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JP3617102B2 - ヒト筋肉疲労の早期回復効果を有するアミノ酸栄養組成物 - Google Patents

ヒト筋肉疲労の早期回復効果を有するアミノ酸栄養組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアミノ酸栄養組成物に関するものである。より具体的には、L−アルギニン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリン、L−リジン、メチオニン、L−スレオニン、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファンおよびL−グルタミンを特定モル組成比に含有して成るアミノ酸混合物を主要構成成分とするアミノ酸栄養組成物に関するものである。
【0002】
本発明のアミノ酸栄養組成物を事前に、或いは事後速やかに摂食するときは、過剰の負荷を行った時に発生する筋肉自体の疲労ならびに筋肉の疲労に伴う倦怠感などの精神的疲労を速やかに回復することが可能である。
【0003】
【従来の技術】
アミノ酸含有組成物を投与し、体調を改善する試みは、既に、種々の形態による試験が行われている。それらの知見の二三を例示すれば次の通りである。
【0004】
すなわち、(1)スズメバチ(Vespar属)の幼虫が分泌する唾液に含有されるアミノ酸類に準じて構成されたアミノ酸組成物を、各種の投与方法を用いて、強制遊泳により運動負荷を行ったマウスに投与した結果を参照して、その効果を確認した、血糖値を調節するための組成物(参考文献:特開平4−95026号明細書)。
【0005】
(2)スズメバチ(Vespar属)の幼虫が分泌する唾液に含有されるアミノ酸類に準じ、上記の例とは異なる組成に設定したアミノ酸組成物を各種の投与方法を用いて、強制遊泳により運動負荷を行ったマウスに投与した結果を参照して、その効果を確認した、血糖値を調節するための組成物(参考文献:特開平4−112825号明細書)。
【0006】
(3)耐久的運動、身体的運動にたずさわり、あるいはオ−バートレーニングに陥っている人の血液中L−グルタミン濃度の低下を処置または防止するために経口投与するのに適当なL−アラニル−L−グルタミンなどのグルタミン誘導体を唯一の目的有効成分として含有する組成物(参考文献:特開平5−213747号明細書)。
【0007】
(4)スズメバチ(Vespar属)の幼虫が分泌する唾液に含有されるアミノ酸類に準じて構成されたアミノ酸組成物を各種の投与方法を用いて、強制遊泳により運動負荷を行ったマウスに投与した結果を参照して、その効果を確認した、アドレナリンおよびノルアドレナリンの分泌を促進し、その結果体内脂肪の分解の促進、高脂血症の改善を図るための組成物(参考文献:特開平6−336432号明細書)。
【0008】
上記に例示した(1)、(2)および(4)はアミノ酸組成物の或る種の生理活性を動物実験により確認したものであり、アミノ酸組成物の生理活性に関する知見を開示するものの、ヒトの筋肉に対する過剰の負荷を行った時に発生する筋肉自体の疲労ならびに筋肉の疲労に伴う倦怠感などの精神的疲労を回復する目的でアミノ酸組成物を投与したものではない。また、かかる疲労回復効果を示唆するものではない。さらに、投与方法は経口投与を特定したものではない。
【0009】
(3)は特定のグルタミン誘導体を唯一の目的有効成分として含有する組成物の有する運動過剰に起因する生理活性失調の回復効果を確認したものである。しかしながら、複数のアミノ酸より構成されるアミノ酸組成物によって、初めて齎される総合的、相乗的な効果に関しては、何ら、言及するところがない。
【0010】
したがって、上記の公知の記載は、特定の種類のアミノ酸より構成され、且つ特定の組成比率より成るアミノ酸組成物を、ヒトの筋肉に過剰の負荷を行った際に発生する筋肉自体の疲労ならびに筋肉の疲労に伴う倦怠感などの精神的疲労を回復する目的で食品として摂食せしめた場合の効果を開示し、あるいは示唆するものではない。
【0011】
また、上記の公知の記載は、これらの記載に基ずき本発明を容易に推知可能ならしめるものでもない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上記の公知の記載には開示されていないあるいは示唆されていないヒトの筋肉疲労の早期回復に関する未解決の問題を解決すべく、鋭意検討の結果、以下に示す(1)〜(6)の技術的要件を見出した。
【0013】
(1)ヒトの筋肉に対する過剰負荷時に発生する疲労は、筋肉自体の生理的疲労のみならず、これに加えて筋肉の生理的疲労に伴う全身の倦怠感、脱力感などの精神的疲労より成立していること。
【0014】
(2)これらの総合された疲労は、個別の特定アミノ酸の投与によっても、或る程度の回復は可能ではあるが、特定の組成のアミノ酸組成物として摂食せしめる時は、個別のアミノ酸の投与の場合よりも、はるかに効果的であること。
【0015】
(3)効果的なアミノ酸組成物には、組成物を構成する各アミノ酸の間に、特定範囲の構成比率が存在すること。
【0016】
(4)アミノ酸組成物の摂食に際しては、可能な限り、自然な方法および形態で実施され、被摂食者に困難および抵抗なく受容される方法および形態を採用すべきこと。
【0017】
(5)なかんずく、アミノ酸組成物を通常の食事に付随して摂食せしめる方法および形態が最適であること。
【0018】
(6)このため、アミノ酸組成物を食事に付随して摂食する場合には、通常の食事を終えた後、食事に続行して摂食することが適当であること。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の新規な発見に基づき、以下に示す本発明を完成した。この発明により、筋肉に対する過剰負荷時に発生する筋肉自体の生理的疲労およびこれに加えて生理的疲労に伴う全身の倦怠感、脱力感などの精神的疲労を同時、且つ速やかに回復可能なアミノ酸栄養組成物を提供することが可能となった。
【0020】
本発明に係るアミノ酸栄養組成物は次の通りである。すなわち、
(発明1) アミノ酸組成物において、アミノ酸の組成が下記の数値範囲のモル組成比(%)であることを特徴とするアミノ酸栄養組成物。
L−アルギニン6.0〜21.0、L−イソロイシン6.0〜20.0、L−ロイシン8.0〜25.0、L−バリン6.0〜19.0、リジン1.0〜6.0、メチオニン2.0〜8.0、L−スレオニン4.0〜13.0、L−ヒスチジン1.0〜6.0、L−プロリン3.0〜9.0、L−フェニルアラニン0.2〜1.0、L−トリプトファン0.1〜1.0およびL−グルタミン8.0〜27.0。
【0021】
(発明2) L−イソロイシンとL−ロイシンとL−バリンの合計量が30モル%以上であり、L−アルギニンとL−グルタミンの合計量が20モル%以上であり、L−イソロイシンとL−ロイシンとL−バリンとL−アルギニンとL−グルタミンの合計量が60モル%以上であることを特徴とする発明1記載のアミノ酸栄養組成物。
【0022】
【作用】
本発明で使用する各アミノ酸は、各々、単品で高純度のものが好ましい。例えば、「食品添加物公定書」に規定する純度以上のアミノ酸を使用する。また、これらのアミノ酸としては、その生理学的に許容し得る塩も使用可能である。例えばL−リジン塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩1水和物などである。
【0023】
なお、食用蛋白を酸または酵素により加水分解して取得するアミノ酸混合物を原料として使用することもできる。その際には、個別のアミノ酸について過不足分を調整して、規定するアミノ酸の構成比率に適合せしめて使用すれば良い。メチオニンはL−体またはDL−体の何れをも使用できるが、L−体の方が好ましい。
【0024】
アミノ酸組成物を調製するには、規定量のアミノ酸を均一に混合する方法が採用される。その具体的な方法に関しては、特に限定はない。例えば、粉砕した各アミノ酸をロッキングミキサーを使用して混合する方法などが採用できる。
【0025】
アミノ酸栄養組成物を調製する際に、必要なアミノ酸以外の成分を、必要に応じて、添加することもできる。
【0026】
これらの添加成分としては、(イ)低熱量性の糖質、例えば還元麦芽糖、還元乳糖、トレハロース、オリゴ糖類、(ロ)苦味性を有するアミノ酸の苦味性をマスクする作用のある物質、例えば包接能を有する物質であるシクロデキストリン、(ハ)食品香料、(ニ)食用色素、例えばベータ・カロチン、(ホ)各種のビタミン類を含有するビタミン・ミックス、(ヘ)各種のミネラル類を含有するミネラル・ミックス、(ト)低熱量性の甘味料、例えば「アスパルテ−ム」、(チ)酸味料、例えばクエン酸無水物、(リ)成型助剤、例えば長鎖脂肪酸エステルおよび(ヌ)本発明の栄養組成物を構成するアミノ酸以外のアミノ酸、例えば グリシン、L−アラニンなどが挙げられる。
【0027】
なお、アミノ酸栄養組成物に添加する成分として、通常の熱量を有する糖類あるいは甘味料、すなわち、ショ糖、グルコース、フルクトース、蜂蜜などは、摂食者に過剰の熱量を供給する結果となるので、必要以上の添加は回避すべきである。
【0028】
アミノ酸栄養組成物は、摂食者に、違和感を与えることなく容易に受容され得る形状であれば特に限定はない。例えば、顆粒状または粉末状、ビスケット状、ウエハース状あるいはタブレット状などの形状に形態に成形する。また、摂食形態にも特に限定はない。例えば、顆粒状物または粉末状物をそのまま嚥下する、白湯または牛乳などに溶解、分散して飲む、ほかのビスケット、ウエハースなどと共に摂食するなどの方法である。
【0029】
本発明のアミノ酸栄養組成物は毎日連続して摂食するのが適当である。特に、筋肉に過剰の負荷をかけると予想される場合、例えば強度の運動トレーニング、スポーツ試合などの場合、その当日の数日以前より、当日、さらに翌日以降の数日間に亙り連続して、食後、続行して摂食すると良い。
【0030】
その摂食量は、筋肉に対する過剰の負荷のかけ方、すなわち、主に負荷のかかる筋肉部位、負荷の総量、負荷の頻度、持続的負荷であるか瞬発的負荷であるかなどにより、また、摂食者の性別、年齢あるいは連続して摂食する期間の長短さらに摂食する季節などの諸条件によって変化する。一応の標準としては、体重1kg当たりアミノ酸組成物として40〜200mg/日が適当であり、この標準量を加減して、具体的な摂食量を決定する。
【0031】
摂食は規則的に行う。例えば毎朝食後あるいは毎夕食後に、白湯または冷水とともに摂食する。必要によりまたは嗜好により、牛乳あるいは果汁とともに摂食してもよい。
【0032】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、これらの実施例は発明を限定するものではない。
【0033】
【実施例】
(実施例1)==アミノ酸栄養組成物の製造例==
表1に示す組成となるように各種のアミノ酸の所定量を秤量後、ロッキングミクサ−を使用して予備混合し、次いでこのアミノ酸混合物をアルピネ粉砕機を使用して粉砕した。さらに、アミノ酸混合物を、再度、ロッキングミクサ−を使用して最終混合して、10kgのアミノ酸栄養組成物を製造した。取得したアミノ酸栄養組成物は3.5g宛アルミ包材を使用して分包した。
【0034】
【表1】
Figure 0003617102
【0035】
(実施例2)==筋肉疲労に対するアミノ酸栄養組成物の疲労回復効果==
健常な男子大学生の肘関節屈曲筋群および肘関節伸展筋群を対象として、伸張性収縮による機械的トレ−ニングを一日実施し、トレ−ニング後の発揮能力の回復過程を経時的に把握する手法により、アミノ酸栄養組成物の摂食がどのような回復効果を発現するかを試験した。
【0036】
試験期間を10日間とし、第一日目に、伸張性収縮トレ−ニングを実施した。トレ−ニングの前後に、肘関節屈曲筋群および肘関節伸展筋群の短縮性筋力および伸張性筋力の最大値を測定した。測定には「等速性筋力測定装置」[酒井医療社製品]を使用した。肘関節の屈曲伸展運動を角速度60度/秒(10rpm)の条件下、角度30〜105 度の範囲で行う肘関節の屈曲伸展を8往復せしめる運動を1セットとし、3セット行った。なお、セット間に3分間の休息を置いた。筋力発揮様式は、筋力測定装置のア−ムの等速運動に逆向きの力を発揮して最大努力で抵抗する際の伸張性収縮筋力発揮とした。
【0037】
同様にして、伸張性収縮トレ−ニング実施後、1、2、3、4、5、6および10日後の7回にわたって、肘関節屈曲筋群および肘関節伸展筋群の短縮性筋力および伸張性筋力の最大値を測定した。
【0038】
試験期間中、毎朝食後および毎夕食後に、実施例1で製造したアミノ酸栄養組成物3.5gを水に懸濁し、摂食せしめた。また、三か月後、同一の被験者に、アミノ酸栄養組成物中のアミノ酸を還元麦芽糖で置換して製造したプラセボ組成物を摂食せしめて、同様に試験した。
【0039】
なお、アミノ酸栄養組成物およびプラセボ組成物の摂食には、二重盲検法を適用した。したがって、被験者によってアミノ酸栄養組成物摂食試験期間あるいはプラセボ組成物摂食試験期間の順序は異なる。
【0040】
上記の試験は3名に対し実施した。その内、任意に選択した被験者「Y」の肘関節屈曲筋群および肘関節伸展筋群に関して、経時的に測定した短縮性筋力および伸張性筋力の測定結果を図1に示す。
【0041】
図1中、縦軸は伸張性収縮トレ−ニング実施直後の筋力に対する各測定日の筋力のトルク比(%)を、横軸は伸張性収縮トレ−ニング実施後の経過日数(日)を示す。白丸(○)折れ線はアミノ酸栄養組成物を摂食した期間における屈曲筋群の筋力のトルク比の変化(図1中、「A食屈筋」と図示)を、黒丸(●)折れ線はアミノ酸栄養組成物を摂食した期間における伸展筋群の筋力のトルク比の変化((図1中、「A食伸筋」と図示)を、白三角(△)折れ線はプラセボ組成物を摂食した期間における屈曲筋群の筋力のトルク比の変化(図1中、「P食屈筋」と図示)を、また、黒三角(▲)折れ線はプラセボ組成物を摂食した期間における伸展筋群の筋力のトルク比の変化(図1中、「P食伸筋」と図示)を、各々示す。
【0042】
図1より明瞭に見出されるように、アミノ酸栄養組成物を摂食した期間における両筋群のトルク比の落ち込みの程度はプラセボ組成物を摂食した期間における両筋群のトルク比の落ち込みの程度に比較して、遥かに軽微であることが認められた。また、アミノ酸栄養組成物を摂食した期間における両筋群のトルク比は5日後には90%以上まで回復した。これに対しプラセボ組成物を摂食した期間における両筋群のトルク比は5日後で約60%まで、10日経過した後も80%前後の程度に回復し得たに留まった。
【0043】
上記の結果は、本発明のアミノ酸栄養組成物の摂食が筋肉の疲労の程度を軽微の範囲に止め、また、疲労回復を促進する効果のあることを証明している。
【0044】
(実施例3)==筋肉疲労に対するアミノ酸栄養組成物の疲労回復効果==
健常な男子大学生22名を被験者とし、彼らの肘関節屈曲筋群および肘関節伸展筋群を対象として、伸張性収縮による機械的トレ−ニングを一日実施し、トレ−ニング後の発揮能力の回復過程を経時的に把握する手法により、アミノ酸栄養組成物の摂食がどのような回復効果を発現するかを試験した。
【0045】
被験者各11名からなる試験群を構成した。その一群をアミノ酸栄養組成物摂食群、他方の群をプラセボ組成物摂食群とした。試験期間は2回、各10日間とし、第一回目にアミノ酸栄養組成物摂食群となった被験者は第二回には プラセボ組成物摂食群に所属した。また、他群の被験者は逆の順序で試験に参加した。また、第一回目の試験期間と第二回目の試験期間との間に2か月間の間隔をおいた。試験期間中、毎朝食後および毎夕食後に、実施例1で製造したアミノ酸栄養組成物またはプラセボ組成物を3.5g宛、摂食せしめた。なお、アミノ酸栄養組成物およびプラセボ組成物の摂食には、二重盲検法を適用した。
【0046】
各試験期間の第一日目に、実施例2と同様の伸張性収縮トレ−ニングを実施した。また、トレ−ニング実施後、1、2、3、4、5、6および10日後の7回にわたって、同様の方法および測定装置により、肘関節屈曲筋群および肘関節伸展筋群の等尺性収縮筋力、短縮性収縮筋力および伸張性収縮筋力の最大値を測定した。
【0047】
測定結果をまとめ、図2に経時的に測定した等尺性収縮筋力の変化を示す。
【0048】
図2中、縦軸は各測定日におけるピ−ク・トルク値を、横軸は伸張性収縮トレ−ニング実施後の経過日数(日)を示す。白丸(○)折れ線はアミノ酸栄養組成物を摂食した期間における屈曲筋群の筋力のトルク平均値の変化(図2中、「A食筋力」と図示)を、黒丸(●)折れ線はプラセボ組成物を摂食した期間における筋力のトルク平均値の変化(図2中、「P食筋力」と図示)を示す。また、各丸に付す小縦線は標準偏差の幅を示す。
【0049】
図2に見出されるように、トレ−ニング実施後、第1日目の筋力トルク平均値の落ち込みの程度は、アミノ酸栄養組成物を摂食した期間あるいはプラセボ組成物を摂食した期間においても、著しい差異は認められない。しかしながら、第2日目以降の筋力トルク平均値には明瞭な差異が認められる。第3日目および 第6日目におけるアミノ酸栄養組成物を摂食した期間における筋力のトルク平均値はプラセボ組成物を摂食した期間における同日のトルク平均値に比較して、有意義(p<0.05) に高い数値を示した。
【0050】
また、上記の筋力回復の傾向は、短縮性収縮筋力および伸張性収縮筋力についても、同様に認められた。
【0051】
上記の結果は、本発明のアミノ酸栄養組成物の摂食が筋肉の疲労回復を促進する効果のあることを証明している。
【0052】
(実施例4)==マラソン・レ−スにおける筋肉疲労に対するアミノ酸栄養組成物の疲労回復効果==
1994年の青梅マラソン・レ−スに参加し、上位に入賞した25〜30才の男子選手、10名の大腿筋肉の疲労に対するアミノ酸栄養組成物の疲労回復効果について、大腿長手方向50%位断面に存在する筋細胞の緩和時間をMRI(核磁気共鳴画像処理)により測定する手法により試験した。
【0053】
上記の10名の選手を各5名よりなるA、Bの試験群とし、当日レ−ス前にA群には実施例1のアミノ酸栄養組成物3.5g/回 を朝食とともに、B群には同量のプラセボ組成物を摂食せしめた。レ−ス後2日間は練習を休止し、この期間にも同量のアミノ酸栄養組成物またはプラセボ組成物を朝食後および夕食後に摂食せしめた。
【0054】
図3にアミノ酸栄養組成物を摂食したA群の筋細胞の緩和平均時間を、図4にプラセボ組成物を摂食したB群の筋細胞の緩和平均時間を示す。
【0055】
図3および図4において、縦軸は筋細胞の緩和平均時間(ミリ秒、ms)を、横軸はアミノ酸栄養組成物またはプラセボ組成物を摂食した日次を示す。
【0056】
図3および図4を比較して、認められるように筋細胞の疲労度の指標となるMRI緩和平均時間は、アミノ酸栄養組成物を摂食したA群の値はプラセボ組成物を摂食したB群の値よりも低い。また、両群ともレ−ス後にはMRI緩和平均時間が延長する傾向が認められた。しかしながら、2日目にはA群では延長する傾向は収束したのに対しB群では却って、一層、延長する傾向が認められた。
【0057】
上記の結果は、本発明のアミノ酸栄養組成物の摂食が筋肉の疲労を抑止し、さらに筋肉の疲労を回復を促進する効果のあることを証明している。
【0058】
(実施例5)==各種スポ−ツ選手における筋肉疲労に対するアミノ酸栄養組成物の感覚的疲労回復効果==
表2に示す6種のスポ−ツ選手(アマチュア選手およびセミプロ選手、男女とも)合計120名に、実施例1で製造したアミノ酸栄養組成物を練習期間25日わたって、朝食後および夕食後に3.5g/回、摂食せしめた。アンケ−ト方式により、(1)摂食後に各選手が感覚的に認めた筋肉疲労に対する回復効果および(2)回復効果を確認した時期について調査した。
【0059】
【表2】
Figure 0003617102
【0060】
表3に(1)摂食後に各選手が感覚的に認めた筋肉疲労に対する回復効果の種類、その人数(人)および比率(%)を示す。
【0061】
【表3】
Figure 0003617102
【0062】
表3に示す通り、合計120名のうち、92%の選手が、「気分的に元気がでた」、「体調がよくなった」、「疲れがなくなった」、「筋肉痛が和らいだ」などの筋肉疲労に関する感覚的な疲労回復効果を認めた。
【0063】
表4には、(2)選手が表3に表示する何れかの回復効果を確認した時期を示す。
【0064】
【表4】
Figure 0003617102
【0065】
表4に示す通り、アミノ酸栄養組成物の摂食を開始して1週間経過後には、66%の選手が、表3に表示する何れかの回復効果を確認した。
【0066】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明のアミノ酸栄養組成物を摂食した場合には、筋肉自体の疲労ならびに筋肉の疲労に伴う精神的疲労を速やかに回復すると云う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアミノ酸栄養組成物を摂食した場合における肘関節筋群の回復を示す折れ線図である。
【図2】本発明のアミノ酸栄養組成物を摂食した場合における肘関節筋群の静止筋力の回復を示す折れ線図である。
【図3】本発明のアミノ酸栄養組成物を摂食した場合におけるマラソン・レ−ス参加後の大腿筋肉の疲労度の回復の程度を示す柱状図である。
【図4】プラセボ組成物を摂食した場合におけるマラソン・レ−ス参加後の大腿筋肉の疲労度の回復の程度を示す柱状図である。

Claims (2)

  1. アミノ酸組成物において、
    アミノ酸の組成が下記の数値範囲のモル組成比(%)であることを特徴とするヒト筋肉疲労の早期回復効果を有する摂食用アミノ酸栄養組成物。
    L−アルギニン6.0〜21.0、L−イソロイシン6.0〜20.0、L−ロイシン8.0〜25.0、L−バリン6.0〜19.0、L−リジン1.0〜6.0、メチオニン2.0〜8.0、L−スレオニン4.0〜13.0、L−ヒスチジン1.0〜6.0、L−プロリン3.0〜9.0、L−フェニルアラニン0.2〜1.0、L−トリプトファン0.1〜1.0およびL−グルタミン8.0〜27.0。
  2. L−イソロイシンとL−ロイシンとL−バリンの合計量が30モル%以上であり、L−アルギニンとL−グルタミンの合計量が20モル%以上であり、L−イソロイシンとL−ロイシンとL−バリンとL−アルギニンとL−グルタミンの合計量が60モル%以上であることを特徴とする請求項1記載のヒト筋肉疲労の早期回復効果を有する摂食用アミノ酸栄養組成物。
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