JP3601898B2 - 薬物依存形成抑制剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な薬物依存形成抑制剤に関し、特に薬物依存形成を抑制するために用いられて且つホスホジエステラーゼ(PDE)の酵素作用を阻害する活性を有する化合物を有効成分として含む薬物依存形成抑制剤に関する。
【0002】
特に、本発明の薬物依存形成抑制剤は、麻薬性薬物、例えばモルヒネの連続投与、すなわち連投により誘導された薬物依存形成を示す退薬症状(withdrawal syndrome;離脱症状とも言う)の発現を抑制又は軽減するのに有用である。ここで、退薬症状の発現とは、薬物依存形成の一つに分類される身体依存の形成として、薬物の連続投与後に断薬又は減量を行うことにより、身体内の薬物濃度がある程度より以下に薬物が消退していく過程で明らかな身体的症状を伴った病的状態が出現することを指す。
【0003】
【従来の技術】
連続投与により薬物依存形成を誘導できる薬物の代表例としては、モルヒネが知られる。モルヒネは麻薬性鎮痛薬として古来より医療上有用な薬剤であり、局所的に痛覚求心路を選択的に遮断して強い鎮痛作用を現わすとともに、大脳皮質に作用して疼痛感受野の閾値を上昇させる。また、大脳辺縁系に作用し、情動反応に影響を与える。鎮痛薬としてモルヒネは現在でもこれに代わる薬剤がなく、ほとんどすべての疼痛に著効を示す。特に、術後疼痛、末期癌の疼痛、心筋梗塞的疼痛に用いられ、また急性肺水腫や急性左室不全に伴う呼吸困難に用いると劇的にその症状は改善される。
【0004】
しかしながら、モルヒネを連続投与すると、薬物依存形成の現象が生じ、それ故に、法規上で「麻薬」として取り扱われている。薬物依存には、強化効果を伴う精神依存と、退薬時の病的な身体症状が出現する身体依存と、耐性の発現との三つの面があるが、モルヒネは前記の三つの面で依存を引き起こすことが知られている(「Science」 242巻,715〜723頁(1988)のKoobとBloomの論文参照)。
【0005】
一般的に、モルヒネによる身体依存の形成時には、モルヒネ投与を中止した後に約8〜20時間で退薬症状が出現する。退薬症状としては、発汗、流涙、鼻漏、血圧上昇、頻脈などの交感神経系の過興奮の状態と、嘔吐、下痢、腹痛などの副交感神経系の過興奮の状態とが出現する。また不安感、焦燥感、不眠などの精神症状の発現も認められる。この場合、退薬症状の程度は投与した薬量に比例すると言われる。また、モルヒネ依存者は上述した退薬症状による苦痛と恐怖から、モルヒネを入手するために反社会的行動をとることが少なくなく、犯罪などを起こして、社会問題となることが多い。他方、耐性とは、連続投与により薬剤の効果が減弱することをさし、モルヒネにおいては鎮痛効果の減弱も疼痛の治療を要する臨床上の問題とされている。
【0006】
上述のように、モルヒネは臨床上有用な薬剤であるが、モルヒネによる薬物依存性形成の発現の問題は未だ解決されていない。
【0007】
また、前記のモルヒネの他に、薬物依存形成を誘導できる薬物としては、バルビツール系麻酔薬、LSD−25(催幻覚薬)、コカイン、大麻、アンフェタミン類、カンナビンス類、ベンゾジアゼピン系化合物(鎮静薬、催眠薬、抗不安薬)が知られる。
【0008】
なお、覚醒剤およびヘロイン(heroin)による薬物依存の患者の治療法として、ドーパミン系神経路の神経伝達阻害剤として作用すると考えられるα−メチル−p−チロシンおよびフザリン酸(5−butylpicolinic acid)を投与すると、薬物に 対する患者の摂取渇望を緩和できると報告されている(「向精神薬ハンドブック」改訂第2版、112頁、南江堂1989年発行」)。しかし、薬物依存形成を直接に抑制又は軽減できる作用を有すると報告された化合物は未だない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、モルヒネの如き各種の依存性薬物の薬物連投により引き起こされる薬物依存形成を抑制又は軽減できる新規な医薬を提供することにある。
【0010】
他方、モルヒネの鎮痛作用と連続投与による薬物依存形成の現象とは、ヒトの場合と同様、マウスのような実験動物でも認められ、その機序などについて長年研究が行われてきている。それら研究によると、モルヒネは脳内のオピオイド受容体に作用し、アデニールシクラーゼ活性に影響を与え、モルヒネの単回投与では、脳内の細胞内のcAMP(環状アデノシン−3′,5′−一リン酸)量を減少させ、また退薬症候の発現時には、cAMPの量を増加させると言われている(「Proc. Nat. Acad. Sci. USA」72巻、3号、3092−3096頁(1975)のSharmaらの論文「Dual regulation of adenylate cyclase accounts for narcotic dependence and tolerance」参照)が、そのcAMP量の変動の機序は、未だ不明な部 分が多い。
【0011】
モルヒネにより薬物依存形成を起こした動物にPDE非選択的阻害剤であるテオフィリン(Theofylline)又はcAMPを投与すると、モルヒネに対する耐性及びモルヒネによる薬物依存形成を増強することから、耐性及び依存形成にcAMPの関与の可能性が報告されている(「Life Sciences」16巻、1895−1900頁(1975)のHoらの論文「Effect of cyclic nucleotides and phosphodiesterase inhibition on morphine tolerance and physical dependence」参照)。一方、モルヒネにより薬物依存形成を起こした動物に対してアデノシン拮抗作用を有するPDE阻害剤であるメチルキサンチン誘導体を投与すると、退薬症状が増強されることから、モルヒネの退薬症状の発現に内因性のアデノシンの関与の可能性も示唆されている(「Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. Suppl.」18巻、55頁(1991))。
【0012】
一般的に、脳内細胞中のcAMPレベルを調整する機構には、その主な作用因子にcAMPの合成酵素であるアデニールシクラーゼと、cAMPなどの環状ヌクレオタイドを分解する酵素であるPDEとがある。PDEには、それの酵素活性制御因子や基質特異性から、少なくとも五つのサブタイプ(I、II、III、IV、V)のPDEがあることが知られている。PDE I、PDE II、PDE IIIは cAMPとcGMP(環状グアノシン−3′,5′−一リン酸)をほぼ同程度に (非選択的に)加水分解するが、PDE IVはcAMPに対する阻害活性の選択性 が高く、PDE VはcGMPに選択性が高いことが知られている。
【0013】
また、ロリプラム(Rolipram:(±)−4−〔3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル〕−2−ピロリジノン)は、PDEの酵素活性を阻害する化合物、すなわちPDE阻害剤の一つであり、特にPDE IVに対する酵素阻 害活性の選択性が高く、脳血管障害による痴呆の治療薬として有効であることが知られている(米国特許第5,059,612号、欧州特許出願公開第 0 432 856号及び日本特開平3−181418号明細書参照)。
【0014】
本発明の別の目的は、薬物の連続投与により誘導される薬物依存形成、特に身体依存形成を起し得る各種の薬物による薬物依存形成を抑制又は軽減するのに有用であり且つPDEに対する酵素阻害活性を有する化合物を有効成分として含有する新規な薬物依存形成の抑制剤又は軽減剤を提供するにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
今回、本発明者らは、モルヒネの連投による薬物依存形成時に脳内cAMP量の変動が前記のとおり起きていたことに注目し、またcAMPを分解するPDEに対する阻害剤であるロリプラムの酵素阻害作用とロリプラムの脳内移行性とに注目して、モルヒネの連続投与時にロリプラムを並行的に投与、併用すると、モルヒネによる薬物依存形成、特に退薬症状の発現に表わされる身体依存形成を抑制又は軽減できると期待した。この期待の下に、モルヒネを連続投与されるマウスに対して、モルヒネと並行的にロリプラムを連続投与する動物実験を重ね、またモルヒネの連続投与により誘導された退薬症状の発現と、モルヒネと並行的に投与されたロリプラムが退薬症状発現に対して示す抑制作用との関連性を調べる研究を重ねた。その結果、ロリプラムの並行的投与は、モルヒネによるマウスの身体依存形成を抑制できること及びモルヒネに対する耐性(鎮痛効果の減弱)の発現を抑制又は遅延できることを知見した。
【0016】
更に別の一連の動物実験からみて、ロリプラムと同様に、PDEに対して酵素阻害活性を有して且つ脳内移行性を有する化合物として、一般に、(±)−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−(C1〜C4)アルコキシフェニル−2−ピロリジノンは、各種の依存性薬物と並行的に投与する場合に、依存性薬物の連続投与で起こされる薬物依存形成と、薬物依存形成を示すところの退薬症状の発現とを一般に抑制又は軽減できると予測し得た。
【0017】
従って、本発明の要旨とするところは、ホスホジエステラーゼに対する酵素阻害活性を有する(±)−4−(3−シクロペンチルオキシ)−4−(C1〜C4)アルコキシフェニル−2−ピロリジノンを有効成分とすることを特徴とする、モルヒネ、LSD、コカイン、大麻、アンフェタミン類、カンナビンス類、覚醒剤またはヘロインの連続投与により誘導された薬物依存形成を抑制する薬物依存形成抑制剤が提供される。
【0018】
本発明の抑制剤において有効成分として用いる化合物はPDE IVに対する特異的な酵素阻害活性を有し、血液−脳関門を通過できる脳内移行性を有することを必要とする。
【0019】
本発明の抑制剤は、薬物依存形成を示す現象のうち、退薬症状の発現を抑制するのに特に有用である。本発明で有効成分として用いられる化合物は(±)−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]−2−ピロリジノン、即ち一般名ロリプラムとして知られる化合物であるのが好ましいが、ロリプラムを含めて次の一般名(I):
(式中、R1は炭素数1〜4の低級アルキル基であり、R2はシクロペンチル基である)で示される4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−(C 1 〜C 4 )アルコキシフェニル]−2−ピロリジノンである。
【0020】
なお、本発明の抑制剤において有効成分として用いられるものに含まれないが、PDE阻害活性の化合物には、プロペントフィリン〔Propentofylline;メルク・インデックス11版のコード番号7823,化学物質名は3,7−ジヒドロ−3−メチル−1−(5−オキソヘキシル)−7−プロピル−1H−プリン−2,6−ジオン〕、デンブフィリン〔Denbufylline;化学物質名は7−(2−オキソプロピル)−1,3−ジ−n−ブチルキサンチン〕、Ro 20−1724〔Journal of Medicinal Chemistry,34巻1号,291−298頁 (1991年)参照〕、ビンポセチン(Vinpocetine;メルク・インデックス11版のコード番号9894,化学物質名はエバーナメニン−14−カルボン酸エチルエステル)、及びIBMX(化学物質名は3−イソブチル−1−メチルキサンチン)がある。
【0021】
上記の有効成分化合物を含む本発明の薬物依存形成抑制剤は、医薬で常用される固体又は液体状の担体を有効成分と混和して含有した医薬組成物として種々の剤型で製剤できる。また、モルヒネ又はその他の依存性薬物との合剤の形で製剤化できる。
【0022】
本発明の薬物依存形成抑制剤の成人への投与量は、経口投与の場合に1日当りに有効成分化合物に換算して0.001〜1000mgの範囲である。
【0023】
本発明の抑制剤で用いるPDE阻害活性を有する有効成分化合物を、医薬組成物として製剤化するには、製剤の技術分野における通常の方法により行われる。経口投与の場合の剤形は特に限定されるものではないが、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とすることができる。即ち、有効成分に賦形剤、更に必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤などを加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等に製剤することができる。また、本発明の抑制剤は非経口的投与の場合、有効成分化合物をとかした溶液又は分散した懸濁液の形の注射剤として投与できる。
【0024】
前記の固体又は液体状の担体として製薬学的に許容されるものが選ばれ、その種類は投与経路や投与方法によって決まる。例えば、液状担体として水、アルコールもしくは大豆油、ミネラル油、ゴマ油などの動植物油、または合成油などが用いられる。固体担体としてはマルトース、シュークロースなどの糖類、リジンなどのアミノ酸類、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、シクロデキストリンなどの多糖類、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩類などが使用される。注射剤として製剤化する場合には、液状担体は一般に生理食塩水、各種緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトールなどの糖類溶液、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類であることができる。また、イノシトール、マンニトール、グルコース、マンノース、マルトース、シュークロースなどの糖類、フェニルアラニンなどのアミノ酸類などの賦形剤と共に凍結乾燥製剤として製剤化して、それを投与時に注射用の適当な溶剤、例えば滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、電解質溶液、アミノ酸などの静脈投与用液体に溶解又は懸濁して使用できる。その有効成分化合物の溶解を助けるために、可溶化剤として適当な表面活性剤を添加できる。
【0025】
本発明の抑制剤の製剤化された医薬組成物中における有効成分の含量は製剤型により種々異なるが、通常は、0.001〜95重量%、好ましくは0.01〜90重量%で ある。例えば注射液の場合には、通常、0.01〜5重量%の含量で有効成分化合物を含むようにすることがよい。経口投与の場合には、前記固体担体もしくは液状担体と共に錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、液剤、シロップ剤などの形態で用いられる。カプセル、錠剤、顆粒、粉剤の場合、一般に、有効成分化合物の含量は0.01〜95重量%、好ましくは0.02〜90重量%であり、残部は担体である。
【0026】
さらに、本発明で用いる有効成分の投与量は、一般的には、患者の年令、体重、症状、治療目的などにより決定される。しかし、その最適な投与量は動物試験の結果などの種々の状況を勘案して総投与量が一定量を越えない範囲で、連続的又は間欠的に投与できる。一定条件下における投与の適量と投与回数は、専門医の決定によって定められる。
【0027】
なお、本発明において好ましく使用できる有効成分化合物はロリプラムであり、ロリプラムはcAMPに特異的なPDEに対する選択的阻害剤であり、動物実験でラット脳内のcAMP濃度を上昇させることが知られている〔「Journal of Medicinal Chemistry」34巻1号,291〜293頁(1991年)参照〕。
【0028】
次に、ラットにおけるロリプラムの急性毒性を試験した場合のLD50値を示す。
これから明らかなように、ロリプラムは毒性がきわめて小さい化合物である。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の薬物依存形成抑制剤の効果を試験例について説明する。
試験例1
本例は、文献「J. Pharmacol. Exp. Ther.」72巻 74−79頁(1941年発行)に示されるD’Amour, FEらの方法に準じて、マウスに皮下投与されたモルヒネの鎮痛 効果を加熱振尾反射試験法(heat tail−flick reflection method)により測定さ れた疼痛反応潜時(秒)〔振尾反応の遅延長さ秒;(Tail−flick latency,秒)として表わされる〕で評価し、また疼痛反応潜時(秒)の測定により、モルヒネの連投中と連投後に起るモルヒネの鎮痛効果の減弱、すなわち耐性の発現を評価し、且つこれと比較しながら、ロリプラムの並列的な腹腔内投与を伴うモルヒネの連投中と連投後に起るモルヒネの鎮痛効果の減弱を評価する試験を示す。
【0030】
本試験では、先づ、生理食塩水10ml当りに塩酸モルヒネ10mgを溶かしたモルヒネ溶液を調製した。さらに2%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む生理食塩水に種々の濃度でロリプラムを溶かした数種のロリプラム溶液を調製した。また、ブランク試験用の注射液として、生理食塩水よりなる第1のブランク試料と、2%DMSOを含む生理食塩水よりなる第2のブランク試料を用意した。
【0031】
ddY系雄性マウスの第1群(一群6匹)に、マウスの体重10gあたりに上記の第1のブランク試料(生理食塩水)の 0.1mlを1日2回(午前と午後)、5日間連続して皮下注射で投与し、また第2のブランク試料(2%DMSO含有生理食塩水)を、第1のブランク試料の投与量と同じ容量で、第1のブランク試料の投与30分前ごとに腹腔内に投与した(無処理対照群)。
【0032】
同じddY系雄性マウスの第2群(一群10匹)にマウスの体重10gあたり上記のモルヒネ溶液の 0.1mlを、1回、10mg/kgのモルヒネ投与量で1日2回(午前と午後)、5日間連続して皮下注射で投与し、また第2のブランク試料(2%DMSO含有生理食塩水)を、モルヒネ溶液の投与量と同じ容量で、モルヒネ投与の30分前ごとに腹腔内に投与した(10mg/kgモルヒネ単独投与群)。
【0033】
同種のマウスの第3群(1群10匹)に、上記のモルヒネ溶液を、1回、10mg/kgのモルヒネ投与量で1日2回、5日間連続して皮下注射で投与し、またそのモルヒネ投与の度ごとにモルヒネ投与30分前に上記のロリプラム溶液を1回、0.01mg/kgのロリプラム投与量で腹腔内投与した(10mg/kgモルヒネ+0.01mg/kgロリプラム併用投与群)。
【0034】
同種のマウスの第4群(1群10匹)に上記のモルヒネ溶液を1回、10mg/kgのモルヒネ投与量で1日2回、5日間連続して皮下注射で投与し、またそのモルヒネ投与の度ごとにモルヒネ投与30分前に上記のロリプラム溶液を1回、0.03mg/kgのロリプラム投与量で腹腔内投与した(10mg/kgモルヒネ+0.03mg/kgロリプラム併用投与群)。
【0035】
同種のマウスの第5群(1群10匹)に上記と同様にモルヒネ溶液を1回、10mg/kgのモルヒネ投与量で1日2回、5日間連続して皮下注射し、またそのモルヒネの投与の度ごとにモルヒネ投与30分前に上記のロリプラム溶液を1回、 0.1mg/kgのロリプラム投与量で腹腔内投与した(10mg/kgモルヒネ+ 0.1mg/kgロリ プラム併用投与群)。以下同様にして、同種のマウスの第6群(1群10匹)に10 mg/kgのモルヒネ投与量及び 0.3mg/kgのロリプラム投与量でモルヒネとロリプラムを併用投与した(10mg/kgモルヒネ+ 0.3mg/kgロリプラム併用投与群)。また同種のマウスの第7群(1群10匹)に10mg/kgのモルヒネ投与量及び1mg/kgのロリプラム投与量でモルヒネとロリプラムを併用投与した(10mg/kgモルヒネ+1mg/kgロリプラム併用投与群)。
【0036】
なお、上記で腹腔内投与されたロリプラム溶液は、マウスの体重10gあたりにロリプラム溶液 0.1mlを注射することにより前記した所定のロリプラム投与量を与えるように調整されたロリプラム濃度を有したものである。
上記のモルヒネ投与前の試験0日目と、投与開始後の試験1日目、3日目および5日目の午前中(11時00分)に行われたモルヒネ投与から60分後に、各群のマウスを加熱振尾反射試験法にかけて、疼痛反応潜時(秒)を測定し、そして各測定時での平均値±標準誤差(SEM)を算定した。
【0037】
モルヒネを投与されたマウスで耐性形成によりモルヒネの鎮痛効果が減弱された場合には、試験1日目のモルヒネ単独投与群のマウスの示す疼痛反応潜時(秒)に比べて有意に短い疼痛反応潜時(秒)を示すのが通例である。
得られた試験結果を次の表1に要約して示す。
【0038】
【表1】
表1の結果から明らかなように、試験0日目の疼痛反応潜時(秒)は、モルヒネ投与がないので当然に鎮痛効果がなく、2.9〜3.2秒台であるが、これに比べて、試験1日目には、モルヒネ投与を受けた各試験マウス群の疼痛反応潜時(秒)はモルヒネの鎮痛効果の発揮により有意に延長されているのが認められる。モルヒネ投与による疼痛反応潜時の延長作用(モルヒネの鎮痛作用)に対して、1mg/kgロリプラムの併用投与群(第7群)では、試験3日目のみにロリプラムによる鎮痛増強効果があると認められたが、その他の測定日では、モルヒネによる疼痛反応潜時の延長作用に対してロリプラムはほとんど影響しない。また、ロリプラムのその他の併用用量では、モルヒネ単独投与群(第2群)と比べて変化が認められない。従って、ロリプラムの併用はモルヒネの鎮痛作用を著るしく増強または減弱させないと認められる。
【0039】
他方、モルヒネ単独投与群では、試験1日目に比べると試験5日目の疼痛反応潜時の長さは著るしく短かくなり、モルヒネによる鎮痛効果が連投により減弱した、すなわち耐性が発現したことが認められる。これに対して、モルヒネ+1mg/kgロリプラム併用投与の各試験群では、試験1日目に比べての試験5日目の疼痛反応潜時の長さの差は、モルヒネ単独投与群の場合に見られた差よりも有意に小さい。従って、1mg/kgのロリプラム併用投与は、モルヒネ連投による鎮痛効果の減弱、すなわち耐性の発現を遅延又は抑制できる効果を有すると認められる。
【0040】
試験例2
本例は、文献「Neuropharmacology」33巻,189−192頁(1994年発行)に示されるMajeed, NHらの方法及び文献「Science」251巻,85−87頁(1991年発行)に示され るTruillo, KAらの方法に準じて、モルヒネの連投時で誘導された退薬症状の発 現を評価する試験を示すものである。
モルヒネに対する完全競合型の拮抗剤として知られるナロキソンは、慢性モルヒネ中毒者に与えると直ちに禁断症状を誘発する薬剤である(「最新薬理学」106−107頁、藤野澄子ら編、講談社サイエンティフィク、1988年発行)。先づ、生理食塩水10mlあたりにナロキサン5mgを溶かしたナロキサン溶液を用意した。 試験例1で供試された各試験群のマウスに、試験6日目にモルヒネを再投与してから120分後の時点で、前記のナロキサン溶液を5mg/kgのナロキサン投与量 で腹腔内投与した。ナロキサン溶液の投与液量が、マウス体重10gあたり 0.1mlになるように溶液中のナロキサン濃度を調整した。
【0041】
ナロキサンの投与後15分間にわたり、マウスのモルヒネ退薬症状の指標となる行動として、マウスの跳躍行動(jumping)、立ち上り行動(rearing)及び前肢振戦(forepaw tremor)の回数の変化を観察して記録した。
得られた試験結果を次の表2に要約して示す。
【0042】
【表2】
表2の結果から明らかなように、10mg/kgモルヒネ単独投与群に比べて、10 mg/kgのモルヒネと0.01mg/kg〜1mg/kgのロリプラムとを併用投与された試験群では、マウスの跳躍、立ち上り及び前肢振戦の各行動の回数が有意に小さいから、モルヒネの連投と並行的に行うロリプラムの併用投与は、モルヒネの連投後に起る退薬症状の発現頻度を明らかに抑制することが認められた。
【0043】
以上の試験例1及び2でのマウスを用いた実験結果から、ロリプラムはモルヒネと並行的に投与することにより、モルヒネの鎮痛作用を減弱することなく、モルヒネ連投時に起こる退薬症状の発現を抑制することが明らかとなった。それ故、ロリプラムはモルヒネ連投による薬物依存形成を抑制できる作用を有することが確認された。
【0044】
【発明の効果】
本発明で有効成分として用いられるPDE阻害活性をもつ前記の一般式(I)の化合物は、依存性薬物の連投時に起こる薬物依存形成を抑制する、例えばモルヒネと併用利用することによりモルヒネ連投時に起こる身体依存形成と耐性の発現を抑制するために有効である。
Claims (4)
- ホスホジエステラーゼに対する酵素阻害活性を有する(±)−4−(3−シクロペンチルオキシ)−4−(C1〜C4)アルコキシフェニル−2−ピロリジノンを有効成分とすることを特徴とする、モルヒネ、LSD、コカイン、大麻、アンフェタミン類、カンナビンス類、覚醒剤またはヘロインの連続投与により誘導された薬物依存形成を抑制する薬物依存形成抑制剤。
- (±)−4−[3−(シクロペンチルオキシ)―4−メトキシフェニル]−2−ピロリジノン、すなわちロリプラムが有効成分である、請求項1に記載の抑制剤。
- 薬物依存形成を示す退薬症状の発現を抑制する、請求項1に記載の抑制剤。
- モルヒネの連続投与により誘導された薬物依存形成を示す退薬症状の発現及び耐性の発現を抑制する、請求項1に記載の抑制剤。
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