JP3698978B2 - 光拡散性シート及び光学素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、EL、PDPなどにおいて、画面の視認性の低下を抑えるために用いられている光拡散性シート、当該光拡散性シートが設けられている光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LCDなどの画像表示装置は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、ディスプレイ表面には、画像の視認性を向上するために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた光拡散層が設けられている。光拡散層の形成方法としては、構造の微細化が容易なこと、また生産性がよいことから微粒子を分散した樹脂をコーティングして樹脂皮膜層を形成する方法が主流となっている。
【0003】
しかし、高精細(たとえば、100ppi以上)なLCDの場合に、上記光拡散層を装着すると、光拡散層の表面で突出した粒子により形成される微細凹凸構造に起因すると思われるギラツキ(輝度の強弱の部分)がLCD表面に発生し視認性を低下させる問題がある。
【0004】
このギラツキ現象を改善するために、微細凹凸構造表面をコントロールすると、ギラツキの改善と共に、表面散乱が起こり表示画面が白っぽくなる、いわゆる白ぼけにより画面表示コントラストが低下するという問題や、透過画の像鮮明性が悪くなったりする問題が生じる。たとえば、特開平11−326608号には光拡散性シートの曇価(ヘイズ)を10%以上40%未満、像鮮明性を50以上とすることにより、ギラツキを防止できるという技術が開示されている。しかしながら、当該技術は12.1インチXGA(106ppi)でのギラツキ防止効果を有するに留まり、パネルがより高精細化され、200ppi以上(例えば6インチ、XGA;210ppi)になっている場合には、ギラツキの問題は解消されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細なLCDに適用した場合にも、防眩性を維持しつつ、画面のギラツキ現象を抑え、かつ白ぼけが殆ど認めらず、像鮮明性のよい光拡散層を有する光拡散性シート、さらには当該光拡散性シートが設けられている光学素子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特性を有する光拡散性シートにより前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は、透明基板の少なくとも片面に、微粒子を含有する樹脂皮膜層であって、かつ表面に微粒子によって形成されている微細凹凸形状を有する樹脂皮膜層からなる光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、当該微粒子の平均粒子径が2〜10μmであり、当該光拡散性シートのヘイズ値が40%以上60%以下であって、かつJISK7105における0.5mm幅の光学くしで測定した像鮮明性が35〜60であることを特徴とする光拡散性シート、に関する。
【0008】
上記本発明の光拡散性シートはヘイズ値を40%以上とし、像鮮明性を35以上とすることにより、ギラツキ及び白ぼけを抑え、しかも像鮮明性を確保している。ヘイズ値が40%未満では、高精細化した場合のギラツキを抑えられない。ヘイズ値は40%以上とするのが好ましい。一方、ヘイズ値が高くなると透過率が低下するため、ヘイズ値は60%以下が好ましい。ヘイズ値は、特に40〜50%とするのが好ましい。また像鮮明性が35未満では透過画像がぼけるため、高精細LCDを用いる場合に、その意味が低減する。像鮮明性は40以上、特に40〜60の範囲とするのが好ましい。
【0009】
前記光拡散性シートにおいて、樹脂皮膜層に含有される微粒子は有機系微粒子であることが好ましい。また、樹脂皮膜層が紫外線硬化型樹脂により形成されていることが好ましい。さらには、樹脂皮膜層がチクソトロピー剤を含有していることが好ましい。
【0010】
微粒子を用いることにより、表面凹凸形状を有する樹脂皮膜層を簡易かつ確実に実現でき、また上記ヘイズ値、像鮮明性の調整も容易である。特に、微粒子として有機系微粒子を用いた場合には、ギラツキを抑えるうえで有効である。また、紫外線硬化型樹脂は紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく樹脂皮膜層(光拡散層)を形成することができる。さらには、樹脂皮膜層の形成に当たり、チクソトロピー剤を含有させることにより、樹脂皮膜層(光拡散層)の表面において、突出粒子により微細凹凸構造を容易に形成することができる。
【0011】
また、本発明は、前記光拡散性シートの樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、樹脂皮膜層の屈折率よりも低い屈折率の低屈性率層が設けられていることを特徴とする光拡散性シート、に関する。
【0012】
低屈折率層により反射防止機能を付与でき、ディスプレイ等の画像表面の乱反射による画面の白ぼけを有効に抑えることができる。
【0013】
さらに、本発明は、前記光拡散性シートが、光学素子の片面又は両面に設けられていることを特徴とする光学素子、に関する。
【0014】
本発明の光拡散性シートは各種の用途に用いることができ、たとえば、光学素子に用いられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、微粒子3が分散されている樹脂皮膜層2からなる光拡散層4が、透明基板1上に形成されている光拡散性シートであり、樹脂皮膜層2中に分散されている微粒子3は、光拡散層4の表面において凹凸形状を形成している。なお、図1では、樹脂皮膜層2が1層の場合を示しているが、樹脂皮膜層2と透明基板1との間には、別途、微粒子を含有する樹脂皮膜層を形成することにより、光拡散層を複数の樹脂皮膜層によって形成することもできる。
【0016】
透明基板1としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0017】
透明基板1の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0018】
微細凹凸構造表面を有する樹脂皮膜層2は、透明基板1上に、図1のように樹脂皮膜層2に微粒子3を分散含有させて微細凹凸構造を付与する方法により形成される。
【0019】
当該樹脂皮膜層2を形成する樹脂としては微粒子3の分散が可能で、樹脂皮膜層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0020】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0021】
前記紫外線硬化型樹脂(樹脂皮膜層2の形成)には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を用いることができる。チクソトロピー剤を用いると、微細凹凸構造表面における突出粒子の形成に有利である。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、1〜15重量部程度とするのが好適である。
【0022】
微粒子3としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスティックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化カルシウムや酸化錫、酸化インジウムや酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子やシリコーン系微粒子などがあげられる。これら微粒子3は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系微粒子が好ましい。微粒子の平均粒子径は2〜10μm、好ましくは2〜5μmである。
【0023】
微粒子3を含有する樹脂皮膜層2の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記透明基板1上に、微粒子3を含有する樹脂(たとえば、紫外線硬化型樹脂:塗工液)を塗工し、乾燥後、硬化処理して表面に凹凸形状を呈するような樹脂皮膜層2により形成することにより行う。なお、塗工液は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。
【0024】
形成した光拡散層4の表面のヘイズ値、像鮮明性を前記範囲とするには、前記塗工液に含まれる微粒子3の平均粒子径、その割合や樹脂皮膜層2の厚さを適宜に調整する。
【0025】
前記塗工液に含まれる微粒子3の割合は特に制限されないが、樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、さらには5〜15重量部とするのが、ギラツキ、白ぼけ等の特性を満足するうえで好ましい。また、樹脂皮膜層2の厚さは特に制限されないが、1〜10μm程度、特に3〜5μmとするのが好ましい。
【0026】
前記光拡散層4を形成する樹脂皮膜層2の凹凸形状表面には、反射防止機能を有する低屈折率層を設けることができる。低屈折率層の材料は樹脂皮膜層2よりも屈折率の低いものであれば特に制限されないが、たとえば、フッ素含有ポリシロキサンなどの低屈折率材料を用いることができる。低屈折率層の厚さは特に制限されないが、0.05〜0.3μm程度、特に0.1〜0.3μmとするのが好ましい。
【0027】
また、前記図1の光拡散性シートの透明基板1には、光学素子を接着することができる(図示せず)。光学素子としては、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償付き偏光板等があげられ、これらは積層体として用いることができる。光学素子の接着は、必要に応じて、アクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの透明性や耐候性などに優れる適宜な接着層を介することができる。
【0028】
偏光板としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や染料等を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如き偏光フィルムがあげられる。位相差板としては、前記透明基板で例示したポリマーフィルムの一軸または二軸延伸フィルムや液晶ポリマーフィルムなどがあげられる。位相差板は、2層以上の延伸フィルムの重畳体などとして形成されていてもよい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板と位相差板を積層することにより形成しうる。楕円偏光板、光学補償付き偏光板は、偏光板側の面に、光拡散層を形成している。
【0029】
【実施例】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0030】
実施例1
アクリル系の紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート系モノマー)100重量部に、平均粒子径が3μmのポリスチレンビーズを15重量部、チクソトロピー剤(雲母)3重量部および光重合開始剤(商品名:イルガキュア907,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3重量部をトルエンを介して混合し、50重量%に調整した塗工液をトリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、紫外線照射により硬化処理して、厚さ約5μmの微細凹凸構造表面の樹脂皮膜層を有する光拡散性シートを作製した。
【0031】
実施例2
実施例1において、微粒子として平均粒子径3μmのメラミンビーズ15重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0032】
実施例3
実施例1において、樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、さらに樹脂皮膜層の屈折率(1.52)よりも屈折率の低い低屈折率層(材料として日産化学(株)のLR−202を使用,屈折率:1.39)を0.1μmを設けたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0033】
比較例1
実施例1において、微粒子として平均粒子径3.5μmのシリカビーズ15重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0034】
比較例2
実施例1において、微粒子として平均粒子径3μmのメラミンビーズ1.5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0035】
比較例3
実施例1において、微粒子として平均粒子径3μmのシリコーン粒子20重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして光拡散性シートを作製した。
【0036】
実施例および比較例で得られた光拡散性シートのヘイズ値、像鮮明性を測定した。なお、実施例3については低屈折率層を設けていない場合の値である。結果を表1に示す。
【0037】
(ヘイズ)
JIS−K7105に準じ、ヘイズメーター(東京電色工業社製モデルTC−H3DP)を用いて測定した。
【0038】
(像鮮明性)
JIS K7105に準じ、スガ試験機製写像鮮明性測定装置により、0.5mm幅の光学くしで測定した。
【0039】
前記実施例および比較例で得られた光拡散性シートに偏光板(185μm)を接着したものを、ガラス基板に接着し、ライトテーブル上に固定されたマスクパターン(6インチのXGAに相当するパターン(210ppi))上でギラツキ度合い(ギラツキ)を目視により以下の基準で評価した。またガラス基板の偏光板接着面と反対側の面に黒テープを貼りつけて、白ぼけを目視により以下の基準で評価した。また、上記ガラス基板上に文字を印刷した紙を置き、この文字を見た際の鮮明性を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。なお、蛍光灯下における写り込み(防眩性)はいずれも良好であった。
【0040】
ギラツキ、白ぼけ、鮮明性の評価は、目視にて10名が、
良好:各特性に対して好印象である、
普通:各特性に対して実使用上の影響を感じない、
不良:各特性に対して実使用上の影響を感じる、で判定し、
◎:9人以上が良好、
○:5人以上が良好、
×:3人以上が不良、と評価した。
【0041】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光拡散性シートの断面図の一例である。
【符号の説明】
1:透明基板
2:樹脂層
3:微粒子
4:光拡散層
Claims (7)
- 透明基板の少なくとも片面に、微粒子を含有する樹脂皮膜層であって、かつ表面に微粒子によって形成されている微細凹凸形状を有する樹脂皮膜層からなる光拡散層が形成されている光拡散性シートにおいて、当該微粒子の平均粒子径が2〜10μmであり、当該光拡散性シートのヘイズ値が40%以上60%以下であって、かつJISK7105における0.5mm幅の光学くしで測定した像鮮明性が35〜60であることを特徴とする光拡散性シート。
- 微粒子が有機系微粒子であることを特徴とする請求項1記載の光拡散性シート。
- 樹脂皮膜層が紫外線硬化型樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光拡散性シート。
- 樹脂皮膜層がチクソトロピー剤を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性シートの樹脂皮膜層の凹凸形状表面に、樹脂皮膜層の屈折率よりも低い屈折率の低屈性率層が設けられていることを特徴とする光拡散性シート。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性シートが、光学素子の片面又は両面に設けられていることを特徴とする光学素子。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性シート、または請求項6記載の光学素子が用いられていることを特徴とする画像表示装置。
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