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JP3606213B2 - 樹脂製チューブ - Google Patents

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JP3606213B2
JP3606213B2 JP2001061641A JP2001061641A JP3606213B2 JP 3606213 B2 JP3606213 B2 JP 3606213B2 JP 2001061641 A JP2001061641 A JP 2001061641A JP 2001061641 A JP2001061641 A JP 2001061641A JP 3606213 B2 JP3606213 B2 JP 3606213B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂製チューブに係り、更に詳細には、樹脂層を積層して成り、軽量性、防錆性、高温雰囲気中での優れた耐層間剥離性及び高い燃料バリアー性(燃料不透過性)を有するとともに、再利用も容易である樹脂製チューブに関するものである。
また、本発明の樹脂製チューブは、代表的には自動車の燃料系配管用のチューブとして好適に使用できる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポホース及びフィラーホース等の自動車の燃料系配管には、金属製、ゴム製、樹脂製又はこれらの内の2種乃至3種を混成した配管構造が使用されている。特に最近では、これまで主流であった金属製のものに替わって、錆の発生が無いこと、軽量化が可能であること、更にコスト的に有利であることなどから、樹脂製のものに切り換りつつある。
しかしながら、一般に樹脂製のものは、金属製のものに比べて、耐燃料透過性に劣るという欠点があり、今後益々厳しくなると予想される燃料蒸散規制に対しては、いっそう透過を抑えることが強く要求されている。
【0003】
樹脂製の配管等の耐燃料透過性を向上させることを目的とした開発は種々報告されてはいるものの、含アルコール燃料に対しても透過性が低く、しかも材料及び製造の面で現実的となる安価な構成は報告されていない。
例えば、特開平5−164273号公報等には、内層(バリア層)にフッ素樹脂(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)を用い、中間層に接着層を設置し、外層にポリアミド12を用いた構成が提案されている。
しかし、この場合、フッ素系樹脂自体が高価であること、更にフッ素系樹脂と外層たるポリアミド12とを接着するための接着層が高価であるという問題がある。
【0004】
これに対し、材料コストを抑制するべく、フッ素樹脂を含む層の薄肉化が検討されるが、十分な耐圧を確保することができないため、十分な薄肉化は困難となりコスト削減は達成され得ない。
また、更に強い接着性を得るため、内層たるフッ素樹脂を押出し成形して、その表面にナトリウム−アンモニア錯体を含む化学処理液を適用して、活性基を導入する表面処理などをする場合は、製造工程が極めて複雑になるとともに、更にコストを上昇させてしまう。
【0005】
一方、特開平11−156970号公報には、バリア層にポリフェニレンサルファイド(PPS)を適用した構成が提案されている。
しかし、この場合においても、接着層を設ける必要があること、PPS層及び接着層が高価であることが問題であり、上述のフッ素系樹脂と同様に現実的なコストレベルとなる組合せとはなり難い。
【0006】
これらの問題は、いずれの場合においてもバリア層と保護層(外層)を異種の材料にしたことが原因である。即ち、異種材料を組合せた場合においては、そのままでは強い接着性が得られないため接着層が必要となり、少なくとも3層構造が要求され、また、接着層自体が高価であることから配管(積層チューブ)が必然的に高価になってしまうという課題がある。
【0007】
また、特開平10−30764号公報及び特開2000−55248号公報には、接着層を設けずプラズマ等の表面処理によってバリア層(内層)と保護層(外層)を接着させる方法が提案されている。
しかし、製造工程が煩雑になり、上記問題の根本的な解決策とはなり難い。また、このような異種材料による組合せでは、工程内で端材を再利用することが極めて困難であり、この点も大きな課題となっている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、通常のガソリンの他に含アルコール燃料に対しても低い透過性を有し、バリア層(燃料遮断層)と被覆層(燃料遮断層を保護する層)との接着性が十分高く、端材等の再利用が容易で安価な材料構成である樹脂製チューブを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の樹脂を用いた積層構造とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の樹脂製チューブは、二以上の樹脂層が、管状に積層されて成る樹脂製チューブであって、
少なくとも1層がポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層であり、前記以外の層がポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層であり、
上記ポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層のうち、上記ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層と接触する層が、更にポリフェニレンサルファイドを含んで成ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の樹脂製チューブは、二以上の樹脂層が、管状に積層されて成る樹脂製チューブであって、
少なくとも1層がポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層であり、前記以外の層がポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層であり、
上記ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層が、更にポリブチレンテレフタレート共重合体を含んで成ることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の更に他の樹脂製チューブは、三以上の樹脂層が、管状に積層されて成る樹脂製チューブであって、
少なくとも1組の互いに接しないポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層とポリブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂層を有し、且つ前記以外の層がポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層で構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の樹脂製チューブの他の好適形態は、上記ポリブチレンテレフタレート共重合体が、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマーであることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の樹脂製チューブの更に他の好適形態は、上記ポリブチレンテレフタレート共重合体が、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリエステルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エステルブロック共重合体エラストマーであることを特徴とする。
【0016】
更にまた、本発明の樹脂製チューブの他の好適形態は、上記ポリブチレンテレフタレート共重合体が、酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と水素添加ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体とを含み、グリコール成分として1,4−ブタンジオールを含む共重合ポリエステルを主たる構成成分として成ることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の樹脂製チューブの更に他の好適形態は、上記ポリブチレンテレフタレート共重合体を構成するテレフタル酸ユニットの少なくとも一部が、ナフタレンジカルボン酸ユニットに置換されて成ることを特徴とする。
【0018】
以下、本発明の樹脂製チューブについて、詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示す。
上述の如く、本発明の樹脂製チューブは、二以上の樹脂層を管状に積層して成り、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を主成分とする樹脂層と、ポリブチレンテレフタレート共重合体(PBT共重合体)を主成分とする樹脂層とを含んで構成される。
【0019】
ここで、上記PPSを主成分とする樹脂層は、燃料等の透過性が低く、透過を遮断する層としての機能を有する(以下、この層を「燃料遮断層」と称す)。
また、上記PBT共重合体を主成分とする層は、燃料遮断層を被覆・保護する被覆層としての機能を有する(以下、この層を「被覆層」と称す)。
具体的には、図1に示すように、燃料等の流通し得る中空部分を中央に有する燃料遮断層2aの外周に被覆層3aが被覆された樹脂製チューブ10や、図2に示すように、上記樹脂製チューブ10と同様の構成を有するチューブの内周に更に被覆層3bが被覆された樹脂製チューブ20や、図3に示すように、上記樹脂製チューブ20と同様の構成を有するチューブの内周に更に燃料遮断層2b及び被覆層3cがこの順に被覆された樹脂製チューブ30などを例示できる。
なお、本発明の樹脂製チューブは、図1〜3に示すような2〜5層構造に限定されず、更に複数の燃料遮断層や被覆層が被覆されてもよいことはいうまでもない。また、上記「主成分とする」とは、材料によっても異なるが、樹脂層中に該材料が50%以上含まれていることを意味する。
【0020】
また、上記燃料遮断層は、PPSを主成分とすることより、樹脂製チューブ内に通常のガソリン燃料の他、エタノールやメタノールなどのアルコールを含む混合燃料を流通しても、優れた耐透過性を有する。
更に、図1に示すように燃料遮断層2aが燃料に接する場合、及び図2や図3に示すように被覆層が燃料に接する場合のいずれにおいても、燃料中に含まれるアミン系清浄剤による劣化が極めて小さく、またサワーガソリン(劣化ガソリン)に対しても極めて優れた耐性を有する。
更にまた、上記燃料遮断層及び被覆層のいずれを最内層としてもよく、金属等とのシール性を著しく向上できるので、従来から用いられているフッ素系樹脂と同様にチューブに継手や金具の部品を挿入しても滑りにくい。
【0021】
また、上記燃料遮断層として、PPSを主成分とする樹脂層の他にPBTを主成分とする樹脂層を積層することもできる。この場合、安価にして高い燃料遮断性を得ることができ有効である。但し、PBTとPPSとは接着性が極めて小さく、これらの積層体は実用上支障を生じさせることがあるため、上記樹脂製チューブは、三以上の樹脂層を管状に積層し、少なくとも1組の互いに接しないPPSを主成分とする樹脂層とPBTを主成分とする樹脂層を有し、且つ前記以外の層はPBT共重合体で構成される。この場合、PBT共重合体を主成分とする樹脂層などを介して高い接着力で積層される。
【0022】
更に、上記燃料遮断層は、PPSの含有量が多いほど燃料遮断性に優れるが、若干量のPBT共重合体を含有することにより、積層する又は積層される被覆層(PBT共重合体が主成分)との接着性が向上する。これより、層間に優れた接着性が要求されるときは、適宜PBT共重合体の含有量を調整することが望ましい。
なお、PPSはポリアミド類と溶解度係数が近く混和性に優れるため、上記燃料遮断層にポリアミド6やポリアミド66などのポリアミド樹脂類を混合することができる。この場合は材料構成を安価にすることができる。
【0023】
更にまた、上記被覆層は、PBT共重合体を主成分とすることより、上述の燃料遮断層(PPSやPBT)と高い混和性を発現し、共押出しのみでも十分な接着性を有し、高温雰囲気下でも優れた層間剥離性を確保する。言い換えれば、上記被覆層と燃料遮断層との間に接着層を設けなくても十分な接着力を付与できる。また、高い接着力が発現するので成形時の押出し等を迅速に行うことができタクトの短縮化が図れる。更に、上記燃料遮断層と同様な理由から被覆層にPPSを含有することにより、層間接着性が向上し、上記燃料遮断層と被覆層との間に接着層を設ける必要がなく極めて安価に樹脂製チューブを得ることができる。
【0024】
また、上記PBT共重合体は、優れた柔軟性を有し、上記燃料遮断層を保護(燃料遮断層の強度低下や損傷の防止など)する被覆層として有効に機能し得る。例えば、本樹脂製チューブを燃料チューブとして車両等へ取付けるときなどは、屈曲させて容易に配置することができる。このとき、被覆層は、少量であるが燃料に接する可能性があるため、燃料に対する耐性を有していることが望ましい。
上記PBT共重合体は、基本骨格にPBTを有することから、被覆層として要求される柔軟性を有するとともに、燃料に対する耐性をも有する。
なお、PBTは低いガラス転移点(約20℃)を有するため、PBT共重合体も低いガラス転移点を得ることが容易であり、車両等で要求される−40℃の低温時においても優れた柔軟性を有し得る。また、上記被覆層の柔軟性は、外径φ8mm、肉厚1mm程度の樹脂製チューブでは、常温での曲げ弾性率で1.5GPa以下であることが望ましく、特に1.0GPa以下であることが望ましい。
【0025】
更に、該PBT共重合体におけるセグメントは、ブロック型(ブロック型PBT共重合体)及びランダム型(ランダム型PBT共重合体)のどちらで構成されてもよい。
【0026】
即ち、上記PBT共重合体がブロック型であるときは、市場での入手性及び低温時の柔軟性などの面から、ハードセグメントをPBT、ソフトセグメントをポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリエーテル、エチレンアジペート、ブチレンアジペート等のアジピン酸エステル、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン及び脂肪族ポリカーボネート等のポリエステルなどとすることができる。
代表的には、低温から高温までの物性の安定性、加工性及びしなやかさの面から、PBTをハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマーを用いることが好ましい。このとき、上記ポリエーテルはポリテトラメチレングリコールであることがより好ましい。
また、同様の理由から、PBTをハードセグメントとし、ポリエステルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エステル共重合体エラストマーを用いることが好ましい。このとき、上記ポリエステルはポリカプロラクトンであることがより好ましい。
【0027】
一方、上記PBT共重合体がランダム型であるときは、ブロック型に比べて、重合工程の1つを省略できる面から、ジカルボン酸成分及びグリコール成分を主たる成分として含むことが好ましい。
代表的には、上記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と水素添加ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体を含み、上記グリコール成分として1,4−ブタンジオールを含むPBT共重合体であることが好ましい。また、上記水素添加ダイマー酸の共重合組成は、全酸成分に対して3〜30モル%の割合であることが好ましく、低温でのしなやかさが得られ、加工性を向上できる。この範囲外であるとチューブ成形後に十分なしなやかさが得られないことや、十分な“腰”が得られないことがある。更に、上記1,4−ブタンジオールは、分子量を向上させる面から70モル%以上使用することが望ましい。
【0028】
また、上記エステル形成性誘導体としてはテレフタル酸ジメチル等を例示できる。更に、上記水素添加ダイマー酸は、不飽和脂肪酸を粘度触媒を用いて低重合体から分離及び水素添加し、トリマー酸やモノマー酸等の副生成物を除去した後に得られる。このとき水素添加ダイマー酸の純度は99%以上であることが望ましい。
なお、上記酸成分の他の例としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、セバシン酸及びアジピン酸等の芳香族若しくは脂肪族等が挙げられ、これらは適宜併用することもできる。
【0029】
上述のように、上記PBT共重合体がブロック型、ランダム型のいずれであっても、燃料遮断層材料と被覆層材料との溶融温度が近いため、同一クロスヘッドを用いて樹脂製チューブを押出し成形することが容易である。また、燃料遮断層と被覆層との間に混和性を有するため、層間に高い接着性を付与することができる。
【0030】
なお、上述した燃料遮断層及び被覆層の構成材料は、特別なものである必要はなく市場で容易に入手できるものを使用できる。また、適宜要求に応じて、耐熱性や耐加水分解性を付与したり、フィラーなどを混入して導電性を付与したり、無機材料等を混入して強化することなどができる。
【0031】
また、各層の層厚比率は特に限定されず、所望の厚さ比率で適宜樹脂製チューブを製造可能である。特に、押出し成形で製造するときの安定性からは、上記各層の層厚が、全層厚(樹脂製チューブの厚さ)に対して10%以上であることが望ましく、且つ燃料遮断層の保護としての面から、及び適度な柔軟性維持の面から、被覆層の層厚保割合は全層厚に対して、40〜90%の割合であることが望ましい。
例えば、図2に示すような3層構成のチューブでは、内層側から0.1mm、0.3mm、0.6mmのような層構成をとることができる。なお、樹脂製チューブの外径は、流通媒体の種類により異なるが、代表的には3〜20mm程度である。
【0032】
更に、高い混和性を有する材料を組合せて構成したため、チューブ成形時に接着剤を必要としないばかりでなく、極めて容易に再利用することができる。
例えば、製造工程中に出る端材や不要となった燃料チューブは、各層を分離することなく同時に粉砕し再溶融して、所望の樹脂部品に再利用することが可能である。
【0033】
更にまた、本発明の樹脂製チューブにおいて、上記PBT共重合体を構成するテレフタル酸ユニットの少なくとも一部を、ナフタレンジカルボン酸ユニットに置換することができる。この場合、共重合体の溶解度係数が高くなり、PPSを主成分とする樹脂層やPBTを主成分とする樹脂層との接着性がより向上し得るとともに、燃料遮断性が向上し得る。また、ナフタレンジカルボン酸ユニットの混入量に応じて共重合体の溶解度係数をPPSに近づけたり、燃料遮断性を向上し得るため、混入量を所望の特性に応じて適宜調整することがよい。なお、テレフタル酸ユニットの全てをナフタレンジカルボン酸に置換するとPBN共重合体となり、このとき接着性及び燃料遮断性は特に優れる。また、上記ナフタレンジカルボン酸としては、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸やナフタレン−2,5−ジカルボン酸などを用いることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[性能評価方法]
以下の実施例1,2、比較例1〜3及び参考例1〜5に示す層構成で、積層チューブ(比較例2のみ単層)を成形し、成形物から1インチ幅の試験片を採取し、JIS−K6301の180°剥離試験を行った。
また、積層チューブと同一構成の材料を平板状に押出し、その押出し物を用いて耐透過性能試験を行った。ここで、耐透過性能は、φ70mmの円盤状に打ち抜いた試料に、ガソリン若しくは含アルコール燃料が60℃雰囲気下且つ規定時間後で透過する量により測定した。これらの結果を表1に示す。
なお、ガソリンは市販のレギュラーガソリンを用い、含アルコール燃料はこのレギュラーガソリン90体積部とエタノール10体積部を混合したものを用いた。また、表1中の◎、○、△及び×は、比較例1の結果を○としたときの相対評価であり、◎はこれよりも優れていたもの、○は同等のもの、△は若干劣るもの、×は著しく劣るものを示す。
【0036】
(参考例1)
内層にPPS樹脂(東レ株式会社製;A670X01)、外層にPBT共重合体(ポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマー、東レ・デュポン株式会社製;ハイトレル5577)を体積比率3:7で押出し、本例の樹脂製チューブ(押出し外径8mm、内径6mm)及び平板(1mm厚さ)を得た。
【0037】
(参考例2)
外層のPBT共重合体を他のPBT共重合体(ポリエステル・エステルブロック共重合体エラストマー、東洋紡株式会社製;ペルプレンS−3001)にした以外は、参考例1と同様の操作を繰返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0038】
(参考例3)
外層のPBT共重合体を他のPBT共重合体(ランダム型ポリエステル共重合体、カネボウ合繊株式会社製;ペルプレンP02121)にした以外は、参考例1と同様の操作を繰返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0039】
(実施例1)
内層のPPSをPPS及びPBT共重合体の混合物(重量比率90:10)にした以外は、参考例1と同様の操作を繰返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0040】
(参考例4)
中間層のPPSの内周に内層としてPBT共重合体(ポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマー、東レ・デュポン株式会社製;ハイトレル7277)を積層し、内層:中間層:外層を体積比率1:3:6にした以外は、参考例1と同様の操作を繰返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0041】
(参考例5)
中間層のPPSの内周に内層としてPBT共重合体(自社試作品)を積層し、内層:中間層:外層を体積比率1:3:6にした以外は、参考例1と同様の操作を繰返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0042】
(実施例2)
内層側から、最内層としてPBT共重合体(ポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマー、東レ・デュポン株式会社製;ハイトレル5577)、内層としてPPS(東レ株式会社製;A670X01)、中間層としてPBT共重合体(ポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマー、東レ・デュポン株式会社製;ハイトレル5577)、外層としてPBT(カネボウ合繊株式会社製:PBT719)、最外層としてPBT共重合体(ポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマー、東レ・デュポン株式会社製:ハイトレル5577)を積層し、最内層:内層:中間層:外層:最外層を体積比率1:1:1:3:4にした以外は、参考例1と同様の操作を繰返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0043】
(比較例1)
内層にエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、中間層にETFEとポリアミド12(PA12)の混合物、外層にPA12を用い、内層:中間層:外層の体積比率=1.5:1.5:7で押出し、本例の樹脂製チューブ(押出し外径8mm、内径6mm)及び、平板(1mm厚さ)を得た。なお、剥離強度は内層と中間層の界面での測定結果である。
【0044】
(比較例2)
ポリアミド11(PA11)のみにより本例の樹脂製チューブ、即ち単層チューブ(押出し外径8mm、内径6mm)及び平板(1mm厚さ)を得た。
【0045】
(比較例3)
外層のPBT共重合体をPBT(5201−X10)にした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の樹脂製チューブ及び平板を得た。
【0046】
【表1】
Figure 0003606213
【0047】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1,2で得られた樹脂製チューブは、いずれも比較例1〜3に対して優れた特性(耐透過性能、剥離強度)が測定された。特に、剥離強度については、測定が極めて困難なものもあり、実施例で得られた樹脂製チューブに係る材料が特別な接着工程を必要とせずに優れた接着性を有することが理解できる。
【0048】
以上、本発明を実施例により詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨内であれば種々の変形が可能である。
例えば、本発明に使用される各層の材料樹脂には、酸化防止剤や熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル及びホスファイト類、又はこれらの任意の混合物やこれらの置換体等)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノン等)、滑剤や離型剤(シリコン樹脂、モンタン酸及びこれらの塩、ステアリン酸及びこれらの塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド等)、染料(ニトロシン等)や顔料(硫化カドミウムやフタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤添着液(シリコンオイル等)、及び結晶核剤(タルクやカオリン等)などを単独又は適宜組合せて添加することができる。
また、樹脂製チューブの断面形状は、代表的には円形又は楕円形であるが、これら以外の断面形状であってもよい。更に、各層の材料を用いた積層体をチューブ以外の形状、例えば雨どいのような形状やシート形状で使用しても、耐透過性等が得られることは言うまでもない。更にまた、樹脂製チューブは、押出し成形により容易に製造できるブロー成形、コルゲート形状の付与(蛇腹化)等も適用できる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、所定の樹脂を用いた積層構造とすることとしたため、通常のガソリンの他に含アルコール燃料に対しても低い透過性を有し、バリア層(燃料遮断層)と被覆層(燃料遮断層を保護する層)との接着性が十分高く、端材等の再利用が容易で安価な材料構成である樹脂製チューブを提供することができる。
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂製チューブの一例(2層構造)を示す概略図である。
【図2】樹脂製チューブの一例(3層構造)を示す概略図である。
【図3】樹脂製チューブの一例(5層構造)を示す概略図である。
【符号の説明】
10、20、30 樹脂製チューブ
2a、2b 燃料遮断層
3a、3b、3c 被覆層

Claims (10)

  1. 二以上の樹脂層が、管状に積層されて成る樹脂製チューブであって、
    少なくとも1層がポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層であり、前記以外の層がポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層であり、
    上記ポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層のうち、上記ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層と接触する層が、更にポリフェニレンサルファイドを含んで成ることを特徴とする樹脂製チューブ。
  2. 二以上の樹脂層が、管状に積層されて成る樹脂製チューブであって、
    少なくとも1層がポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層であり、前記以外の層がポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層であり、
    上記ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層が、更にポリブチレンテレフタレート共重合体を含んで成ることを特徴とする樹脂製チューブ。
  3. 三以上の樹脂層が、管状に積層されて成る樹脂製チューブであって、
    少なくとも1組の互いに接しないポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂層とポリブチレンテレフタレートを主成分とする樹脂層を有し、且つ前記以外の層がポリブチレンテレフタレート共重合体を主成分とする樹脂層で構成されていることを特徴とする樹脂製チューブ。
  4. 上記ポリブチレンテレフタレート共重合体が、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリエーテルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エーテルブロック共重合体エラストマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の樹脂製チューブ。
  5. 上記ポリエーテルがポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする請求項4記載の樹脂製チューブ。
  6. 上記ポリブチレンテレフタレート共重合体が、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ポリエステルをソフトセグメントとして成るポリエステル・エステルブロック共重合体エラストマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の樹脂製チューブ。
  7. 上記ポリエステルがポリカプロラクトンであることを特徴とする請求項6記載の樹脂製チューブ。
  8. 上記ポリブチレンテレフタレート共重合体が、酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と水素添加ダイマー酸又はそのエステル形成性誘導体とを含み、グリコール成分として1,4−ブタンジオールを含む共重合ポリエステルを主たる構成成分として成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の樹脂製チューブ。
  9. 上記水素添加ダイマー酸の共重合組成が、全酸成分に対して3〜30モル%の割合であることを特徴とする請求項8記載の樹脂製チューブ。
  10. 上記ポリブチレンテレフタレート共重合体を構成するテレフタル酸ユニットの少なくとも一部が、ナフタレンジカルボン酸ユニットに置換されて成ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の樹脂製チューブ。
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