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JP3636102B2 - 成形部材、エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 - Google Patents

成形部材、エンドレスベルト、画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 Download PDF

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JP3636102B2
JP3636102B2 JP2001193247A JP2001193247A JP3636102B2 JP 3636102 B2 JP3636102 B2 JP 3636102B2 JP 2001193247 A JP2001193247 A JP 2001193247A JP 2001193247 A JP2001193247 A JP 2001193247A JP 3636102 B2 JP3636102 B2 JP 3636102B2
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endless belt
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐屈曲性、耐薬品性などの物性に優れた成形部材と、このように優れた物性を有する無端(エンドレス)のエンドレスベルト及び該エンドレスベルトを用いた、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等に利用される中間転写ベルト、搬送転写ベルト、又は感光体ベルトの画像形成装置用ベルト並びにこの画像形成装置用ベルトを備える画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりOA機器等などの画像形成装置として、感光体、トナーを用いた電子写真方式や感光体を用いずにトナーを直接エンドレスベルト上に転写させるトナージェット方式が考案され上市されている。これらの装置には継ぎ目の有無に関わらず感光体ベルト、中間転写ベルト、搬送転写ベルト、転写分離ベルト、帯電チューブ、現像スリーブ、定着用ベルト、トナー転写ベルト等の導電性、半導電性、絶縁性の各種電気抵抗に制御したエンドレスベルトが用いられている。
【0003】
例えば、中間転写装置は、中間転写体上にトナー像を一旦形成し、次に紙等へトナーを転写させるように構成されている。この中間転写体の表層におけるトナーへの帯電、除電のために導電性のエンドレスベルトが用いられている。このエンドレスベルトは、マシーンの機種毎に異なった表面抵抗率や厚み方向電気抵抗(体積固有抵抗率)に設定(導電、半導電、絶縁)されている。
【0004】
また、搬送転写装置は、紙を一旦搬送転写体上に保持した上で感光体からのトナーを搬送転写体上に保持した紙上へ転写させ、さらに除電により紙を搬送転写体より離すように構成されている。この搬送転写体表層においては紙への帯電、除電のためにシーム有り、無しのエンドレスベルトが用いられている。このエンドレスベルトは、上記と同様にマシーン機種毎に異なった表面電気抵抗や厚み方向電気抵抗(体積固有抵抗率)に設定されている。
【0005】
図1は従来の中間転写装置の側面図である。図中、1は感光ドラム、6は導電性エンドレスベルトである。1の感光ドラムの周囲には、帯電器2、半導体レーザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されている現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されている。導電性エンドレスベルト6は、搬送ローラ7,8,9に掛け渡されて、矢印方向に回転する感光ドラムと同調して矢印方向に移動するようになっている。
【0006】
次に、動作について説明する。まず矢印A方向に回転する感光ドラム1の表面を帯電器2により一様に帯電する。次に、光学系3により図示しない画像読み取り装置等で得られた画像に対応する静電潜像を感光ドラム1上に形成する。静電潜像は現像器4でトナー像に現像される。このトナー像を、静電転写機10により導電性エンドレスベルト6へ静電転写し、搬送ローラ9と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写する。
【0007】
ところで、電子写真式複写機等の導電性エンドレスベルトの場合には、機能上2本以上のロールにより高張力で長時間駆動されるため、十分な耐久性が要求される。さらに、中間転写装置等に使用される場合は、ベルト上でトナーによる画像を形成して紙へ転写するため、駆動時にベルトが弛んだり、伸びたりすると、画像ズレの原因となる。また、トナーの転写を静電気的に行うため、ある程度の導電性も必要である。
【0008】
このようなエンドレスベルトは、トナー画像を決定する重要部品であり、感光体、トナーとともに3大重要部品の一つと考えられている。
【0009】
そのため中間転写ベルトには次の▲1▼〜▲7▼が要求される。
▲1▼ 半導体領域にて所定の表面抵抗率と体積固有抵抗率を有していること。
▲2▼ トナー離型性を有していること。
▲3▼ 厚みが薄く均一であること。
▲4▼ 機械的強度が強い(割れにくい)こと。
▲5▼ 環境(温度,湿度)による抵抗値の変動が少ないこと。
▲6▼ 低コストであること。
▲7▼ シームレスで真円なベルトであること。
【0010】
また、近年のマシーンの高速印刷化に伴い、ベルトを駆動する速度が速まり、ベルトの耐久性を向上させる必要が出てきている。
【0011】
特に、感光体を4つ並べたタンデム型の搬送転写、中間転写ベルトやトナージェット用ベルトでは高速で印刷できる点で注目されており、特に耐久性と画像ズレが重要となっている。
【0012】
現在までエンドレスベルトとしては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂組成物中に、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを添加し、これを数十〜数百μm程度の厚さに成形することで所定の電気抵抗率(表面抵抗率、体積固有抵抗率)に設定したベルトを中間転写体用ベルト、紙搬送とトナー転写を兼ねた搬送転写用ベルトを得ていることが知られている(特開昭63−311267号公報、特開平5−170946号公報、特開平6−228335号公報等)。
【0013】
なお、エンドレスベルトの作製方法としては次のような方法が考えられている。
【0014】
(i) 回転成形法(又は遠心成形法とも表現する場合がある)
円筒状金型の内周面に溶液を溶かした樹脂を入れ、金型を回転させながら温度を加え、溶媒を半分以上揮発させてから金型の内部よりシームレス状のチューブを取り出す工程と、別の円筒状金型の外部にシームレスチューブを装着し、温度を加えて熱硬化反応をさせる工程とからなる(特開昭60−170862号公報)。この方法は、主にポリイミド製転写ベルトの製造に用いられる。
【0015】
(ii) 押出成形法
導電性物質をコンパウンドした樹脂を環状に溶融押出しする方法である。この方法は、主にエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリイミド系転写ベルトの作製方法に用いられている。
【0016】
(iii) ディッピング法
樹脂溶液を円筒状又は円柱状金型外面にディッピング塗布等により一定厚みに塗布し、加熱成膜した後、金型より成膜したチューブ状フィルムを引き抜く方法である。この方法は、主にポリフッ化ビニリデン製転写フィルムの作製に用いられている。
【0017】
(iv) ゴム押出し成形法
ポリウレタンゴムを筒状に押し出し加硫した後、表面研磨し、再外層表面にフッ素樹脂等をコートする方法が報告されている(電子写真学会誌33(1)43(1994))。
【0018】
従来、このような導電性エンドレスベルトとしては、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂にカーボンブラックなどの導電性物質を配合して成形したものが主として用いられている。なかでも、熱可塑性樹脂を主成分にしたものは、連続成形が容易であり、広く用いられてきた。
【0019】
熱可塑性樹脂として、特に熱可塑性エステル系樹脂を用いた成形部材の分野においては、エステル交換反応(共重合化)を促進させることで2種以上の熱可塑性エステル系樹脂を互いに微分散化できることが報告されている。しかしながら、これまでの技術では、エステル交換(共重合化)を促進させると、解重合による低分子量体の生成が進行し、これにより得られる成形部材の発泡を伴ったり、分子鎖切断が進行して分子量低下による成形部材の機械物性低下(引張破断伸び率が小さくなるなど)を伴う等の不具合があり、エステル交換反応の促進による樹脂の微分散化は、実用化されるには至っていない。
【0020】
このため、実際には、エステル交換反応を抑制することにより物性低下を防いだ成形部材が実用品として用いられているのが現状である。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の物性低下の問題を解決し、熱可塑性結晶性樹脂を用いて、耐屈曲性、耐薬品性などの物性に優れた成形部材、エンドレスベルト及び該エンドレスベルトを用いた、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等に利用される中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルト等の画像形成装置用ベルト並びにこの画像形成装置用ベルトを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形部材は、エステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂、電気抵抗値調整のための導電性物質、反応触媒及びキレーターを加熱混合し、成形してなり、導電性物質としてカーボンブラックを1〜50重量%含有することを特徴とする。
【0023】
即ち、本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、従来より広く用いられているエステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂に着目し、その共重合化及び高分子量化のための反応触媒及びキレーターを加熱混練させると、成形条件に影響を受けることなく、エステル交換反応等による共重合化や高分子量化がなされた成形部材を安定に得ることができ、従来のエステル交換反応を抑制させた手法で得られる成形部材よりも、耐屈曲性などの物性が優れ、導電性物質を配合しても機械物性の低下の問題は殆ど起こらないことを見出し、本発明に到達した。
【0024】
本発明において、反応触媒としてはチタン(Ti)系化合物が好ましく、その中でもアルキルチタネートが特に好ましい。添加するキレーターとしては特に制限はなく公知のキレーターを用いることができるが、その中でもリン(P)系化合物が好ましい。
【0025】
また、エステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂としてはポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルが好適である。
【0027】
本発明のエンドレスベルトはこのような本発明の成形部材よりなるものであり、導電性物質を含有する場合において、表面抵抗率が1〜1016Ωであり、かつ1本のエンドレスベルトにあっては該抵抗率の最大値が最小値の100倍以下であることが好ましい。
【0028】
本発明の画像形成装置用ベルトは、この導電性エンドレスベルトからなる中間転写ベルト、搬送転写ベルト又は感光体ベルトである。
【0029】
本発明の画像形成装置は、この画像形成装置用ベルトを備えるものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明における成形原料の各配合成分及びその配合割合について説明する。
【0032】
(エステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂)
本発明に用いる熱可塑性結晶性樹脂は、エステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂であれば良く、例えば、主鎖にエステル結合を有するポリエステルや、側鎖にエステル結合を有する結晶性高分子が挙げられる。なお、本発明で用いる熱可塑性結晶性樹脂とは、結晶化度が10%以上100%以下であるものを指す。
【0033】
具体的にはPAT(ポリアルキレンテレフタレート)が好ましく、なかでもPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)はより好ましく、PBTは結晶化速度が速いので成形条件による結晶化度の変化が少なく、一般に30%前後の結晶化度で安定している点で特に好ましい。
【0034】
また、本発明に用いる熱可塑性結晶性樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で共重合成分を導入することもできる。具体的な例としてエステル結合を主鎖とし、ポリメチレングリコールなどのエステル結合を導入したものなどを挙げることができる。
【0035】
本発明に用いる熱可塑性結晶性樹脂の分子量に特に制限はなく、例えば、重量平均分子量10,000〜100,000程度の一般的な分子量の樹脂を用いることができるが、引張破断伸びなどの機械物性の高い要求がある場合には高分子量のものが好ましい。この場合の分子量は20,000以上が好ましく、25,000以上であればさらに好ましく、30,000以上であれば特に好ましい。
【0036】
本発明においては、このようなエステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂の1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0037】
また、エステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂に、該エステル成分と反応触媒により反応し得る官能基を有する熱可塑性樹脂を混ぜて用いることもできる。この場合の官能基の例としては、水酸基やカルボキシル基が挙げられる。
【0038】
(反応触媒)
反応触媒は、熱可塑性結晶性樹脂に含有されるエステル結合の反応を触媒する能力を有していれば良く、特に制限はない。具体的には、有機酸と水酸基を縮合できる能力を有するポリエステル系重合触媒等を用いることができる。
【0039】
反応触媒のなかでもTi(チタン)系化合物が好ましく、活性が高いことからアルキルチタネートが特に好ましい。アルキルチタネートの中でもテトラブチルチタネート又はテトラキス(2−エチルヘキシル)オルソチタネートが好ましく、これらはTYZOR TOT(DuPont製)やTYZOR TBT(DuPont製)として市販品を容易に入手することができる。
【0040】
また、Ti系反応触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属含有化合物又は亜鉛含有化合物と組み合わせることで、より有効に作用するので好ましく、なかでもMg(マグネシウム)含有化合物を併用することは特に好ましい。
【0041】
Mg(マグネシウム)を含む化合物としては特に制限はないが、有機酸マグネシウム塩が好ましく、酢酸マグネシウムが特に好ましい。その使用量は、Ti系化合物のTi元素に対するMg含有化合物のMg元素の重量比Mg/Tiで2/8〜8/2が好ましく、5/5程度が特に好ましい。
【0042】
成形材料中の反応触媒の含有量としては、少なすぎると有効に作用しないことがあることから、ある程度多い方が好ましく、反応触媒中の金属分の重量が成形原料の合計重量に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上であればさらに好ましく、20ppm以上であれば特に好ましい。一方、エステル系樹脂は重金属の多量存在下で解重合を起こすことがあるため、反応触媒の含有量は多過ぎないことが好ましく、反応触媒中の金属分の重量が成形原料の合計重量に対し10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下であればさらに好ましく、500ppm以下であれば特に好ましい。なお、以下において、成形原料の合計重量に対する反応触媒としてのTi系化合物のTi元素の重量割合を「Ti濃度」と称す場合がある。
【0043】
(キレーター)
反応触媒の活性が高すぎると、樹脂の解重合を促進して分子量低下による機械的物性低下、低分子量体発生に伴う発泡等が問題になることがある。
【0044】
そこで、本発明では、反応触媒中の金属にキレートする能力を有するキレーターを用いて、解重合を抑制する。
【0045】
キレーターの種類としては特に制限はなく、公知のキレーターを用いることができる。
【0046】
例としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル、リン酸塩等のP系化合物、ヒドラジン類を挙げることができ、これらは例えば、イルガホス168(日本チバガイギー(株)製)、PEP36(旭電化工業(株)製)、サンドスタブP−EPQ(クラリアントジャパン(株)製)の亜リン酸エステル、IRGANOXMD1024(日本チバガイギー(株)製)、CDA−6(旭電化工業(株)製)のヒドラジン類などとして容易に市場から入手することができる。中でも、P系化合物は特に好ましい。
【0047】
以下にキレーターとしてのP系化合物について詳細に説明する。
【0048】
反応触媒、例えばTi系化合物は共重合化や高分子量化の触媒として有効ではあるが、副反応としての解重合も促進し、活性が高すぎると解重合の方が優先することもある。本発明においては、キレーターとして配合されたP系化合物は反応触媒としてのTi系化合物のTiに配位する。これにより、触媒としての反応規則性が高くなり、副反応の解重合を抑制して、共重合化と高分子量化を促進することができる。
【0049】
P系化合物としては、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸塩、及び亜リン酸エステルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0050】
リン酸塩、亜リン酸塩としては金属塩であれば特に制限はないがアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0051】
リン酸エステルとしては下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0052】
【化1】
Figure 0003636102
【0053】
((I)式中、R1,R2,R3はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、Zは単結合又は酸素原子で少なくともその一つは酸素原子である。)
【0054】
リン酸エステルの具体例としてはリン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0055】
また、亜リン酸エステルとしては下記一般式(II)〜(IV)で示されるものが挙げられる。
【0056】
【化2】
Figure 0003636102
【0057】
((II)式中、R4,R5,R6はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルアルキル基、アルキルアリール基を示し、Zは単結合又は酸素原子で少なくとも一つは酸素原子である。)
【0058】
その具体例としては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、デシル−ジフェニルホスファイト、フェニル−ジ−2−エチルヘキシルホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト等が挙げられる。
【0059】
【化3】
Figure 0003636102
【0060】
((III)式中、R7,R8,R9,R10はそれぞれ独立に(II)式のR4,R5,R6の定義に属するものであり、Zは(II)式のZと同一定義のものである。Yは炭素数1〜30のアルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルアルキレン基、アルキルアリーレン基を示す。)
【0061】
その具体例としては、テトラフェニル−4,4'−イソプロピリデン−ジフェノールジホスファイト、テトラトリデシル−4,4'−イソプロピリデン−ジフェノールジホスファイト、テトラトリデシル−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル−4,4'−ビフェニレン)ホスファイト等が挙げられる。
【0062】
【化4】
Figure 0003636102
【0063】
((IV)式中、R11は炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルアルキル基、アルキルアリール基であり、R12は炭素数1〜20のアルキレン基であり、Zは式(II)のZと同一定義のものである。)
【0064】
その具体例としては、ビス(ステアリル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0065】
上記した各種の化合物の内でも、特にトリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ビス(ステアリル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0066】
キレーターの配合量は含有反応触媒量により異なるので特に規定しないが、少ないと反応抑制剤としての添加効果を殆ど発揮せず、ある程度の濃度を超えた時点から顕著に効果を発揮する。従って、本発明においては、成形原料中における反応触媒の金属にキレートするキレーターの元素重量として好ましくは10ppm以上、より好ましくは50ppm以上、特に好ましくは100ppm以上とする。なお、キレーターの配合量が多過ぎると反応触媒の活性が失われ、良好な成形部材が得られなくなるため、成形原料中における反応触媒の金属にキレートするキレーターの元素重量として6000ppm以下、特に3000ppm以下とする。なお、以下において、成形原料の合計重量に対するキレーターの反応触媒の金属にキレートする元素の重量割合を「キレート元素濃度」と称す場合がある。
【0067】
(導電性物質)
本発明において、成形部材の電気抵抗値を調整するために導電性物質を配合する。特に画像形成装置に用いられるエンドレスベルト等においては電気的にトナーや紙等を吸着、転写させるために表面抵抗値や体積抵抗値を用途に合わせて調整する必要があるため、成形原料中に導電性物質を配合する。
【0068】
配合する導電性物質としては、分散性に優れているカーボンブラックを用いる。
【0070】
カーボンブラックの種類としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが好適に使用でき、この中でも不純物としての官能基が少なくカーボン凝集による外観不良を発生しにくいアセチレンブラックが特に好適に使用できる。さらに一次粒子径が10〜100nm、比表面積10〜200m2/g,pH値3〜11のものがより好ましい。
【0071】
また、使用するカーボンブラックは1種類であっても2種類又はそれ以上であっても良い。さらには、カーボンブラックには樹脂を被覆したカーボンブラックや、黒鉛化処理したカーボンブラックや、酸性処理したカーボンブラック等の公知の後処理工程を施したカーボンブラックを用いても何ら問題はない。
【0072】
また、導電性物質の分散性を向上させる目的でシラン系、アルミネート系、チタネート系、又はジルコネート系等のカップリング剤で処理したカーボンブラックを用いても良い。
【0073】
導電性物質の配合量としては、使用する導電性物質の物性により発現する抵抗値は変化するので、所望する抵抗値が得られる導電性物質濃度を見極めて設定する必要がある。本発明においては、成形部材中のカーボンブラックの割合(以下、例えば「カーボンブラック濃度」と称す場合がある。)が、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは1〜25重量%とする。上記範囲を超えると製品の外観が悪くなり、また、材料強度が低下して好ましくない
【0074】
(付加的配合材;任意成分)
本発明の成形部材の成形原料には、各種目的に応じて任意の配合成分を配合することができる。
【0075】
具体的には、日本チバガイギー社製イルガノックス1010(商品名)などの酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0076】
更に、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、第2,第3成分として各種熱可塑性樹脂、各種エラストマー、熱硬化性樹脂、フィラー等の配合材を配合することができる。
【0077】
付加成分としての熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロック又はランダム共重合体、ゴム又はラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又は、その水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリフッ素化ビニリデン、ポリフッ素化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種又はこれらの2種以上の混合物からなるものが使用できる。
【0078】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の1種又はこれらの2種以上の混合物からなるものが使用できる。
【0079】
また、各種フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム(重質、軽質)、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラス繊維、ガラスビーズ、ベントナイト、アスベスト、中空ガラス玉、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化チタン、炭素繊維、アルミニウム繊維、スチレンスチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩等のフィラーの他、添加剤として酸化防止剤(フェノール系、硫黄系、リン酸エステル系など)、滑剤、有機・無機の各種顔料、紫外線防止剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、難燃剤、架橋剤、流れ性改良剤等を挙げることができる。
【0080】
次に、本発明における加熱混練、成形、熱処理方法、成形品の物性、用途等について説明する。
【0081】
(加熱混練,成形,熱処理)
本発明においては、熱可塑性結晶性樹脂、反応触媒、キレーター及び必要に応じて添加される上記付加的配合材を加熱混練して樹脂組成物とした後に成形部材を成形しても良く、熱可塑性結晶性樹脂、反応触媒、キレーター及び必要に応じて添加される上記付加的配合材を加熱混練してそのまま成形部材を成形しても良い。この加熱混練に当っては、予め原料を乾燥することにより、より一層良好な物性の成形部材を得られる場合があることから、加熱混練に先立つ原料の乾燥処理は有効である。
【0082】
また、場合によっては、加熱混練して樹脂組成物のペレットとした後に、用いた熱可塑性樹脂の融点以下で熱処理を施してエステル結合を生成させた後、成形部材に成形することもできる。この場合の熱処理条件は、用いた熱可塑性樹脂の融点より20〜150℃程度低い温度で、10〜120分程度とするのが好ましい。
【0083】
加熱混練の手段には特に制限はなく公知の技術を用いることができる。例えば、まず成形原料を混練して樹脂組成物とするのであれば、一軸押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダーなどを用いることができる。また、こうして得た樹脂組成物からエンドレスベルトを得る場合でも公知の技術を用いることができる。例えば射出成形機、押し出し成形機などを用いて常法に従って成形することができる。
【0084】
このようにして得られた成形部材を熱処理することにより、より物性の向上した成形部材とすることが可能となる。この場合、熱処理条件は用いる原料樹脂にもよるが、通常60〜200℃の温度、好ましくは70〜120℃の温度で5〜60分、好ましくは10〜30分程度である。このような熱処理を行うことにより、エンドレスベルトとした場合等において、後述の耐折回数や引張弾性率の向上が見られる。
【0085】
(本発明の成形部材の用途)
本発明の成形部材の用途に特に制限はなく、OA機器の構成部品,機能部材、自動車の外装部品,内装材、家電機器の構成部材、汎用フィルムなどとして幅広く用いることができる。
【0086】
なかでも耐屈曲性など要求物性の厳しいOA機器分野、特に機能部材には好適に用いることができ、例えばエンドレスベルト形状として、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等の画像形成装置に中間転写ベルト,搬送転写ベルト,感光体ベルトなどとして用いると、割れ,伸びなど不具合が少ないので好適である。
【0087】
以下に、本発明の成形部材の好適な使用例の一例としてのエンドレスベルトについて説明する。
【0088】
(エンドレスベルト)
本発明のエンドレスベルトを得るには、前述の熱可塑性結晶性樹脂、反応触媒、キレーター及び必要に応じて配合されるその他の付加成分を例えば二軸混練押出機により混合し、ペレット化した後にエンドレスベルトとなるように成形する手法が特に好ましく用いられる。
【0089】
成形方法については、特に限定されるものではなく、連続溶融押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、あるいはインフレーション成形法など公知の方法を採用して得ることができるが、特に望ましいのは、連続溶融押出成形法である。特に押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押出方式の内部冷却マンドレル方式あるいはバキュームサイジング方式が好ましく、内部冷却マンドレル方式が最も好ましい。
【0090】
また、この成形時の温度,滞留時間の適正化により、より良好な物性のエンドレスベルトを得ることができるので、各配合にあわせて条件を調整することが好ましい。
【0091】
(エンドレスベルトの物性)
本発明によれば、以下のような物性を有するエンドレスベルトを得ることができる。
【0092】
・耐折回数
本発明のエンドレスベルトを例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合、耐屈曲性が悪いとクラックが発生して画像が得られなくなることから、耐屈曲性の良好なエンドレスベルトが好ましい。
【0093】
耐屈曲性の程度は、JIS P−8115の耐折回数の測定方法に従うことで定量的に評価でき、耐折回数の大きいエンドレスベルトほどクラックが入りにくく、耐屈曲性に優れていると判断することができる。
【0094】
具体的な数値としては、500回以上であれば一応エンドレスベルトとしての機能を発揮して使用することができるが、実用的には5000回以上が好ましく、10000回以上であれば更に好ましく、30000回以上であれば、特にクラックが発生しにくくなるので特に好ましい。
【0095】
・引張弾性率
エンドレスベルトの引張弾性率が低いと、例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合に張力により少し伸びが発生してしまい、色ズレなど不具合を発生することがあるので引張弾性率が高い方が好ましく、具体的には1000MPa以上が好ましく、1500MPa以上であるとさらに好ましく、2000MPa以上であるとさらに好ましく、2500MPa以上であれば色ズレなどの不具合を大幅に抑えることができるので特に好ましい。
【0096】
・表面抵抗率
本発明のエンドレスベルトでは導電性物質としてカーボンブラックを配合することにより導電性を得ることができる。エンドレスベルトの抵抗領域は目的により異なるが、表面抵抗率1〜1×1016Ωの範囲から選定することが好ましい。
【0097】
表面抵抗率の更に好ましい範囲は用途により異なるが、例えば感光体ベルトとして用いる場合には必要に応じて外表面の電荷を内表面に逃がせるように1〜1×106Ωと低い表面抵抗率が好ましく、中間転写ベルトとして用いる場合には帯電−転写の容易にできる1×106〜1×1011Ωが好ましく、搬送転写ベルトとして用いる場合には帯電しやすく高電圧でも破損しにくい1×1010〜1×1016Ωと高い領域が好ましい。
【0098】
また、エンドレスベルト1本中の表面抵抗率の分布は狭い方が好ましく、それぞれの好ましい表面抵抗率領域において、1本中の最大値が最小値の100倍以内であることが好ましく、10倍以内であることが特に好ましい。
【0099】
エンドレスベルトの表面抵抗率は例えばダイヤインスツルメント(株)製ハイレスタ,ロレスタやアドバンテスト(株)製R8340Aなどにより容易に測定することができる。
【0100】
・エンドレスベルトの厚み
エンドレスベルトの厚みは50〜1000μmが好ましく、80〜500μmが更に好ましく、100〜200μmであれば特に好ましい。
【0101】
(エンドレスベルトの用途)
本発明のエンドレスベルトは、電子写真式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ機等の画像形成装置に中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルトなどとして用いた場合、割れ、伸びなど不具合が少なく、長期に亘り安定に使用することができる。
【0102】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0103】
以下の実施例及び比較例では、下記の原料及び成形条件でエンドレスベルトを製造し、その評価を行なって結果を表1に示した。
【0104】
(原料)
原料は下記のものを用い、配合割合は表1の通りとした。
【0105】
[熱可塑性結晶性樹脂]
PBT(重量平均分子量40,000;PS換算重量平均分子量122,000;融点225℃)
PET(重量平均分子量44,000;PS換算重量平均分子量131,000;融点250℃)
【0106】
[反応触媒]
Ti系化合物(チタニウム(IV)ブトキシド)
【0107】
[キレーター]
P系化合物(サンドスタブP−EPQ:テトラキス(2,4−ジターシャリブチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジホスホナイト(構造式は下記の通り);クラリアントジャパン(株)製)
ヒドラジン類(IRGANOX MD1024;日本チバガイギー(株)製)
【0108】
【化5】
Figure 0003636102
【0109】
[導電性物質]
カーボンブラック(デンカブラック;電気化学(株)製)
【0110】
(加熱混練)
各原料を、二軸混練押出機(IKG(株)製 PMT32)を用いて溶融混合し、樹脂組成物をペレット化した。
【0111】
(エンドレスベルトの成形方法)
この材料ペレットを130℃で8時間乾燥し、直径φ180mm、リップ幅1mmの6条スパイラル型環状ダイ付き40mmφの押出機により、環状ダイ下方に溶融チューブ状態で押し出し、押し出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した外径170mmの冷却マンドレルの外表面に接しめて冷却固化させつつ、次に、シームレスベルトの中に設置されている中子と外側に設置されているロールにより、シームレスベルトを円筒形に保持した状態で引き取りつつ340mm長の長さで輪切りにして下記に記載の厚み、滞留時間となるよう押出量、引き取り速度を調整し、直径169mmの樹脂製シームレスエンドレスベルトとした。なお、エンドレスベルトの物性の滞留時間依存性を評価するため、滞留時間を調節し、下記の2種類の条件で成形した。
【0112】
条件A;滞留時間12分、厚み150μmを目標とし、厚みの範囲が±15μmになるように調整して成形
条件B;滞留時間24分、厚み150μmを目標とし、厚みの範囲が±15μmになるように調整して成形
【0113】
この条件Bでは、条件Aより滞留時間が長くなるようスクリューの回転を遅くして成形すると共に、条件Aとベルト厚みが同じになるように引取速度も遅く調整して成形した。
【0114】
(評価)
評価は必要に応じ、エンドレスベルトを適当な大きさに切り開いて実施した。
【0115】
・耐折回数
JIS P−8115準拠
各サンプルで3回づつ測定し、平均値(有効数字2桁)を代表値とした。耐折回数は、耐屈曲疲労性の指標で数字が大きいほど割れにくく丈夫であることを意味する。
【0116】
・厚み
東京精密(株)製のマイクロメーターを用いてシームレスベルトの円周方向20mmピッチで測定した。
【0117】
・表面抵抗率
表面抵抗率は測定器により好適に測定できる領域が異なるので以下のように使い分けた。測定時間は10秒とし、エンドレスベルトの円周方向に20mmピッチで測定した。
【0118】
1〜106Ωとなるサンプル :ダイヤインスツルメント(株)製 ロレスタ(商品名)
106〜1013Ωとなるサンプル :ダイヤインスツルメント(株)製 ハイレスタ(HA端子)(商品名)(印加電圧500V)
1013〜1016Ωとなるサンプル:アドバンテスト(株)製 R8340A (商品名)(JIS電極)(印加電圧500V)
【0119】
比較例1
表1の配合で、まず、成形条件Aで表面抵抗率を109Ω程度に調整してエンドレスベルトを成形した。この表面抵抗率のエンドレスベルトは中間転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0120】
この比較例1では、Ti系化合物は配合しなかったので、共重合化、高分子量化の反応は生じなかったと考えられる。得られた成形部材の耐折回数は3000回であった。また、成形条件Bにおいても条件A品とほぼ同物性のエンドレスベルトを得ることができた。
【0121】
本比較例のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載したところ、良好な初期画像を得た。さらに連続で画像出力を続けたが、約2万枚出力した時点でエンドレスベルトにクラックが発生し、画像出力ができなくなった。
【0122】
本樹脂組成物ペレットは成形条件が多少変化してもベルトの物性があまり変化しないので熱的に安定で扱いやすい意味で好ましい材料といえる。ただし、耐折回数3000回程度であるので、中間転写ベルトとしての初期物性は実用性能を有するが、連続使用によりクラックが発生するので、市場では、交換部品として扱わざるを得ず、物性的には不十分であるといえる。
【0123】
比較例2
比較例1の配合を基準とし、Ti系化合物をTi濃度98ppm配合した。得られたペレットでエンドレスベルトの成形を試みたが、条件A,Bどちらにおいてもダイ出口から出てきた樹脂は劣化が激しく、ドローダウンしてしまい、エンドレスベルトを得ることができなかった。
【0124】
これは、Ti系化合物が共重合化と高分子量化と共に、解重合の触媒として作用し、本比較例2の条件のもとでは、解重合の方が優先してしまったためと考えられる。
【0125】
比較例3
比較例1を基本配合とし、キレーターとしてのP系化合物を0.5重量部配合した。
【0126】
この比較例3では、比較例1と同様にTi系化合物を配合しなかったので、共重合化、高分子量化の反応は生じなかったと考えられる。得られた成形部材の耐折回数は3200回であった。また、成形条件Bにおいても条件A品とほぼ同物性のエンドレスベルトを得ることができた。
【0127】
ただし、耐折回数が低いので、比較例1と同様に中間転写ベルトとしての初期物性は実用性能を有するが、連続使用によりクラックが発生するので、市場では、交換部品として扱わざるを得ず、物性的には不十分であるといえる。
【0128】
実施例1
比較例3の配合を基本とし、さらにTi系化合物をTi濃度69ppm配合した。
【0129】
その結果、成形条件A,Bのいずれでも、良好なエンドレスベルトを得ることができ、特に条件Aでは、耐折回数は18,000回と非常に高い値が得られた。
【0130】
本実施例1では、成形条件が変わっても、安定して良好且つ高物性のエンドレスベルトを得ることができた。これは、Ti系化合物にP系化合物が配位したことで、触媒としての反応選択性が高められたため、成形条件が変わっても安定して物性の高いエンドレスベルトが得られるようになったためと考えられる。
【0131】
実施例2
実施例1の組成を基準とし、Ti系化合物及びP系化合物の配合量をさらに高めた。
【0132】
これにより、実施例1よりも更に耐折回数の高い良好なエンドレスベルトを安定的に得ることができた。
【0133】
本実施例2のエンドレスベルトを中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載したところ、良好な初期画像を得た。さらに連続で画像出力を続けたが、画像形成装置の目標寿命となる約10万枚出力してもエンドレスベルトにクラックが発生することがなかった。また、耐折回数も高く、中間転写ベルトとして使用しても初期物性を満足し、長期にわたり連続使用できるので良好な物性であるといえる。
【0134】
実施例3
実施例2の組成を基準とし、カーボンブラック濃度を下げて表面抵抗率1012Ω程度のエンドレスベルトを得た。本エンドレスベルトは搬送転写ベルトとして好適に用いることができる。
【0135】
実施例4
実施例3の組成を基準とし、カーボンブラック濃度を上げて表面抵抗率104Ω程度のエンドレスベルトを得た。本エンドレスベルトは感光体ベルトの基材として好適に用いることができる。
【0136】
実施例5
実施例2の組成を基準とし、キレーターとしてP系化合物の代わりにヒドラジン類を1重量部配合してエンドレスベルトを得た。
【0137】
上記実施例3〜5においても、耐折回数の高い良好なエンドレスベルトを安定的に得ることができた。
【0138】
【表1】
Figure 0003636102
【0139】
【発明の効果】
以上の実施例及び比較例からも明らかな通り、本発明によると、耐屈曲性や耐薬品性等に優れ、溶融混合時の反応による物性劣化を抑えたエンドレスベルト等の熱可塑性結晶性樹脂成形部材と、このエンドレスベルトを用いた画像形成装置用ベルトと、この画像形成装置用ベルトを用いた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の中間転写装置の側面図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性エンドレスベルト
7,8,9 搬送ローラ

Claims (7)

  1. エステル結合を有する熱可塑性結晶性樹脂、電気抵抗値調整のための導電性物質、反応触媒及びキレーターを加熱混合し、成形してなり、導電性物質としてカーボンブラックを1〜50重量%含有することを特徴とする成形部材。
  2. 反応触媒がチタン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の成形部材。
  3. 反応触媒がアルキルチタネートであることを特徴とする請求項2に記載の成形部材。
  4. キレーターがリン系化合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の成形部材。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の成形部材からなることを特徴とするエンドレスベルト。
  6. 請求項に記載のエンドレスベルトからなる画像形成装置用中間転写ベルト、搬送転写ベルト、又は感光体ベルトである画像形成装置用ベルト。
  7. 請求項に記載の画像形成装置用ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。
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