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JP3698828B2 - 信号伝送システム、半導体装置モジュール、入力バッファ回路、及び半導体装置 - Google Patents

信号伝送システム、半導体装置モジュール、入力バッファ回路、及び半導体装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般にバスを用いたデータ伝送システムに関し、詳しくはターミネーションを有する高速バス配線を用いたデータ伝送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロプロセッサの高速化に伴って、LSIチップ間のデータ転送に於ても、より高い周波数を用いたより高速なデータ転送が要求される。しかしながら従来のLSIの入出力レベルであるTTLレベルやCMOSレベルに於ては、信号周波数が50MHzを越えるあたりから信号の反射の影響やクロストークの影響が大きくなり、正常なデータ転送が困難になる。
【0003】
これを解決するために、信号レベルを1V以下に抑さえた小振幅信号を用いるCTT(Center Tapped Termination )やGTL(Gunning Trasnceiver Logic )等の入出力インターフェースが提案されている。
図8にGTLシステムを示す。図8のGTLシステムは、特性インピーダンスZ0 を有するバス10、バス10の終端を終端電圧Vttに接続する終端抵抗Rt、バス10から分岐する特性インピーダンスZ1 のスタブ(配線分岐部分)11、及びスタブ11の終端に接続されるメモリやコントローラ等のデバイス20を含む。ここで終端電圧Vttは1.2 Vであり、終端抵抗Rtは50Ωである。
【0004】
スタブ11に接続されたデバイス20のI/O端子には、デバイス20の出力回路及び入力バッファ回路が接続される。デバイス20の出力回路は、ダンピング回路21及びドライバトランジスタ22を含む。デバイス20の入力回路は、トランジスタ23乃至27からなるカレントミラー型差動増幅器とインバータ28を含む。カレントミラー型差動増幅器はI/O端子に入力された信号電圧を参照電圧Vrefと比較して、信号電圧が参照電圧Vrefよりも高い場合に、ロー電位をインバータ28に供給する。逆に、信号電圧が参照電圧Vrefよりも低い場合に、ハイ電位をインバータ28に供給する。インバータ28は入力された電位を反転して、デバイス20の内部回路に供給する。
【0005】
GTLのメリットは幾つかあるが、第1に、図8に示されるようにオープンドレイン型のドライバ回路(出力回路)を用いるので、バス上でワイヤード・オアの論理機能を提供できる点が挙げられる。第2に、バス上の論理状態はハイ或いはローのいずれかしか存在しないので、バスを共有する各ドライバが全てオフ状態の時には、バス上の論理状態はハイに固定される点が挙げられる。これに対して、CTTなどトライステート型のバスに於ては、各ドライバが全てオフになるとバス上の論理状態はハイとローの中間レベルとなる。従って、バスに接続された入力バッファ回路はハイとローの判別がつかない信号を受け取ることになり、ハイとローを雑音に応じてランダムに検出する不安定状態になる。これを防ぐためにCTTに於ては、各ドライバが全てオフ状態になるときには、動作を禁止するコマンドを入力バッファ回路に対して入力する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
GTLのデメリットとしては、スタブ11が長くバス10とドライバ(ドライバトランジスタ22)との間に距離がある場合、例えば信号周波数が200MHzでスタブ11の長さが2mm以上である場合など、ドライバがオフされたあとに激しいリンギング波形が生じることが挙げられる。この現象は、リードフレームやボンディングワイヤの寄生インダクタンスが存在する場合に、特に顕著になる。
【0007】
図9は、リードフレームやボンディングワイヤに存在する寄生インダクタンスL1 及びC1 を模式的に示す図である。図9に於て、ドライバトランジスタ22のオン及びオフをモデル化するスイッチSがオンからオフに変化すると、急激な電流遮断により逆起電力が生じ、パルス状の電圧波形がスタブ11を介してバス10に向かう。スタブ11とバス10との間にはインピーダンス不整合が存在するため、このパルス状電圧波形は、スタブ11とバス10との接続点に於いて反射され、スタブ11を戻ってドライバトランジスタ22側に向かう。ここでドライバトランジスタ22はオフされているので開放端となり、パルス状電圧波形は完全反射されてスタブ11内に戻る。このようなサイクルを繰り返すために、バス10からのスタブ11の分岐点とドライバトランジスタ22との間で、激しいリンギング波形が生じることになる。
【0008】
図10には、計算機シミュレーションによりもとめられたリンギング波形を示す。図10(A)はスタブの長さがゼロの場合、図10(B)はスタブの長さが1cmの場合、図10(C)はスタブの長さが2cmの場合、図10(D)はスタブの長さが5cmの場合を示す。またシミュレーション条件を図11に示す。ドライバDVと8つのメモリM1 乃至M8 が双方向データバスに接続された条件で、ドライバDVがメモリM1 に周波数100MHzでデータを書き込む場合を想定している。
【0009】
図10(A)乃至(D)に於て、実線はメモリM1 にデータを書き込むデバイスDV側のドライバ端の波形を示し、波線はメモリM1 側のレシーバ端の波形を示す。図10(A)乃至(D)に示されるように、スタブの長さが増大するに従って、より激しいリンギング波形が発生することが分かる。
【0010】
これを防ぐ為には、ターンオフを緩やかに行う様にドライバトランジスタ22を制御すればよい。図8のダンピング回路21はこの目的のために設けられているものであり、このダンピング回路21によって、ドライバトランジスタ22のターンオフを時間をかけて緩やかに行う。しかしながらこのようなダンピング回路21を用いると、デバイス20が動作可能な最高周波数が制限されることになり好ましくない。
【0011】
この問題点を解決するためには、スタブ11の長さを極端に短くすることによりターンオフ時の波形を改善するしかないと考えられてきた。しかしながらリンギング波形を充分抑さえるためには、スタブ11を排除してデバイス20を直接バス10に接続する必要がある。例えばデバイス20がメモリICの場合、メモリICを直接マザーボードのバス配線に取付けることが必要になる。この場合、メモリICをモジュール形態で使用することが不可能になってしまう。即ち、メモリICが直接バス配線に接続されているため、メモリICを自由に着脱することが不可能になり、例えば新たなメモリICを増設するということが不可能になる。
【0012】
またスタブ11を排除してメモリICを直接バス10に接続する場合、メモリチップを小型化していく(シュリンクする)ことが出来なくなるという問題点がある。メモリメーカーは、メモリチップを小型化していくことによりコストダウンを達成する。しかしチップを小型化する場合、マザーボードの配線形状は変えずに、パッケージ外部引き出しピンとパッケージ内部のメモリチップの間を繋ぐリードフレームを長くする必要がある。しかしながらリードフレームを長くすると結局スタブが生じることになってしまう。従ってメモリICをバスに直接接続する場合には、このようなシュリンク技術を使用できないことになる。
【0013】
またGTLの別のデメリットとして、終端電圧が1.2 Vと低いため、ある選択されたデバイスがロー出力している状態から、別のデバイスが選択されてこの新たに選択されたデバイスがロー出力する状態に切り替わると、バス上の信号レベルがハイとローとの中間レベルになってしまう点が挙げられる。
【0014】
図12は、バス上に中間レベルの電圧が生成される過程を説明するための図である。まず最初の状態では、図12(A)に示されるように、バス10に接続されたドライバD1及びドライバD2のうちで、ドライバD1が選択されてオン状態(ロー出力状態)となっている。この状態では、バス10はロー電位(0.4 V)に保たれており、レシーバRはこのロー電位を検出する。この時ドライバD1には32mAの電流が流れる。
【0015】
次に、図12(B)に示されるように、ドライバD1を非選択としてオフ状態とすると同時に、ドライバD2を選択してオン状態(ロー出力状態)とする。この状態では、ドライバD1付近のバス10は終端抵抗Rt1でプルアップされハイ電位(1.2 V)となり、このハイ電位がレシーバRによって検出される。しかしこの状態では、ドライバD1がオフになった情報がドライバD2の位置まで伝達されていない。即ち、終端抵抗Rt1でプルアップされたハイ電位が、ドライバD2の位置ではまだ現われていない。従って、ドライバD2付近のバス10はロー電位(0.4 V)のままであるため、ドライバD2には充分な電流(32mA)が流れないことになる。つまりドライバD2近傍では、終端抵抗Rt2から供給される電流が、ドライバD2に流れ込むと同時に、見掛け上まだオン状態であるドライバD1の方向にも流れることになる。従って、ドライバD1及びドライバD2が共にオンである状態と等価となり、バス10のドライバD2付近の電位は0.4 Vより若干低い電位となる。
【0016】
図12(C)の状態は、図12(B)から若干時間が経過した状態であり、ドライバD1がオフになり終端抵抗Rt1でプルアップされたハイ電位が、ドライバD2の位置まで到達した状態である。この状態では、デバイスD2の位置においてもデバイスD1がオフ状態にあることが検出されるので、デバイスD2には充分な電流(32mA)が流れて完全なオン状態となる。またデバイスD2付近のバス10の電位はロー電位(0.4 V)となる。しかしこの時レシーバRには、デバイスD2が完全なオン状態となった情報がまだ到達していない。即ち、デバイスD1がオフ状態となった情報がデバイスD2まで到達して折り返され、レシーバRに向かっている状態である。即ち、レシーバRが検出できる状態は、ドライバD1がオフとなったがドライバD2が中途半端にオンとなった状態である。この状態では、ドライバD1付近のバス10の電位は、ハイ電位とロー電位との中間レベルとなる。
【0017】
図12(D)は、ドライバD1がオフでありドライバD2がオンである状態が定常的になった状態を示す。この状態では、ドライバD2が完全にオンになった情報がバス10全体に行き渡り、バス10の電位及びレシーバRが検出する電位はロー電位(0.4 V)となる。
【0018】
このように、バス10の電位は瞬間的に中間レベルを示すことになる。
図13に、計算機シミュレーションにより求められた中間レベルの出現の様子を示す。図13に示す波形は、図12のレシーバRによって検出される波形であり、図中矢印で示されるようにハイ電位でもロー電位でもない中間レベルが出現している。上述の説明からも分かるように、レシーバRによって検出される波形が瞬間的にハイ電位を示すことは避けることが出来ない。しかしハイ電位の後に続く中間電位によって、デバイスD1からデバイスD2への切り換え速度が必要以上に制限されることになる。即ち、図中T1で示される期間は、バス上の信号電圧が正しいものではないため、このT1の期間中はシステムの動作を待たせる必要が生じる。
【0019】
この中間電位の出現は、バス10の終端電圧1.2 Vを2.5 V程度に高くすることによって避けることが出来る。例えば2.5 V程度の終端電圧を用いると、ドライバD1及びD2のトランジスタのドレインには高電圧が加わることになり、図12(B)の状態に於て既に、ドライバD2には32mAの充分な電流が流れる。従って、ドライバD2は最初から充分な電流量を引き込む完全なオン状態となるので、中間電位がバス上に出現しない。このように、ドライバトランジスタがオン状態に於て定電流源となる様なレンジでシステムを動作させれば、中間電位の出現を回避することが出来る。
【0020】
しかしながらGTLに於て終端電圧を例えば2.5 Vとしたのでは、ドライバの消費電力が著しく増大することになり好ましくない。
従って本発明は、オープンドレイン型のドライバ及び終端抵抗を用いたバス伝送システムに於て、ドライバのターンオフに伴うリンギングを、スタブ長を短くすることなく抑制することを目的とする。
【0021】
また本発明は、オープンドレイン型のドライバ及び終端抵抗を用いたバス伝送システムに於て、終端電圧を高くしてデバイス切り換え時の中間電位状態を無くすと共に、デバイス消費電力の増加を避けることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に於ては、信号伝送システムは、終端抵抗を介して終端電位に接続された信号伝送線路と、該信号伝送線路に信号を出力するオープンドレイン型トランジスタと、該オープンドレイン型トランジスタのドレインと該信号伝送線路とを接続する該信号伝送線路から分岐する分岐配線と、該信号伝送線路の近傍で該分岐配線に挿入された抵抗を含むことを特徴とする。
【0023】
請求項2の発明に於ては、請求項1記載の信号伝送システムに於て、前記信号伝送線路は特性インピーダンスZ0 を有し、前記分岐配線は特性インピーダンスZ1 を有し、前記抵抗は(Z1 −Z0 /2)の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明に於ては、請求項1又は2記載の信号伝送システムに於て、前記終端抵抗は前記特性インピーダンスZ0 の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする。
請求項4の発明に於ては、請求項3記載の信号伝送システムに於て、前記終端電位は2.5 V±0.25Vであることを特徴とする。
【0025】
請求項5の発明に於ては、請求項3又は4記載の信号伝送システムに於て、前記抵抗は24Ωから51Ωの範囲の抵抗値を有することを特徴とする。
請求項6の発明に於ては、半導体装置モジュールは、終端抵抗を介して終端電位に接続された信号伝送線路に接続される半導体装置モジュールであって、基板と、該基板の側面に配置され該信号伝送線路に接続される電極と、該信号伝送線路に信号を出力するオープンドレイン型トランジスタを含み基板上に搭載される半導体装置と、該半導体装置の該オープンドレイン型トランジスタのドレインと該電極とを接続する接続配線と、該接続配線に該信号伝送線路の近傍で挿入された抵抗を含むことを特徴とする。
【0026】
請求項7の発明に於ては、請求項6記載の半導体装置モジュールに於て、前記信号伝送線路の特性インピーダンスをZ0 として、前記接続配線は特性インピーダンスZ1 を有し、前記抵抗は(Z1 −Z0 /2)の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする。
【0027】
請求項8の発明に於ては、請求項7記載の半導体装置モジュールに於て、前記抵抗は24Ωから51Ωの範囲の抵抗値を有することを特徴とする。
請求項9の発明に於ては、信号伝送システムは、終端抵抗を介して終端電位に接続されたバスと、所定長より長い第1の分岐配線を介して該バスに接続される第1のチップと、所定長より短い第2の分岐配線を介して該バスに接続される第2のチップと、該バスの近傍で該第1の分岐配線に挿入された抵抗を含むことを特徴とする。
【0028】
請求項10の発明に於ては、請求項9記載の信号伝送システムに於て、前記第1のチップはPGAパッケージ或いはBGAパッケージに格納されたメモリコントローラであり、前記第2のチップは前記バスが配線されたボードに垂直に取付けられるメモリチップであることを特徴とする。
【0029】
請求項11の発明に於ては、電源電圧の近傍に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路は、該信号電圧と参照基準電圧との電圧レベルをシフトするレベルシフト回路と、該レベルシフト回路の電圧レベルシフト後の目標電圧を設定する目標電圧設定回路と、該レベルシフト回路で電圧レベルがシフトされた該信号と該参照基準電圧との差を増幅する差動増幅回路を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項12の発明に於ては、電源電圧の近傍に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路は、該信号電圧と参照基準電圧との電圧差を検出する差動増幅回路と、該差動増幅回路に流れる該電圧差に対応した電流を受け取り、該電流を電圧に変換する電流電圧変換回路を含むことを特徴とする。
【0031】
請求項13の発明に於ては、請求項12記載の入力バッファ回路に於て、前記差動増幅回路に流れる前記電流を複製して前記電流電圧変換回路に提供するカレントミラー回路を更に含むことを特徴とする。
請求項14の発明に於ては、電源電圧とグランド電位との間で所定の比率以上に該グランド電位に近い電圧に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路は、該信号電圧と参照基準電圧との電圧差を検出する差動増幅回路と、該差動増幅回路に流れる該電圧差に対応した電流を受け取り、該電流を電圧に変換する電流電圧変換回路を含むことを特徴とする。
【0032】
請求項15の発明に於ては、請求項14記載の入力バッファ回路に於て、前記差動増幅回路に流れる前記電流を複製して前記電流電圧変換回路に提供するカレントミラー回路を更に含むことを特徴とする。
請求項16の発明に於ては、終端抵抗を介して終端電位に接続された信号伝送線路に接続される半導体装置は、該信号伝送線路に接続される電極と、該信号伝送線路に信号を出力するオープンドレイン型トランジスタと、該オープンドレイン型トランジスタのドレインと該電極とを接続する接続配線と、該接続配線に該信号伝送線路の近傍で挿入された抵抗
を含むことを特徴とする。
【0033】
請求項17の発明に於ては、請求項16記載の半導体装置に於て、前記信号伝送線路の特性インピーダンスをZ0 として、前記接続配線は特性インピーダンスZ1 を有し、前記抵抗は(Z1 −Z0 /2)の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする。
【0034】
上記請求項1乃至3、5乃至10、16及び17の発明に於ては、バスから分岐する配線に抵抗を直列に挿入して分岐配線とバスとの間のインピーダンス整合をとることにより、分岐配線とバスとの間の分岐点における信号反射を抑さえることが出来る。従ってドライバのターンオフに伴う激しいリンギング波形の発生を抑制することが出来るので、高速で安定な信号伝送を行うことが出来る。また直列抵抗挿入により、ドライバトランジスタにおける電力消費を削減することが出来る。
【0035】
上記請求項4の発明に於ては、終端電圧として約2.5 Vの電圧を用いることにより、オープンドレイン型のドライバトランジスタ及び終端抵抗を用いた信号伝送システムに於て、デバイス切り換え時の中間電位状態を無くすことが出来る。また直列抵抗挿入により、ドライバトランジスタにおける電力消費を削減することが出来る。
【0036】
上記請求項11乃至13の発明に於ては、電源電圧の近傍に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路に於て、レベルシフト或いは電流電圧変換を行うことにより、信号電圧と参照基準電圧との大小関係に応じて信号電圧をハイレベル或いはローレベルの信号として検出することが出来る。
【0037】
上記請求項14及び15の発明に於ては、グランド電位の近傍に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路に於て、レベルシフト或いは電流電圧変換を行うことにより、信号電圧と参照基準電圧との大小関係に応じて信号電圧をハイレベル或いはローレベルの信号として検出することが出来る。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の原理と実施例を添付の図面を用いて説明する。
図1に本発明の原理によるバス伝送システムを示す。図1のバス伝送システムは、バス10とスタブ11との間に直列に挿入された直列抵抗Rsを含む。またバス10に接続されたデバイス30は、スタブ11にドレインが接続されたオープンドレイン型のドライバトランジスタ31と、出力バッファ32と、入力バッファ33とを含む。
【0039】
直列抵抗Rsは、スタブ11からバス10の方向を見込んだ場合の特性インピーダンスが、スタブ11の特性インピーダンスと整合するように設定される。ここでスタブ11の特性インピーダンスはZ1 であり、スタブ11からバス10の方向を見込んだ場合の特性インピーダンスは、直列抵抗Rsと両方向に延在するバス10の特性インピーダンスの和である。またバス10の特性インピーダンスはZ0 であるから、両方向に延在するバス10の特性インピーダンスはZ0 /2となる。従って、直列抵抗の値は、
Rs=Z1 −Z0 /2 (1)
に設定される。このような直列抵抗Rsを挿入することによって、デバイス端で反射した信号がバス10に向かう際に、スタブ部分11とその先とでインピーダンスの整合が取られているために反射が起こらない。従って、図10に示したようなリンギング波形が発生しないことになる。なおリンギングの発生を抑さえるためには、バス10から分岐配線(スタブ11)に分岐する分岐点になるべく近い位置に直列抵抗Rsを挿入することが望ましい。
【0040】
またこの直列抵抗Rsを挿入することによって、終端電圧VttにGTLの1.2 Vより高い電圧を用いた場合でも、ドライバトランジスタ31にかかる電圧を抑さえることが出来る。従って、ドライバトランジスタ31に於て消費される電力をGTLの場合程度に抑さえることが可能となる。このようにドライバトランジスタ31の消費電力を抑さえることは、デバイス30を搭載したチップの放熱を考慮した場合に好ましい。
【0041】
一般に、バス10の特性インピーダンスZ0 を約50Ω、スタブ11の特性インピーダンスZ1 を約50Ωとして、直列抵抗Rsの値は約25Ωが好ましい。実際には直列抵抗Rsの値が(Z1 −Z0 /2)の値に対して−50%から+100 %の範囲に設定されていれば、良好にリンギングを抑制することが出来る。また終端抵抗Rtとして特性インピーダンスZ0 に対して−50%から+100 %の範囲の抵抗値のものを用い、更に終端抵抗Vttとして2.5 V±0.25Vを用いた場合、直列抵抗Rsの値は24Ωから51Ωであることが、整合条件及びバス駆動力の観点から適切である。なおこの直列抵抗Rsの値はバス伝送波形の質に関して、それ程シビアなものではない。
【0042】
図2は、図3と同等の条件で直列抵抗Rsを挿入した場合の信号波形シミュレーションの結果を示す。但し、終端電圧Vttは2.5 V、直列抵抗Rsは25Ωを想定している。
図2(A)はスタブの長さがゼロの場合、図2(B)はスタブの長さが1cmの場合、図2(C)はスタブの長さが2cmの場合、図2(D)はスタブの長さが5cmの場合を示す。実線はメモリにデータを書き込むデバイスDV側のドライバ端の波形を示し、波線はメモリ側のレシーバ端の波形を示す。図10に示されるGTLの場合と異なり、直列抵抗Rsを挿入することによってリングングの発生が抑さえられていることが分かる。また図2(D)に示されるように、スタブが5cmという長さであっても、システムは動作可能である。
【0043】
図2に示されるように、直列抵抗Rsを挿入した場合であっても、ドライバトランジスタのターンオフに伴いロー電位からハイ電位に移行する際に、ドライバ側でオーバーシュートが観測される。GTLに於ては図1のダンピング回路21を用いて、動作速度を犠牲にして、このオーバーシュートの発生を抑制していた。しかし本発明のように直列抵抗Rsを挿入した場合には、リンギング発生の心配がないので、オーバーシュートを抑制する必要がない。むしろオーバーシュートが発生したほうが、結果的に入力信号の遷移を高速化してスイッチング速度を早める効果があり好ましい。言い換えれば、ドライバに直列に若干のインダクタンス成分があった方が、スイッチオフ時のドライバ端過渡電圧が高くなるために受信波形は高速化する。
【0044】
ここまでの説明に於て、終端電圧Vttを高くした場合の例として2.5 Vという電圧値を用いた。実際、この2.5 Vという電圧値は終端電圧Vttとして適切な値であり、この値の合理性について以下に説明する。
まず入力レシーバ回路(図1の入力回路33)の感度を制約要因として考える。入力信号の振幅が大きいほうが入力レシーバ回路が高速に動作することを考慮すると、現実的には、入力信号は中心電圧に対して±0.2 V程度の振幅を有する必要がある。
【0045】
この入力振幅の条件を確実に実現するためには、バス10(図1)に於て、出力信号は±0.4 V程度の振幅(peak-to-peakで0.8 V程度の振幅)を有する必要がある。出力信号のハイレベルは終端電圧Vttに等しいので、ローレベルは(Vtt−0.8 V)に等しくなる。即ち、ドライバトランジスタ31(図1)がオンの場合にはバス10の電位が(Vtt−0.8 )Vになり、ドライバトランジスタ31がオフの場合にはバス10の電位がVttになる。このようにドライバトランジスタ31のオン/オフ切り替えで0.8 Vの振幅を実現するためには、終端抵抗Rtを50Ωとして、ドライバトランジスタ31には32mA(=0.8 V/(50/2Ω))の駆動電流が必要になる。
【0046】
ドライバトランジスタ31がオンの時、バス10の電位は(Vtt−0.8 V)であり、また直列抵抗Rs(25Ω)での電圧降下は0.8 V(=32mA×25Ω)である。従って、ドライバトランジスタ31のドレイン電圧は(Vtt−1.6 V)となる。逆に言えば、終端電圧Vttはドレイン電圧よりも1.6 V程高い電圧である必要がある。
【0047】
またドライバトランジスタ31が充分な駆動力を持つためには、このドレイン電圧は約0.4 Vから0.9 Vの範囲にあることが必要になる。終端電圧Vttはドレイン電圧よりも1.6 V高い必要があるので、結局、終端電圧Vttの適切な範囲は約2 Vから2.5 Vになる。
【0048】
実際には、トランジスタのドレイン電圧は0.4 Vよりも0.9 Vに近いほうが好ましい。その理由としては第1に、0.9 Vに近いドレイン電圧を用いた方がトランジスタの駆動力をより大きくできるので、小型のトランジスタを用いても所望の範囲内の駆動力が得られることが挙げられる。第2に、バスに接続された2つのドライバトランジスタが同時にオンした場合(過渡的に出力するデバイスの切り換え過程で生じる)、より高いドレイン電圧を用いたほうが、2つのドライバトランジスタに並列に電流を供給しやすいことが挙げられる。
【0049】
従って、好ましい終端電圧Vttの値は2.5 Vとなる。これ以上の電圧を用いると、性能は更に向上するが、同時に消費電力が増大するので好ましくない。従って実際には、終端抵抗Vttとしては2.5 V±0.25V程度が望ましい。
一方、消費電力を抑制したいという要請が強い場合は、多少の応答特性の悪化を許容して、Vttの値は2.0 V±0.2 V程度が望ましい。但し、これ以下の終端電圧では、出力に直列抵抗を入れている関係上充分な駆動力が得られないので、好ましくない。
【0050】
但し本発明に於て、終端電圧Vttは2.5 Vに限定されるものではない。後述の実施例に示されるように、例えば、電圧の高低関係を逆転して終端電圧Vttをグランド電位としても良い。
図3は、本発明によるバス伝送システムの第1の実施例を示す。図3に於て図1と同一の構成要素は同一の番号で参照され、その説明は省略される。
【0051】
図3に於て、出力バッファ32は、PMOSトランジスタ41とNMOSトランジスタ42を含む。PMOSトランジスタ41とNMOSトランジスタ42はインバータ回路を構成し、出力信号を反転するように動作する。即ち、出力信号がハイのときにはローをドライバトランジスタ31のゲートに供給して、ドライバトランジスタ31をオフにする。逆に出力信号がローのときにはハイをドライバトランジスタ31のゲートに供給して、ドライバトランジスタ31をオンにする。
【0052】
入力バッファ33は、NMOSトランジスタ51乃至54、PMOSトランジスタ55及び56、NMOSトランジスタ57乃至61、差動増幅器62、抵抗R1及びR2、PMOSトランジスタ71、及びNMOSトランジスタ72を含む。ここでNMOSトランジスタ51乃至54はレベルシフタ回路を構成し、PMOSトランジスタ55及び56とNMOSトランジスタ57乃至59は差動増幅器を構成する。またNMOSトランジスタ60及び61と、差動増幅器62と、抵抗R1及びR2とはレベル自動調節器を構成する。このレベル自動調節器は、レベルシフタ回路のレベルシフトの大きさを自動的に調整する。またPMOSトランジスタ71及びNMOSトランジスタ72はインバータを構成する。
【0053】
このように入力バッファ33がレベルシフト機能を必要とする理由は、入力バッファ33の電源電圧2.5 Vに対して、入力信号が2.2 Vを中心とする狭い範囲で変動するからである。このように電源電圧に近い範囲で信号が変動するような入力信号が与えられた場合、通常の差動増幅器を用いた入力バッファ(例えば図1の入力バッファ回路)によってハイ/ロー判定を行うことは出来ない。そこで図3の入力バッファ回路33に於ては、レベルシフタ回路によって一旦入力信号電圧と参照基準電圧とをレベルダウンし、レベルダウンされた電圧に対して差動増幅器を用いてハイ/ロー判定を行う。
【0054】
NMOSトランジスタ51乃至54からなるレベルシフタ回路に於て、NMOSトランジスタ53及び54は、調整用電圧Vadjによって適切な電流量に調整された定電流源として動作する。従って、定電流がNMOSトランジスタ51及び53に流れ、それと同一の定電流がNMOSトランジスタ52及び54に流れることになる。この状態で、NMOSトランジスタ51のゲート入力である入力信号電圧とNMOSトランジスタ52のゲート入力である参照基準電圧Vrefは各々、NMOSトランジスタのしきい値電圧分だけ電圧シフトされて、ノードA及びBに現われる。このノードA及びBに現われたレベルシフトされた電圧が、下段の差動増幅器に供給される。
ここで調整用電圧Vadjは、NMOSトランジスタ60及び61と、差動増幅器62と、抵抗R1及びR2とからなるレベル自動調節器によって生成される。まず抵抗R1及びR2が分圧器を構成して、レベルシフトの目標電圧を生成する。例えば、上述のレベルシフト回路によって参照基準電圧Vref(2.2 V)を1.3 Vにレベルシフトしたいのであれば、分圧器によって1.3 Vの電圧を生成する。NMOSトランジスタ60及び61は、レベルシフタ回路のNMOSトランジスタ52及び54と同一の回路(レプリカ回路)を構成する。差動増幅器62には、NMOSトランジスタ60及び61間のノードCに現われる電圧と、分圧器が生成した目標電圧とを入力する。差動増幅器62は両電圧の差を増幅して、調整用電圧Vadjとして出力する。調整用電圧Vadjは、NMOSトランジスタ61のゲートに入力される。このフィードバックによって、ノードCに現われる電圧と目標電圧とが同一となるように制御される。
【0055】
即ち、レプリカ回路のNMOSトランジスタ61のゲートに入力されている調整用電圧Vadjは、レプリカ回路のノードCの電圧を目標電圧に一致させるような電圧となっている。この調整用電圧Vadjが、レベルシフタ回路のNMOSトランジスタ53及び54にゲート入力として供給されるので、目標電圧に等しいシフトダウン電圧が、ノードBに現われることになる。
【0056】
PMOSトランジスタ55及び56とNMOSトランジスタ57乃至59からなる差動増幅器は、シフトダウンされた入力信号電圧と参照基準電圧Vrefとを比較して、出力をPMOSトランジスタ71及びNMOSトランジスタ72からなるインバータに供給する。インバータは供給された信号を反転して入力信号として内部回路に供給する。
【0057】
このように第1の実施例に於ては、レベルシフタ回路によって入力信号電圧と参照基準電圧とをレベルシフトさせ、レベルシフトされた電圧同士を差動増幅器で比較することにより入力信号のハイ/ロー判定を行う。この際、レベルシフト回路のレプリカ回路がレベルシフトの目標電圧と等しい電圧を生成するようにフィードバック制御を行うことにより、レベルシフト回路のシフトダウン電圧を目標電圧に設定する。
【0058】
図4は、本発明によるバス伝送システムの第2の実施例を示す。図4に於て図3と同一の構成要素は同一の番号で参照され、その説明は省略される。
図4の入力バッファ33Aは、NMOSトランジスタ81乃至83、PMOSトランジスタ84乃至87、NMOSトランジスタ88乃至90、及びPMOSトランジスタ91を含む。ここでNMOSトランジスタ81乃至83が差動増幅器として動作する。PMOSトランジスタ84及び85とPMOSトランジスタ86及び87とは、各々のペアが、カレントミラー回路として動作する。またPMOSトランジスタ84及び87とNMOSトランジスタ88及び89は、電流を電圧に変換する回路として動作する。NMOSトランジスタ90とPMOSトランジスタ91はインバータを構成する。
【0059】
NMOSトランジスタ81のゲートに入力された入力信号電圧は、NMOSトランジスタ82のゲート入力である参照基準電圧Vrefと比較される。即ち、両電圧の差に応じて、NMOSトランジスタ81及び82のドレイン間には電圧差が現われる。しかし前述したように、入力信号は電源電圧に近い電圧を中心として変動する信号であるので、NMOSトランジスタ81及び82のドレインに現われる電圧は充分な電圧振幅を持たない。つまりNMOSトランジスタ81及び82のゲート電圧が高いので、ドレイン電圧は高い電圧で小振幅の変動を有するものとなる。従って、このドレイン電圧を信号として内部回路に供給することは出来ない。
【0060】
ここでNMOSトランジスタ81及び82のドレイン電圧は小振幅となるが、各トランジスタを流れる電流は充分な振幅で変動するものとなっている。そこで第2の実施例に於ては、NMOSトランジスタ81及び82の小振幅のドレイン電圧ではなく、ドレイン電流をカレントミラー回路を介して電流電圧変換回路に供給し、この電流電圧変換回路で電流変動を大振幅の電圧変動に変換するようにする。
【0061】
図4に示されるように、NMOSトランジスタ81のドレインはPMOSトランジスタ84及び85からなるカレントミラー回路の電流入力(ゲート入力)に接続され、NMOSトランジスタ82のドレインはPMOSトランジスタ86及び87からなるカレントミラー回路の電流入力(ゲート入力)に接続される。従って、PMOSトランジスタ84にはPMOSトランジスタ85と同一の電流が流れ、PMOSトランジスタ87にはPMOSトランジスタ86と同一の電流が流れる。PMOSトランジスタ84及び87とNMOSトランジスタ88及び89からなる電流電圧変換回路は、PMOSトランジスタ84に流れる電流とPMOSトランジスタ87に流れる電流との差に応じた電圧をノードDに生成する。即ちノードDには、入力信号電圧と参照基準電圧Vrefとの差に応じた電圧が現われる。ここでPMOSトランジスタ84及び87とNMOSトランジスタ88及び89のドレイン電圧は、充分大きな変動が可能なだけの余裕を有する。従って、ノードDに現われる電圧は、入力信号電圧と参照基準電圧Vrefとの大小関係に応じて、ハイレベルあるいはローレベルとなる。
【0062】
このノードDに現われる電圧は、NMOSトランジスタ90及びPMOSトランジスタ91からなるインバータによって反転されて、反転された電圧が内部回路に供給される。
このように第2の実施例に於ては、入力信号が電源電圧に近い電圧を中心として変動する信号である場合に、差動増幅器によって検出された入力信号電圧と参照基準電圧との差に対応する充分な振幅を有した電流を、カレントミラー回路を介して電流電圧変換回路に供給して、充分な振幅を有した電圧に変換する。これによって、入力信号電圧と参照基準電圧との差を増幅した電圧信号が得られることになり、入力信号電圧と参照基準電圧との大小関係に応じたハイあるいはローの信号を供給することが出来る。
【0063】
図5は、本発明によるバス伝送システムの第3の実施例を示す。図5に於て図4と同一の構成要素は同一の番号で参照され、その説明は省略される。
本発明によるバス伝送システムの第3の実施例は、図4の第2の実施例と電圧の高低関係を逆転したものとなっている。即ち、図5のバス伝送システムに於ては、バス10のターミネーションは、50Ωの終端抵抗Rtを介してグランドに接続することによって行われている。またドライバトランジスタ31AはPMOSトランジスタに変更されている。このような構成とした場合でも、直列抵抗Rs挿入によるリンギング抑制及び消費電力抑制の効果が、前述の実施例と同様に得られることは明らかである。このようにターミネーションを接地によって実現すれば、電源電圧が将来的に変更されてもシステムの設計を変更する必要がないという点で有利である。
【0064】
図5の入力バッファ33Bは、PMOSトランジスタ81A乃至83A、NMOSトランジスタ84A乃至87A、PMOSトランジスタ88A乃至90A、及びNMOSトランジスタ91Aを含む。ここでPMOSトランジスタ81A乃至83Aが差動増幅器として動作する。NMOSトランジスタ84A及び85AとNMOSトランジスタ86A及び87Aとは、各々のペアが、カレントミラー回路として動作する。またNMOSトランジスタ84A及び87AとPMOSトランジスタ88A及び89Aは、電流を電圧に変換する回路として動作する。PMOSトランジスタ90AとMMOSトランジスタ91Aはインバータを構成する。
【0065】
図5の入力バッファ33Bの動作は、図4の入力バッファ33Aの動作と同一であるのでその説明を省略する。なおこの場合、入力信号がグランド電位に近い電圧(0.3 V)を中心として変動する信号であるので、入力バッファ33Bに供給される参照基準電圧Vrefは0.3 Vとなる。
【0066】
このように第3の実施例に於ては、バスのターミネーションが接地によって提供されて入力信号がグランド電位に近い電圧を中心として変動する信号である場合に、差動増幅器によって検出された入力信号電圧と参照基準電圧との差に対応する充分な振幅を有した電流を、カレントミラー回路を介して電流電圧変換回路に供給して、充分な振幅を有した電圧に変換する。これによって、入力信号電圧と参照基準電圧との差を増幅した電圧信号が得られることになり、入力信号電圧と参照基準電圧との大小関係に応じたハイあるいはローの信号を供給することが出来る。
【0067】
本発明によるバス伝送システムを実現するに於て、直列抵抗Rsを必ずしも全てのデバイスのドライバ端に挿入する必要はない。デバイスによっては、長いスタブ長が避けられないものもあれば、比較的短いスタブ長を実現できるものもある。従って、長いスタブ長を有するデバイスに直列抵抗Rsを挿入すれば、比較的短いスタブ長を有するデバイスには直列抵抗Rsを挿入しなくても、安定したシステム動作を実現することが可能である。
【0068】
例えば、BGA(Ball Grid Array )パッケージやPGA(Pin Grid Array)パッケージに於ては、半導体チップの周辺部に配置されたI/O回路から出力電極(ボール或いはピン)までを長いリード線で繋ぐ必要がある。従って、スタブ長は必然的にかなり長いものとなるので、直列抵抗Rsを挿入することがリンギングを抑制するうえで望ましい。それに対し例えば、メモリチップのパッケージ等で垂直に立ててボードに取付ける形状のものでは、スタブ長をかなり短くすることが出来る。従って、垂直取付け形式のメモリチップパッケージに対しては直列抵抗Rsを挿入しなくても問題がない。但し、このようなメモリチップパッケージに於ても、内部のメモリチップをシュリンク技術により縮小したときにはスタブ長が長くなることになり、直列抵抗Rsを挿入する必要がある。
【0069】
図6は、本発明によるバス伝送システムの第4の実施例を模式的に示す。このバス伝送システムにはメモリとコントローラが含まれており、BGAパッケージに搭載されたコントローラチップに対しては直列抵抗Rsを挿入し、垂直取付け形式のパッケージに格納されたメモリチップに対しては直列抵抗Rsを挿入しない。
【0070】
図6のバス伝送システムは、終端抵抗Rtによって終端電圧Vttに接続されたバス10と、バス10が配線されたプリント板120と、プリント板120に搭載されバス10に接続されるコントローラチップ100と複数のメモリチップ110を含む。コントローラチップ100はボード102上に搭載され、ボンディングワイヤ101及びリード103を介してボール電極104に接続される。ボール電極104は、抵抗Rsを介してバス10に接続される。バス10は当然複数の配線からなり、ボール電極104及び直列抵抗Rsはバス10の配線の本数分存在するが、図面の見やすさを考慮して1本のバス配線に対するもののみ示してある。
【0071】
複数のメモリチップ111の各々は、メモリパッケージ110に格納され、出力ピン112を介してバス10に接続される。出力ピン112は短いので直列抵抗Rsを挿入しなくても激しいリンギングは発生しない。
このようにBGAパッケージやPGAパッケージ等の長いスタブを必要とするパッケージに格納されたチップに対しては直列抵抗Rsを挿入しておけば、垂直取付け方式のメモリチップ等の短いスタブ長ですむ場合には直列抵抗Rsを挿入しなくても、バス伝送システム全体に於て激しいリンギングの発生なく安定したシステム動作を実現することが出来る。
【0072】
図7は本発明による半導体装置モジュールを示す。本発明による半導体装置モジュールは、プリント基板側面の電極とプリント基板上に搭載されたチップ間の配線(スタブに相当)に直列抵抗Rsを挿入するものである。図7に於ては、例えばDIMMを想定しており、バス10にDIMM130が装着される。DIMM130は、プリント基板131、プリント基板上に搭載されたメモリチップ132及び133、バス接続用の電極140、電極140とメモリチップ132及び133を接続する配線141、及び配線141に挿入された直列抵抗Rsを含む。直列抵抗Rsが挿入されているために、リンギング及びチップに於ける電力消費を抑制することが出来る。
【0073】
図7に示されるように、直列抵抗が挿入されたDIMM或いはSIMM等の半導体装置モジュールに於ては、プリント基板に搭載されるチップの大きさ変更により配線141の長さが変動しても、信号伝達特性は変更しない。従って、シュリンク技術によりより小さなチップを製造可能となれば、製造者はコストダウンを達成することが出来る。
【0074】
なお本発明は上述の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な変形及び改良をなすことが出来る。
【0075】
【発明の効果】
請求項1乃至3、5乃至10、16及び17の発明に於ては、バスから分岐する配線に抵抗を直列に挿入して分岐配線とバスとの間のインピーダンス整合をとることにより、分岐配線とバスとの間の分岐点における信号反射を抑さえることが出来る。従ってドライバのターンオフに伴う激しいリンギング波形の発生を抑制することが出来るので、高速で安定な信号伝送を行うことが出来る。また直列抵抗挿入により、ドライバトランジスタにおける電力消費を削減することが出来る。
【0076】
請求項4の発明に於ては、終端電圧として約2.5 Vの電圧を用いることにより、オープンドレイン型のドライバトランジスタ及び終端抵抗を用いた信号伝送システムに於て、デバイス切り換え時の中間電位状態を無くすことが出来る。また直列抵抗挿入により、ドライバトランジスタにおける電力消費を削減することが出来る。
【0077】
請求項11乃至13の発明に於ては、電源電圧の近傍に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路に於て、レベルシフト或いは電流電圧変換を行うことにより、信号電圧と参照基準電圧との大小関係に応じて信号電圧をハイレベル或いはローレベルの信号として検出することが出来る。
【0078】
請求項14及び15の発明に於ては、グランド電位の近傍に信号変動の中心を有する信号電圧を受け取る入力バッファ回路に於て、レベルシフト或いは電流電圧変換を行うことにより、信号電圧と参照基準電圧との大小関係に応じて信号電圧をハイレベル或いはローレベルの信号として検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による信号伝送システムの原理を示す図である。
【図2】(A)乃至(D)は、本発明によるリンギング抑制の効果を示す計算機シミュレーションによる信号波形図である。
【図3】本発明による信号伝送システムの第1の実施例を示す図である。
【図4】本発明による信号伝送システムの第2の実施例を示す図である。
【図5】本発明による信号伝送システムの第3の実施例を示す図である。
【図6】本発明による信号伝送システムの第4の実施例を示す図である。
【図7】本発明による半導体装置モジュールを示す図である。
【図8】従来のGTL伝送システムの構成を示す図である。
【図9】従来のGTL伝送システムに於けるリンギング発生を説明するための図である。
【図10】(A)乃至(D)は、従来のGTL伝送システムに於けるリンギング発生の様子を示す計算機シミュレーションによる信号波形図である。
【図11】図10の計算機シミュレーション条件を示す図である。
【図12】(A)乃至(D)は、従来のGTL伝送システムに於ける中間電位発生のメカニズムを説明するための図である。
【図13】従来のGTL伝送システムに於ける中間電位発生の様子を示す計算機シミュレーションによる信号波形図である。
【符号の説明】
10 バス
11 スタブ
20 デバイス
21 ダンピング回路
22 ドライバトランジスタ
30 デバイス
31 ドライバトランジスタ
31A ドライバトランジスタ
32 出力バッファ
33 入力バッファ
33A 入力バッファ
33B 入力バッファ
100 コントローラチップ
101 ボンディングワイヤ
102 ボード
103 リード
104 ボール電極
110 パッケージ
111 メモリチップ
112 ピン
120 プリント板
130 DIMM
131 プリント基板
132 メモリチップ
133 メモリチップ
140 電極
141 配線

Claims (13)

  1. 終端抵抗を介して終端電位に接続された信号伝送線路と、
    オープンドレイン型トランジスタと、
    該オープンドレイン型トランジスタ該信号伝送線路とを接続する該信号伝送線路から分岐する分岐配線と、
    該分岐配線が該信号伝送線路に接続される位置で該分岐配線に挿入された抵抗と、
    電源電圧から所定量振れる電圧を有する入力信号を該信号伝送線路から受け取るように該分岐配線の1つに接続され該電源電圧によって駆動される入力バッファ回路
    を含み、該入力バッファ回路は、
    該入力信号と参照基準電圧との電圧レベルをシフトしてレベルシフト後信号電圧及びレベルシフト後参照基準電圧を生成するレベルシフト回路と、
    該レベルシフト後参照基準電圧を所定の目標電圧に調整するように該レベルシフト回路を制御する該レベルシフト回路に接続されたレベル調整回路と、
    該レベルシフト後信号電圧と該レベルシフト後参照基準電圧との差を増幅する該レベルシフト回路に接続された差動増幅回路
    を含むことを特徴とする信号伝送システム。
  2. 前記信号伝送線路は特性インピーダンスZ0 を有し、前記分岐配線は特性インピーダンスZ1 を有し、前記抵抗は(Z1 −Z0 /2)の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
  3. 前記終端抵抗は前記特性インピーダンスZ0 の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする請求項記載の信号伝送システム。
  4. 前記終端電位は2.0 Vから2.5 Vであることを特徴とする請求項3記載の信号伝送システム。
  5. 前記抵抗は24Ωから51Ωの範囲の抵抗値を有することを特徴とする請求項記載の信号伝送システム。
  6. 終端抵抗を介して終端電位に接続された信号伝送線路に接続される半導体装置モジュールであって、
    基板と、
    該基板に配置され該信号伝送線路に接続される電極と、
    電源電圧から所定量振れる電圧を有する入力信号を該信号伝送線路から受け取る該電源電圧によって駆動される入力バッファとオープンドレイン型トランジスタを含み基板上に搭載される半導体装置と、
    オープンドレイン型トランジスタ該電極とを接続する接続配線と、
    該接続配線該信号伝送線路に接続される位置で該接続配線に挿入された抵抗を含み、該入力バッファは、
    該入力信号と参照基準電圧との電圧レベルをシフトしてレベルシフト後信号電圧及びレベルシフト後参照基準電圧を生成するレベルシフト回路と、
    該レベルシフト後参照基準電圧を所定の目標電圧に調整するように該レベルシフト回路を制御する該レベルシフト回路に接続されたレベル調整回路と、
    該レベルシフト後信号電圧と該レベルシフト後参照基準電圧との差を増幅する該レベルシフト回路に接続された差動増幅回路
    を含むことを特徴とする半導体装置モジュール。
  7. 前記信号伝送線路の特性インピーダンスをZ0 として、前記接続配線は特性インピーダンスZ1 を有し、前記抵抗は(Z1 −Z0 /2)の+100%から-50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする請求項6記載の半導体装置モジュール。
  8. 前記抵抗は24Ωから51Ωの範囲の抵抗値を有することを特徴とする請求項7記載の半導体装置モジュール。
  9. 終端抵抗を介して終端電位に接続されたバスと、
    所定長より長い第1の接続配線を介して該バスに接続される第1のチップと、所定長より短い第2の接続配線を介して該バスに接続され、電源電圧から所定量振れる電圧を有する入力信号を該バスから受け取る該電源電圧によって駆動される入力バッファを含む第2のチップと、
    該第1の接続配線が該バスに接続される位置で該第1の接続配線に挿入された抵抗を含み、前記第2の接続配線には抵抗が挿入されてなく、該入力バッファは
    該入力信号と参照基準電圧との電圧レベルをシフトしてレベルシフト後信号電圧及びレベルシフト後参照基準電圧を生成するレベルシフト回路と、
    該レベルシフト後参照基準電圧を所定の目標電圧に調整するように該レベルシフト回路を制御する該レベルシフト回路に接続されたレベル調整回路と、
    該レベルシフト後信号電圧と該レベルシフト後参照基準電圧との差を増幅する該レベルシフト回路に接続された差動増幅回路
    を含むことを特徴とする信号伝送システム。
  10. 前記第1のチップはPGAパッケージ或いはBGAパッケージに格納されたメモリコントローラであり、前記第2のチップは前記バスが配線されたボードに垂直に取付けられるメモリチップであることを特徴とする請求項9記載の信号伝送システム。
  11. 終端電位に接続された終端抵抗を含む信号伝送線路に接続される半導体装置であって、
    該信号伝送線路に接続される電極と、
    オープンドレイン型トランジスタと、
    該オープンドレイン型トランジスタと該電極とを接続する接続配線と、
    該接続配線が該信号伝送線路に接続される位置で該接続配線に挿入された抵抗と、
    電源電圧から所定量振れる電圧を有する入力信号を該信号伝送線路から受け取る該電源電圧によって駆動される入力バッファ回路
    を含み、該入力バッファ回路は、
    該入力信号と参照基準電圧との電圧レベルをシフトしてレベルシフト後信号電圧及びレベルシフト後参照基準電圧を生成するレベルシフト回路と、
    該レベルシフト後参照基準電圧を所定の目標電圧に調整するように該レベルシフト回路を制御する該レベルシフト回路に接続されたレベル調整回路と、
    該レベルシフト後信号電圧と該レベルシフト後参照基準電圧との差を増幅する該レベルシフト回路に接続された差動増幅回路
    を含むことを特徴とする半導体装置。
  12. 前記信号伝送線路の特性インピーダンスをZ 0 として、前記接続配線は特性インピーダンスZ 1 を有し、前記抵抗は(Z 1 −Z 0 /2)の +100 %から -50 %の範囲の抵抗値を有することを特徴とする請求項11記載の半導体装置。
  13. グラウンド電圧よりも電源電圧に近い点に中心を有する電圧範囲で変動する信号を受け取る入力バッファ回路であって、
    該信号と参照基準電圧との電圧レベルをシフトしてレベルシフト後信号電圧及びレベルシフト後参照基準電圧を生成するレベルシフト回路と、
    該レベルシフト回路を模倣するレプリカ回路を含み該レプリカ回路により生成される該レベルシフト後参照基準電圧のコピーと所定の目標電圧とを比較して該レベルシフト回路に供給する制御電圧を生成すると共に該制御電圧を該レプリカ回路にフィードバックして該レベルシフト後参照基準電圧のコピーを調整することにより、該レベルシフト回路により施されるレベルシフト量を制御する目標電圧設定回路と、
    該レベルシフト後信号電圧と該レベルシフト後参照基準電圧との差を増幅して該差を反映した信号を出力する差動増幅回路
    を含むことを特徴とする入力バッファ回路。
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