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JP3603614B2 - 熱電対 - Google Patents

熱電対 Download PDF

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JP3603614B2
JP3603614B2 JP26156398A JP26156398A JP3603614B2 JP 3603614 B2 JP3603614 B2 JP 3603614B2 JP 26156398 A JP26156398 A JP 26156398A JP 26156398 A JP26156398 A JP 26156398A JP 3603614 B2 JP3603614 B2 JP 3603614B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,鉄等の金属の溶湯を測温する保護管を備えた金属溶湯測温用熱電対に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,約1700℃の製鋼溶湯を測温するための熱電対は,材料として比較的に融点が高く,大気中で安定であるPt−Rhを素線とし,該Pt−Rh素線をアルミナシリカファイバー製のパイプに固定した構造のものが使用されている。このような熱電対は,製鋼溶湯の測温を約1〜2回程度行った後に,正確な温度の測定が不能となり,廃棄しているのが現状であり,熱電対を多数回にわたって反復利用できずに熱電対そのものが極めて高価なものになっている。
【0003】
また,熱電対として.保護管をサーメットを材料として作製し,該保護管の内部にPt−Rh線或いはW−Re素線を内包した構造のものが知られている。
【0004】
また,特開平6−160200号公報には,気密端子付シース型熱電対が開示されている。該熱電対は,過渡的な温度変化等により,端子部に温度勾配が生じても測定誤差を生じさせないものであり,アルメル線とクロメル線の異種金属線からなる熱電対素線をステンレス製シース内に無機絶縁材と共に,相互に絶縁して収納し,シースの基端側を気密端子部により気密に封止する。気密端子部のセラミック端板に取り付けられた2本のコパール製の貫通パイプの内部に絶縁スリーブが挿入され,各熱電対素線はその内部を通って貫通パイプと直接接触せずに外部に引き出されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら.サーメット保護管の耐熱衝撃性はSi保護管の1.5倍の強度であり,また,Si保護管の熱電対を1700℃を越える鉄溶湯に直接浸した場合には,比較的に短時間のうちに保護管に亀裂等が発生し,破損に至る。また,Pt−Rh熱電対は,不活性ガス雰囲気での使用はできず,大気中での使用可能温度は1500℃が限界温度であり,例えば,鉄溶湯の測温では,保証温度の上限を越えており,正確な温度測定ができない上,融点近傍の温度であり寿命が短いという問題がある。Pt−Rh素線を用いたPR熱電対の熱起電力は,CA熱電対の約1/15であり,W−Re熱電対の約1/7と小さいため,それらの熱電対に比較して測温の精度が劣り,応答性が悪いという問題を有している。そのため,現場においては,溶鉱炉の溶湯を測温するため,作業者は溶解炉の近傍で温度が安定するまでの約8秒間,その測定場所に居ることを余儀なくされる。
【0006】
特に,熱電対の保護管を積層構造に構成した場合には,保護管における熱の伝わりが悪く,応答性が遅いという問題がある。ところで,W−Re熱電対は,大気中及び不活性ガス雰囲気中での使用が可能であり,大気中での使用可能温度は400℃が限界温度であり,不活性ガス雰囲気中での使用可能温度は2300℃が限界温度である。
【0007】
また,従来の熱電対は,溶湯の測温に際して,鉄の溶湯が付着し易く,応答性が悪いという問題を有している。熱電対のPt−Rh素線や保護管に,溶湯の鋳鉄が付着し,それを除去するための工程は煩雑になり,しかも現行品は寿命が2回程度の測温であり,熱電対の交換作業も手間がかかるという問題がある。また,熱電対におけるW−Re素線は,大気中では酸化し易く,鋳鉄溶湯の温度測定には使用できないものである。しかも,外側の保護管には,鉄溶湯が付着し易いという問題を有している。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決するため,応答性を良好にし且つ耐久性を向上させ,金属素線として融点が2300℃以上のタングステン−レニウム線を使用し,保護管の先端の受熱部を鉄と反応し難い材料のモリブデン基(Mo)を母相とした高熱伝導率の材料から成る内管を構成し,該内管の外側に耐熱性で低熱伝導率のAl,カーボン等の材料から成る積層構造の外管を配置し,多数回の反復使用を可能にした熱電対を提供することである。
【0009】
この発明は,先端に受熱部を備えた保護管,該保護管内に充填された耐熱性材料から成る充填材,及び該充填材中に配置され且つ端部が結線された測温部を構成する異なる組成の一対の金属素線から成る熱電対において,前記保護管は緻密質で高熱伝導率の材料から成る内管と,該内管の外側に脱水縮合型のセラミック材で固定された耐熱性で低熱伝導率の材料から成る積層体の外管とから構成され,前記受熱部は前記内管の先端が前記外管から外側に露出することによって構成されていることを特徴とする熱電対に関する。
【0010】
前記内管の前記受熱部は,Moを母相としてAlN,SiC,ZrN,ZrB,ZrOのうち少なくとも1種以上の化合物が分散している材料から構成されている。
【0011】
前記外管の前記積層体は,Al,Mo,Siのうち少なくとも1種以上を主成分とする層とカーボンを主成分とする層が交互に積層されている。
【0012】
前記金属素線は,タングステン−レニウム合金線である。更に,前記金属素線の結線された前記測温部は前記内管の前記受熱部の内面に密着している。
【0013】
前記保護管の開口端部は,緻密な耐熱部材及びガラスで封止されている。
【0014】
前記充填材は反応焼結窒化ケイ素セラミックスである。更に,前記充填材はO,Al,Mgを含んでいるものである。
【0015】
この熱電対は,上記のように,保護管を高熱伝導材の内管とその外側の耐熱性で低熱伝導材の外管から構成したので,保護管の先端ブロックから内部で密着した金属素線から成る温度検知部に熱が伝わり易くなって応答性が良くなると共に,外管を積層構造に構成しているので,熱衝撃より生じた亀裂が一気に内部まで進展せず,カーボン等の境界層の部分で偏向し,破壊エネルギが増大するため,保護管の寿命が改善される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による熱電対の実施例を説明する。図1はこの熱電対の実施例を示す断面図,図2は図1の熱電対の符号Aの領域の拡大断面図,及び図3は本発明の熱電対と比較例の熱電対との測温応答性を比較したグラフである。
【0017】
この発明による熱電対は,先端に受熱部4を備えた保護管1,保護管1内に充填された耐熱性材料から成る充填材8,及び充填材8中に配置され且つ端部が結線された測温部9を構成する温度検知体を構成する異なる組成の一対の金属素線6,7から成る。保護管1は,特に,緻密質で高熱伝導率の材料から成る内管2と,内管2の外側に脱水縮合型のセラミック材の固定材5で固定された耐熱性で低熱伝導率の材料から成る積層体の外管3とから構成されている。受熱部4は,金属溶湯等の材料の温度を測定する領域であり,内管2の先端部が外管3を突き抜けて外管3から外側に露出することによって構成されている。
【0018】
受熱部4を備えた内管2は,Moを母相としてAlN,SiC,ZrN,ZrB,ZrOのうち少なくとも1種以上の化合物が分散しており,鉄と反応し難い材料から構成され,熱伝導率が100W/m・Kと高い材料である。また,積層体から成る外管3は,Al,Mo,Siのうち少なくとも1種以上を主成分とする層11と,カーボンを主成分とする層12とが交互に積層されており,耐熱性で耐久性に優れているが,熱伝導率が5〜6W/m・Kと低い材料である。内管2と外管3とを固定する固定材5は,例えば,炉材の組立て等に使用されるセラミックセメントのAl(PO)−Al−MgOを使用できる。また,保護管1の開口端部14は,緻密質の耐熱部材及び緻密質のガラス(B/ZnO)から成る封止部材13で封止されている。
【0019】
温度検知体としての一対の金属素線6,7は,タングステン−レニウム合金線である。一方の金属素線6の組成はW−5Reであり,また,他方の金属素線7の組成はW−26Reである。W−5Re素線6とW−26Re素線7は,保護管1の内管2内の充填材8に埋設された状態で隔置して延びるように配置されている。また,金属素線6,7の各端部は,結線されて測温部9を形成しており,測温部9は内管2の受熱部4の内面10に密着している。W−5Re素線6とW−26Re素線7の他端部は,保護管1の端部の封止部材13から延び出し,例えば,保護管1の端部にコレットチャックで固定されたステンレス製の支持棒を通って測定機器に接続されている。
【0020】
充填材8は,耐熱多孔質の構造を持つ反応焼結窒化ケイ素セラミックスである。更に,充填材8はO,Al,Mgを含んでいる。充填材8は,Tiが添加された反応焼結窒化ケイ素,或いは,Si粉末を含む有機ケイ素ポリマーから転化した無機物と耐熱セラミック粉末との混合物で構成されている。充填材8が無機物と耐熱セラミック粉末との混合物から成る場合には,混合物中にカーボンやBNを含有させることが好ましい。また,保護管1内に充填された充填材8は,Si系反応焼結セラミックス等の材料から構成された多孔質構造に構成され,その熱伝導率が小さく構成されている。例えば,充填材8は,空隙が多い構造に構成することによって熱伝導率を小さく構成することができる。
【0021】
また,積層構造の保護管1の外管3は,耐熱性,耐溶損性に優れ,しかも,多重構造であるので熱衝撃で最外殻層に亀裂が発生しても内部層へは緩やかに破壊するので,例えば,従来のセラミックスから成る外殻のような壊滅的な破壊に至ることがない。更に,保護管1の内部には,充填材8を充填して製造する時にNやArの不活性ガスを封入することもでき,その状態で保護管1の端部に封止部材13が嵌合して密閉状態に構成されている。
【0022】
−実施例1−
ドクターブレード法によって,厚さ約100ミクロンのAl/カーボン,Mo−ZrN,Mo−ZrB及びMo−ZrOのシートを作製し,これらのシートをステンレス棒に巻き付けて一端を閉鎖状態にした上,これをゴム型内に入れてCIP法により圧密化すると共に,一体化した成形体を作製する。ここで,CIPで加圧後,荷重を解放した際に,スプリングバックにより成形体が僅かに広がり,ステンレス棒を成形体から引き抜く。次いで,成形体を脱脂した後に,これを水素雰囲気内で焼成して多重層の積層構造から成る外側パイプ即ち外管3を作製した。一方,Mo/ZrO,Mo/AlNから成る混合粉末を原料として押し出し成形によって一端が閉鎖端部で且つ他端が開口端部のパイプの成形体を作製し,上記と同様に,該成形体を脱脂した後に,これを水素雰囲気内で焼成して内側パイプ即ち内管2を作製した。次いで,内管2内に,窒化ケイ素粉末,燐酸アルミニウム,マグネシアを含むスラリーを充填する。次いで,線径が0.2mm,長さ200mmの一対のW−5Re素線6とW−26Re素線7を用いて,W−Re素線6,7の端部を互いに溶接で結線し,結線した測温部9を内管2の閉鎖端部の内面10に接触する状態に挿入する。内管2内のスラリーを乾燥させた後,内管2を外管3に挿入し,内管2と外管3との空隙に,燐酸アルミニウム〔Al(PO)〕,アルミナ(Al),マグネシア(MgO)から成るセラミックセメント(固体材5)を充填し,該セラミックセメントによって内管2を外管3内に固定した。次いで,内管2の開口端部14を緻密質ガラス(B/ZnO)から成る係止部材13を用いて内管2内を封止処理した。内管2が固定された外管3をコレットチャックを用いてステンレス製の支持棒(図示せず)に固定した。
【0023】
また,この熱電対の製造工程において,内管2内に充填材8を充填するのに先立って,充填材8中にカーボン及びBNをそれぞれ5%添加し,充填材8をW−Re素線6,7の酸化を防止する組成にし,上記と同様の製造工程によって熱電対を作製することもできる。即ち,充填材8にカーボン及びBNを添加すると,充填材8中に酸素が含まれていても,該酸素はカーボン及びBNと化合し,W−Re素線6,7の酸化が防止され,W−Re素線6,7の耐久性を向上させることができる。
【0024】
また,この熱電対の製造工程において,保護管1内に充填する充填材8として,ジルコニアと燐酸アルミニウム,水酸アルミニウムから成るペーストを使用して,上記と同様の製造工程によって熱電対を作製した。前記ペーストは脱水反応により固化し,耐熱性の有る材料となる。
【0025】
次に,上記の実施例で作製した熱電対を用いて,約1750℃の鉄溶湯に入れて測温を行い,その応答性をテストした。この熱電対は,図3に示すように,安定化するまでの時間は約6秒であった。比較のため,比較例として,保護管を,本発明のような内管2を用いることなく,積層構造の外管3のみで作製した熱電対を作製した。比較例の熱電対を,同様に,約1750℃の鉄溶湯に入れて測温を行い,その応答性をテストした。比較例の熱電対は,図3に示すように,安定化するまでの時間はほぼ20秒であった。
【0026】
また,この発明(本発明)の熱電対を用いて,約1750℃の鉄溶湯の測温を500回以上繰り返し行なったが,本発明の熱電対はまだ鉄溶湯の測温を十分に行なうことができることを確認した。鉄溶湯の繰り返しの測温後に,本発明の熱電対を観察したところ,外管3には亀裂は発生していたが,その状態はカーボン層の部分で偏向した状態で進展しているが,内部の積層層中で亀裂が止まっており,内管2への亀裂の進展はないことが確認できた。
【0027】
比較のため,保護管を積層構造でなく,一層から成るモノリシック材製の保護管を作製し,該保護管から成る比較品の熱電対を作製した。このとき,比較品の保護管は,Mo−ZrOのサーメットで作製した。比較品の熱電対を用いて,上記と同様に,約1750℃の鉄溶湯の測温を行なったところ,保護管は,10数回の繰り返しの測温によって,熱衝撃により亀裂が発生し,更に亀裂が保護管の内部即ち充填材まで進展し,金属溶湯の測温が不能になった。
【0028】
【発明の効果】
この発明による熱電対は,上記のように,保護管を高熱伝導率の内管と低熱伝導率で且つ積層構造の外管で作製したので,耐熱性で耐久性に富むと共に,測温応答性を大幅に向上させることができた。また,外管には鉄の付着がなく,保護管の外管の亀裂の進展が内部まで進展せず,鉄溶湯の500回以上の繰り返しの測温が高精度に且つ迅速に測温でき,耐久性を向上でき,長寿命の熱電対を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この熱電対の実施例を示す断面図である。
【図2】図1の熱電対の符号Aの領域の拡大断面図である。
【図3】本発明の熱電対と比較例の熱電対との測温応答性を比較したグラフである。
【符号の説明】
1 保護管
2 内管
3 外管
4 受熱部
5 固定材
6,7 W−Re素線
8 充填材
9 測温部(結線部)
10 内管の内面
11 第1積層層(Al等の層)
12 第2積層層(カーボンの層)
13 封止部材(耐熱部材とガラス)
14 開口端部

Claims (8)

  1. 先端に受熱部を備えた保護管,該保護管内に充填された耐熱性材料から成る充填材,及び該充填材中に配置され且つ端部が結線された測温部を構成する異なる組成の一対の金属素線から成る熱電対において,前記保護管は緻密質で高熱伝導率の材料から成る内管と,該内管の外側に脱水縮合型のセラミック材で固定された耐熱性で低熱伝導率の材料から成る積層体の外管とから構成され,前記受熱部は前記内管の先端が前記外管から外側に露出することによって構成されていることを特徴とする熱電対。
  2. 前記内管の前記受熱部は,Moを母相としてAlN,SiC,ZrN,ZrB,ZrOのうち少なくとも1種以上の化合物が分散している材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電対。
  3. 前記外管の前記積層体は,Al,Mo,Siのうち少なくとも1種以上を主成分とする層とカーボンを主成分とする層が交互に積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電対。
  4. 前記金属素線は,タングステン−レニウム合金線であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電対。
  5. 前記金属素線の結線された前記測温部は前記内管の前記受熱部の内面に密着していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電対。
  6. 前記保護管の開口端部は,緻密な耐熱部材及びガラスで封止されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電対。
  7. 前記充填材は反応焼結窒化ケイ素セラミックスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱電対。
  8. 前記充填材はO,Al,Mgを含んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱電対。
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