JP3613021B2 - プレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、自動車の外板等の用途に好適な深絞り性に優れた冷延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷延鋼板は自動車用途等に広く使用されている。自動車用途ではプレス成形される部材が多いため、その部材の形状に応じて様々な加工性が要求され、特に、自動車の外板等の用途では深絞り性に優れたプレス加工用冷延鋼板が求められる。また、最近では自動車メーカーからの合理化の要求が厳しく、特に素材の低廉化及び製品製造時における歩留まり向上に関する要求が強まりつつある。このため冷延鋼板の材質面では、特に材質の均一性の高いことが重要になっている。
【0003】
このような背景の下、例えば特公昭60−45692号公報には、連続鋳造−直送圧延プロセスにおいて、0.015wt%以下の極低炭鋼スラブの幅中央での表面温度が900℃未満600℃以上の温度範囲で熱間圧延を開始し、さらに熱間圧延工程の途中段階で30分以内の保持処理を施すことにより、鋼板の表面性状及び深絞り性を向上させようとする技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この技術では鋼板の表面性状と深絞り性を良好なレベルまで改善はしているものの、コイル内の機械的性質の均一性に大きな問題がある。すなわち、この技術では熱間圧延での加熱温度を低温のフェライト域としているため、圧延中の材料幅方向での温度分布(エッジ及びその近傍での著しい温度低下による温度分布)により熱間圧延後のコイル幅方向での集合組織に差を生じ、この結果、冷間圧延・最終焼鈍後のコイル幅方向の機械的性質にバラツキを生じるという問題がある。
【0005】
このようにコイルの幅方向で機械的性質にバラツキを生じると、材料(コイル)内での加工性が均一でなくなり、特に自動車外板等の用途のように優れた深絞り性が求められる場合には、プレス成形後の品質に大きな問題(例えば、割れやしわ等の発生)が生じる。この結果、自動車メーカーではコイル内での板取りを歩留まりが低い条件(例えば、板取方向を45度等の不合理な方向としたり、コイルエッジ近傍からは板取りしない等の条件)で行なわざるを得なくなる。
【0006】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、自動車の外板等の用途に好適な優れたプレス成形性(深絞り性等)を有し、しかもコイル内でのプレス成形性の変動も少ない冷延鋼板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ね、その結果、自動車の外板等の用途に好適な優れたプレス成形性を有し、且つコイル内でのプレス成形性の変動も少ない冷延鋼板を得るためには、まず、素材鋼の成分組成を適正化した上で、熱間圧延後の平均結晶粒径[D]及びコイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]を特定範囲内にすることが必要であることが判明した。
【0008】
そして、そのような冷延鋼板は、素材鋼成分を特定の条件に適正化するとともに、(1) 熱間圧延工程での粗圧延バーの仕上げ圧延において、特定の加熱手段で粗圧延バー全体をその全長に亘って加熱して温度調整することにより、熱延コイルの先端部から後端部に至るまでの仕上げ温度を特定の温度範囲に制御する、(2) 熱間圧延後のランナウトでの冷却開始時間と特定の温度域までの平均冷却速度を適正化する、(3) 熱延巻取温度を適正化する、という限定された条件で熱間圧延を行い、このようにして得られた熱延鋼帯を順次酸洗、冷間圧延、最終焼鈍及び調質圧延することにより製造できることが判った。
さらに、上記の冷延鋼板をより合理的に得るには、仕上げ圧延において粗圧延バーを所定の条件で加速圧延することが有効であることも判った。
【0009】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1] C:0.02wt%以下、Si:0.6wt%以下、Mn:2.5wt%以下、P:0.10wt%以下、S:0.05wt%以下、O:0.004wt%以下、Sol.Al:0.01〜0.10wt%を含有し、さらに、Ti、Nb、V、Zrの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜0.40wt%含有する鋼からなる鋳片を、熱間圧延工程において粗圧延機により粗圧延し、この粗圧延バーを引き続き連続熱間仕上げ圧延機により仕上げ圧延するに際し、仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機のスタンド間に設けられた誘導加熱装置で粗圧延バー全体をその全長に亘って加熱することにより、仕上げ温度が熱延コイルの先端部から後端部に至るまでAr3点〜Ar3点+30℃の範囲になるように圧延し、続くランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.5秒以内に開始するとともに、仕上げ温度から750℃までを20℃/sec以上の平均冷却速度で冷却した後、巻取温度700℃以下で巻き取り、得られた熱延鋼帯に酸洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を順次施すことを特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
【0010】
[2] 上記[1]の製造方法において、スラブがB:0.0001〜0.005wt%をさらに含有することを特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
[3] 上記[1]または[2]の製造方法において、仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機のスタンド間において、粗圧延バーの幅方向エッジ部を誘導加熱装置により加熱することを特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
【0011】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、仕上げ圧延される粗圧延バーの圧延速度を、下記(A)〜(C)のいずれかに制御することを特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
(A) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち一定速度で圧延する。
(B) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち一定速度で圧延した後、さらに圧延速度を加速する。
(C) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち圧延速度をさらに加速する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細とその限定理由について説明する。
上述したように自動車の外板等の用途に好適なプレス成形性(深絞り性等)に優れ、且つコイル内でのプレス成形性の変動(バラツキ)が少ない冷延鋼板を製造するためには、素材鋼の成分を最適化した上で、熱間圧延後の平均結晶粒径[D]とコイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]、すなわちコイル幅方向での平均結晶粒径の最大値[Dmax]と最小値[Dmin]の比[Dmax/Dmin]を特定範囲内にすることが必要である。
【0013】
そこでまず、本発明における素材鋼の成分組成の限定理由について説明する。Cは鋼板の深絞り性に悪影響を及ぼす元素であるため、その含有量は少ない方が好ましい。C量が0.02wt%を超えると本発明が狙いとする深絞り性が得られないため、その含有量は0.02wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。また、深絞り性をさらに向上させるためはC量を0.0020wt%以下とすることが、また、加工性をさらに高いレベルとするためにはC量を0.0015wt%以下とすることが好ましい。
【0014】
Siは鋼板を固溶強化する作用を有するが、深絞り性に悪影響を及ぼす元素であるため、その含有量は少ないほうが好ましい。Si量が0.6wt%を超えるとめっき性および深絞り性が劣化するため、その含有量は0.6wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。また、めっき性をさらに向上させるためにはSi量を0.1wt%以下とすることが、また、加工性をさらに高いレベルとするためにはSi量を0.03wt%以下とすることが好ましい。
【0015】
Mnは靭性を改善して鋼板を固溶強化する作用を有するが、一方において加工性に悪影響を及ぼす元素でもある。Mn量が2.5wt%を超えると強度が上昇し、深絞り性の劣化が著しくなることから、その含有量は2.5wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。また、深絞り性の向上のためにはMn量を2.0wt%以下とすることが、また、加工性をさらに高いレベルとするためにはMn量を0.5wt%以下とすることが好ましい。
【0016】
Pは鋼板を固溶強化する作用を有するが、P量が0.10wt%を超えると粒界偏析による粒界脆化が生じやすくなり、延性も劣化する。このためPの含有量は0.10wt%以下(但し、無添加の場合を含む)する。また、延性をより向上させるためにはP量を0.05wt%以下とすることが、また、延性をさらに高いレベルとするためにはP量を0.02wt%以下とすることが好ましい。
【0017】
Sの含有量が0.05wt%を超えると硫化物の析出量が多くなり、深絞り性及び延性が劣化する。このためSの含有量は0.05wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。また、加工性をより向上させるためにはS量を0.02wt%以下とすることが、また、加工性をさらに高いレベルとするためにはS量を0.01wt%以下とすることが好ましい。
【0018】
Sol.Alは鋼の脱酸材として使用され、さらには後述するTi,Nb,Zr,Vの添加歩留まりを向上させるために必須の添加元素である。Sol.Alが0.01wt%未満では上記の効果が得られず、一方、0.10wt%を超えて添加しても効果が飽和するため却って不経済となる。このためSol.Alの含有量は0.01〜0.10wt%とする。
【0019】
Oは、その含有量が少ないほど加工性に対しては好ましい。O量が0.004wt%を超えると鋼板の加工性の低下が避けられない。このためOの含有量は0.004wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とする。なお、このようなO含有量は上記したSol.Al量の調整により達成される。
【0020】
素材鋼は上記した各成分に加えて、さらにTi,Nb,V,Zrの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜0.40wt%含有する。これらの成分は炭窒化物や硫化物を形成して鋼中のC,N,Sを減少させ、加工性を改善するのに役立つ。しかし、これらの合計含有量が0.01wt%未満では所望の効果が得られず、一方、0.40wt%を超えると強度が上昇し過ぎて加工性が劣化するため、その添加量は0.01〜0.40wt%とする。
【0021】
さらに、本発明の素材鋼には、耐縦割れ性の向上を目的としてBを0.0001〜0.005wt%の範囲で添加してもよい。B量が0.0001wt%未満では耐縦割れ性の改善効果が十分に得られず、一方、0.005wt%を超えると効果が飽和するため却って経済性を損なう。このためBの添加量は0.0001〜0.005wt%とする。
【0022】
次に、本発明の製造条件について説明する。
自動車メーカー等での冷延鋼板の使用条件からして、冷延コイルからの製品の板取りを高歩留まりで行なうためには、上記した素材鋼成分の適正化に加えて熱延コイルの平均結晶粒径[D]及びコイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]を適正化することが必要であり、具体的には、熱間圧延後の平均結晶粒径[D]を5〜50μm、コイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]を2.0以下とする必要がある。
【0023】
熱間圧延後の平均結晶粒径[D]が5μm未満では本発明で意図する優れた深絞り性が得られず、一方、平均結晶粒径[D]が50μmを超えると加工時に肌荒れが問題となる。これに対して平均結晶粒径[D]が5〜50μmでは優れた深絞り性が得られ、且つ肌荒れも発生しない。また、より優れた深絞り性を得るためには[D]を15〜30μmとすることが、また、優れた深絞り性を確保しつつ、強度を高めるためには[D]を5〜15μmとすることが好ましい。
【0024】
また、熱延コイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]が2.0を超えると、冷間圧延・最終焼鈍後のコイル幅方向での機械的性質(mean−r値、破断伸び)の均一性が悪くなり、[Dmax/Dmin]を2.0以下とすることによりコイル幅方向での機械的性質を均一に保つことができる。
【0025】
図1は、後述する実施例(表2及び表3)に示された本発明材(材料No.1,[Dmax/Dmin]:1.50)と比較材(材料No.2,[Dmax/Dmin]:2.35)について、冷間圧延・最終焼鈍後のコイル幅方向でのmean−r値と破断伸び(L方向)の分布を示しており、[Dmax/Dmin]が2.0以下である本発明材はコイル幅方向での機械的性質の変動(バラツキ)が小さいのに対し、[Dmax/Dmin]が2.0を超えた比較材はコイル幅方向での機械的性質が大きく変動している。
【0026】
本発明の製造方法では、上記のような適正化された熱延コイルの平均結晶粒径[D]と熱延コイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]を確保するために、以下のような製造条件を採用する。
まず、上記の成分組成を有する鋼からなる鋳片を、熱間圧延工程において粗圧延機によって粗圧延し、この粗圧延バーを引き続き連続熱間仕上げ圧延機によって仕上げ圧延するが、この際に、仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機のスタンド間に設けられた誘導加熱装置で粗圧延バー全体をその全長に亘って加熱することにより、仕上げ温度(仕上げ圧延機の最終スタンドにおける温度)が熱延コイルの先端部から後端部に至るまでAr3点〜Ar3点+30℃の範囲となるように圧延する。
【0027】
このような条件で熱間圧延を行うことによってのみ、コイル幅方向及び長手方向を含めたコイル内のmean-r値及び延性(破断伸び)を本発明が意図するレベルとすることが可能となる。
【0028】
ここで、仕上げ温度がAr3点未満ではフェライト変態後の熱延となってしまうため[D]及び[Dmax/Dmin]が本発明の意図する範囲を超えてしまう。また、仕上げ温度がAr3点+30℃を超えると、仕上げ圧延後でもオーステナイト結晶粒の粒成長が著しく、しかもコイル幅方向の温度差もあるため、[D]及び[Dmax/Dmin]が本発明の意図する範囲を超えてしまう。
【0029】
誘導加熱装置による粗圧延バーの加熱は、仕上げ圧延機の入側、仕上げ圧延機のスタンド間の任意の位置で行うことができ、これらのうちの複数の位置(例えば、仕上げ圧延機の入側と仕上げ圧延機のスタンド間の1ヶ所以上)で行ってもよい。
なお、粗圧延バーの温度調整用の加熱装置として誘導加熱装置を用いるのは、この誘導加熱装置を用いることにより、粗圧延バー長手方向の温度分布(変動)に対して、良好な制御性(追従性)で温度制御を行うことができるためである。
【0030】
図2に、先に述べた本発明材(材料No.1,[D]:15μm,[Dmax/Dmin]:1.50)と比較材(材料No.2,[D]:16μm,[Dmax/Dmin]:2.35)について、コイル先端部から後端部に至るまでの熱延仕上げ温度と冷間圧延・最終焼鈍後のコイル内(コイル幅方向及び長手方向)での機械的性質の変動との関係を示す。これによれば、コイルの先端部から後端部に至るまでの熱延仕上げ温度がAr3点−10℃〜Ar3点+35℃である比較材では[Dmax/Dmin]が2.0を超え、このためコイル内(コイル幅方向及び長手方向)での冷間圧延・最終焼鈍後のmean−r値及び破断伸びが大きく変動している。これに対して、コイルの先端部から後端部に至るまでの熱延仕上げ温度がAr3点〜Ar3点+22℃である本発明材では[Dmax/Dmin]が2.0以下に抑えられ、このためコイル内(コイル幅方向及び長手方向)での冷間圧延・最終焼鈍後のmean−r値及び破断伸びの変動が適切に抑えられている。
【0031】
また、本発明の製造方法では、上記の仕上げ温度(仕上げ圧延機の最終スタンドにおける圧延温度)の制御に加えて、仕上げ圧延機の最終スタンドより上流側の各スタンドにおける圧延温度についても、粗圧延バーの先端部から後端部に至るまでの温度をAr3点〜Ar3点+30℃となるように圧延することにより、より優れた深絞り性を有し、且つコイル内(コイル長手方向及び幅手方向)での機械的性質の変動のより少ない鋼板を製造することができる。このような粗圧延バーの温度調整も、前記誘導加熱装置により粗圧延バー長手方向の一部又は全部を加熱することによって行う。
【0032】
本発明の製造方法では、続くランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.5秒以内に開始するとともに、仕上げ温度から750℃までを20℃/sec以上の平均冷却速度で冷却した後、巻取温度700℃以下で巻き取る。
ランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.5秒以内に開始することにより、仕上げ圧延後の変態前のオーステナイト結晶粒の粒成長を抑制することができ、本発明が意図する[D]および[Dmax/Dmin]を得ることが可能となる。仕上げ圧延終了後冷却開始までの時間が1.5秒を超えると、上記した結晶粒の粒成長を抑制できず、本発明で意図する[D]および[Dmax/Dmin]を得ることができない。
【0033】
また、仕上げ温度から750℃までの平均冷却速度を20℃/sec以上とすることにより、オーステナイト−フェライト変態時のフェライトの核生成頻度が増加し、フェライト粒径を本発明で意図する[D]および[Dmax/Dmin]とすることが可能となる。平均冷却速度が20℃/sec未満では、上記したフェライトの核生成頻度が低く、本発明で意図する[D]および[Dmax/Dmin]を得ることができない。
【0034】
また、熱間圧延後の巻取温度を700℃以下とすることにより、[D]および[Dmax/Dmin]が本発明の意図する範囲に制御された鋼帯において、フェライトの粒成長による粗粒化を抑制することができる。巻取温度が700℃を超えるとフェライトの粒成長による粗粒化により[D]および[Dmax/Dmin]が本発明が意図する範囲を超えてしまう。
【0035】
また、本発明の製造方法において目的とする鋼板をより合理的に得るためには、仕上げ圧延される粗圧延バーの圧延速度を、粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから加速すること、具体的には圧延速度を下記(A)〜(C)のいずれかに制御することが好ましい。
(A) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち一定速度で圧延する。
(B) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち一定速度で圧延した後、圧延速度を加速する。
(C) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち圧延速度をさらに加速する。
【0036】
このような加速圧延を伴う仕上げ圧延を行うことにより材料の温度低下を極力抑えることができ、このため仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機のスタンド間に設けられた誘導加熱装置による粗圧延バーの加熱量を必要最小限に抑え、加熱のためエネルギーを節減することができる。
また、上記(A)〜(C)の圧延パターンのなかでは、仕上げ圧延機内での加速圧延の度合いは(C)>(B)>(A)となるため、(A)よりも(B)、(B)よりも(C)の方がより高い効果が得られる。
【0037】
また、本発明の製造方法においては、仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上圧延機のスタンド間において粗圧延バーの幅方向エッジ部を誘導加熱装置により加熱する工程を付加することが好ましい。このようなエッジ部の加熱により粗圧延バー幅方向での温度のバラツキが小さくなり、[Dmax/Dmin]をより小さい値とすることが可能となる。
また、この誘導加熱装置による粗圧延バーエッジ部の加熱についても、仕上げ圧延機の入側、仕上げ圧延機のスタンド間の任意の位置で行うことができ、これらのうちの複数の位置(例えば、仕上げ圧延機の入側と仕上げ圧延機のスタンド間の1ヶ所以上)で行ってもよい。
【0038】
本発明の製造方法では、上記のような熱間圧延で得られた熱延鋼帯に対して酸洗、冷間圧延、最終焼鈍及び調質圧延を順次施すことによりプレス成形性に優れ、且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板を得ることができる。冷間圧延は熱延鋼帯を所定の板厚にするとともに、圧延集合組織を発達させ、続く最終焼鈍(再結晶焼鈍)工程において加工性向上のために好ましい集合組織を発達させるために実施される。そのためには、冷間圧延において50%以上、好ましくは76%以上の圧下率で最終板厚に加工することが好ましい。
【0039】
また、最終焼鈍(再結晶焼鈍)は550〜900℃の温度範囲で行なうことが好ましく、この最終焼鈍においてフェライトを再結晶させる。焼鈍温度が550℃未満では、長時間の箱焼鈍でも再結晶が十分に生じない。一方、900℃を超える焼鈍温度では、連続焼鈍においてもオーステナイト化が進行し、加工性が劣化する。
最終焼鈍を行なう方法としては、連続焼鈍、箱焼鈍、または溶融亜鉛めっき処理に先行する連続熱処理のいずれでもよい。
調質圧延は、主に冷延鋼帯の形状性を良好なものにするために行われる。
【0040】
本発明の製造方法で用いる素材鋼は、例えば転炉、電気炉等により溶製される。鋳片 の製造は造塊−分塊圧延法、連続鋳造法、薄鋳片鋳造法、ストリップ鋳造法のいずれでもよい。連続鋳造で得られた鋳片については、連続鋳造ままで直ちに熱間圧延する方法(所謂直送圧延法)、連続鋳造された鋳片を常温まで冷却することなく保熱または加熱した後、熱間圧延する方法、連続鋳造された鋳片を常温まで冷却した後、再加熱して熱間圧延する方法、のいずれを採用してもよい。
【0041】
なお、本発明の製造方法において、連続鋳造または造塊−分塊圧延により得られた鋳片(スラブ)を加熱して熱間圧延する場合には、連続鋳造または造塊−分塊圧延された鋳片を室温以上の任意の温度まで冷却した後、熱延加熱炉に装入して鋳片を所定温度まで加熱するが、その場合、熱延加熱炉への鋳片装入温度はAr3点以下であることが熱延組織を制御する上で好ましい。
【0042】
なお、本発明の製造方法では、誘導加熱装置で粗圧延バーを加熱する工程の前工程または後工程としてレベラー等の矯正装置による形状矯正を行ってもよい。この形状矯正を、粗圧延バーを誘導加熱装置で加熱する工程の前工程として行なった場合、粗圧延バーの形状が良好になるため粗圧延バーを誘導加熱装置により均一に加熱することができ、この結果、粗圧延バー内の組織の均一性が高くなる。また、仕上げ圧延機に挿入される粗圧延バーの形状も良好になるため、仕上げ圧延による塑性変形時の均一性が高くなり、この結果、得られる鋼板の組織も均一になる。また、上記の形状矯正を、粗圧延バーを誘導加熱装置で加熱する工程の後工程として行なった場合には、仕上げ圧延機に挿入される粗圧延バーの形状が良好になるため、仕上げ圧延による塑性変形時の均一性が高くなり、この結果、鋼板の組織が均一となる。
【0043】
本発明の製造方法によって得られた冷延鋼板は、必要に応じて表面処理(溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気めっき、有機被覆コーテング等)やプレス加工を施された後、例えば、自動車、家電製品(テレビ用のフレーム材、各種容器材等)、産業機器、鋼構造物、ほうろう製品等をはじめとする各種の用途に使用されるが、これらの用途において要求される高加工性と強度を兼ね備えている。
【0044】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼(材料No.1〜11)を溶製し、これを連続鋳造により鋳片とし、この鋳片を表2に示す条件で熱間圧延して熱延コイルとし、この熱延コイルの平均結晶粒径[D]とコイル幅方向での平均結晶粒径の変動度[Dmax/Dmin]を測定した。
上記の熱延コイルを酸洗した後、圧下率75%で冷間圧延し、次いで、再結晶焼鈍(800℃×40秒)と調質圧延を順次行なって製品鋼帯とし、得られた鋼帯コイルの機械的性質を調べた(サンプルの採取条件は、表3の脚注を参照)。各材料の熱延条件と測定された[D]及び[Dmax/Dmin]の値を表2に、測定された各製品鋼帯の機械的性質を表3に示す。
【0045】
表3によれば、本発明材ではmean−r値及び破断伸びのレベルが高く、且つコイル内での機械的性質の変動も小さく、したがって、プレス成形性が優れ且つコイル内でのプレス成形性も均一であることが判る。また、仕上げ圧延で加速圧延を実施することにより、粗圧延バー全体の加熱温度をあまり高くすることなく仕上げ温度を本発明範囲内に制御できることが判る。また、加速圧延による上記の効果は、上述したパターン(A)〜(C)のなかでは(C)>(B)>(A)であることが判る。さらに、粗圧延バーのエッジ部の加熱を行った材料No.1、No.3、No.5、No.8は、本発明例のなかでも[Dmax/Dmin]の値が特に小さく、このためコイル幅方向の特性値(mean−r値、破断伸び)の変動が特に小さく、優れた材料であることが判る。また、比較例である材料No.2のように粗圧延バー全体の加熱を施さない場合には、加速圧延を行なっても仕上げ圧延を本発明範囲に制御することができないことも判る。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の製造方法によれば、自動車の外板等の用途に好適な優れたプレス成形性を有し、しかもコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に示された本発明材([Dmax/Dmin]:1.50)と比較材([Dmax/Dmin]:2.35)について、冷間圧延・最終焼鈍後のコイル幅方向でのmean−r値、破断伸びを示すグラフ
【図2】実施例に示された本発明材([D]:15μm,[Dmax/Dmin]:1.50)と比較材([D]:16μm,[Dmax/Dmin]:2.35)について、熱延コイル先端部から後端部に至るまでの仕上げ温度と冷間圧延・最終焼鈍後のコイル内の機械的性質との関係を示すグラフ
Claims (4)
- C:0.02wt%以下、Si:0.6wt%以下、Mn:2.5wt%以下、P:0.10wt%以下、S:0.05wt%以下、O:0.004wt%以下、Sol.Al:0.01〜0.10wt%を含有し、さらに、Ti、Nb、V、Zrの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜0.40wt%含有する鋼からなる鋳片を、熱間圧延工程において粗圧延機により粗圧延し、この粗圧延バーを引き続き連続熱間仕上げ圧延機により仕上げ圧延するに際し、仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機のスタンド間に設けられた誘導加熱装置で粗圧延バー全体をその全長に亘って加熱することにより、仕上げ温度が熱延コイルの先端部から後端部に至るまでAr3点〜Ar3点+30℃の範囲になるように圧延し、続くランナウトでの冷却を仕上げ圧延終了後1.5秒以内に開始するとともに、仕上げ温度から750℃までを20℃/sec以上の平均冷却速度で冷却した後、巻取温度700℃以下で巻き取り、得られた熱延鋼帯に酸洗、冷間圧延、最終焼鈍、調質圧延を順次施すことを特徴とするプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
- スラブがB:0.0001〜0.005wt%をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
- 仕上げ圧延機の入側及び/又は仕上げ圧延機のスタンド間において、粗圧延バーの幅方向エッジ部を誘導加熱装置により加熱することを特徴とする請求項1または2に記載のプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
- 仕上げ圧延される粗圧延バーの圧延速度を、下記(A)〜(C)のいずれかに制御することを特徴とする請求項1、2または3に記載のプレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板の製造方法。
(A) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち一定速度で圧延する。
(B) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち一定速度で圧延した後、さらに圧延速度を加速する。
(C) 粗圧延バーの先端部が仕上げ圧延機に入ってから圧延速度を加速し、そののち圧延速度をさらに加速する。
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