JP3615097B2 - レーザとアークとの複合溶接方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ溶接とアーク溶接との複合溶接に関する。
【0002】
【従来の技術】
TlG、MlG、C02 、MAG等の溶接を用いてアーク溶接を行う場合は、図3に示すように、溶接用トーチ1を被溶接材2に対して移動することにより、溶接プールを移動しつつ、被溶接材2及びトーチ1から送給されるフィラー材をアーク放電によるプラズマ5により溶融し、被溶接材2と融合させ溶接する。
なお、図3において、6は溶接ビート、8は放電電極である。
【0003】
上述したアーク溶接に対して、レーザ溶接は、レ一ザビームを光学系により被溶接材に集光し、高いエネルギー密度により深い溶け込みを得ることが可能てある。
【0004】
近年では、レーザ光とアーク溶接とを複合した溶接方法が試みられ、例えば、特開平7−246484号公報や、特開平10一216972号公報に開示された技術がある。
【0005】
特開平7−246484号公報に記載された技術は、レ一ザ光により発生するプラズマによりアークを安定化させ良好な溶接部を得ようとするものである。
つまり、プラズマトーチの移動方向の後方に、このプラズマトーチの照射位置より偏位した位置にレーザビームが照射される。これにより、溶接移動速度を高速としても、レーザビームの照射に基づいて生成されるプラズマにより、プラズマアークの不連続性が補完され、安定したアーク放電を得るものである。
【0006】
また、特開平10一216972号公報に記載された技術は、レーザ光をアーク溶接位置に先行して被溶接材に照射するものであり、ルートギャップを設けるとともに、レーザスポットとアーク溶接位置との間の距離を適正に保つことにより厚板の溶接をするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した、T1G、M1G、C02、MAG等のアーク溶接の場合には、高速で深い溶け込みを得る事は困難である。
このため、特開平7−246484号公報に記載された技術では、溶け込み深さ15は浅く、板圧が数mm程度の薄い板の突き合わせ溶接ができるだけであり、厚板の溶接は困難である。
【0008】
また、特開平10一21697号公報に記載された技術では、アーク溶接とレーザ溶接とを複合させることにより、高速で深い溶け込みを得る溶接方法が提案されている。
【0009】
しかし、特開平10一21697号公報に記載された溶接方法においては、図4に示すように、消耗式電極8からは常時アーク放電によるプラズマ5が殆ど常時発生している。このため、深い溶け込みの作用の主要因であるレーザ光12のパワーがアーク放電によるプラズマ5により吸収散乱され、レーザ光12の効果を阻害する方向に作用していた。
【0010】
したがって、レーザ光12の有効な効果を被溶接材(ワーク)に付与することが出来ないという問題があり、これ以上の溶け込み深さ15を得ることは困難であった。
【0011】
本発明の目的は、TlG、MlG、C02、MAG溶接等のアーク溶接とレーザ溶接とを複合したレーザとアークとの複合溶接方法において、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが出来る複合溶接方法を実現することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成される。
(1)レーザ溶接によるレーザ光とアーク溶接によるアーク熱とを複合して被溶接材の溶接を行うレーザとアークの複合溶接方法において、レーザ発振器からレーザ光を前記被溶接材に照射すると共に、溶接電源から前記被溶接材と溶接用トーチとの間に、アーク放電が前記被溶接材との間で消失と生成とを繰り返す溶接電力を供給し、アーク放電より発生したプラズマが消失される。
【0013】
(2)好ましくは、(1)において、前記溶接電力は、アーク放電より発生したプラズマが消失されるだけのパルス間隔を有するパルス状である。
【0014】
(3)また、好ましくは、(1)において、前記溶接電力は、アーク放電により発生したプラズマが消失される溶が消失するだけの間隔を有する交流である。
【0015】
(4)レーザ溶接によるレーザ光とアーク溶接によるアーク熱とを複合して被溶接材の溶接を行うレーザとアークの複合溶接装置において、レーザ光を前記被溶接材に照射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器のレーザ電源と、溶接電源から前記被溶接材とトーチとの間に、アーク放電を生起させる溶接電力を供給する溶接電源と、アーク放電が前記被溶接材との間で消失と生成とを繰り返す溶接電力を供給し、アーク放電より発生したプラズマを消失するように前記溶接電源を制御するコントローラとを備える。
【0016】
上記の様な溶接条件の設定をした場合、アーク放電によるプラズマは消失と生成とを繰り返す事となる。このため、アーク放電によるプラズマの消失時間において、集光されたレーザ光は被溶接材に対し最大限のパワーを与える事ができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の原理について説明する。
上述したように、レーザとアークとの複合溶接方法においては、アーク放電によるプラズマが殆ど常時発生しており、このアーク放電によるプラズマがレーザ光のパワーを吸収散乱させている。
【0018】
したがって、アーク放電によるプラズマを周期的もしくはほぼ周期的に消失するようにすれば、レーザ光のパワーが、アーク放電に起因するプラズマにより阻害されることがない期間を確保することができ、被溶接材の深い溶け込みを得ることができる。
【0019】
つまり、本発明の第1の実施形態においては、レーザ溶接とアーク溶接を複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流とするものである。
【0020】
好ましくは、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状とする場合には、アーク放電が消失するだけのパルス間隔(溶接条件により異なるが)が約0.lms以上の間隔であり、パルス状の電圧のべ一ス電圧がアーク放電を起こさない条件に設定してある事により実現される。
【0021】
また、アーク溶接の溶接電圧(電流)を交流とする場合には、溶接条件により異なるが、例えば、約100Hz程度とすることができる。
【0022】
上記の様な条件設定をした場合には、アーク放電は消失と生成とを繰り返す事となり、アーク放電の消失時間において、ア一ク放電によるプラズマは発生していないため、集光されたレーザ光は被溶接材に対し最大限のパワーを与える事ができる。
【0023】
次に、上述したレーザとアークとの複合溶接を実施する装置の一例について説明する。
図1は、上述したレーザとアークとの複合溶接を実施する溶接装置の一例の概略構成図である。図1において、レーザ発振器13から出力されたレーザ光12は、伝送路を通過し、集光ミラー11により反射され、レーザノズル16を介して被溶接材2に集光される。
【0024】
被溶接材2は、溶接治具18により水平に固定されている。レーザ加工用のノズル16からはシールドガス(例えばヘリウムガス)が、レーザ光12と同軸状に被溶接材2に向けて噴射されており、被溶接材(ワーク)2ヘのシールドを行っている。
【0025】
また、被溶接材2の表面のレーザスポット付近に溶接進行方向に40度だけ後傾姿勢で支持されるとともに、電極8を突き出した溶接トーチ1のアーク溶接フィラーがレーザスポット付近に配置される。そして、溶接トーチ1からもシールドガス(例えば、アルゴンであり、レーザ出射ノズル16から噴射されるシールドガスと異なっていてもよい)を噴射している。
【0026】
19はフィラー送給装置であり、このフィラー送給装置19から溶接トーチ1のアーク溶接フィラーが送給される。上記被溶接材2は、テーブル(XYテーブル)17上に固定治具18により固定され、テーブル17はモータ7により移動される。
【0027】
20は溶接電源であり、この溶接電源20から溶接電圧又は溶接電流が、溶接用トーチ1の溶接電極8と被溶接材2との間に供給される。14はレーザ発振器13用のレーザ電源である。21はコントローラであり、このコントローラ21は、レーザ発振器13、レーザ電源14、溶接電源20、モータ20の動作を制御する。
【0028】
この図1に示した溶接装置において、溶接電源20から溶接電極8と被溶接材2との間に供給される溶接電圧又は溶接電流を、パルス状もしくは交流とする。上記の様に条件設定をした場合には、アーク放電の消失時間においては、図2に示すように、レーザ光によるプラズマ9は発生するが、ア一ク放電によるプラズマ5は発生していないため、集光されたレーザ光12は被溶接材2に対し最大限のパワーを与える事ができる。これにより、溶け込み深さ15は、アーク放電によるプラズマ5が消失していない場合(図4参照)と比較して、深いものが得られる。
【0029】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流としたので、アーク放電は消失と生成とを繰り返し、アーク放電の消失時間において、ア一ク放電によるプラズマの発生を阻止して、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0030】
したがって、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流としたが、本発明の第2の実施形態では、アーク溶接の溶接電圧(電流)は直流である。
【0032】
ところで、アーク溶接においては、電極ワイヤはアーク熱によって溶融し、溶滴となって、被溶接材の溶融池に移行する。この場合、移行する液滴の大きさや形、移行速度等の条件により、放電電極と被溶接材とが短絡する短絡移行現象が発生することがある。
【0033】
この短絡移行現象の発生時には、放電電極と被溶接材とは、プラズマを介さない通電状態となり、発生していたプラズマは冷却されて一瞬消失し、消失したプラズマは、フィラーワイヤが被溶接材に通電後、流れる電流のジュール熱で融かされ、その金属蒸気と熱電子により再び生成される。
【0034】
本発明の第2の実施形態においては、上述した短絡移行現象を積極的に利用し、アーク放電によるプラズマの消失と発生とを繰り返えさせて、アーク放電によるプラズマ消失時におけるレーザ光のパワーを有効に利用し、被溶接材の深い溶け込みを得るものである。
【0035】
次に、上述した短絡移行現象を発生させるための条件の一例を以下に示す。
シールドガスは、レーザノズル16においては、ヘリウムを201/minとし、溶接卜一チ1においては、レーザノズル16と同様に、ヘリウムを201/minとする。また、溶接電流は、250A、溶接電圧は、25Vとする。そして、溶接速度を1m/minとし、レーザは5kWのものを用いる。
【0036】
上述した条件により、溶接を実行すると、供給される溶接電圧(電流)は、短絡時にはプラズマ5を介さない通電状態となり、プラズマ5は冷えて一瞬消失する。そして、消失したプラズマ5は、フィラーワイヤが被溶接材2に通電後、流れる電流のジュール熱で融かされ、その金属蒸気と熱電子により再び生成される。 短絡移行時間内では、プラズマ5は冷えた状態となりレーザ光12はプラズマ5に阻害されることなく、被溶接材2は、照射されるレーザ光12のパワーにより溶融され深い溶け込みが得られる。
【0037】
これにより、従来方法ではプラズマ5によりレーザ光の散乱や吸収がおこなわれ、深さ方向へのレ一ザ光12のエネルギーの有効な伝達が行われない現象が発生していたが、本発明の第2の実施形態においては、エネルギーの有効な伝達が行われない現象が回避され、図2に示すように、最大限のレーザの溶け込みが得られるものとなる。
【0038】
つまり、本発明の第2の実施形態によれば、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接条件を短絡移行現象が発生する条件とすることにより、短絡移行時に、アーク放電によるプラズマを消失させて、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0039】
したがって、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流としたので、アーク放電は消失と生成とを繰り返し、アーク放電の消失時間において、ア一ク放電によるプラズマの発生を減少させることにより、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0041】
したがって、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【0042】
また、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接条件を短絡移行現象が発生する条件とすれば、短絡移行時に、アーク放電によるプラズマを消失させて、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0043】
したがって、このように構成しても、簡便でありながら、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための溶接装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態による溶接状態の説明図である。
【図3】従来の技術におけるアーク溶接単独の場合の溶接状態の説明図である。
【図4】従来の技術におけるレーザとアーク溶接とを複合した場合の溶接状態の説明図である。
【符号の説明】
1 溶接用トーチ
2 被溶接材
5 アーク放電によるプラズマ
6 溶接ビード
7 モータ
8 放電電極
9 レーザによるプラズマ
11 集光ミラー
12 レーザ光
13 レーザ発振器
14 レーザ電源
15 溶け込み深さ
16 レーザノズル
17 テーブル
18 固定治具
19 フィラー送給装置
20 溶接電源
21 コントローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ溶接とアーク溶接との複合溶接に関する。
【0002】
【従来の技術】
TlG、MlG、C02 、MAG等の溶接を用いてアーク溶接を行う場合は、図3に示すように、溶接用トーチ1を被溶接材2に対して移動することにより、溶接プールを移動しつつ、被溶接材2及びトーチ1から送給されるフィラー材をアーク放電によるプラズマ5により溶融し、被溶接材2と融合させ溶接する。
なお、図3において、6は溶接ビート、8は放電電極である。
【0003】
上述したアーク溶接に対して、レーザ溶接は、レ一ザビームを光学系により被溶接材に集光し、高いエネルギー密度により深い溶け込みを得ることが可能てある。
【0004】
近年では、レーザ光とアーク溶接とを複合した溶接方法が試みられ、例えば、特開平7−246484号公報や、特開平10一216972号公報に開示された技術がある。
【0005】
特開平7−246484号公報に記載された技術は、レ一ザ光により発生するプラズマによりアークを安定化させ良好な溶接部を得ようとするものである。
つまり、プラズマトーチの移動方向の後方に、このプラズマトーチの照射位置より偏位した位置にレーザビームが照射される。これにより、溶接移動速度を高速としても、レーザビームの照射に基づいて生成されるプラズマにより、プラズマアークの不連続性が補完され、安定したアーク放電を得るものである。
【0006】
また、特開平10一216972号公報に記載された技術は、レーザ光をアーク溶接位置に先行して被溶接材に照射するものであり、ルートギャップを設けるとともに、レーザスポットとアーク溶接位置との間の距離を適正に保つことにより厚板の溶接をするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した、T1G、M1G、C02、MAG等のアーク溶接の場合には、高速で深い溶け込みを得る事は困難である。
このため、特開平7−246484号公報に記載された技術では、溶け込み深さ15は浅く、板圧が数mm程度の薄い板の突き合わせ溶接ができるだけであり、厚板の溶接は困難である。
【0008】
また、特開平10一21697号公報に記載された技術では、アーク溶接とレーザ溶接とを複合させることにより、高速で深い溶け込みを得る溶接方法が提案されている。
【0009】
しかし、特開平10一21697号公報に記載された溶接方法においては、図4に示すように、消耗式電極8からは常時アーク放電によるプラズマ5が殆ど常時発生している。このため、深い溶け込みの作用の主要因であるレーザ光12のパワーがアーク放電によるプラズマ5により吸収散乱され、レーザ光12の効果を阻害する方向に作用していた。
【0010】
したがって、レーザ光12の有効な効果を被溶接材(ワーク)に付与することが出来ないという問題があり、これ以上の溶け込み深さ15を得ることは困難であった。
【0011】
本発明の目的は、TlG、MlG、C02、MAG溶接等のアーク溶接とレーザ溶接とを複合したレーザとアークとの複合溶接方法において、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが出来る複合溶接方法を実現することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成される。
(1)レーザ溶接によるレーザ光とアーク溶接によるアーク熱とを複合して被溶接材の溶接を行うレーザとアークの複合溶接方法において、レーザ発振器からレーザ光を前記被溶接材に照射すると共に、溶接電源から前記被溶接材と溶接用トーチとの間に、アーク放電が前記被溶接材との間で消失と生成とを繰り返す溶接電力を供給し、アーク放電より発生したプラズマが消失される。
【0013】
(2)好ましくは、(1)において、前記溶接電力は、アーク放電より発生したプラズマが消失されるだけのパルス間隔を有するパルス状である。
【0014】
(3)また、好ましくは、(1)において、前記溶接電力は、アーク放電により発生したプラズマが消失される溶が消失するだけの間隔を有する交流である。
【0015】
(4)レーザ溶接によるレーザ光とアーク溶接によるアーク熱とを複合して被溶接材の溶接を行うレーザとアークの複合溶接装置において、レーザ光を前記被溶接材に照射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器のレーザ電源と、溶接電源から前記被溶接材とトーチとの間に、アーク放電を生起させる溶接電力を供給する溶接電源と、アーク放電が前記被溶接材との間で消失と生成とを繰り返す溶接電力を供給し、アーク放電より発生したプラズマを消失するように前記溶接電源を制御するコントローラとを備える。
【0016】
上記の様な溶接条件の設定をした場合、アーク放電によるプラズマは消失と生成とを繰り返す事となる。このため、アーク放電によるプラズマの消失時間において、集光されたレーザ光は被溶接材に対し最大限のパワーを与える事ができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の原理について説明する。
上述したように、レーザとアークとの複合溶接方法においては、アーク放電によるプラズマが殆ど常時発生しており、このアーク放電によるプラズマがレーザ光のパワーを吸収散乱させている。
【0018】
したがって、アーク放電によるプラズマを周期的もしくはほぼ周期的に消失するようにすれば、レーザ光のパワーが、アーク放電に起因するプラズマにより阻害されることがない期間を確保することができ、被溶接材の深い溶け込みを得ることができる。
【0019】
つまり、本発明の第1の実施形態においては、レーザ溶接とアーク溶接を複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流とするものである。
【0020】
好ましくは、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状とする場合には、アーク放電が消失するだけのパルス間隔(溶接条件により異なるが)が約0.lms以上の間隔であり、パルス状の電圧のべ一ス電圧がアーク放電を起こさない条件に設定してある事により実現される。
【0021】
また、アーク溶接の溶接電圧(電流)を交流とする場合には、溶接条件により異なるが、例えば、約100Hz程度とすることができる。
【0022】
上記の様な条件設定をした場合には、アーク放電は消失と生成とを繰り返す事となり、アーク放電の消失時間において、ア一ク放電によるプラズマは発生していないため、集光されたレーザ光は被溶接材に対し最大限のパワーを与える事ができる。
【0023】
次に、上述したレーザとアークとの複合溶接を実施する装置の一例について説明する。
図1は、上述したレーザとアークとの複合溶接を実施する溶接装置の一例の概略構成図である。図1において、レーザ発振器13から出力されたレーザ光12は、伝送路を通過し、集光ミラー11により反射され、レーザノズル16を介して被溶接材2に集光される。
【0024】
被溶接材2は、溶接治具18により水平に固定されている。レーザ加工用のノズル16からはシールドガス(例えばヘリウムガス)が、レーザ光12と同軸状に被溶接材2に向けて噴射されており、被溶接材(ワーク)2ヘのシールドを行っている。
【0025】
また、被溶接材2の表面のレーザスポット付近に溶接進行方向に40度だけ後傾姿勢で支持されるとともに、電極8を突き出した溶接トーチ1のアーク溶接フィラーがレーザスポット付近に配置される。そして、溶接トーチ1からもシールドガス(例えば、アルゴンであり、レーザ出射ノズル16から噴射されるシールドガスと異なっていてもよい)を噴射している。
【0026】
19はフィラー送給装置であり、このフィラー送給装置19から溶接トーチ1のアーク溶接フィラーが送給される。上記被溶接材2は、テーブル(XYテーブル)17上に固定治具18により固定され、テーブル17はモータ7により移動される。
【0027】
20は溶接電源であり、この溶接電源20から溶接電圧又は溶接電流が、溶接用トーチ1の溶接電極8と被溶接材2との間に供給される。14はレーザ発振器13用のレーザ電源である。21はコントローラであり、このコントローラ21は、レーザ発振器13、レーザ電源14、溶接電源20、モータ20の動作を制御する。
【0028】
この図1に示した溶接装置において、溶接電源20から溶接電極8と被溶接材2との間に供給される溶接電圧又は溶接電流を、パルス状もしくは交流とする。上記の様に条件設定をした場合には、アーク放電の消失時間においては、図2に示すように、レーザ光によるプラズマ9は発生するが、ア一ク放電によるプラズマ5は発生していないため、集光されたレーザ光12は被溶接材2に対し最大限のパワーを与える事ができる。これにより、溶け込み深さ15は、アーク放電によるプラズマ5が消失していない場合(図4参照)と比較して、深いものが得られる。
【0029】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流としたので、アーク放電は消失と生成とを繰り返し、アーク放電の消失時間において、ア一ク放電によるプラズマの発生を阻止して、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0030】
したがって、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流としたが、本発明の第2の実施形態では、アーク溶接の溶接電圧(電流)は直流である。
【0032】
ところで、アーク溶接においては、電極ワイヤはアーク熱によって溶融し、溶滴となって、被溶接材の溶融池に移行する。この場合、移行する液滴の大きさや形、移行速度等の条件により、放電電極と被溶接材とが短絡する短絡移行現象が発生することがある。
【0033】
この短絡移行現象の発生時には、放電電極と被溶接材とは、プラズマを介さない通電状態となり、発生していたプラズマは冷却されて一瞬消失し、消失したプラズマは、フィラーワイヤが被溶接材に通電後、流れる電流のジュール熱で融かされ、その金属蒸気と熱電子により再び生成される。
【0034】
本発明の第2の実施形態においては、上述した短絡移行現象を積極的に利用し、アーク放電によるプラズマの消失と発生とを繰り返えさせて、アーク放電によるプラズマ消失時におけるレーザ光のパワーを有効に利用し、被溶接材の深い溶け込みを得るものである。
【0035】
次に、上述した短絡移行現象を発生させるための条件の一例を以下に示す。
シールドガスは、レーザノズル16においては、ヘリウムを201/minとし、溶接卜一チ1においては、レーザノズル16と同様に、ヘリウムを201/minとする。また、溶接電流は、250A、溶接電圧は、25Vとする。そして、溶接速度を1m/minとし、レーザは5kWのものを用いる。
【0036】
上述した条件により、溶接を実行すると、供給される溶接電圧(電流)は、短絡時にはプラズマ5を介さない通電状態となり、プラズマ5は冷えて一瞬消失する。そして、消失したプラズマ5は、フィラーワイヤが被溶接材2に通電後、流れる電流のジュール熱で融かされ、その金属蒸気と熱電子により再び生成される。 短絡移行時間内では、プラズマ5は冷えた状態となりレーザ光12はプラズマ5に阻害されることなく、被溶接材2は、照射されるレーザ光12のパワーにより溶融され深い溶け込みが得られる。
【0037】
これにより、従来方法ではプラズマ5によりレーザ光の散乱や吸収がおこなわれ、深さ方向へのレ一ザ光12のエネルギーの有効な伝達が行われない現象が発生していたが、本発明の第2の実施形態においては、エネルギーの有効な伝達が行われない現象が回避され、図2に示すように、最大限のレーザの溶け込みが得られるものとなる。
【0038】
つまり、本発明の第2の実施形態によれば、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接条件を短絡移行現象が発生する条件とすることにより、短絡移行時に、アーク放電によるプラズマを消失させて、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0039】
したがって、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接電圧(電流)をパルス状もしくは交流としたので、アーク放電は消失と生成とを繰り返し、アーク放電の消失時間において、ア一ク放電によるプラズマの発生を減少させることにより、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0041】
したがって、簡便でありながら、レーザ光がアーク放電により発生したプラズマによる阻害を受けず、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【0042】
また、レーザ溶接とアーク溶接とを複合して溶接を行う場合において、アーク溶接の溶接条件を短絡移行現象が発生する条件とすれば、短絡移行時に、アーク放電によるプラズマを消失させて、被溶接材に対するレーザ光に最大限のパワーを与える事ができる。
【0043】
したがって、このように構成しても、簡便でありながら、レーザ溶接の効果を有効に発揮でき、被溶接材の溶け込みを得ることが可能な、レーザとアークとの複合溶接方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための溶接装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態による溶接状態の説明図である。
【図3】従来の技術におけるアーク溶接単独の場合の溶接状態の説明図である。
【図4】従来の技術におけるレーザとアーク溶接とを複合した場合の溶接状態の説明図である。
【符号の説明】
1 溶接用トーチ
2 被溶接材
5 アーク放電によるプラズマ
6 溶接ビード
7 モータ
8 放電電極
9 レーザによるプラズマ
11 集光ミラー
12 レーザ光
13 レーザ発振器
14 レーザ電源
15 溶け込み深さ
16 レーザノズル
17 テーブル
18 固定治具
19 フィラー送給装置
20 溶接電源
21 コントローラ
Claims (4)
- レーザ溶接によるレーザ光とアーク溶接によるアーク熱とを複合して被溶接材の溶接を行うレーザとアークの複合溶接方法において、
レーザ発振器からレーザ光を前記被溶接材に照射すると共に、溶接電源から前記被溶接材と溶接用トーチとの間に、アーク放電が前記被溶接材との間で消失と生成とを繰り返す溶接電力を供給し、アーク放電により発生したプラズマを消失させることを特徴とするレーザとアークの複合溶接方法。 - 請求項1記載のレーザとアークの複合溶接方法において、前記溶接電力は、アーク放電により発生したプラズマが消失するだけのパルス間隔を有するパルス状であることを特徴とするレーザとアークの複合溶接方法。
- 請求項1記載のレーザとアークの複合溶接方法において、前記溶接電力は、アーク放電により発生したプラズマが消失するだけの間隔を有する交流であることを特徴とするレーザとアークの複合溶接方法。
- レーザ溶接によるレーザ光とアーク溶接によるアーク熱とを複合して被溶接材の溶接を行うレーザとアークの複合溶接装置において、
レーザ光を前記被溶接材に照射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器のレーザ電源と、
溶接電源から前記被溶接材とトーチとの間に、アーク放電を生起させる溶接電力を供給する溶接電源と、
アーク放電が前記被溶接材との間で消失と生成とを繰り返す溶接電力を供給し、アーク放電により発生したプラズマが消失するように前記溶接電源を制御するコントローラと、
を備えたことを特徴とするレーザとアークの複合溶接装置。
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