JP3686571B2 - トラクタの定速走行装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレーラを牽引するトラクタの定速走行装置に関し、特に、トレーラを牽引していないときの走行安全性を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高速道路等の走行を行なう際に、運転者の労力を低減することを目的として、走行抵抗の増減にかかわらず、設定された一定速度を維持するように、エンジン等を制御する定速走行装置が知られている。かかる定速走行装置は、トレーラを牽引するトラクタにも搭載される場合がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術においては、トレーラの牽引・非牽引時にかかわらず、定速走行装置が作動するようになっていたため、次のような不具合が生じるおそれがあった。
【0004】
即ち、トラクタでは、一般に、積荷を積載したトレーラを牽引しているときに、必要十分な加速性能等を確保することを目的として、駆動輪におけるトルクが設定されている。このため、トレーラを牽引していないときには、トラクタの駆動輪の軸重が軽くなり、雨天時等のような路面摩擦抵抗が小さい状態では、駆動輪に作用するトルクが大きすぎ、駆動輪が空転するおそれがあった。駆動輪が空転すると、車両の直進性が低下し、運転者が微妙なハンドル操作を行なわなければならなかった。
【0005】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、トラクタがトレーラを牽引していないときには、定速走行に移行できないようにすることで、雨天時等のような路面摩擦抵抗が小さい状態における走行安全性を向上したトラクタの定速走行装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の発明では、定速走行条件が成立したか否かを判定する定速走行条件判定手段と、トレーラの牽引状態を検出する牽引状態検出手段と、前記定速走行条件判定手段により定速走行条件が成立したと判定され、かつ、前記牽引状態検出手段によりトレーラの牽引状態が検出されたときのみ、設定された一定車速を維持するように定速走行を行う定速走行手段と、を含んでトラクタの定速走行装置を構成したことを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、トラクタが定速走行に移行するためには、定速走行条件が成立すると共に、トレーラの牽引状態が検出されなければならない。このため、トラクタがトレーラを牽引していないときには、定速走行条件が成立していても定速走行に移行することがなく、雨天時等のような路面抵抗が小さい状態であっても、駆動輪が空転することが防止される。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記牽引状態検出手段は、トレーラを連結するカプラに取り付けられたカプラスイッチであることを特徴とする。
かかる構成によれば、既設の部品を使用して、トレーラの牽引状態が検出される。即ち、トレーラを牽引するトラクタにおいては、制動時のジャックナイフ現象を防止する観点から、トレーラから先に制動を行なう制動制御が行なわれている。このため、トレーラが牽引されているか否かを検出するために、カプラにカプラスイッチが取り付けられているのが常である。従って、カプラスイッチからの信号を流用すれば、新たなスイッチ等の部品を追加しなくとも、トレーラが牽引されているか否かが検出されるのである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、本発明に係るトラクタの定速走行装置(以下「定速走行装置」という)の第1実施形態を示す。
【0010】
トラクタ10に搭載されるエンジンコントロールユニット20には、設定された一定速度で走行するように、例えば、走行抵抗に応じてエンジンへの燃料供給量を増減する定速走行手段としての機能が備えられる。ここで、定速走行手段を構成する手法は、公知の技術であるため、その具体的な内容についての説明は省略する。なお、エンジンコントロールユニット20は、ソフトウエアにより定速走行条件判定手段を実現する。
【0011】
また、トラクタ10の後部に位置するプラットホーム12上面には、図示しないトレーラを牽引するためのカプラ14が取り付けられる。カプラ14は、図2に示すように、その上面を形成するカプラベース(サドル)14aでトレーラを支持し、カプラベース14a中央下部に装着のジョー機構(図示せず)でトレーラのキングピンと結合し、牽引力及び制動力等をトレーラに伝達する機能を有する。カプラ14には、トレーラが牽引されているか否かを検出する牽引状態検出手段としてのカプラスイッチ22が取り付けられる。カプラスイッチ22は、例えば、制動時にジャックナイフ現象が起こらないようにするため、牽引されるトレーラから先に制動を行なう制動制御に必要な信号を入力するため、一般的なトレーラに既設されているのが常である。
【0012】
エンジンコントロールユニット20には、オートクルーズメインスイッチ(以下「メインスイッチ」という)24,セットスイッチ26,ブレーキペダルスイッチ28,クラッチペダルスイッチ30,シフト位置センサ32,補助ブレーキ作動リレー34及び車速センサ36からの信号が夫々入力される。ここで、各スイッチ等について簡単に説明すると、メインスイッチ24は、定速走行を行なうか否かを選択するスイッチであって、定速走行を行なうときにON、定速走行を行なわないときにOFFとなるスイッチである。セットスイッチ26は、定速走行を行なう一定車速を設定するスイッチであって、押したときのみONとなるスイッチである。ブレーキペダルスイッチ28は、ペダルの操作状態を介してサービスブレーキの作動状態を検出するスイッチであって、ペダルを踏み込んでサービスブレーキが作動しているときのみONとなるスイッチである。クラッチペダルスイッチ30は、ペダルの操作状態を介してクラッチの断接状態を検出するスイッチであって、ペダルを踏み込んでクラッチが断となったときのみONとなるスイッチである。シフト位置センサ32は、現時点における変速機の変速状態を検出するスイッチであって、少なくとも、変速機がニュートラルか走行段にあるかを検出するスイッチである。補助ブレーキ作動リレー34は、排気ブレーキ,リターダ等の補助ブレーキが作動しているか否かを検出するもので、排気ブレーキの作動中にONとなるリレーである。車速センサ36は、現時点における車速を検出するセンサである。
【0013】
ここで、メインスイッチ24の信号線には、図示するように、カプラスイッチ22が直列に接続される。従って、メインスイッチ24がONであっても、トレーラが牽引されていなければカプラスイッチ22がOFFとなり、エンジンコントロールユニット20に入力されるメインスイッチ24からの信号はOFFとなる。即ち、メインスイッチ24及びカプラスイッチ22が共にONとならない限り、エンジンコントロールユニット20は、メインスイッチ24がOFFであると判定することとなる。
【0014】
さらに、トラクタ10の図示しないダッシュボードには、定速走行を行なう準備ができていることを運転者に報知するオートクルーズランプ38が取り付けられる。オートクルーズランプ38は、エンジンコントロールユニット20により、その点灯又は消灯制御が行なわれる。
【0015】
図3は、第1実施形態における定速走行装置の制御内容を示すフローチャートである。
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様)では、メインスイッチ24がONとなっているか否か、即ち、定速走行を行なうことが選択されているか否かが判定される。そして、メインスイッチ24がONとなっていればステップ2へと進み(Yes)、メインスイッチ24がOFFとなっていればステップ8へと進む(No)。ここで、メインスイッチ24からの信号は、前述したように、カプラスイッチ22がONとなっていない限りONとならないため、メインスイッチ24の信号を介してトレーラが牽引されているか否かが間接的に判定される。
【0016】
ステップ2では、エンジンコントロールユニット20に備えられている自己診断機能により、定速走行装置のシステムが正常であるか否かが判定される。そして、システムが正常であればステップ3へと進み(Yes)、システムに異常があればステップ8へと進む(No)。
【0017】
ステップ3では、定速走行の準備ができたことを運転者に報知すべく、オートクルーズランプ38が点灯される。
ステップ4では、セットスイッチ26が押されてONとなったか否かが判定される。そして、セットスイッチ26がONとなっていればステップ5へと進み(Yes)、セットスイッチ26がOFFとなっていればステップ1へと戻る(No)。
【0018】
ステップ5では、メインスイッチ24,ブレーキペダルスイッチ28,クラッチペダルスイッチ30,シフト位置センサ32,補助ブレーキ作動リレー34及び車速センサ36からの信号に基づいて、定速走行条件が成立しているか否かが判定される。即ち、メインスイッチ24がON,サービスブレーキが非作動,クラッチが接,シフト位置が走行段,補助ブレーキが非作動及び車速が所定範囲内の全ての条件が成立したときに、定速走行条件が成立したと判定される。そして、定速走行条件が成立したならばステップ6へと進み(Yes)、定速走行条件が成立していなければステップ7へと進む(No)。ここで、定速走行条件の成立要件として、メインスイッチ24からの信号を監視しているのは、メインスイッチ24がOFF、即ち、運転者が定速走行を中止しようとする意思を反映するためである。なお、ステップ5の処理が、定速走行条件判定手段に該当する。
【0019】
ステップ6では、定速走行を行なう一定速度としてセットスイッチ26が押されたときの車速が設定され、その車速に基づいて定速走行が行なわれる。そして、その後、ステップ5へと戻る。
【0020】
ステップ7では、定速走行が解除される。即ち、セットスイッチ26が押されたときに、定速走行条件が成立していなければ、定速走行への移行が行なわれない。一方、定速走行中に、例えば、サービスブレーキを操作して制動を行なったときには、定速走行が解除される。そして、その後、ステップ1へと戻る。
【0021】
ステップ8では、メインスイッチ24がOFF、又は、システムが異常であるときの処理が行なわれる。即ち、運転者が定速走行を望まないとき(トレーラを牽引していないときを含む)、システムが異常であるときには、定速走行の準備ができていないことを運転者に報知すべく、オートクルーズランプ38が消灯される。そして、その後、ステップ7へと進み、定速走行が解除される。
【0022】
ステップ1〜ステップ8の処理によれば、定速走行の準備が完了するためには、メインスイッチ24がON、システムが正常でなければならない。この場合、トラクタ10がトレーラを牽引していないときには、カプラスイッチ22がOFFとなるため、メインスイッチ24がONであっても、エンジンコントロールユニット20は、メインスイッチ24がOFFであると判定する。従って、トレーラを牽引していないときには、定速走行の準備ができず、雨天時等のような路面摩擦抵抗が小さい状態において、駆動輪の軸重が軽いことに起因する駆動輪の空転を防止することができる。そして、トレーラを牽引していないときの走行安全性を向上させることができる。
【0023】
また、定速走行中に、メインスイッチ24,ブレーキペダルスイッチ28,クラッチペダルスイッチ30,シフト位置センサ32,補助ブレーキ作動リレー34及び車速センサ36からの各信号に基づいて、定速走行条件が成立しなくなったと判定されたときには、定速走行が解除される。これは、一般的な定速走行装置における制御と同様である。
【0024】
図4は、本発明に係る定速走行装置の第2実施形態を示す。
第2実施形態では、カプラスイッチ22は、メインスイッチ24の信号線に直列に接続されておらず、その信号が直接エンジンコントロールユニット20に入力される。なお、他の構成に関しては、先の第1実施形態と同様であるので、その説明は省略することとする。
【0025】
図5は、本発明に係る定速走行装置の第3実施形態を示す。
第3実施形態では、カプラスイッチ22の信号は、他システムのコントロールユニット40、例えば、トラクタ10及びトレーラの制動制御を行なうコントロールユニットに入力される。そして、エンジンコントロールユニット20と他システムのコントロールユニット40とは、CAN(Controller Area Network)通信を介して種々の制御信号が授受される。このとき、エンジンコントロールユニット20には、他システムのコントロールユニット40から、少なくとも、トレーラが牽引されているか否かを示す信号が伝達される。なお、制動制御に関し、トレーラの牽引状態が検出されなければならない理由は、記述の通りである。また、他の構成に関しては、第2実施形態と同様に、先の第1実施形態と同様であるので、その説明は省略することとする。
【0026】
図6は、第2及び第3実施形態における定速走行装置の制御内容を示すフローチャートである。なお、先の第1実施形態と同様な処理が行なわれるステップに関しては、説明を簡略化する。
【0027】
ステップ11では、メインスイッチ24がONとなっているか否かが判定され、メインスイッチ24がONとなっていればステップ12へと進み(Yes)、メインスイッチ24がOFFとなっていればステップ19へと進む(No)。ここで、第2及び第3実施形態においては、図4及び図5からも明らかなように、エンジンコントロールユニット20に入力されるメインスイッチ24の信号には、カプラスイッチ22の信号は含まれない。
【0028】
ステップ12では、定速走行装置のシステムが正常であるか否かが判定され、システムが正常であればステップ13へと進み(Yes)、システムに異常があればステップ19へと進む(No)。
【0029】
ステップ13では、トレーラが牽引されているか否かが判定される。即ち、図4に示す第2実施形態においては、カプラスイッチ22がONとなっているか否かが判定され、カプラスイッチ22がONであればステップ14へと進み(Yes)、カプラスイッチ22がOFFであればステップ19へと進む(No)。一方、図5に示す第3実施形態においては、CAN通信を介して他システムのコントロールユニット40から伝達される信号に基づいて、トレーラが牽引されているか否かが判定され、トレーラが牽引されていればステップ14へと進み(Yes)、トレーラが牽引されていなければステップ19へと進む(No)。
【0030】
ステップ14では、オートクルーズランプ38が点灯される。
ステップ15では、セットスイッチ26がONとなっているか否かが判定され、セットスイッチ26がONとなっていればステップ16へと進み(Yes)、セットスイッチ26がOFFとなっていればステップ11へと戻る(No)。
【0031】
ステップ16では、メインスイッチ24,カプラスイッチ22,ブレーキペダルスイッチ28,クラッチペダルスイッチ30,シフト位置センサ32,補助ブレーキ作動リレー34及び車速センサ36からの各信号に基づいて、定速走行条件が成立しているか否かが判定される。そして、定速走行条件が成立したならばステップ17へと進み(Yes)、定速走行条件が成立していなければステップ18へと進む(No)。なお、ステップ16の処理が、定速走行条件判定手段に該当する。
【0032】
ステップ17では、定速走行を行なう一定速度としてセットスイッチ26が押されたときの車速が設定され、その車速に基づいて定速走行が行なわれる。そして、その後、ステップ16へと戻る。
【0033】
ステップ18では、定速走行が解除される。
ステップ19では、メインスイッチ24がOFF,システムが異常又はトレーラが牽引されていないときの処理が行なわれる。即ち、定速走行の準備ができていないことを運転者に報知すべく、オートクルーズランプ38が消灯される。そして、その後、ステップ18へと進み、定速走行が解除される。
【0034】
ステップ11〜ステップ19の処理によれば、トレーラの牽引状態を検出する構成が先の第1実施形態と異なるが、その作用及び効果に関しては、第1実施形態と同様である。
【0035】
なお、以上説明した第1〜第3実施形態においては、メインスイッチ24,カプラスイッチ22,ブレーキペダルスイッチ28,クラッチペダルスイッチ30等からの各信号に基づいて、定速走行条件が成立しているか否かを判定しているが、本発明はかかる構成に限定されるものではない。即ち、定速走行条件は、トラクタ10の装備によって異なるため、その装備に応じた最適な条件が定められるべきものである。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、雨天時等のような路面抵抗が小さい状態であっても、駆動輪が空転することが防止され、走行安全性を向上させることができる。
【0037】
請求項2記載の発明によれば、既設の部品によりトレーラの牽引状態が検出されるので、コスト上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 定速走行装置の第1実施形態を示す構成図
【図2】 トラクタに取り付けられたカプラを示し、(A)は斜視図、(B)は(A)中のA方向矢視図
【図3】 第1実施形態における制御内容を示すフローチャート
【図4】 定速走行装置の第2実施形態を示す構成図
【図5】 定速走行装置の第3実施形態を示す構成図
【図6】 第2及び第3実施形態における制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
10 トラクタ
14 カプラ
20 エンジンコントロールユニット
22 カプラスイッチ
Claims (2)
- 定速走行条件が成立したか否かを判定する定速走行条件判定手段と、
トレーラの牽引状態を検出する牽引状態検出手段と、
前記定速走行条件判定手段により定速走行条件が成立したと判定され、かつ、前記牽引状態検出手段によりトレーラの牽引状態が検出されたときのみ、設定された一定車速を維持するように定速走行を行う定速走行手段と、
を含んで構成されたことを特徴とするトラクタの定速走行装置。 - 前記牽引状態検出手段は、トレーラを連結するカプラに取り付けられたカプラスイッチである請求項1記載のトラクタの定速走行装置。
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