化率の範囲が設定されている。すなわち、前述した式(2)に基づいてTeトルクと変換器電流Idの関係から電流基準信号Irの許容可能な変化率の範囲が予め設定されている。これによって、電流基準信号Irが所定の変化率の範囲以外のとき電流基準信号Irが制限されて制限された電流基準信号Irlが出力される。従って、電流基準信号Irの急変が抑制され、同期機6の出力トルクの急増や急減が防止される。
【0052】
このように第1実施例によれば、変化率制限器30によって入力された電流基準信号が所定の変化率内に抑えられる。これにより、電流基準信号が急変しても電流基準信号の変動が所定の変化率以内とされるから同期機の出力トルクの急変動が抑制される。従って、同期機の軸系の回転数が共振点付近にあっても軸系の振動が拡大するのを防止し、回転系に損傷を与えたり、軸系の疲労を拡大させることを回避できる。
【0053】
図2は、本発明の第2実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【0054】
図2が従来例を示す図8と同一符号は、同一部分または相当部分を示し、図2が図8と異なる主な点は、変化率制限器30と変化率演算器31Bとを追設し、運転状況に応じて出力トルクの急変を防止するようにしたことである。
【0055】
変化率制限器30は、演算された電流許容変化率内に電流基準信号Irを制限して出力するものである。変化率演算器31Bは、同期機6の逆変換器電圧信号V2と同期機周波数信号fsと逆変換器4の転流余裕角γ2と逆変換器位相制御信号Θr2と予め定めた出力トルク許容変化率とを用いて同期機6の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように電流許容変化率Ilを演算するものである。
【0056】
以上の構成で、まず、変化率演算器31Bへ逆変換器電圧信号V2と同期機周波数信号fsと転流余裕角γ2と逆変換器位相制御信号Θr2と出力トルク許容変化率Telが入力される。これに伴い、変化率演算器31Bにより次の式(3)に従って電流許容変化率Ilが演算される。
【0057】
【数3】
Figure 0003741384
【0058】
上記演算された電流許容変化率Ilが変化率制限器30へ設定される。
【0059】
変化率制限器30では、電流基準信号Irを入力して電流基準信号Irが電流許容変化率Il内のとき、そのまま電流基準信号Irを電流基準信号Irlとして出力する一方、電流基準信号Irが電流許容変化率Ilの範囲外のとき制限された電流基準信号Irlとして出力される。
【0060】
次に、電流調整器17では、電流基準信号Irlと変換器電流信号Iとを取込んで順変換器位相制御信号Θr1を出力する。従って、電流基準信号Irlが電流許容変化率Ilの範囲内であるから変換器電流Idが急増または急減することなく、同期機6の出力トルクが出力トルク許容変化率Tel内に抑えられる。
【0061】
このように第2実施例によれば、変化率演算器により、同期機の出力電圧とその周波数と逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め定めた出力トルク許容変化率を用いて電流許容変化率が演算され、電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0062】
図3は、本発明の第3実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【0063】
図3が従来例を示す図8と同一符号は、同一部分または相当部分を示し、図3が図8と異なる主な点は、変化率制限器30と変化率演算器31Cと変流器32と界磁電流検出器33とを追設したことである。
【0064】
変化率制限器30は、演算された電流許容変化率Il内に電流基準信号Irを制限して出力するものである。変化率演算器31Cは、同期機6の界磁電流Ifと逆変換器4の転流余裕角γ2と逆変換器位相制御信号Θr2と予め定めた出力トルク許容変化率Telとを用いて同期機6の出力トルクの変化率を所定範囲内とするように電流許容変化率Ilを演算するものである。
【0065】
変流器32は、同期機6の界磁電流Ifを検出するためのものである。界磁電流検出器33は、変流器32からの信号を取込んで界磁電流Ifを出力するものである。
【0066】
以上の構成で、まず、変化率演算器31Cへ界磁電流Ifと転流余裕角γ2と逆変換器位相制御信号Θr2と出力トルク許容変化率Telが入力される。これに伴い、変化率演算器31Cによって、次の式(4)に従って電流許容変化率Ilが演算される。
【0067】
【数4】
Figure 0003741384
【0068】
上記演算された電流許容変化率Ilが変化率制限器30へ設定される。
【0069】
変化率制限器30では、電流基準信号Irを入力して電流基準信号Irが電流許容変化率Il内のとき、そのまま電流基準信号Irを電流基準信号Irlとして出力する一方、電流基準信号Irが電流許容変化率Ilの範囲外のとき制限された電流基準信号Irlが出力される。
【0070】
次に、電流調整器17では、電流基準信号Irlと変換器電流信号Iとを取込んで順変換器位相制御信号Θr1を出力する。従って、電流基準信号Irlが電流許容変化率Ilの範囲内であるから変換器電流Idが急増または急減することなく、同期機6の出力トルクが出力トルク許容変化率内に抑えられる。
【0071】
このように、本実施例では、同期機6の界磁電流Ifが逆変換器電圧信号V2と回転周波数fに比例することに着目して界磁電流Ifを用いて電流許容変化率Ilを求めた。
【0072】
なお、図4に示すように界磁電流Ifの変わりに界磁電圧Vfを用いても同様に実施できる。
【0073】
この場合、界磁電圧変圧器34と界磁電圧検出器35を追設し次の式(5)によって電流許容変化率Ilを演算する。
【0074】
【数5】
Figure 0003741384
【0075】
上記のようにしても界磁電圧Vfは、逆変換器電圧信号V2と回転周波数fとの比に比例するから第2実施例または第3実施例と同様に実施できる。
【0076】
このように第3実施例によれば、同期機の界磁電圧または界磁電流のいずれかと逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め定めた出力トルク許容変化率とによって電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0079】
図5は、本発明の第4実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【0077】
図5が従来例を示す図8と同一符号は、同一部分または相当部分を示し、図5が図8と異なる主な点は、変化率制限器30と変化率演算器31Eとを追設したことである。
【0078】
変化率制限器30は、演算された電流許容変化率Il内に電流基準信号Irを制限して出力するものである。変化率演算器31Eは、逆変換器電圧信号V2と同期機周波数信号fsと所定の値cosψと出力トルク許容変化率Telとを用いて電流許容変化率Ilを演算するものである。
【0079】
以上の構成で、まず、変化率演算器31Eへ逆変換器電圧信号V2と同期機周波数信号fsと、さらに、転流余裕角γ2と逆変換器位相制御信号Θr2とに相当する所定値cosψと出力トルク許容変化率Telが入力される。これに伴い、変化率演算器31Eによっても次の式(6)に従って電流許容変化率Ilが演算される。
【0080】
【数6】
Figure 0003741384
【0081】
上記演算された電流許容変化率Ilが変化率制限器30へ設定される。
【0082】
変化率制限器30では、電流基準信号Irを入力して電流基準信号Irが電流許容変化率Il内のとき、そのまま電流基準信号Irを電流基準信号Irlとして出力する一方、電流基準信号Irが電流許容変化率Ilの範囲外のとき制限された電流基準信号Irlが出力される。
【0083】
次に、電流調整器17では、電流基準信号Irlと変換器電流信号Iとを取込んで順変換器位相制御信号Θr1を出力する。従って、電流基準信号Irlが電流許容変化率Ilの範囲内であるから変換器電流Idが急増または急減することなく、同期機6の出力トルクが出力トルク許容変化率Tel内に抑えられる。
【0084】
本実施例では、通常限られた運転範囲では転流余裕角γ2と逆変換器位相制御信号Θr2は所定の固定値となることに着目して所定の固定値cosψを用いて電流許容変化率Ilを求めた。
【0085】
このように第4実施例によれば、変化率演算器により同期機の出力電圧とその周波数と予め定めた出力トルク許容変化率と所定の固定値とを用いて電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0086】
図6は、本発明の第5実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【0087】
図6が従来例を示す図8と同一符号は、同一部分または相当部分を示し、図6が図8と異なる主な点は、変化率制限器30と変化率演算器31Fと変流器32と界磁電流検出器33とを追設したことである。
【0088】
変化率制限器30は、演算された電流許容変化率Il内に電流基準信号Irを制限して出力するものである。変化率演算器31Fは、界磁電流Ifと所定の値cosψと出力トルク許容変化率Telとを用いて電流許容変化率Ilを演算するものである。
【0089】
変流器32は、同期機6の界磁電流Ifを検出するためのものである。界磁電流検出器33は、変流器32からの信号を取込んで界磁電流Ifを出力するものである。
【0090】
以上の構成で、まず、変化率演算器31Fへ界磁電流Ifと所定のcosψと出力トルク許容変化率Telとが入力される。これに伴い、変化率演算器31Fによって、次の式(7)に従って電流許容変化率Ilが演算される。
【0091】
【数7】
Figure 0003741384
【0092】
上記演算された電流許容変化率Ilが変化率制限器30へ設定される。
【0093】
変化率制限器30では、電流基準信号Irを入力して電流基準信号Irが電流許容変化率Il内のとき、そのまま電流基準信号Irを電流基準信号Irlとして出力する一方、電流基準信号Irが電流許容変化率Ilの範囲外のとき制限された電流基準信号Irlが出力される。
【0094】
次に、電流調整器17では、電流基準信号Irlと変換器電流信号Iとを取込んで順変換器位相制御信号Θr1を出力する。従って、電流基準信号Irlが電流許容変化率Ilの範囲内であるから変換器電流Idが急増または急減することなく、同期機6の出力トルクが出力トルク許容変化率内に抑えられる。
【0095】
本実施例では、同期機6の界磁電流Ifが逆変換器電圧信号V2と回転周波数fに比例することに着目して界磁電流Ifを用いて電流許容変化率Ilを求めた。
【0096】
なお、図7に示すように界磁電流Ifの代わりに界磁電圧Vfを用いても同様に実施できる。
【0097】
この場合、界磁電圧変圧器34と界磁電圧検出器35を追設し次の式(8)によって電流許容変化率Ilを演算する。
【0098】
【数8】
Figure 0003741384
【0099】
上記のようにしても界磁電圧Vfは、逆変換器電圧信号V2と回転周波数fとの比に比例するから第2実施例乃至第4実施例と同様に実施できる。
【0100】
このように第5実施例によれば、変化率演算器により同期機の界磁電圧あるいは界磁電流のいずれかと予め定めた出力トルク許容変化率と所定の固定値とを用いて電流許容変化率が演算され、この電流許容変化率が変化率制限器へ設定される。これにより、運転状況に即した電流許容変化率が設定され、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、所定の演算式に従って電流許容変化率を演算して変化率制限器へ設定するから運転状況に応じた電流許容変化率を設定でき、同期機の軸系の回転数が共振点付近にあっても軸系の振動が拡大するのを防止し、軸系に損傷を与えたり、軸系の疲労を拡大させることを回避できる。
【0103】
請求項の発明によれば、同期機の出力電圧とその周波数と逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め定めた出力トルク許容変化率を用いて電流許容変化率を演算し、電流許容変化率を変化率制限器へ設定するから運転状況に即した電流許容変化率を設定でき、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0104】
請求項の発明によれば、同期機の界磁電圧または界磁電流のいずれかと逆変換器の転流余裕角と逆変換器位相制御信号と予め定めた出力トルク許容変化率によって電流許容変化率を演算し、運転状況に即した電流許容変化率を設定し、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0105】
請求項の発明によれば、同期機の出力電圧とその周波数と予め定めた出力トルク許容変化率と所定の固定値とを用いて電流許容変化率を演算し、変化率制限器へ設定するから運転状況に即した電流許容変化率を設定でき、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【0106】
請求項の発明によれば、同期機の界磁電圧あるいは界磁電流のいずれかと予め定めた出力トルク許容変化率と所定の固定値とを用いて電流許容変化率を演算し、この電流許容変化率を変化率制限器へ設定するから運転状況に即した電流許容変化率を設定でき、同期機のトルクの急変動を防止でき、軸系の共振の拡大を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図4】図3に示す第3実施例の他実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図5】本発明の第4実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図6】本発明の第5実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図7】図6に示す第5実施例の他実施例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【図8】従来例を示す同期機のサイリスタ始動制御装置の構成図である。
【符号の説明】
1 入力変圧器
2 順変換器
3 直流リアクトル
4 逆変換器
5 交流リアクトル
6 同期機
7 界磁巻線
8 速度パルス発生器
9 順変換器同期電源変圧器
10 逆変換器同期電源変圧器
11 変流器
13 制御装置
14 速度検出器
15 速度調整器
16 電流検出器
17 電流調整器
18 順変換器パルス発生器
19 電圧検出器
20 余裕角演算器
22 逆変換器パルス発生器
30 変化率制限器
31 変化率演算器
32 変流器
33 界磁電流検出器
34 界磁電圧変圧器
35 界磁電圧検出器

Claims (5)

  1. 順変換器位相制御信号に基づくパルス制御信号により交流を直流へ変換する順変換器と、該順変換器の直流出力を逆変換器位相制御信号に基づくパルス制御信号により可変周波数の交流電力へ変換し同期機へ供給するサイリスタ素子による他励式の逆変換器と、前記同期機の回転周波数信号が指令周波数信号となるように電流基準信号を生成する速度調整器と、前記順変換器が出力する電流信号が前記電流基準信号となるように前記順変換器位相制御信号を出力する電流調整器と、転流重なり角を演算し、この転流重なり角と予め設定された前記逆変換器の転流余裕角とから転流重なり角を見込んだ逆変換器位相制御信号を演算出力する余裕角演算器と、前記同期機の出力トルクの急な変化を抑制するために所定の演算式に従って同期機の電流許容変化率を算出する変化率演算器と、前記変化率演算器により演算された電流許容変化率内に前記電流基準信号を制限する変化率制限器とを具備したことを特徴とする同期機のサイリスタ始動制御装置。
  2. 前記変化率演算器は、前記同期機の出力電圧とその周波数と前記逆変換器の転流余裕角と前記逆変換器位相制御信号と予め出力トルク許容変化率とを用いて、前記同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように前記電流許容変化率を演算することを特徴とする請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置。
  3. 前記変化率演算器は、前記同期機の界磁電圧あるいは界磁電流のいずれかと前記逆変換器の転流余裕角と前記逆変換器位相制御信号と予め出力トルク許容変化率とを用いて、前記同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように前記電流許容変化率を演算することを特徴とする請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置。
  4. 前記変化率演算器は、前記同期機の出力電圧とその周波数と予め定めた出力トルク許容変化率とを用いると共に、前記逆変換器の転流余裕角と前記逆変換器位相制御信号とに基づく所定の固定値とを用いて、前記同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように前記電流許容変化率を演算することを特徴とする請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置。
  5. 前記変化率演算器は、前記同期機の界磁電流あるいは界磁電圧のいずれかと予め定めた出力トルク許容変化率とを用いると共に、前記逆変換器の転流余裕角と前記逆変換器位相制御信号とに基づく所定の固定値とを用いて、前記同期機の出力トルクの変化率を所定の範囲内に制限するように前記電流許容変化率を演算することを特徴とする請求項記載の同期機のサイリスタ始動制御装置。
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