JP3604566B2 - 沸騰水型原子力発電所の給水制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、沸騰水型原子力発電所の原子炉に供給する給水流量を制御するための沸騰水型原子力発電所の給水制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
沸騰水型原子力発電所では、原子炉へ供給する給水流量を原子炉給水ポンプで調整している。原子炉給水ポンプは、2台のタービン駆動給水ポンプ(T/DRFP)と2台の電動機駆動給水ポンプ(M/DRFP)とで構成され、これら原子炉給水ポンプは給水制御装置により、原子炉水位が一定に維持されるように制御される。
【0003】
プラント出力が50%以上における運転状態では、原子炉給水ポンプは、蒸気を駆動源とするT/DRFP2台で運転される。そして、T/DRFPの駆動蒸気は、原子炉から発生する蒸気を分岐して使用している。
【0004】
この状態で、いま、原子炉スクラムが発生したとすると、原子炉出力は急激で大幅な出力低下となる。そして、原子炉水位は全制御棒挿入による炉内のボイドの減少により急激に低下することとなる。このため、給水制御装置はこれを補償するよう運転中の2台のT/DRFPへ給水流量増加指令を出力する。これにより、原子炉への給水流量が増加し原子炉水位は所定の水位に維持される。
【0005】
この場合、原子炉スクラムなどの出力低下時であっても復水流量は減少することはないので、給水流量の制限を考慮する必要はなく、原子炉水位を安定に制御するまでT/DRFPによる給水を行っている。
【0006】
その後、原子炉からの発生蒸気が減少することから、蒸気を駆動源とするT/DRFPは運転継続できなくなる。このため、運転員の判断により手動操作で、T/DRFPからM/DRFPへ運転を切り替えている。すなわち、T/DRFP1台およびM/DRFP2台運転となる。このように、従来は復水流量が原子炉出力により変動しないため、給水制限をかける必要がなく、そのため原子炉水位は水位変動を伴いながら、給水ポンプの切替で制御していた。
【0007】
また、原子炉水位の水位制御モードは、通常状態では原子炉水位、主蒸気流量、給水流量の三要素を用いて三要素制御されているが、原子炉スクラム時などでは運転員の判断により、三要素制御から原子炉水位の単要素による単要素制御に切り替えていた。これは、原子炉スクラム時には主蒸気流量と給水流量との間に大きなアンバランスが生じるからである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、抽気蒸気のドレン水を復水系に戻すドレンポンプアップシステムを採用したプラントでは、原子炉スクラムなどの出力低下時に給水に必要な復水流量を確保できない場合がある。
【0009】
すなわち、給水加熱器に主蒸気流量の一部を流用し、給水加熱器を通った蒸気をタンクで冷やしてドレン水として一時保管し、ドレンポンプにて復水系に戻すドレンポンプアップシステムを採用したプラントでは、従来の復水ポンプとこのドレンポンプとで100%復水流量を確保している。
【0010】
つまり、ドレンポンプは原子炉からの発生蒸気のドレンを水源としているため、大幅な原子炉の出力低下事象(例えば原子炉スクラム)が発生した場合は、このドレンが喪失することから、ドレンポンプからの供給流量は期待できなくなり、復水ポンプのみの復水能力で復水流量を供給することとなる。
【0011】
そのため、ドレンポンプアップシステム採用プラントでは、大幅な出力低下事象が発生した場合の復水流量の減少を考慮して、給水ポンプに対する流量要求を制限する必要がある。
【0012】
また、T/DRFPを採用しているプラントにおいて、原子炉の出力低下により駆動蒸気が減少するため、原子炉スクラムなどの急激な大幅出力低下事象においては短時間のうちにT/DRFPからM/DRFPへ切り替えることを運転員の判断により実施している。特に、原子炉スクラム時などは種々の操作および監視項目があり運転員の負担が大きい状況にある。
【0013】
また、給水ポンプ切り替えにおいて、T/DRFP1台目トリップ後には、T/DRFP1台およびM/DRFP2台運転となるが、ポンプ切替をするタイミングとして、既に原子炉水位が安定制御に移行することを確認してからポンプ切替を実施することになる。このため、給水流量は過流量となり、復水流量の量によっては給水ポンプ吸込圧力が低下して、給水ポンプ全台トリップとなる可能性がある。
【0014】
次に、原子炉スクラム時には、水位制御モードは運転員の判断により三要素制御から単要素制御へ切り替えられるが、緊急停止後は種々の操作および監視項目があり運転員の負担が大きい状況にある。
【0015】
本発明の目的は、原子炉の出力低下が発生した場合に運転員の負担を軽減し、適正に原子炉に給水流量を供給できる給水制御装置を得ることである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、通常運転時には原子炉水位が水位設定値に維持されるように主蒸気流量と給水流量との偏差を加味した三要素制御で、原子炉出力低下事象発生時には原子炉水位による単要素制御で、主制御器から原子炉給水ポンプに給水流量の流量要求信号を出力し、原子炉水位を制御するようにした沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを判定する出力低下事象判定手段と、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは前記原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出しその復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する復水流量判定手段と、前記復水流量判定手段で検出された復水流量に基づいて前記原子炉に供給可能な給水流量を算出し前記主制御器からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する流量要求制限器とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項1の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは、復水流量判定手段は原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出しその復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する。復水流量が減少しているときは、流量要求制限器はその復水流量に基づいて原子炉に供給可能な給水流量を算出し、主制御器からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する。
【0018】
請求項2の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、通常運転時には原子炉水位が水位設定値に維持されるように主蒸気流量と給水流量との偏差を加味した三要素制御で、原子炉出力低下事象発生時には原子炉水位による単要素制御で、主制御器から原子炉給水ポンプに給水流量の流量要求信号を出力して、原子炉水位を制御するようにした沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを判定する出力低下事象判定手段と、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは原子炉プロセス値が安定になりつつあるか否かを判定する原子炉プロセス監視手段と、前記原子炉プロセス監視手段により原子炉プロセス値が安定になりつつあると判定されたときは前記原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプから電動機駆動給水ポンプへの運転切り替えを行う給水ポンプ切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは、原子炉プロセス監視手段は原子炉プロセス値が安定になりつつあるか否かを判定し、原子炉プロセス監視手段により原子炉プロセス値が安定になりつつあると判定されたときは、給水ポンプ切替手段は原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプから電動機駆動給水ポンプへの運転切り替えを行う。
【0020】
請求項3の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、請求項2の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプの運転状態を監視するタービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段と、前記タービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段により前記タービン駆動給水ポンプがトリップしたと判定されたときは前記原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出しその復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する復水流量判定手段と、前記復水流量判定手段で検出された復水流量に基づいて前記原子炉に供給可能な給水流量を算出し前記主制御器からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する主制御器出力制限器とを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、請求項2の発明の作用に加え、原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプの運転状態をタービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段で監視し、タービン駆動給水ポンプがトリップしたと判定したときは、復水流量判定手段は原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出し、その復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する。そして、主制御器出力制限器は、復水流量判定手段で検出された復水流量に基づいて原子炉に供給可能な給水流量を算出し、主制御器からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する。
【0022】
請求項4の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、通常運転時には原子炉水位が水位設定値に維持されるように主蒸気流量と給水流量との偏差を加味した三要素制御で、原子炉出力低下事象発生時には原子炉水位による単要素制御で、主制御器から原子炉給水ポンプに給水流量の流量要求信号を出力して、原子炉水位を制御するようにした沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを判定する出力低下事象判定手段と、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは前記主蒸気流量および給水流量が通常状態より小さくなっているか否かを判定する原子炉プロセス監視手段と、前記原子炉水位が水位設定値であるか否かを判定する原子炉水位監視手段と、前記主蒸気流量および給水流量が通常状態より小さくなっており前記原子炉水位が水位設定値であるときは水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えると共に前記主制御器にその出力信号が安定になるように微調整実行指令信号を出力する水位制御モード切替指令手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項4の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは、原子炉プロセス監視手段では主蒸気流量および給水流量が通常状態より小さくなっているか否かを判定し、原子炉水位監視手段では原子炉水位が水位設定値であるか否かを判定する。そして、水位制御モード切替指令手段は、主蒸気流量および給水流量が通常状態より小さくなっており、かつ原子炉水位が水位設定値であるときは、水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えると共に、主制御器にその出力信号が安定になるように微調整実行指令信号を出力する。
【0024】
請求項5の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、請求項1の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは運転中の2台のタービン駆動給水ポンプのうち1台のタービン駆動給水ポンプをトリップさせる給水ポンプ運転台数制限指令手段を設けたことを特徴とする。
【0025】
請求項5の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、請求項1の発明の作用に加え、給水ポンプ運転台数制限指令手段は、出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは、運転中の2台のタービン駆動給水ポンプのうち1台のタービン駆動給水ポンプをトリップさせる。
【0026】
請求項6の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、請求項2の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、出力低下事象判定手段に代えて、原子炉スクラム信号により原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定する原子炉スクラム判定手段を設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項6の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、請求項2の発明において、出力低下事象判定手段に代わり、原子炉スクラム判定手段により、原子炉スクラム信号により原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定する。
【0028】
請求項7の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、請求項2の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、出力低下事象判定手段および原子炉プロセス監視手段に代えて、主蒸気隔離弁の全閉信号により原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定し前記給水ポンプ切替手段に原子炉給水ポンプの切替指令信号を出力する主蒸気流量喪失判定手段を設けたことを特徴とする。
【0029】
請求項7の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、請求項2の発明において、出力低下事象判定手段および原子炉プロセス監視手段に代わり、主蒸気流量喪失判定手段は、主蒸気隔離弁の全閉信号により原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定し、給水ポンプ切替手段に原子炉給水ポンプの切替指令信号を出力する。
【0030】
請求項8の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、請求項4の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、原子炉プロセス監視手段および原子炉水位監視手段に代えて、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは主蒸気流量と給水流量との偏差が零となったか否かを判定する原子炉プロセス監視切替判定手段を設け、前記水位制御モード切替指令手段は前記偏差が零になったときは水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えるようにしたことを特徴とする。
【0031】
請求項8の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、請求項4の発明において、原子炉プロセス監視手段および原子炉水位監視手段に代わり、原子炉プロセス監視切替判定手段は、出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは、主蒸気流量と給水流量との偏差が零となったか否かを判定する。そして、偏差が零になったときは、水位制御モード切替指令手段は水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替える。
【0032】
請求項9の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置は、請求項7の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、運転中のタービン駆動給水ポンプの給水能力を判定しその給水能力が制限値になったときは前記給水ポンプ切替手段に電動機駆動給水ポンプへの運転切替指令信号を出力するタービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段を備えたことを特徴とする。
【0033】
請求項9の発明に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置では、請求項7の発明において、タービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段は運転中のタービン駆動給水ポンプの給水能力を判定し、その給水能力が制限値になったときは給水ポンプ切替手段に電動機駆動給水ポンプへの運転切替指令信号を出力する。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。
【0035】
通常運転時においては、原子炉の水位制御モードは、原子炉水位L、主蒸気流量Qおよび給水流量Rの三要素制御であり、原子炉スクラム時などの出力低下事象発生時には原子炉水位Lによる単要素制御が採用される。
【0036】
水位設定器1には水位設定値L0が設定され、この水位設定値L0は原子炉水位Lと共に加算器2に出力される。一方、加算器2には、加算器3で求められた主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSが水位制御モード切替器4を介して入力される。水位制御モード切替器4は三要素制御と単要素制御を切り替えるものである。
【0037】
主制御器5は、原子炉水位Lとその水位設定値L0との水位偏差ΔLに、主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSを加味した加算器2の出力信号を入力し給水流量要求信号aを演算する。要求信号切替器6は後述の復水流量判定手段7からの切替指令信号bにより、給水流量要求信号aをそのまま出力するか流量要求制限器8を通して出力するかの切り替えを行う。
【0038】
次に、出力低下事象判定手段9は、原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを原子炉プロセス値cに基づいて判定する。例えば、原子炉内の中性子束の減少、原子炉から発生する主蒸気流量Qの減少、炉心流量の減少などから原子炉出力が低下していることを判定する。
【0039】
出力低下事象判定手段9により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは、復水器流量判定手段7は原子炉給水ポンプ入口の復水流量dを検出し、その復水流量dが通常状態より減少しているか否かを判定する。そして、その復水流量dが通常状態より減少しているときは、切替指令信号bを要求信号切替器6に出力し、給水流量要求信号aを流量要求制限器8に入力するように切り替える。また、流量要求制限器8は、復水流量dに基づいて原子炉に供給可能な給水流量を算出し、給水流量要求信号aに対しその供給可能な給水流量になるように制限を加える。
【0040】
このように原子炉のプロセス値に基づいて急激で大幅な原子炉出力の出力低下事象を検出し、その時に同時に原子炉の出力低下に伴い復水流量が減少していることを検知する。そして、原子炉出力の低下でありかつ復水流量が低下しているときは、復水流量が減少しているのは出力低下に伴うものであると判断できるため、その時の復水流量を検出して、復水流量以上に原子炉へ給水流量を供給しないよう運転中のタービン駆動給水ポンプ(T/DRFP)への給水流量要求信号aを制限する。
【0041】
これにより、急激な大幅な原子炉出力低下事象の発生時に運転中の原子炉給水ポンプの流量を制限することができ、給水流量を復水流量以下に制限することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図2は本発明の第2の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。
【0043】
通常運転時においては、原子炉の水位制御モードは、原子炉水位L、主蒸気流量Qおよび給水流量Rの三要素制御であり、原子炉スクラム時などの出力低下事象発生時には原子炉水位Lによる単要素制御が採用される。
【0044】
水位設定器1には水位設定値L0が設定され、この水位設定値L0は原子炉水位Lと共に加算器2に出力される。一方、加算器2には、加算器3で求められた主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSが水位制御モード切替器4を介して入力される。水位制御モード切替器4は三要素制御と単要素制御を切り替えるものである。
【0045】
主制御器5は、原子炉水位Lとその水位設定値L0との水位偏差ΔLに、主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSを加味した加算器2の出力信号を入力し給水流量要求信号aを演算する。この給水流量要求信号aは運転中の原子炉給水ポンプに出力される。
【0046】
出力低下事象判定手段9は、原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを原子炉プロセス値cに基づいて判定するものであり、例えば、原子炉内の中性子束の減少、原子炉から発生する主蒸気流量Qの減少、炉心流量の減少などから原子炉出力が低下していることを判定する。その判定の結果、原子炉出力の低下事象が発生していると判断した場合には、原子炉プロセス監視手段10が起動される。原子炉プロセス監視手段10は起動がかけられると、その時から原子炉プロセス値が安定になりつつあるか否かを監視する。
【0047】
原子炉プロセス監視手段10は、原子炉プロセス値として、原子炉水位L、給水流量R、主蒸気流量Qを監視する。そして、これら原子炉プロセス値がほぼ安定になりつつあると判断したときは、給水ポンプ切替手段11に切替開始信号eを出力する。給水ポンプ切替手段11は切替開始信号eを入力すると、運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ(T/DRFP)12A、12Bのうち、1台のタービン駆動給水ポンプ12Aに対してトリップ信号を出力する。
【0048】
その後、タービン駆動給水ポンプ12Aのトリップにより2台の電動機駆動給水ポンプ13A、13Bが起動する。給水ポンプ切替手段11は、2台の電動機駆動給水ポンプ13A、13Bが起動することを検出すると、残りのもう1台のタービン駆動給水ポンプ12Bに対してトリップ信号を出力する。
【0049】
このように、原子炉出力の低下があったときは、駆動蒸気(主蒸気流量Q)の影響を受けるタービン駆動給水ポンプ12からの給水流量が減少するので、駆動蒸気に影響を受けない電動機駆動給水ポンプ13を駆動することになる。この場合の電動機駆動給水ポンプ13の起動タイミングは、原子炉内プロセス値の中から原子炉水位L、給水流量R、主蒸気流量Qを監視して、各プロセス値が安定になっていることを確認することで判定される。
【0050】
これにより、原子炉の緊急停止後において、原子炉プロセス値が安定になっていることを確認の上、運転員の操作なしに自動でタービン駆動給水ポンプ12を電動機駆動給水ポンプ13に切り替えることが可能となる。
【0051】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図3は本発明の第3の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第3の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプ12A、12Bの運転状態を監視するタービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段14と、タービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段14によりタービン駆動給水ポンプ12A、12Bがトリップしたと判定されたときは原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出しその復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する復水流量判定手段7と、復水流量判定手段7で検出された復水流量に基づいて原子炉に供給可能な給水流量を算出し主制御器5からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する主制御器出力制限器15とを追加して設けたものである。
【0052】
通常運転時においては、原子炉の水位制御モードは、原子炉水位L、主蒸気流量Qおよび給水流量Rの三要素制御であり、原子炉スクラム時などの出力低下事象発生時には原子炉水位Lによる単要素制御が採用される。
【0053】
水位設定器1には水位設定値L0が設定され、この水位設定値L0は原子炉水位Lと共に加算器2に出力される。一方、加算器2には、加算器3で求められた主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSが水位制御モード切替器4を介して入力される。水位制御モード切替器4は三要素制御と単要素制御を切り替えるものである。
【0054】
主制御器5は、原子炉水位Lとその水位設定値L0との水位偏差ΔLに、主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSを加味した加算器2の出力信号を入力し給水流量要求信号aを演算する。この給水流量要求信号aは後述の主制御器出力制限器14を介して運転中の原子炉給水ポンプに出力される。
【0055】
出力低下事象判定手段9は、原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを原子炉プロセス値cに基づいて判定するものであり、例えば、原子炉内の中性子束の減少、原子炉から発生する主蒸気流量Qの減少、炉心流量の減少などから原子炉出力が低下していることを判定する。その判定の結果、原子炉出力の低下事象が発生していると判断した場合には、原子炉プロセス監視手段10が起動される。原子炉プロセス監視手段10は起動がかけられると、その時から原子炉プロセス値が安定になりつつあるか否かを監視する。
【0056】
原子炉プロセス監視手段10は、原子炉プロセス値として、原子炉水位L、給水流量R、主蒸気流量Qを監視する。そして、これら原子炉プロセス値がほぼ安定になりつつあると判断したときは、給水ポンプ切替手段11に切替開始信号eを出力する。給水ポンプ切替手段11は切替開始信号eを入力すると、運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ(T/DRFP)12A、12Bのうち、1台のタービン駆動給水ポンプ12Aに対してトリップ信号を出力する。
【0057】
その後、タービン駆動給水ポンプ12Aのトリップにより2台の電動機駆動給水ポンプ13A、13Bが起動する。給水ポンプ切替手段11は、2台の電動機駆動給水ポンプ13A、13Bが起動することを検出すると、残りのもう1台のタービン駆動給水ポンプ12Bに対してトリップ信号を出力する。
【0058】
タービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段14は、タービン駆動給水ポンプ12がトリップしたときに、復水流量判定手段7を起動してその時の復水流量を検出し、給水流量が復水流量以上にならないように主制御器5の出力に対して主制御器出力制限器15により制限を加える。つまり、主制御器5の出力信号を復水流量相当の信号以下に制限する。
【0059】
ここで、原子炉給水ポンプをタービン駆動給水ポンプ12A、12Bから電動機駆動給水ポンプ13A、13Bに切り替える際には、1台目のタービン駆動給水ポンプ12Aがトリップした後、一時的に1台のタービン駆動給水ポンプ12と2台の電動機駆動給水ポンプの運転となり、原子炉の出力低下に伴い減少した復水流量以上の給水流量の要求が原子炉給水ポンプより出る可能性がある。
【0060】
そこで、1台のタービン駆動給水ポンプ12と2台の電動機駆動給水ポンプ13の運転の状態となっているときの復水流量を復水流量判定手段7で検知し、検知した復水流量以上に給水流量要求が出ないよう主制御器出力を制限して、給水流量の増加を防止する。
【0061】
これにより、原子炉給水ポンプの切り替えにより、起動した電動機駆動給水ポンプ13A、13Bから急激な給水流量の増加がなく、不要な給水流量および原子炉水位変動を防止できる。
【0062】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図4は本発明の第4の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第4の実施の形態は、原子炉の水位制御モードを三要素制御から単要素制御に安定に切り替えができるようにしたものである。
【0063】
通常運転時においては、原子炉の水位制御モードは、原子炉水位L、主蒸気流量Qおよび給水流量Rの三要素制御であり、原子炉スクラム時などの出力低下事象発生時には原子炉水位Lによる単要素制御が採用される。
【0064】
水位設定器1には水位設定値L0が設定され、この水位設定値L0は原子炉水位Lと共に加算器2に出力される。一方、加算器2には、加算器3で求められた主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSが水位制御モード切替器4を介して入力される。水位制御モード切替器4は三要素制御と単要素制御を切り替えるものであり、後述の水位制御モード切替指令手段16からの切替指令信号fで切り替えられる。
【0065】
主制御器5は、原子炉水位Lとその水位設定値L0との水位偏差ΔLに、主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSを加味した加算器2の出力信号を入力し給水流量要求信号aを演算する。この主制御器5には、水位モード切替器4での三要素制御から単要素制御への切替の際に、水位制御モード切替指令手段16から主制御器出力が安定になるような微調整実行指令信号gが入力される。主制御器5の出力信号である給水流量要求信号aは運転中の原子炉給水ポンプに出力される。
【0066】
出力低下事象判定手段9は、原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを原子炉プロセス値cに基づいて判定するものであり、例えば、原子炉内の中性子束の減少、原子炉から発生する主蒸気流量Qの減少、炉心流量の減少などから原子炉出力が低下していることを判定する。その判定の結果、原子炉出力の低下事象が発生していると判断した場合には、原子炉プロセス監視手段10が起動される。原子炉プロセス監視手段10は起動がかけられると、その時に、主蒸気流量Qおよび給水流量Rが小さくなっているか否かを監視し主蒸気流量Qおよび給水流量Rが小さくなっているときは成立信号を原子炉水位監視手段17を介して水位制御モード切替指令手段16に出力する。
【0067】
また、原子炉水位監視手段17は、原子炉水位Lがその水位設定値L0に対してほぼ一致しているかどうかを監視し、原子炉水位Lがその水位設定値L0に対してほぼ一致しているときは成立信号を水位制御モード切替手段16に出力する。
【0068】
原子炉プロセス監視手段10からの成立信号と原子炉水位監視手段17からの成立信号が同時に成立したときに、水位制御モード切替指令手段16は水位モード切替器4に対して、水位制御モードを三要素側御から単要素制御に切り替えるよう切替指令信号fを出力する。
【0069】
また、水位制御モード切替指令手段16は、水位モード切替器4に切替指令信号fを出力するのと同時に、主制御器5に対して、主制御器出力が安定になるように微調整実行指令信号gを出力する。この微調整実行指令信号gを受けた主制御器5は、水位制御モードを切り替える際に、主制御器出力が瞬間的に変動することないように主制御器出力を積分器の値を瞬間的に調整する。
【0070】
このように、原子炉出力の大幅な出力低下事象においては、主蒸気流量Qおよび給水流量Rも減少するため、主蒸気流量Qおよび給水流量Rを監視し、主蒸気流量Qおよび給水流量Rが制御上使用することが困難と判断する領域をそれぞれのプロセス値から判定し、かつ原子炉水位Lがその水位設定値L0とほぼ一致していることで原子炉水位が安定に制御されていることを判断する。そして、双方の判定が成立したときに安定な水位制御を行うために三要素制御から単要素制御に水位制御モードを切り替える。
【0071】
また、水位制御モードを切り替える際に、主制御器5は入力信号が変わるため、主制御器出力が瞬間的に変動することが予想される。そのため、水位制御が不安定になることを防止するため、制御として安定に切り替えるよう主制御器出力を瞬間的に調整し、水位制御モード切替時には主制御器出力に瞬間的な変動が発生しないようにする。
【0072】
これにより、低出力領域での水位制御モードの切替の際に、三要素制御から単要素制御に安定に移行することが可能となる。
【0073】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図5は本発明の第5の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第5の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、出力低下事象判定手段9により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ12A、12Bのうち1台のタービン駆動給水ポンプをトリップさせる給水ポンプ運転台数制限指令手段18を設けたものである。その他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0074】
出力低下事象判定手段9は、原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを原子炉プロセス値cに基づいて判定する。例えば、原子炉内の中性子束の減少、原子炉から発生する主蒸気流量Qの減少、炉心流量の減少などから原子炉出力が低下していることを判定する。その判定した結果、出力低下事象である場合には、給水ポンプ運転台数制限指令手段18において、運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ12A、12Bのうちの1台に対してトリップ指令を出力し、かつ電動機駆動給水ポンプ13A、13Bの2台に対して自動起動阻止指令信号を出力し、1台のタービン駆動給水ポンプ12の運転とする。
【0075】
このように、原子炉出力の低下およびそれに伴う復水流量の減少を検出して、その時の復水流量以下になるようにする。その際に、タービン駆動給水ポンプ12の流量要求を制限するのではなく、運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ12のうち、1台のタービン駆動給水ポンプ12をトリップさせる。
【0076】
これにより、急激な大幅出力低下事象発生時に運転中の原子炉給水ポンプの流量を制限することができ、給水流量を復水流量以下に制限することができる。
【0077】
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。図6は本発明の第6の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第6の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、出力低下事象判定手段9に代えて、原子炉スクラム信号hにより原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定する原子炉スクラム判定手段19を設けたものである。その他の構成は、図2に示した第2の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付しその説明は省略する。
【0078】
原子炉スクラム判定手段19は、原子炉スクラム信号hを受けて原子炉出力が低下していることを判定する。その判定した結果、その時から原子炉プロセス監視手段10は原子炉プロセス値が安定になりつつあるか否かを監視する。原子炉プロセス監視手段10は、原子炉プロセス値がほぼ安定になりつつあると判断したときに、給水ポンプ切替手段11に切替開始信号を出力し、それを受けた給水ポンプ切替手段11は運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ12A、12Bのうち、1台のタービン駆動給水ポンプ12Aに対してトリップ信号を出力する。その後、1台のタービン駆動給水ポンプ12Aのトリップにより電動機駆動給水ポンプ13が起動するため、この電動機駆動給水ポンプ13の起動状態を給水ポンプ切替手段11は監視し、電動機駆動給水ポンプ13が起動したことを確認した上で、残りのもう1台のタービン駆動給水ポンプ12Bに対してトリップ信号を出力する。
【0079】
このように、原子炉出力の急激な大幅出力低下事象を判定する信号として、原子炉プロセス値ではなく、原子炉スクラム信号hにより判定し、原子炉スクラム信号hが入力されたときに、タービン駆動給水ポンプ12から電動機駆動給水ポンプ13に原子炉給水ポンプを切り替える。
【0080】
これにより、原子炉出力の急激な大幅出力低下事象が発生したときに、運転員の操作なしに原子炉水位の回復を確認の上で、自動で2台のタービン駆動給水ポンプ12A、12Bを電動機駆動給水ポンプ13に切り替えることが可能となる。
【0081】
次に、本発明の第7の実施の形態を説明する。図7は本発明の第7の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第7の実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対し、出力低下事象判定手段9および原子炉プロセス監視手段10に代えて、主蒸気隔離弁の全閉信号iにより原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定し給水ポンプ切替手段11に原子炉給水ポンプの切替指令信号を出力する主蒸気流量喪失判定手段20を設けたものである。その他の構成は、図2に示した第2の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付しその説明は省略する。
【0082】
主蒸気流量喪失判定手段20は、主蒸気隔離弁の全閉信号iを受けて、主蒸気流量が喪失したことを確認する。主蒸気流量喪失判定手段20は、給水ポンプ切替手段11に切替開始信号を出力し、それを受けた給水ポンプ切替手段11は運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ12A、12Bのうちの1台のタービン駆動給水ポンプ12Aに対してトリップ信号を出力する。その後、1台のタービン駆動給水ポンプ12Aのトリップにより電動機駆動給水ポンプ13が起動するため、この電動機駆動給水ポンプ13の起動状態を給水ポンプ切替手段11は監視し、電動機駆動給水ポンプ13が起動したことを確認した上で、残りのもう1台のタービン駆動給水ポンプ12Bに対してトリップ信号を出力する。
【0083】
原子炉出力の急激な大幅出力低下事象として、原子炉出力の出力低下よりもタービン駆動給水ポンプ12の駆動蒸気の減少が早い事象では、原子炉給水ポンプの切替タイミングを変える必要がある。そのため、急激な大幅出力低下事象のうち、タービン駆動給水ポンプ12の駆動蒸気の減少がさらに早い事象として、主蒸気隔離弁の全閉により出力低下を判定し、主蒸気隔離弁の全閉信号iが入力されたときに、タービン駆動給水ポンプから電動機駆動給水ポンプに切り替える。
【0084】
これにより、タービン駆動給水ポンプの駆動蒸気が短時間で喪失する事象である主蒸気隔離弁の全閉による場合でも、運転員の操作なしに自動で2台のタービン駆動給水ポンプを速やかに電動機駆動給水ポンプ13に切り替えることが可能となる。
【0085】
次に、本発明の第8の実施の形態を説明する。図8は本発明の第8の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第8の実施の形態は、図4に示した第4の実施の形態に対し、原子炉プロセス監視手段10および原子炉水位監視手段17に代えて、出力低下事象判定手段9により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSが零となったか否かを判定する原子炉プロセス監視切替判定手段21を設け、水位制御モード切替指令手段16は主蒸気流量Qと給水流量Rとの偏差ΔSが零になったときは水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えるようにしたものである。
【0086】
出力低下事象判定手段9は、原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを原子炉プロセス値cに基づいて判定するものであり、例えば、原子炉内の中性子束の減少、原子炉から発生する主蒸気流量Qの減少、炉心流量の減少などから原子炉出力が低下していることを判定する。その判定の結果、原子炉出力の低下事象が発生していると判断した場合には、原子炉プロセス監視切替判定手段21が起動される。原子炉プロセス監視切替判定手段21は起動がかけられると、その時に、主蒸気流量Qと給水流量Rの偏差ΔSが小さくなっているか否かを監視し、偏差ΔSが零となったときに、水位制御モード切替指令手段16は水位モード切替器4に対して、水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えるよう切替指令信号fを出力する。
【0087】
このように、原子炉内のプロセス値として、主蒸気流量Qと給水流量Rとが一致していることを確認したときに、三要素制御から単要素制御に切り替える。これは、三要素制御から単要素制御に切り替える場合、主蒸気流量Qと給水流量Rが一致していれば、単要素制御に切り替えても主制御器出力が瞬間的に変動することはないためである。つまり、原子炉プロセス値として、主蒸気流量Qと給水流量Rとが一致していること監視することで安定な水位制御モードの切替が可能となる。これにより、低出力領域での水位制御モードの切替の際の三要素制御から単要素制御に安定に移行することが可能となる。
【0088】
次に、本発明の第9の実施の形態を説明する。図9は本発明の第9の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図である。この第9の実施の形態は、図7に示した第7の実施の形態に対し、運転中のタービン駆動給水ポンプ12の給水能力を判定しその給水能力が制限値になったときは給水ポンプ切替手段11に電動機駆動給水ポンプ13への運転切替指令信号を出力するタービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段22を設けたものである。その他の構成は、図7に示した第7の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付しその説明は省略する。
【0089】
主蒸気流量喪失判定手段20は、タービン駆動給水ポンプ12の駆動蒸気が喪失したことを主蒸気隔離弁の全閉で検出したときには、給水ポンプ切替手段11に切替開始信号を出力する。それを受けた給水ポンプ切替手段11は運転中の2台のタービン駆動給水ポンプ12A、12Bのうち、1台のタービン駆動給水ポンプ12Aに対してトリップ信号を出力する。その後、タービン駆動給水ポンプ12Aのトリップにより電動機駆動給水ポンプ13が起動するため、この電動機駆動給水ポンプ13の起動状態を給水ポンプ切替手段11は監視し、電動機駆動給水ポンプ13が起動したことを確認した上で、残りのもう1台のタービン駆動給水ポンプ12Bに対してトリップ信号を出力する。
【0090】
この場合、タービン駆動給水ポンプ12はその駆動蒸気がなくなると、給水することができなくなる。そこで、タービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段22は、タービン駆動給水ポンプ12の給水流量を監視し、給水流量が減少しタービン駆動給水ポンプ12の給水能力の低下を検出したときは、給水ポンプ切替手段11に対し、タービン駆動給水ポンプ12から電動機駆動給水ポンプ13への切替指令信号を出力する。
【0091】
タービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段22における監視方法として、タービン駆動給水ポンプ12の回転数が起動時の最低回転数を下回ったことにより判定する方法、あるいは、タービン駆動給水ポンプ12の回転数とその回転数指令値との偏差が大きくなったことにより判定する方法などを用いる。
【0092】
これにより、何らかの理由でタービン駆動給水ポンプ12の駆動蒸気が喪失し、タービン駆動給水ポンプ12としての給水能力がなくなる事象が発生しても、電動機駆動給水ポンプに切り替えることでその後も運転継続することが可能となる。
【0093】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、沸騰水型原子力発電所の緊急停止が発生した後、原子炉へ供給する給水流量を制限できるため、復水流量を供給能力範囲内に収めることが可能となる。従って、全給水喪失事象を回避でき、運転する給水ポンプをプラント出力に見合った給水ポンプに自動的に切替えることができる。
【0094】
また、その切替え時に給水流量の不要な増加を防止でき、その後の水位制御を安定に行うために水位制御モードを自動的に切替えることができる。つまり、緊急停止発生時の適切な水位制御が可能な沸騰水型原子力発電所の給水制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【図9】本発明の第9の実施の形態に係わる沸騰水型原子力発電所の給水制御装置のブロック構成図。
【符号の説明】
1 水位設定器
2、3 加算器
4 水位モード切替器
5 主制御器
6 要求信号切替器
7 復水流量判定手段
8 流量要求制限器
9 出力低下事象判定手段
10 原子炉プロセス監視手段
11 給水ポンプ切替手段
12 タービン駆動給水ポンプ
13 電動機駆動給水ポンプ
14 タービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段
15 主制御器出力制限器
16 水位制御モード切替指令手段
17 原子炉水位監視手段
18 給水ポンプ運転台数制限指令手段
19 原子炉スクラム判定手段
20 主蒸気流量喪失判定手段
21 原子炉プロセス監視切替判定手段
22 タービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段
Claims (9)
- 通常運転時には原子炉水位が水位設定値に維持されるように主蒸気流量と給水流量との偏差を加味した三要素制御で、原子炉出力低下事象発生時には原子炉水位による単要素制御で、主制御器から原子炉給水ポンプに給水流量の流量要求信号を出力し、原子炉水位を制御するようにした沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを判定する出力低下事象判定手段と、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは前記原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出しその復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する復水流量判定手段と、前記復水流量判定手段で検出された復水流量に基づいて前記原子炉に供給可能な給水流量を算出し前記主制御器からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する流量要求制限器とを備えたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 通常運転時には原子炉水位が水位設定値に維持されるように主蒸気流量と給水流量との偏差を加味した三要素制御で、原子炉出力低下事象発生時には原子炉水位による単要素制御で、主制御器から原子炉給水ポンプに給水流量の流量要求信号を出力して、原子炉水位を制御するようにした沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを判定する出力低下事象判定手段と、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは原子炉プロセス値が安定になりつつあるか否かを判定する原子炉プロセス監視手段と、前記原子炉プロセス監視手段により原子炉プロセス値が安定になりつつあると判定されたときは前記原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプから電動機駆動給水ポンプへの運転切り替えを行う給水ポンプ切替手段とを備えたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 請求項2の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉給水ポンプのうちタービン駆動給水ポンプの運転状態を監視するタービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段と、前記タービン駆動給水ポンプ運転状態監視手段により前記タービン駆動給水ポンプがトリップしたと判定されたときは前記原子炉給水ポンプ入口の復水流量を検出しその復水流量が通常状態より減少しているか否かを判定する復水流量判定手段と、前記復水流量判定手段で検出された復水流量に基づいて前記原子炉に供給可能な給水流量を算出し前記主制御器からの流量要求信号をその供給可能な給水流量に制限する主制御器出力制限器とを備えたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 通常運転時には原子炉水位が水位設定値に維持されるように主蒸気流量と給水流量との偏差を加味した三要素制御で、原子炉出力低下事象発生時には原子炉水位による単要素制御で、主制御器から原子炉給水ポンプに給水流量の流量要求信号を出力して、原子炉水位を制御するようにした沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記原子炉出力が低下する事象が発生しているか否かを判定する出力低下事象判定手段と、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは前記主蒸気流量および給水流量が通常状態より小さくなっているか否かを判定する原子炉プロセス監視手段と、前記原子炉水位が水位設定値であるか否かを判定する原子炉水位監視手段と、前記主蒸気流量および給水流量が通常状態より小さくなっており前記原子炉水位が水位設定値であるときは水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えると共に前記主制御器にその出力信号が安定になるように微調整実行指令信号を出力する水位制御モード切替指令手段とを備えたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 請求項1の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは運転中の2台のタービン駆動給水ポンプのうち1台のタービン駆動給水ポンプをトリップさせる給水ポンプ運転台数制限指令手段を設けたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 請求項2の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、出力低下事象判定手段に代えて、原子炉スクラム信号により原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定する原子炉スクラム判定手段を設けたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 請求項2の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、出力低下事象判定手段および原子炉プロセス監視手段に代えて、主蒸気隔離弁の全閉信号により原子炉出力の低下する事象が発生していることを判定し前記給水ポンプ切替手段に原子炉給水ポンプの切替指令信号を出力する主蒸気流量喪失判定手段を設けたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 請求項4の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、原子炉プロセス監視手段および原子炉水位監視手段に代えて、前記出力低下事象判定手段により原子炉出力が低下する事象が発生したと判定されたときは主蒸気流量と給水流量との偏差が零となったか否かを判定する原子炉プロセス監視切替判定手段を設け、前記水位制御モード切替指令手段は前記偏差が零になったときは水位制御モードを三要素制御から単要素制御に切り替えるようにしたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
- 請求項7の沸騰水型原子力発電所の給水制御装置において、運転中のタービン駆動給水ポンプの給水能力を判定しその給水能力が制限値になったときは前記給水ポンプ切替手段に電動機駆動給水ポンプへの運転切替指令信号を出力するタービン駆動給水ポンプ給水能力判定手段を備えたことを特徴とする沸騰水型原子力発電所の給水制御装置。
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