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JP3634223B2 - 移相器 - Google Patents

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JP3634223B2
JP3634223B2 JP2000008732A JP2000008732A JP3634223B2 JP 3634223 B2 JP3634223 B2 JP 3634223B2 JP 2000008732 A JP2000008732 A JP 2000008732A JP 2000008732 A JP2000008732 A JP 2000008732A JP 3634223 B2 JP3634223 B2 JP 3634223B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、インダクタおよびキャパシタからなる直列回路と並列回路とを交互に切り替えて広い周波数帯域で所望の移相量を得る反射型の移相器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、例えばIEEE−GMTT International Microwave Symposium,1972,pp47−48に示された従来の移相器を示す回路図である。図において、101は高周波信号入出力端子、102は接地部、103はインダクタ、104はPINダイオード、105はキャパシタである。インダクタ103とPINダイオード104とは直列に接続されて、インダクタ103においてPINダイオード104に対して反対側の端子は入出力端子101に接続され、PINダイオード104においてインダクタ103に対して反対側の端子は接地部102に接続される。また、キャパシタ105の一方の端子は入出力端子101に接続され、他方の端子は接地部102に接続される。
【0003】
次に動作について説明する。
PINダイオード104の陽極に正電圧を印加すると、順バイアスで電流が流れて通過状態すなわちオン状態となる。これに対して、PINダイオードの陽極に負電圧を印加すると、逆バイアスで電流が流れなくなり遮断状態すなわちオフ状態となる。オン/オフ状態の切り替えについては、PINダイオード104の陽極に印加する直流バイアス電圧の極性を切り替えることで実施する。
【0004】
図10は、PINダイオード104がオン時の従来の移相器の等価回路を示す図である。図において、110はPINダイオード104のオン抵抗である。インダクタ103とキャパシタ105とにより並列回路111が構成される。また、図11は、PINダイオード104がオフ時の従来の移相器の等価回路を示す図である。図において、120はPINダイオード104のオフ容量、121はPINダイオード104のオフ抵抗、122はPINダイオード104のオフ容量120とPINダイオード104のオフ抵抗121とから構成されるPINダイオード104のオフ時等価回路である。インダクタ103とPINダイオード104のオフ容量120とにより直列回路123が構成される。
【0005】
抵抗分を無視すれば、インダクタとキャパシタとからなる並列回路は共振周波数において開放状態となって反射位相は180度遅れる。また、インダクタとキャパシタとからなる直列回路は共振周波数において短絡状態となって反射位相はゼロになる。そして、並列回路の反射位相と直列回路の反射位相との差として与えられる移相量の周波数に対する微分係数がゼロとなるようにインダクタ103のインダクタンス、キャパシタ105,120のキャパシタンス等を適切に設定すれば、並列回路111の反射移相と直列回路123の反射移相との差を所定の周波数帯域において約180度に保持することができるので、PINダイオード104がオン時の反射位相とオフ時の反射位相との差によって約180度の移相量を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の移相器は以上のように構成されているので、PINダイオード104がオフ状態の際に、キャパシタ105がインダクタ103とPINダイオード104のオフ容量120とから構成される直列回路の寄生容量となるために、直列回路の共振周波数と並列回路の共振周波数とが異なり、180度の移相量を正確に得られないという課題があった。また、マイクロ波、ミリ波といった高周波においては、寄生分により移相量誤差が大きくなるという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、小型で、損失差が小さく、広い周波数帯域で所望の移相量が得られる移相器を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る移相器は、高周波信号入出力端子と、相互に並列に高周波信号入出力端子に接続される第1のスイッチおよび第2のスイッチと、直列に接続された第1のインダクタと第1のキャパシタとから構成されるとともに一方の端子が第1のスイッチに接続され他方の端子が接地部に接続される直列回路と、並列に接続された第2のインダクタと第2のキャパシタとから構成されるとともに一方の端子が第2のスイッチに接続され他方の端子が接地部に接続される並列回路とを備えるようにしたものである。
【0009】
この発明に係る移相器は、高周波信号入出力端子と、相互に並列に高周波信号入出力端子に接続されるインダクタおよびキャパシタと、ドレイン(またはソース)がインダクタに接続されるとともにソース(またはドレイン)が接地部に接続される第1のFETと、ドレイン(またはソース)がキャパシタに接続されるとともにソース(またはドレイン)が接地部に接続される第2のFETと、第1のFETのゲートと第2のFETのゲートとを接続した信号線に制御信号を入力するための制御信号端子とを備えるようにしたものである。
【0010】
この発明に係る移相器は、第1のFETに対して並列に設けられて一方の端子がインダクタに接続されるとともに他方の端子が接地部に接続される第1の抵抗と、第2のFETに対して並列に設けられて一方の端子がキャパシタに接続されるとともに他方の端子が接地部に接続される第2の抵抗とを備えるようにしたものである。
【0011】
この発明に係る移相器は、第1のインダクタのインダクタンスと第2のインダクタのインダクタンスとを等しくするとともに第1のキャパシタのキャパシタンスと第2のキャパシタのキャパシタンスとを等しくし、第1のインダクタのインダクタンスをL、第1のキャパシタのキャパシタンスをC、線路の特性インピーダンスをZとした際に、Z=(L/C)1/2 が成り立つようにしたものである。
【0012】
この発明に係る移相器は、インダクタのインダクタンスをL、キャパシタのキャパシタンスをC、線路の特性インピーダンスをZとした際に、Z=(L/C)1/2 が成り立つようにしたものである。
【0013】
この発明に係る移相器は、上述された移相器として与えられて相互に同じ反射係数を保持するように制御される第1の反射性終端回路および第2の反射性終端回路と、高周波信号入力端子と、高周波信号出力端子と、第1の反射性終端回路、第2の反射性終端回路、高周波信号入力端子および高周波信号出力端子にそれぞれ接続されて、高周波信号入力端子から入力される原信号を第1の反射性終端回路に出力するとともに原信号より90度位相が遅れた信号を第2の反射性終端回路に出力し、第1の反射性終端回路から入力される反射信号を高周波信号入力端子に出力するとともに当該反射信号より90度位相が遅れた信号を高周波信号出力端子に出力し、第2の反射性終端回路から入力される反射信号を高周波信号出力端子に出力するとともに当該反射信号より90度位相が遅れた信号を高周波信号入力端子に出力する90°ハイブリッドカプラとを備えるようにしたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による移相器の構成を示す図である。図において、1は高周波信号入出力端子、2a,2b,2c,2dはスパイラルインダクタ、3a,3bはMIMキャパシタ、4a,4bはFET、5a,5bは抵抗、6a,6bはバイアス端子、7a,7bはスルーホール、8a,8b,8c,8dはマイクロストリップ線路、9は誘電体基板である。なお、この実施の形態1による移相器は、誘電体基板9上にモノリシックに構成される。
【0015】
図2は、図1に示されたこの発明の実施の形態1による移相器に対する等価回路を示す図である。11は高周波信号入出力端子、12a,12bはスイッチとして使用されるFET、13a,13bはそれぞれFET12a,12bのゲート端子、14a,14bはそれぞれスパイラルインダクタ2b,2cに相当してFET12a,12bのオフ容量と並列共振回路を構成するように設けられる共振インダクタ、15はスパイラルインダクタ2aに相当するインダクタ(第1のインダクタ)、16はMIMキャパシタ3aに相当するキャパシタ(第1のキャパシタ)、17はスパイラルインダクタ2dに相当するインダクタ(第2のインダクタ)、18はMIMキャパシタに相当するキャパシタ(第2のキャパシタ)、19aはFET12aと共振インダクタ14aとから構成される単極単投(SPST)スイッチ(第1のスイッチ)、19bはFET12bと共振インダクタ14bとから構成されるSPSTスイッチ(第2のスイッチ)、20はSPSTスイッチ19aとSPSTスイッチ19bとから構成される単極双投(SPDT)スイッチ、21はインダクタ15とキャパシタ16とから構成される直列回路、22はインダクタ17とキャパシタ18とから構成される並列回路である。
【0016】
スイッチとして機能するFET12a,12bのソースとドレインとは同電位であり、ゲート電圧をピンチオフ電圧以下にした場合にFET12a,12bは遮断状態となり、ゲート電圧をソース・ドレインと同電位にした場合にFET12a,12bは通過状態となる。そして、FET12a,12bが通過状態の際にはSPSTスイッチ19a,19bはそれぞれオン状態となり、FET12a,12bが遮断状態の際にはSPSTスイッチ19a,19bはそれぞれオフ状態となる。また、SPSTスイッチ19aがオン状態の際にはSPSTスイッチ19bがオフ状態となり、SPSTスイッチ19aがオフ状態の際にはSPSTスイッチ19bがオン状態となるように、ゲート端子13a,13bに制御信号を入力する。例えば、ゲート端子13aに入力される制御信号をインバータを介してゲート端子13bに入力することで上記のような機能を実現することが可能である。
【0017】
次に動作について説明する。
SPSTスイッチ19aがオン状態でSPSTスイッチ19bがオフ状態である際には、高周波信号入出力端子11から入力された高周波信号は、直列回路21において所望の位相偏移を生じて反射される。ここで、オフ状態にあるSPSTスイッチ19bは、FET12bのオフ容量とインダクタ14bとからなる並列回路のインピーダンスが非常に高くなるためにほぼ開放状態となる。
【0018】
また、SPSTスイッチ19aがオフ状態でSPSTスイッチ19bがオン状態である際には、高周波信号入出力端子11から入力された高周波信号は、並列回路22において所望の位相偏移を生じて反射される。ここで、オフ状態にあるSPSTスイッチ19aは、FET12aのオフ容量とインダクタ14aとからなる並列回路のインピーダンスが非常に高くなるためにほぼ開放状態となる。
【0019】
以上のように、この実施の形態1によれば、インダクタ15とキャパシタ16とから構成される直列回路21と高周波信号入出力端子11との間にSPSTスイッチ19aを設け、インダクタ17とキャパシタ18とから構成される並列回路22と高周波信号入出力端子11との間にSPSTスイッチ19bを設けるように構成したので、SPSTスイッチ19a,19bのオン/オフ状態を適宜制御して高周波信号の経路を2つの異なる反射位相量を有する直列回路または並列回路に切り替えて所定の移相量を得る際に、直列回路21および並列回路22に寄生容量が存在しないので、直列回路21と並列回路22との共振周波数を一致させて広い周波数帯域で所望の移相量を得ることができるという効果を奏する。
【0020】
なお、高周波信号入出力端子11と直列回路21との間に介装される第1のスイッチ、および高周波信号入出力端子11と並列回路22との間に介装される第2のスイッチとして、この実施の形態1ではSPSTスイッチを用いているが、第1のスイッチがオン状態の際には第2のスイッチがオフ状態となり、第1のスイッチがオフ状態の際には第2のスイッチがオン状態となるように制御可能な構成を有するものであれば、他の形態のスイッチを用いることも可能である。
【0021】
また、この実施の形態1による移相器はモノリシックに構成されているが、受動素子を誘電体基板上に形成するとともに能動素子を半導体基板上に形成して、金属ワイヤで両基板を電気的に接続して移相器を構成するようにしてもよい。
【0022】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2による移相器の構成を示す図である。図において、31は高周波信号入出力端子、32はスパイラルインダクタ、33はMIMキャパシタ、34a,34bはFET、35a,35bは抵抗、36はバイアス端子、37a,37bはスルーホール、38はマイクロストリップ線路、39は誘電体基板である。なお、この実施の形態2による移相器は、誘電体基板39上にモノリシックに構成される。
【0023】
図4は、図3に示されたこの発明の実施の形態2による移相器に対する等価回路を示す図である。41は高周波信号入出力端子、42はスパイラルインダクタ32に相当するインダクタ、43はMIMキャパシタに相当するキャパシタ、44はスイッチとして使用される第1のFET、45はスイッチとして使用される第2のFET、46は第1のFET44のゲートと第2のFET45のゲートとを接続する信号線に制御信号を入力するためのゲート端子(制御信号端子)である。
【0024】
スイッチとして機能するFET44,45のソースとドレインとは同電位であり、ゲート電圧をピンチオフ電圧以下にした場合にFET44,45は遮断状態となり、ゲート電圧をソース・ドレインと同電位にした場合にFET44,45は通過状態となる。
【0025】
次に動作について説明する。
図5は、第1のFET44および第2のFET45を通過状態とした際における移相器の等価回路を示す図である。図において、図4と同一符号は同一または相当部分を示すのでその説明を省略する。51は第1のFET44が通過状態の際に現れる抵抗を等価的に表現するオン抵抗、52は第2のFET45が通過状態の際に現れる抵抗を等価的に表現するオン抵抗である。したがって、図5に示されるように、第1のFET44および第2のFET45が通過状態の際には、インダクタ42とキャパシタ43とにより並列回路が構成される。
【0026】
また、図6は、第1のFET44および第2のFET45を遮断状態とした際における移相器の等価回路を示す図である。図において、図4と同一符号は同一または相当部分を示すのでその説明を省略する。61は第1のFET44が遮断状態の際に現れる容量を等価的に表現するオフ容量、62は第2のFET45が遮断状態の際に現れる容量を等価的に表現するオフ容量、63はキャパシタ43とオフ容量62とから構成される合成容量である。ここで、合成容量63のキャパシタンスを第1のFET44のオフ容量61のキャパシタンスに比べて無視できるように、第2のFET45のオフ容量62のキャパシタンスを設定する。したがって、図6に示されるように、第1のFET44および第2のFET45が遮断状態の際には、インダクタ42と第1のFET44のオフ容量61とにより直列回路が構成される。
【0027】
以上のように、この実施の形態2によれば、FET44,45が通過状態の際に構成される並列回路およびFET44,45が遮断状態の際に構成される直列回路に寄生容量がほとんど含まれないので、実施の形態1によるのと同等の効果が得られるとともに、移相器を構成する回路素子数を低減できるので移相器を小型化できるという効果を奏する。
【0028】
なお、インダクタ42と接地部との間に介装される第1のスイッチ、およびキャパシタ43と接地部との間に介装される第2のスイッチとして、この実施の形態2ではFETを用いているが、通過状態/遮断状態を切り替えることができるとともに遮断時のオフ容量のキャパシタンスを適宜設定可能である機能を有するものであれば、他の形態のスイッチを用いることも可能である。
【0029】
また、この実施の形態2による移相器はモノリシックに構成されているが、受動素子を誘電体基板上に形成するとともに能動素子を半導体基板上に形成して、金属ワイヤで両基板を電気的に接続して移相器を構成するようにしてもよい。
【0030】
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3による移相器の構成を示す図である。図において、図4と同一符号は同一または相当部分を示すのでその説明を省略する。71は第1のFET44に対して並列に接続される第1の抵抗、72は第2のFET45に対して並列に接続される第2の抵抗である。
【0031】
次に動作について説明する。
第1のFET44および第2のFET45をともに通過状態にしてインダクタとキャパシタとから成る並列回路として動作させた際の減衰量と、第1のFET44および第2のFET45をともに遮断状態にしてインダクタとキャパシタとから成る直列回路として動作させた際の減衰量との差が小さくなる。
【0032】
以上のように、この実施の形態3によれば、実施の形態1によるのと同等の効果が得られるとともに、FET44,45を通過状態にして並列回路として動作させた場合の減衰量と、FET44,45を遮断状態にして直列回路として動作させた場合の減衰量との差が小さくなり、高周波出力信号のレベル補償を簡易に実現することができるという効果を奏する。
【0033】
実施の形態4.
図2に示されるこの発明の実施の形態1による移相器において、第1のインダクタ15のインダクタンスと第2のインダクタ17のインダクタンスとを等しくするとともに、その値をLとする。また、第1のキャパシタ16のキャパシタンスと第2のキャパシタ18のキャパシタンスとを等しくするとともに、その値をCとする。そして、線路の特性インピーダンスをZとして、式(1)をみたす移相器を構成する。
=(L/C)1/2 (1)
【0034】
次にこの実施の形態4による移相器の動作原理を説明する。
直列回路の反射位相をψ 、並列回路の反射位相をψ とすると、移相量ψは両回路の反射位相の差として表され、ψ=ψ−ψとなる。そして、移相量の周波数に対する微分係数がゼロになれば、すべての周波数において移相量は一定となる。すなわち、dψ/dω=d(ψ−ψ)/dω=0をすべての周波数で満たせばよい。上記の条件式を解法するうえでの中間式を省略すれば、結果的に上記の条件式は式(2)と等価となる。
=(Ls/Cp)1/2 =(Lp/Cs)1/2 (2)
【0035】
ここで、Lsはインダクタ15のインダクタンス、Csはキャパシタ16のキャパシタンス、Lpはインダクタ17のインダクタンス、Cpはキャパシタ18のキャパシタンスである。式(2)における(Ls/Cp)1/2 =(Lp/Cs)1/2 の関係が満たされる場合には、直列回路21と並列回路22の共振周波数は等しくなる。さらに、共振周波数において直列回路は短絡状態にあるので、反射位相はゼロになる。また、共振周波数において並列回路は開放状態にあるので、反射位相は180度遅れる。したがって、共振周波数においては反射位相の差は180度となる。さらに、式(2)を満たせば、全ての周波数で移相量は180度で一定となる。
【0036】
以上のように、この実施の形態4によれば、直列回路および並列回路のインダクタおよびキャパシタが共通化されて、L=Ls=LpおよびC=Cs=Cpとなって、式(2)は式(1)に等しくなるから、式(1)を満たす移相器を構成することができれば、直列回路と並列回路とを切り替える反射型移相器において広い周波数帯域で180度の移相量を得ることができるという効果を奏する。
【0037】
実施の形態5.
図4に示されるこの発明の実施の形態2による移相器または図7に示されるこの発明の実施の形態3による移相器において、キャパシタ43のキャパシタンスと第1のFET44のオフ容量のキャパシタンスとを等しくするとともに、その値をCとする。また、インダクタ42のインダクタンスをLとし、線路の特性インピーダンスをZ0 として式(1)を満たす移相器を構成する。なお、動作については実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
以上のように、この実施の形態5によれば、実施の形態4によるのと同等の効果が得られるとともに、移相器を構成する回路素子数を低減できるので移相器を小型化できるという効果を奏する。
【0039】
実施の形態6.
図8は、この発明の実施の形態6による移相器の構成を示す図である。図において、81は高周波信号入力端子、82は高周波信号出力端子、83は90°ハイブリッドカプラ、84a,84bは端子、85a,85bはそれぞれ同じ構成を有する反射性終端回路(第1の反射性終端回路、第2の反射性終端回路)である。反射性終端回路85a,85bとしては、上記の実施の形態1から実施の形態5に記載されたいずれかの移相器が用いられる。
【0040】
次に動作について説明する。
高周波信号が高周波信号入力端子81から90°ハイブリッドカプラ83に入力されると、90°ハイブリッドカプラ83から原高周波信号と同相の高周波信号が反射性終端回路85aに入力されるとともに、原高周波信号より90度位相が遅れた高周波信号が反射性終端回路85bに入力される。反射性終端回路85aに入力された原高周波信号と同相の高周波信号、および反射性終端回路85bに入力された原高周波信号より90度位相が遅れた高周波信号は、それぞれ反射性終端回路85a,85bで所望の位相偏移を生じて反射される。なお、反射性終端回路85aと反射性終端回路85bとは、相互に同じ反射係数を保持するように制御される。
【0041】
反射性終端回路85aから反射されて原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じた高周波信号が再び端子84aを介して90°ハイブリッドカプラ83に入力されると、原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じた高周波信号が高周波信号入力端子81へ出力されるとともに、原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じるとともに90度位相が遅れた高周波信号が高周波信号出力端子82へ出力される。
【0042】
また、反射性終端回路85bから反射されて原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じるとともに90度位相が遅れた高周波信号が再び端子84bを介して90°ハイブリッドカプラ83に入力されると、原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じるとともに90度位相が遅れた高周波信号が高周波信号出力端子82へ出力されるとともに、原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じるとともに(さらに90度位相が遅らされて)180度位相が遅れた高周波信号が高周波信号入力端子81へ出力される。
【0043】
高周波信号入力端子81では、原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じた高周波信号と原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じるとともに180度位相が遅れた高周波信号とが重なって、2つの高周波信号が互いに相殺される。また、高周波信号出力端子82では、原高周波信号に対して所望の位相偏移を生じるとともに90度位相が遅れた2つの高周波信号が同期して出力として取り出される。
【0044】
したがって、反射性終端回路85aと反射性終端回路85bとが同じ反射係数を有する状態を保持するように、反射性終端回路85a,85bにおける直列回路と並列回路との間の切り替えを同時に行うことで、所望の移相量を有する高周波出力信号を得られる。
【0045】
以上のように、この実施の形態6によれば、実施の形態1から実施の形態5に記載されたいずれかの移相器として与えられて互いに同じ反射係数を保持するように制御される2つの反射性終端回路85a,85bと、高周波信号入力端子81と、高周波信号出力端子82と、反射性終端回路85aおよび反射性終端回路85bにそれぞれ接続されて、高周波信号入力端子81から入力される原高周波信号を反射性終端回路85aに出力するとともに原高周波信号より90度位相が遅れた信号を反射性終端回路85bに出力し、反射性終端回路85aから入力される反射信号を高周波信号入力端子81に出力するとともに当該反射信号より90度位相が遅れた信号を高周波信号出力端子82に出力し、反射性終端回路85bから入力される反射信号を高周波信号出力端子82に出力するとともに当該反射信号より90度位相が遅れた信号を高周波信号入力端子81に出力する90°ハイブリッドカプラ83とを備えるように構成したので、高周波信号入力端子81では90°ハイブリッドカプラ83から入力される2つの高周波信号が相殺されるとともに、高周波信号出力端子82では反射性終端回路85a,85bを用いて所望の移相量が得られて90°ハイブリッドカプラ83から出力される2つの高周波信号を同期させて出力として取り出すことができるから、実施の形態1から実施の形態5において記載した効果を供する移相器を用いて所望の移相量を得た高周波出力信号を高周波入力信号から分離することができるという効果を奏する。
【0046】
なお、この実施の形態6による移相器はモノリシックに構成されているが、受動素子および90°ハイブリッドカプラを誘電体基板上に形成するとともに、能動素子を半導体基板上に形成して、金属ワイヤで両基板を電気的に接続して反射型移相器を構成するようにしてもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、高周波信号入出力端子と、相互に並列に高周波信号入出力端子に接続される第1のスイッチおよび第2のスイッチと、直列に接続された第1のインダクタと第1のキャパシタとから構成されて第1のスイッチと接地部との間に設けられる直列回路と、並列に接続された第2のインダクタと第2のキャパシタとから構成されて第2のスイッチと接地部との間に設けられる並列回路とを備えるように構成したので、第1のスイッチおよび第2のスイッチのオン/オフ状態を適宜制御して高周波信号の経路を2つの異なる反射位相量を有する直列回路または並列回路に切り替えて所定の移相量を得る際に、直列回路および並列回路に寄生容量が存在しないので、直列回路と並列回路との共振周波数を一致させて広い周波数帯域で所望の移相量を得ることができるという効果を奏する。
【0048】
この発明によれば、高周波信号入出力端子と、相互に並列に高周波信号入出力端子に接続されるインダクタおよびキャパシタと、インダクタに接続される第1のFETと、キャパシタに接続される第2のFETと、第1のFETのゲートと第2のFETのゲートとを接続した信号線に制御信号を入力する制御信号端子とを備えるように構成したので、制御信号端子に所定の信号を入力して第1のFETおよび第2のFETを通過状態にするとインダクタとキャパシタとにより並列回路が構成され、制御信号端子に所定の信号を入力して第1のFETおよび第2のFETを遮断状態にするとインダクタと第1のFETのオフ容量とにより直列回路が構成され、キャパシタと第2のFETのオフ容量との合成容量のキャパシタンスを無視できる程度に小さく設定できれば、直列回路および並列回路にはほとんど寄生容量が存在しないので、広い周波数帯域で所望の移相量を得ることができるという効果を奏する。また、移相器を構成する回路素子数を低減できるので、移相器を小型化できるという効果を奏する。
【0049】
この発明によれば、第1のFETに対して並列に設けられて一方の端子がインダクタに接続されるとともに他方の端子が接地部に接続される第1の抵抗と、第2のFETに対して並列に設けられて一方の端子がキャパシタに接続されるとともに他方の端子が接地部に接続される第2の抵抗とを備えるように構成したので、第1のFETおよび第2のFETを通過状態にしてインダクタとキャパシタとによる並列回路として動作させた場合の減衰量と、第1のFETおよび第2のFETを遮断状態にしてインダクタと第1のFETのオフ容量とによる直列回路として動作させた場合の減衰量との差が小さくなり、高周波出力信号のレベル補償を簡易に実現することができるという効果を奏する。
【0050】
この発明によれば、第1のインダクタのインダクタンスと第2のインダクタのインダクタンスとを等しくするとともに第1のキャパシタのキャパシタンスと第2のキャパシタのキャパシタンスとを等しくし、第1のインダクタのインダクタンスをL、第1のキャパシタのキャパシタンスをC、線路の特性インピーダンスをZとした際に、Z=(L/C)1/2 が成り立つように構成したので、直列回路と並列回路とを切り替える反射型移相器において広い周波数帯域で180度の移相量を得ることができるという効果を奏する。
【0051】
この発明によれば、インダクタのインダクタンスをL、キャパシタのキャパシタンスをC、線路の特性インピーダンスをZとすると、Z=(L/C)1/2 が成り立つように構成したので、直列回路と並列回路とを切り替える反射型移相器において広い周波数帯域で180度の移相量を得ることができるという効果を奏する。
【0052】
この発明によれば、上述した移相器として与えられて相互に同じ反射係数を保持するように制御される第1の反射性終端回路および第2の反射性終端回路と、高周波信号入力端子と、高周波信号出力端子と、第1の反射性終端回路、第2の反射性終端回路、高周波信号入力端子および高周波信号出力端子にそれぞれ接続される90°ハイブリッドカプラとを備えるように構成したので、上述した効果を供する移相器を用いて所望の移相量を得た高周波出力信号を高周波入力信号から分離することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による移相器の構成を示す図である。
【図2】図1に示された移相器に対する等価回路を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2による移相器の構成を示す図である。
【図4】図3に示された移相器に対する等価回路を示す図である。
【図5】第1のFETおよび第2のFETを通過状態とした際における移相器の等価回路を示す図である。
【図6】第1のFETおよび第2のFETを遮断状態とした際における移相器の等価回路を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3による移相器の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態6による移相器の構成を示す図である。
【図9】従来の移相器の構成を示す回路図である。
【図10】PINダイオードがオン時の従来の移相器の等価回路を示す図である。
【図11】PINダイオードがオフ時の従来の移相器の等価回路を示す図である。
【符号の説明】
1,11,31,41 高周波信号入出力端子、2a,2b,2c,2d,32 スパイラルインダクタ、3a,3b,33 MIMキャパシタ、4a,4b,12a,12b FET、5a,5b,35a,35b 抵抗、6a,6b,36 バイアス端子、7a,7b,37a,37b スルーホール、8a,8b,8c,8d,38 マイクロストリップ線路、9,39 誘電体基板、13a,13b ゲート端子、14a,14b 共振インダクタ、15 インダクタ(第1のインダクタ)、16 キャパシタ(第1のキャパシタ)、17 インダクタ(第2のインダクタ)、18 キャパシタ(第2のキャパシタ)、19a SPSTスイッチ(第1のスイッチ)、19b SPSTスイッチ(第2のスイッチ)、20 SPDTスイッチ、21 直列回路、22 並列回路、34a,44 FET(第1のFET)、34b,45 FET(第2のFET)、42 インダクタ、43 キャパシタ、46 ゲート端子(制御信号端子)、51,52 オン抵抗、61,62 オフ容量、63 合成容量、71 抵抗(第1の抵抗)、72 抵抗(第2の抵抗)、81 高周波信号入力端子、82 高周波信号出力端子、83 90°ハイブリッドカプラ、84a,84b 端子、85a反射性終端回路(第1の反射性終端回路)、85b 反射性終端回路(第2の反射性終端回路)。

Claims (6)

  1. 高周波信号入出力端子と、相互に並列に前記高周波信号入出力端子に接続される第1のスイッチおよび第2のスイッチと、直列に接続された第1のインダクタと第1のキャパシタとから構成されるとともに一方の端子が前記第1のスイッチに接続され他方の端子が接地部に接続される直列回路と、並列に接続された第2のインダクタと第2のキャパシタとから構成されるとともに一方の端子が前記第2のスイッチに接続され他方の端子が接地部に接続される並列回路とを備えることを特徴とする移相器。
  2. 高周波信号入出力端子と、相互に並列に前記高周波信号入出力端子に接続されるインダクタおよびキャパシタと、ドレイン(またはソース)が前記インダクタに接続されるとともにソース(またはドレイン)が接地部に接続される第1のFETと、ドレイン(またはソース)が前記キャパシタに接続されるとともにソース(またはドレイン)が接地部に接続される第2のFETと、前記第1のFETのゲートと前記第2のFETのゲートとを接続した信号線に制御信号を入力するための制御信号端子とを備えることを特徴とする移相器。
  3. 第1のFETに対して並列に設けられて一方の端子がインダクタに接続されるとともに他方の端子が接地部に接続される第1の抵抗と、第2のFETに対して並列に設けられて一方の端子がキャパシタに接続されるとともに他方の端子が接地部に接続される第2の抵抗とを備えることを特徴とする請求項2に記載の移相器。
  4. 第1のインダクタのインダクタンスと第2のインダクタのインダクタンスとを等しくするとともに第1のキャパシタのキャパシタンスと第2のキャパシタのキャパシタンスとを等しくし、
    第1のインダクタのインダクタンスをL、第1のキャパシタのキャパシタンスをC、線路の特性インピーダンスをZとした際に、Z=(L/C)1/2 が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の移相器。
  5. インダクタのインダクタンスをL、キャパシタのキャパシタンスをC、線路の特性インピーダンスをZとした際に、Z=(L/C)1/2 が成り立つことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の移相器。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された移相器として与えられて相互に同じ反射係数を保持するように制御される第1の反射性終端回路および第2の反射性終端回路と、高周波信号入力端子と、高周波信号出力端子と、前記第1の反射性終端回路、前記第2の反射性終端回路、前記高周波信号入力端子および前記高周波信号出力端子にそれぞれ接続されて、前記高周波信号入力端子から入力される原信号を前記第1の反射性終端回路に出力するとともに原信号より90度位相が遅れた信号を前記第2の反射性終端回路に出力し、前記第1の反射性終端回路から入力される反射信号を前記高周波信号入力端子に出力するとともに当該反射信号より90度位相が遅れた信号を前記高周波信号出力端子に出力し、前記第2の反射性終端回路から入力される反射信号を前記高周波信号出力端子に出力するとともに当該反射信号より90度位相が遅れた信号を前記高周波信号入力端子に出力する90°ハイブリッドカプラとを備えることを特徴とする移相器。
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