JP3629950B2 - クラッチディスク装置及びその捻り振動特性決定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンアイドリング時のトルク変動を起振源とした捻り振動によって発生するアイドル騒音(ガラ音)の低減を目的としたクラッチディスク装置及びその捻り振動特性決定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、エンジンアイドリング時のトルク変動を起振源として発生した捻り振動は、クラッチディスク装置を介して変速機側に伝達され、アイドル騒音、所謂ガラ音と呼ばれる特有の騒音原因となっている。この捻り振動の伝達を極力抑制するためにクラッチディスクには、ダンパスプリングと摩擦材とを組み合わせて図6に示す捻り特性を持たせた減衰対策が施されている。即ち、プラス側の初段設定作動角θ1とマイナス側の初段設定作動角θ1’で形成される所定領域内(以下、この領域を初段領域という)では比較的低いばね定数を発揮し、初段領域外(以下、この領域を二段領域という)ではより高いばね定数を発揮するように捻り特性を設定している。そして、例えばアイドル状態での駐車時等のように、特にガラ音が問題となる状況では、中立点Cに対し振幅θNLを有する捻り振動を初段領域内の低いばね定数でもって減衰させ、走行時には二段領域内の高いばね定数でエンジントルクを伝達するように配慮されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したアイドル状態での駐車時等において変速機はニュートラル位置にあるため、初段領域は、エンジンから変速機側へのトルク伝達が全くないものとして設定されている。しかしながら、実際には変速機内のオイルがカウンタシャフト等で撹拌されることでトルク伝達がなされているため、捻り振動の中立点Cは回転抵抗の相当量だけプラス側の点C’に移動することになる。従来のクラッチディスク装置では、この中立点Cの移動現象を何ら想定しておらず、特にエンジン始動直後で変速機油温が未だ低いときには、回転抵抗が大きいことから中立点の移動量も大きくて、捻り振動の振幅θNL全体が初段領域内に収まらずにばね定数の高い二段領域側に及んでしまう。その結果、捻り振動が十分に減衰されずにガラ音を発生させてしまうという問題があった。
【0004】
その対策として、低油温時においても捻り振動の振幅θNL全体が初段領域内に抑制されるように、初段領域を十分に拡大(広角化)することも考えられるが、この初段領域を含めて、初段ばね定数、ヒステリシス等の各諸元は相互にバランスして成り立っているため、単に広角化したのではダンパスプリングの大型化、ひいてはクラッチディスク装置全体の大型化を招いてしまう。
【0005】
本発明の目的は、各諸元を適切に設定することにより、大型化を防止した上で、油温の変動に関係なく捻り振動を効率良く低減してガラ音を抑制することができるクラッチディスク装置及びその捻り振動特性決定方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明のクラッチディスク装置は、クラッチハブの強度に基づく初段設定作動角θMAX、所定低油温時の変速機の回転抵抗T0、クラッチディスク捻り特性の初段ヒステリシスH、所定低油温時の回転抵抗T 0 に対応するクラッチの初段ばね定数k、エンジンアイドリング時の爆発1次成分の振動周波数f、クラッチハブの慣性モーメントIH、及びドライブピニオンの慣性モーメントIDPの関係が、
2/θMAX(T0−H/2)<k<2π2f2(IH+IDP)
を満足し、かつ、油温に応じた中立点移動量θT、回転抵抗T0が0のときの作動角θNL、プラス側及びマイナス側の初段設定作動角θ1,θ1’の関係が、
θ1≧θNL+θT
|θ1’|≧θNL−θT
を満足するものである。従って、油温の変動に関係なく常に捻り振動の振幅を初段領域内に抑制できるように初段設定作動角θ1,θ1’が設定されると共に、その初段設定作動角θ1,θ1’を実現可能な最小限の慣性モーメントIH,IDPが設定される。
【0007】
又、請求項2の発明のクラッチディスク装置の捻り振動特性決定方法は、クラッチハブの強度に基づく初段設定作動角θMAX、所定低油温時の変速機の回転抵抗T0、クラッチディスク捻り特性の初段ヒステリシスH、所定低油温時の回転抵抗T 0 に対応するクラッチの初段ばね定数k、エンジンアイドリング時の爆発1次成分の振動周波数f、クラッチハブの慣性モーメントIH、及びドライブピニオンの慣性モーメントIDPの関係が、
2/θMAX(T0−H/2)<k<2π2f2(IH+IDP)
を満足するように慣性モーメントIH,IDPを設定し、油温に応じた中立点移動量θT、回転抵抗T0が0のときの作動角θNL、プラス側及びマイナス側の初段設定作動角θ1,θ1’の関係が、
θ1≧θNL+θT
|θ1’|≧θNL−θT
を満足するように上記初段設定作動角θ1,θ1’を設定するものである。つまり、それぞれの要求を満たすように初段設定作動角θ1,θ1’及び慣性モーメントIH,IDP等の各諸元が条件式により相互に関連づけられているため、油温の変動に関係なく常に捻り振動の振幅を初段領域内に抑制できるように初段設定作動角θ1,θ1’が設定されると共に、その初段設定作動角θ1,θ1’を実現可能な最小限の慣性モーメントIH,IDPが設定される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化したクラッチディスク装置の捻り振動特性決定方法の一実施例を説明する。
【0009】
クラッチディスク装置は、図1の模式図に示すように、クーロン摩擦を有する1質量1自由度線形ばね系のモデル、即ち、エンジンのフライホイール1側に対しクラッチディスクのダンパスプリング2及び摩擦材3を介して慣性モーメントI(I=クラッチハブ4の慣性モーメントIH+変速機のドライブピニオン5の慣性モーメントIDP)を支持するモデルとして表現できる。図では、フライホイール1側からの変位入力をXO、ダンパスプリング2のばね定数をk、ヒステリシスHで表した摩擦材3の効力を±H/2、ドライブピニオン5側への変位出力をXA、クラッチディスクで生ずる相対変位をXR(XR=XA−XO)としている。
【0010】
クラッチディスク装置の各諸元の設定手順は、図2のフローチャートに従って行う。まず、ステップS1で、次式(1)に従ってエンジンのアイドル回転速度NOから、トルク変動に起因する爆発1次成分振動周波数f(つまり、ガラ音の原因となる捻り振動の主要周波数)を求める。尚、nはエンジンの気筒数である。
f=NO/60×n/2……………………(1)
ステップS2で図3のマップより、低温時(例えば、15℃)において変速機のドライブピニオン5に作用する回転抵抗TOLを求める。回転抵抗TOLの主原因は、変速機内でのカウンタシャフトによるオイルの撹拌にある。図3のマップは、この撹拌抵抗を基礎としてカウンタシャフトとドライブピニオン5とのギア比等を考慮した上で設定されている。
【0011】
ステップS3で変速機の寸法等から概略のクラッチハブ4の慣性モーメントIH及びドライブピニオン5の慣性モーメントIDPを求める。ステップS4でクラッチハブ4の強度から、最大に設定可能なクラッチディスクの初段設定作動角θMAXを求める。つまり、エンジン側から変速機側への捻り振動を抑制する点では、初段設定作動角θMAXを広く設定するのが望ましいが、結果としてダンパスプリング2の大型化、ひいてはクラッチハブ4の強度低下を招くことになるため、このクラッチハブ4の強度面から初段設定作動角θMAXの設定が制限されるのである。
【0012】
次いで、ステップS5で次式(2)に従って、ステップS2の回転抵抗TOL及びステップS4の初段設定作動角θMAXから初段ばね定数kを求める。
【0013】
k=2TOL/θMAX……………………(2)
回転抵抗として低温時の値TOLを用いているのは、低温時でも捻り振動の振幅が初段作動角θ内に収まる初段ばね定数kの設定を意図しているためである。
【0014】
ここで、(2)式を導き出す手順を説明する。まず、図1に示すように、クラッチディスクに回転抵抗による捻りモーメントが作用したときに、クラッチディスクの中立点が初段領域内に止まるための条件を、初段ばね定数k、初段作動角θ、ヒステリシスH、回転抵抗TO(ここでは低温時と限定しないためTOとする)の関係で表すと、
kθ+H/2>TO……………………(3)
となる。又、クラッチディスクに作用する慣性モーメントIは、前記のように、
I=IH+IDP……………………(4)
である。又、固有振動数fOは、
fO=(1/2π)√(k/I)……………………(5)
エンジン側から変速機側にクラッチディスクを介して伝達される捻り振動の絶対伝達率XA/XOが1.0以下となるための条件、換言すれば、クラッチディスクが減衰作用を奏する条件は、上記(1)式にて求めた振動周波数fと(5)式にて求めた固有振動数fOとの比を起振振動数比pと定義すると、
p=f/fO>√2……………………(6)
で表すことができる。尚、この(6)式の成立の根拠は、社団法人自動車技術会学術講演会前刷集9633991中の図8に基づく説明を参照されたい。
【0015】
そして、(4)式、(5)式及び(6)式から、
k/(IH+IDP)<2π2f2……………………(7)
を導き出すことができる。更に、この(7)式と(3)式から、初段ばね定数kの条件は、
1/θ(T0−H/2)<k<2π2f2(IH+IDP)……………(8)
θ=θMAX/2……………(8’)
と表すことができ,この(8)式の左辺において、クラッチディスクのヒステリシスH=0と仮定して(8’)式を仮定すると、上記した(2)式を得ることができる。つまり、クラッチディスクの捻り振動に対する減衰作用の大きさは、初段作動角θとヒステリシスHとで囲まれる領域(図4にハッチングで示す領域)の面積で表すことができ、初段作動角θの最大値を導き出すためにヒステリシスH=0としているのである。
【0016】
(8)式は、上記のように初段ばね定数kの条件を表しているが、この(8)式を慣性モーメントIH+IDP(=I),IH,IDPを導き出すための各条件式(9),(10),(11)に変形することができる。従って、初段ばね定数k及び各慣性モーメントIH,IDPは、これらの(8)式から(11)式のいずれかを満足する関係となるように設定すればよい。以降は、(8)式を用いて初段ばね定数kと各慣性モーメントIH,IDPを求めるものとして説明を続ける。
【0017】
IH+IDP>(T0−H/2)/(2π2f2)θ……………(9)
IH>(T0−H/2)/(2π2f2)θ−IDP……………(10)
IDP>(T0−H/2)/(2π2f2)θ−IH……………(11)
再び図2のフローチャートに従って説明を続けると、ステップS6で、ステップS5で求めた初段ばね定数kが、上記した(8)式の条件を満足しているか否かを判定する。(8)式を満足せずにNO(否定)と判定した場合、つまり、設定した初段ばね定数kに対してクラッチハブ4及びドライブピニオン5の慣性モーメントIH,IDPが小さ過ぎる場合には、ステップS7で慣性モーメントIHにΔIHを加算し、慣性モーメントIDPにΔIDPを加算した後、再びステップS3乃至ステップS5の処理を繰り返す。
【0018】
尚、以上の慣性モーメントIH,IDPの増大補正は、具体的には慣性モーメントIHについてはクラッチハブ4の外径や幅の拡大により、慣性モーメントIDPについてはドライブピニオン5の歯車径や歯幅の拡大によって実施する。
【0019】
ステップS7の処理を実行する毎に仮設定した慣性モーメントIH,IDPが増大することから、次第に(8)式の右辺の条件を満足し易くなる。そして、ステップS6でYES(肯定)と判定した場合、ステップS8に移行する。
【0020】
ステップS8では、図3のマップより求めた低温時の回転抵抗TOL及び高温時の回転抵抗TOH(例えば、90℃)から、次式(12),(13)に従って、それぞれの回転抵抗TOL,TOHに釣り合うためのクラッチディスクの中立点移動量θL,θH、換言すれば、回転抵抗TOL,TOHが作用した場合に生ずるであろう中立点移動量θL,θHを求める。回転抵抗はTOL>TOHであることから中立点移動量はθL>θH、つまり低温時ほど移動量が大となる。
【0021】
θL=TOL/k……………………(12)
θH=TOH/k……………………(13)
同時にステップS8では、次式(14)に従って、回転抵抗がないと仮定した場合の相対伝達率XR/XOを求めると共に、(15)式に従って相対変位XRを作動角θNLとして設定する。つまり、このときの作動角θNLは、変速機内の回転抵抗を考慮しない理想的な作動角を意味する。
【0022】
XR/XO=√[{p4−(4η/π)2}/(p2−1)2]……………(14)
θNL=XR……………………(15)
尚、(14)式中のηは、クラッチディスクの摩擦材3が奏するクローン摩擦の減衰パラメータであり、その詳細は、上記した学術講演会前刷集中の説明を参照されたい。次いで、ステップS9で次式(16),(17)に従って、回転抵抗を考慮した上で捻り振動の振幅をクラッチディスクの初段領域内に収めるためのプラス側の初段設定作動角θ1及びマイナス側の初段設定作動角θ1’を求める。
【0023】
θ1≧θNL+θL……………………(16)
|θ1’|≧θNL−θH……………………(17)
(16)式及び(17)式中の各パラメータは、図4に示す関係になる。以下、この関係を図に基づいて説明すると、回転抵抗が全くない場合の中立点Cに対して、高油温時の中立点CHは中立点移動量θH分だけプラス側(図の右側)に、低油温時の中立点CLはより大きい中立点移動量θL分だけプラス側に移動する。そして、移動後の中立点CH,CLを中心とした所定の振幅(相対変位XR=作動角θNL)をもって、捻り振動がエンジン側から変速機側に伝達される。油温に関係なく常に捻り振動の振幅を初段領域内に抑制するには、図から明らかなように、プラス側については、低油温時の中立点CLを考慮したθNL+θL以上に初段設定作動角θ1を設定する必要があり、マイナス側については、高油温時の中立点CHを考慮したθNL−θH以下に初段設定作動角θ1’(実際にはマイナスの値であるため絶対値で表す)を設定する必要があるのである。
【0024】
次いで、ステップS10で、ステップS9で求めた初段設定作動角θ1,θ1’と、前記ステップS4で求めた初段設定作動角θMAXとの関係が、次式を満足しているか否かを判定する。
【0025】
θ1+|θ1’|≦θMAX……………………(18)
前記のように初段設定作動角θMAXは、クラッチハブ4の強度に基づいて設定可能な最大値として設定されたものであるため、(18)式の条件を満足しない場合には、初段設定作動角θ1,θ1’が実現不可能な値であることを意味する。この場合にはステップS11で初段ばね定数kにΔkを加算した後、再びステップS6、ステップS8乃至ステップS10の処理を繰り返す。
【0026】
ステップS11の処理を実行する毎に仮設定した初段ばね定数kが増大すると、(5)式の固有振動数fOが増大、(6)式の起振振動数比pが減少、(14)式の相対伝達率XR/XOが減少、(15)式の相対変位XRと共に作動角θNLが減少するため、結果として初段設定作動角θ1,|θ1’|が減少して、次第に(18)式の条件を満足し易くなる。そして、ステップS10でYES(肯定)と判定すると、このクラッチディスク装置の各諸元の設定操作を終了する。
【0027】
ここで、ステップS11で初段ばね定数kを増大方向に補正する度に、ステップS6で初段ばね定数kが(8)式を満足するか否かを判定している。よって、仮に初段ばね定数kの増大によりステップS6で(8)式を満足しなくなった場合には、ステップS7で慣性モーメントIH,IDPが増大補正されて、最終的には、ステップS6及びステップS10の双方の条件を満足する設定がなされる。
【0028】
換言すれば、この設定手順では、油温の変動による中立点C,CH,CLの移動を考慮に入れた上で初段設定作動角θ1,θ1’、初段ばね定数k、及び慣性モーメントIH,IDPの各諸元を、それぞれの要求を満たすように各条件式により相互に関連づけながら設定している。その結果、油温の変動に関係なく常に捻り振動の振幅を初段領域内に抑制可能な初段設定作動角θ1,θ1’、その初段設定作動角θ1,θ1’に対応する最小限の初段ばね定数k、及びその初段設定作動角θ1,θ1’と初段ばね定数kとを実現することができる最小限の慣性モーメントIH,IDP(具体的には、最小限のクラッチハブの外径や幅、ドライブピニオンの歯車径や歯幅等)が得られる。
【0029】
従って、本実施例の捻り振動特性決定方法によって設定されたクラッチディスク装置によれば、特に問題となる低油温時でも、捻り振動の振幅全体が初段領域内に確実に抑制され、かつ、その初段領域内では低い初段ばね定数kでもって捻り振動の減衰が行われることから、捻り振動を効率良く低減してガラ音を抑制することができる。しかも、以上の要求を満たした上で、慣性モーメントIH,IDPを不必要に増大させることなく最小限に設定することから、クラッチディスク装置全体が大型化する弊害を未然に防止することができる。
【0030】
図5では従来例と本実施例のガラ音の発生状況を比較しており、本実施例の捻り振動特性決定方法を用いた場合には、特に低油温時のガラ音レベルが大幅に低減されていることがわかる。
【0031】
以上で実施例の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施例では、ステップS1乃至ステップS7の処理でクラッチハブ及びドライブピニオンの慣性モーメントIH,IDPと初段ばね定数kとを設定し、ステップS8乃至ステップS11の処理で、プラス側及びマイナス側の初段設定作動角θ1,θ1’を設定すると共に、初段ばね定数kを補正したが、必ずしもこの順序に従う必要はなく、逆の手順でもよい。
【0032】
又、上記実施例では、ステップS11で初段ばね定数kを増大方向に補正する度に、ステップS6で初段ばね定数kが(8)式を満足するか否かを判定している。これは前記したように、初段設定作動角θ1,θ1’、初段ばね定数k、及び慣性モーメントIH,IDPの各諸元を相互に関連づけながら最適値に設定するためであるが、必ずしもこの手順に従う必要はなく、ステップS6を実行することなくステップS11からステップS8に移行してもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明のクラッチディスク装置によれば、油温に関係なく常に捻り振動の振幅が初段領域内に抑制されるため、捻り振動を効率良く低減してガラ音を抑制することができ、しかも、その初段設定作動角θ1,θ1’を実現可能な最小限の慣性モーメントIH,IDPが設定されるため、クラッチディスク装置全体の大型化を未然に防止することができる。
【0034】
又、請求項2の発明のクラッチディスク装置の捻り振動特性決定方法によれば、それぞれの要求を満たすように初段設定作動角θ1,θ1’及び慣性モーメントIH,IDP等の各諸元を条件式により相互に関連づけた上で、油温に関係なく常に捻り振動の振幅を初段領域内に抑制できるように初段設定作動角θ1,θ1’を設定すると共に、その初段設定作動角θ1,θ1’を実現可能な最小限の慣性モーメントIH,IDPを設定するため、捻り振動を効率良く低減してガラ音を抑制することができ、しかも、クラッチディスク装置全体の大型化を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のクラッチディスク装置の模式図である。
【図2】クラッチディスク装置の各諸元の設定手順を示すフローチャートである。
【図3】変速機の油温と回転抵抗との関係を示す説明図である。
【図4】実施例のクラッチディスク装置の捻り特性を示す説明図である。
【図5】従来例と本実施例のガラ音の発生状況を示す説明図である。
【図6】従来例のクラッチディスク装置の捻り特性を示す説明図である。
【符号の説明】
4 クラッチハブ
5 ドライブピニオン
θMAX 初段設定作動角
T0 回転抵抗
H ヒステリシス
k 初段ばね定数
f 爆発1次成分の振動周波数
IH クラッチハブ慣性モーメント
IDP ドライブピニオン慣性モーメント
θT 中立点移動量
θNL 作動角
θ1 プラス側初段設定作動角
θ1’ マイナス側初段設定作動角
Claims (2)
- クラッチハブの強度から算出したクラッチの初段設定作動角θMAX、所定低油温時の変速機の回転抵抗T0、上記クラッチの初段ヒステリシスH、上記所定低油温時の回転抵抗T 0 に対応するクラッチの初段ばね定数k、エンジンアイドリング時のトルク変動による爆発1次成分の振動周波数f、上記クラッチハブの慣性モーメントIH、及びドライブピニオンの慣性モーメントIDPの関係が、
2/θMAX(T0−H/2)<k<2π2f2(IH+IDP)
を満足するように設定され、
上記回転抵抗T0と上記初段ばね定数kとに基づいて設定される中立点移動量θT、上記回転抵抗T0を0と仮定したときの作動角θNL、プラス側の初段設定作動角θ1、及びマイナス側の初段設定作動角θ1’の関係が、
θ1≧θNL+θT
|θ1’|≧θNL−θT
を満足するように設定されたことを特徴とするクラッチディスク装置。 - クラッチハブの強度から算出したクラッチの初段設定作動角θMAX、所定低油温時の変速機の回転抵抗T0、上記クラッチの初段ヒステリシスH、上記所定低油温時の回転抵抗T 0 に対応するクラッチの初段ばね定数k、エンジンアイドリング時のトルク変動による爆発1次成分の振動周波数f、上記クラッチハブの慣性モーメントIH、及びドライブピニオンの慣性モーメントIDPの関係が、
2/θMAX(T0−H/2)<k<2π2f2(IH+IDP)
を満足するようにクラッチハブの慣性モーメントIH及びドライブピニオンの慣性モーメントIDPを設定し、
上記回転抵抗T0と上記初段ばね定数kとに基づいて設定される中立点移動量θT、上記回転抵抗T0を0と仮定したときの作動角θNL、プラス側の初段設定作動角θ1、及びマイナス側の初段設定作動角θ1’の関係が、
θ1≧θNL+θT
|θ1’|≧θNL−θT
を満足するように上記初段設定作動角θ1,θ1’を設定することを特徴とするクラッチディスク装置の捻り振動特性決定方法。
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