JP3639277B2 - 磁気記録媒体用ガラス基板、磁気記録媒体、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ等の記録媒体として使用される磁気記録媒体、その磁気記録媒体の基板として用いられるガラス基板、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク等の磁気記録媒体用ガラス基板としては、アルミニウム基板が広く用いられてきたが、磁気ディスクの小型・薄板化と、高密度記録化に伴い、アルミニウム基板に比べ強度及び平坦性に優れたガラス基板に徐々に置き換わりつつある。
【0003】
また、磁気ヘッドの方も高密度記録化に伴って、薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきている。したがって、ガラス基板を用いた磁気記録媒体を磁気抵抗型ヘッドで再生することが、これからの大きな潮流となることが予想されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガラス基板を用いた磁気記録媒体を磁気抵抗型ヘッドで再生する際、記録密度の向上を求めてヘッドのフライングハイト(浮上高さ)を下げると、再生の誤動作、あるいは、再生が不可能になる現象に遭遇することがあり、問題となっている。
【0005】
本発明は上記問題点にかんがみてなされたものであり、ヘッドのフライングハイトを下げた場合であっても、再生の誤動作や再生が不可能になる現象が生ずることがなく、磁気抵抗型ヘッドによる再生に適した磁気記録媒体及びその製造方法の提供を第一の目的とする。
【0006】
また、上記磁気記録媒体の基板として用いられるガラス基板及びその製造方法の提供を第二の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明者らは上述した再生の誤動作等の原因を究明したところ、磁気ディスク表面にガラス基板上のパーティクルによって形成された凸部が、サーマル・アスペリティ(ThermalAsperity)となって、磁気抵抗型ヘッドに熱が発生し、ヘッドの抵抗値を変動させ、電磁変換に悪影響を与えていることがその原因であることが判明した。
【0008】
また、このサーマル・アスペリティは、ヘッドクラッシュを調べるためのグライドテストを通過した磁気ディスクでも発生することがある。これは、サーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルとしては種々考えられるが、ヘッドが浮上する際にヘッドの浮上に急激な変化を起こさせる(浮上に悪影響を及ぼす)パーティクル(例えば、角張ったパーティクルや、ディスク表面に対して比較的急峻な立ち上がりを持ったパーティクルなど)がその一因として考えられる。
【0009】
次に、ガラス基板上にパーティクルが発生する原因を考察した。その結果、ガラス基板の端面(基板側面及び面取部)が鏡面になっていないため、ガラス基板、あるいは、ガラス基板を用いた磁気ディスクを、ポリカーボネート等からなる収納容器に出し入れする際に、収納容器の内周面とガラス基板等の端面とが接触し、端面から発塵したパーティクルがガラス基板あるいは磁気ディスク表面に付着していることが判った。
【0010】
そこで、本発明者らは、従来、ガラス基板の強度の観点からしか考察されていなかったガラス基板の端面(例えば、特開平7−230621号公報)に対し、全く異なる観点であるサーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルの発生防止の観点からガラス基板の端面を考察した。
その結果、化学エッチングを施した状態ではガラス基板の端面(基板側面及び面取部)は、なし地状態の面(光沢のない面)になっており、ガラス基板の端面を化学エッチングによって処理する等の従来行われていた端面処理レベルでは不十分であり、サーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルが発生しないようなレベルまで、機械研磨等により端面を精密研磨して、端面を従来にないレベルの鏡面とする必要があること見出し本第一発明を完成するに至った。なお、化学エッチングを施すと、ガラス基板の内周端面と外周端面との間で芯ずれを起こしやすいという問題があり、この面においてもガラス基板の端面に化学エッチングを施すことには問題がある。
また、ガラス基板の側面と面取部(連接面)とが交差する部位、及びガラス基板の主表面と面取部(連接面)とが交差する部位が角張っており、この角張った部位と収納容器とが擦れてパーティクルが発生することが判った。この認識に基づいて、上述したパーティクルが発生しないように角張った部位を曲面にする必要があること見出し本第二発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面が、鏡面である構成としてある。
【0012】
また、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面粗さRaが、1μm未満の鏡面である構成としてある。
【0013】
また、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面粗さRaが、0.001〜0.5μmの範囲の鏡面である構成としてある。
【0014】
また、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面粗さRaが、0.001〜0.1μmの範囲の鏡面である構成としてある。
【0015】
また、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面粗さが、Rmax:0.01〜4μmの範囲の鏡面である構成としてある。
【0016】
また、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面粗さが、Rmax:0.01〜2μmの範囲の鏡面である構成としてある。
【0017】
また、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板において、面取部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面粗さが、Rmax:0.01〜1μmの範囲の鏡面である構成としてある。
【0018】
本第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、磁性層を含む薄膜を形成するガラス基板の主表面とガラス基板の側面との間に面取りによる面取部を設けた磁気記録媒体用ガラス基板であって、ガラス基板の側面と面取部との間、及びガラス基板の主表面と面取部との間のうちの少なくとも一方に、半径0.2〜10mmの曲面を介在させたことを特徴とする構成としてある。
【0019】
さらに、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、上記本第一又は第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板であって、表面粗さRaが2nm以下の主表面を持つ構成としてある。
【0020】
また、本発明の磁気記録媒体は、上記本第一又は第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成した構成、
磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)対応の磁気記録媒体である構成、あるいは、
磁性層が、CoPt系の磁性層である構成としてある。
【0021】
さらに、本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、サーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルの発生を防止するためガラス基板の端面を鏡面研磨又は機械研磨する構成としてある。
【0022】
また、本第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、サーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルの発生を防止するためにガラス基板の側面と面取部とが交差する部位、及びガラス基板の主表面と面取部とが交差する部位のうちの少なくとも一方を研磨して曲面にすることを特徴とする構成としてある。
【0023】
さらに、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、上記製造方法において、研磨が、研磨剤、固定砥粒、遊離砥粒、スラリーから選ばれた少なくとも一種と、研磨ブラシ、研磨パッド、砥石から選ばれた一種とによって行われる構成としてある。
【0024】
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、上記製造方法によって製造された磁気記録媒体用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成する構成としてある。
【0025】
【作用】
本第一発明では、ガラス基板の端面を従来にないレベルの鏡面としているので、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがなく、サーマル・アスペリティによる再生機能の低下を防止することができる。特に、磁気抵抗型ヘッドで再生を行う磁気記録媒体にとって必要不可欠の技術である。
【0026】
本第二発明では、ガラス基板の端面部分における面取部の両端の角張った部位を曲面としてあるので、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがなく、サーマル・アスペリティによる再生機能の低下を防止することができる。特に、磁気抵抗型ヘッドで再生を行う磁気記録媒体にとって必要不可欠の技術である。
【0027】
本第一及び第二発明では、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがないので、ガラス基板上に磁性層等を形成して磁気記録媒体を製造する際にガラス基板の主表面にサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって形成される凸部が発生せず、より高いレベルでヘッドクラッシュを防止できる。
【0028】
同様に、磁気記録媒体の記録・再生面においてもサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって形成される凸部が発生せず、より高いレベルでヘッドクラッシュを防止できる。
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
まず、本第一発明について説明する。
本第一発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、ガラス基板の面取部及び側壁部(側面部)のうちの少なくとも一方の面の表面粗さが所定の値の鏡面であることを特徴とする。
【0031】
本第一発明の目的を達成するためにはガラス基板の面取部及び/又は側壁部(以下、端面という)の表面粗さRaは、Ra:1μm未満、好ましくは、Ra:0.001〜0.5μm、さらに好ましくは、Ra:0.001〜0.1μm、より以上に好ましくは、Ra:0.001〜0.05μmである。同様に、端面の表面粗さRmaxは、Rmax:0.01〜4μm、好ましくは、Rmax:0.01〜2μm、さらに好ましくは、Rmax:0.01〜1μm、より以上に好ましくは、Rmax:0.01〜0.5μmである。
なお、ガラス基板の面取部又は側壁部のいずれか一方の表面粗さが上記範囲の鏡面であれば、その面に基づくサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルの発生を抑制できる。
特に、本第一発明では、面取部を形成した後に、この面取部に上述したような鏡面加工を施すことにより、ガラス基板を収納容器に出し入れする際、ガラス基板が斜めになって容器と接触するときに発生するパーティクルを効果的に抑えることができる。また、通常の面取り加工を施した状態ではその面取部の表面が粗れておりパーティクル発生の原因となる傾向が側壁部に比べ大きいので、面取部に鏡面加工を施すことは、パーティクルの発生を抑制するのに効果的である。
なお、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルの発生をより完全に抑制するためには、面取部及び側壁部の両方の表面粗さが所定の値の鏡面であることが好ましい。同様に、表面粗さRa及びRmaxの両方が所定の範囲であることが好ましい。
本第一発明でいう「ガラス基板の端面」には内周端面と外周端面とが含まれる。サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルの発生をより完全に抑制するためには、ガラス基板の内周端面と外周端面の両方の表面粗さが所定の値の鏡面であることが好ましい。
なお、ガラス基板の主表面(磁性薄膜等が形成される面)についても、サーマル・アスペリティによる弊害を考慮して、表面粗さRaを2nm以下にすることが好ましい。
【0032】
ガラス基板の端面の表面粗さを上記範囲の鏡面とすることにより、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがなく、サーマル・アスペリティによる再生機能の低下を防止することができる。特に、磁気抵抗型ヘッドで再生を行う磁気記録媒体にとって効果が著しい。
【0033】
次に、本第二発明について説明する。
本第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、図2に示すように、ガラス基板1の側壁部(側面)2と面取部(連接面)3との間、又はガラス基板1の主表面4と面取部(連接面)3との間、すなわち、ガラス基板の端面部分5における角張った部位6の少なくとも一方に、半径0.2〜10mmの曲面7を介在させたことを特徴とする。
なお、本第二発明でいう「ガラス基板の端面部分における角張った部位」には内周端面及び外周端面における角張った部位が含まれる。
【0034】
本第二発明の目的を達成するためには上記曲面は、好ましくは、半径0.2〜2mm、さらに好ましくは、半径0.2〜1mmである。
【0035】
上記曲面部分の表面粗さRaは、Ra:1μm未満、好ましくは、Ra:0.001〜0.5μm、さらに好ましくは、Ra:0.001〜0.1μm、より以上に好ましくは、Ra:0.001〜0.05μmである。同様に、曲面部分の表面粗さRmaxは、Rmax:0.01〜4μm、好ましくは、Rmax:0.01〜2μm、さらに好ましくは、Rmax:0.01〜1μm、より以上に好ましくは、Rmax:0.01〜0.5μmである。
【0036】
なお、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルの発生を完全に防止するには、ガラス基板の側壁部及び面取部の表面粗さRaは、Ra:1μm未満、好ましくは、Ra:0.001〜0.5μm、さらに好ましくは、Ra:0.001〜0.1μm、より以上に好ましくは、Ra:0.001〜0.05μmである。同様に、側壁部及び面取部の表面粗さRmaxは、Rmax:0.01〜4μm、好ましくは、Rmax:0.01〜2μm、さらに好ましくは、Rmax:0.01〜1μm、より以上に好ましくは、Rmax:0.01〜0.5μmとする必要がある。
また、ガラス基板の主表面(磁性薄膜等が形成される面)についても、サーマル・アスペリティによる弊害を考慮して、表面粗さRaを2nm以下にすることが好ましい。
【0037】
ガラス基板の端面部分における角張った部位を曲面とすることにより、この角張った部位に起因して、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルがほとんど発生することがなく、サーマル・アスペリティによる再生機能の低下を防止することができる。特に、磁気抵抗型ヘッドで再生を行う磁気記録媒体にとって効果が著しい。
【0038】
上記本第一発明及び第二発明において、ガラス基板の端面(面取部及び側壁部)の表面粗さを上記範囲の鏡面とするには、あるいは、ガラス基板の端面部分における角張った部位を曲面とするには、例えば、研磨剤、固定砥粒、遊離砥粒、スラリー等を使用した、研磨ブラシ、軟質ポリシャや硬質ポリシャ等の研磨パッド、砥石等による研磨などを適宜組み合わせた機械研磨(物理的、力学的研磨)による鏡面研磨等を端面部分又は角張った部位に施す。なお、これらの機械研磨は、必要な表面粗さの鏡面を得るため、異なる種類の機械研磨、あるいは、ポリシャや研磨剤の種類や粒径等を異とする機械研磨等を適宜組み合わせて実施できる。
ガラス基板の端面部分における角張った部位の研磨と、ガラス基板の側壁部及び面取部の研磨は、研磨方法やその条件等を選択することで同時に行うことができ、あるいは、別々に行うこともできる。
【0039】
ここで、軟質ポリシャとしては、例えば、スウェード、ベロアを素材とするもの等が挙げられ、硬質ポリシャとしては、例えば、硬質ベロア、ウレタン発砲、ピッチ含浸スウェード等が挙げられる。また、研磨剤として、酸化セリウム(CeO2)、アルミナ(γ−Al2O3)、べんがら(Fe2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)などが挙げられる。
【0040】
ガラス基板の端面部分(角張った部位、側壁部及び面取部)の機械研磨による鏡面研磨は、ガラス基板の研削、研磨工程のいずれの工程の後に行ってもよく、あるいは、各工程の後に行ってもよい。
研削、研磨の工程は、通常、大きく分けて、(1)荒ずり(粗研削)、(2)砂掛け(精研削、ラッピング)、(3)第一研磨(ポリッシュ)、(4)第二研磨(ファイナル研磨、ポリッシュ)の各工程からなる。なお、研削する前の面の状態によって、(1)荒ずり、(2)砂掛け、(3)第一研磨の何れか又は全ての工程を除いても良い。また、高精密プレスによってガラス基板を製造した場合にあっては、研削、研磨をしなくても良い。
【0041】
ガラス基板の端面部分(角張った部位、側壁部及び面取部)の機械研磨による鏡面研磨工程は、例えば、荒ずり(粗研削)工程後に行う以外に、砂掛け(精研削、ラッピング)工程後、あるいは、第一研磨(ポリッシュ)又は第二研磨(ファイナル研磨、ポリッシュ)工程後に行ってもよい。ラッピング工程の前にガラス基板端面の鏡面加工を行うと、ラッピング工程の際に、ラップの砂によりガラス基板端面が若干粗くなることがある。
【0042】
ガラス基板の種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。ガラス基板の材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。
【0043】
アルミノシリケートガラスとしては、SiO2:62〜75重量%、Al2O3:5〜15重量%、Li2O:4〜10重量%、Na2O:4〜12重量%、ZrO2:5.5〜15重量%を主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2の重量比が0.5〜2.0、Al2O3/ZrO2の重量比が0.4〜2.5である化学強化用ガラス等が好ましい。
また、ZrO2の未溶解物が原因で生じるガラス基板表面の突起をなくすためには、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZrO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、Li 2 Oを7〜16%、Na2Oを4〜14%含有する化学強化用ガラス等を使用することが好ましい。
このような組成のアルミノシリケートガラス等は、化学強化することによって、抗折強度が増加し、圧縮応力層の深さも深く、ヌープ硬度にも優れる。
【0044】
本第一及び第二発明では、耐衝撃性や耐振動性等の向上を目的として、ガラス基板の表面に低温イオン交換法による化学強化処理を施すことができる。
ここで、化学強化方法としては、従来より公知の化学強化法であれば特に制限されないが、例えば、ガラス転移点の観点から転移温度を超えない領域でイオン交換を行う低温型化学強化などが好ましい。化学強化に用いるアルカリ溶融塩としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、あるいは、それらを混合した硝酸塩などが挙げられる。
【0045】
上記本第一及び第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、ガラス基板端面から発生する微細なパーティクルを嫌う光磁気ディスク用のガラス基板や、光ディスクなどの電子光学用ディスク基板としても利用できる。
【0046】
次に、本発明の磁気記録媒体について説明する。
【0047】
本発明の磁気記録媒体は、上記本第一及び第二発明の磁気記録媒体用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成したものである。
【0048】
本発明の磁気記録媒体では、ガラス基板の端面部分(角張った部位、側壁部及び面取部)からサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがないので、ガラス基板上に磁性層等を形成して磁気記録媒体を製造する際にガラス基板の主表面にサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって形成される凸部が発生せず、より高いレベルでヘッドクラッシュを防止できる。特に、磁気抵抗型ヘッドによって再生を行う磁気記録媒体にとって、磁気抵抗型ヘッドの機能を十分に引き出すことができる。また、磁気抵抗型ヘッドに好適に使用することができるCoPt系等の磁気記録媒体としてもその性能を十分に引き出すことができる。
【0049】
同様に、磁気記録媒体の記録・再生面においてもサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって形成される凸部が発生せず、より高いレベルでヘッドクラッシュを防止できる。
【0050】
また、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって、磁性層等の膜に欠陥が発生しエラーの原因となるということもない。
【0051】
磁気記録媒体は、通常、磁気ディスク用ガラス基板上に、下地層、磁性層、保護層、潤滑層を順次積層して製造する。
【0052】
磁気記録媒体は、通常、所定の平坦度、表面粗さを有し、必要に応じ表面の化学強化処理を施した磁気ディスク用ガラス基板上に、下地層、磁性層、保護層、潤滑層を順次積層して製造する。
【0053】
本発明の磁気記録媒体における下地層は、磁性層に応じて選択される。
【0054】
下地層としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Alなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料からなる下地層等が挙げられる。Coを主成分とする磁性層の場合には、磁気特性向上等の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。また、下地層は単層とは限らず、同一又は異種の層を積層した複数層構造とすることもできる。例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、CrV/CrV、Al/Cr/CrMo、Al/Cr/Cr、Al/Cr/CrV、Al/CrV/CrV等の多層下地層等が挙げられる。
【0055】
本発明の磁気記録媒体における磁性層の材料は特に制限されない。
【0056】
磁性層としては、例えば、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPtや、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrTaPt、CoCrPtSiOなどの磁性薄膜が挙げられる。磁性層は、磁性膜を非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrVなど)で分割してノイズの低減を図った多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrTaPt/CrMo/CoCrTaPtなど)としてもよい。
【0057】
磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)対応の磁性層としては、Co系合金に、Y、Si、希土類元素、Hf、Ge、Sn、Znから選択される不純物元素、又はこれらの不純物元素の酸化物を含有させたものなども含まれる。
【0058】
また、磁性層としては、上記の他、フェライト系、鉄−希土類系や、SiO2、BNなどからなる非磁性膜中にFe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子が分散された構造のグラニュラーなどであってもよい。また、磁性層は、内面型、垂直型のいずれの記録形式であってもよい。
【0059】
本発明の磁気記録媒体における保護層は特に制限されない。
【0060】
保護層としては、例えば、Cr膜、Cr合金膜、カーボン膜、ジルコニア膜、シリカ膜等が挙げられる。これらの保護膜は、下地層、磁性層等とともにインライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護膜は、単層としてもよく、あるいは、同一又は異種の膜からなる多層構成としてもよい。
【0061】
本発明では、上記保護層上に、あるいは上記保護層に替えて、他の保護層を形成してもよい。例えば、上記保護層に替えて、Cr膜の上にテトラアルコキシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO2)膜を形成してもよい。
【0062】
本発明の磁気記録媒体における潤滑層は特に制限されない。
【0063】
潤滑層は、例えば、液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈し、媒体表面にディッピング法、スピンコート法、スプレイ法によって塗布し、必要に応じ加熱処理を行って形成する。
【0064】
【実施例】
以下、実施例にもとづき本発明をさらに具体的に説明する。
【0065】
まず、本第一発明にかかる実施例について説明する。
実施例1
【0066】
(1)荒ずり工程
まず、ダウンドロー法で形成したシートガラスから、研削砥石で直径96mmφ、厚さ3mmの円盤状に切り出したアルミノシリケイトガラスからなるガラス基板を、比較的粗いダイヤモンド砥石で研削加工して、直径96mmφ、厚さ1.5mmに成形した。
この場合、ダウンドロー法の代わりに、溶融ガラスを、上型、下型、胴型を用いてダイレクト・プレスして、円盤状のガラス体を得てもよい。
【0067】
なお、アルミノシリケイトガラスとしては、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZrO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、Li 2 Oを7〜16%、Na2Oを4〜14%、を主成分として含有する化学強化用ガラス(例えば、モル%表示で、SiO2:67.0%、ZrO2:1.0%、Al2O3:9.0%、Li 2 O:12.0%、Na2O:10.0%を主成分として含有する化学強化用ガラス)を使用した。
【0068】
次いで、上記砥石よりも粒度の細かいダイヤモンド砥石で上記ガラス基板の両面を片面ずつ研削加工した。このときの荷重は100kg程度とした。これにより、ガラス基板両面の表面粗さをRmax(JISB0601で測定)で10μm程度に仕上げた。
【0069】
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を開けるとともに、外周端面も研削して直径を95mmφとした後、外周端面及び内周面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板端面の表面粗さは、Rmaxで14μm程度であった。
【0070】
(2)端面鏡面加工工程
次いで、スラリーを使用してブラシ研磨又は機械研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の内周及び外周端面の表面粗さが所定の範囲になるように鏡面研磨した。なお、試料1〜4に関しては、ブラシの回転数、研磨時間、研磨剤等を変化させることで、端面の表面粗さが良くなるように条件出しを行った。また、試料5に関しては、ウレタン系ポリシャを用いた機械研磨とした。
【0071】
上記端面鏡面加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0072】
(3)砂掛け(ラッピング)工程
次に、ガラス基板に砂掛け加工を施した。この砂掛け工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。砂掛け加工は、ラッピング装置を用いて行い、砥粒の粒度を#400、#1000と替えて2回行った。
【0073】
詳しくは、はじめに、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重Lを100kg程度に設定して、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。
【0074】
次いで、アルミナ砥粒の粒度を#1000に替えてラッピングを行い、表面粗さ(Rmax)2μm程度とした。
【0075】
上記砂掛け加工を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0076】
(4)第一研磨工程
次に、第一研磨工程を施した。この第一研磨工程は、上述した砂掛け工程で残留したキズや歪みの除去を目的とするもので、研磨装置を用いて行った。
【0077】
詳しくは、ポリシャ(研磨粉)として硬質ポリシャ(セリウムパッドMHC15:スピードファム社製)を用い、以下の研磨条件で第一研磨工程を実施した。
【0078】
研磨液:酸化セリウム+水
荷重:300g/cm2(L=238kg)
研磨時間:15分
除去量:30μm
下定盤回転数:40rpm
上定盤回転数:35rpm
内ギア回転数:14rpm
外ギア回転数:29rpm
【0079】
上記第一研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0080】
(5)第二研磨工程
次に、第一研磨工程で使用した研磨装置を用い、ポリシャを硬質ポリシャから軟質ポリシャ(ポリラックス:スピードファム社製)に替えて、第二研磨工程を実施した。研磨条件は、荷重を100g/cm2、研磨時間を5分、除去量を5μmとしたこと以外は、第一研磨工程と同様とした。
【0081】
上記第二研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0082】
(6)化学強化工程
次に、上記研削、研磨工程を終えたガラス基板に化学強化を施した。
化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を400℃に加熱し、300℃に予熱された洗浄済みのガラス基板を約3時間浸漬して行った。この浸漬の際に、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるようにホルダーに収納した状態で行った。
【0083】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板表層のリチウムイオン、ナトリウムイオンは、化学強化溶液中のナトリウムイオン、カリウムイオンにそれぞれ置換されガラス基板は強化される。
【0084】
ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100〜200μmであった。
【0085】
上記化学強化を終えたガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し約10分間維持した。
【0086】
上記急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した硫酸に浸漬し、超音波をかけながら洗浄を行った。
【0087】
上記の工程を経て得られたガラス基板の端面の表面粗さは図1に示す各部位(面取部A(長さ0.15mm)及びC(長さ0.15mm)、側壁部B(長さ0.35mm))において表1に示す通りであった。また、ガラス基板の主表面の表面粗さRaは0.5〜1nmであった。
なお、A,C面に比べB面の表面粗さの値が大きいのは、端面鏡面加工工程後に行われる研磨工程においてB面が若干粗れるためであると考えられる。
さらに、ガラス表面を精密検査したところサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルは認められなかった。
【0088】
【表1】
【0089】
(7)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面に、インライン式のスパッタリング装置を用いて、AlNのスパッタによるテクスチャー層、Cr下地層、CrMo下地層、CoPtCrTa磁性層、C保護層を順次成膜して磁気ディスクを得た。
【0090】
得られた磁気ディスクについてグライドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。また、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって、磁性層等の膜に欠陥が発生していないことも確認できた。
【0091】
なお、本発明のようにガラス基板の端面を鏡面研磨した本実施例(試料6〜13)と、ガラス基板の端面を化学エッチング処理した比較例(試料14〜15)と、ガラス基板の端面を研磨もエッチングもしない未処理品(試料16〜17)に関し、それぞれ成膜後の各100枚について、比較のためフライングハイトを1.1〜1.3インチとしてグライドテストを実施して膜下欠陥不良率(歩留まり)を調べたところ、表2に示す通り、本実施例の方が優れていることが判明した。
【0092】
【表2】
【0093】
このように、ガラス基板の端面を化学エッチング処理したものでは、本発明の目的を達成できないことが判る。なお、試料14〜15においてはガラス基板の端面が、なし地(光沢のない面)の状態であった。
【0094】
また、グライドテストを終えた本実施例の磁気ディスクについて、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったが、複数のサンプル(500枚)の全数についてサーマル・アスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
さらに、A面の表面粗さRa:0.04μm、Rmax:0.5μm、B面の表面粗さRa:0.07μm、Rmax:0.62μm、C面の表面粗さRa:0.05μm、Rmax:0.48μmの試料(端面研磨品)、及び端面未研磨品(それぞれ25枚、表裏で50面)について、表3に示す各種欠陥検査(certification test)を行ったところ、端面研磨品の方が欠陥が少なく優れていることが判明した。
なお、表3において、各記号は以下の内容を意味する。
「P−Mod」はポジティブモジュレーションエラー試験(Positive Moduration Error Test)を示し、緩やな突起を検出する試験を意味する。「N−Mod」はネガティブモジュレーションエラー試験(Negative Moduration Error Test)を示し、緩やなへこみを検出、評価する試験を意味する。
同様に、「Mis」はミッシングパルスエラー試験(Missing Pulse Error Test)を示し、磁性膜の欠落を検出、評価する試験を意味する。この場合、記号「C」は修正可能な(Corrective)欠落欠陥を示し、記号「U」は修正不可能な(Uncorrective)欠落欠陥を示し、「L」はエラービット長の長い(Long)欠落欠陥を示す。
「Spike」はスパイクパルスエラー試験(Spike Pulse Error Test)を示し、急峻な突起を検出、評価する試験を意味する。この場合、記号「C」、「U」、「L」の表す意味は上記と同様である。
「Extra」はエキストラパルスエラー試験(Extra Pulse Error Test)を示し、消し残し信号を検出、評価する試験を意味する。この場合、記号「C」、「U」、「L」の表す意味は上記と同様である。
上記表3に示す各試験は、読み取り/書き込みヘッドとしてMRヘッドを用い、読み取り/書き込みのトラック幅R/W=3.0/2.4μm、フライングハイト=50μm、周速=7m/secの条件下、信号の書き込み、再生、消去を行い実施した。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例2〜3
アルミノシリケートガラスの代わりにソーダライムガラス(実施例2)、ソーダアルミノケイ酸ガラス(実施例3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを得た。
【0097】
その結果、ソーダライムガラスの場合、ガラス基板の外周端面と内周端面の表面粗さは、Rmaxで1.5μmとなり、アルミノシリケートガラスに比べやや粗面ではあったが、実用上問題はなかった。
【0098】
実施例4
実施例1で得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面に、Al(膜厚50オングストローム)/Cr(1000オングストローム)/CrMo(100オングストローム)からなる下地層、CoPtCr(120オングストローム)/CrMo(50オングストローム)/CoPtCr(120オングストローム)からなる磁性層、Cr(50オングストローム)保護層をインライン型スパッタ装置で形成した。
【0099】
上記基板を、シリカ微粒子(粒経100オングストローム)を分散した有機ケイ素化合物溶液(水とIPAとテトラエトキシシランとの混合液)に浸し、焼成することによってSiO2からなるテクスチャー機能を持った保護層を形成し、さらに、この保護層上をパーフロロポリエーテルからなる潤滑剤でディップ処理して潤滑層を形成して、MRヘッド用磁気ディスクを得た。
【0100】
得られた磁気ディスクについてグライドテストを実施したところ、ヒットやクラッシュは認められなかった。また、磁性層等の膜に欠陥が発生していないことも確認できた。さらに、磁気抵抗型ヘッドによる再生試験の結果、サーマル・アスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
【0101】
実施例5
下地層をAl/Cr/Crとし、磁性層をCoNiCrTaとしたこと以外は実施例4と同様にして薄膜ヘッド用磁気ディスクを得た。
【0102】
上記磁気ディスクについて実施例4と同様のことが確認された。
【0103】
次に、本第二発明にかかる実施例について説明する。
実施例6
【0104】
(1)荒ずり工程
まず、ダウンドロー法で形成したシートガラスから、研削砥石で直径96mmφ、厚さ3mmの円盤状に切り出したアルミノシリケイトガラスからなるガラス基板を、比較的粗いダイヤモンド砥石で研削加工して、直径96mmφ、厚さ1.5mmに成形した。
この場合、ダウンドロー法の代わりに、溶融ガラスを、上型、下型、胴型を用いてダイレクト・プレスして、円盤状のガラス体を得てもよい。
【0105】
なお、アルミノシリケイトガラスとしては、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZrO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、Li 2 Oを7〜16%、Na2Oを4〜14%、を主成分として含有する化学強化用ガラス(例えば、モル%表示で、SiO2:67.0%、ZrO2:1.0%、Al2O3:9.0%、Li 2 O:12.0%、Na2O:10.0%を主成分として含有する化学強化用ガラス)を使用した。
【0106】
次いで、上記砥石よりも粒度の細かいダイヤモンド砥石で上記ガラス基板の両面を片面ずつ研削加工した。このときの荷重は100kg程度とした。これにより、ガラス基板両面の表面粗さをRmax(JISB0601で測定)で10μm程度に仕上げた。
【0107】
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を開けるとともに、外周端面も研削して直径を95mmφとした後、外周端面及び内周面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板の端面(側面及び面取部)の表面粗さは、Rmaxで14μm程度であった。
【0108】
(2)端面鏡面加工工程
次いで、スラリーを使用したブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面部分(角張った部位、側面及び面取部)の研磨を行い、角張った部位を半径0.2〜10mmの曲面とするとともに、それらの表面粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度とした。
【0109】
上記端面鏡面加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0110】
(3)砂掛け(ラッピング)工程
次に、ガラス基板に砂掛け加工を施した。この砂掛け工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。砂掛け加工は、ラッピング装置を用いて行い、砥粒の粒度を#400、#1000と替えて2回行った。
【0111】
詳しくは、はじめに、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重Lを100kg程度に設定して、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。
【0112】
次いで、アルミナ砥粒の粒度を#1000に替えてラッピングを行い、表面粗さ(Rmax)2μm程度とした。
【0113】
上記砂掛け加工を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0114】
(4)第一研磨工程
次に、第一研磨工程を施した。この第一研磨工程は、上述した砂掛け工程で残留したキズや歪みの除去を目的とするもので、研磨装置を用いて行った。
【0115】
詳しくは、ポリシャ(研磨粉)として硬質ポリシャ(セリウムパッドMHC15:スピードファム社製)を用い、以下の研磨条件で第一研磨工程を実施した。
【0116】
研磨液:酸化セリウム+水
荷重:300g/cm2(L=238kg)
研磨時間:15分
除去量:30μm
下定盤回転数:40rpm
上定盤回転数:35rpm
内ギア回転数:14rpm
外ギア回転数:29rpm
【0117】
上記第一研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0118】
(5)第二研磨工程
次に、第一研磨工程で使用した研磨装置を用い、ポリシャを硬質ポリシャから軟質ポリシャ(ポリラックス:スピードファム社製)に替えて、第二研磨工程を実施した。研磨条件は、荷重を100g/cm2、研磨時間を5分、除去量を5μmとしたこと以外は、第一研磨工程と同様とした。
【0119】
上記第二研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
【0120】
(6)化学強化工程
次に、上記研削、研磨工程を終えたガラス基板に化学強化を施した。
化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を400℃に加熱し、300℃に予熱された洗浄済みのガラス基板を約3時間浸漬して行った。この浸漬の際に、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるようにホルダーに収納した状態で行った。
【0121】
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板表層のリチウムイオン、ナトリウムイオンは、化学強化溶液中のナトリウムイオン、カリウムイオンにそれぞれ置換されガラス基板は強化される。
【0122】
ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100〜200μmであった。
【0123】
上記化学強化を終えたガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し約10分間維持した。
【0124】
上記急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した硫酸に浸漬し、超音波をかけながら洗浄を行った。
【0125】
上記の工程を経て得られたガラス基板を収納容器に出し入れした後、ガラス基板表面を精密検査したところサーマル・アスペリティの原因となるパーティクルは認められなかった。
【0126】
(7)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面に、インライン式のスパッタリング装置を用いて、AlNのスパッタによるテクスチャー層、Cr下地層、CrMo下地層、CoPtCrTa磁性層、C保護層を順次成膜して磁気ディスクを得た。
【0127】
得られた磁気ディスクについてグライドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。また、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルによって、磁性層等の膜に欠陥が発生していないことも確認できた。
【0128】
さらに、グライドテストを終えた本実施例の磁気ディスクについて、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったが、複数のサンプル(500枚)の全数についてサーマル・アスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
また、実施例1と同様にグライドテスト及び欠陥検査(certification test)を行ったところ、膜下欠陥不良率の低下、及び欠陥減少率の向上が認められた。
【0129】
実施例7〜8
アルミノシリケートガラスの代わりにソーダライムガラス(実施例7)、ソーダアルミノケイ酸ガラス(実施例8)を用いたこと以外は実施例6と同様にして、磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを得た。
【0130】
その結果、ソーダライムガラスの場合、ガラス基板の端面部分の表面粗さは、Rmaxで1.5μmとなり、アルミノシリケートガラスに比べやや粗面ではあったが、実用上問題はなかった。
【0131】
実施例9
実施例6で得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面に、Al(膜厚50オングストローム)/Cr(1000オングストローム)/CrMo(100オングストローム)からなる下地層、CoPtCr(120オングストローム)/CrMo(50オングストローム)/CoPtCr(120オングストローム)からなる磁性層、Cr(50オングストローム)保護層をインライン型スパッタ装置で形成した。
【0132】
上記基板を、シリカ微粒子(粒経100オングストローム)を分散した有機ケイ素化合物溶液(水とIPAとテトラエトキシシランとの混合液)に浸し、焼成することによってSiO2からなるテクスチャー機能を持った保護層を形成し、さらに、この保護層上をパーフロロポリエーテルからなる潤滑剤でディップ処理して潤滑層を形成して、MRヘッド用磁気ディスクを得た。
【0133】
得られた磁気ディスクについてグライドテストを実施したところ、ヒットやクラッシュは認められなかった。また、磁性層等の膜に欠陥が発生していないことも確認できた。さらに、磁気抵抗型ヘッドによる再生試験の結果、サーマル・アスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
【0134】
実施例10
下地層をAl/Cr/Crとし、磁性層をCoNiCrTaとしたこと以外は実施例9と同様にして薄膜ヘッド用磁気ディスクを得た。
【0135】
上記磁気ディスクについて実施例9と同様のことが確認された。
【0136】
以上好ましい実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施例に限定されるものではない。
【0137】
例えば、ガラス基板の種類や磁性層の種類は実施例のものに限定されない。
【0138】
【発明の効果】
以上説明したように本第一発明では、ガラス基板の端面を従来にないレベルの鏡面としているので、ヘッドクラッシュや、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがなく、サーマル・アスペリティによる再生機能の低下を防止することができる。
【0139】
また、本第二本発明では、ガラス基板の端面部分における面取部の両端の角張った部位を曲面としてあるので、ヘッドクラッシュや、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルが発生することがなく、サーマル・アスペリティによる再生機能の低下を防止することができる。
【0140】
さらに、本発明では、サーマル・アスペリティの原因となるパーティクルに起因する不良を回避でき、より高品質の磁気記録媒体が高歩留まりで得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気記録媒体用ガラス基板の端面を示す拡大図である。
【図2】磁気記録媒体用ガラス基板の端面を示す拡大図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
A 面取部
B 側壁部
C 面取部
2 側壁部(側面)
3 面取部(連接面)
4 主表面
5 端面部分
6 角張った部位
7 曲面
Claims (10)
- 磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)対応の磁気記録媒体の基板として用いられるアルミノシリケートガラス基板であって、
磁性層を含む薄膜を形成すべく設けられたガラス基板の主表面と、端面部とが設けられ、前記端面部は、ガラス基板の側面である側壁部と、前記主表面と側壁部との間に面取りによる面取部とを含み、且つ、前記面取り部及び側壁部のうちの少なくとも一方の表面は、表面粗さRaが1μm未満、表面粗さRmaxが0.01〜4μmの範囲の鏡面とされたガラス基板において、該ガラス基板の少なくとも前記端面部は化学強化されてなり、
前記側壁部と面取部との間、及び前記主表面と面取部との間のうち、少なくとも一方に半径0.2〜10mmの曲面を介在させたことを特徴とする磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板。 - 前記面取部及び前記側壁部の両方の表面粗さRa及び表面粗さRmaxが、前記所定の値の鏡面であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板。
- 前記ガラス基板の内周端面と外周端面の両方の表面粗さRa及び表面粗さRmaxが、前記所定の値の鏡面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板。
- 請求項1乃至3のいずれか一に記載の磁気記録媒体用ガラス基板であって、表面粗さRaが2nm以下の主表面を持つことを特徴とする磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板。
- 請求項1乃至4のいずれか一に記載の磁気記録媒体用ガラス基板であって、前記曲面部分の表面粗さRaは、Ra:1μm未満、前記曲面部分の表面粗さRmaxは、Rmax:0.01〜4μm、であることを特徴とする磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板。
- 請求項1乃至5のいずれか一に記載の磁気記録媒体用ガラス基板であって、モル表示で、SiO 2 を57〜74%、ZrO 2 を0〜2.8%、Al 2 O 3 を3〜15%、Li 2 Oを7〜16%、Na 2 Oを4〜14%、を主成分として含有することを特徴とする磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板。
- 請求項1乃至6のいずれか一に記載の磁気記録媒体用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成したことを特徴とする磁気記録媒体。
- 請求項1乃至6のいずれか一に記載の磁気記録媒体用ガラス基板を製造するための、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
サーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルの発生を防止するために、スラリーを使用してブラシ研磨により、ガラス基板の端面を鏡面研磨し、化学強化を行うことを特徴とする磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板の製造方法。 - 請求項1乃至6のいずれか一に記載の磁気記録媒体用ガラス基板を製造するための磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法、又は請求項8に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
前記側壁部と面取部との間、及び前記主表面と面取部との間のうち、少なくとも一方に前記曲面を介在させ、サーマル・アスペリティを引き起こすパーティクルの発生を防止するために、
スラリーを使用してブラシ研磨により、ガラス基板の側面と面取部とが交差する部位、及びガラス基板の主表面と面取部とが交差する部位を鏡面研磨し、化学強化を行うことを特徴とする磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板の製造方法。 - 請求項8又は9に記載の方法によって製造された磁気記録媒体用の化学強化ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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