JP3693166B2 - 配電線搬送方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば配電自動化等のために利用される配電線搬送において、搬送信号が周期的に減衰する現象(周期減衰)に起因した伝送エラーを回避するようにした配電線搬送方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、配電系統に接続される負荷機器の遠隔監視や制御、計測、配電管理、自動検針等を目的として、配電自動化が進められており、情報信号の伝送方式として、監視、制御、計測等の情報信号(変調信号)により搬送波を変調してなる搬送信号(被変調信号)を配電線に重畳させる配電線搬送方法が良く知られている。
【0003】
ここで、図7は配電系統の概略構成図であり、FDは例えば100Vの商用電源電圧が供給される配電線、LDは配電線FDに接続された各種の負荷を示している。
負荷LDには直流電圧を使用している機器が多く、その場合には、図8に示すように、交流電圧を整流回路REC及びコンデンサCにより整流、平滑し、直流電圧に変換して負荷機器に供給するのが一般的である。このため、コンデンサCは、整流回路RECからの充電動作と負荷機器に対する放電動作とを繰り返すことになる。
【0004】
図9は、図8における交流入力電圧▲1▼、整流回路RECの出力電圧(全波整流電圧)▲2▼、コンデンサCの電圧▲3▼及びその充電電流を概略的に示した波形図である。
【0005】
コンデンサCの電圧▲3▼に示すように、整流回路RECの出力電圧▲2▼がコンデンサCの電圧よりも高い期間、すなわち整流回路RECの出力電圧▲2▼のピーク付近でコンデンサCに充電電流が流れるので、その間はコンデンサCの電圧が上昇し、その後、次のピーク付近が到来するまでは放電によって電圧が下降する。つまり、コンデンサCの電圧は、ある範囲で上昇、下降を繰り返す。
見方を変えると、交流入力電圧の半周期ごとにそのピーク値付近でコンデンサCが低インピーダンスになってオン状態となり、その期間に充電電流が流れることになる。
【0006】
いま、図10に示すように電源電圧(図9における交流入力電圧▲1▼)に搬送信号が重畳されている場合、前述のように電源電圧の正負のピーク値付近で負荷LD側のコンデンサCがオン状態となるため、搬送信号もコンデンサCに吸収される結果、搬送信号が減衰してしまう現象が知られている。この現象を「周期減衰」という。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このため、配電線搬送された信号を受信して復調した場合に元の情報信号が正確に再現されず、エラーを生じるおそれがあった。
従来から、ディジタル変調方式として周波数変調方式(FSK:Frequency Shift Keying)や位相変調方式(PSK:Phase Shift Keying)が知られており、これらを用いた配電線搬送では、上述した搬送信号の周期減衰部分をデータとして取り扱わないといった対策が採られている。
【0008】
一方、遅延波対策を考慮したディジタル変復調方式として、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が知られている。
このOFDMは、周波数間隔を(1/有効シンボルの時間間隔)として各キャリア間を直交させ、符号間干渉がないようにした多数の搬送波を使用して各搬送波に低ビットレートの信号を割り当て、全体として所望のビットレートが得られるようにしたマルチキャリア伝送方式の一種であり、
1)有効シンボル(変調信号の一度の変化によって送ることができるデータ)長を長くできる、
2)ガードインターバル(信号の一部を繰り返し伝送する期間)を設けることで遅延波の影響(ゴースト)を低減できる、
3)周波数利用効率が高い、
等の利点がある。
【0009】
最近では、配電線搬送においてもディジタル変復調方式にOFDMを適用することが行われているが、前述した周期減衰の対策が十分に採られていない現状である。
【0010】
そこで本発明は、配電線搬送にOFDMを適用した場合において、周期減衰による影響を低減させることができる配電線搬送方法を提供しようとするものである。
また、OFDMでは、受信側での搬送波周波数やサンプリング周波数、シンボル位置等の同期精度が復調結果に大きく影響することに鑑み、本発明では、受信側での同期検出精度を向上させた配電線搬送方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、伝送するべき情報信号を配電線に重畳して搬送する配電線搬送方法であって、前記情報信号のディジタル変復調方式としてOFDM(直交周波数分割多重方式)を用いる配電線搬送方法において、前記情報信号が格納された有効シンボルを有するOFDM信号の、ガードインターバルに相当する期間に信号を乗せず、この期間を配電線の電源電圧の正負のピーク付近に設けるものである。
【0012】
請求項2に記載した発明は、請求項1記載の配電線搬送方法において、
OFDM信号を復調する際に、受信信号を複数のブロックに分割し、各ブロックの受信信号について基準信号との演算により求めた各ブロックごとの相関値が、各ブロックごとのしきい値に対して所定の条件を満たす場合に送受信信号間の同期を検出するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本発明の原理を示す図である。
図1において、配電線搬送されるOFDM信号(伝送シンボル)は、伝送するべき情報信号を多数の搬送波により変調した有効シンボルを時系列的に多数有しており、これらの有効シンボルの間には、ガードインターバルが設けられている。
【0014】
周知のように、ガードインターバルは遅延波の影響を低減するために設けられた期間であり、通常は、有効シンボル期間の信号波形の一部を繰り返して付加している。このOFDM信号を受信側で復調する際、フーリエ変換を行う期間を有効シンボル期間と等しくすると、信号の遅延時間がガードインターバルより短ければ、隣接する有効シンボルの遅延波がフーリエ変換期間に侵入せず、遅延波の影響が低減されることになる。
【0015】
本発明では、上述したガードインターバルに信号を乗せず、ガードインターバルの期間を配電線電源電圧の正負のピーク付近に同期させるようにした。
これにより、OFDM信号の各有効シンボルは、図10に示した周囲減衰を生じる電源電圧の正負のピーク付近に位置しなくなるため、情報信号の減衰を回避することができるようになり、伝送特性を向上させることができる。
【0016】
ここで、OFDM信号を送受信するディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)の機能ブロックを図2に基づいて説明する。
図2において、変調ブロック10は送信データを以下のように処理し、送信信号としてD/A変換器DACに送出する。
【0017】
すなわち、FPGA(Field Programmable Gate Allay:現場で書換可能な大規模集積回路)から送られた送信データは、伝送途中で生じる伝送データの誤りを訂正するための畳み込み符号を用いて、シフトレジスタ、加算器等により符号化される。
更に、次段において、1シンボル前の信号の位相を基準にした位相差を用いて次の信号を符号化する差動符号化が行われる。差動符号化の方式としては、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)等が用いられる。
【0018】
次に、誤り訂正符号の誤り系列を周波数軸方向に沿ってランダムに変更してインターリーブ処理を行い、信号の劣化を分散させる。
インターリーブ処理された信号は逆高速フーリエ変換(IFFT)により演算処理され、時間領域から周波数領域に変換する直交処理が行われる。
直交変換された信号はローパスフィルタLPFを経て所定周波数の搬送波により変調され、送信信号としてD/A変換器DACに送られ、その後、配電線路に重畳されて送信される。
【0019】
一方、復調ブロック20では、A/D変換器ADCから出力された受信信号を復調し、ローパスフィルタLPFを経て高速フーリエ変換(FFT)により周波数領域から時間領域に変換する。
その際、搬送波周波数やサンプリング周波数、シンボル位置等の同期精度を向上させるため、本実施形態では以下のような同期検出が実行される。
【0020】
すなわち、従来では、図3に示すように予め定めたPN信号(基準信号)a1,a2,……,azと受信信号b1,b2,……,bzとの積和によって伝送シンボル全体で単一の相関値cを算出し、この相関値cをしきい値dと比較してc>dの時に送受信信号が同期していると判断していた。
しかし、この方法によると、受信信号に大きなスパイクノイズ等が混入した場合も誤って同期と判断してしまい、誤検出を生じやすい。
【0021】
そこで本実施形態では、図4に示す如く受信信号b11,b12,……,b1z,b21,b22,……,b2z,b41,b42,……,b4z及びPN信号a11,a12,……,a1z,a21,a22,……,a2z,a41,a42,……,a4zをそれぞれ複数ブロックに分割し、各ブロックごとのPN信号と受信信号との積和によってブロックごとに相関値c1,c2,c3,c4,……を演算すると共に、これらの相関値と各ブロックごとのしきい値d1,d2,d3,d4,……とを比較してすべてのブロックにつき、相関値>しきい値(c1>d1,c2>d2,c3>d3,……)という関係が成り立った時に、同期成立と判定するようにした。
なお、図4ではPN信号、受信信号を何れも4つのブロックに分割してあるが、任意の複数であればよい。
【0022】
図4のような方法を採ることにより、例えば一部のブロックにスパイクノイズが混入したような時は、当該ブロックだけ相関値>しきい値という関係が成立したとしても、他のブロックについては上記関係が成立しなくなり、誤って同期と検出するおそれがなくなるので、同期検出精度を従来よりも向上させることができる。
【0023】
図5は、図4の同期検出を実現するための同期検出手段の機能ブロック図であり、比較器COMP1〜COMP4が各ブロックごとの相関値、しきい値の大小関係を比較し、c1>d1,c2>d2,c3>d3,c4>d4が成立した時にアンド回路ANDから同期検出信号が出力される。
【0024】
先の図2の復調ブロック20において、ローパスフィルタLPFを経た信号は高速フーリエ変換(FFT)により時間領域に変換されるが、その際に上述した同期検出信号を用いることによって送信信号に対する受信信号の同期が確保される。
高速フーリエ変換後の信号にはデインターリーブ処理及び差動復号化(遅延検波)が施され、1シンボル前の受信信号を基準としてそれと今回の受信信号との位相差を用いて復号化される。
【0025】
その後、ビタビ復号化等のアルゴリズムにより誤り訂正復号化が実行され、受信データが抽出される。この受信データは外部のFPGAに送られ、受信した情報信号に応じた各種の処理が実行される。
【0026】
次に、図6は上述したOFDM信号の変復調処理を行うDSPを中心として示した配電線搬送用送受信装置の概略的なブロック構成図である。
図6において、91はFPGA等に接続される外部I/F(インターフェース)、92は配電線側に接続される外部I/Fである。
【0027】
また、30は前述したDSP31を中心としたDSP周辺部であり、プログラムが内蔵されたROM32と、アナログ−ディジタル相互間の変換を行うDAC33,ADC34を備えている。
上記DSP周辺部30と前記外部I/F91との間にはデータI/F80が設けられており、このデータI/F80において、OFDM信号に設けられるガードインターバルの期間を電源電圧の正負のピーク付近に同期させる。このため、前記外部I/F92から電源同期検出器70により電源電圧の正負のピーク付近のタイミングを検出し、その検出信号をデータI/F80に取り込んでいる。
【0028】
なお、送信部40、結合部50及び受信部60の構成及び動作は良く知られたものであるため詳述しないが、送信部40はBPF(バンドパスフィルタ)41及び送信増幅器42により構成され、受信部60はBPF61及び受信増幅器62により構成され、結合部50は局部発振周波数が加えられる送信結合器51、送受信切り替え部52及び受信結合器53により構成されている。
【0029】
本実施形態によれば、OFDM信号に設けられるガードインターバルの期間を電源電圧の正負のピーク付近に同期させ、ガイドインターバルでは本来の信号の繰り返しを行わずに信号を乗せないようにした。
このため、図9、図10に示したように、電源電圧の正負のピーク付近において周期減衰による情報信号の減衰が回避され、エラーのない高精度な伝送を行うことができる。
【0030】
なお、本発明の原理は、周期減衰の影響以外に、電源電圧に同期したノイズ等の影響が大きい場合にも有効である。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載した発明によれば、配電線搬送において伝送するべき情報信号を減衰させることなく正確かつ高精度に送受信することができる。
また、請求項2に記載した発明によれば、OFDMにおける復調側での同期検出精度を高めることができる。
従って本発明によれば、従来よりも信頼性の高い配電線搬送方法を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】本発明の実施形態において、OFDM変復調を行うDSPの機能ブロック図である。
【図3】従来における同期検出方法の説明図である。
【図4】本発明の実施形態における同期検出方法の説明図である。
【図5】本発明の実施形態における同期検出手段の機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態が適用される配電線搬送用送受信装置の概略的なブロック構成図である。
【図7】配電系統の概略構成図である。
【図8】図7における負荷の入力側の構成図である。
【図9】図8における各部の電圧波形及びコンデンサの充電電流波形を示す図である。
【図10】周期減衰の説明図である。
【符号の説明】
10 変調ブロック
20 復調ブロック
30 DSP周辺部
31 DSP
32 ROM
33 DAC
34 ADC
40 送信部
41,61 BPF
42 送信増幅器
50 結合部
51 送信結合器
52 送受信切り替え部
53 受信結合器
60 受信部
62 受信増幅器
70 電源同期検出器
80 データI/F
91,92 外部I/F
DSP ディジタル・シグナル・プロセッサ
COMP1〜COMP4 比較器
AND アンド回路
Claims (2)
- 伝送するべき情報信号を配電線に重畳して搬送する配電線搬送方法であって、前記情報信号のディジタル変復調方式としてOFDM(直交周波数分割多重方式)を用いる配電線搬送方法において、
前記情報信号が格納された有効シンボルを有するOFDM信号の、ガードインターバルに相当する期間に信号を乗せず、この期間を配電線の電源電圧の正負のピーク付近に設けることを特徴とする配電線搬送方法。 - 請求項1記載の配電線搬送方法において、
OFDM信号を復調する際に、受信信号を複数のブロックに分割し、各ブロックの受信信号について基準信号との演算により求めた各ブロックごとの相関値が、各ブロックごとのしきい値に対して所定の条件を満たす場合に送受信信号間の同期を検出することを特徴とする配電線搬送方法。
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