JP3634560B2 - 既充填薬液容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、予め薬液が充填された容器、いわゆるプレフィルドシリンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
患者に輸液を投与するのに先立って、輸液容器内に充填された輸液にビタミン剤、ミネラル類、抗生物質のような様々な薬剤を必要に応じて配合することが行われている。
また、救急医療の現場では注射器によって自律神経作用薬、昇圧薬などの複数併用および大量投与が行われている。
このような薬剤の配合や投与は、バイアル瓶から注射器によって薬液を吸引し、次いで輸液容器あるいは直接血管に薬液を注入することによって行われている。しかしながら、このような薬剤の配合及び投与は操作が煩雑であり、配合に要する時間、投与に要する時間が長くかかるという欠点がある。さらに上記の操作は、大気と接触した状態で行われるため、細菌汚染や異物混入のおそれがあった。
【0003】
これらの問題を解決するものとして注射器に予め薬液を充填し先端のノズルにゴムキャップをしたいわゆるプレフィルドシリンジが提案された。しかし、従来のプレフィルドシリンジは、シリンジノズルがキャップによって密着する形で被せられている。従って、高圧蒸気滅菌時、ノズルとキャップの間に蒸気が侵入せずこの部分の滅菌が行えなかった。この問題を解決するために蒸気が侵入するようノズルとキャップの間に隙間を設けたものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、蒸気が侵入するようノズルとキャップの間に隙間を設けた場合であっても、滅菌工程終了後に乾燥が容易に行われず、残った水分がカビ等の発生源になる可能性があるなどの問題があった。
従って、本発明の課題は滅菌時ノズル部分が完全に滅菌でき、また滅菌後の乾燥も容易かつ確実に行えるプレフィルドシリンジを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の本発明により達成される。
すなわち、本発明は、内壁によって規定される空間に薬液を充填した薬液収納部と、該薬液収納部に収納された薬液を吐出するための開口を形成するとともにその基端部外周に雄ネジを有するノズルと、前記薬液収納部内の薬液を吐出させる薬液吐出機構とを有する容器本体と、前記ノズルに被冠され、先端側に前記開口を液密に封止する封止部を備えた透明性を有するキャップとを有し、
前記キャップは、前記封止部と反対側のキャップ開放端側に、軸方向に気体流通可能な隙間を有した状態で前記雄ネジに螺合する雌ネジで構成された係止部を有し、かつ前記係止部と前記封止部との中間部にキャップ内面とノズル外表面とで形成された空間部を有し、
前記雄ネジと前記雌ネジとが螺合して前記封止部が前記開口を液密に封止した状態で、前記空間部が前記間隙を介して外部と連通し、これにより滅菌用水蒸気が前記空間部内へ侵入可能であるとともに、滅菌後は前記空間内に侵入した水蒸気が外部に排出されて乾燥可能となるよう構成されていることを特徴とする既充填薬液容器である。
【0006】
また、前記薬液吐出機構は、柔軟材料で形成され、外圧を加えることにより薬液を吐出可能とするよう構成された薬液収納部であることが好ましい。
また、前記薬液吐出機構は、薬液収納部が硬質材料で形成され一端が開放し他端が閉塞した筒状体と、前記一端を封止し筒状体内を軸方向に液密に摺動可能なガスケットとにより形成され、前記ノズルが前記他端に設けられていることにより薬液収納部の薬液を吐出可能とするよう構成されていることが好ましい。
また、前記封止部は、中空針を刺通して薬液収納部内と外部とを連通可能とする再シール性ゴム部材で構成されていることが好ましい。
また、前記キャップの閉塞端面に凹部が設けられ、該凹部の底面が前記再シール性ゴム部材で形成されていることが好ましい。
また、前記凹部の内周面は、前記再シール性ゴム部材に向かって中空針を導くようなテーパー状をなしていることが好ましい。
また、前記キャップは、キャップ本体を有し、前記封止部は、前記キャップ本体の内部に固定されたゴム膜であることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
上述したように本発明の既充填薬液容器は、薬液吐出機構によって吐出される薬液を収納した容器本体のノズルを封止するキャップをノズルを滅菌可能なようにノズルとの間に蒸気が通過可能な隙間を持たせたものにおいて生ずることのある、キャップ内表面のくもりやキャップとノズルの間に残存した水分による黴の発生のおそれをなくしたものである。すなわち、キャップの閉塞端側に容器本体内を液密に封止する封止部を有するとともにキャップ開放端側に隙間を有した状態でノズルと係止する係止部を有し、かつキャップ内部の閉塞端と開放端との中間部にはキャップ内面とノズル外表面とで形成される空間部を有するよう構成されており、滅菌後、キャップ内面とノズル外表面間に残存した水分が容易に蒸散することができる。その結果、キャップ部分のくもりや黴の発生のおそれが除去された。
【0008】
薬液収納部は内部空間に用途に応じてビタミン剤、抗生物質、抗癌剤、等の薬液が充填されている。薬液収納部の材質はガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、各種エラストマー等の合成樹脂、あるいはステンレスやアルミニウム等の金属等が利用でき、後述する薬液吐出機構の構造に応じて適切な材料を選択することができるが、充填された薬液を目視できるように透明性のある材料であることが好ましい。また、本発明の既充填薬液容器の滅菌時あるいは保管中の雰囲気に含まれる酸素等のガスや水分によって変質しやすい薬液が充填されている場合にはそれぞれガス非透過性、水分非透過性の材質を選択することが好ましい。これらの例としてはガラスや、ステンレスやアルミニウム等の金属、合成樹脂では環状ポリオレフィン、ポリビニルアルコール等が好ましく、合成樹脂を酸化珪素や酸化アルミニウムあるいは上記したガス・水分非透過性樹脂で被覆したもの、さらに、必要に応じてこれらを層成分の一つとして多層構造としたものがある。また、本発明の既充填薬液容器は湿熱滅菌されるので、これに耐える耐熱性を有することが好ましい。
ノズルは薬液収納部内に充填された薬液を外部に吐出できる内部通路を有しており、通路の両端は外部と薬液収納部とにそれぞれ連通している。そしてノズルは薬液収納部と一体に同一の材料で形成されることが望ましい。
【0009】
次に薬液吐出機構について説明する。薬液吐出機構は、充填された薬液を薬液収納部からノズルを介して外部に吐出するためのものであり、薬液に対して圧を加えることにより吐出する構造をとることが好ましい。
具体的には、薬液収納部を合成樹脂等で柔軟に形成し、薬液収納部に外圧を加えて薬液を加圧することで吐出可能とするよう構成したものがある。薬液収納部を形成する材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、各種エラストマー等の合成樹脂が挙げられ、やや硬い材料を採用する場合には薬液を加圧しやすいように薄くしたり、添加剤により軟質化することが好ましい。なお、選択した薬液収納部の形成材料ではノズルとしての硬度が不十分と判断される場合には別部材でノズルを形成し、薬剤収納部と一体化することもできる。
【0010】
また、いわゆるシリンジ状に薬液収納部を構成することにより、本発明の既充填薬液容器に薬液吐出機構を付与することもできる。すなわち、硬質の薬液収納部を一端が開放し他端が閉塞した筒状体に形成し、開放している一端を液密に封止し筒状体内を軸方向に液密に摺動可能とするガスケットと、閉塞している他端側にノズルとが設けられていることにより薬液収納部の薬液を吐出可能とするよう構成されている。ガスケットには予めあるいは使用時直前にプランジャーを結合し、薬液の吐出を容易にすることが好ましい。予め結合してある場合は、ガスケットとプランジャーを嵌合によって結合したり、一体成形によって一体的に成形することができる。また、使用時直前に両者を結合する場合は、ガスケットとプランジャーに一対の雌雄ネジを設けたり、ラチェット機構を採用することができる。筒状体を形成する材料は、筒状体を硬質とすることができる材料であり、ガラス、ステンレスやアルミニウム等の金属、合成樹脂ではポリプロピレンや環状ポリオレフィン等が好ましい。ガスケットを形成する材料は、天然ゴムや合成ゴム、各種エラストマーが使用できる。また、プランジャーの形成材料は、薬液の吐出や吸引の操作に耐える硬質材料で形成され、ガラス、ステンレスやアルミニウム等の金属、ポリプロピレンやポリスチレン等の硬質合成樹脂等、各種硬質材料から適宜選択できる。
【0011】
容器本体に設けられ、薬液収納部に充填された薬液が使用時までノズルから吐出しないよう封止しているキャップは、閉塞端と開口端とを有する中空体で、閉塞端側ではノズル先端開口を液密に封止している。キャップは、ステンレスやアルミニウム等の金属、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂等で形成することができ、ノズルの先端開口に当接した部分を加硫天然ゴムや合成ゴム、各種エラストマー等の弾性体で形成すればより確実に封止することができ好ましい。また、キャップ先端面の少なくとも中央部を針で刺通可能な合成樹脂やゴム等の材質、好ましくは再シール性を有するものや刺通した中空針にコアリングを生じさせにくい材質を有するもので形成すれば、キャップをノズルに取り付けたまま両頭針等の中空針をキャップ先端面中央部に直接刺通して薬液の投与等を行うようにすることもできる。その際、キャップ先端面中央部がキャップ先端の外周縁より引き込んだ位置に設けられていれば、本発明の既充填薬液容器を包装から取り出しても中空針の刺通部となる部分が汚染されないようにすることができる。引き込みは2mm以上とることが好ましい。
また、キャップ閉塞端内面に凸部を形成し、凸部がノズル内面に嵌入した状態で凸部とノズル内面との間で封止するようにしても良い。この場合、両者間の封止はテーパー嵌合で構成することも、凸部を弾性体としノズル内面に密着させることによってもできる。
【0012】
キャップはさらに基端においてノズルと係止する係止部を有している。係止部は滅菌時に水蒸気がキャップとノズルの間に侵入するための隙間を有している。この隙間は例えば、係止部を一対の雄雌ネジで構成することにより生じるネジ間の隙間を利用することができる。
キャップ内部の閉塞端と開放端との中間部にはキャップ内面とノズル外表面とで形成される空間部が設けられている。この空間部により、滅菌のためにノズルとキャップの間に導入された水蒸気を滅菌後、容易に乾燥させることができる。キャップ内面とノズル外表面との間隔は0.2〜1mmが好ましい。
なお、キャップを形成する各部品はいずれも透明性を有することが液漏れ等の確認を容易にするために好ましい。また、ノズルや薬液収納部も同様の理由あるいは内容物の確認のために透明性を有することが好ましい。
【0013】
【実施例】
以下図示したプレフィルドシリンジに基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るプレフィルドシリンジの縦断面図であり、図2は、本発明の一実施例に係るプレフィルドシリンジを構成するキャップの縦断面図である。プレフィルドシリンジ1はシリンジ本体2とキャップ3とから構成されている。シリンジ本体2は薬液Aが充填された筒状体21、ノズル22、ガスケット23およびプランジャー24を有している。筒状体21は筒状のポリプロピレンや環状オレフィン等からなり、先端が閉塞し基端は開口している。該基端には一対のフランジ21aが対向して設けられている。閉塞した先端にはノズル22が筒状体と一体に設けられ、充填された薬液Aを該ノズルを介して吐出可能とする内部通路22aを有している。ノズル22は基端側外側面にキャップ3の基端側と対をなして螺合部を構成する雄ネジ22bを有している。また、雄ネジ22bより先端側の外側面はルアーテーパーとし、三方活栓等への接続を可能にしている。筒状体21の基端開口よりガスケット23が筒状体内面と液密を維持した状態で軸方向に摺動可能なように挿入され薬液Aの筒状体基端方向への移動を規制している。ガスケットはブチルゴムや加硫天然ゴム等で形成され、摺動性を向上させるために必要に応じてシリコーン等の潤滑剤を塗布したり、摺動部分に低摩擦係数を有するフッ素樹脂等の合成樹脂を配しても良い。ガスケット23の基端にはポリプロピレン等の材質からなるプランジャー24がネジ嵌合により固定されている。従って、使用前はガスケットから外しておけるので収納空間を小さくすることができる。
【0014】
ノズル22にはキャップ3が被冠されノズルの内部通路を封止しており、充填された薬液Aが筒状体先端方向への移動を規制している。キャップ3はキャップ本体31とゴム膜32とからなる。キャップ本体31は先端中央部にキャップ内部に通じる貫通孔31aを有しており、該貫通孔は注射針が刺通しやすいようにテーパーが施され、またキャップ本体の先端部を肉厚に形成することにより貫通孔両端間の距離が大きくとられ、後述するゴム膜32が図示しない包装から開封され外部雰囲気に晒された際にも汚染されないようになっている。キャップ本体31の基端内面には先述のノズルの雄ネジ22bと対をなす雌ネジ31bを有している。雄ネジ22bと雌ネジ31bとは螺合した状態で軸方向に気体流通可能な隙間Bを有しており、滅菌用水蒸気がキャップとノズルの間に侵入でき、この部分の滅菌が確実に行えるよう構成されている。ゴム膜32は、貫通孔31aの基端開口を覆うようにキャップ本体31の内部に固定され、キャップ3をノズル22に螺合し係止した際にノズル先端開口を液密に封止している。ゴム膜32は加硫天然ゴム、合成ゴムあるいは各種エラストマー製で再シール性を有しており、厚さは0.1〜1mmが好ましい。
【0015】
ノズル22外側面からキャップ3の先端内面と雌ネジ31bとの間の内側面を離間するよう構成したことにより空間Cを形成してある。この空間Cによって、滅菌時にノズル−キャップ間に導入された水蒸気を滅菌後容易に乾燥可能となる。
本実施例についてキャップとノズル間の滅菌後の乾燥状態について実験を行った。キャップ本体31に厚さ0.2mmのブチルゴム製のゴム膜32を固定し、かつノズル22とキャップ内面との間隔が0.5mmであるポリプロピレン製のキャップ3を作成した。これを生理食塩水20mlを充填した環状ポリオレフィン製20ml容量のシリンジのノズルに装着した。比較例としてキャップの代わりにノズル外面に密着したゴムキャップを同様の生理食塩水充填シリンジに装着した。実施例及び比較例各25本について105℃の高圧蒸気滅菌またはスプレー滅菌を行った。この2種類の滅菌によりスプレー滅菌では蒸気の侵入の確認を、高圧蒸気滅菌では滅菌終了時の乾燥状態の確認を行い、結果をそれぞれ表1、表2に示した。本発明に係るプレフィルドシリンジは、キャップ−ノズル間の滅菌、乾燥ともに良好に行えることが分かった。
【0016】
【0017】
【0018】
次に、本発明に係るプレフィルドシリンジの使用例について説明する。プレフィルドシリンジに充填された薬液を輸液バッグに混注したり、患者血管へ直接注射する際には、2通りの方法がある。ひとつは、キャップ3を外してノズル22を露出させ、そこに三方活栓やチューブ等の雌ルアーコネクター、あるいは注射針のハブを接続し、これらの用途に供するものである。もうひとつは、キャップ3のゴム膜に中空針の内針を刺通し、内針とは反対側に設けられた外針またはコネクターを有するホルダーをキャップ3に接続するものである。図3はホルダー4の部品図であり、ホルダー4はホルダー本体41とマルチ針42とからなっている。
【0019】
ホルダー本体41はプレフィルドシリンジの1のキャップ3を収納する収納部41aとマルチ針42を固定するホルダー雌ネジ41bとホルダー内周面にホルダー環状凸部41cを有している。マルチ針42は互いに連通する内部通路を有する中空針であるステンレスや合成樹脂製の内針42aおよび外針42bを有し、両者の間にハブ42cが設けられ、該ハブには先述のホルダー雌ネジ41bと螺合する雄ネジ42dがある。また、内針42aを覆うように加硫天然ゴムや合成ゴムあるいは各種エラストマー製の再シール性を有するゴムチップ42eが設けられている。従って、外針を輸液バッグ等の混注口に穿刺したままにしても内針が露出せず、内針をプレフィルドシリンジに刺通しているときのみゴムチップから現れるので、複数本のプレフィルドシリンジを連続して注入することができる。また、血管への刺通時にはさらに外針42bが刺通した血管からの血液の逆流出を防止できる。なお、ホルダーの環状凸部41cはキャップ3の外周面に設けられたキャップ環状凸部31dと係合し、内針42aをプレフィルドシリンジに刺通したときにゴムチップ42eの復元力によりホルダーからプレフィルドシリンジが脱落するのを防止している。
【0020】
使用する手順は、まずホルダー4を輸液容器等の混注口に穿刺する。次に本発明に係るプレフィルドシリンジ1のキャップ部分をホルダーの収納部に収納し、両者に設けられた環状凸部31d、41cを係合させ、ホルダーにプレフィルドシリンジを装着する。このときホルダー内針42aがゴムチップ42eを貫通し、キャップ3のゴム膜32を刺通する。このときの状態を図4に示す。次に、プレフィルドシリンジ1のプランジャー24により充填された薬液を混注口より輸液容器等に注入する。注入が完了した後、プレフィルドシリンジをキャップ3ごとホルダー4から取り外し、複数の薬液を同一の輸液容器等に注入する場合には同様に薬液の充填されたプレフィルドシリンジをホルダーに順次装着して薬液を注入する。また、これらの薬液の混注操作中のゴムチップは、ホルダーからプレフィルドシリンジが抜き取られるごとに元の形状に復元し、液の飛散や浮遊菌による汚染を防止している。
【0021】
本実施例についてキャップ先端ゴム膜の汚染について実験を行った。上記実験と同様に作成し、ゴム膜32をキャップ先端より2mmの位置に着けたキャップ3を装着したプレフィルドシリンジのゴム膜32に上記ホルダー4の内針を刺通した。内針がゴムチップ42eおよびゴム膜32を貫通した状態で、プレフィルドシリンジのプランジャー24を押し込み、プレフィルドシリンジ内の薬液を吐出する操作について、従来のシリンジ(比較例)を使用した混注操作との微生物汚染の点より比較を行った。比較方法は、実施例キャップ先端及び比較例シリンジノズル先端へ強制的に微生物を付着させ、ホルダー又は注射針を使用して混注操作を行い、薬液への菌の侵入を比較した。具体的には保存してあるStaphylococcus Epidermidis(ATCC株番号:No.14990株)をTSA培地上に画線しこれを37℃、24時間培養した後、菌をコンラージ棒で均一の厚さになるように画線したものを用意した。次に実施例では菌繁殖培地に垂直にキャップ先端を押しつけ、比較例ではノズル先端を同様にして押しつけた後、それぞれ上述の混注操作を行い、薬液内への混入菌数を測定した。結果を表3に示す。本発明に係るプレフィルドシリンジはキャップ先端部より2mmの位置にゴム膜を配し封止部材としたため、先端が露出する比較例に比べて汚染がないことが確認された。
【0022】
【0023】
【発明の効果】
また、本発明の既充填薬液容器は、ノズルとキャップの間に空間を有する構造であるので、ノズルの注射針装着部の無菌性が注射針の装着直前まで維持される。その結果、ノズルとキャップ間の水分を容易に除去でき、この部分のくもりが防止できるとともに、残存した水分によるカビや細菌の発生が防止される。
また、本発明の既充填薬液容器は、針管に再シールチップを組み合わせた両頭針を有するホルダーと組み合わせることにより、同種のキャップを有する種類の違う薬剤の充填された既充填薬液容器を連続的に混注あるいは投与することができる。
また、本発明の既充填薬液容器はキャップの先端部に設けられたホルダーの両頭針が穿刺可能な再シール部材が先端より距離を置いて引っ込んだ位置に存在しているので、滅菌後ホルダー装着直前まで先端部の穿刺部分の無菌性が保たれている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプレフィルドシリンジの縦断面図である。
【図2】本発明に係るプレフィルドシリンジを構成するキャップの縦断面図である。
【図3】本発明に係るプレフィルドシリンジに装着され使用されるホルダーの部品図である。
【図4】本発明に係るプレフィルドシリンジの使用状態を示す説明図である。
Claims (7)
- 内壁によって規定される空間に薬液を充填した薬液収納部と、該薬液収納部に収納された薬液を吐出するための開口を形成するとともにその基端部外周に雄ネジを有するノズルと、前記薬液収納部内の薬液を吐出させる薬液吐出機構とを有する容器本体と、前記ノズルに被冠され、先端側に前記開口を液密に封止する封止部を備えた透明性を有するキャップとを有し、
前記キャップは、前記封止部と反対側のキャップ開放端側に、軸方向に気体流通可能な隙間を有した状態で前記雄ネジに螺合する雌ネジで構成された係止部を有し、かつ前記係止部と前記封止部との中間部にキャップ内面とノズル外表面とで形成された空間部を有し、
前記雄ネジと前記雌ネジとが螺合して前記封止部が前記開口を液密に封止した状態で、前記空間部が前記間隙を介して外部と連通し、これにより滅菌用水蒸気が前記空間部内へ侵入可能であるとともに、滅菌後は前記空間内に侵入した水蒸気が外部に排出されて乾燥可能となるよう構成されていることを特徴とする既充填薬液容器。 - 前記薬液吐出機構は、柔軟材料で形成され、外圧を加えることにより薬液を吐出可能とするよう構成された薬液収納部である請求項1に記載の既充填薬液容器。
- 前記薬液吐出機構は、薬液収納部が硬質材料で形成され一端が開放し他端が閉塞した筒状体と、前記一端を封止し筒状体内を軸方向に液密に摺動可能なガスケットとにより形成され、前記ノズルが前記他端に設けられていることにより薬液収納部の薬液を吐出可能とするよう構成されている請求項1に記載の既充填薬液容器。
- 前記封止部は、中空針を刺通して薬液収納部内と外部とを連通可能とする再シール性ゴム部材で構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の既充填薬液容器。
- 前記キャップの閉塞端面に凹部が設けられ、該凹部の底面が前記再シール性ゴム部材で形成されている請求項4に記載の既充填薬液容器。
- 前記凹部の内周面は、前記再シール性ゴム部材に向かって中空針を導くようなテーパー状をなしている請求項5に記載の既充填薬液容器。
- 前記キャップは、キャップ本体を有し、前記封止部は、前記キャップ本体の内部に固定されたゴム膜である請求項1〜6のいずれかに記載の既充填薬液容器。
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1997
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