JP3613311B2 - 反射型液晶表示素子およびその駆動方法、駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、反射型液晶表示素子およびその駆動方法、駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示素子は、バックライトのような専用の光源を必要とせず、消費電力が小さいとともに、薄型軽量に構成できることから、小型情報機器や携帯情報端末などの表示装置として注目されている。
【0003】
多色表示が可能な反射型液晶表示素子としては、TN(捩じれネマチック)液晶セルに対して、偏光板および反射板を組み合わせ、さらにカラーフィルタを組み合わせた方式のものが知られている。しかしながら、この方式の反射型液晶表示素子は、偏光板およびカラーフィルタによって入射光の半分以上が失われるため、バックライトによる光量の増幅ができない反射型液晶表示素子としては、十分なコントラストが得られない欠点がある。
【0004】
そこで、偏光板やカラーフィルタを用いることなく多色表示を可能にした反射型液晶表示素子が、いくつか提案されている。
【0005】
例えば、特開平3−209425号には、図10に示すように、透明基板13aの一面に透明電極17aを、透明基板13bの一面および他面に透明電極18aおよび17bを、透明基板13cの一面および他面に透明電極18bおよび17cを、透明基板13dの一面に透明電極18cを、それぞれ形成し、透明電極17a,18a間、17b,18b間、および17c,18c間に、それぞれ表示層16a,16bおよび16cとして、それぞれコレステリック液晶を高分子中に分散させた、それぞれレッド、グリーンおよびブルーの色光を選択反射する選択反射層を形成し、表示層16a,16bおよび16cを、それぞれ駆動回路19a,19bおよび19cによって別個に駆動して、電界印加時の選択反射状態と電界無印加時の透過状態とをスイッチングすることにより、加法混色の原理によって任意の色を表示するものが示されている。
【0006】
また、特開平4−178623号には、図10の表示層16a,16bおよび16cとして、それぞれ屈折率の異なる2種の層が交互に積層され、少なくとも一方の層は電界により屈折率が変化する、それぞれレッド、グリーンおよびブルーの色光を反射する干渉フィルタを形成し、その表示層16a,16bおよび16cを、それぞれ駆動回路19a,19bおよび19cによって別個に駆動して、加法混色の原理により任意の色を表示するものが示されている。
【0007】
さらに、図10の表示層16a,16bおよび16cとして、それぞれイエロー、マゼンタおよびシアンの二色性色素を含有させたHeilmeier型ゲストホストセルまたはWhite−Taylor型ゲストホストセルを用いることによって、減法混色の原理により多色表示を実現できることが知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような、偏光板やカラーフィルタを用いることなく多色表示を可能にした従来の反射型液晶表示素子は、それぞれの表示層に対してパターニングされた駆動電極や駆動回路を必要とするため、プロセスの増加や歩留まりの悪化により、製造コストが高くなる欠点がある。
【0009】
また、それぞれの表示層の間にパターニングされた駆動電極を形成するための分厚い透明基板を必要とするため、それぞれの表示層の間の間隔が広くなって、斜めから観察した時の視差が大きくなる欠点がある。さらに、それぞれの駆動電極にTFTやMIMなどの不透明な能動素子を設ける場合には、斜めから入射した光に対する開口率が低下して、表示が暗くなる欠点がある。
【0010】
そこで、この発明は、多色表示が可能な反射型液晶表示素子において、製造コストを低減でき、視差を小さくすることができるとともに、明るい表示を実現できるようにしたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の反射型液晶表示素子は、それぞれ電極を有し、少なくとも一方が透明の一対の基板間に、互いに異なる波長の光を吸収する二色性色素がコレステリック液晶に添加され、かつそれぞれのコレステリック液晶の相変化しきい電界強度が異なる複数の表示層が積層され、電界除去後の各表示層の相変化状態に対応した着色状態の組合せによって多色が表示されることを特徴とする。
【0012】
この場合、その複数の表示層は、それぞれ高分子を含むものとすることができる。
【0013】
【作用】
ゲストホストセルは、光吸収能に異方性を有する色素、すなわち二色性色素を液晶に添加し、電界の印加による液晶分子の再配向によって二色性色素の配向方向を変化させて、着色状態と無着色状態とをスイッチングすることにより、表示を行う。そして、偏光板を使用しないゲストホストセルとして、螺旋構造を有するコレステリック液晶(カイラルネマチック液晶を含む)の相転移を利用したWhite−Taylor型ゲストホストセルがある。
【0014】
正の誘電異方性を持つコレステリック液晶は、印加電界の増加に伴って、図7(A)のように螺旋軸がセル表面に垂直になるプレーナー相、同図(B)のように螺旋軸がほぼセル表面に平行になるフォーカルコニック相、および同図(C)のように螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向くホメオトロピック相、の3つの状態を示す。図7で、参照符号5はコレステリック液晶を、参照符号3,4はセルの一対の電極を、参照符号9は駆動回路を、それぞれ示す。
【0015】
このような正の誘電異方性を持つコレステリック液晶に、色素分子の長軸方向に高い吸収係数を持つp型の二色性色素を添加すると、液晶分子に沿った二色性色素の再配向によって、図8に示すように、プレーナー相、フォーカルコニック相、ホメオトロピック相の順に吸光度が減少し、着色状態を変化させることが可能になる。
【0016】
上記のように、正の誘電異方性を持つコレステリック液晶は、印加される電界強度によって3つの相構造を示すが、その相変化の様子は、電界強度に対して一義的ではなく、無電界では、プレーナー相またはフォーカルコニック相のいずれかの状態を示し、特に高分子を添加したコレステリック液晶においては、高分子界面との干渉により、そのメモリ効果がより安定になる。さらに、急激に電界がゼロになるような信号を印加した場合には、ホメオトロピック相がプレーナー相に転移することから、パルス信号を印加した直後のWhite−Taylor型ゲストホストセルの吸光度は、パルス信号の電界強度に対して図9のような変化を示す。
【0017】
したがって、プレーナー相とフォーカルコニック相の変化のしきい電界強度をEth1、フォーカルコニック相とホメオトロピック相の変化のしきい電界強度をEth2とすると、電界除去後は、除去前の電界がEth2以上のときにはプレーナー相による高い光吸収状態となり、Eth1とEth2の間のときにはフォーカルコニック相による低い光吸収状態となり、Eth1以下のときには電界印加前の状態を継続した状態、すなわちプレーナー相による高い光吸収状態またはフォーカルコニック相による低い光吸収状態となる。
【0018】
この発明では、この二色性色素が添加されたコレステリック液晶の双安定現象を利用して、それぞれのWhite−Taylor型ゲストホスト液晶からなる表示層につき、(A)吸光度の高いプレーナー相による着色状態と、(B)吸光度の低いフォーカルコニック相による透過状態とを、スイッチングするとともに、それぞれの表示層は、互いに異なる波長の光を吸収する二色性色素をコレステリック液晶に添加し、かつそれぞれのコレステリック液晶の上記2つの相変化しきい電界強度Eth1,Eth2を互いに異なる値にする。
【0019】
したがって、例えば、それぞれイエロー、マゼンタおよびシアンを発色する3層のゲストホスト表示層を積層する場合には、一対の電極間に、リフレッシュ期間およびセレクト期間と、その後の無電界の表示期間とによって構成され、そのリフレッシュ期間およびセレクト期間での電界強度ErおよびEsが、Er>Esの関係をもって、各層のゲストホスト表示層のコレステリック液晶の相変化しきい電界強度を境界とする7段階の電界強度から選定された電界強度となる駆動信号を印加することによって、(1)3層のゲストホスト表示層が全てプレーナー相の状態、(2)3層のゲストホスト表示層が全てフォーカルコニック相の状態、(3)3層のゲストホスト表示層のうちの、いずれか1層がプレーナー相、残りの2層がフォーカルコニック相の状態、(4)3層のゲストホスト表示層のうちの、コレステリック液晶の相変化しきい電界強度が他の2層のそれの中間の値である層を含む、いずれか2層がプレーナー相、残りの1層がフォーカルコニック相の状態、の相変化状態が得られる。
【0020】
したがって、(1)3層のゲストホスト表示層が全て着色状態となって、ブラックが表示される状態、(2)3層のゲストホスト表示層が全て透過状態となって、3層のゲストホスト表示層を透過した光が外光の入射側と反対側に設けられた反射層で散乱して、ホワイトが表示される状態、(3)3層のゲストホスト表示層のうちの、いずれか1層のみが着色状態となって、イエロー、マゼンタまたはシアンが表示される状態、(4)3層のゲストホスト表示層のうちの、コレステリック液晶の相変化しきい電界強度が他の2層のそれの中間の値である層を含む、いずれか2層のみが着色状態となって、レッド、グリーンおよびブルーのうちの、いずれか2色のいずれかが表示される状態、とを取り得るようになり、一画素内で、ブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタおよびシアンの5色と、レッド、グリーンおよびブルーのうちの2色との、合計7色を表示することができる。
【0021】
したがって、この発明によれば、積層する複数の表示層のそれぞれに対してパターニングされた駆動電極や駆動回路を設けることなく、一対の駆動電極と一つの駆動回路によって、減法混色法による多色表示を行うことができ、プロセスの低減や歩留まりの向上により、製造コストを低減することができる。
【0022】
さらに、それぞれの表示層の間にパターニングされた駆動電極を形成するための分厚い透明基板や不透明な能動素子を設ける必要がないため、それぞれの表示層の間の間隔を狭くすることができるとともに、開口率を大きくすることができ、視差を小さくすることができるとともに、明るい表示を実現することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明の反射型液晶表示素子の一実施形態を示す。この実施形態では、基板1,2の一面に、それぞれ電極3,4を形成し、電極3,4間に、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンを発色するWhite−Taylor型ゲストホスト液晶からなる表示層5Y,5M,5Cを、表示層5Y,5M,5Cには、それぞれスペーサ8Y,8M,8Cを挿入し、表示層5Y,5M間には分離基板6を介し、表示層5M,5C間には分離基板7を介して積層し、電極3,4を駆動回路9に接続する。
【0024】
基板1,2は、ガラスやシリコンなどの絶縁性を有する材料により形成し、少なくとも表示面側の基板1は、ガラスなどの光透過性を併せ持つ材料により形成する。
【0025】
電極3は、ITOやSnO2などの導電性および光透過性を有する材料によって、表示面側の基板1上に蒸着法やスパッタ法などにより形成する。電極4は、アルミニウムや銀などの光反射性を有する材料によることが好ましく、非表示面側の基板2上に蒸着法やスパッタ法などにより形成し、表面を荒らして散乱特性を持たせる。
【0026】
電極4を光透過性を有する材料により形成する場合には、電極4上または基板2と電極4の間に導電性および光反射性を有する材料の層を形成する。基板2が光透過性を有する場合には、基板2の裏面に光反射性を有する材料の層を形成してもよい。
【0027】
分離基板6,7は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性および光透過性を有する高分子フィルムにより形成し、数μmの膜厚とすることが望ましい。
【0028】
スペーサ8Y,8M,8Cは、ガラスまたはプラスチックからなるものとし、これによって表示層5Y,5M,5Cの膜厚を数μm〜10μm程度に制御する。
【0029】
表示層5Y,5M,5Cを構成するゲストホスト液晶は、それぞれ、ネマチック液晶にカイラル剤を添加することにより得られるコレステリック液晶に、二色性色素を微量添加して形成する。ネマチック液晶は、正の誘電異方性を持つものであれば、ビフェニル系、ターフェニル系、シッフ塩基系など、特に限定されない。
【0030】
コレステリック液晶の螺旋ピッチは、カイラル剤の添加量によって調整し、螺旋構造による選択反射の中心波長が、可視域以外になることが望ましい。また、螺旋ピッチの温度依存性を補償するために一般に行われるように、捩じれ方向が異なる、または逆の温度依存性を示す複数種のカイラル剤を添加するとよい。
【0031】
表示層5Y,5M,5Cの二色性色素としては、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンの補色であるブルー、グリーン、レッドのスペクトルを吸収する、アゾ系、アントラキノン系などの色素で、色素分子の長軸方向に高い吸収係数を有するものを用いる。
【0032】
各色の表示層5Y,5M,5Cとしては、上述したゲストホスト液晶のみからなる構造のほかに、ゲストホスト液晶の連続層中に網目状の高分子を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にゲストホスト液晶がドロップレット状に分散したPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造を用いることもできる。
【0033】
PNLC構造やPDLC構造は、エマルジョン法、PIPS(Polymerization Induced Phase Separation)法、TIPS(Thermally Induced Phase Separation)法、SIPS(Solvent Induced Phase Separation)法などの、高分子と液晶を相分離させる方法によって形成することができる。
【0034】
PNLC構造やPDLC構造を用いることによって、液晶と高分子の界面にアンカリング効果を生じ、無電界でのプレーナー相またはフォーカルコニック相の保持状態がより安定になる。また、PDLC構造を用いる場合には、各色の表示層5Y,5M,5Cを直接、積層形成することができる。
【0035】
図6は、その場合の実施形態を示し、表示層5Y,5M,5Cは、それぞれ高分子骨格中にWhite−Taylor型ゲストホスト液晶をドロップレット状に分散させたもので、表示層5Y,5M,5Cにはスペーサを挿入することなく、かつ表示層5Y,5M間および5M,5C間には分離基板を介することなく、積層形成する。
【0036】
図1または図6の、それぞれの表示層5Y,5M,5Cを形成するWhite−Taylor型ゲストホスト液晶の相変化しきい電界強度Eth1,Eth2は、互いに異なる値にする。
【0037】
その方法としては、各層のコレステリック液晶の螺旋ピッチを異なる大きさにする方法、各層のコレステリック液晶に誘電異方性または弾性率の異なるネマチック液晶を用いる方法、PNLC構造またはPDLC構造を用いる場合には、各層に界面でのアンカリング効果の異なる高分子を用いる方法、高分子中に分散させる液晶ドロップレットを各層で異なる大きさにする方法、などが考えられる。ただし、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
3つの表示層5Y,5M,5Cのうちの、相変化しきい電界強度が最も大きい層をH層、中間の層をM層、最も小さい層をL層とした場合、各層の吸光度は、印加パルス電界の強度に対して、図2に示すように変化する。
【0039】
ここで、電界強度Eaと電界強度Ebとの境界、電界強度Ebと電界強度Ecとの境界、および電界強度Ecと電界強度Edとの境界が、それぞれL層、M層およびH層の、プレーナー相とフォーカルコニック相の変化のしきい電界強度Eth1であり、電界強度Edと電界強度Eeとの境界、電界強度Eeと電界強度Efとの境界、および電界強度Efと電界強度Egとの境界が、それぞれL層、M層およびH層の、フォーカルコニック相とホメオトロピック相の変化のしきい電界強度Eth2である。
【0040】
そして、駆動回路9によって電極3,4間には、駆動信号として、図3に示すように、それぞれ交流パルスのリフレッシュ期間およびセレクト期間と、その後の無電界の表示期間とによって構成され、そのリフレッシュ期間およびセレクト期間での電界強度ErおよびEsが、Er>Esの関係をもって、入力データに基づいて、上記の7段階の電界強度Ea〜Egから選定された電界強度となる信号を印加する。
【0041】
図4は、この場合のリフレッシュ電界Erとセレクト電界Esの組み合わせによる、H層、M層およびL層の相変化の様子を示したもので、「p」はプレーナー相による着色状態、「f」はフォーカルコニック相による消色状態(透過状態)、「?」は駆動信号の印加前の状態に依存する未確定状態、をそれぞれ表し、H層、M層およびL層の順に示している。
【0042】
これから明らかなように、上記の表示素子および駆動方法によれば、
(1)H層、M層およびL層の3層全てがプレーナー相の状態、
(2)H層、M層およびL層の3層全てがフォーカルコニック相の状態、
(3)H層がプレーナー相で、M層およびL層がフォーカルコニック相の状態、
(4)M層がプレーナー相で、H層およびL層がフォーカルコニック相の状態、
(5)L層がプレーナー相で、H層およびM層がフォーカルコニック相の状態、
(6)H層およびM層がプレーナー相で、L層がフォーカルコニック相の状態、
(7)M層およびL層がプレーナー相で、H層がフォーカルコニック相の状態、
の7種類の相変化状態が得られる。
【0043】
したがって、例えば、イエローを発色する表示層5YをH層とし、マゼンタを発色する表示層5MをM層とし、シアンを発色する表示層5CをL層とした場合には、図5に示すように(同図中の「T」は、対応する層がフォーカルコニック相による透過状態であることを示す)、(1)Er=Eg,Es=Eaの駆動信号によって、ブラック(Bk)が表示される状態、(2)例えばEr=Eg,Es=Edの駆動信号によって、ホワイト(W)が表示される状態、(3)例えばEr=Eg,Es=Eeの駆動信号によって、イエロー(Y)が表示される状態、(4)Er=Ef,Es=Ebの駆動信号によって、マゼンタ(M)が表示される状態、(5)Er=Eg,Es=Ecの駆動信号によって、シアン(C)が表示される状態、(6)例えばEr=Eg,Es=Efの駆動信号によって、レッド(R)が表示される状態、(7)Er=Eg,Es=Ebの駆動信号によって、ブルー(B)が表示される状態、の7つの表示状態を取り得るようになり、一画素内で、ブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタおよびシアンの5色と、レッドおよびブルーの2色との、合計7色を表示することができる。
【0044】
さらに、少なくともブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタおよびシアンの5色を用いて、ディザ法などの面積階調手法を行うことによって、フルカラー表示を行うことができる。
【0045】
上記の例は、マゼンタを発色する表示層5MをM層として、レッド、グリーンおよびブルーの3色中の2色としてはレッドおよびブルーを表示する場合であるが、イエローを発色する表示層5YをM層とする場合には、レッド、グリーンおよびブルーの3色中の2色としてレッドおよびグリーンを表示することができ、シアンを発色する表示層5CをM層とする場合には、レッド、グリーンおよびブルーの3色中の2色としてグリーンおよびブルーを表示することができる。
【0046】
また、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンを発色する表示層5Y,5M,5Cの積層順序も、図1または図6に示した積層順序に限らず、任意の積層順序にすることができる。
【0047】
(実施例1)
以下の方法によって、図1の実施形態の反射型液晶表示素子を製造した。
【0048】
表示層5Yを形成するイエローのゲストホスト液晶として、正の誘電異方性のネマチック液晶ZLI−1840(メルク社製)84wt%と右旋性のカイラル剤CB15(メルク社製)16wt%との均一溶液に、アゾ系のp型二色性色素SI−486(三井東圧化学製)1wt%を添加した。
【0049】
表示層5Mを形成するマゼンタのゲストホスト液晶として、上記のネマティック液晶ZLI−1840(メルク社製)89wt%と上記のカイラル剤CB15(メルク社製)11wt%との均一溶液に、アゾ系のp型二色性色素M−618(三井東圧化学製)1wt%を添加した。
【0050】
表示層5Cを形成するシアンのゲストホスト液晶として、上記のネマティック液晶ZLI−1840(メルク社製)92wt%と上記のカイラル剤CB15(メルク社製)8wt%との均一溶液に、アントラキノン系のp型二色性色素SI−497(三井東圧化学製)1wt%を添加した。
【0051】
電極4としてアルミニウムの反射電極をスパッタ成膜した、基板2を構成する第1の透明ガラス基板7059(コーニング社製)上に、5μmの接着剤付きスペーサを混入したシアンのゲストホスト液晶を滴下し、熱と圧力を加えながら、分離基板7を形成する2.5μm厚の第1のPETフィルム(東レ製)をラミネートして、シアンの表示層5Cを形成した。
【0052】
次に、第1のPETフィルム上に、5μmの接着剤付きスペーサを混入したマゼンタのゲストホスト液晶を滴下し、熱と圧力を加えながら、分離基板6を形成する2.5μm厚の第2のPETフィルムをラミネートして、マゼンタの表示層5Mを形成した。
【0053】
さらに、第2のPETフィルム上に、5μmの接着剤付きスペーサを混入したイエローのゲストホスト液晶を滴下し、熱と圧力を加えながら、電極3としてITO透明電極が蒸着された、基板1を構成する第2の透明ガラス基板をラミネートして、イエローの表示層5Yを形成し、表示素子のセルを完成した。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、それぞれの色のゲストホスト液晶に、チオール系高分子前駆体NOA65(ノーランド社製)15wt%を添加して、それぞれの色のゲストホスト液晶を積層形成後、4mW/cm2の強度の紫外光を10分間、照射して、それぞれPNLC構造の表示層5C,5M,5Yを形成した。
【0055】
(実施例3)
以下の方法によって、図6の実施形態の反射型液晶表示素子を製造した。
【0056】
実施例1で用いた、それぞれの色のゲストホスト液晶を、PVA(和光純薬工業製)の10%水溶液に重量比5対2の割合で混合し、7000rpmのホモジナイザーで攪拌して、それぞれの色のエマルジョンを作製した。
【0057】
電極4としてアルミニウムの反射電極をスパッタ成膜した、基板2を構成する第1の透明ガラス基板7059(コーニング社製)上に、水で2倍に希釈したシアンのエマルジョンをドクターブレードで塗布し、乾燥させて、5μm厚のPDLC構造のシアンの表示層5Cを形成した。
【0058】
次に、得られたシアンの表示層5C上に、同様の方法によって、5μm厚のPDLC構造のマゼンタの表示層5Mを積層形成し、さらに同様の方法によって、電極3としてITO透明電極が蒸着された、基板1を構成する第2の透明ガラス基板上に、5μm厚のPDLC構造のイエローの表示層5Yを形成した。
【0059】
そして、第1の透明ガラス基板上のマゼンタの表示層5Mと、第2の透明ガラス基板上のイエローの表示層5Yとを圧着させて、表示素子のセルを完成した。
【0060】
【発明の効果】
上述したように、この発明によれば、積層する複数の表示層のそれぞれに対してパターニングされた駆動電極や駆動回路を設けることなく、一対の駆動電極と一つの駆動回路によって、減法混色法による多色表示を行うことができ、プロセスの低減や歩留まりの向上により、製造コストを低減することができる。
【0061】
さらに、それぞれの表示層の間にパターニングされた駆動電極を形成するための分厚い透明基板や不透明な能動素子を設ける必要がないため、それぞれの表示層の間の間隔を狭くすることができるとともに、開口率を大きくすることができ、視差を小さくすることができるとともに、明るい表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の反射型液晶表示素子の一実施形態を示す図である。
【図2】各表示層のコレステリック液晶の相変化しきい電界強度の関係の一例を示す図である。
【図3】一対の電極間に印加する駆動信号の態様の一例を示す図である。
【図4】リフレッシュ電界とセレクト電界の組み合わせによる各表示層の相変化の様子の一例を示す図である。
【図5】各色の表示状態の一例を示す図である。
【図6】この発明の反射型液晶表示素子の他の実施形態を示す図である。
【図7】正の誘電異方性を有するコレステリック液晶の相変化を示す図である。
【図8】正の誘電異方性を有するWhite−Taylor型ゲストホスト液晶の一定電界印加時のスイッチング挙動を示す図である。
【図9】正の誘電異方性を有するWhite−Taylor型ゲストホスト液晶のパルス電界印加時のスイッチング挙動を示す図である。
【図10】多色表示が可能な従来の反射型液晶表示素子の例を示す図である。
【符号の説明】
1,2 基板
3,4 電極
5Y,5M,5C 表示層
6,7 分離基板
8Y,8M,8C スペーサ
9 駆動回路
Claims (4)
- それぞれ電極を有し、少なくとも一方が透明の一対の基板間に、互いに異なる波長の光を吸収する二色性色素がコレステリック液晶に添加され、かつそれぞれのコレステリック液晶の相変化しきい電界強度が異なる複数の表示層が積層され、電界除去後の各表示層の相変化状態に対応した着色状態の組合せによって多色が表示されることを特徴とする反射型液晶表示素子。
- 請求項1の反射型液晶表示素子において、
前記複数の表示層が、それぞれ高分子を含むことを特徴とする反射型液晶表示素子。 - 請求項1または2の反射型液晶表示素子を駆動する方法において、
前記電極間に、リフレッシュ期間およびセレクト期間と、その後の無電界の表示期間とによって構成され、そのリフレッシュ期間およびセレクト期間での電界強度ErおよびEsが、Er>Esの関係をもって、前記複数の表示層のコレステリック液晶の相変化しきい電界強度を境界とする複数段階の電界強度から選定された電界強度となる駆動信号を印加することを特徴とする表示素子駆動方法。 - 請求項1または2の反射型液晶表示素子を駆動する装置において、
前記電極間に、リフレッシュ期間およびセレクト期間と、その後の無電界の表示期間とによって構成され、そのリフレッシュ期間およびセレクト期間での電界強度ErおよびEsが、Er>Esの関係をもって、前記複数の表示層のコレステリック液晶の相変化しきい電界強度を境界とする複数段階の電界強度から選定された電界強度となる駆動信号を印加することを特徴とする表示素子駆動装置。
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