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JP3601388B2 - 鋼線材及び鋼線材用鋼の製造方法 - Google Patents

鋼線材及び鋼線材用鋼の製造方法 Download PDF

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Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼線材及び鋼線材用鋼の製造方法に関し、より詳しくは例えば、、ワイヤロープ、弁ばね、懸架ばね、PC鋼線、スチールコードなどの用途に好適な耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材とその鋼線材の素材鋼となる鋼を製造する方法に関するものである。
【従来の技術】
ワイヤロープ、弁ばね、懸架ばね、PC鋼線などに用いられる鋼線材(以下、「鋼線材」を単に「線材」という)には、熱間圧延後伸線加工などの冷間加工、更に、焼入れ焼戻しの調質処理、あるいはブルーイング処理が施される。又、自動車のラジアルタイアの補強材として用いられるスチールコード用の線材は、線径(直径)約5.5mmまで熱間圧延された後調整冷却され、1次伸線加工、パテンティング処理、2次伸線加工、最終パテンティング処理を受け、更にその後でブラスメッキ処理、続いて最終湿式伸線加工を受ける。このようにして得られた極細鋼線を更に撚り加工(撚線加工)して複数本撚り合わせ、スチールコードが成形されている。
したがって、上記技術分野に属する線材には、優れた伸線加工性と同時に優れた耐疲労特性が要求される。
近年、コスト合理化や地球環境問題などを背景に前記したワイヤロープ、弁ばね、懸架ばね、PC鋼線やスチールコードなど各種製品の軽量化に対する要望がますます高まっており、高強度化への取り組みが活発に行われている。しかし、一般に鋼材は強度が高くなるほど伸線加工性が劣化し、疲労破壊に対する感受性が大きくなるので、前記した各種製品の素材用線材としては、特にその内部性状の優れたものが要求されるようになっている。
このため、伸線加工性あるいは耐疲労特性を高める目的で、鋼の清浄性に着目した技術が開示されている。
例えば、第126回・第127回西山記念技術講座の第148〜150ページには、介在物を熱間圧延時に塑性変形しやすい三元系の低融点組成領域に制御することで、延性介在物として無害化を図る技術が示されている。
特開昭62−99436号公報には、介在物の長さ(l)と幅(d)の比がl/d≦5の延伸性の小さいものに限定し、介在物の平均的組成をSiO2:20〜60%、MnO:10〜80%で、更に、CaO:50%以下、MgO:15%以下の一方又は両方を含むように制御した技術が開示されている。
特開昭62−99437号公報には、介在物の長さ(l)と幅(d)の比がl/d≦5の延伸性の小さいものに限定し、介在物の平均的組成をSiO2:35〜75%、Al23:30%以下、CaO:50%以下、MgO:25%以下に制御した技術が開示されている。
上記2つの公報に開示された技術は、基本的に介在物の低融点化を図るという技術思想において前記の西山記念技術講座で報告された内容と同一であるが、介在物の組成制御を行うにあたり、MnOやMgOを含めた多元系で低融点化を図り、熱間圧延で十分延伸させ、冷間圧延あるいは伸線で破砕させて微細に分散させることにより冷間加工性及び耐疲労特性の向上を図ろうとするものである。
しかしながら、介在物は界面エネルギ−が微小である。このため、介在物はガスバブリングやアーク式加熱方式を有するとりべ精錬などの二次精錬時から鋳造時において凝集肥大化しやすく、鋳片段階で巨大介在物として残存する傾向がある。いったん巨大介在物が生じると、仮に介在物としての平均組成は同じであっても、図1に示すように同一介在物内の凝固過程において不均一相を晶出する頻度が高くなる可能性がある。なお、図1において斜線をつけた部分が不均一相を示す。したがって、上記各公報で提案された介在物組成、つまり介在物の平均組成に制御した場合であっても、巨大で不均一組成の介在物が晶出すると、その巨大介在物のうちで公報で提案された組成内の領域は軟質なため熱間圧延及び冷間圧延や伸線で小型化するが、公報で提案された組成から外れる領域は大型のまま残存してしまうことがあって、伸線加工性及び耐疲労特性を向上させるには限界があった。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、その目的は、ワイヤロープ、弁ばね、懸架ばね、PC鋼線、スチールコードなどの用途に好適な耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材とその線材の素材鋼となる鋼を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(2)に示す耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材、及び(3)に示す耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材に用いる鋼の製造方法にある。
(1)鋼の化学成分が質量%で、C:0.45〜1.1%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.1〜1.0%で、且つ、Cr:0.02〜1.50%、Nb:0.002〜0.100%の1種以上を含み、更に、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.5%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、Co:0〜2.0%、B:0〜0.0030%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Zr:0〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.020%以下、Sは0.020%以下、Alは0.005%以下、Nは0.005%以下、O(酸素)は0.0025%以下であって、長手方向縦断面における幅2μm以上の酸化物が平均値として、質量%で、SiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%を含む耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材。
(2)長手方向縦断面における幅2μm以上の酸化物がSiO2、CaO、Al23、MgO、MnO、Cr23、NbOで構成され、その含有量の平均値が質量%で、SiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%である上記(1)に記載の耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材。
(3)転炉による一次精錬、転炉外での二次精錬の後、連続鋳造する上記(1)又は(2)に記載の耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材に用いる鋼の製造方法。
なお、本発明でいう(線材の)「長手方向縦断面」(以下「L断面」という)とは、線材の圧延方向に平行に、その中心線を通って切断した面をいう。又、酸化物の「幅」とは、L断面における幅方向の最大長さのことを指す。酸化物形態が粒形であった場合も、同一定義とする。
「CaO+Al23」は、CaOとAl23の合計量を指し、「Cr23+NbO」は、Cr23とNbOの合計量を指す。
「線材」とは、棒状に熱間圧延された鋼で、コイル状に巻かれた鋼材を指し、所謂「バーインコイル」を含むものである。
「二次精錬」とは、ガスバブリングやアーク式加熱装置などを有するとりべ精錬法、真空処理装置を使用する精錬法といった「清浄化のための転炉外での精錬法」で通常「炉外精錬」と称されるものを指す。
以下、上記の(1)〜(3)に記載のものをそれぞれ(1)〜(3)の発明という。
【発明の実施の形態】
本発明者らは、優れた耐疲労特性や優れた伸線加工性が要求されるワイヤロープ、弁ばね、懸架ばね、PC鋼線、スチールコードなどの用途に好適な線材を得るために、種々の調査・研究を行った。すなわち、質量%で、C:0.45〜1.1%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.1〜1.0%で、且つ、Cr:0.02〜1.50%、Nb:0.002〜0.100%の1種以上を含み、更に、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.5%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、Co:0〜2.0%、B:0〜0.0030%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Zr:0〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.020%以下、Sは0.020%以下、Alは0.005%以下、Nは0.005%以下、O(酸素)は0.0025%以下の化学成分を有する線材中の酸化物と耐疲労特性及び伸線加工性との関係について調査・研究を重ねた。その結果、下記(1)(3)の知見を得た。
(1)従来、伸線加工性や耐疲労特性に悪影響を及ぼす「硬質介在物」として避けられてきた高融点のSiO2系介在物は、これに適正量のCr23とNbOが複合されると、溶鋼中でのSiO2系介在物の界面張力が上昇して微細分散化し、伸線加工性や耐疲労特性に影響を及ぼさなくなる。なお、上記の「SiO2系介在物」とはSiO2だけではなくSiO2を含む複合介在物を指す。
(2)高清浄度化が進んだ状況下において、耐疲労特性及び伸線加工性を向上させるためには、線材のL断面における幅2μm以上の酸化物が平均値として、質量%で、SiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%を含むものであればよい。
(3)耐疲労特性及び伸線加工性を向上させるためには、線材のL断面における幅2μm以上の酸化物の構成を特定し、その含有量の平均値を、質量%で、SiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%に制御してもよい。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素と酸化物の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)酸化物の幅
質量%で、C:0.45〜1.1%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.1〜1.0%で、且つ、Cr:0.02〜1.50%、Nb:0.002〜0.100%の1種以上を含み、更に、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.5%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、Co:0〜2.0%、B:0〜0.0030%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Zr:0〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.020%以下、Sは0.020%以下、Alは0.005%以下、Nは0.005%以下、O(酸素)は0.0025%以下の化学成分を有する線材のL断面における幅2μm未満の酸化物が耐疲労特性及び伸線加工性に及ぼす影響は小さい。更に、上記した幅2μm未満の酸化物は微小であるため、EPMA法など物理的な分析方法で組成分析を行うとマトリックス部(素地部)が含まれてしまう場合があり、精度よく測定を行うことが困難である。したがって、線材のL断面における酸化物の幅を2μm以上とした。
(B)線材のL断面における幅2μm以上の酸化物の平均組成
本発明においては、上記線材のL断面における幅2μm以上の酸化物の平均組成(以下、単に「平均組成」という)が、70%以上のSiO2、20%未満のCaO+Al23、0.1〜10%のCr23+NbOを含んでいることが重要である。これは、「平均組成」において、SiO2、CaO、Al23を一定範囲のCr23+NbOと共存させれば、酸化物の大きさが微細になるとともに介在物組成(酸化物の組成)が均一化し、従来提案されている技術のように低融点化を図らなくとも、伸線時や撚り加工時の断線起点となったり、疲労破壊の起点となる酸化物を極めて小さくすることができるからである。
Cr23やNbOはこれが単独で存在すると、硬質な介在物として伸線時や撚り加工時の断線起点となったり疲労破壊の起点となる。しかし、「平均組成」において、0.1〜10%の量のCr23+NbOを前記した量のSiO2及びCaO、Al23と複合して存在させると、硬質のSiO2が微細に分散することに加えてCr23、NbOも微細に分散するので、伸線加工性や耐疲労特性に影響を及ぼさなくなる。換言すれば、「平均組成」に含まれるCr23+NbOの量が10%を超える場合には、Cr23、NbO系介在物が粗大且つ硬質な介在物となるので伸線時や撚り加工時の断線の起点となったり疲労破壊の起点となってしまう。一方、「平均組成」に含まれるCr23+NbOの量が0.1%を下回る場合には、Cr23、NbOのSiO2系介在物を微細分散化させる効果が得難いので、SiO2系介在物は従来指摘されてきたように硬質な介在物となり、伸線時や撚り加工時の断線起点や疲労破壊の起点となってしまう。
したがって、「平均組成」に含まれるCr23+NbOを0.1〜10%とした。なお、「平均組成」に含まれるCr23+NbOは、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であれば一層好ましい。
「平均組成」に含まれるSiO2が70%未満で、且つCaO+Al23が20%以上であると、鋼の凝固過程において不均一相が晶出する頻度が高くなるので、伸線加工性、撚り加工性や耐疲労特性が劣化する。したがって、「平均組成」に含まれるSiO2を70%以上で、且つ、CaO+Al23を20%未満とした。
なお、「平均組成」に含まれる、SiO2が75%を超え、且つ、CaO+Al23が15%未満であることが好ましい。
(1)の発明に係る耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材は、「平均組成」を上記のように規定するものである。
本発明においては、前記「平均組成」がSiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%を含むものでありさえすればよい。したがって、SiO2、CaO、Al23、Cr23、NbO以外の酸化物(例えばMgO、MnO、TiO2など)が「平均組成」に含まれる割合は特に規定する必要はない。
しかし、後述の実施例で述べるように、例えば、線材のL断面における幅2μm以上の酸化物を、SiO2、CaO、Al23、MgO、MnO、Cr23、NbOに特定して、つまり、上記7元系の酸化物の「平均組成」の総和を100%として、その「平均組成」において0.1〜10%の量のCr23+NbOを70%以上の量のSiO2及び20%未満の量のCaO+Al23と複合して存在させることとしてもよい。このように規定することによって(2)の発明に係る耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材が得られる。
なお、例えば、転炉から連続鋳造の工程までに溶鋼中に投入又は混入する金属Al量を5g/トン以下に調整するとともに、溶鋼と接触する耐火物及びフラックス中のAl23量を10%以下とし、且つ、転炉から連続鋳造の工程までにCr:0.03〜2.00%程度、Nb:0.003〜0.125%程度の1種以上を添加し、更に、二次精錬及びそれ以降の工程での溶鋼表面におけるとりべ中スラグの最終CaO/SiO2比を0.8〜2.0の範囲にすることによって、平均組成におけるSiO2を70%以上、CaO+Al23を20%未満、Cr23+NbOを0.1〜10%の範囲にすることができる。
酸化物の組成を精度よく短時間で容易に測定するためには、例えば、線材から採取した試験片を鏡面研磨し、その研磨面を被検面としてEPMA装置で30個程度の酸化物系介在物を分析し、その算術平均を求めればよい。
(1)の発明と(2)の発明に係る耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材においては、線材の素材となる鋼の化学成分を下記のとおり規定する。
(C)線材の素材となる鋼の化学成分
C:0.45〜1.1%
Cは、強度を確保するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.45%未満の場合には、ばねやスチールコードなどの最終製品に高い強度を付与させることが困難である。一方、その含有量が1.1%を超えると熱間圧延後の冷却過程中に初析セメンタイトが生成して、伸線加工性が著しく劣化する。したがって、Cの含有量0.45〜1.1%とした
Si:0.1〜2.5%
Siは、脱酸に有効な元素であり、その含有量が0.1%未満ではその効果を発揮させることができない。一方、2.5%を超えて過剰に含有させると、パーライト中のフェライト相の延性が低下してしまう。なお、ばねにおいては、「耐へたり特性」が重要で、Siには「耐へたり特性」を高める作用もあるが、2.5%を超えて含有させてもその効果は飽和してコストが嵩むし、脱炭を助長してしまう。したがって、Si含有量0.1〜2.5%とした
Mn:0.1〜1.0%
Mnは、脱酸に有効な元素であり、その含有量が0.1%未満ではこの効果を発揮させることができない。一方、1.0%を超えて過多に含有させると、偏析を生じやすくなり伸線加工性及び耐疲労特性が劣化してしまう。したがって、Mnの含有量0.1〜1.0%とした
本発明の線材は、Cr:0.02〜1.50%及びNb:0.002〜0.100%の1種以上を含む必要がある。以下、CrとNbについて説明する。
Cr:0.02〜1.50%
Crは、既に述べた酸化物の平均組成を比較的容易に所望の範囲に調整する作用を有する。Crは、パーライトのラメラ間隔を小さくして熱間圧延後及びパテンティング後の強度を高める作用を有するし、更に、伸線加工時における加工硬化率を高める作用も有しているので、Crの添加によって比較的低い加工率でも高い強度を得ることができる。Crには耐食性を高める作用もある。しかし、1.50%を超えて含有させても前記の効果が飽和するばかりか、前記した酸化物の平均組成におけるCr23+NbOの範囲を超えて伸線加工性や耐疲労特性の劣化を招く場合がある。したがって、添加する場合のCrの含有量は、1.50%以下とする必要がある。なお、Cr含有量の下限は、線材の幅2μm以上の酸化物系介在物中にNbOを含まない場合には、酸化物系介在物の平均組成においてCr23の量が0.1%となる場合の値である。そして、線材の幅2μm以上の酸化物系介在物中にNbOを少なくとも0.1%含む場合には、Cr含有量の下限は0であってもよいことは勿論である。
Nb:0.002〜0.100%
Nbは、既に述べた酸化物の平均組成を比較的容易に所望の範囲に調整する作用を有する。Nbは、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用も有する。しかし、0.1%を超えて含有させても前記の効果が飽和するばかりか、前記した酸化物の平均組成におけるCr23+NbOの範囲を超えて伸線加工性や耐疲労特性の劣化を招く場合がある。したがって、添加する場合のNbの含有量は、0.1%以下とする必要がある。なお、Nb含有量の下限は、線材の幅2μm以上の酸化物系介在物中にCr23を含まない場合には、酸化物系介在物の平均組成においてNbOの量が0.1%となる場合の値である。そして、線材の幅2μm以上の酸化物系介在物中にCr23を少なくとも0.1%含む場合には、Nb含有量の下限は0であってもよいことは勿論である。
述のようにCrとNbはいずれも酸化物の平均組成を比較的容易に所望の範囲に調整する作用を有するので、本発明に係る線材の素材となる鋼には、上記のCr:0.02〜1.50%、Nb:0.002〜0.100%の範囲内で1種以上を含有させることとした。つまり、CrとNbは、上記の範囲内でそれぞれを単独で含有させるか、2種を複合して含有させることとした。
本発明の線材の素材鋼となる鋼は、更に下記の元素を含有してもよい。
Cu:0〜0.5%
Cuは添加しなくてもよい。添加すれば、耐食性を高める効果を発揮する。この効果を確実に得るには、Cuは0.1%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、Cuを0.5%を超えて含有させると、結晶粒界に偏析し、鋼塊の分塊圧延時や線材の熱間圧延時における割れや疵の発生が顕著になる。したがって、Cuの含有量0〜0.5%とした
Ni:0〜1.5%
Niは添加しなくてもよい。添加すれば、フェライト中に固溶してフェライトの靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Niは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.5%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎてマルテンサイトが生成しやすくなり伸線加工性が劣化する。したがって、Niの含有量0〜1.5%とした
Mo:0〜0.5%
Moは添加しなくてもよい。添加すれば、熱処理で微細な炭化物として析出し強度と耐疲労特性を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.1%以上の含有量とすることが好ましい。一方、0.5%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Moの含有量0〜0.5%とした
W:0〜0.5%
Wは添加しなくてもよい。添加すれば、Crと同様に伸線加工時の加工硬化率を顕著に高める作用がある。この効果を確実に得るには、Wは0.1%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.5%を超えると鋼の焼入れ性が高くなりすぎて、パテンティング処理が困難になる。したがって、Wの含有量0〜0.5%とした
Co:0〜2.0%
Coは添加しなくてもよい。添加すれば、初析セメンタイトの析出を抑制する効果を有する。この効果を確実に得るには、Coは0.1%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、2.0%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Coの含有量0〜2.0%とした
B:0〜0.0030%
Bは添加しなくてもよい。添加すれば、パーライト中のセメンタイトの成長を促進させて、線材の延性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Bは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.0030%を超えると、温間や熱間での加工時に割れが生じやすくなる。したがって、Bの含有量0〜0.0030%とした
V:0〜0.5%
Vは添加しなくてもよい。添加すれば、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Vは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.5%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Vの含有量0〜0.5%とした
Ti:0〜0.1%
Tiは添加しなくてもよい。添加すれば、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Tiは0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.1%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Tiの含有量0〜0.1%とした
Zr:0〜0.1%
Zrは添加しなくてもよい。添加すれば、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。しかし、0.1%を超えて含有させても前記の効果が飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Zrの含有量0.1%以下とした
不純物元素としてのP、S、Al、N及びO(酸素)はその含有量を下記のとおりにする必要がある
P:0.020%以下
Pは伸線加工時における断線を誘発する。特に、その含有量が0.020%を超えると伸線加工時に断線が多くなる。したがって、不純物としてのPの含有量0.020%以下とした
S:0.020%以下
Sは伸線加工時における断線を誘発する。特に、その含有量が0.020%を超えると伸線加工時に断線が多くなる。したがって、不純物としてのSの含有量0.020%以下とした
Al:0.005%以下
Alは、Al系酸化物の生成の原因となる元素で、Al系酸化物は耐疲労特性及び伸線加工性を劣化させる。特に、その含有量が0.005%を超えると耐疲労特性の劣化が大きくなる。したがって、不純物としてのAlの含有量0.005%以下とした。Alの含有量は、0.004%以下とすることが好ましい。
N:0.005%以下
Nは、窒化物となる元素であり、又、歪時効によって延性及び靱性に悪影響を及ぼす。特に、その含有量が0.005%を超えると弊害が顕著になる。したがって、不純物としてのNの含有量0.005%以下とした。Nの含有量は、0.0035%以下とすることが好ましい。
O(酸素):0.0025%以下
Oの含有量が0.0025%を超えると酸化物の数と幅が増大し、耐疲労特性が著しく劣化する。このため、不純物としてのOの含有量0.0025%以下とした。Oの含有量は、0.0020%以下とすることが好ましい。
なお、発明のうちでも、特に、ばね及びスチールコードの用途に好適な素材鋼の化学成分は次に示すものである。
ばねの用途に対しては、鋼の化学組成が質量%で、C:0.45〜0.70%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.1〜1.0%で、且つ、Cr:0.02〜1.5%、Nb:0.002〜0.100%の1種以上を含み、更に、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.5%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、Co:0〜1.0%、B:0〜0.0030%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Zr:0〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のPは0.020%以下、Sは0.020%以下、Alは0.005%以下、Nは0.005%以下、Oは0.0025%以下のものがよい。
上記した鋼の化学成分の場合、熱処理後のばねに容易に1600MPa以上の引張強度を付与できる。
スチールコードの用途に対しては、鋼の化学成分が質量%で、C:0.60〜1.1%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜0.7%で、且つ、Cr:0.02〜1.5%、Nb:0.002〜0.100%の1種以上を含み、更に、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.5%、Mo:0〜0.2%、W:0〜0.5%、Co:0〜2.0%、B:0〜0.0030%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Zr:0〜0.1%以下を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のPは0.020%以下、Sは0.020%以下、Alは0.005%以下、Nは0.005%以下、Oは0.0025%以下のものがよい。
上記した鋼の化学成分の場合、直径で0.15〜0.35mmまで湿式伸線された鋼線に3200MPa以上の大きな引張強度を付与できる。
前記した耐疲労特性及び伸線加工性に優れた線材の素材鋼となる鋼の具体的な製造方法は特に限定する必要はない。しかし、鋼の溶製方法及び鋳造方法によって鋼の化学成分、特に不純物の含有量が変化するし、鋳造方法によって鋼塊の製造コストも変化する。このため、(3)の発明においては、線材の素材鋼となる鋼の製造方法、なかでも溶製方法及び鋳造方法を下記のとおり規定する。なお、ここでいう「鋼塊」とはJIS用語として規定されているように「鋳片」を含むものである
(D)鋼の精錬と鋳造の工程
線材の素材鋼となる鋼は、「転炉による一次精錬」、「転炉外での二次精錬」、「連続鋳造」の工程を順に経て鋼塊にするのがよい。転炉精錬、転炉外での二次精錬の工程は、鋼中の不純物元素の低減に極めて有効で、更に、連続鋳造して鋼塊にすることによって製造コストを比較的低く抑えることができるからである。
なお、既に述べたように「二次精錬」とは、ガスバブリングやアーク式加熱装置を有するとりべ精錬法、真空処理装置を使用する精錬法といった「清浄化のための転炉外での精錬法」で通常「炉外精錬」と称されるものを指す。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。なお、実施例において「本発明」又は「本発明例」は、(1)の発明の規定を満たすものを意味し、「比較例」は(1)の発明の規定から外れるものを意味する。
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する鋼を試験炉で溶製し、Si、Mnで脱酸した後に二次精錬し、試験炉から連続鋳造の工程までに溶鋼中に投入する金属Al量又は不可避的に不純物として混入する金属Al量(以下、これらのAl量を単に「混入Al量」という)、溶鋼と接触する耐火物及びフラックス中のAl23量(以下、単に「フラックスなどのAl23量」という)、試験炉から連続鋳造の工程までに添加するCr量、更に、二次精錬及びそれ以降の工程での溶鋼表面におけるとりべ中スラグの最終CaO/SiO2比(以下、単に「最終CaO/SiO2比」という)を変化させて、酸化物の組成が種々変わるようにし、次いで、連続鋳造を行った。
表1における鋼1〜11は本発明例に係るもので、混入Al量を5g/トン以下に調整するとともに、フラックスなどのAl23量を10%以下、Cr添加量を0.03〜2.00%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.8〜2.0の範囲に調整し、その後連続鋳造した。一方、鋼12〜22は比較例に係るもので、混入Al量、フラックスなどのAl23量、Cr添加量、最終CaO/SiO2比のいずれか1つ以上を変化させたものである。具体的には、鋼12と鋼13はそれぞれ最終CaO/SiO2比を0.7と2.1とした。鋼14と鋼15はそれぞれCr添加量を2.05%と0.02%とした。鋼16はCr添加量を0.02%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.6とした。鋼17はCr添加量を2.00%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.7とした。鋼18はCr添加量を0.02%とし、更に、最終CaO/SiO2比を2.1とした。鋼19はCr添加量を2.05%とし、更に、最終CaO/SiO2比を2.2とした。鋼20は混入Al量を6g/トンとし、更に、フラックスなどのAl23量を12%とした。鋼21は混入Al量を7g/トン、フラックスなどのAl23量を11%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.7とした。鋼22は混入Al量を7g/トン、フラックスなどのAl23量を11%とし、更に、最終CaO/SiO2比を2.1とした。なお、鋼1と鋼12、鋼2と鋼13、鋼3と鋼14、鋼4と鋼15、鋼5と鋼16、鋼6と鋼17、鋼7と鋼18、鋼8と鋼19、鋼9と鋼20、鋼10と鋼21、鋼11と鋼22はそれぞれほぼ同一の化学組成になるように調整した。
【表1】
Figure 0003601388
上記のようにして各鋼を連続鋳造した後、通常の方法で直径5.5mmの線材に、圧延温度及び冷却速度を調整しつつ熱間圧延した。これらの線材に一次伸線加工(仕上がり径(直径)2.8mm)、一次パテンティング処理、二次伸線加工(仕上がり径(直径)1.2mm)を施した。この後更に、最終パテンティング処理(950〜1050℃のオーステナイト化温度、560〜610℃の鉛浴温度)を施し、引き続きブラスめっき処理を行ってから伸線速度550m/分の条件で湿式伸線加工(仕上がり径0.2mm)を行った。
表1に、直径5.5mmの線材のL断面を鏡面研磨し、その研磨面を被検面としてEPMA装置で分析して幅が2μm以上の酸化物約30個の組成を測定し、その平均値を求めた結果及び0.2mm鋼線における引張強度と疲労強度を併せて示す。なお、疲労強度は、温度が20〜25℃、湿度が50〜60%の条件下でハンター式回転曲げ疲労試験機を用いて106サイクル試験した場合の結果である。
表1から、本発明例に係る鋼1〜11の場合には、比較例に係る鋼12〜22に比べて高い疲労強度を有していることが明らかである。
表2に、上記の各鋼について、直径1.2mmの鋼線を直径0.2mmの鋼線に湿式伸線した場合の断線指数(鋼線1トン当たりの断線回数(回/トン))を示す。
【表2】
Figure 0003601388
表2から、本発明例に係る鋼1〜11の場合には、比較例に係る鋼12〜22に比べて断線指数が低く、優れた伸線加工性を有していることが明らかである。
(実施例2)
表3に示す化学組成を有する鋼を試験炉で溶製し、Si、Mnで脱酸した後に二次精錬し、「混入Al量」、「フラックスなどのAl23量」、試験炉から連続鋳造の工程までに添加するCrとNbの量、更に、「最終CaO/SiO2比」を変化させて、酸化物の組成が種々変わるようにし、次いで、連続鋳造を行った。
表3における鋼23、鋼24、鋼26、鋼27及び鋼29〜33は本発明例に係るもので、混入Al量を5g/トン以下に調整するとともに、フラックスなどのAl23量を10%以下、且つ、Cr添加量を0.03〜2.00%、Nb添加量を0.003〜0.120%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.8〜2.0の範囲に調整し、その後連続鋳造した。一方、鋼34〜44は比較例に係るもので、混入Al量、フラックスなどのAl23量、Cr添加量、Nb添加量、最終CaO/SiO2比のいずれか1つ以上を変化させたものである。具体的には、鋼34は最終CaO/SiO2比を0.7とした。鋼35は、Cr添加量を2.05%、Nb添加量を0.002%とした。鋼36は、Cr添加量を2.00%、Nb添加量を0.002%とした。鋼37は、Cr量を2.05%、Nb量を0.002%とした。鋼38は、Cr添加量を0.02%、Nb添加量を0.002%とした。鋼39は、Cr添加量2.00%、Nb添加量を0.135%とした。鋼40は、Cr添加量を0.02%、Nb添加量を0.130%とした。鋼41は、Cr添加量を2.00%、Nb添加量を0.002%とした。鋼42は、混入Al量を6g/トンとし、更に、フラックスなどのAl23量を12%とした。鋼43は混入Al量を7g/トン、フラックスなどのAl23量を11%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.7とした。鋼44は混入Al量を7g/トン、フラックスなどのAl23量を11%とし、更に、最終CaO/SiO2比を2.1とした。なお、鋼23と鋼34、鋼24と鋼35、鋼26と鋼37、鋼27と鋼38、鋼29と鋼40、鋼30と鋼41、鋼31と鋼42、鋼32と鋼43、鋼33と鋼44はそれぞれほぼ同一の化学組成になるように調整した。
【表3】
Figure 0003601388
上記のようにして各鋼を連続鋳造した後、通常の方法で直径5.5mmの線材に、圧延温度及び冷却速度を調整しつつ熱間圧延した。これらの線材に一次伸線加工(仕上がり径(直径)2.8mm)、一次パテンティング処理、二次伸線加工(仕上がり径(直径)1.2mm)を施した。この後更に、最終パテンティング処理(950〜1050℃のオーステナイト化温度、560〜610℃の鉛浴温度)を施し、引き続きブラスめっき処理を行ってから伸線速度550m/分の条件で湿式伸線加工(仕上がり径0.2mm)を行った。
表3に、直径5.5mmの線材のL断面を鏡面研磨し、その研磨面を被検面としてEPMA装置で分析して幅が2μm以上の酸化物約30個の組成を測定し、その平均値を求めた結果及び0.2mm鋼線における引張強度と疲労強度を併せて示す。なお、疲労強度は、温度が20〜25℃、湿度が50〜60%の条件下でハンター式回転曲げ疲労試験機を用いて106サイクル試験した場合の結果である。
表3から、本発明例に係る鋼23、鋼24、鋼26、鋼27及び鋼29〜33の場合には、比較例に係る鋼34〜44に比べて高い疲労強度を有していることが明らかである。
表4に、上記の各鋼について、直径1.2mmの鋼線を直径0.2mmの鋼線に湿式伸線した場合の断線指数(鋼線1トン当たりの断線回数(回/トン))を示す。
【表4】
Figure 0003601388
表4から、本発明例に係る鋼23、鋼24、鋼26、鋼27及び鋼29〜33の場合には、比較例に係る鋼34〜44に比べて断線指数が低く、優れた伸線加工性を有していることが明らかである。
(実施例3)
表5に示す化学組成を有する鋼を転炉による一次精錬、炉外精錬による二次精錬、連続鋳造のプロセスで製造した。すなわち、転炉で溶製し、出鋼時にSi、Mnで脱酸してから二次精錬し、転炉から連続鋳造の工程までに溶鋼中に投入する金属Al量又は不可避的に不純物として混入する金属Al量(以下、これらのAl量も単に「混入Al量」という)、溶鋼と接触する耐火物及びフラックス中のAl23量(以下、このAl23量も単に「フラックスなどのAl23量」という)、転炉から連続鋳造の工程までに添加するCrとNbの量、更に、「最終CaO/SiO2比」(つまり、二次精錬及びそれ以降の工程での溶鋼表面におけるとりべ中スラグの最終CaO/SiO2比)を変化させて、酸化物の組成が種々変わるようにし、次いで、連続鋳造を行った。
表5における鋼45、鋼46、鋼48、鋼49及び鋼51〜55は本発明例に係るもので、混入Al量を5g/トン以下に調整するとともに、フラックスなどのAl23量を10%以下、且つ、Cr添加量を0.03〜2.00%、Nb添加量を0.003〜0.125%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.8〜2.0の範囲に調整し、その後連続鋳造した。一方、鋼56〜66は比較例に係るもので、混入Al量、フラックスなどのAl23量、Cr添加量、Nb添加量、最終CaO/SiO2比のいずれか1つ以上を変化させたものである。具体的には、鋼56は最終CaO/SiO2比を0.7とした。鋼57は、Cr添加量を2.05%、Nb添加量を0.002%とした。鋼58は、Cr添加量を2.00%、Nb添加量を0.002%とした。鋼59は、Cr添加量を2.00%、Nb添加量を0.002%とした。鋼60は、Cr添加量を0.02%、Nb添加量を0.002%とした。鋼61は、Cr添加量を2.05%、Nb添加量を0.140%とした。鋼62は、Cr添加量を0.02%、Nb添加量を0.135%とした。鋼63は、Cr添加量を2.05%、Nb添加量を0.002%とした。鋼64は、混入Al量を6g/トンとし、更に、フラックスなどのAl23量を12%とした。鋼65は混入Al量を7g/トン、フラックスなどのAl23量を11%とし、更に、最終CaO/SiO2比を0.7とした。鋼66は混入Al量を7g/トン、フラックスなどのAl23量を11%とし、更に、最終CaO/SiO2比を2.1とした。なお、鋼45と鋼56、鋼46と鋼57、鋼48と鋼59、鋼49と鋼60、鋼51と鋼62、鋼52と鋼63、鋼53と鋼64、鋼54と鋼65、鋼55と鋼66はそれぞれほぼ同一の化学組成になるように調整した。
【表5】
Figure 0003601388
上記のようにして各鋼を連続鋳造した後、通常の方法で直径5.5mmの線材に、圧延温度及び冷却速度を調整しつつ熱間圧延した。これらの線材に一次伸線加工(仕上がり径(直径)2.8mm)、一次パテンティング処理、二次伸線加工(仕上がり径(直径)1.2mm)を施した。この後更に、最終パテンティング処理(950〜1050℃のオーステナイト化温度、560〜610℃の鉛浴温度)を施し、引き続きブラスめっき処理を行ってから伸線速度550m/分の条件で湿式伸線加工(仕上がり径0.2mm)を行った。
表5に、直径5.5mmの線材のL断面を鏡面研磨し、その研磨面を被検面としてEPMA装置で分析して幅が2μm以上の酸化物系介在物約30個の組成を測定し、その平均値を求めた結果及び0.2mm鋼線における引張強度と疲労強度を併せて示す。なお、疲労強度は、温度が20〜25℃、湿度が50〜60%の条件下でハンター式回転曲げ疲労試験機を用いて106サイクル試験した場合の結果である。
表5から、本発明例に係る鋼45、鋼46、鋼48、鋼49及び鋼51〜55の場合には、比較例に係る鋼56〜66に比べて高い疲労強度を有していることが明らかである。
表6に、上記の各鋼について、直径1.2mmの鋼線を直径0.2mmの鋼線に湿式伸線した場合の断線指数(鋼線1トン当たりの断線回数(回/トン))を示す。
【表6】
Figure 0003601388
表6から、本発明例に係る鋼45、鋼46、鋼48、鋼49及び鋼51〜55の場合には、比較例に係る鋼56〜66に比べて断線指数が低く、優れた伸線加工性を有していることが明らかである。
【発明の効果】
本発明の線材は耐疲労特性及び伸線加工性に優れるので、この線材を素材としてワイヤロープ、弁ばね、懸架ばね、PC鋼線、スチールコードなどを高い生産性の下に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】巨大で不均一組成の介在物が晶出すると、その巨大介在物のうちで軟質な部分は熱間圧延及び冷間圧延や伸線で小型化するが、硬質の部分は大型のまま残存してしまうことを示す概念図である。なお、斜線をつけた部分が不均一相を示す。又、図1において(a)、(b)及び(c)はそれぞれ鋳片中、線材中及び鋼線中の介在物を示す。

Claims (3)

  1. 鋼の化学成分が質量%で、C:0.45〜1.1%、Si:0.1〜2.5%、Mn:0.1〜1.0%で、且つ、Cr:0.02〜1.50%、Nb:0.002〜0.100%の1種以上を含み、更に、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.5%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、Co:0〜2.0%、B:0〜0.0030%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.1%、Zr:0〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.020%以下、Sは0.020%以下、Alは0.005%以下、Nは0.005%以下、O(酸素)は0.0025%以下であって、長手方向縦断面における幅2μm以上の酸化物が平均値として、質量%で、SiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%を含む耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材。
  2. 長手方向縦断面における幅2μm以上の酸化物がSiO2、CaO、Al23、MgO、MnO、Cr23、NbOで構成され、その含有量の平均値が質量%で、SiO2:70%以上、CaO+Al23:20%未満、Cr23+NbO:0.1〜10%である請求項1に記載の耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材。
  3. 転炉による一次精錬、転炉外での二次精錬の後、連続鋳造する請求項1又は2に記載の耐疲労特性及び伸線加工性に優れた鋼線材に用いる鋼の製造方法。
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