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JP3639026B2 - 静電像現像用キャリアおよびその製造方法、現像剤並びに画像形成方法 - Google Patents

静電像現像用キャリアおよびその製造方法、現像剤並びに画像形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において静電像の現像に用いられる静電像現像用キャリアおよびその製造方法、現像剤並びに画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、静電像を利用した画像形成方法としては、トナーとキャリアとから構成されるいわゆる二成分現像剤により磁気ブラシを形成させ、これにより、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像して顕像化させる方法が広く利用されている。
このような二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄粉やフェライトなどの磁性体粒子よりなるものが用いられており、さらにそのような磁性体粒子の表面に適宜の樹脂による被覆樹脂層を形成してなる樹脂被覆キャリアも用いられている。このような樹脂被覆キャリアによれば、被覆樹脂層により、好適な帯電性を発揮させることができると共に、トナーの一部がキャリア粒子の表面に融着するいわゆるスペントトナーの発生を有効に防止することができ、現像剤に大きな耐久性が得られる。
【0003】
而して、最近においては、所期の画像形成を高速で行うことが要請されているが、静電潜像担持体に形成された静電潜像を高速で現像するためには、内部に磁石を有してなる現像スリーブを備えたいわゆる磁気ブラシ式現像器において、当該現像スリーブを高速回転させて静電像現像剤の搬送速度を大きくすることが必要である。
【0004】
しかしながら、このように現像スリーブを高速回転させると、現像剤が飛散する割合が大きくなり、その結果、飛散したキャリアが静電潜像担持体における画像に付着するようになるため、当該キャリアそれ自体が核となった画像抜けが発生し、そのため、良好な可視画像を形成することができないおそれがある。
現像スリーブを高速回転させたときにも現像剤が飛散しないようにするためには、現像剤を構成するキャリアの磁化を大きくして現像スリーブによる保持性を高めることが有効であるが、僅かな割合であっても磁化が低いキャリアが含有される現像剤を用いると、上記のキャリア付着が発生することがわかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のキャリアにおいては、その磁化の均一性が考慮されていないために、高速現像においては、キャリア付着による画像欠陥が生じやすいという問題点がある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、高速現像においても、キャリア付着による画像欠陥が生ずることのない静電像現像剤が得られる静電像現像用キャリアを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、当該キャリアを確実にかつ有利に製造することのできるキャリアの製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、当該キャリアによる静電像現像剤を提供することおよびそのような静電像現像剤を用いて、良好な可視画像が得られる画像形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る静電像現像用キャリアは、数平均一次粒子径Dnが0.1〜10μm、数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が1.0〜2.0の原料粉末の焼成体粉末よりなり、飽和磁化の値が10〜100emu/gである磁性体粒子を芯材粒子としてその表面に当該磁性体粒子に対して0.01〜15重量%の付着量で被覆樹脂層が形成されていることを特徴とする。
本発明の静電像現像剤は、上記のキャリアとトナーとからなることを特徴とする。
【0008】
本発明の静電像現像用キャリアの製造方法は、数平均一次粒子径Dnが0.1〜10μm、数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が1.0〜2.0の原料粉末を焼成処理する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成方法は、上記の静電像現像剤を、内部に磁石を有する現像スリーブを備えてなる現像器に供給して、当該現像スリーブに形成された磁気ブラシにより静電潜像担持体に担持された静電潜像を顕像化する工程を有し、
前記磁石による現像スリーブの表面における磁力をX(ガウス)、キャリアの飽和磁化をY(emu/g)とするとき、下記の条件が満足されること特徴とする。
条件(1) 300≦X≦1100
条件(2) 0.1X−50<Y<0.1X+20
【0010】
【作用】
本発明の静電像現像用キャリアは、それを構成する磁性体粒子が、特定の粒径に関する条件を満足するフェライト原料粉末を焼成処理して得られる、飽和磁化が特定の範囲にある磁性体粒子よりなるものであるため、磁化の程度が不足するキャリア粒子が含有される割合がきわめて小さく、磁気特性の均一性が十分に高いものである。
その結果、そのようなキャリアとトナーによる静電像現像剤を用いることにより、磁力の大きさが一定の範囲内にあり、かつキャリアの飽和磁化との間で特定の条件を満足する大きさの磁力を有する現像スリーブを備える現像器により、高速現像による場合においても、キャリアの飛散が生ずることが確実に防止され、その結果、キャリア粒子が静電潜像担持体に付着することに起因して生ずる画像欠陥を十分有効に防止することができ、常に良好な可視画像を形成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔キャリアの磁性体粒子〕
本発明において、キャリアの材質は、磁気分布の均一性が高いキャリアが得られることから、フェライトであることが好ましい。フェライトは、その組成が式(X2 O)a (Fe2 3 1-a または式(ZO)a (Fe2 3 1-a で示されるが、ここにaの値は0.05〜0.50であり、Xは1価の金属元素、Zは2価の金属元素であって、Cu、Zn、Co、Ni、Li、Be、Mgなどから選択されるものである。
【0012】
具体的に好ましいものは、Fe2 3 で示される鉄酸化物の成分と、周期律表IA族またはIIA族のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる軽金属グループから選択される金属元素の酸化物(以下「軽金属酸化物」という。)の成分を少なくとも1種含有してなる軽金属フェライトである。従って、式中のXはリチウム、カリウムおよびルビジウムから選ばれた少なくとも1種、Zはベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、特にLiO2 および/またはMgOを成分として含有する軽金属フェライトであることが好ましい。
【0013】
このような軽金属フェライトよりなるキャリアによれば、その比重が小さいために軽量であり、キャリアとして用いた場合に、大きな耐久性を有し、長い使用寿命が得られる。
【0014】
キャリアを構成するフェライトにおいて、上記の鉄酸化物以外の他の金属酸化物成分の割合は、全金属酸化物に対して5〜50モル%であることが好ましく、特に10〜45モル%であることが好ましい。当該他の金属酸化物成分の割合が50モル%を超える場合には、鉄酸化物成分の相対的割合が小さくなるために、キャリアとして必要な磁気特性を得ることが困難となり、良好な磁気ブラシを形成することができないために優れた画像を形成することが困難となる。
【0015】
キャリアを構成するフェライトには、リン成分が含有されていることが好ましく、これにより、キャリアは機械的強度の大きいものとなる。このようなリン成分を与える物質の具体例としては、例えば黄リン、赤リン、白リン、黒リン、紫リン、金属リン、リン酸化物などを挙げることができる。
リン成分は、キャリアを構成する物質の全体において2重量%以下の割合とされることが好ましく、特に0.01〜1重量%であることが更に好ましい。この割合が2重量%を超える場合には、得られるキャリアは、その磁気特性が劣ったものとなるおそれがある。
【0016】
本発明のキャリアは、フェライト成分となる鉄の酸化物などの鉄元素の化合物および他の金属の酸化物などの他の金属元素の化合物であって、焼成処理によって当該金属元素の酸化物を生成するものを原料物質として用い、特定の粒径および粒径分布を有するものを原料粉末とし、これを適宜の温度に焼成処理する方法によって製造することができる。
【0017】
例えば軽金属酸化物成分を生成させるための原料物質としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、硫化リチウムなどの酸素酸塩、ハロゲン化物、リチアキ石などの軽金属元素を含有する鉱物、その他を用いることができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0018】
原料粉末には、得られる磁性体粒子の電気的特性または帯電特性を調整するための成分となる物質、あるいは焼成促進剤を添加することができる。このような添加剤の具体例としては、V2 5 、As2 3 、Bi2 3 、Sb2 3 、PbO2 、CuO、B2 3 、SiO2 、およびCs、Nbなどの稀土類元素の化合物並びにCuSO4 、CuCl2 などの化合物がある。これらの添加量は1重量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のキャリアを製造するためには、次のような方法を用いることが好ましい。
(1)用いる原料物質を、各別に、あるいは混合して、例えばボールミルなどにより粉砕し、数平均一次粒子径Dnが0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmとなる範囲とし、かつ数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が1.0〜2.0である原料粉末を調製する。なお、数平均一次粒子径は、例えばレーザー式光散乱方式による粒径測定器によって求めることができる。
(2)上記の原料粉末に水溶性高分子物質および水を添加して分散処理することによりスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥することにより、原料粉末が分散された状態で水溶性高分子物質により結着されてなる粒子体を形成する。
(3)このようにして得られる焼成用原料粉体を焼成処理する。一般的なフェライトを得るための焼成処理の温度は1150〜1600℃程度である。
【0020】
本発明において、焼成処理は、酸化性要因を排除した条件下、すなわち還元性雰囲気下において、密閉状態で実施することが好ましい。
還元性雰囲気を実現するためには、焼成処理系に還元剤を共存させる手段を利用することができる。ここに還元剤としては、例えばカーボンブラックなどの専用の還元剤を用いることができる。
しかしながら、既述の例のように、焼成用原料物質を調製するために水溶性高分子物質が用いられている場合には、当該水溶性高分子物質が焼成処理工程において燃焼することによって還元作用が発揮されるので、当該水溶性高分子物質による還元作用によっても必要な還元性条件が実現されない場合に、他の還元剤を添加すればよい。また、カーボンブラックなどの還元剤を用いる場合には、上記のスラリーを調製する段階で当該還元剤を添加することが好ましい。
【0021】
本発明のキャリアは、飽和磁化の値(温度25℃における値をいう。)が10〜100emu/gであることが必要である。飽和磁化の値が10emu/g未満の場合には、キャリアの現像器における保磁力が小さいものとなり、キャリアの飛散を有効に防止することが困難となり、一方、100emu/gを超える場合には、後述する現像器において、現像スリーブに形成される磁気ブラシの穂が硬いものとなって、静電潜像担持体に一旦付着したトナーが後続の穂によって掃き取られる掃き目現象が生ずるおそれがある。
以上の磁気特性についての測定は、例えば横河電気社製の「直流磁化特性自動記録装置 3257−35型」により行うことができる。
【0022】
キャリアを構成する磁性体粒子は、その電気抵抗値が1×107 〜1×1013Ω・cmであることが好ましい。電気抵抗値が1×107 Ω・cmより小さい場合には、静電潜像担持体の表面からキャリア粒子へ電荷の注入が生じてキャリア付着が生じやすく、一方1×1013Ω・cmより大きい場合には、高濃度の画像を得ることが困難となる。
電気抵抗値の測定は、常温常湿環境下において2つの電極板間に、常温常湿環境下で調湿された試料粉末を厚さ約3mmで挟み込み、100Vの直流電圧を印加して30秒間が経過した後の電流値を測定し、算出することができる。
【0023】
キャリアを構成する磁性体粒子は、平均粒径が20〜300μmであることが好ましく、特に30〜200μmであることが好ましい。平均粒径が30μmより小さい場合には、静電潜像担持体に対するキャリア付着現象が生じやすく、一方300μmより大きい場合には、現像スリーブ上に形成される磁気ブラシの密度が小さくなるために良好な可視画像の形成が困難となる。
ここに、平均粒径は、湿式分散器を備えてなるレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパテック社製)により測定される体積基準の平均粒径を意味する。
【0024】
上記の磁性体粒子は、それを芯材粒子としてその表面に被覆樹脂層が形成されたものがキャリアとして用いられる。
【0025】
当該被覆樹脂層を構成する樹脂としては、公知の適当な樹脂を用いることができる。その具体例としては、例えばポリエチレンなどのオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化アルキル(メタ)アクリレート系共重合体などのフッ素樹脂、ポリメチルシリコーン、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルシリコーンなどのシリコーン樹脂、ポリスチレン、ポリクロルスチレン、ポリメチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリブチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートなどのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン系樹脂、ロジン変性樹脂、ポリアミド樹脂、その他を用いることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。これらのうち、特に好ましいものは、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂である。
【0026】
被覆樹脂層の付着量は、磁性体粒子に対して0.01〜15重量%の範囲内とされ、特に0.05〜10重量%であることが好ましい。
この割合が過小の場合には、被覆樹脂層の膜厚が過小となるために磁性体粒子の表面の一部が露出した状態となる結果、当該被覆樹脂層による安定した帯電性能を得ることができず、一方、過大の場合には、被覆樹脂層の膜厚が過大となるために被覆樹脂層が剥離する現象が生じ易くなる。
【0027】
磁性体粒子に対して被覆樹脂層を形成する方法としては、湿式法では浸漬法、スプレードライ法、流動化ベッド塗布法などを挙げることができ、乾式法では被覆樹脂層のための樹脂相を形成する材料として樹脂微粒子を用い、これを機械的衝撃力によって磁性体粒子に付着させて成膜する乾式機械的衝撃法などを挙げることができる。
【0028】
特に好ましい被覆樹脂層の形成方法は、磁性体粒子の表面に予め重合触媒を担持させておき、これを利用してエチレンなどの単量体を当該磁性体粒子の表面で重合させることにより重合体層を形成する表面重合被覆法であり、例えば特開昭60−106808号公報などに記載されている。
この表面重合被覆法によれば、磁性体粒子の表面に対する密着性がきわめて高い状態の被覆樹脂層が形成されるため、得られるキャリアは安定した帯電特性を有すると共に優れた耐久性を有するものとなる。
【0029】
この表面重合被覆法に用いられる単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、オクテン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどの脂肪族炭化水素系単量体が用いられる。また、他のビニル系単量体を用いることも可能である。特に単量体としてエチレンを用い、ポリエチレンよりなる被覆樹脂層を形成することが好ましい。
【0030】
〔トナー〕
上記の磁性体粒子よりなるキャリアは、適宜のトナーと混合されて二成分現像剤が構成される。ここに、トナーは特に限定されるものではないが、少なくとも結着樹脂と着色材とを含有してなる着色粒子により構成されるものが用いられ、特に無機微粉末などがトナー粉末に添加混合されたものが好ましい。
【0031】
トナーの結着樹脂は特に限定されるものではないが、スチレン−アクリル系重合体、ポリエステル樹脂など公知の樹脂を好ましく用いることができる。
トナーの粒子体中には、結着樹脂の他に、ポリプロピレンなどの定着改良剤、種々の公知の荷電制御剤、その他の添加剤を含有させることもできる。
【0032】
トナーに用いられる着色材としては、例えば黒トナーのためにはカーボンブラック、ニグロシン染料などが使用され、イエロー、マゼンタ、シアントナーに必要な顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー68、C.I.ピグメントレッド48−3、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド212、C.I.ピグメントレッド57−1、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー154などを好適に用いることができる。
【0033】
トナー粉末には、適宜の無機微粒子および/または有機微粒子を添加混合することができる。
ここに無機微粉末としては、帯電性の付与能力および流動性の点から、表面がシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されたシリカ微粉末、チタニア微粉末などが好ましく用いられる。この無機微粉末としては、数平均一次粒径が5〜100nmのものが好ましい。
また、有機微粒子としては例えばポリメチルメタクリレートよりなる、数平均一次粒径が5〜100nmのものが好ましく用いられる。
【0034】
以上の二成分現像剤が現像に供される静電潜像は、いずれの静電潜像担持体に形成されたものであってもよく、例えばセレン感光体、アモルファスシリコン感光体、積層型有機感光体などが好適に使用される。
【0035】
以上の二成分現像剤は、静電潜像担持体上の静電潜像に対して、特定の条件に従った磁気ブラシ方式による現像器に供給されて可視画像が形成され、その際にその特性が発揮される。
具体的には、内部に固定磁石を有する回転式現像スリーブを備える現像器を用い、この現像スリーブの外周面上に、攪拌混合により帯電された現像剤が供給されて薄層状とされ、これが、間隙を介して現像スリーブが静電潜像担持体と対向する現像領域に搬送され、磁石の磁力の作用を受けて形成された現像剤の磁気ブラシが現像領域において静電潜像担持体の表面に接触することにより、当該静電潜像担持体上に担持された静電潜像に従ってトナーが付着し、これにより顕像化される現像法が利用される。
【0036】
この現像法において、現像スリーブの表面における磁力をX(ガウス)、キャリアの飽和磁化をY(emu/g)とするとき、下記の条件(1)および(2)が共に満足された状態とされる。
条件(1) 300≦X≦1100
条件(2) 0.1X−50<Y<0.1X+20
【0037】
当該磁力の値Xが300(ガウス)未満であると、現像スリーブ上において、キャリアに対する保持力が過小となるため、キャリア飛散を有効に防止することができず、また1100(ガウス)を超える場合には、保持力が過大となって良好な現像結果を得ることができない。
また、Xとの関係においてYの値が過小である場合には、キャリアの保持性が低下し、キャリア自体の飛散を抑えることができず、一方、Xとの関係においてYの値が過大である場合には、現像スリーブの表面における現像ブラシの穂が硬いものとなり、良好な現像性を得ることができない結果となる。
【0038】
以上の現像法において、現像スリーブ上の現像剤の薄層の厚さは、現像領域で0.1〜8mm、特に0.4〜5mmであることが好ましい。また現像領域における現像スリーブと静電潜像担持体との離間距離は、例えば0.15〜7mmであり、好ましくは0.2〜4mmである。そして、高速現像では、現像時の線速度が200mm/sec以上であり、現像スリーブは、通常、周速度が200〜3000mm/secとなる速度で回転される。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお「部」は重量部を示す。
【0040】
〔磁性体粒子の製造〕
Fe2 3 、LiO2 およびMgOを原料物質として用い、その各々を湿式粉砕装置により粉砕し、この粉砕物に対して粒径の差による重量の差を利用する水中分級を実施して、下記の表1に示すように、各々数平均一次粒子径Dn、体積平均一次粒子径Dvおよび数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が異なる、各原料物質について4種の原料粉末を調製した。
なお、比較用の原料粉末は、その数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が1.0〜2.0の範囲から外れるものである。
【0041】
【表1】
Figure 0003639026
【0042】
上記各原料粉末を下記の表2に示すところに従い、Fe2 3 が64モル%、LiO2 が22モル%およびMgOが14モル%の割合となるよう秤量し、その合計に対して0.5重量%の赤リンを添加してボールミルにより混合し、得られた混合物を、当該混合物に対して2重量%の割合でポリビニルアルコール(PVA)を含有する水中に添加して分散してスラリーを調製した。そして、このスラリーを噴霧乾燥装置によって造粒乾燥して焼成用原料粉体を得た。
各焼成用原料粉体を不活性ガスが充填された焼成炉に投入し、密閉雰囲気において表2に示した焼成温度で焼成処理することにより、体積平均粒径が65μmの磁性体粒子を得た。これらを「磁性体粒子1」〜「磁性体粒子6」並びに「比較用粒子1」および「比較用粒子2」とする。
これらの磁性体粒子について1000ガウスの磁場における飽和磁化を測定したところ、いずれも64emu/gであった。
【0043】
【表2】
Figure 0003639026
【0044】
〔キャリアの製造〕
脱水ヘキサン500ミリリットルと、乾燥した上記の各磁性体粒子450gとをオートクレーブ中に入れて攪拌し、次いで2.0ミリモルのチーグラー・ナッタ触媒を添加して攪拌を行い、磁性体粒子の表面に触媒物質を担持させた。
その後、オートクレーブの内圧を6.0kg/cm2 Gとし、温度90℃でエチレンガスを連続的に供給して45分間反応させることにより、磁性体粒子の表面においてエチレンの重合を行い、もって磁性体粒子の表面にポリエチレンよりなる被覆樹脂層が磁性体粒子に対して5重量%となる割合で形成されてなるキャリアを製造した。
【0045】
〔トナーの製造〕
スチレン−アクリル共重合体100部、低分子量ポリプロピレン8部およびカーボンブラック8部を混合、溶融、混練、粉砕および分級することによりトナー粉末を得、これに疎水性シリカ微粉末0.8部を混合することにより、体積平均粒径が8.7μmのトナーを製造した。
【0046】
〔現像剤の調製〕
上記キャリアの各々と、トナーとを混合することにより、トナー濃度が6重量%の二成分現像剤を調製した。
【0047】
〔実写テスト〕
積層型有機感光体を搭載してなる電子複写機「U−BIX 3035」(コニカ社製)の改造機であって、現像領域の間隙の大きさを0.8mm、現像領域における現像剤の薄層の厚みを1.2mmとした接触型現像方式による、その現像スリーブにおける磁力の値が800ガウスの現像器を備えたものを用い、常温常湿環境において、当該現像器に上記の現像剤の各々を充填して画像を形成することにより実写テストを行った。ここに、現像スリーブの周速度は510mm/secである。
そして、A3サイズのベタ黒画像を原稿として10回複写画像を形成し、得られたベタ黒画像の表面に付着したキャリアの個数を調べた。更に現像器に投入した現像剤の量との関係から、現像剤100g当たりのキャリア付着数を算出した。更にキャリア付着による画像欠陥の状態を目視で判定した。
結果は表3に示すとおりである。
【0048】
【表3】
Figure 0003639026
【0049】
表3の結果から、本発明のキャリアによれば、キャリア付着が殆ど生ずることがなくて画像欠陥が発生せず、常に良好な可視画像が形成されることが明らかである。
これに対して、本発明の条件を満足しない原料粉末による磁性体粒子よりなる比較用キャリアによれば、キャリア付着の現象が顕著で画像欠陥が生ずることが理解される。
【0050】
【発明の効果】
本発明の静電像現像用キャリアは、それを構成する磁性体粒子が、特定の粒径に関する条件を満足するフェライト原料粉末を焼成処理して得られる、飽和磁化が特定の範囲にある磁性体粒子よりなるものであるため、磁化の程度が不足するキャリア粒子が含有される割合がきわめて小さく、磁気特性の均一性が十分に高いものである。
その結果、そのようなキャリアとトナーによる静電像現像剤を用いることにより、磁力の大きさが一定の範囲内にあり、かつキャリアの飽和磁化との間で特定の条件を満足する大きさの磁力を有する現像スリーブを備える現像器により、高速現像による場合においても、キャリアの飛散が生ずることが確実に防止され、その結果、キャリア粒子が静電潜像担持体に付着することに起因して生ずる画像欠陥を十分有効に防止することができ、常に良好な可視画像を形成することができる。

Claims (4)

  1. 数平均一次粒子径Dnが0.1〜10μm、数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が1.0〜2.0の原料粉末の焼成体粉末よりなり、飽和磁化の値が10〜100emu/gである磁性体粒子を芯材粒子としてその表面に当該磁性体粒子に対して0.01〜15重量%の付着量で被覆樹脂層が形成されていることを特徴とする静電像現像用キャリア。
  2. 数平均一次粒子径Dnが0.1〜10μm、数平均一次粒子径Dnに対する体積平均一次粒子径Dvの比(Dv/Dn)の値が1.0〜2.0の原料粉末を焼成処理する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の静電像現像用キャリアの製造方法。
  3. 請求項1に記載のキャリアと、トナーとからなることを特徴とする静電像現像剤。
  4. 請求項3に記載の静電像現像剤を、内部に磁石を有する現像スリーブを備えてなる現像器に供給して、当該現像スリーブに形成された磁気ブラシにより静電潜像担持体に担持された静電潜像を顕像化する工程を有し、
    前記磁石による現像スリーブの表面における磁力をX(ガウス)、キャリアの飽和磁化をY(emu/g)とするとき、下記の条件が満足されること特徴とする画像形成方法。
    条件(1) 300≦X≦1100
    条件(2) 0.1X−50<Y<0.1X+20
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