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JP3630767B2 - 希土類添加偏波保持光ファイバ - Google Patents

希土類添加偏波保持光ファイバ Download PDF

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JP3630767B2 JP11603195A JP11603195A JP3630767B2 JP 3630767 B2 JP3630767 B2 JP 3630767B2 JP 11603195 A JP11603195 A JP 11603195A JP 11603195 A JP11603195 A JP 11603195A JP 3630767 B2 JP3630767 B2 JP 3630767B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、希土類が添加された偏波保持光ファイバに関し、コアとクラッドとの比屈折率差を大きく保持するとともに、そのためにクラッドと応力付与部との屈折率差がほとんどなくなっても、接続の際には偏光軸の調心を光学的にファイバを側面視する方法によって行えるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コアにエルビウム(Er)などの希土類を添加した単一モード光ファイバの光増幅機能を利用して、波長1.55μm帯域用の光増幅器が構成され、注目されている。このような光増幅器はEr添加光ファイバ増幅器などと呼ばれている。
ところで、Er添加光ファイバ自体は、その利得特性が、信号光や励起光の偏波にほとんど依存されないことが知られているが、Er添加光ファイバ増幅器を構成する他の光部品、例えば光ファイバカプラやアイソレータには偏波依存性がある。このためEr添加光ファイバ増幅器には、偏波保持特性を有するEr添加光ファイバが好適に用いられる。
【0003】
またEr添加光ファイバは、これを用いて共振器を構成してレーザーとして用いることも可能である。Er添加光ファイバをレーザーに用いる場合には次のような理由で偏波保持特性を有することが不可欠である。
すなわち、レーザーの発振周波数は、共振器中に存在可能な定在波の波長で決まる。つまり、共振器中を光が1往復する時間、つまりEr添加光ファイバの伝送モードの群遅延時間で決まる。ところが、実際の単一モード光ファイバには、光ファイバへの外力やコアの非円によって生じた複屈折により2つの直交する偏波モードが存在しているために、レーザーを構成した場合には、これら2つの偏波モードのそれぞれの群遅延時間に応じた2つの周波数(縦モード)で発振してしまい、縦単一モードレーザー発振ができないという不都合が生じてしまう。これに対して、適当な偏波制御を用いることにより、1つの縦モードのみを取り出すことが可能ではあるが、単一モード光ファイバ中の偏光状態は外乱によって変動しやすく、安定して発振させるのは容易ではない。そこで、Er添加光ファイバでレーザーを構成する場合には、偏波保持特性を有するものを用いて、光ファイバ中で偏波を安定して保持できるようにすることが必要である。
【0004】
一方、偏波保持特性を有する光ファイバとしては種々の構造のものが提案されているが(Juichi Noda,”Polarization−maintaining fibers and their applications”, J. lightwave technol., Vol. LT−4, No.8, pp.1071−1089, 1986)、コアの外方のクラッド内にコアに対して対称的に2個の応力付与部を配したPANDAファイバは、複屈折率が大きく偏波保持特性に優れていることから広く用いられている。
図5は従来のPANDAファイバの例を示したもので、(a)は断面形状、(b)は図中X−X’線で示した断面での屈折率分布、(c)は図中Y−Y’線で示した断面での屈折率分布をそれぞれ示している。この例のPANDAファイバは、酸化ゲルマニウム(GeO)を添加した石英ガラスからなるコア11、純石英ガラスからなるクラッド12、および酸化ホウ素(B)を比較的多量に添加した石英ガラスからなる応力付与部13からなっている。
【0005】
またPANDAファイバを接続する際の偏光軸の軸合せは、クラッド12と応力付与部13との屈折率が異なることを利用して、光学的にファイバを側面視して応力付与部の位置を定める方法によって行われている。
この方法は、PANDAファイバ側面視像を画像処理して、左右のファイバの偏光軸が一致するようにファイバ軸を中心としてファイバを回転させて調心を行うもので、その機能を有する自動融着接続装置も実用化されており、短時間で簡単に軸合せ作業を行うことができる(特開平1−147506号公報、特開平1−225906号公報、H.Taya, K.Ito, T.Yamada and M.Yoshinuma:Proc. of OFC’89, THJ2, pp164,1989 参照)。
【0006】
PANDAファイバは、所望のコア/クラッド構造を形成する工程と、応力付与部を形成する工程とを別々に行うことができるので、通常のEr添加光ファイバ用母材を用いて、偏波保持型のEr添加光ファイバを得るのに好適である。したがって、Er添加偏波保持光ファイバにはPANDAファイバ型構造が好ましく用いられる。
図6は従来のEr添加PANDAファイバの例を示したもので、(a)は断面形状、(b)は図中X−X’線で示した断面での屈折率分布、(c)は図中Y−Y’線で示した断面での屈折率分布をそれぞれ示している。この例のPANDAファイバにおいて、コア11はEr、アルミニウム(Al)、およびGeOを添加した石英ガラスからなり、クラッド12はフッ素(F)が添加された石英ガラスからなり、応力付与部13は酸化ホウ素(B)が比較的多量に添加した石英ガラスからなっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に光増幅器に用いられるEr添加光ファイバにあっては、コア11にGeOを添加するとともにクラッド12にFを添加して、コア/クラッドの比屈折率差を大きくし、モードフィールド径を小さくすることによって効率の高い増幅作用が得られるように構成される。
しかしながら、PANDAファイバ型構造のEr添加光ファイバにあっては、クラッド12と応力付与部13との比屈折率差が小さくなってしまい、ファイバを側面視する方法によって軸合せができないという問題があった。
すなわち、図5に示すような通常のPANDAファイバにおいては、クラッド12と応力付与部13との比屈折率差△が0.5〜0.8%であるのに対して、図6に示すようなEr添加PANDAファイバにおける△は0.05〜0.3%となる。このように△が非常に小さいと、PANDAファイバを側面視しても応力付与部の判別が困難であり、側面視像を画像処理しても正確な偏光軸調整ができなかった。
【0008】
これに対して、Er添加PANDAファイバに直線偏波を入射して、消光比をモニターしながら偏光軸の調整を行うことも可能であるが、非常に手間がかかるものであった。また、励起光を入射しない場合は、動作波長(1.55μm)帯において無偏光の自然放出光が生じ、これによって消光比が劣化してしまうため、動作波長での正確な偏光軸合せができないという不都合があった。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、融着接続の際に、光学的にファイバを側面視して軸合せする方法を適用できるようにした希土類添加偏波保持光ファイバを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の希土類添加偏波保持光ファイバは、コアに希土類元素が添加され、コアの外方のクラッド内にコアに対して対称的に配された応力付与部を有する希土類添加偏波保持光ファイバであって、前記クラッドが、第1クラッドと、第1クラッドの周上に形成され第1クラッドよりも屈折率が高い第2クラッドとからなり、前記第1クラッドの直径が、モードフィールド径の3倍以上で、かつ前記応力付与部の中心間の距離より小さく、前記第1クラッドと前記第2クラッドとの比屈折率の差が−0.3〜−0.7%であり、前記第2クラッドと前記応力付与部との比屈折率の差が−0.3〜−0.7%であり、かつ融着接続の際に、光学的にファイバを側面視して偏光軸を調心する用途に用いられることを特徴とするものである。
前記コアにはゲルマニウム添加石英ガラスを好適に用い、前記第1クラッドにはフッ素添加石英ガラスを好適に用いることができる。
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、PANDAファイバを側面視する方法によって軸合せを行う原理について概説する。
図3は、図5に示した通常のPANDAファイバに、側面から平行光を入射させたときの透過光線の軌跡の例を示した説明図であり、(a)は2つの応力付与部13,13’の中心を結ぶ軸線に対して垂直な方向から平行光を入射した状態、(b)は同軸線に対して平行な方向から平行光を入射した状態をそれぞれ示す。
この例のPANDAファイバは、クラッド12が純粋石英ガラスからなるとともに、応力付与部13がB添加石英ガラスからなり、純粋石英ガラスの屈折率に対する比屈折率△(以下、単に△と記載する)=−0.7%である。
【0012】
図3(a)の状態においては、まずクラッド12に入射した光線はクラッド12を凸レンズとして収束する。またクラッド12よりも低屈折率の応力付与部13を通過した光線は、この応力付与部13を凹レンズとして発散する。したがって、光源と反対側からこのPANDAファイバを側面視すると、応力付与部13がわずかに暗い部分として透視されて見える。また2つの応力付与部13の間を通過した光線は、クラッド12を直進するので、この光線と応力付与部13で発散された光線とが重なる点Lが存在する。さらに図3(b)の状態においても、応力付与部13’によって発散した光がクラッド12中を通過した光線と重なる点Lが存在する。これらの点Lを含む面をフォーカス面Fとしてファイバの側面から観視すると、これらは輝線となって観察され、このような輝線はPANDAファイバの周方向の回転によって移動する。したがって、融着接続機などの画像処理において、これらの輝線Lがファイバの中心から等距離にある場合を基準にして、応力付与部の位置角度を判断することが可能である。
例えば図3(b)の状態では、PANDAファイバの周方向のわずかな回転によって輝線が移動するので、現在のPANDAファイバの自動融着装置においては、図3(b)の状態を見出し、これを基準として応力付与部の位置角度を決定している。
【0013】
図4は、従来の希土類添加PANDAファイバのように、クラッド12と応力付与部13の屈折率がほぼ等しい場合に、PANDAファイバに側面から平行光を入射させたときの透過光線の軌跡の例を示した説明図である。(a)は2つの応力付与部13の中心を結ぶ軸線に対して垂直な方向から平行光を入射した状態、(b)は前記の軸線に対して平行な方向から平行光を入射した状態をそれぞれ示す。
この例のPANDAファイバは、例えばクラッド12がF添加石英ガラスからなり、応力付与部13がB添加石英ガラスからなる。
【0014】
図4(a)の状態において、2つの応力付与部13の中心を結ぶ軸線に対して垂直な方向から平行光を入射した状態で、クラッド12に入射した光線はクラッド12を凸レンズとして収束する。しかしクラッド12と応力付与部13との屈折率が等しいか、またはこれらの差が僅かである場合には、光線は応力付与部13を通過しても屈折せずに直進する。したがって、応力付与部13が暗い部分として見えず、輝線も観察されないので、応力付与部の位置角度を判断することはできない。
また(b)の状態においても光線は(a)と同様の軌跡を示す。したがって(a)の状態であるか(b)の状態であるか、すなわち入射光線に対して2つの応力付与部13の中心を結ぶ軸線が平行であるか垂直であるかの判断はできない。
【0015】
以下、本発明の希土類添加偏波保持光ファイバについて説明する。図1は本発明の希土類添加偏波保持光ファイバの例を示したもので、(a)は断面形状、(b)は図中X−X’線で示した断面での屈折率分布、(c)は図中Y−Y’線で示した断面での屈折率分布をそれぞれ示している。また図2は、図1に示した希土類添加偏波保持光ファイバに側面から平行光を入射させたときの透過光線の軌跡の例を示した説明図であり、(a)は2つの応力付与部4の中心を結ぶ軸線に対して垂直な方向から平行光を入射した状態、(b)は同軸線に対して平行な方向から平行光を入射した状態をそれぞれ示している。
この希土類添加偏波保持光ファイバは、コア1の周上に第1クラッド2、その周上に第2クラッド3が形成され、コア1の外方に2つの応力付与部4,4’がコアに対して対称的に配されている。外径は、通常、裸光ファイバの状態で125μmに形成される。
コア1は、石英ガラスに屈折率を上げるドーパント、希土類元素、および必要に応じて金属が添加され、△=1.0〜1.5%程度の高屈折率に形成される。ドーパントとしては、加熱により拡散されやすいものが好ましく、GeOが好適に用いられる。希土類としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ネオジウム(Nd)等が好適に用いられ、金属としてはリン(P)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)等が好適に用いられる。
【0016】
第1クラッド2は、石英ガラスに屈折率を下げるドーパントが添加され、その屈折率は△=−0.5〜−0.7%程度の範囲で、モードフィールド径(MFD)が5μm以下となるように形成される。ドーパントとしてフッ素(F)を用いると、加熱によってコア中のGeの第1クラッド2内への拡散係数が大きくなるので好ましい。
【0017】
第1クラッド2の直径は、小さすぎると希土類添加偏波保持光ファイバを曲げたときに導波光が第2クラッドに結合して、この第1クラッド2がない構造の従来の希土類添加偏波保持光ファイバよりもカットオフ波長が小さくなる、または曲げ損失が大きくなるといった影響がでてくる。したがって、第1クラッド2の直径をMFDの3倍以上とすれば実用上これらの影響が出ないと考えられ、好ましくは5倍以上とすることによってこれらの影響を確実に排除することができる。
また第1クラッド2の直径が大きすぎると、応力付与部4,4’が、屈折率がほぼ等しい第1クラッド2の中に包みこまれるようになって、図4のように、応力付与部4,4’を暗い部分として識別することが困難となる。又図2(a)のように2つの応力付与部4,4’の中心を結ぶ軸線に対して垂直な方向から平行光を入射したときに、応力付与部4または4’で発散した光線と、第1クラッド2で発散した光線とが交わらず、輝線が得られなくなる。暗い部分としての識別は、応力付与部4および4’の半分以上の領域が第1クラッド2と隣接した状態になると困難になると考えられる。したがって第1クラッド2の直径は応力付与部4,4’の中心間の距離よりも小さい範囲で適宜設定するのが好ましい。
【0018】
第2クラッド3は、純粋石英ガラス、または屈折率を下げるドーパントが添加され、その屈折率が△=−0.0〜−0.4%程度となるように形成される。ドーパントとしては適宜のものを用いることができるが、例えばFを好適に用いることができ、第1クラッド2よりも少なく添加される。
応力付与部4は、Bをドープした石英ガラスで好ましく形成される。
【0019】
このような構造の希土類添加偏波保持光ファイバは、以下のようにして製造することができる。
まず、VAD法により、GeOを添加した石英ガラスからなる多孔質ガラス材を作成し、これをErClおよびAlClを含有するアルコール溶液中に浸す。充分に含浸させた後、乾燥させ、さらに脱水、焼結を行ってコア母材とする。このコア母材に石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、SiFガス雰囲気中で焼結することによってFを適量添加して第1クラッドに相当するガラス層を形成する。さらに石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、SiFガス雰囲気中で焼結することによってFを適量添加して第2クラッドに相当するガラス層を形成する。このようにして得られたコア−クラッド母材の応力付与部形成位置に、超音波ドリル等で貫通孔を穿設し、この孔の内面に対して研磨および火炎研磨を行いPANDAファイバ母材とする。
これとは別に、Bを添加した石英ガラスロッドを作成し、外周面を研磨して、応力付与母材とする。
応力付与母材をPANDAファイバ母材の貫通孔内に挿通させた後、線引を行って、希土類添加偏波保持光ファイバを得ることができる。
【0020】
次に、図2を用いて本発明の希土類添加偏波保持光ファイバの作用について説明する。
図2(a)の状態においては、まず第2クラッド3に入射した光線は第2クラッド3を凸レンズとして収束する。そして第2クラッド3よりも低屈折率の応力付与部4を通過した光線は、この応力付与部4を凹レンズとして発散する。また2つの応力付与部4の間には第2クラッド3よりも低屈折率の第1クラッド2が形成されているので、この第1クラッド2を通過した光線は、第1クラッド2を凹レンズとして発散する。
この結果、第1クラッド2で発散された光線と応力付与部4で発散された光線が重なる点が存在する。
また図2(b)の状態においては、第2クラッド3に入射した光のうち第1クラッド2を通るものは、第1クラッド2および応力付与部4’を凹レンズとして発散する。この結果、応力付与部4’で発散された光線と第2クラッド3を通過した光線が重なる点Lが存在する。
【0021】
これらの重なる点を含む面をフォーカス面Fとしてファイバの側面から観視すると、これらは輝線として観察され、このような輝線はPANDAファイバの周方向の回転によって移動する。したがって、融着接続機などの画像処理において、これらの輝線Lがファイバの中心から等距離にある場合を基準にして、応力付与部の位置角度を判断することが可能である。
したがって、本発明の希土類添加偏波保持光ファイバは、通常のPANDAファイバと同様に、例えば融着接続機などの画像処理において、2つの応力付与部4による2つの輝線Lがファイバの中心から等距離にある場合を基準にして、応力付与部4の位置角度を精密に判断することができる。
【0022】
また、Er添加光ファイバにおいて、コアにGeを添加し、クラッドにFを添加することによって、MFDが異なる他の光ファイバと接続する際に、コア内のGeを熱拡散させて両ファイバのMFDの整合を好適に行うことがすでに提案されているが(A.Wada, T.Sakai, D.Tanaka, T.Nozawa and R.Yamauchi:Technical Digest of Optical Amprifiers and Their Applications vol.13, FD3, pp258−261,1991参照)、本発明の希土類添加偏波保持光ファイバを、光ファイバ増幅器や光ファイバレーザを構成する他の光ファイバと接続する場合にも、融着接続部を追加放電などにより加熱することによって、コア1内のドーパントを第1クラッド2へ拡散させてMFDを拡大することができる。これによって、他のMFDが大きい通常の光ファイバとのMFDの整合性を容易に達成でき、接続損失を抑えることができる。
ここで、MFDを拡大させることによって、コア1を導波するモードフィールドの一部が比較的屈折率が高い第2クラッド3に達して、第2クラッド3に光が結合するおそれもあるが、MFD拡大のために加熱を施す領域は光ファイバ端部から短い距離であるので、この加熱によって第2クラッド3に結合する導波光は非常にわずかであり、問題は生じない。
【0023】
尚、ここでは偏波保持構造としてPANDA型を例にとって述べているが、本発明の希土類添加偏波保持光ファイバの偏波保持構造は、PANDA型に限らず、コアに対して対称的に配された応力付与部を有する構造、いわゆるボータイ型、楕円ジャケット型も同様に適用可能である。
【0024】
【実施例】
本発明の実施例1〜3として下記表1に示す構造パラメータを有する希土類添加偏波保持光ファイバを作成した。また比較例1として下記表1に示す構造パラメータを有する従来の希土類添加偏波保持光ファイバを作成した。
すなわち、まず、VAD法により、△=1.3%となるようにGeOを添加した石英ガラスからなる多孔質ガラス材を作成し、これをErClおよびAlClを含有するアルコール溶液中に浸した。充分に含浸させた後、乾燥させ、さらに脱水、焼結を行ってコア母材とした。Erの添加濃度は850重量ppm、Alの添加濃度は17500重量ppmとした。
このコア母材に石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、SiFガス雰囲気中で焼結することによって△=−0.7%となるようにFを添加して第1クラッドに相当するガラス層を形成した。ここで得られたガラスロッドをロッドAとする。ロッドAを2分割し、その一方はさらに2分割した。
他方のロッドAには、さらに石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、SiFガス雰囲気中で焼結することによって△=−0.7%となるようにFを添加して第1クラッドに相当するガラス層を形成した。このようにして第1クラッドが厚く形成されたガラスロッドをロッドBとする。ロッドBは2分割した。
【0025】
(実施例1)
上記ロッドAに石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、SiFガス雰囲気中で焼結することによって△=−0.4%となるようにFを添加して第2クラッドに相当するガラス層を形成した。
このようにして得られたコア−クラッド母材の応力付与部形成位置に、超音波ドリルで貫通孔を穿設し、この孔の内面に対して研磨および火炎研磨を行いPANDAファイバ母材とした。
これとは別に、Bを第1クラッドと等しい屈折率(△=−0.7%)となるように添加した石英ガラスロッドを作成し、外周面を研磨して、応力付与母材とした。
この応力付与母材をPANDAファイバ母材の貫通孔内に挿通させた後、線引を行って、希土類添加偏波保持光ファイバを得た。尚、MFDは波長1.55μmにて4.5μmとした。
【0026】
このようにして得られた希土類添加偏波保持光ファイバについて、ファイバを側面視する方法を用い前記の偏光軸調心自動融着接続機を用いて通常の分散シフト型PANDAファイバとの融着接続を行った。ここで用いた分散シフト型PANDAファイバのMFDは波長1.55μmにて8.2μmであった。よって融着接続後、接続点を加熱して希土類添加偏波保持光ファイバのコア中のGeを拡散させ、そのMFDを9μm程度に拡大させた。
本実施例においては、融着接続機のフォーカス面を調整することによって輝線Lを観察することができ、短時間で容易に自動融着接続を行うことができた。
融着接続後、MFD拡大前の接続損失(1.55μm)およびMFD拡大後の接続損失を測定した。また偏波主軸のずれを評価するために接続後の光ファイバ全体で偏波モード間のクロストーク(1.55μm)を測定した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0027】
(実施例2)
上記ロッドBに石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、SiFガス雰囲気中で焼結することによって△=−0.4%となるようにFを添加して第2クラッドに相当するガラス層を形成した。
上記実施例1と同様にしてコア−クラッド母材の応力付与部形成位置に貫通孔を穿設し、PANDAファイバ母材に応力付与母材を挿通させた後、線引を行って、希土類添加偏波保持光ファイバを得た。
【0028】
このようにして得られた希土類添加偏波保持光ファイバについて、上記実施例1と同様にして自動融着接続機を用いて通常の分散シフト型PANDAファイバとの融着接続を行った。
本実施例においては、融着接続機により輝線Lを見出すことはできなかったが、作業者の目視により応力付与部の影から偏光軸を判別できた。したがって、融着接続機を手動で操作して融着接続を行った。
また、実施例1と同様に、MFD拡大前後の接続損失および接続後のクロストークを測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0029】
(実施例3)
上記ロッドBに石英ガラススートを外付けし、脱水した後に、焼結することによって純粋石英(△=0.0%)からなる第2クラッドに相当するガラス層を形成した。
上記実施例1と同様にしてコア−クラッド母材の応力付与部形成位置に貫通孔を穿設し、PANDAファイバ母材に応力付与母材を挿通させた後、線引を行って、希土類添加偏波保持光ファイバを得た。
【0030】
このようにして得られた希土類添加偏波保持光ファイバについて、上記実施例1と同様にして自動融着接続機を用いて通常の分散シフト型PANDAファイバとの融着接続を行った。
本実施例においては、融着接続機のフォーカス面を調整することによって輝線Lを観察することができ、短時間で容易に自動融着接続を行うことができた。
また、実施例1と同様に、MFD拡大前後の接続損失および接続後のクロストークを測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0031】
(比較例1)
上記ロッドAの周上に、第1クラッドと屈折率が等しい(△=−0.7%)F添加石英ガラス層を、外付け法にて形成した。
上記実施例1と同様にしてコア−クラッド母材の応力付与部形成位置に貫通孔を穿設し、PANDAファイバ母材に応力付与母材を挿通させた後、線引を行った。このようにして、第1クラッド−第2クラッド構造を持たず、クラッドの屈折率が一様な従来の希土類添加偏波保持光ファイバを得た。尚、MFDは波長1.55μmにて4.5μmとした。
【0032】
このようにして得られた希土類添加偏波保持光ファイバについて、通常の分散シフト型PANDAファイバとの融着接続を行った。融着接続後、実施例1と同様にして接続点を加熱してコア中のGeを拡散させ、そのMFDを9μm程度に拡大させた。
本比較例においては、光ファイバ側面から光を入射させても応力付与部を側面視することができなかった。そのため、予め偏光子を通過させた波長1.3μm直線偏波を光ファイバに入射させ、接続する2本の光ファイバおよび検光子を回転させて、偏波消光比が最大となるように調整した後、融着接続を行った。
また、実施例1と同様に、MFD拡大前後の接続損失および接続後のクロストークを測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003630767
【0034】
尚、表1において、応力付与部の可視性の評価は、自動融着接続機で輝線Lを観察できたものを◎、輝線Lは観察できないが、作業者の目視により応力付与部の影から偏光軸を判別できたものを○、応力付与部を側面視できなかったものを×とした。また自動融着機の適用性の評価は、自動融着接続できたものを◎、できなかったものを×として示した。
【0035】
表1の結果より、実施例1および3の希土類添加偏波保持光ファイバは、ファイバを側面視する方法による自動融着接続機の適用が可能であり、接続損失および接続後のクロストークも、光ファイバに直線偏波を入射して消光比をモニターしながら接続を行った場合と同程度の良好な値が得られた。またMFDを拡大させたことによって、拡大前に比べて接続損失が充分に低減したことが認められた。
実施例2の希土類添加偏波保持光ファイバは、輝線Lの観察は不可能であったが応力付与部の影を用いて融着接続することが可能であり、接続後のクロストークも、実施例1および3には及ばないが良好であった。またMFDを拡大させたことによって、拡大前に比べて接続損失が充分に低減したことが認められた。
尚、実施例1〜3、および比較例1の接続損失には若干のばらつきがあるが、これは測定再現性の低さによるばらつき、あるいはMFD拡大時の加熱条件が最適化されていないためのばらつきであって、構造の差異によるばらつきではないと考えられる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の希土類添加偏波保持光ファイバは、コアに希土類元素が添加され、コアの外方のクラッド内にコアに対して対称的に配された応力付与部を有する希土類添加偏波保持光ファイバであって、前記クラッドが、第1クラッドと、第1クラッドの周上に形成され第1クラッドよりも屈折率が高い第2クラッドとからなることを特徴とするものである。
したがって、ファイバを光学的に側面視する方法によって偏光軸の調心が可能であり、融着接続時には、精度よく軸合せを行うことができ、容易にかつ効率良く融着接続を行うことができる。
またコアがGeを含有し、その周上の第1クラッドがFを含有する構成とすれば、接続端部を加熱することによってコア内のGeを容易に拡散させることができ、MFDを拡大させて他のMFDが大きい光ファイバとの接続特性を向上させるのに好適である。
よって本発明の希土類添加偏波保持光ファイバを用いて、光ファイバ増幅器や光ファイバレーザを好適に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希土類添加偏波保持光ファイバの例を示したもので、(a)は断面図、(b)はX−X’線で示した断面での屈折率分布、(c)はY−Y’線で示した断面での屈折率分布を示す。
【図2】本発明の希土類添加偏波保持光ファイバに側面から平行光を入射させたときの透過光線の軌跡の例を示した説明図である。
【図3】通常のPANDAファイバに側面から平行光を入射させたときの透過光線の軌跡の例を示した説明図である。
【図4】従来の希土類添加偏波保持光ファイバに側面から平行光を入射させたときの透過光線の軌跡の例を示した説明図である。
【図5】通常のPANDAファイバの例を示したもので、(a)は断面図、(b)はX−X’線で示した断面での屈折率分布、(c)はY−Y’線で示した断面での屈折率分布を示す。
【図6】従来の希土類添加偏波保持光ファイバの例を示したもので、(a)は断面図、(b)はX−X’線で示した断面での屈折率分布、(c)はY−Y’線で示した断面での屈折率分布を示す。
【符号の説明】
1…コア、2…第1クラッド、3…第2クラッド、4…応力付与部。

Claims (2)

  1. コアに希土類元素が添加され、コアの外方のクラッド内にコアに対して対称的に配された応力付与部を有する希土類添加偏波保持光ファイバであって、前記クラッドが、第1クラッドと、第1クラッドの周上に形成され第1クラッドよりも屈折率が高い第2クラッドとからなり、前記第1クラッドの直径が、モードフィールド径の3倍以上で、かつ前記応力付与部の中心間の距離より小さく、前記第1クラッドと前記第2クラッドとの比屈折率の差が−0.3〜−0.7%であり、前記第2クラッドと前記応力付与部との比屈折率の差が−0.3〜−0.7%であり、かつ融着接続の際に、光学的にファイバを側面視して偏光軸を調心する用途に用いられることを特徴とする希土類添加偏波保持光ファイバ。
  2. 前記コアがゲルマニウム添加石英ガラスからなり、前記第1クラッドがフッ素添加石英ガラスからなることを特徴とする請求項1記載の希土類添加偏波保持光ファイバ。
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