JP3619433B2 - 糖衣固形食品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼラチン質固形食品等の比較的高水分含量の固形食品に油脂の薄膜層及び糖衣層を形成させた糖衣固形食品に関する。より具体的には、固形食品の表面全体に油脂の薄膜層が形成され、かつ、更に該薄膜層全体を覆うように糖衣層が形成されている、新規な食感を有する糖衣固形食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、キャンディやチューイングガム等の種々の菓子類に対しては、所望の風味・味・食感・色彩を付与するため、又は外的圧力及び乾燥から保護するために糖衣層を形成する技術が用いられている。通常、糖衣層の形成には、糖衣パン或いは回転釜などと呼ばれる装置(以下、糖衣パン)が使用される。具体的には、先ず、糖衣パンの回転容器内に、キャンディやチューイングガム等の被糖衣物を投入し、次いで、この回転容器を回転させながら、糖衣蜜(糖質の溶液)を投入し、この糖衣蜜が被糖衣物の表面全体に被覆されたところで、粉体原料を投入するか或いは風を送るなどして上記糖衣蜜を乾かし、被糖衣物の外側に糖衣層を形成させる。
ここで、比較的高水分含量の固形食品、例えばグミキャンディ等の食品に対し糖衣層を形成させようとする場合、低水分含量の固形食品、例えばハードキャンディやチューインガムなどと異なり、次のような問題が生じることを見い出した。
即ち、高水分含量の固形食品に対し糖衣層を形成させた場合、該固形食品から糖衣層に水分が移行し易く、糖衣層中に水分が移行すると、糖衣層中の糖質(ショ糖等)が加水分解され、ブドウ糖と果糖に分解される。このような分解された糖衣部分については光の透過度が変わり、それにより斑点模様が生じてしまい、製品としての外観上望ましくないものとなる。また、固形食品から糖衣層へ水分が移行すると、糖衣層が水分を吸収することにより柔らかいものとなり、パリパリとした硬い食感が得られなくなってしまう。
また、固形食品の表面に油脂の薄膜層を設けることにより、固形食品から糖衣層への水分移行を防止する試みもなされているが、このような場合には、油脂の表面に糖衣層を形成させる際に均一な糖衣層を形成することができないといった問題が生じてしまう。糖衣層が均一に形成されない場合には、得られる糖衣固形食品の形が不揃いで外観が悪く、食感も不均一となり、さらに、糖衣層の薄い部分からひび割れや剥がれ落ちが生じやすい等の問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、比較的高水分含量の固形食品、例えばグミキャンディなどに対して糖衣層を形成する際にも、糖衣層が斑点模様等を生じることなく均一な色調を呈し、また、パリパリとした硬い食感を保持し、更に、厚みの均一である糖衣固形食品を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる糖衣固形食品の製造可能な方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、比較的高水分含量の固形食品に対して糖衣層を形成させる場合、最初から糖衣層を形成させるのではなく、最初に油脂の薄膜層を設け、次いで特定の組成を有する糖衣層を更に該薄膜層全体を覆うように形成させることにより上記課題を効率的に解決できることを見い出した。
即ち、本発明は、水分8質量%以上の固形食品の表面全体に油脂の薄膜層が形成され、かつ、プルランと糖アルコールを含有する糖衣層が該薄膜層全体を覆うように形成されていることを特徴とする糖衣固形食品を提供する。また、本発明は、水分8質量%以上の固形食品の表面全体に油脂の薄膜層を形成した後、プルランと糖アルコールとを含有する糖衣層被覆用溶液を該薄膜層全体を覆うように供給した後乾燥して、糖衣層を形成することを特徴とする糖衣固形食品の製造方法を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において対象となる固形食品とは、水分含量が8質量%(以下、単に%という)以上、好ましくは10%以上、より好ましくは10〜20%の固形食品であり、弾性、柔軟性、即ち、引張り、圧縮その他の方法で該食品を変形させ、その原因となった荷重を除いた後、材料が略原寸又は原形を回復する能力を有するか又は有しないもの、例えばグミキャンディ等のソフトキャンディ、ゼラチンソフトカプセル等のゼラチン質固形食品、ゼリー、キャラメル、チューイングガム等が挙げられ、これらは、当該技術分野において公知の常法により調製することができる。例えば、グミキャンディの場合、まず、水及びゼラチン等を含むゼラチン溶液を調製し、これとは別に、ショ糖等を含む糖液を調製し、このゼラチン溶液及び糖液を撹拌混合して乾燥することにより調製することができる。また、上記ゼラチン溶液及び糖液には、所望の任意成分を添加することもできる。
また、固形食品は、任意の形状であってもよいが、回転させながら糖衣層を形成することを考慮すると、球状体、楕円体等が好ましい。また、その大きさは、例えば3〜30mm×3〜30mm×3〜30mmであるのが好ましく、より好ましくは5〜20mm×5〜20mm×5〜20mmである。
【0006】
本発明においては、まず、上記固形食品の表面全体に油脂の薄膜層を設ける。この際用いることができる油脂としては、食品に対して用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、ナタネ硬化油、パーム油、オリーブ油、ラード及びヘット等が挙げられる。また、融点が40〜80℃の油脂が好ましく、より好ましくは融点が50〜70℃のものである。本発明においては、このような油脂を用いて、固形食品表面に薄膜層を形成させる。このような薄膜は、例えば、固形食品をオイルドラム等の容器に入れた後、この固形食品に対して油脂をスプレーして表面全体に行き渡らせることにより形成させることができる。また、用いる油脂の量は、固形食品の質量に対して、例えば0.1〜5%とするのが好ましく、より好ましくは0.2〜2%である。
【0007】
本発明においては、固形食品の表面全体に油脂の薄膜層を形成させた後、この薄膜層全体を覆うように、プルランと糖アルコールを含有する糖衣層を更に形成させる。この糖衣層は、糖衣層被覆用溶液を供給した後乾燥することにより形成することができる。ここで、糖衣層被覆用溶液とは、上記糖衣層を形成するための、いわゆる糖衣蜜からなる溶液をいう。本発明においては、プルランが好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.5〜3%、及び、糖アルコールが好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜70%含有されている糖衣層被覆用溶液を用いて上記糖衣層を形成するのが好ましい。尚、残部は例えば水とすることができる。ここで、上記糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、イソマルチトール、ソルビトール、バニトール、マルトトリイトール及びキシリトール等が挙げられ、これらのうち、マルチトール、ソルビトール及びキシリトールが好ましく、マルチトールが最も好ましい。また、上記糖衣層被覆用溶液は、上記成分を添加した後、例えば、80〜130℃で加熱混合することにより調製することができる。尚、本発明においては、上記糖衣層被覆用溶液に、プルラン及び糖アルコール以外の成分を含ませることもできる。また、上記糖衣層被覆用溶液に、ショ糖を含ませることもできるが、ショ糖は、上記糖衣層中に糖アルコール100質量部に対して0〜50質量部含有されるように用いるのがよい。これにより、斑点模様の発生を防止することができる。
【0008】
本発明においては、上記糖衣層被覆用溶液を供給して、固形食品の表面上に形成された油脂の薄膜層全体を覆うように上記糖衣層を形成させることができる。この糖衣は、例えば回転容器内において行うことができる。回転容器とは、それ自体が回転可能であり、かつ、糖衣する固形食品を充填可能なものであればいずれのものであってもよい。例えば、一般に糖衣パン或いは回転釜と呼ばれる、糖衣品を形成するための装置に含まれるものであってもよい。回転容器は、例えば、駆動モータに接続され鉛直線に対して、例えば10〜60°傾斜させて配置された回転駆動軸に取り付けられた上方開口型の有底容器であるのが好ましい。また、このような回転容器を含み得る糖衣パンとしては、例えば、富士薬品機械社製のFY−TS−220を用いることができる。このような糖衣パンは、例えば、糖衣層被覆用溶液供給装置、例えばスプレーノズルを備えていてもよく、更に、加熱装置、冷却装置、乾燥装置(送風装置等)を備えていてもよい。
【0009】
本発明においては、上記糖衣層被覆用溶液を、固形食品の表面全体に形成された油脂の薄膜層全体を覆うように供給した後、乾燥して糖衣層を形成するのが好ましい。この乾燥は、例えば、粉体配合物を供給して被覆物表面全体に行き渡らせることにより行うことができ、あるいは、この粉体配合物での処理の後に室温で放置することにより行うこともできる。また、本発明においては、この糖衣層被覆用溶液を繰り返し供給して、油脂の薄膜層全体を覆う、適当な厚みの糖衣層を形成することができる。この繰り返して用いる糖衣層被覆用溶液の組成は同一のものとしてもよいし、或いは種々の組成を設定してもよい。即ち、油脂の薄膜層に最も近い糖衣層を形成するための糖衣層被覆用溶液には、プルラン及び糖アルコールの他に任意の成分を含ませることができ、また、その後に供給する糖衣層被覆用溶液には、上記2成分を含ませてもよいし、あるいは含ませずに、これとは別の成分、例えば、ショ糖、アラビアガム、ゼラチン等を含ませることができる。
【0010】
本発明においては、前記糖衣層被覆用溶液を、固形食品に対して、例えば、2〜40回繰り返し供給するのが好ましい。ここで、回転容器を回転させながら該回転容器内で糖衣層を形成する工程は、糖衣層被覆用溶液を、油脂の薄膜層全体を覆うように供給した後、風を吹きつけることなく行うのが好ましい。また、この糖衣層の仕上げ工程においては、回転容器の回転を止めるか、あるいは、回転容器から固形食品を取り出して、例えば、10〜30℃で、湿度20〜60%の雰囲気下に3〜60時間程度静置して乾燥させることが好ましい。また、この乾燥は、糖衣層の水分含量が1〜5%となるまで行うのが好ましい。尚、本発明においては、油脂の薄膜層と糖衣層との間に、例えばショ糖等の粉体原料を設けてもよい。
【0011】
また、本発明においては、上記糖衣層(以下、第1糖衣層)を形成した後、更なる糖衣層(以下、第2糖衣層又は第3糖衣層)を形成することができる。この第2糖衣層及び第3糖衣層は、第2糖衣層又は第3糖衣層被覆用溶液を、第1糖衣層形成後に供給し、乾燥することにより形成することができる。ここで、第2糖衣層又は第3糖衣層被覆用溶液は、種々の配合をしていてもよく、例えば、上記第1糖衣層被覆用溶液と同一の組成のものであってもよく、異なっていてもよい。この第3糖衣層を最外層とする場合には、それに色素等を含ませて着色するのが好ましい。このことは、最外層が第2糖衣層である場合にも同様である。乾燥は、例えば、粉体配合物を供給して被覆物表面全体に行き渡らせることにより行うことができ、あるいは、この粉体配合物での処理の後に送風することにより行うこともでき、あるいは、粉体配合物を供給することなく送風することにより行うことができる。送風を行う場合、その風量は3m3/分〜30m3/分とするのが好ましく、第2糖衣層については例えば水分含量が0.5〜3%、又は第3糖衣層については例えば水分含量が0.1〜2%となるように行うのが好ましい。また、本発明においては、第2糖衣層又は第3糖衣層被覆用溶液を繰り返し供給して、固形食品に対して適当な厚みの第2糖衣層又は第3糖衣層を形成することができる。本発明においては、固形食品に対して、第2糖衣層被覆用溶液を、例えば、5〜30回、第3糖衣層被覆用溶液を、例えば、10〜50回繰り返し供給するのが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、上記最終糖衣層を形成した後、艶出しなどの更なる工程を採用してもよく、例えば、艶出し工程は、回転容器内に艶出しワックスを供給し、回転容器を回転させながら該糖衣物表面にワックスをコーティングすることにより行うことができる。
【0013】
次に本発明の製造方法の実施態様の一例を示すが、本発明はこれに限定される訳ではない。
1)まず、ゼラチン質固形食品の一例であるグミキャンディの調製工程を説明する。
水10〜20部に粘度が1〜5mPa・sのゼラチン4〜15部を添加混合し、その後、10〜100hpaにまで減圧し、その状態を1〜7分間維持してゼラチンを膨潤させた後、減圧度を100〜800hpaにすると共に加熱処理を開始し、品温が50〜80℃になった時点で加熱を停止すると共に常圧に戻すことによりゼラチン溶液を得ることができる。
また、これとは別に、ショ糖10〜35部、無水結晶ブドウ糖10〜35部及び水5〜20部を撹拌混合し、品温100〜130℃にまで加熱した後、減圧濃縮処理により品温を65〜95℃にまで低下させて、濃縮糖液を得ることができる。
上述のようにして得た糖液と、上述のようにして得たゼラチン溶液とを、それぞれ50〜80℃に保温しながら添加混合した後、所望の添加物を加えて撹拌混合して均一化してキャンディ溶液を得ることができる。このキャンディ溶液のブリックス(Bx)は、好ましくは70〜80とするのがよい。このようにして得たキャンディ溶液を充填装置に入れ、コーンスターチ等の成形型に約0.5〜10gずつ充填し、10〜40℃、湿度20〜60%の条件で10〜150時間乾燥処理を施した後、該成形型から取り出してグミキャンディを得ることができる。
【0014】
2)次に糖衣層被覆用溶液の調製工程の例を説明する。
第1糖衣層被覆用溶液は、例えば、糖アルコール0〜80部、プルラン0〜5部を50〜130℃で撹拌しながら加熱混合することにより調製することができる。また、これ以外に、繰り返し供給する溶液としては、アラビアガム0〜5部、ゼラチン0〜5部、ショ糖0〜80部、及び水20〜50部を50〜130℃で撹拌しながら加熱混合することにより調製することができる。
第2糖衣層被覆用溶液は、例えば、上記第1糖衣層被覆用溶液と同様にして調製することができる。
また、第3糖衣層被覆用溶液は、ショ糖50〜80部、アラビアガム0.1〜5部、ゼラチン0.1〜5部、及び水20〜50部を50〜130℃で撹拌しながら加熱混合した後一旦10〜60℃にまで冷却し、次いで、これにコーンスターチ0.3〜5部及びレモンフレーバー0.05〜2部又は色素0.1〜5部を加え、10〜60℃で撹拌しながら加熱混合することにより調製することができる。
【0015】
3)粉体配合物の調製
また、上記第1及び/又は第2糖衣層形成のための乾燥工程で用いることができる粉体配合物は、例えば、ショ糖0〜80部、マルチトール0〜80部、プルラン0〜10部、無水クエン酸0〜10部、及びビタミン0〜60部、レモンフレーバー0〜5部、アラビアガム0〜10部、及びコーンスターチ0〜10部を混合することにより調製することができる。
尚、本発明においては、酵素処理澱粉やショ糖等を用いることもできる。
【0016】
4)続いて、上述のようにして調製したゼラチン質固形食品をオイルドラムに充填し、該食品の質量をベースとして0.1〜5%の油脂(例えばナタネ硬化油)を該食品表面全体にスプレーコーティングする。この際、オイルドラム中の固形食品を回転させながら行うのが好ましい。
【0017】
5)上述のようにして調製した第1糖衣層被覆用溶液を用いて、オイルコーティングしたゼラチン質固形食品に第1糖衣層を形成する工程の例を説明する。
a)糖衣パンの回転容器内に、上記グミキャンディ10〜70部を供給し、該回転容器を毎分5〜30回転で回転させながら、回転容器を0.5〜10分間回転させる。尚、この際、ショ糖(粗粒)0.05〜5kgを供給することもできる。
b)次に、上記回転容器を毎分5〜30回転で回転させながら、回転容器内に第1糖衣層被覆用溶液0.1〜1kgを供給し、この溶液がグミキャンディの表面全体に行き渡ったところで、上記粉体配合物1を0.1〜1kg供給するのがよい。
c)次に更に別の第1糖衣層被覆用溶液を回転容器内に供給しこの溶液がグミキャンディの表面全体に行き渡ったところで、粉体配合物を供給し、この工程を数回、例えば1〜30回繰り返すことにより、この溶液の合計が1〜10kg、粉体配合物合計が1〜10kgとなるように供給することもできる。また、この際回転容器は10〜200分間回転させるのが好ましい。
d)次に、更に別の第1糖衣層被覆用溶液及び粉体配合物を用いて更なる第1糖衣層を形成することができる。例えば、この溶液を回転容器内に供給しグミキャンディの表面全体に行き渡ったところで、粉体配合物を供給することができ、また、この工程を数回、例えば2〜20回繰り返すことにより、この糖衣蜜の合計が1〜5kg、粉体配合物の合計が1〜5kgとなるように供給することができる。また、この際回転容器は10〜150分間回転させるのが好ましい。
e)更に、第1糖衣層被覆用溶液0.05〜5kgを上記回転容器内に供給した後、酵素処理澱粉0.1〜5kg又はショ糖0.05〜5kgを供給し、回転容器を0.5〜10分間回転させて、更なる第1糖衣層を形成することもできる。
【0018】
6)上述のようにして第1糖衣層を被覆した後、これを糖衣パンから取出し、温度5〜30℃、湿度20〜60%に調整された室内のトレー上に平たく並べて、3〜96時間乾燥させることができる。
【0019】
7)上述のようにして第1糖衣層を乾燥した後、これより硬い第2糖衣層を次のようにして被覆することができる。
上記乾燥後、グミキャンディを再び糖衣パンの回転容器内に移し、毎分5〜30回転で回転させながら、回転容器内に第2糖衣層被覆用溶液Aを供給し、この溶液がグミキャンディの表面全体に行き渡ったところでさらに粉体配合物2を供給し、この粉体配合物2がグミキャンディの表面全体に行き渡ったところで糖衣パンに設けられた送風管により10〜35℃、湿度20〜60%の風を風量3m3/分〜30m3/分でグミキャンディに対して送風することにより第2糖衣層を形成することができる。尚、この工程を数回、例えば2〜30回繰り返すことにより、この糖衣蜜を合計で1〜5kg、粉体配合物を合計で1〜5kg供給するのが好ましい。尚、この際、回転容器は5〜200分間回転させるのが好ましい。
【0020】
8)上述のようにして第2糖衣層被覆用溶液及び粉体配合物を糖衣した後、グミキャンディを糖衣パンから取出し、温度5〜30℃、湿度20〜60%に調整された室内のトレー上に平たく並べて、3〜96時間乾燥させることができる。
【0021】
9)更に本発明においては、上述のようにして得た糖衣グミキャンディに更に、第2糖衣層よりも硬い第3糖衣層を次のようにして形成することができる。
上述のようにして得た糖衣グミキャンディを再び糖衣パンの回転容器内に移し、毎分5〜30回転で回転させながら、回転容器内に第3糖衣層被覆用溶液を供給し、この溶液がグミキャンディの表面全体に行き渡ったところで、送風管より10〜35℃、湿度20〜60%の風を風量3m3/分〜30m3/分でグミキャンディに対して送風することにより第3糖衣層を形成することができる。この工程は、同一の第3糖衣層被覆用溶液を用いて又はこれとは別の第3糖衣層被覆用溶液を用いて、数回、例えば5〜50回繰り返すことにより、この溶液を合計1〜20kg供給することができる。尚、この際、回転容器は5〜150分間回転させるのが好ましい。
【0022】
10)更に任意の工程として、上記回転容器を毎分1〜10回転で回転させながら、回転容器内に艶出し用ワックス0.02〜1kgを供給し、回転容器を5〜100分間回転させることができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的高水分含量の固形食品、例えばグミキャンディなどに対して糖衣層を形成する際にも、糖衣層が斑点模様等を生じることなく均一な色調を呈し、外観上優れた糖衣固形食品が提供される。また、本発明によれば、外側の糖衣層がパリパリとした硬い食感を有し、内側の被糖衣物が柔らかな食感を有する、新規な食感を醸し出す糖衣固形食品を提供することができる。また、本発明における糖衣固形食品の糖衣層の厚みは均一であり、形が揃っていて外観が良く、食感も均一で、さらに、糖衣層のひび割れや剥がれ落ちのない糖衣固形食品を提供することができる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0024】
【実施例】
(1)グミキャンディ(固形食品)の調製
1)ゼラチン溶液の調製
水15.6部にコラーゲン4.0部を添加混合した後、これにブルーム値300で粘度が3.0mPa・sのゼラチン7.7部を添加混合し、その後、50hpaにまで減圧にし、その状態を2〜3分間維持してゼラチンを膨潤させた。その後、減圧度を500hpaにすると共に加熱処理を開始し、品温が65℃になった時点で加熱を停止すると共に常圧に戻した。
【0025】
2)糖液の調製
ショ糖21.7部、トレハロース7.3部、還元澱粉糖化物(商品名:PO−300 東和化成工業社製)7.3部、無水結晶ブドウ糖21.7部、及び水10.9部を撹拌混合し、品温120℃にまで加熱した後、減圧濃縮処理により品温を80℃にまで低下させた。これにより糖液は68.9部から59.5部にまで濃縮された。
【0026】
3)グミキャンディの調製
約65℃に保温された糖液59.5部に65℃に保温されたゼラチン溶液27.3部を添加混合した後、無水クエン酸2.5部、レモン果汁2.5部、難消化性デキストリン4.9部、水2.4部、及びフレーバー0.9部を添加し、撹拌混合して均一化して、キャンディ溶液(Bx74)を得た。その後、得られたキャンディ溶液を充填装置に入れ、コーンスターチの成形型に約1gずつ充填し、20℃、湿度50%の条件で90時間乾燥処理を施した後、コーンスターチから取り出してグミキャンディを得た。得られたグミキャンディは水分が約12%のものであった。
【0027】
(2)糖衣層被覆用溶液の調製
第1糖衣層被覆用溶液A
下記の配合に基づき、マルチトール及びプルランを水に加え、100℃で攪拌しながら加熱混合して、第1糖衣層被覆用溶液Aを調製した。
(配合)
マルチトール 59.0部
プルラン 1.0部
水 40.0部
【0028】
第1糖衣層被覆用溶液B
下記の配合に基づき、マルチトール、アラビアガム及びゼラチンを水に加え、100℃で攪拌しながら加熱混合して、第1糖衣層被覆用溶液Bを調製した。
(配合)
マルチトール 65.0部
アラビアガム 0.5部
ゼラチン(ブルーム値100) 0.5部
水 34.0部
【0029】
第1糖衣層被覆用溶液C及び第2糖衣層被覆用溶液A
下記の配合に基づき、蔗糖、アラビアガム及びゼラチンを水に加え、100℃で攪拌しながら加熱混合して、第1糖衣層被覆用溶液C及び第1糖衣層被覆用溶液Aを調製した。
(配合)
蔗糖(粗粒) 65.0部
アラビアガム 0.5部
ゼラチン(ブルーム値100) 0.5部
水 34.0部
【0030】
第3糖衣層被覆溶液A
下記の配合に基づき、先ず、蔗糖、アラビアガム、ゼラチン及び水を100℃で攪拌しながら加熱混合した後一旦40℃にまで冷却し、次いで、これにコーンスターチ及びレモンフレーバーを加え、40℃で攪拌しながら加熱混合して、第3糖衣層被覆用溶液Aを調製した。
(配合)
蔗糖(粗粒) 64.0部
アラビアガム 0.4部
ゼラチン(ブルーム値100) 0.4部
水 33.0部
コーンスターチ(粉体) 2.0部
レモンフレーバー(粉体) 0.2部
【0031】
第3糖衣層被覆溶液B
下記の配合に基づき、先ず、蔗糖、アラビアガム、ゼラチン及び水を100℃で攪拌しながら加熱混合した後一旦40℃にまで冷却し、次いで、これに色素を加え、40℃で攪拌しながら加熱混合して、第3糖衣層被覆用溶液Bを調製した。
(配合)
蔗糖(粗粒) 68.0部
アラビアガム 0.5部
ゼラチン(ブルーム値100) 0.5部
水 30.0部
色素 1.0部
【0032】
(3)粉体配合の調製
粉体配合物1(以下、酸配合物という)
下記の配合に基づき、各粉体原料を混合して、酸配合物を調製した。
(配合)
蔗糖(粗粒) 13.5部
マルチトール 20.0部
プルラン 4.0部
無水クエン酸 2.5部
ビタミンC 30.0部
【0033】
粉体配合物2(以下、フレーバーAという)
下記の配合に基づき、各粉体原料を混合して、フレーバーAを調製した。
(配合)
蔗糖(粉糖) 19.0部
レモンフレーバー(粉末) 1.0部
アラビアガム 6.0部
コーンスターチ 4.0部
【0034】
粉体配合物3(以下、フレーバーBという)
下記の配合に基づき、各粉体原料を混合して、フレーバーBを調製した。
(配合)
蔗糖(粉糖) 26.0部
レモンフレーバー(粉末) 2.0部
コーンスターチ 4.0部
【0035】
(4)糖衣グミキャンディの製造
1)オイルコーティング
▲1▼ オイルドラム内にグミキャンディ41.5kgを供給し、該オイルドラムに設けられたスプレーノズルからナタネ硬化油0.5kgをグミキャンディに噴霧して、グミキャンディの表面に油脂の薄膜層を形成した。
【0036】
2)第1糖衣層の形成
▲2▼ 次に、糖衣パンの鉛直線に対し傾斜して配置された回転軸を中心に回転可能な回転容器内に、▲1▼で得られたグミキャンディを供給し、該回転容器を毎分15回転で回転させながら、蔗糖(粗粒)0.5kgを供給して、回転容器を約3分間回転させた。
▲3▼ 次に、上記回転容器を回転させながら、回転容器内に第1糖衣層被覆用溶液A0.3kgを供給し、この溶液Aがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、更に酸配合0.5kgを供給した。
▲4▼ 次に、上記回転容器を回転させながら、回転容器内に第1糖衣層被覆用溶液Bを供給し、この溶液Bがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、更に酸配合を供給した。この作業を9回繰り返して、第1糖衣層被覆用溶液Bと酸配合を各々計3.0kgと6.5kg供給した。この際、回転容器は約60分間回転させた。
▲5▼ 次に、上記回転容器内に第1糖衣層被覆用溶液Cを供給し、この溶液Cがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、更にフレーバーAを供給した。この作業を7回繰り返して、第1糖衣層被覆用溶液CとフレーバーAを各々計1.5kgと3.0kg供給した。この際、回転容器は約45分間回転させた。
▲6▼ 次に、上記回転容器内に第1糖衣層被覆用溶液C0.3kgを供給し、この溶液Cがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、更に酵素処理澱粉(商品名:FixGumB、森下産業社製)1.0kgを供給し、回転容器を約5分間回転させた。
▲7▼ 次に、上記回転容器内に第1糖衣層被覆用溶液C0.2kgを供給し、この溶液Cがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、更に蔗糖(粉糖)0.5kgを供給し、回転容器を約5分間回転させた。この時点において、第1糖衣層の水分含量は約6%であった。
【0037】
3)静置乾燥
▲8▼ ▲7▼で得られたグミキャンディを糖衣パンから取出し、温度20℃、湿度50%に調整された室内のトレー上に平たく並べて、約16時間乾燥させた。これにより、第1糖衣層の水分含量が約3.5%となった。
【0038】
4)第2糖衣層の形成
▲9▼ 次に、▲8▼で得られたグミキャンディを再び糖衣パンの回転容器内に移し、該回転容器を毎分15回転で回転させながら、回転容器内に第2糖衣層被覆用溶液Cを供給し、この溶液Cがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、更にフレーバーBを供給し、このフレーバーBがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、糖衣パンに設けられた送風管より20℃、湿度50%の風を風量15m3/分でグミキャンディに対して送風した。この作業を8回繰り返して、溶液CとフレーバーBを各々計3.0kgと3.2kg供給した。この際、回転容器は約100分間回転させた。この時点において第2糖衣層の水分含量は、約2.5%であった。
【0039】
5)静置乾燥
▲9▼で得られたグミキャンディを糖衣パンから取出し、温度20℃、湿度50%に調整された室内のトレー上に平たく並べて、約16時間乾燥させた。これにより第2糖衣層の水分含量が約2%となった。
【0040】
6)第3糖衣層の形成
次に、5)で得られたグミキャンディを再び糖衣パンの回転容器内に移し、該回転容器を毎分15回転で回転させながら、回転容器内に第3糖衣層被覆用溶液Dを供給し、この溶液Dがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、送風管より24℃、湿度40%の風を風量15m3/分でグミキャンディに対して送風した。この作業を20回繰り返して、溶液Dを計13.0kg供給した。この際、回転容器は約350分間回転させた。
次に、上記回転容器内に第3糖衣層被覆用溶液Eを供給し、この溶液Eがグミキャンディの全体に行き渡ったところで、送風管より24℃、湿度40%の風を風量15m3/分でグミキャンディに対して送風した。この作業を8回繰り返して、溶液Dを計3.0kg供給した。この際、回転容器は約70分間回転させた。尚、得られた第3糖衣層の水分含量は、約1.5%であった。
【0041】
7)艶出し
上記回転容器を毎分5回転で回転させながら、回転容器内に艶出し用ワックス0.075kgを供給し、回転容器を40分間回転させ、本発明の糖衣グミキャンディを得た。
【0042】
(5)糖衣グミキャンディの性能
▲1▼ 上記製造工程において製造された糖衣グミキャンディは、糖衣層が斑点模様等を生じることなく均一な色調を有するものであり、かつ、糖衣層は、オイルコーティングをしているにもかかわらず、厚みが均一であった(約1.5mm)。
▲2▼ 外側の糖衣層がパリパリとした硬い食感を有し、内側のグミキャンディがプリプリとした柔らかな食感を有し、新規な食感を醸し出す。
Claims (4)
- 水分8質量%以上の固形食品の表面全体に油脂の薄膜層が形成され、かつ、プルランと糖アルコールを含有する糖衣層が該薄膜層全体を覆うように形成されており、更に前記糖衣層全体を覆うショ糖含有糖衣層が形成されていることを特徴とする糖衣固形食品。
- 前記固形食品がグミキャンディである請求項1記載の糖衣固形食品。
- 水分8質量%以上の固形食品の表面全体に油脂の薄膜層を形成した後、プルランと糖アルコールとを含有する糖衣層被覆用溶液を該薄膜層全体を覆うように供給した後乾燥して糖衣層を形成し、その後、ショ糖を含有する糖衣層被覆用溶液を前記糖衣層全体を覆うように供給し乾燥して更なる糖衣層を形成することを特徴とする糖衣固形食品の製造方法。
- プルランと糖アルコールとを含有する糖衣層被覆用溶液を、薄膜層全体を覆うように供給した後、 10 〜 30 ℃で湿度 20 〜 60 %の雰囲気下に3〜 60 時間静置して乾燥させて糖衣層を形成する請求項3記載の糖衣固形食品の製造方法。
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