JP3688140B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワーステアリング装置に関し、特に、電動モータによってオイルポンプを駆動して油圧を発生させ、この発生された油圧によって操舵を補助する、いわゆる電動油圧式のパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電動モータによりオイルポンプを回転させ、オイルポンプからパワーシリンダに作動油を供給することで、ステアリングホイールの操作力を軽減させる電動油圧式のパワーステアリング装置が公知である。
この種のパワーステアリング装置では、電動モータの回転速度により操舵補助力(アシスト力)が決定される。すなわち、電動モータの回転速度が高ければ、オイルの流量が増え、アシスト力は増加し、電動モータの回転速度が低ければ、オイルの流量が減り、アシスト力は減少する。
【0003】
一方、非操舵時にはアシスト力を必要としないので、電動モータの回転を停止させるか、又は極めて低い回転速度のアイドル状態に落として電力節約を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
車両がコーナの手前などで減速した直後では、見かけ上前輪荷重が増大するため、ハンドルが重くなるという傾向が現れる。また、車両が加速した直後では、見かけ上前輪荷重が減少するため、ハンドルは軽くなるという傾向が現れる。このため、一定のアシスト力を維持していたのでは、加減速時に操舵感が変わり、ドライバに違和感を与えていた。
【0005】
また、非操舵状態から急に操舵を開始すると、電動モータの回転の立ち上がりが間に合わず、一時的にハンドルが重くなるという現象が発生するので、操舵を予測し、電動モータの回転をいち早く立ち上げることが望まれていた。
本発明の目的は、加減速時であっても、一定の操舵感が得られるパワーステアリング装置を提供することである。
【0006】
また、本発明の目的は、操舵を予測することにより、常に一定の操舵感が得られるパワーステアリング装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)前記目的を達成するための本発明のパワーステアリング装置は、車両の前後加速度を、その符号を含めて検出する加速度検出手段と、非操舵時に、加速度検出手段で検出された車両の加速度が正の場合に、当該加速度に応じてアシスト力を減少する方向に電動モータの回転速度を下げ、加速度検出手段で検出された車両の加速度が負の場合に、当該加速度に応じてアシスト力を増加する方向に電動モータの回転速度を上げる制御手段とを含むものである。
前記制御手段は、前記加速度検出手段で検出された車両の加速度に応じて電動モータの回転速度を滑らかに変化させることが好ましい。
【0008】
このパワーステアリング装置では、車両の前後加速度によらず、ドライバは常に一定の操舵感を得ることができる。
(2)また本発明のパワーステアリング装置は、車両の前後加速度を、その符号を含めて検出する加速度検出手段と、非操舵時に、加速度検出手段で検出された車両の加速度が負の一定値以下をとる場合に、当該加速度に応じて電動モータの回転速度を、予め、アシスト力を発生する回転速度に設定する制御手段とを含むものである。
前記「一定のアシスト力を発生する回転速度」は、加速度0のときの回転速度よりも高い回転速度であることが好ましい。
【0009】
このパワーステアリング装置によれば、負の一定値以下の加速度を検出することにより、次の操舵を予測できるので、次の瞬間に操舵に入っても、スムーズにアシスト力を働かせることができる。前記「負の一定値」は、ドライバが次に操舵しようとして意識的に減速する時に通常検出される車両の前後加速度に設定される。前記「アシスト力を発生する回転速度」とは、ドライバが操舵しても、十分にアシストできる程度の力に対応して設定される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のパワーステアリング装置の全体構成を示す概要図である。このパワーステアリング装置は、車両に装着されて使用されるもので、ステアリング機構1における操舵を補助するためのものである。
【0011】
ステアリング機構1には、ステアリングホイール2が備えられている。ステアリングホイール2にはステアリング軸3が連結されており、このステアリング軸3の先端部にはピニオンギア4が取り付けられている。ピニオンギア4は、車幅方向に延びたラックギア5に噛合している。ラックギア5には、タイロッド6を介して前輪タイヤ7が取り付けられている。
【0012】
ステアリングホイール2が操作され、その回転力がステアリング軸3に伝達されると、その先端部のピニオンギア4が回転し、これに伴ってラックギア5が車幅方向に移動する。その結果、ラックギア5の移動がタイロッド6に伝達され、前輪タイヤ7の向きが変わる。
パワーステアリング装置には、操舵補助力を発生するためのパワーシリンダ20が備えられている。パワーシリンダ20は、ラック軸5に連結されたピストン21と、このピストン21によって形成される一対のシリンダ室20a,20bとを含んでいる。シリンダ室20a,20bには、それぞれ破線で示すオイル供給路22a,22bを介して油圧制御弁23が接続されている。
【0013】
油圧制御弁23は、破線で示すオイル循環路24の途中に介装されている。オイル循環路24は、リザーバタンク25に貯留されている作動油がオイルポンプ26により汲み出され、この汲み出された作動油がオイルポンプ26から吐出された後再びリザーバタンク25に戻る経路である。
オイルポンプ26は、電動モータMによって駆動制御される。オイルポンプ26が電動モータMによって駆動されている場合には作動油はオイル循環路24を循環し、駆動されていない場合には作動油の循環は停止している。
【0014】
トルクセンサ27は、ステアリング軸3に取り付けられたトーションバー8に関連して設けられており、ステアリング軸3に加えられたトルクに比例し、かつトルクの方向に応じた符号のトルク信号Tを出力する。トルクセンサ27には、ポテンショメータからなる機械的接点を有する形式のものや、非接触式トルクセンサなどのいずれの形式のものであっても適用することができる。
【0015】
油圧制御弁23は、前記トルクセンサ27により検出されたステアリング軸3に加えられるトルクの方向および大きさに応じて開度が変化する。これにより、作動油のパワーシリンダ20への供給状態が変化する。
パワーシリンダ20のいずれかのシリンダ室に作動油が供給されると、ピストン21が車幅方向に沿ういずれかの方向に移動する。これにより、操舵力が発生し、ラック軸5の移動が補助される。
【0016】
車速センサ28は、車輪のロータの回転速度を検出するもので、ロータに固定された磁性金属片を検出する磁気センサ、ロータに設けられた孔を光学的に検出する光センサなどを用いることができる。また、ロータの回転速度を検出するものに限らず、車両の速度若しくは加速度が検出できればどんな機構を用いてもよい。例えば、車両の動力伝達装置の回転軸の回転速度を検出するものであってもよい。なお、これらの車速センサは、ABS制御等のためにすでに車速信号が得られる構造になっていれば、それを流用してもよい。
電動モータMの駆動は、駆動回路29によって行われる。駆動回路29は、電子制御ユニットECUによって制御される。電子制御ユニットECUは、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを含むものである。
【0017】
図2は、電子制御ユニットECU等の電気的接続状態を示す図であり、トルクセンサ27および車速センサ28からそれぞれトルク信号Tおよび車速信号Vがそれぞれ与えられるようになっている。電動モータMには車両のバッテリ30からの電源が駆動回路29を通して供給される。駆動回路29は、電子制御ユニットECUから指令されるデューティ比でパルス幅変調された駆動信号を発生する回路である。そしてこの駆動回路29を流れる電動モータ電流が検出され、電子制御ユニットECUに入力されるようになっている。
電子制御ユニットECUは、トルクセンサ27から与えられるトルク信号Tおよび車速センサ28から与えられる車速信号Vを微分した加速度信号に基づいて、駆動回路29を制御する。
【0018】
図3は、電子制御ユニットECUの行う操舵変化に対する電動モータ回転速度の制御を示すグラフである。同図のとおり、非操舵時には電動モータの回転速度はスタンバイ回転速度Riに設定され、操舵を始めるとアシスト回転速度Rsに増大する。これにより、アシスト力を発生し、ドライバの操舵補助をすることができる。
【0019】
この実施形態では、非操舵時に、加速度を検出すると、電子制御ユニットECUは、図4に示すとおり、スタンバイ回転速度Riを変化させる。具体的には、加速度が正の方向であれば、スタンバイ回転速度Riを減少させ、加速度が負の方向であれば、スタンバイ回転速度Riを増加させる。なお、図4のグラフでは、スタンバイ回転速度Riは加速度の変化に対して滑らかに変化しているが、電子制御ユニットECUは、スタンバイ回転速度Riと加速度の関係を記憶したテーブルを予め備え、このテーブルに従って、階段状に変化させることもできる。
【0020】
以上のようにこの実施形態にかかるパワーステアリング装置によれば、車両の加速度を検出し、加速度が正の方向であれば、スタンバイ回転速度Riを減少させ、加速度が負の方向であれば、スタンバイ回転速度Riを増加させる。これにより、前輪荷重の変動に対する操舵感のバラツキを補正し、操作性の良いパワーステアリング装置とすることができる。
【0021】
なお、アシスト回転速度Rsを車両の加速度に応じて図4と同様に変化させてもよい。 また、他の実施形態では、非操舵時に、負の一定の加速度を検出すると、電子制御ユニットECUは、図5に示すとおり、モータ回転速度を変化させる。具体的には、加速度が負の一定値A以下であれば、操舵の有無にかかわらずモータ回転速度をアシスト回転速度Rsに増加させる。
【0022】
この制御により、コーナー手前を予測し電動モータの回転速度を上げるので、操舵したときでも、速やかに、かつ十分な力でアシストをすることができる。
以上の図4及び図5の制御は、いずれか1つを採用することもできるが、両方の制御を合わせて行ってもよい。この場合は、減速時かつ操舵前であれば、速やかにアシスト力を立ち上げることができ、操舵中も操舵力が重くなることはないとう両方の技術効果が得られる。
【0023】
本発明の実施の一形態の説明は以上のとおりであるが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。たとえば前記実施形態では、車両の加速度を速度センサからの車速信号を微分して検出していたが、直接、加速度センサを設けて検出してもよい。加速度センサとしては、サーボ形加速度センサや圧電形加速度センサが公知である。また、図5の実施形態では、電動モータのアイドル回転速度Riは、0でない一定の値としていた。しかし、アイドル回転速度Riが0の場合すなわち非操舵時に電動モータを停止する制御を行っている場合でも、本発明を適用することができる。その他、本発明の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のパワーステアリング装置の全体構成を示す概要図である。
【図2】電子制御ユニットECU等の電気的接続状態を示す図である。
【図3】電子制御ユニットECUの行う操舵変化に対する電動モータ回転速度の制御を示すグラフである。
【図4】 非操舵時に加速度を検出すると、スタンバイ回転速度Riを変化させる制御を説明するためのグラフである。
【図5】非操舵時に、負の一定の加速度を検出すると、モータ回転速度を変化させる制御を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 ステアリング機構
2 ステアリングホイール
20 パワーシリンダ
26 オイルポンプ
27 トルクセンサ
28 車速センサ
ECU 電子制御ユニット
M 電動モータ
T トルク信号
V 車速信号
Claims (4)
- 電動モータによってオイルポンプを駆動して油圧を発生させ、この発生された油圧により操舵を補助するためのパワーステアリング装置であって、車両の前後加速度を、その符号を含めて検出する加速度検出手段と、非操舵時に、加速度検出手段で検出された車両の加速度が正の場合に、当該加速度に応じてアシスト力を減少する方向に電動モータの回転速度を下げ、加速度検出手段で検出された車両の加速度が負の場合に、当該加速度に応じてアシスト力を増加する方向に電動モータの回転速度を上げる制御を行う制御手段とを含むことを特徴とするパワーステアリング装置。
- 電動モータによってオイルポンプを駆動して油圧を発生させ、この発生された油圧により操舵を補助するためのパワーステアリング装置であって、車両の前後加速度を、その符号を含めて検出する加速度検出手段と、非操舵時に、加速度検出手段で検出された車両の加速度が負の一定値以下をとる場合に、電動モータの回転速度を、予め、一定のアシスト力を発生する回転速度に設定する制御手段とを含むことを特徴とするパワーステアリング装置。
- 前記制御手段は、前記加速度検出手段で検出された車両の加速度に応じて電動モータの回転速度を滑らかに変化させることを特徴とする請求項1記載のパワーステアリング装置。
- 前記「一定のアシスト力を発生する回転速度」は、加速度0のときの回転速度よりも高い回転速度である請求項2記載のパワーステアリング装置。
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