JP3696041B2 - 眼科装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検眼の屈折力分布を測定及び解析する眼科装置に関する。
【0002】
【従来技術】
被検眼に注視させる固視標を遠方から近方へ、また近方から遠方へ移動し、このときに変化する眼屈折力を測定することで、眼(水晶体)の調節力の時間的変化を測定するようにした装置が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この測定装置はある特定の経線方向で限られた領域のみの眼屈折力を測定していたので、眼(水晶体)の調節変化の様子を詳細に知ることはできなかった。
【0004】
本発明は、上記従来技術に鑑み、眼の調節変化の様子をより詳細に知ることができる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0006】
(1) 屈折力分布測定用光束を眼底に向けて投光する投光光学系と、眼底からの反射光束を検出する検出光学系と、該検出光学系の検出結果に基づいて被検眼の角膜各部での眼屈折力を演算する眼屈折力演算手段と、を持つ眼科装置において、呈示距離を変えた固視標を被検眼に呈示して、被検眼への調節負荷を変化させる固視標呈示手段と、該固視標呈示手段により異なる呈示距離で被検眼へ調節負荷を与え、各呈示距離で前記投光光学系及び前記検出光学系を動作させ、前記眼屈折力演算手段により前記検出光学系の各呈示距離での検出結果に基づいて被検眼の角膜各部での眼屈折力をそれぞれ得る屈折力データ取得制御手段と、異なる呈示距離での被検眼の角膜各部での眼屈折力の差分データを求め、被検眼の調節力変化に対する屈折力差分分布データを得る屈折力差分分布データ演算手段と、得られた屈折力差分分布データをグラフィック表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置は、さらに前記屈折力差分分布データ演算手段による屈折力差分分布データを記憶する屈折力差分分布データ記憶手段と、測定日時を異にする屈折力差分分布データのさらに差分を演算する経時的屈折力差分変化演算手段と、を備えることを特徴とする。
(3) (1)の眼科装置は、さらに前記屈折力差分分布データに基づいて最大値、最小値及び平均値を求める演算手段を備えることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る眼科装置の外観略図である。図1(a)は被検者側正面図であり、図1(b)は側面図である。
【0012】
1は固定基台であり、固定基台1には被検者の頭部を固定するための頭部支持部2が固設されている。5は測定光学系やアライメント光学系等が収納された測定部であり、測定部5の被検者に対向する側の略左右中央には測定光束等が通過する測定窓5aが設けられている。測定部5を搭載する本体部3はジョイスティック4を前後左右に倒すことにより、固定基台1上を前後左右(Z、X方向)に移動する。また、ジョイスティック4に設けられた回転ノブ4aを回転操作することにより、モ−タ等からなるY(上下)方向駆動装置が作動し、測定部5は本体部3に対して上下(Y方向)に移動する。
【0013】
39はカラーのモニタであり、観察用の被検眼像やアライメント情報、測定制御情報、測定結果等の検者への報知情報が表示される。
【0014】
図2は測定部5に収納される光学系を示す図である。
【0015】
光軸L1上のビームスプリッタ25の後方には眼屈折力測定光学系120が設けられている。眼屈折力測定光学系120は、スリット投影光学系121とスリット像受光光学系131から構成される。スリット投影光学系121の光源122を発した近赤外光束は、回転セクター123に設けられたスリット開口を照明する。回転セクター123の回転により走査されるスリット光束は、投影レンズ124、制限絞り125を経た後、ビームスプリッタ126で反射される。その後、固視光学系及び観察光学系の光軸を同軸にするビームスプリッタ25を透過して、被検眼Eの角膜近傍で集光した後、眼底に投光される。
【0016】
スリット像受光光学系131は、光軸L1上に設けられた受光レンズ132、ミラー133、ミラー133により反射される光軸L2上に設けられた絞り134及び受光部135を備える。絞り134は受光レンズ132の後側焦点位置に配置される。受光部135はその受光面に、受光レンズ132に関して被検眼角膜と略共役な位置に位置する8個の受光素子136a〜136hを有している(図3参照)。この内の受光素子136a〜136fは直線上に位置し、受光素子136aと136b、受光素子136cと136d、受光素子136eと136fがそれぞれ受光面の中心(光軸L2)に対して対称になるように設けられている。この3対の受光素子は、角膜の経線方向の各位置に対応した屈折力を検出できるように、その配置距離が設定されている(図3上では、角膜上における等価サイズとして示している)。一方、受光素子136gと136hは、光軸L2を中心にして受光素子136a〜136fと直交する直線上で対称になるように設けられている。
【0017】
この眼屈折力測定光学系120では、モータやギヤ等から構成される回転機構により、回転セクター123と受光部135がそれぞれ光軸回りに同期して回転するようになっている。
【0018】
ビームスプリッタ25により光軸L1と同軸にされる光軸L3上には、ハーフミラー26、レンズ33、ハーフミラー27、レンズ28、31、固視標29a、可視の照明光源30が配置されている。固視標29aには風景チャートの他、ランドルト環の視力値視標等が複数個用意されており、視標板29の回転により光軸L3上に配置する種類が切換えられる。また、レンズ28は光軸L3方向に移動可能であり、被検眼に固視させる固視標29aの位置を変更し、眼屈折力測定時に被検眼に雲霧をかけたり、調節負荷を与える。
【0019】
ハーフミラー27により光軸L3と同軸にされる光軸L4上には、アライメント用光源34が配置されており、光源34の点灯により被検眼角膜に上下左右方向のアライメント用の指標光束が投光される。
【0020】
また、ハーフミラー26により光軸L3と同軸にされる光軸L5上には、レンズ35、撮像素子であるCCDカメラ38が配置されており、CCDカメラ38は被検眼からの反射光を受光する。CCDカメラ38からの出力はモニタ39に入力され、撮影像が表示される。CCDカメラ38は前眼部観察用に使用される他、光源34により形成されるアライメント指標像の検出用として兼用される。
【0021】
また、110は作動距離検出用の指標投影光学系であり、光源111とレンズ112を備える。光源111からの光はレンズ112によって略平行光束にされ、患者眼角膜に斜め方向から照射されて光源111の指標像が投影される。115は作動距離の指標を検出する指標検出光学系であり、レンズ116、位置検出素子117を備える。角膜に形成された指標像の光束はレンズ116を介して位置検出素子117に入射し、位置検出素子117に入射した指標像の位置から装置に対する被検眼の作動距離のアライメント状態が検出される。
【0022】
次に、装置の動作を図4に示す制御系のブロック構成図を使用して説明する。
【0023】
まず、眼の調節が解除された遠方視での眼屈折力分布測定モードで測定を行う。この遠方モードはモード切換スイッチ40で選択する。検者は図示なき照明光源に照明された被検眼の前眼部像をモニタ39により観察しながら、ジョイスティック4等の操作で測定部5のXYZ移動によってアライメントを行う。XY方向のアライメントは、光源34により被検眼角膜中心に形成される指標像を、モニタ39に表示される照準マークの中心に位置するようにする。Z方向のアライメントは、位置検出素子117によって得られる作動距離方向の偏位情報に基づき、制御部50の制御によってモニタ39上に位置合わせのためのインジケータが表示されるので、検者はインジケータにしたがって本体部3をZ方向に移動して調整する。
【0024】
アライメント調整後、検者が図示なき測定スイッチを押すと、眼屈折力測定光学系120による眼屈折力測定が実行される。制御部50の眼屈折力演算部52は、受光部135が持つ各受光素子からの出力信号の位相差に基づいて眼屈折力分布を得る。まず、従来の位相差法の屈折力と同様に予備測定を行い、その結果に基づいてレンズ28を移動して固視標29aを被検眼眼底と略共役な位置においた後、さらにこれを適当なディオプタ分だけ雲霧がかかるように移動する。レンズ28の移動はモータ等からなるレンズ移動部41によって行われる。その後、受光部135上でのスリット像の移動に伴って変化する受光素子136gと136hの出力信号から、受光素子136a〜136fが位置する経線方向での角膜中心(または視軸中心)を求める。次に、その中心に対する各受光素子136a〜136fの出力信号の位相差から、各受光素子に対応する角膜部位での屈折力を求める。そして、スリット投影光学系121の回転セクター123と受光部135を所定の角度(1度)ステップで光軸回りに180度回転させながら、各角度ステップの経線毎にこの屈折力を順次記憶していくことにより、経線方向で変化する眼屈折力の分布を求める(この屈折力分布測定は、本出願人による特開平10−108837号公報と基本的に同じであるので、詳細はこれを参照されたい)。こうして得られた遠方視での眼屈折力分布データはハードディスク等の記憶部55に記憶され、図5に示すように、モニタ39上には遠方視での眼屈折力分布がカラーマップの形式で図形表示される。カラーマップは所定ステップの屈折力差で色分けしたものであり、眼屈折力分布の変化が色情報として視覚的に見易く表示される。
【0025】
次に、モード切替スイッチ40を押して近方モードにし、眼に調節負荷を与えた時の近方視での眼屈折力分布測定を行う。近方モードでは、固視標移動用スイッチ42を操作して、固視標29aを任意の近方位置に移動する。制御部50はスイッチ42の操作信号が入力されると、レンズ移動部41を駆動してレンズ28を移動し、固視標29aを光学的に所望する近方位置に置く。例えば、先に測定した遠方視での眼屈折力の等価球面値が−3D(ディオプタ)であった場合、近方視40cm相当にするには、固視標29aが−3D−2.5D=−5.5Dに位置する様にレンズ28を移動させる。
【0026】
こうして被検眼には近方へ移動させた固視標29aを固視させることにより調節負荷を与え、この状態で測定スイッチを押して近方視での眼屈折力分布を測定する。遠方測定と同様に、眼屈折力演算部52は受光部120が持つ各受光素子からの出力信号の位相差に基づいて眼屈折力分布を得る。得られた近方視での眼屈折力分布データは、記憶部55に記憶されると共にモニタ39上には近方視での眼屈折力分布がカラーマップの形式で図形表示される。
【0027】
遠方視及び近方視での眼屈折力分布データが得られたら、モニタ39に表示される指示に従って、制御部50に接続されたキーボード58やマウス57を操作することにより、両データが調節力演算部53に入力され、両データの差分の屈折力分布(本明細書ではこれを調節力分布という)が演算される。すなわち、眼に与える調節負荷を変化させたときの水晶体の調節変化の様子が2次元的な分布として求められる。求めたデータは記憶部55に記憶される共に、モニタ39上に表示される。
【0028】
図6は調節力演算部53により求められた演算結果の表示例であり、遠方視での眼屈折力分布のカラーマップ71、近方視眼での眼屈折力分布のカラーマップ72、両者の差分である調節力分布のカラーマップ73、及び縦軸を屈折力差とする3次元表示74がモニタ39上の同一画面上に並べて表示される。
【0029】
また、調節力分布の最大値、最小値、全測定領域での平均値、縦軸を屈折力差とする3次元表示74の体積を演算し、定量的な数値データとしてモニタ39上に表示、記憶することもできる。
【0030】
ここで、眼の水晶体の働きについての概略を説明する。種々の距離にある物体を見るために、正常な眼は毛様体筋の働きによって、水晶体の厚さをかえ、水晶体の屈折力を増減させることにより、物体の像を網膜上に結ばせている。図7(a)に示すように、遠方視している場合(調節力解放状態)には、毛様体筋61の弛緩によって水晶体63を垂直支持している毛様体小帯62が緊張し、水晶体63は毛様体小帯62に引っ張られて、厚みd1が薄くなり、屈折力は弱まる。一方、図7(b)に示すように、近方視している場合(調節状態)には、毛様体筋61の収縮によって水晶体63を垂直支持している毛様体小帯62がゆるみ、水晶体63は自己の弾性によって厚みd2を増し、より強い屈折力が生じる。
【0031】
つまり、眼に与える調節負荷を変化させたときの眼屈折力分布の差を演算し、さらに、図6上のカラーマップ73のように図形表示したり、前述した定量的な数値データを表示することにより、水晶体の機能的メカニズムや水晶体の調節の様子を詳細に知るための情報を提供できるようになる。
【0032】
上記の遠方視と近方視での各眼屈折力分布データ、及びその差分である調節力分布データは測定日時、被検者情報(氏名やID番号、被検眼の左右の区別等)、測定条件情報(固視標の設定位置等)と共に記憶部55に記憶される。被検者情報はキーボード58やマウス57を操作して入力しておく。測定日時は制御部50が持つタイマ機能により自動的に得られ、測定条件情報も各測定実行時のものが記憶される。
【0033】
こうして記憶したデータを利用し、日時を経た(日時を異にする)同一被検眼の調節力変化の様子を見ることもできる。すなわち、測定日時の情報、被検者情報及び測定条件情報から、同じ測定条件で同一被検眼における遠方視及び近方視の眼屈折力測定を行う。そして、同一被検眼の以前のデータを呼び出し、日時を経た遠近の差分データ(以前に測定した第1の差分データと日時を経た第2の差分データ)から、さらなる差分データ(第3の差分データ)を調節力演算部52で演算させ、その結果を図6と同様な方法で表示する。また第3の差分データも前述と同様に、その最大値、最小値、平均値、体積等の定量的数値で表示する。こうした結果を得ることにより、例えば、水晶体の調節変化が年齢と共にどのように変化するかを詳細に知ることができ、水晶体の衰えのメカニズムを知る手がかりにする情報を提供できる。あるいは、白内障の進行を抑える治療薬や調節力を回復させる治療薬(又は視力回復訓練)の効き目を調べるのにも役立てることができる。
【0034】
以上の実施形態では、近方視での固視標の位置を任意に設定した一定の距離としたが、調節力の限界が確認できる位置まで移動して測定を行うことでも良い。この方法による測定は、遠方視での測定を終えた後、固視標移動スイッチ42で近方へ徐々に固視標を移動させる。被検眼には固視標を注視させ、固視標がボケるようになったら応答してもらう。その応答が得られたら、固視標の移動を止め、この状態で固視標を固視させれば被検眼の調節力が限界まで働いたことになり、検者は測定スイッチを押して近方視での眼屈折力測定を行うことにより、調節限界での調節力分布データが得られる。さらに、日時を経た測定時も同様に行い、前述した第3の差分データを得ることによって、調節限界を基にした最大調節力の差の情報を詳細に知ることができる。
【0035】
また、眼屈折力分布の測定は位相差法を利用した測定光学系に限らず、種々のものを使用することができる。例えば、いわゆるウエイブフロントアナライザと呼ばれるもので、被検眼底に多数のドットパターンの平行光束を投光し、眼底からの反射光を2次元CCD(エリアセンサ)で受光して検出されたドットパターンの偏位から屈折力分布を求める光学系を用いた装置を採用することもできる。あるいは、被検眼底に平行レーザビーム光束を入射させ、眼底からの反射光を受光系内の多数のレンズアレイを介して眼底からの多数の反射光束を2次元CCDで撮像し、2次元CCD上の光束の偏位から屈折力分布を求める。また、レーザビーム等の平行光束を角膜に対してスキャンさせながら入射させて眼底に投光し、眼底からのスキャン光束の反射光を4分割受光素子又はエリアセンサで受光し、その偏位から屈折力分布を求める方法でも良い。
【0036】
また、以上の実施形態では眼屈折力分布の測定光学系を持つ装置によって調節力分布の演算も行う例を述べたが、もちろん、この演算及び演算結果の表示は別個の装置(外部コンピュータ等)で行っても良い。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、眼に与える調節負荷を変化させたときの眼屈折力分布をそれぞれ測定して、眼の調節変化の様子を詳細に知ることができ、水晶体の機能の診断などに役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本形態の眼科装置の外観略図である。
【図2】測定部に配置される光学系の概略配置図である。
【図3】眼屈折力測定光学系の受光部が有する受光素子の配置を示す図である。
【図4】制御系の概略構成を示す図である。
【図5】眼屈折力分布測定による測定結果の表示例を示す図である。
【図6】遠方視及び近方視での眼屈折力分布、調節力分布の表示例を示す図である。
【図7】水晶体の働きを説明する図である。
【符号の説明】
28 レンズ
29a 固視標
30 照明光源
39 モニタ
41 レンズ移動部
50 制御部
52 眼屈折力演算部
53 調節力演算部
55 記憶部
57 マウス
58 キーボード
120 眼屈折力測定光学系
Claims (3)
- 屈折力分布測定用光束を眼底に向けて投光する投光光学系と、眼底からの反射光束を検出する検出光学系と、該検出光学系の検出結果に基づいて被検眼の角膜各部での眼屈折力を演算する眼屈折力演算手段と、を持つ眼科装置において、呈示距離を変えた固視標を被検眼に呈示して、被検眼への調節負荷を変化させる固視標呈示手段と、該固視標呈示手段により異なる呈示距離で被検眼へ調節負荷を与え、各呈示距離で前記投光光学系及び前記検出光学系を動作させ、前記眼屈折力演算手段により前記検出光学系の各呈示距離での検出結果に基づいて被検眼の角膜各部での眼屈折力をそれぞれ得る屈折力データ取得制御手段と、異なる呈示距離での被検眼の角膜各部での眼屈折力の差分データを求め、被検眼の調節力変化に対する屈折力差分分布データを得る屈折力差分分布データ演算手段と、得られた屈折力差分分布データをグラフィック表示する表示手段と、を備えることを特徴とする眼科装置。
- 請求項1の眼科装置は、さらに前記屈折力差分分布データ演算手段による屈折力差分分布データを記憶する屈折力差分分布データ記憶手段と、測定日時を異にする屈折力差分分布データのさらに差分を演算する経時的屈折力差分変化演算手段と、を備えることを特徴とする眼科装置。
- 請求項1の眼科装置は、さらに前記屈折力差分分布データに基づいて最大値、最小値及び平均値を求める演算手段を備えることを特徴とする眼科装置。
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