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JP3622874B2 - 有機エレクトロルミネセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネセンス素子 Download PDF

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JP3622874B2
JP3622874B2 JP21787096A JP21787096A JP3622874B2 JP 3622874 B2 JP3622874 B2 JP 3622874B2 JP 21787096 A JP21787096 A JP 21787096A JP 21787096 A JP21787096 A JP 21787096A JP 3622874 B2 JP3622874 B2 JP 3622874B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、有機発光材料を用いた表示素子である有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機エレクトロルミネセンス素子(以下有機EL素子という)を用いて所定のパターンを発光表示する表示素子として、例えば、図11に示すようなものがあった。図11は、従来の有機EL素子の構造を示す図であり。(a)は、有機EL素子の概略断面構造図を示し、(b)は、有機EL素子の基板上に所定のパターンで形成される陽極(ITO)の一例を示したものである。
【0003】
有機EL素子は、図(a)に示すように、ガラスなどの透光性を有する基板101上に透光性の陽極(ITO)102を図11(b)に示すようなパターンで形成し、さらにその上に、有機発光材料層103、陰極104を順次積層し、陽極(ITO)102と陰極104間に所定の電圧を印加することにより、有機発光材料層103に順電流を流し、有機発光材料層103の、陽極(ITO)102と陰極104によって挟持される部分に順電流を流し、陽極(ITO)102に対応するパターン形状で発光させて表示していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、陽極と基板は材料が異なるため、光の反射率、透過率や屈折率が同一ではなく、したがって、先に述べた従来の有機EL素子では、両極間に電圧を印加しない場合にも、陽極のパターンのエッジが基板を介して見えてしまうので、発光させなくても表示パネル上において表示パターンが視認されてしまう。
【0005】
また、有機発光材料層を微小画素として用いてマトリクス配置させて、必要に応じてこれらの画素の一部を発光させて種々のパターンを表示させるような有機EL素子においても、非発光時において画素が全て視認され、発光時においても発光する画素と共に発光しない画素も視認されてしまう。また、透光性基板の透過率を低下させて非発光時のパターンや画素をマスキングすると、発光時の発光効率が悪くなるなどといったように表示品位が良くなかった。
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、非発光時に表示パターンが視認されず、発光時にのみ必要なパターンが視認されるという、表示品位の高い有機EL素子を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、基板、陽極、陰極、前記陽極と前記陰極間に積層される有機物質からなる発光層を備え、前記陽極及び前記陰極間に電流を流すことにより、所定の領域が発光する有機エレクトロルミネセンス素子であって、前記発光層と前記陰極の間において、前記陰極の電子注入効率より低い電子注入効率を有しかつ仕事関数が3eVを超える材料からなり10〜100オングストロームの膜厚の所定のパターンを有する電子流入抑制層を積層形成することにより、前記所定のパターンに対応する領域の発光を抑制することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、基板、陽極、陰極、前記陽極と前記陰極間に積層される有機物質からなる発光層を備え、前記陽極及び前記陰極間に電流を流すことにより、所定の領域が発光する有機エレクトロルミネセンス素子であって、前記発光層と前記陽極の間において、前記陽極の正孔注入効率より低い正孔注入効率を有する材料からなり0オングストロームを超え20オングストローム以下の所定のパターンを有する正孔流入抑制層を積層形成することにより、所定のパターンに対応する領域の発光を抑制することを特徴とする。
【0011】
【作用】
本発明は以上のように構成したので、請求項1記載の発明によれば、陰極の電子注入効率より低い電子注入効率を有しかつ仕事関数が3eVを超える材料からなり10〜100オングストロームの膜厚の所定のパターンを有する電子流入抑制層を、発光層と陰極の間において積層形成したので、素子の発光時には、陰極から発光層への電子の注入効率が電子流入抑制層が有する所定のパターンに対応する領域において低下するように分布し、所定のパターンに対応する領域の発光が抑制され、パターンが視認することができ、素子の非発光時においては、その膜厚が薄いため電子流入抑制層のパターンが視認されない。
【0012】
また、請求項2記載の発明によれば、陽極の正孔注入効率より低い正孔注入効率を有する材料からなり0オングストロームを超え20オングストローム以下の所定のパターンを有する正孔流入抑制層を、発光層と陽極の間において積層形成したので、素子の発光時には、陽極から発光層への正孔の注入効率が正孔流入抑制層が有する所定のパターンに対応する領域において低下するように分布し、所定のパターンに対応する領域の発光が抑制され、パターンが視認することができ、素子の非発光時においては、その膜厚が薄いため正孔流入抑制層のパターンが視認されない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の各実施形態について以下に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。同図において、(a)は、有機EL素子の概略断面図を示し、(b)は、有機EL素子の有機発光材料層上に所定のパターンで積層形成される電子注入層の一例を示したものである。有機EL素子は、図1(a)に示すように、透光性を有するガラスなどの基板1上に、例えばITOなどを用いた第1電極(陽極)2と、発光層が積層された複数の有機物などの積層体からなる有機発光材料層3を、順次全面にわたって積層形成される。
【0016】
図5は、図1における有機発光材料層3の各層の詳細の一例を示した断面図であり、有機発光材料層3は、第1電極(陽極)2上に、正孔注入層3a、有機物質からなる正孔輸送層3b、TPD/Alqなどの有機物質からなる発光層3c、有機物質からなる電子輸送層3dが順次積層されて形成される。
【0017】
また、図1(b)に示すように、積層された有機発光材料層3上には、所定の表示パターンに対応する形状にパターニングした電子注入層4を積層形成される。電子注入層4に用いられる材料としては、BaO、SrO、CaOなどの数オングストロームから数十オングストロームの薄膜、Al−Li合金など、電子注入効率の高いものを用いる。より具体的には、仕事関数が約3eV以下の絶縁物であるアルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、炭化物、ホウ化物、塩化物の単体もしくは混合物の数オングストローム〜数十オングストロームの薄膜、アルカリ金属、アルカリ土類金属の単体もしくは他の金属との合金を用いるのが望ましい。
【0018】
次に、電子注入層4を含む有機発光材料層3上には、第2電極(陰極)5が積層形成される。第2電極(陰極)5に用いられる材料としては、例えばAlなど、電子注入効率が電子注入層4より低いものを用いる。
【0019】
本発明の第1の実施形態における有機EL素子は以上のように形成されて構成され、第1電極(陽極)2と第2電極(陰極)5間に所定の電圧を印加すると、有機発光材料層3は、電子注入層4が積層形成された部分に電子が効率良く注入されるので、明るく発光する。一方、電子注入層4が積層形成された部分以外の部分では、電子がほとんど注入されないので、ほとんど発光しない。この結果、有機発光材料層3は、電子注入層4のパターニング形状に対応する形状で明るく発光表示する。
【0020】
なお、非発光時には、電子注入層4は、非常に薄いか、または、第2電極(陰極)5とほぼ近似した金属光沢を有するので、電子注入層4が有する形状は、第2電極(陰極)5と対比して視認されず、外観上、電子注入層4および第2電極(陰極)5は、基板1、第1電極(陽極)2、有機発光材料層3を介し、1枚の鏡として視認される。
【0021】
図2に、一例としてBaOを電子注入層に用いて形成された有機EL素子の電圧−輝度特性を示す。同図において、6は、BaOの層厚が0、即ち電子注入層が形成されていない場合の素子の電圧−輝度特性であり、7は、BaOの層厚が15オングストロームの場合の素子の電圧−輝度特性であり、8は、BaOの層厚が5オングストロームの場合の素子の電圧−輝度特性である。
【0022】
同図からわかるように、印加電圧が6Vの場合に、BaOの層厚が0、即ち電子注入層が形成されていない場合の素子の輝度は、3cd/mであるのに対し、BaOの層厚が5オングストロームの場合の輝度は、110cd/mであり、BaOの層厚が15オングストロームの場合の輝度は、30cd/mであり、BaOの層厚が40オングストロームの場合の輝度は、ほとんど0cd/mに近いものとなる。
【0023】
したがって、BaOの層厚がおよそ20オングストローム以下ならば、電子注入層(BaO)の有無による有機発光材料層3の発光表示の輝度コントラストは、ほぼ10対1以上となるので、表示に充分なものとなり、本発明の第1の実施形態における有機EL素子を形成することが可能である。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態について述べる。図3は、本発明の第2の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。同図において、(a)は、有機EL素子の概略断面図を示し、(b)は、有機EL素子の有機発光材料層上に所定のパターンで積層形成される電子流入抑制層の一例を示したものである。有機EL素子は、図3(a)に示すように、透光性を有するガラスなどの基板9上に、例えばITOなどを用いた第1電極(陽極)10と、例えば、TPD/Alqからなる有機発光材料層11が、順次全面にわたって積層形成されている。
【0025】
図6は、図3における有機発光材料層11の詳細の一例を示した断面図であり、有機発光材料層11は、第1電極(陽極)10上に、正孔注入層11a、有機物質からなる正孔輸送層11b、有機物質からなる発光層11c、有機物質からなる電子輸送層11dが順次積層されて形成される。
また、積層された有機発光材料層11上には、電子注入層17が全面にわたって積層形成されている。
【0026】
また、図3(b)に示すように、積層された電子注入層17上には、所定の表示パターンに対応する形状を型抜きしてパターニング形成した電子流入抑制層12が積層形成される。電子流入抑制層12に用いられる材料としては、SiOなどの数十オングストロームの薄膜や、Alなどの電子の注入を妨げるものや、電子注入効率の低い材料などからなる酸化物、ホウ化物、塩化物を用いる。
【0027】
また、仕事関数が約3eV以下の比較的低い値を有する材料を用いる場合は、40〜100オングストローム程度の膜厚にし、それ以外の材料、例えばMgO(仕事関数が約3.6eV)、TiO(仕事関数が約3.9eV)、SiC(仕事関数が約4.5eV)、VC(仕事関数が約3.9eV)、NbC(仕事関数が約4.1eV)などを用いる場合は、10〜100オングストローム程度の膜厚にすることにより好適な電子流入抑制層を形成することができる。
【0028】
また、電子流入抑制層12を含む電子注入層17上には、第2電極(陰極)13が積層形成される。第2電極(陰極)13に用いられる材料としては、例えばAl−Li、BaO/Alの積層など、電子注入効率の高いものを用いる。
【0029】
本発明の第2の実施形態における有機EL素子は以上のように形成されて構成され、第1電極(陽極)10と第2電極(陰極)13間に所定の電圧を印加すると、有機発光材料層11は、電子流入抑制層12が積層形成された領域に覆われた部分には、電子がほとんど注入されないので、その部分の発光層11cはほとんど発光しない。一方、電子流入抑制層12が積層形成された領域に覆われていない発光層11cの部分は、電子が注入されて明るく発光する。この結果、有機発光材料層11は、電子流入抑制層12の型抜きパターニング形状に対応する形状で明るく発光表示する。
【0030】
なお、電子流入抑制層12は、非常に薄いか、または、第2電極(陰極)13とほぼ近似した金属光沢を有するので、非発光時には、電子流入抑制層12が有する形状は、第2電極(陰極)13と対比して視認されず、外観上、電子流入抑制層12および第2電極(陰極)13は、基板9、第1電極(陽極)10、有機発光材料層11を介し、1枚の鏡として視認される。
【0031】
図4に、一例としてSiOおよびBaOを電子流入抑制層に用いて形成された有機EL素子の電圧−輝度特性を示す。同図において、14は電子流入抑制層の厚さが0の場合の素子の電圧−輝度特性であり、15は電子流入抑制層12を10オングストロームの膜厚のSiOで形成した場合の素子の電圧−輝度特性であり、16は電子流入抑制層12を40オングストロームの膜厚のBaOで形成した場合の素子の電圧−輝度特性をそれぞれ示す。同図からわかるように、印加電圧が6Vの場合に、電子流入抑制層が形成されていない場合の輝度は、100cd/mであるのに対し、SiOやBaOで電子流入抑制層12が積層形成した素子の有機発光材料層11の輝度がほとんど0となる。
【0032】
以上のように、本発明の上記各実施の形態において、両極間に電圧が印加されない場合に、有機EL素子が残留発光する場合は、両極間に逆バイアス電圧を印加することにより素子の残留発光を押さえることができ、有機EL素子は、非発光時には1枚の鏡、発光時には、鏡に明るく光パターンが表示されるという従来にない有機EL素子となる。
【0033】
なお、本発明の第2の実施形態においては、第1電極(陽極)10上に、正孔注入層11a、有機物質からなる正孔輸送層11b、有機物質からなる発光層11c、有機物質からなる電子輸送層11dが順次積層された有機発光材料層11上に電子注入層17がほぼ全面に積層され、さらに電子注入層17上に、所定の表示パターンに対応する形状を型抜きしてパターニング形成した電子流入抑制層12を積層して構成したが、電子流入抑制層12を形成する部位は、これに限らず、発光層11cと第2電極(陰極)13の間に積層される各層の任意の層間において形成しても良い。即ち、発光層11cと電子輸送層11dとの層間や、電子輸送層11dと電子注入層17との層間において形成しても同様に有効であり、さらには、以上述べた形成部位を併用することによって、希望する表示パターンを形成するようにしても良い。
また、第1の実施形態と第2の実施形態を併用することによって、希望する表示パターンを形成するようにしても良い。
【0034】
また、以上の実施形態においては、発光表示パターンに対応したパターンで形成された電子注入層又は電子流入抑制層を用いて、第2電極(陰極)から注入される電子の注入効率を発光表示パターンに応じて分布させるようにしたが、図7に示す第3の実施形態、図9に示す第4の実施形態に示すように、パターン化した電子注入層又は電子流入抑制層を用いる替わりに、発光表示パターンに対応したパターンで形成された正孔注入層や正孔流入抑制層を用いることにより、発光層に流入する正孔の注入効率を発光表示パターンに応じて分布させるようにしても良い。
【0035】
図7は、本発明の第3の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。同図において、(a)は、有機EL素子の概略断面図を示し、(b)は、有機EL素子の第1電極(陽極)上に所定のパターンで積層形成される正孔注入層18の一例を示したものである。有機EL素子は、同図に示すように、発光表示パターンに対応したパターンで形成された正孔注入層18を第1電極(陽極)2上に形成し、さらに、パターン化された正孔注入層18を含む第1電極(陽極)2上に、先に述べた有機物質からなる正孔輸送層3b、有機物質からなる発光層3c、有機物質からなる電子輸送層3d、を備えて構成される有機層19と、電子注入層20、第2電極(陰極)21とが順次全面にわたって積層されて形成される。なお、電子注入層20、第2電極(陰極)21に用いられる材料は、それぞれ電子注入層4、第2電極(陰極)13と同様である。
【0036】
したがって、正孔注入層18が形成された領域に対応する有機層19中の発光層3cの領域において正孔の注入効率が上がることにより、希望するパターンで発光表示される。
なお、正孔注入層18は、Pt、CuO等の数オングストローム〜数十オングストロームの薄膜など、正孔注入効率の高い材料が用いられる。
【0037】
図8に、一例としてCuOを正孔注入層として用いて形成された有機EL素子の電圧−輝度特性を示す。同図において、22は、CuOの膜厚が0、即ち正孔注入層が形成されていない場合の素子の電圧−輝度特性であり、23は、CuOの膜厚が5オングストロームの場合の素子の電圧−輝度特性である。
【0038】
同図からわかるように、印加電圧が6Vの場合に、CuOの層厚が0、即ち正孔注入層が形成されていない場合の素子の輝度は、13cd/mであるのに対し、CuOの層厚が5オングストロームの場合の素子の輝度は、110cd/mとなり、CuOの有無による輝度コントラストがほぼ8対1以上となるので、表示に充分なものとなる。
【0039】
なお、正孔注入層18は、非常に薄いか、又は、第2電極(陰極)21とほぼ近似した金属光沢を有するので、非発光時には、正孔注入層18が有するパターン形状は、第2電極(陰極)21と対比して視認されず、外観上、正孔注入層18および第2電極(陰極)21は、基板1、第1電極(陽極)2、有機層19、電子注入層20を介し、1枚の鏡として視認される。
【0040】
また、図9は、本発明の第4の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。同図において、(a)は、有機EL素子の概略断面図を示し、
(b)は、有機EL素子の第1電極(陽極)上に所定のパターンで積層形成される正孔注入層18の一例を示したものである。有機EL素子は、同図に示すように、発光表示パターンに対応したパターンで形成された正孔流入抑制層24を、第1電極(陽極)2上にほぼ全面積層形成された正孔注入層27上に形成し、さらに、パターン化された正孔流入抑制層24を含む第1電極(陽極)2上に、先に述べた有機物質からなる正孔輸送層3b、有機物質からなる発光層3c、有機物質からなる電子輸送層3d、を備えて構成される有機層19と、電子注入層20、第2電極(陰極)21とが順次全面にわたって積層されて形成される。
【0041】
なお、正孔注入層27は、先に述べた正孔注入層18と同様に、Pt、CuO等の数オングストローム〜数十オングストロームの薄膜など、正孔注入効率の高い材料が用いられる。
また、正孔流入抑制層24は、SiO等の数オングストローム〜数十オングストロームの薄膜、Li、BaO、CaO、SrOなど正孔の注入を妨げるものや、正孔流入効率の低い材料が用いられる。
【0042】
図10に、一例としてSrOを正孔流入抑制層として用いて形成された有機EL素子の電圧−輝度特性を示す。同図において、25は、SrOの層厚が0、即ち正孔流入抑制層が形成されていない場合の素子の電圧−輝度特性であり、26は、SrOの層厚が20オングストロームの場合の素子の電圧−輝度特性である。
【0043】
同図からわかるように、印加電圧が6Vの場合に、SrOの層厚が0、即ち正孔流入抑制層が形成されていない場合の素子の輝度は、110cd/mであるのに対し、SrOの層厚が20オングストロームの場合の素子の輝度は、1cd/mよりもはるかに小さな値となり、CuOの有無による輝度コントラストが100対1よりも大きなものとなるので、表示に充分なものとなる。
【0044】
以上により、図9では、発光表示パターンに対応したパターンで形成された正孔流入抑制層24を、第1電極(陽極)2上に形成された正孔注入層27上にさらに積層形成することにより、正孔流入抑制層24が形成された領域に対応する、有機層19中の発光層3cの領域において、正孔の注入効率が低下することにより、その結果、正孔流入抑制層24が形成されていない領域に対応する、有機層19の発光層3cの領域が強調されて発光表示される。
【0045】
また、正孔流入抑制層24は、非常に薄いか、又は、第2電極(陰極)21とほぼ近似した金属光沢を有するので、非発光時には、正孔流入抑制層24が有するパターン形状は、第2電極(陰極)21と対比して視認されず、外観上、正孔流入抑制層24および第2電極(陰極)21は、基板1、第1電極(陽極)2、有機層19、電子注入層20を介し、1枚の鏡として視認される。
【0046】
なお、図9では、正孔流入抑制層24を、正孔注入層27と正孔輸送層3bとの層間において形成したが、これに限らず、発光層3cと第1電極(陽極)2の間に積層される各層の任意の層間において形成しても良い。即ち、発光層3cと正孔輸送層3bとの層間や、正孔注入層と第1電極(陽極2)との層間において形成しても同様に有効であり、さらには、以上述べた形成部位を併用することによって、希望する表示パターンを形成するようにしても良い。
【0047】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、請求項1記載の発明によれば、陰極の電子注入効率より低い電子注入効率を有しかつ仕事関数が3eVを超える材料からなり10〜100オングストロームの膜厚の所定のパターンを有する電子流入抑制層を、発光層と陰極の間において積層形成したので、素子の発光時には、陰極から発光層への電子の注入効率が電子流入抑制層が有する所定のパターンに対応する領域において低下するように分布し、所定のパターンに対応する領域の発光が抑制され、パターンが視認することができ、素子の非発光時においては、電子流入抑制層が有するパターンが視認されことなく、基板、陽極、有機物質からなる発光層、電子流入抑制層などを介して、陰極面が一様に視認される。したがって、発光時においてのみ、必要な形状が表示され、表示品位が高いものとなる。
【0048】
また、請求項2記載の発明によれば、陽極の正孔注入効率より低い正孔注入効率を有する材料からなり0オングストロームを超え20オングストローム以下の所定のパターンを有する正孔流入抑制層を、発光層と陽極の間において積層形成したので、素子の発光時には、陽極から発光層への正孔の注入効率が正孔流入抑制層が有する所定のパターンに対応する領域において低下するように分布し、所定のパターンに対応する領域の発光が抑制され、パターンが視認することができ、素子の非発光時においては、正孔流入抑制層が有するパターンが視認されることなく、基板、陽極、正孔流入抑制層、有機物質からなる発光層などを介して、陰極面が一様に視認される。したがって、発光時においてのみ、必要な形状が表示され、表示品位が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における有機EL素子の電圧−輝度特性の一例である。
【図3】本発明の第2の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における有機EL素子の電圧−輝度特性の一例である。
【図5】本発明の第1の実施形態における有機EL素子の有機発光材料層が有する各層の詳細の一例を示した断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における有機EL素子の有機発光材料層が有する各層の詳細の一例を示した断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における有機EL素子の電圧−輝度特性の一例である。
【図9】本発明の第4の実施形態における有機EL素子の主要構造を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態における有機EL素子の電圧−輝度特性の一例である。
【図11】従来の有機EL素子の構造を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・・基板
2・・・・・第1電極(陽極)
3・・・・・有機発光材料層
3a・・・・正孔注入層
3b・・・・正孔輸送層
3c・・・・発光層
3d・・・・電子輸送層
4・・・・・電子注入層
5・・・・・第2電極(陰極)
6・・・・・電子注入層が形成されていない場合の素子の電圧−輝度特性
7・・・・・BaOの層厚が15オングストロームの場合の素子の電圧−輝度特性
8・・・・・BaOの層厚が5オングストロームの場合の素子の電圧−輝度特性
9・・・・・基板
10・・・・第1電極(陽極)
11・・・・有機発光材料層
11a・・・正孔注入層
11b・・・正孔輸送層
11c・・・発光層
11d・・・電子輸送層
12・・・・電子流入抑制層
13・・・・第2電極(陰極)
14・・・・電子流入抑制層の厚さが0の場合の素子の電圧−輝度特性
15・・・・電子流入抑制層を10オングストロームの膜厚のSiOで形成した場合の素子の電圧−輝度特性
16・・・・電子流入抑制層を40オングストロームの膜厚のBaOで形成した場合の素子の電圧−輝度特性
17・・・・電子注入層
18・・・・正孔注入層
19・・・・有機層
20・・・・電子注入層
21・・・・第2電極(陰極)
22・・・・正孔注入層の厚さが0の場合の素子の電圧−輝度特性
23・・・・正孔注入層を5オングストロームの膜厚のCuOで形成した場合の素子の電圧−輝度特性
24・・・・正孔流入抑制層
25・・・・正孔流入抑制層の厚さが0の場合の素子の電圧−輝度特性
26・・・・正孔流入抑制層を20オングストロームの膜厚のSrOで形成した場合の素子の電圧−輝度特性
27・・・・正孔注入層

Claims (2)

  1. 基板、陽極、陰極、前記陽極と前記陰極間に積層される有機物質からなる発光層を備え、前記陽極及び前記陰極間に電流を流すことにより、所定の領域が発光する有機エレクトロルミネセンス素子であって、前記発光層と前記陰極の間において、前記陰極の電子注入効率より低い電子注入効率を有しかつ仕事関数が3eVを超える材料からなり10〜100オングストロームの膜厚の所定のパターンを有する電子流入抑制層を積層形成することにより、前記所定のパターンに対応する領域の発光を抑制することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
  2. 基板、陽極、陰極、前記陽極と前記陰極間に積層される有機物質からなる発光層を備え、前記陽極及び前記陰極間に電流を流すことにより、所定の領域が発光する有機エレクトロルミネセンス素子であって、前記発光層と前記陽極の間において、前記陽極の正孔注入効率より低い正孔注入効率を有する材料からなり0オングストロームを超え20オングストローム以下の所定のパターンを有する正孔流入抑制層を積層形成することにより、前記所定のパターンに対応する領域の発光を抑制することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
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