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JP3638403B2 - プロピレン系樹脂 - Google Patents

プロピレン系樹脂 Download PDF

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JP3638403B2
JP3638403B2 JP14024497A JP14024497A JP3638403B2 JP 3638403 B2 JP3638403 B2 JP 3638403B2 JP 14024497 A JP14024497 A JP 14024497A JP 14024497 A JP14024497 A JP 14024497A JP 3638403 B2 JP3638403 B2 JP 3638403B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は柔軟性、透明性、耐熱性に優れ、しかも、成形加工性の良好なプロピレン系樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは経済性と性能のバランスに優れ、また軽量化、リサイクル化が可能なことから、バンパー等の自動車部品をはじめ、種々の工業部品、家電部品、およびフィルム、シートに幅広く利用されている。
【0003】
従来、オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造には、エチレン−プロピレンゴム(以下、EPRという。)やエチレン−プロピレンターポリマー(以下、EPDMという。)とポリプロピレン等の熱可塑性樹脂とを押出機により混練するブレンド法と、高活性チタン触媒を用い重合により両成分を一挙に製造する重合法が知られている。
【0004】
そのうち、重合法により製造された熱可塑性エラストマーは、ブレンド法によって得られたものに比べて透明性が良好である。かかる重合法による製造では、第一段階においてポリプロピレン成分を、第二段階においてエチレンとプロピレンの共重合を行う2段階重合法が一般的に行われる。例えば、特開平07−118354号公報には重合法により熱可塑性エラストマーを製造する方法が開示されており、その結果得られた特定の組成を有するプロピレンエチレン共重合体が良好な柔軟性、透明性、光沢、引張伸度を示すことが記載されている。
【0005】
ところが、上記方法により得られたプロピレンエチレン共重合体は、柔軟性と耐熱性のバランスにおいて未だ改良の余地が残っており、その上、その製造条件に起因して、分子量分布を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3程度と低いため、押出成形時の溶融張力が不十分であり、成形加工性の点で更なる改良が望まれていた。
【0006】
一方、プロピレン系共重合体の耐熱性を改良するために、特開昭63−165414号公報には得られる共重合体のエチレン組成の異なる3段階の重合を実施して得られた特定の組成を有するブロック共重合体を過酸化物と架橋剤の存在下で混練して、引張特性、耐熱性、加工性のバランスを改良する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法においては部分的に架橋された成分が生成するために透明性、成形加工性が不十分となり、柔軟性と透明性、耐熱性、成形加工性のバランスにおいて一層の改良が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、柔軟性、透明性、耐熱性及び成形加工性が良好で、しかもこれらの特性のバランスが良好なプロピレン系共重合体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の分子量分布と組成分布を有するプロピレン系樹脂の開発に成功し、該プロピレン系樹脂が上記目的を全て満たすものであることを見いだし本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明はメルトフローレイトが0.01〜10g/10minであり、エチレン含有量が10〜40モル%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、6以上16以下であり、昇温溶離分別法により分別された、横軸を溶出温度(℃)、縦軸を溶出成分の積算重量割合で表した溶出曲線に於いて、20℃未満での溶出成分(A成分)の量が20〜53重量(wt)%、20℃以上100℃未満での溶出成分(B成分)の量が20〜75wt%、100℃以上での溶出成分(C成分)が5〜50重量%であり、A成分とB成分とC成分の合計が100wt%であり、B成分とA成分との重量比(B/A)が0.8以上であり、且つ、C成分に於けるピークトップ温度が120℃以上であることを特徴とするプロピレン系樹脂である。
【0011】
本発明のプロピレン系樹脂においてメルトフローレイトが0.01未満では成形困難となり、10を超える場合は溶融張力が低下し、特に押出成形における成形加工性が低下するため好ましくない。尚、本発明のプロピレン系樹脂のメルトフローレイトはゲルパーミエーション・クロマトグラフィーによる重量平均分子量に換算すると概ね10万〜100万の範囲である。
【0012】
本発明のプロピレン系樹脂はエチレン含有量が10〜40モル%である。エチレン含有量が10モル%未満のときは熱可塑性エラストマーとしての十分な柔軟性が発揮されず、一方、40モル%を超えるときは耐熱性の優れた熱可塑性エラストマーを得ることができないため好ましくない。また、透明性も低下する傾向がある。
【0013】
本発明のプロピレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、6〜16、好ましくは8〜15であることが、優れた成形加工性を得るために必要である。すなわち、分子量分布が6未満の場合は成形加工性が低下し、16を超える場合は成形時に樹脂の配向が大きくなる傾向にあるため成形品の物性バランスが低下する。本発明のプロピレン系樹脂の優れた成形加工性は、実施例により明らかなように、従来のものと比較して同一のメルトフローレイトに於いて溶融粘度が低く、溶融張力が高いために、例えば押出成形分野に適用した場合、機械負荷を増大させることなく押出速度を増加させることができると考えられる。
【0014】
本発明のプロピレン系樹脂はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)における1万以下の成分の量が3wt%であることが、成形品のベタツキを抑えるため好ましい。
【0015】
本発明において、昇温溶離分別法とは、例えば、Journal of Applied Polymer Science;Applied Polymer Symposium 45,1−24(1990)に詳細に記述されている方法である。まず高温の高分子溶液を、珪藻土の充填剤を充填したカラムに導入し、カラム温度を徐々に低下させることにより充填剤表面に融点の高い成分から順に結晶化させ、次にカラム温度を徐々に上昇させることにより、融点の低い成分から順に溶出させて溶出ポリマー成分を分取する方法である。本発明では実施例で示したように測定装置としてセンシュー科学社製SSC−7300型を用い、溶媒:O−ジクロロベンゼン、流速:2.5ml/min、昇温速度:4℃/Hr、カラム:φ30mm×300mmの条件で測定した値を示している。
【0016】
本発明のプロピレン系樹脂の20℃未満での溶出成分(A成分)は特に柔軟性を発現するために必要な成分である。すなわち、A成分の量が20wt%未満では柔軟性が損なわれ、また、53wt%を超えると十分な耐熱性が得られないために好ましくない。熱可塑性エラストマーとしてのより優れた柔軟性や耐熱性を発揮させるためには、A成分の量は、特に、25〜45wt%の範囲であることが好ましい。また、より良好な柔軟性を得るためにA成分におけるエチレン含量は好ましくは20〜60モル%、さらに好ましくは25〜50モル%である。
【0017】
本発明のプロピレン系樹脂の20℃以上100℃未満での溶出成分(B成分)は、特に、良好な透明性と柔軟性と耐熱性のバランスを発現させるために必要な成分である。すなわち、B成分の量が20wt%未満では成形品とした場合に良好な透明性、柔軟性が達成されず、また、75%を超える場合には耐熱性が不足する。より優れた透明性、柔軟性と耐熱性のバランスを発現させるためには、B成分の量は、特に、30〜60wt%の範囲であることが好ましい。また、より良好な透明性を得るためにB成分におけるエチレン含量は20モル%未満であることが好ましい。
【0018】
本発明のプロピレン系樹脂の100℃以上での溶出成分(C成分)は、本発明の特徴である優れた耐熱性を得るために必要な成分である。すなわち、C成分の量が5wt%未満であるか、またはC成分に於けるピークトップ温度が120℃未満では成形品とした場合の耐熱性が損なわれ、またC成分の量が50wt%を超える場合には柔軟性が損なわれるために好ましくない。柔軟性および耐熱性を勘案するとC成分の量は、特に、5〜40wt%であることが好ましい。更に、より優れた耐熱性を得るためにC成分が120℃以上の溶出成分を50%以上有する高結晶性ポリプロピレン成分であることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂のB成分の量とA成分の重量比(B/A)は0.8以上であり、好ましくは0.9以上である。B成分の量とA成分の量比(B/A)が0.8未満の場合、本発明の特徴である透明性、柔軟性と耐熱性のバランスが十分発現されず本発明の目的が達成されない。
【0019】
本発明のプロピレン系樹脂のA成分、B成分およびC各成分の分子量分布(Mw/Mn)はそれぞれ6〜16であることが良好な成形加工性を得るために好ましい。
【0020】
本発明のプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン成分及びプロピレンエチレンランダム共重合体成分により一般に構成される。ポリプロピレン成分は、高い立体規則性を有するプロピレン単独重合体であることが良好な耐熱性が得られるため好ましいが、本発明の要件を満足する範囲でプロピレンと他のα−オレフィンとのランダム共重合体であってもよい。他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。
【0021】
本発明のプロピレン系樹脂は、上記したポリプロピレン成分およびプロピレンエチレンランダム共重合体成分が一分子鎖中に配列した、いわゆるブロック共重合体の分子鎖として、又は、ポリプロピレン成分及びプロピレンエチレンランダム共重合体成分のそれぞれ単独よりなる分子鎖とが機械的な混合では達成できない程度にミクロに混合していることが、より良好な透明性を得るため好ましい。
【0022】
本発明のプロピレン系樹脂は、上記したポリプロピレン成分及びプロピレンエチレンランダム共重合体成分に加えて、本発明のプロピレン系樹脂の効果を阻害しない範囲で、例えば5重量%以下の範囲で他のα−オレフィンの重合体をブロック共重合成分として含んでいてもよい。
【0023】
本発明のプロピレン系樹脂の製造方法は、本発明の要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0024】
下記触媒成分〔A〕、〔B〕、〔C〕および〔D〕
〔A〕チタン化合物
〔B〕有機アルミニウム化合物
〔C〕有機ケイ素化合物
〔D〕カルボン酸エステル類またはエーテル類より選ばれる少なくとも一種類の
電子供与体化合物
の存在下にプロピレンを重合した後、プロピレンとエチレンとのランダム共重合を下記の条件で行う方法である。
【0025】
上記チタン化合物〔A〕は、オレフィンの重合に使用されることが公知のチタン化合物が何ら制限なく利用される。中でも、プロピレンの重合に使用した場合に高立体規則性の重合体を高収率で得ることのできるチタン化合物が好ましい。これらチタン化合物は担持型チタン化合物と三塩化チタン化合物とに大別される。担持型チタン化合物の製法は、公知の方法が何ら制限なく採用される。例えば、特開昭56−155206号公報、同56−136806、同57−34103、同58−8706、同58−83006、同58−138708、同58−183709、同59−206408、同59−219311、同60−81208、同60−81209、同60−186508、同60−192708、同61−211309、同61−271304、同62−15209、同62−11706、同62−72702、同62−104810等に示されている方法が採用される。具体的には、例えば四塩化チタンを塩化マグネシウムのようなマグネシウム化合物と共粉砕する方法、アルコール、エーテル、エステル、ケトン又はアルデヒド等の電子供与体の存在下にハロゲン化チタンとマグネシウム化合物とを共粉砕する方法、又は溶媒中でハロゲン化チタン、マグネシウム化合物及び電子供与体を接触させる方法が挙げられる。
【0026】
また、三塩化チタン化合物としては公知のα、β、γまたはδ−三塩化チタンが挙げられる。これらの三塩化チタン化合物の調製方法は、例えば、特開昭47−34478号公報、同50−126590、同50−114394、同50−93888、同50−123091、同50−74594、同50−104191、同50−98489、同51−136625、同52−30888、同52−35283等に示されている方法が採用される。
【0027】
次に有機アルミニウム化合物〔B〕は、オレフィンの重合に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく採用される。例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−nプロピルアルミニウム、トリ−nブチルアルミニウム、トリ−iブチルアルミニウム、トリ−nヘキシルアルミニウム、トリーnオクチルアルミニウム、トリーnデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム類;ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド等のジエチルアルミニウムモノハライド類;メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムハライド類などが挙げられる。他にもモノエトキシジエチルアルミニウム、ジエトキシモノエチルアルミニウム等のアルコキシアルミニウム類を用いることができる。
【0028】
さらに、有機ケイ素化合物〔C〕は、オレフィンの立体規則性改良に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく採用されるが、ケイ素原子に直結した原子が3級炭素である鎖状炭化水素であるか、または2級炭素である環状炭化水素などの嵩高い置換基を有する有機ケイ素化合物が、得られるポリプロピレン成分の立体規則性をより高くし、良好な耐熱性を発現するため好ましい。具体的にはジt−ブチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジt−アミルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物を挙げることができる。中でもt−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが特に好ましい。またこれらの有機ケイ素化合物は複数種を同時に用いることも可能である。
【0029】
さらに、カルボン酸エステル類またはエーテル類より選ばれる少なくとも一種類の電子供与体化合物〔D〕はオレフィンの立体規則性改良に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく採用される。具体的にはギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル、アニス酸メチル、フタル酸エチル、炭酸メチル、ブチロラクトンなどのカルボン酸エステル類;メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、イソアミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2、2−ジイソブチル−1、3ジメトキシプロパン、2、2−ジシクロペンチル−1、3ジメトキシプロパン、2、2−ジシクロヘキシル−1、3ジメトキシプロパン等のエーテル類が挙げられる。中でも酢酸ブチル、メタクリル酸メチル等のカルボン酸エステルが特に好ましい。また、上記カルボン酸エステル類またはエーテル類は2種以上を同時に用いることが、本発明の目的とする前記した特定の結晶性分布を有するプロピレン系樹脂を得るために好ましい。
【0030】
また、前記有機ケイ素化合物〔C〕とカルボン酸エステルまたはエーテル類より選ばれる少なくとも1種類の電子供与体〔D〕を組み合わせて用いることが、本発明のプロピレン系樹脂の広い分子量分布とB成分とA成分の重量比(B/A)及びC成分におけるピークトップ温度を満足させるために好ましい態様である。
【0031】
本発明で用いられるチタン化合物〔A〕、有機アルミニウム化合物〔B〕、有機ケイ素化合物〔C〕及びカルボン酸エステル類またはエーテル類より選ばれる少なくとも1種類の電子供与体〔D〕の組み合わせは、
(1)担持型チタン化合物−トリアルキルアルミニウム−有機ケイ素化合物−電子供与体
(2)三塩化チタン化合物−ジエチルアルミニウムモノハライド−有機ケイ素化合物−電子供与体
(3)三塩化チタン化合物−トリアルキルアルミニウム−有機ケイ素化合物−電子供与体
および、
(4)担持型チタン化合物−三塩化チタン化合物−トリアルキルアルミニウム−有機ケイ素化合物−電子供与体
の組み合わせが、他の製造条件との組み合わせにおいて本発明のプロピレン系樹脂の構成を満足するために特に好ましい。
【0032】
本発明においては、上記の各成分の存在下における本重合に先立ち、前記チタン化合物〔A〕を上記の〔B〕および〔C〕、または〔B〕および〔D〕、または〔B〕、〔C〕および〔D〕の存在下にα−オレフィンの予備重合を行うことが、得られるプロピレン系樹脂の低分子量成分の生成量を低減し、成形品とした場合のベタツキを抑えることができるために好適である。さらに必要に応じて上記〔B〕、〔C〕、〔D〕を用いたそれぞれの組み合わせ系に加え、一般式(i)で示されるヨウ素化合物〔E〕
〔E〕ヨウ素化合物 R−I 一般式(i)
(但し、Rはヨウ素原子または炭素数1〜7のアルキル基またはフェニル基である。)
の存在下にα−オレフィンの予備重合を行うことが、得られるプロピレン系樹脂の低分子量成分の生成量をより一層低減し、成形品とした場合のベタツキをさらに抑えることができるためにより好ましい態様となる。
【0033】
本発明の予備重合で使用される前記〔A〕、および〔B〕、さらに必要に応じて使用される〔C〕及び/または〔D〕、またさらに必要に応じて使用される〔E〕の各触媒成分の量は、触媒成分の種類、重合の条件に応じて異なるため、これらの各条件に応じて最適の使用量を予め決定すればよい。好適に使用される範囲を例示すれば下記の通りである。
【0034】
予備重合に使用される有機アルミニウム化合物〔B〕の使用割合はチタン化合物〔A〕に対してAl/Ti(モル比)で0.1〜100、好ましくは0.1〜20の範囲が、また必要に応じて使用される有機ケイ素化合物〔C〕および、カルボン酸エステル類またはエーテル類より選ばれる少なくとも1種類の電子供与体〔D〕の使用割合はチタン化合物〔A〕に対して〔C〕/Ti(モル比)、〔D〕/Ti(モル比)で0.01〜100、好ましくは0.01〜10の範囲が、それぞれ好適である。また、必要に応じて使用されるヨウ素化合物〔E〕の使用割合はチタン化合物〔A〕に対してI/Ti(モル比)で0.1〜100、好ましくは0.5〜50の範囲が好適である。
【0035】
本発明の予備重合で好適に使用し得るヨウ素化合物を具体的に示すと次のとおりである。例えば、ヨウ素、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨードベンゼン、p−ヨウ化トルエン等である。特にヨウ化メチル、ヨウ化エチルは好適である。
【0036】
前記触媒成分の存在下にα−オレフィンを重合する予備重合量は予備重合条件によって異なるが、一般に0.1〜500g/g・Ti化合物、好ましくは1〜100g/g・Ti化合物の範囲であれば十分である。また予備重合で使用するα−オレフィンはプロピレン単独でもよく、該プロピレン系樹脂の物性に悪影響を及ぼさない範囲で、例えば5モル%以下の他のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1等をプロピレンと混合することは許容される。また予備重合を多段階に行い、各段階で異なるα−オレフィンモノマーを予備重合させることもできる。各予備重合の段階で水素を共存させることも可能である。
【0037】
該予備重合は通常スラリー重合を適用させるのが好ましく、溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの飽和脂肪族炭化水素若しくは芳香族炭化水素を単独で、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。該予備重合温度は、−20〜100℃、特に0〜60℃の範囲が好ましい。予備重合時間は、予備重合温度及び予備重合での重合量に応じ適宜決定すればよい。予備重合における圧力は限定されるものではないが、スラリー重合の場合は、一般に大気圧〜5kg/cm2G 程度である。該予備重合は、回分、半回分、連続のいずれの方法で行ってもよい。
【0038】
前記予備重合に次いで本重合が実施される。本重合は前記予備重合で得られた触媒含有予備重合体の存在下に、先ずプロピレンの重合が行われ、次にプロピレン−エチレンのランダム共重合が実施される。また、各触媒成分は予備重合時に添加されたものをそのままの状態で使用することもできるが、チタン化合物以外は本重合時に新たに添加して調節するのが好ましい。
【0039】
本発明の本重合で使用される前記〔A〕、〔B〕、〔C〕および、〔D〕の各触媒成分の量および重合条件は、触媒成分の種類に応じて異なるため、これらの触媒成分の種類に応じて最適の使用量および重合条件を予め決定すればよい。好適に使用される触媒成分の量および重合条件を例示すれば下記の通りである。
【0040】
本重合で用いられる有機アルミニウム化合物〔B〕は、前述のものが何ら制限なく使用できる。有機アルミニウム化合物の使用量は触媒含有予備重合体中のチタン原子に対し、Al/Ti(モル比)で、1〜1000、好ましくは2〜500である。
【0041】
本重合で用いられる有機ケイ素化合物〔C〕は既述の化合物が何ら制限なく採用される。本重合で用いる有機ケイ素化合物の使用量は触媒含有予備重合体中のチタン原子に対し、Si/Ti(モル比)で0.001〜1000、好ましくは0.1〜500である。
【0042】
本重合で用いられるカルボン酸エステル類またはエーテル類より選ばれる少なくとも1種類の電子供与体〔D〕は前述のものが何ら制限なく採用される。本重合で用いるカルボン酸エステル類またはエーテル類より選ばれる少なくとも1種類の電子供与体の使用量は触媒含有予備重合体中のチタン原子に対するモル比で0.001〜1000、好ましくは0.1〜500である。
【0043】
上記本重合は、先ず、プロピレンの重合が実施される。プロピレンの重合は、プロピレン単独または本発明の要件を満足する範囲内でのプロピレンと他のα−オレフィンの混合物を供給して実施すればよい。プロピレン重合の代表的な条件を例示すると、重合温度は、80℃以下、更に20〜70℃の範囲から採用することが好適である。また必要に応じて分子量調節剤として水素を共存させることもできる。更にまた、重合はプロピレン自身を溶媒とするスラリー重合、気相重合、溶液重合等の何れの方法でもよい。プロセスの簡略性及び反応速度、また生成する共重合体の粒子性状を勘案するとプロピレン自身を溶媒とするスラリー重合が好ましい態様である。重合形式は回分式、半回分式、連続式のいずれの方法でもよい。更に重合を水素濃度、重合温度等の条件の異なる2段以上に分けて行うこともできる。
【0044】
次に、プロピレンとエチレンのランダム共重合が行われる。プロピレンとエチレンのランダム共重合は、プロピレン自身を溶媒とするスラリー重合の場合には前記プロピレン重合に引き続いてエチレンガスを供給することで、また気相重合の場合はプロピレンとエチレンの混合ガスを供給することで実施される。
【0045】
プロピレンとエチレンのランダム共重合の重合温度は、80℃以下、好ましくは、20〜70℃の範囲から採用される。また、必要に応じて分子量調節剤として水素を用いることもでき、その際の水素濃度は多段階に変化させて重合を実施することもできる。
【0046】
プロピレン重合に続くエチレンとプロピレンのランダム共重合において特定の触媒を選択することにより、目的とする分子量分布、結晶性分布等を有するプロピレン系樹脂を1段階で製造することができるが、本発明のプロピレン系樹脂の広い分子量分布と結晶性分布を得るためには、ランダム共重合を多段で行い、各段階で水素濃度およびエチレン濃度等の重合条件を変化させる方法によって製造することが可能である。かかる多段共重合において、前記したA成分及びB成分の割合、さらにはこれらのC成分との割合となるように、重合条件を適宜調節して共重合が実施される。
【0047】
プロピレンとエチレンのランダム共重合は回分式、半回分式、連続式のいずれの方法でもよく、重合を多段階に分けて実施することもできる。また、本工程の重合は、スラリー重合、気相重合、溶液重合のいずれの方法を採用してもよい。
【0048】
本重合の終了後には、重合系からモノマーを蒸発させ本発明のプロピレン系樹脂を得ることができる。このプロピレン系樹脂は、炭素数7以下の炭化水素で公知の洗浄又は向流洗浄を行うことができる。
【0049】
本発明のプロピレン系樹脂の製造方法は上記した重合法だけでなく、本発明の要件を満足する限り、別途重合して得られた高結晶性ポリプロピレンとプロピレンエチレン共重合体をブレンドしてもよく、高結晶性ポリプロピレンに市販のエチレンプロピレンゴムをブレンドしてもよいが、良好な透明性を得るためには重合法により製造することが好ましい。
【0050】
本発明のプロピレン系樹脂は酸化防止剤、熱安定剤、塩素補足剤等の市販の添加剤を添加して混合した後、押出機でペレットにして用いてもよい。また、上記添加剤に加えて有機過酸化物も添加し、本発明の要件を満足する範囲で分子量の調節を行ってもよい。
【0051】
【発明の効果】
本発明のプロピレン系樹脂は、柔軟性、引張伸度、透明性、耐熱性に優れ、しかも、成形加工性が良好であり、従来の熱可塑性エラストマーが用いられている種々の分野に好適に用いることができる。例えば、射出成形分野では自動車部品におけるバンパー、マッドガード、ランプパッキン類、また、家電分野においては、各種パッキン類、及びスキーシューズ、グリップ、ローラースケート類が挙げられる。一方、押出成形分野では、各種自動車内装材、家電・電線材として各種絶縁シート、コード類の被覆材料及び土木建材分野における防水シート、止水材、目地材、包装用ストレッチフィルム等に好適に用いることができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例に於いて用いた測定方法について説明する。
【0053】
1)昇温溶離分別法
(株)センシュー科学社製、SSC−7300型を用い、以下の測定条件により行った。
【0054】
溶媒 ;O−ジクロロベンゼン
流速 ;2.5ml/min
昇温速度 ;4℃/Hr
サンプル濃度 ;0.7wt%
サンプル注入量;100ml
検出器 ;赤外検出器、波長3.41μm
カラム ;φ30mm×300mm
充填剤 ;Chromosorb P 30〜60mesh
カラム冷却速度;2.0℃/Hr
2)メルトフローレイト
ASTM D−1238に準拠した。
【0055】
3)エチレン含有量
JEOL GSX−270を用い、13C−NMRスペクトロメーターを用いて測定した。
【0056】
4)重量平均分子量及び、分子量分布
G.P.C(ゲルパーミューションクロマトグラフィー)法により測定した。センシュー科学社製SSC−7100によりo−ジクロロベンゼンを溶媒として135℃で行った。使用したカラムはShodex製UT807、806Mである。校正曲線は標準試料として、重量平均分子量が950、2900、1万、5万、49.8万、270万、490万のポリスチレンを用いて作成した。
【0057】
5)曲げ弾性率
ASTM D−790に準拠した。
【0058】
6)引張伸度
JIS K6301に準拠し、200mm/分の速度で測定した。
【0059】
7)透明性(ヘイズ値)
射出成形により、1mm厚の試験片を作成し、JIS K6714に準拠した。
【0060】
8)ビカット軟化温度
JIS K7206に準じ、荷重250gの条件で測定した。
【0061】
9)溶融粘度
東洋精機株式会社のキャピログラフ1Bを用い、230℃、せん断速度150s-1での溶融粘度を測定した。
【0062】
10)溶融張力
東洋精機株式会社のキャピログラフ1Bを用い、オリフィス(L=20mm、D=2mm)、190℃、押出速度5mm/min、巻取速度10m/minでの溶融張力を測定した。
【0063】
実施例1
(予備重合)
撹拌機を備えた内容積1リットルのガラス製オートクレーブ反応器を窒素ガスで十分に置換した後、ヘプタン400mlを装入した。反応器内温度を20℃に保ち、酢酸ブチル0.18mmol、ヨウ化エチル22.7mmol、ジエチルアルミニウムクロライド18.5mmol、及び三塩化チタン(丸紅ソルベイ化学社製)22.7mmolを加えた後、プロピレンを三塩化チタン1g当たり3gとなるように30分間連続的に反応器に導入した。なお、この間の温度は20℃に保持した。プロピレンの供給を停止した後、反応器内を窒素ガスで十分に置換し、得られたチタン含有ポリプロピレンを精製ヘプタンで4回洗浄した。分析の結果、三塩化チタン1g当たり2.9gのプロピレンが重合されていた。
【0064】
(本重合)
N2置換を施した2リットルのオートクレーブに、液体プロピレンを1リットル、ジエチルアルミニウムクロライド0.70mmol、酢酸ブチル0.07mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.07mmol、水素を気相中の濃度が3mol%になるように加え、オートクレーブの内温を45℃に昇温した。予備重合で得られたチタン含有ポリプロピレンを三塩化チタンとして0.087mmol加え、45℃で30分間のプロピレンの重合を行った(工程1)。次にエチレンを、気相中のエチレンガス濃度をガスクロマトグラフで確認しながら3mol%となるように供給し、60分間の重合を行った(工程2)。次いで気相中のエチレンガス濃度を9mol%に維持するように供給して60分間の重合を行った(工程3)。
【0065】
未反応モノマーをパージし、ポリマーを得た。得られたポリマーは70℃で1時間乾燥した。次に酸化防止剤、熱安定剤、塩素補足剤を添加して混合した後、20mmφ押出機を用い250℃で押出してペレットを得、物性測定に供した。結果を表1及び表2に示した。また、図1に昇温分離分別法による溶出曲線を示した。
【0066】
実施例2
実施例1の本重合の工程1に於いてプロピレンの重合時間を60分間とし、工程3に於いて気相中のエチレンガス濃度が13mol%を維持するようにエチレンを供給して60分間のランダム共重合を行った以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。また、図2に昇温溶離分別法による溶出曲線を示した。
【0067】
実施例3
実施例1の本重合の工程3に於いて気相中のエチレンガス濃度が13mol%を維持するようにエチレンを供給して60分間の重合を行った以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0068】
実施例4
実施例1の本重合の工程1に於いてプロピレンの重合時間を90分間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0069】
実施例5、6、7
実施例1の本重合の工程1に於いて水素を気相中の濃度が1.5mol%(実施例5)、4.5mol%(実施例6)、10mol%(実施例7)になるように加えた以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0070】
実施例8
実施例1の本重合において酢酸ブチルの代わりにメタクリル酸メチルを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0071】
実施例9
実施例1の本重合においてジシクロペンチルジメトキシシランの代わりにt−ブチルエチルジメトキシシランを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0072】
比較例1、2
実施例1の本重合に於いてジシクロペンチルジメトキシシランを使用しなかった(比較例1)、酢酸ブチルを使用しなかった(比較例2)以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0073】
比較例3
実施例1の本重合の工程1においてプロピレンの重合時間を60分間とし、工程2の重合を行わず、工程3に於ける重合時間を120分間とした以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0074】
比較例4、5
実施例1の本重合の工程1に於いて水素を用いずに重合を行い、得られた共重合体に実施例1に記載の添加剤に加え、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼンを0.05wt%(比較例3)、0.15wt%(比較例4)添加して造粒を行った以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0075】
比較例6
実施例1の本重合の工程1に於いて水素を気相中の濃度が16mol%になるように加えた以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0076】
【表1】
Figure 0003638403
【0077】
【表2】
Figure 0003638403

【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のプロピレン系樹脂の昇温溶離分別法の溶出曲線である。
【図2】 実施例2のプロピレン系樹脂の昇温溶離分別法の溶出曲線である。

Claims (3)

  1. メルトフローレイトが0.01〜10g/10minであり、エチレン含有量が10〜40モル%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、6〜16であり、昇温溶離分別法により分別された、横軸を溶出温度(℃)、縦軸を溶出成分の積算重量割合で表した溶出曲線に於いて、20℃未満での溶出成分(A成分)の量が20〜53重量%、20℃以上100℃未満での溶出成分(B成分)の量が20〜75重量%、100℃以上での溶出成分(C成分)が5〜50重量%であり、A成分とB成分とC成分の合計が100重量%であり、B成分とA成分との重量比(B/A)が0.8以上であり、且つ、C成分に於けるピークトップ温度が120℃以上であることを特徴とするプロピレン系樹脂。
  2. 請求項1に記載の昇温溶離分別法により分別された、A成分のエチレン含有量が20〜50モル%、B成分のエチレン含有量が20モル%未満であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂。
  3. 請求項1に記載の昇温溶離分別法により分別された、C成分が120℃以上の溶出成分の量を50重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂。
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