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JP3685913B2 - 非共沸混合冷媒の分析方法 - Google Patents

非共沸混合冷媒の分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非共沸混合冷媒の液相試料を採取し、気化させた後にガス分析装置に導入してこの混合冷媒の組成を分析するに際して、試料が非共沸混合冷媒であることに起因する分析値の経時的なバラツキを防止し、かつ分析値の応答性を改善する非共沸混合冷媒の分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷媒としてはジクロロジフルオロメタン(一般名称CFC12、以下同じ)やクロロジフルオロメタン(HCFC22)等の単一成分からなる冷媒が広く大量に使用され、また低温分野では共沸混合冷媒である通称R502が使用されていたため、これらの冷媒の組成分析は、その気相試料を採取してガスクロマトグラフィーにかけることで何等問題なく行うことができた。
しかし近年になって、クロロフルオロカーボン類(CFC)による成層圏のオゾン層破壊が深刻な環境問題として提起され、1995年末にはその生産が中止された。そこで既存のCFC使用の冷凍設備については、代替補充用として物性や性能を調整した複数のハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)、フルオロカーボン類(FC)、ハイドロカーボン類(HC)等からなる混合冷媒が開発されるに至った。
【0003】
一方、HCFCについてもCFCに比較してオゾン層破壊に対する影響は小さいものの、CFCの代替用途などで使用量が増大する可能性が高いことから2020年の原則全廃が決定され1996年より国際的な総量規制が開始された。
特にHCFC22は空調機器等に広く使用されているので重要であり、その代替品としては規制の対象外であるオゾン破壊係数ゼロのHFCからなる混合冷媒の採用が有望視されている。ただし従来のHCFC22用の機器にそのまま入れ換えて使用できる単一冷媒が見当たらないため、複数成分を混合して物性などを調整した2成分系または3成分系以上のHFC系混合冷媒が開発されている。更に、同様な観点から、HCの混合冷媒、又はHCとHFCとの混合冷媒、或いはハイドロフルオロエーテル類(HFE)やフルオロエーテル類(FE)を含む混合冷媒の開発も進められている。
【0004】
これらの新規な混合冷媒の多くは非共沸混合物であって気相と液相の組成が異なる。従って製造工程や小分け詰替えを含む流通過程で気相と液相の双方を含む混合冷媒の全体の組成を分析することはサンプリングの段階から容易ではない。そこで、一般には容器内や製造工程中の冷媒は液相部分が全冷媒量のほとんどを占めることから、通常は液相の組成のみを分析し、この液相の組成分析値によって品質管理を行っている。
液相の試料を分析する方法としては、前記の混合冷媒のほとんどが容易に気化し得る液化ガスであるので、液相の試料を採取した後にこの試料を気化し、完全に気化した後にこの気化ガスをガスサンプラーに採ってガスクロマトグラフィーにより分析する方法が採られている。
【0005】
従来行われている非共沸混合冷媒の分析ラインの具体例を図7に示す。図7において、この分析ラインは、冷媒容器30の底部に設けられた液相弁31に接続され、順次、弁32、弁33、計量管34(容量1cm3 )、弁35、気化ガス容器36、及び弁37を経由して採取口に連結されている。気化ガス容器36と弁37との間には圧力計38が装着されている。
【0006】
分析に際しては、先ず採取口に真空ポンプを取付け、弁32,33,35,37を開き、系内を十分減圧し、次いで弁37を閉じる。次に弁35を閉じ、冷媒貯槽30の液相弁31を開いて液相試料を計量管34内に採取する。次いで弁33を閉じ、弁35を開くと、計量管34内の液相試料は気化ガス容器36内に噴射され気化する。圧力計を見て気化ガス容器36の内圧が0.3〜0.4MPa となることを確認する。
次に採取口から真空ポンプを取外し、ガスクロマトグラフ用のガスサンプラー(図示せず)を接続し、気化ガス容器36内の気化ガスをガスサンプラーに採取しガスクロマトグラフ装置に注入する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の方法で混合冷媒の分析を行う場合、計量管34内の液相試料を気化ガス容器36内に噴射し気化させる際に、気化は低沸点成分から先に起こり高沸点成分の気化が遅れるため、気化ガス容器36内のガス組成に局所的なムラが生じる。このため、同一の気化ガス容器36からガスサンプラーに採取した複数のガス試料の分析値が経時的にばらつくという問題が起こる。
このバラツキを解消するには、気化ガス容器36内の組成ムラをなくし安定化する必要があるが、これにはかなりの時間を要する。このため上記の分析方法は十分に時間をとることができる回分式の分析には使用できるにしても、連続的又は断続的に、しかもリアルタイムに分析結果を求められる製造工程や流通過程での品質管理には不向きであった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、従ってその目的は、試料が非共沸混合冷媒であることに起因する分析値の経時的なバラツキを防止し、連続的にしかもリアルタイムで分析値が得られるライン分析に適した非共沸混合冷媒の分析方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明は、非共沸混合冷媒の液相試料を採取し、気化させた後にガス分析装置に導入してこの混合冷媒の組成を分析するに際して、気化後の混合冷媒ガスをガス均質化手段を有するバッファ容器に流通させ、このバッファ容器内で均質化された混合冷媒ガスをガス分析装置に導入する非共沸混合冷媒の分析方法を提供する。
前記において、ガス均質化手段は、気化後の混合冷媒ガスをバッファ容器に導入する際に通過させる多孔体、バッファ容器内に設置された攪拌羽根、又はバッファ容器と外部ポンプとを環状に結ぶガス循環系の何れか1以上であることが好ましい。
前記において、バッファ容器の容量は、0.005〜2リットルの範囲内であることが好ましい。また、バッファ容器を流通する混合冷媒ガスの空間速度は、100〜2000hr-1の範囲内であることが好ましい。ここで空間速度(以下「SV」と記す)とは、ガス流量(リットル/hr)/バッファ容器の内容積(リットル)で求められる値である。
【0009】
前記の非共沸混合冷媒は、HCFC、HFC、HC、FC、HFE、FE及びフルオロヨードカーボン(FIC)の群から選ばれた2種以上からなるものであることが好ましい。特に前記の非共沸混合冷媒は、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)及び1、1、1、2-テトラフルオロエタン(HFC134a)の群から選ばれた2種以上からなるものであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例により図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例である分析ラインを示している。この分析ラインは、概略を符号1で示す気化部を有している。非共沸混合冷媒(以下、単に「冷媒」と記す)の分析に際しては、例えば冷媒容器10内に充填された冷媒の液相Lを、この容器底部に設けられた抜出し弁11を開いて抜出し、フレキシブルホース12を経由して気化部1の制御弁2に導入する。気化部1内で液相Lは制御弁2から気化器3に送られ気化される。
【0011】
気化した冷媒(以下「気化ガス」と記す)は、筒形のバッファ容器4の底部に送られ、ガス均質化手段としてこの底部に設けられた多孔体5の多数の細孔6を通してバッファ容器4内に拡散導入され、均質化される。このバッファ容器4は、容量が0.005〜2リットルの範囲内とされている。
バッファ容器4内で均質化された気化ガスは容器頂部の導出管20から導出され、ガス流量計7を通った後、図示しないガスサンプラーにより供試量が採取されガスクロマトグラフィーにより組成が分析されるようになっている。
【0012】
前記において、バッファ容器4内を流通する気化ガスの空間速度(SV)は、100〜2000hr-1の範囲内となるように調整される。この調整は、ガス流量計7によって計測された流量値を基に、制御弁2の開度を制御することによって行うことができる。
【0013】
非共沸混合冷媒をこの気化部1を通して分析すると、気化器3における気化に際して混合冷媒成分の気化速度の差に起因するガス組成のムラが生じても、均質化手段として多孔体5を有するバッファ容器4によって速やかに均質化され、その結果、バッファ容器4を通過した気化ガスをガスサンプラーに採取するとき、複数成分からなるガス試料の分析値が経時的にばらつくという問題が解消され、常に安定した分析値が得られるようになる。
【0014】
バッファ容器4の容量は、0.005〜2リットルの範囲内とされているので、このバッファ容器に滞留する気化ガスは極めて少量であり、新たに導入される気化ガスにより直ちに置換される。従って本発明の分析法を混合冷媒製造工程の連続製造ライン等に適用しても、バッファ容器4内に残留するガスによる分析値の遅れはほとんどなく、製造工程の液相Lの組成変動に対応して応答性良くリアルタイムに正確かつ安定した分析値が得られる。バッファ容器4の容量は、0.005リットル未満では十分な均質化効果が得られずガスクロマトグラフ装置に送る気化ガスの組成の経時的なバラツキが大きくなる。2リットルを越えると、バッファ容器4内のガス滞留量が過大となり、製造工程等における液相Lの組成変動に対する測定値の応答性が低下する。
【0015】
また、バッファ容器4を通過する気化ガスのSVは100〜2000hr-1の範囲内となるように調整することが好ましい。SVが100hr-1未満では流速が緩慢となるために多孔体5による気化ガスの均質化が不十分となりやすく、分析値が不安定となる。SVが2000hr-1を越えると、過大な液相試料を要するようになり、また気化器3における気化が不完全になるなど、様々な障害が起こって不都合である。
【0016】
以下、本発明の各構成要素について詳述する。
気化部1において、制御弁2は、冷媒の液相Lの流量を気化ガスのSV換算でゼロ〜2000hr-1程度の範囲内で自在に制御できるものであれば何れでもよい。通常は微量流量制御の正確さと容易さの点でニードルバルブが好適である。この制御弁2の制御は、ガス流量計7に示されるガス流量を見ながら手動で行ってもよく、また冷媒製造工程に設置して連続分析する際等には、自動弁を用いてタイマー作動により一定開度に自動的に開/閉口するように制御してもよい。
【0017】
気化器3は、測定しようとする冷媒に含まれる全ての成分を短時間に気化することができるものであれば何れでもよい。例えば前記の制御弁2とバッファ容器4とを連結する配管自体であってもよい。通常は、短時間内に冷媒に気化熱を与えるに十分な伝熱面積を確保するために、コイル状の配管やフィン付きの配管等を用いることが好ましい。また、気化器3は必要なら加熱手段を有していてもよく、また噴霧式の構成とされていてもよい。
【0018】
バッファ容器4は、前記の気化器3において混合冷媒中の各冷媒成分の気化速度の差異に起因する気化ガスの組成ムラを速やかに均質化するためのものであるから、この目的を効果的に達成し得る構造や形状が適宜選択される。バッファ容器4の器形は特に限定されるものではないが、細長い筒形であることが好ましい。この場合は筒体の長手方向一方の端部から気化ガスを導入し、他方の端部から導出させるようにすることが好ましい。筒形の場合の断面径に対する長さの比率は、特に限定されるものではないが2〜10倍程度とすることが好ましい。2倍未満では均質化効果が不十分となる可能性があり、一方10倍を越える長さとしても容器の容積が増大するのみで均質化効果は増大しない。
【0019】
本発明においてバッファ容器は、この容器内で気化ガスを均質化するためのガス均質化手段を必須とする。このガス均質化手段の構成は特に限定されるものではない。例えば、バッファ容器内に充填された充填リング、バッファ容器内壁に形成されたフィン、またはバッファ容器内の長さ方向に間欠的に配設された多孔板からなる棚段等であってもよい。しかしこれらは構造が複雑で高価につく上に、内部表面積が増大するために気化ガスの吸着やガス粘性による滞留等の問題が起こりやすい。そこで、器内はできるだけ単純な形状とすることが好ましい。
【0020】
バッファ容器内で気化ガスの均質化を達成するためのガス均質化手段としては、特に▲1▼気化ガスをバッファ容器に導入する際に通過させる多孔体、▲2▼バッファ容器内に設置された攪拌羽根、又は▲3▼バッファ容器と外部ポンプとを環状に結ぶガス循環系、の何れかを1以上を用いることが好ましい。もちろん前記▲1▼〜▲3▼の2以上を組み合わせて用いれば、より速やかな均質化が達成されるので、分析値の応答性をより一層高めることができる。
【0021】
前記▲1▼の多孔体は、図1に多孔体5として例示したように、多数の細孔6が形成された多孔板を有する濾斗形のものであってもよく、図2(A)に示すように、球面の多孔板で形成された球状の多孔体8であってもよい。また、図2(B)に示すように、バッファ容器4の一方の端面を形成する多孔体9であってもよい。これらの多孔体5,8,9は、何れの場合も多数の細孔がバッファ容器内に開口しかつバッファ容器の導出管20からできるだけ離れた位置に設置することが好ましい。バッファ容器4が細長い筒形である場合は、この多孔体5,8,9は導出管20と反対側の端部近傍に設けることが好ましい。
【0022】
前記の多孔体5,8,9としては、ガラスフィルター、素焼きフィルター、焼結金属または金綱などが使用できる。これらの多孔体は、その細孔の合計の断面積が透過部の断面積の約90%以下とされていることが好ましい。これによって、気化ガスが細孔を通過する際により効果的な拡散と混合が行われる。
【0023】
バッファ容器4はまた、図3に示すように、強制的な攪拌手段として容器内に前記▲2▼で示した攪拌羽根を有していてもよい。この攪拌羽根13は、例えば筒形のバッファ容器4の軸心を回転軸として回転するプロペラ形(図3)や櫛形又は櫂形等であってよい。また容器内に回転軸を挿入すると気密性保持のための構造が複雑になるので、バッファ容器4内に磁石羽根を挿入し底部外側からマグネチックスターラーを用いて攪拌することも好適である。
【0024】
バッファ容器4はまた、強制的な攪拌手段として前記▲3▼で示したガス循環系を使用することもできる。このガス循環系を▲1▼の多孔体と組み合わせた例を図4に示す。図4において、このバッファ容器4は横置き直方体で、その長手方向一方の端面には平板状の多孔体15が端面と一体に形成され、気化ガスはこの多孔体15を通過してバッファ容器内に導入されるようになっている。このバッファ容器4の他方の端部近傍から循環用のガス管16が容器外に引出され、このガス管16によって容器外に導出された容器内の気化ガスはポンプ17によって再度バッファ容器4内に導入され、多孔体15の近傍に循環されるようになっている。ガス管16の容器内吹出し口18は、循環ガスを多孔体15に吹き付けるような位置に開口している。このバッファ容器4に導入された気化ガスは、多孔体15及びガス循環系16,17,18によって攪拌され、均質化されて導出管20から導出されガスサンプラーにより採取される。
【0025】
一般に、組成分析のための1回当たりに要するガスサンプル量は少量でよい。製造工程等で長時間にわたり連続的又は断続的に液相試料を採取して組成を監視する場合には、分析のための抜出し量が多いと結果的にロスが大きくなる間題もあり、また少なすぎても、把握すべき組成変化の応答性の面から好ましくない。この観点から連続又は断続サンプリングの場合の液相試料の採取量は、気化ガス量換算で5〜50リットル/hrの範囲内とすることが好ましい。
また前記の組成監視をする場合に、短時間の内に組成の異常傾向が把握できるよう、分析値のバラツキの範囲を極力狭める必要があることはいうまでもない。従って各成分毎にその振れ幅は平均値に対して±0.2重量%以内、好ましくは±0.1重量%以内に抑えることが望ましい。
【0026】
前記気化部1において、制御弁2の2次側の圧力は、環境温度で気化ガスが液化するほど高圧でなければ特に制限されるものではない。通常は特別な設備を要しない点で大気圧付近で導入するのが取扱上も好ましい。また、気化器3で気化された後の気化ガスの温度は、前記の圧力下にガスが液化しなければよいので、圧力が大気圧付近であれば室温又はそれ以上とすることが好ましい。
【0027】
前記気化部1において、他の方法で制御弁2が制御できるのであればガス流量計7は省略することができる。また必要なら、図1に示した以外の弁類、圧力計、流量計、加熱及び/又は冷却装置、制御システム等を付加することもできる。またガス分析装置としては、気化冷媒の組成が分析できるものであれば何れでもよいが、通常は性能・取扱い等の便宜からガスクロマトグラフ装置が用いられる。
【0028】
本発明の分析方法は、HCFC、HFC、HC、FC、HFE、FE及びFICの群から選ばれた2種以上からなる非共沸混合冷媒の組成分析に適用できる。前記のHCFCの具体例としては、例えば一般名でHCFC22(CHClF2)、HCFC123(CHCl2-CF3)、HCFC124(CHClF-CF3)、HCFC141b(CH3-CCl2F)、HCFC142b(CH3-CClF2)、HCFC225ca(CHCl2-CF2-CF3)、HCFC225cb(CHClF-CF2-CClF2)などを挙げることができる。
HFCの具体例としては、例えばHFC23(CHF3)、HFC32(CH22)、HFC41(CH3F)、HFC134(CHF2-CHF2)、HFC134a(CH2F-CF3)、HFC143a(CH3-CF3)、HFC125(CHF2-CF3)、HFC161(CH3-CH2F)、HFC227ea(CF3-CHF-CF3)、HFC227ca(CHF2-CF2-CF3)、HFC236ca(CHF2-CF2-CHF2)、HFC236cb(CH2F-CF2-CF3)、HFC236ea(CHF2-CHF-CF3)、HFC236fa(CF3-CH2-CF3)、HFC245ca(CH2F-CF2-CHF2)、HFC245cb(CH3-CF2-CHF2)、HFC245fa(CHF2-CH2-CF3)、HFC254cb(CH3-CF2-CF3)などを挙げることができる。
HCの具体例としては、例えばHC290(CH3-CH2-CH3)、HC600(CH3-CH2-CH2-CH3)、HC600a((CH32CH-CH3)、HC601(CH3-CH2-CH2-CH2-CH3)、HC601a((CH32CH-CH2-CH3)、HC601b((CH34C)、HC170(CH3-CH3)、HC-C270(環状-CH2-CH2-CH2-)、HC1270(CH3-CH=CH2)などを挙げることができる。
FCの具体例としては、例えばFC218(CF3-CF2-CF3)、FC-C318(環状-C48-)などを挙げることができる。
HFE、FEの具体例としては、例えばHFE134(CHF2-O-CHF2)、HFE143a(CH3-O-CF3)、HFE125(CHF2-O-CF3)、HFE227ca2(CHF2-CF2-O-CF3)、HFE245cb2(CH3-CF2-O-CF3)、HFE-C318(環状-CF2-CF2-CF2-O-CF2-)、FE116(CF3-O-CF3)などを挙げることができる。
FICの具体例としては、例えばFIC13I1(CF3I)、FIC115I1(CF3-CF2I)などを挙げることができる。
【0029】
特に本発明の分析方法は、代替冷媒として有望視されている非共沸混合冷媒の組成分析に好適に使用できる。これらの非共沸混合冷媒の例として、通称及び成分・組成(重量%)を挙げれば、例えば、
R403B:HC290/HCFC22/FC218=5/56/39
R407C:HFC32/HFC125/HFC134a=23/25/52
R407E:HFC32/HFC125/HFC134a=25/15/60
R900JA:HFC32/HFC134a=30/70
等がある。
【0030】
前記の非共沸混合冷媒の内でも、特にHFC32(ジフルオロメタン)、HFC125(ペンタフルオロエタン)及びHFC134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)の群から選ばれた2種以上からなる前記のR407C、R407E及びR900JA等は代替冷媒として特に有望視されている。本発明の分析方法はこれらの代替冷媒の製造工程又は流通過程での連続的な組成管理に有利に使用できる。
【0031】
本発明の方法を冷媒容器中の冷媒に適用する場合、冷媒容器としてはサービス缶、ボンベ、タンクまたは冷凍・空調機器内の冷媒タンク等の何れであってもよい。一般に冷媒容器から冷凍・空調機器等へ非共沸混合冷媒を小分け充填する際等には、容器内の気相部分の容積が増大するに伴って残留液相の組成が変化する傾向がある。本発明の方法は、非共沸混合冷媒容器中の液相組成を直接かつ連続的に分析でき、しかもバラツキの少ない安定した測定値が得られるので、小分け充填時の冷媒液相の組成変化を常時監視する場合等にも極めて有用である。
【0032】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。各実施例において、組成割合は全て重量%、空間速度(SV)は全てhr-1の単位である。
(実施例1)
図1に示す冷媒容器10にR407Cを20kg充填した。この冷媒容器10内に充填された冷媒の液相Lのサンプル量を、容器底部に設けられた抜出し弁11を開いて樹脂バッグに採取し、樹脂バッグ内で気化させ、十分に攪拌混合した後にガスクロマトグラフィーにより組成を測定した。結果は
HFC32/HFC125/HFC134a=23.1/25.05/51.85
であった。
【0033】
次に、図1に示すように、フレキシブルホース12を用いて抜出し弁11と気化部1の制御弁2とを接続した。バッファ容器4としては、縦型円筒形のものを用いた。この容器の直径に対する高さの比は約5であり、内容積は0.05リットルであった。このバッファ容器4の底部近傍に、下向きに吹き出す細孔6を有するガラス製の多孔体5を装着した。バッファ容器4の頂部に導出管20を形成し、これから導出された気化ガスが、ガス流量計7を通った後、ガスクロマトグラフ装置のガスサンプラーに送られ、ガスクロマトグラフィーにより分析されるようになっている。
【0034】
制御弁2を閉じた状態で冷媒容器底部の抜出し弁11を開き、次にガス流量計7の指示をみながら制御弁2を徐々に開き、約25リットル/hrのガス流量となるように調整し、安定化させた。この時のSVは約500であった。この流通状態で、約10分ごとにガスサンプラーを切り替えて出ロガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフ装置にて約2.5hrにわたり連続して組成を分析した。得られた分析値を図5のグラフに示す。
【0035】
図5のグラフから、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC125の分析値が非常に安定していることがわかる。その平均値は、HFC32が23.10、HFC125が25.05であり、樹脂バッグに採取した初期の分析値と一致し、またその平均値に対する各測定値のバラツキは、何れの成分についても±0.1重量%の範囲内で、許容限界の±0.2重量%内に入っていた。
【0036】
(比較例1)
図1の気化部1からバッファ容器4を取り外し、気化器3とガス流量計7とを直結した以外は実施例1と同様にして、比較例1の分析を行った。得られた分析値を図6のグラフに示す。
【0037】
図6のグラフから、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC125の分析値が非常に大きくばらついていることがわかる。その平均値は、HFC32が23.18、HFC125が25.09であり、樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致せず、また、その平均値に対する各測定値のバラツキは許容限界±0.2重量%を大きく越え、最大で±0.9重量%に達した。
【0038】
(実施例2)
実施例1に用いたバッファ容器4の代わりに、同一形状で内容積を0.005リットルに縮小したバッファ容器を用い、SVを約5000に増大させた以外は実施例1と同様にして、気化ガスの流量が約25リットル/hrの流通状態で、実施例1に用いたものと同じR407Cが充填されている冷媒容器10の冷媒液相Lを連続的に採取して分析したところ、サンプリングの経過時間に対するHFC32とHFC125の分析値はほぼ安定しており、その平均値に対する各測定値のバラツキは、何れの成分についても許容限界の±0.2重量%の範囲内であった。
【0039】
(実施例3)
実施例1に用いたバッファ容器4の代わりに、図3に示すように、直径に対する高さの比が約15の縦型円筒形で内容積が1.5リットルであり、底部近傍に外部モーターにより回転されるプロペラ形の攪拌羽根13が設けられたバッファ容器を用い、その底部近傍から気化ガスを導入し頂部の導出管20から導出し、かつSVを約30とした以外は実施例1と同様にして、気化ガスの流量が約50リットル/hrの流通状態で攪拌羽根13を回転させながら、実施例1と同じ冷媒容器10内のR407Cの液相Lを連続的に分析した。
【0040】
分析結果は、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC125の分析値がほぼ安定しており、その平均値に対する各測定値のバラツキは、何れの成分についても許容限界の±0.2重量%の範囲内であった。
【0041】
(比較例2)
実施例3に用いたバッファ容器の攪拌羽根の回転を停止した以外は実施例3と同様にして、気化ガス流量が約50リットル/hr、SVが約30の流通状態で、実施例3と同じ冷媒容器10のR407Cの液相Lを運続的に分析した。
分析結果は、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC125の分析値が大きくばらつき、平均値に対する各測定値のバラツキも許容限界の±0.2重量%を越えていた。
【0042】
(比較例3)
実施例3で用いたバッファ容器4を取り外し、図1の気化器3とガス流量計7とを直結した以外は実施例3と同様にして、ガス流量を実施例3と同様に約50リットル/hrとして実施例3と同じ冷媒容器10のR407Cの液相Lを運続的に分析した。
分析結果は、サンプリングの経過時間に対するHFC32とHFC125の分析値が非常に大きくばらつき、平均値に対する各測定値のバラツキも許容限界の±0.2重量%を大幅に越え、±0.5重量%に達した。
【0043】
(実施例4)
図1に示す冷媒容器10にR407Eを20kg充填した。この冷媒容器10内に充填された冷媒の液相Lのサンプル量を、容器底部に設けられた抜出し弁11を開いて樹脂バッグに採取し、樹脂バッグ内で気化させ、十分に攪拌混合した後にガスクロマトグラフィーにより組成を測定した。結果は
HFC32/HFC125/HFC134a=24.9/15.1/60
であった。
【0044】
次に、図1に示すように、フレキシブルホース12を用いて抜出し弁11と気化部1の制御弁2とを接続した。バッファ容器4としては、直径に対する高さの比が約4の縦型円筒形で内容積が0.025リットルのものを用いた。このバッファ容器4の底部には、下向きに吹き出す細孔6を有するガラス製の多孔体5が装着されている。バッファ容器4の頂部の導出管20から流出した気化ガスは、ガス流量計7を通った後、ガスクロマトグラフ装置のガスサンプラーに送られ、ガスクロマトグラフィーにより分析されるようになっている。
【0045】
制御弁2を閉じた状態で冷媒容器底部の抜出し弁11を開き、次にガス流量計7の指示をみながら制御弁2を徐々に開き、約40リットル/hrの気化ガス流量となるように調整し、安定化させた。この時のSVは約1600であった。この流通状態で、約10分ごとにガスサンプラーを切り替えて気化部1の出ロガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフ装置にて連続的に組成を分析した。
【0046】
得られた結果は、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC125の分析値が安定しており、樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致し、また平均値に対する各測定値のバラツキは、何れの成分についても±0.1重量%の範囲内であった。
【0047】
(比較例4)
実施例4で用いたバッファ容器4を取り外し、気化器3とガス流量計7とを直結した以外は実施例4と同様の操作により、気化ガス流量約40リットル/hrの条件で比較例4の分析を行った。
得られた結果は、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC125の分析値が大きくばらつき、樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致せず、また、その平均値に対する各測定値のバラツキは許容限界の±0.2重量%を大きく越え、最大で±1重量%に達した。
【0048】
(実施例5)
図1に示す冷媒容器10にR403Bを20kg充填した。この冷媒容器10内に充填された冷媒の液相Lのサンプル量を、容器底部に設けられた抜出し弁11を開いて樹脂バッグに採取し、樹脂バッグ内で気化させ、十分に攪拌混合した後にガスクロマトグラフィーにより組成を分析した。結果は
HC290/HCFC22/FC218=4.9/56.2/38.9
であった。
【0049】
次に、図1に示すように、フレキシブルホース12を用いて抜出し弁11と気化部1の制御弁2とを接続した。バッファ容器4としては、直径に対する高さの比が約2の縦型円筒形で内容積が0.15リットルのものを用いた。バッファ容器4内の多孔体としては、実施例1で用いた多孔板を有する濾斗形のものに代えて、図2(A)に示した球面の多孔板で形成された多孔体8を用い、更に器底に磁石羽根を挿入しマグネチックスターラーで攪拌するようにした。バッファ容器4の頂部から流出した気化ガスは、ガス流量計7を通った後、ガスクロマトグラフ装置のガスサンプラーに送られ、ガスクロマトグラフィーにより分析されるようになっている。
【0050】
制御弁2を閉じた状態で冷媒容器底部の抜出し弁11を開き、次に攪拌機を作動させガス流量計7の指示をみながら制御弁2を徐々に開き、約45リットル/hrの気化ガス流量となるように調整し、安定化させた。この時のSVは約300であった。この流通状態で、約10分ごとにガスサンプラーを切り替えて気化部1の出ロガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフ装置にて連続的に組成を分析した。
【0051】
得られた結果は、サンプリングの経過時間に対して各成分組成の分析値が非常に安定しており、その平均値は樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致し、また平均値に対する各測定値のバラツキは、何れの成分についても±0.1重量%の範囲内であった。
【0052】
(比較例5)
実施例5で用いたバッファ容器4を取り外し、気化器3とガス流量計7とを直結した以外は実施例5と同様の操作により、気化ガス流量約45リットル/hrの条件で比較例5の分析を行った。
得られた結果は、サンプリングの経過時間に対して各成分組成の分析値が非常に大きくばらつき、その平均値は樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致せず、また平均値に対する各測定値のバラツキは許容限界の±0.2重量%を越えて最大で±0.5重量%に達した。
【0053】
(実施例6)
図1に示す冷媒容器10にR900JAを20kg充填した。この冷媒容器10内に充填された冷媒の液相Lのサンプル量を、容器底部に設けられた抜出し弁11を開いて樹脂バッグに採取し、樹脂バッグ内で気化させ、十分に攪拌混合した後にガスクロマトグラフィーにより組成を分析した。結果は
HFC32/HFC134a=30.4/69.6
であった。
【0054】
次に、図1に示すように、フレキシブルホース12を用いて抜出し弁11と気化部1の制御弁2とを接続した。バッファ容器4としては、図4に示したように、内容積が0.025リットルの横置き直方体で、長手方向一方の端面に平板状の多孔体15が端面と一体に形成され、端面の平均径に対する長さの比が約2のものを用いた。このバッファ容器4は、他方の端部近傍から循環用のガス管16が引出され、容器内の気化ガスはポンプ17によってバッファ容器4内の多孔体15の近傍に循環される。ガス管16の容器内吹出し口18は循環ガスを多孔体15に吹き付けるような位置に開口している。このバッファ容器4に導入された気化ガスは、多孔体15及びガス循環系16,17,18によって攪拌され均質化されて、導出管20からガス流量計7を通った後、ガスクロマトグラフ装置のガスサンプラーに送られるようになっている。
【0055】
制御弁2を閉じた状態で冷媒容器底部の抜出し弁11を開き、次にポンプ17を作動させ、ガス流量計7の指示をみながら制御弁2を徐々に開き、約50リットル/hrの気化ガス流量となるように調整し、安定化させた。この時のSVは約2000であった。この流通状態で、約10分ごとにガスサンプラーを切り替えて気化部1の出ロガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフ装置にて連続的に組成を分析した。
【0056】
得られた結果は、サンプリングの経過時間に対してHFC32とHFC134aの分析値が非常に安定しており、その平均値は樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致し、また平均値に対する各測定値のバラツキは、何れの成分についても±0.1重量%の範囲内であった。
【0057】
(比較例6)
実施例6で用いたバッファ容器4を取り外し、気化器3とガス流量計7とを直結した以外は実施例6と同様の操作により、気化ガス流量約50リットル/hrの条件で比較例6の分析を行った。
得られた結果は、サンプリングの経過時間に対して各成分組成の分析値が非常に大きくばらつき、その平均値は樹脂バッグに採取した初期の分析値とも一致せず、また平均値に対する各測定値のバラツキは許容限界の±0.2重量%を越え、最大で±1重量%に達していた。
【0058】
【発明の効果】
本発明の非共沸混合冷媒の分析方法は、冷媒の液相試料を採取し気化後の混合冷媒ガスをガス均質化手段を有するバッファ容器に流通させ、このバッファ容器内で混合冷媒ガスを均質化し、均質化された混合冷媒ガスをガス分析装置に導入するものであるので、非共沸混合冷媒の液相試料を分析ラインに連続的に採取してガス分析装置で組成分析を行うに際して、分析値の経時的なバラツキが防止されると共に応答性も改善され、非共沸混合冷媒の製造工程や流通過程におけるリアルタイムの組成管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す結合図。
【図2】(A)本発明の他の一実施形態に用いるガス均質化手段を示す斜視図。(B)本発明の更に他の一実施形態に用いるバッファ容器を示す断面図。
【図3】本発明の更に他の一実施形態に用いるバッファ容器を示す断面図。
【図4】本発明の更に他の一実施形態に用いるバッファ容器を示す断面図。
【図5】本発明の一実施例におけるサンプリング経過時間と分析値との関係を示すグラフ。
【図6】従来の分析方法の一例におけるサンプリング経過時間と分析値との関係を示すグラフ。
【図7】従来の冷媒分析法の一例を示す結合図。
【符号の説明】
1…気化部、
2…制御弁、
3…気化器、
4…バッファ容器、
5…多孔体、
6…細孔、
7…ガス流量計、
8…多孔体、
9…多孔体、
10…冷媒容器、
11…抜出し弁、
12…フレキシブルホース、
13…攪拌羽根、
15…多孔体、
16…循環用ガス管、
17…ポンプ、
18…吹出し口、
20…導出管、
L…液相、
GC…ガスクロマトグラフ装置。

Claims (5)

  1. 非共沸混合冷媒の液相試料を採取し、気化させた後にガス分析装置に導入してこの混合冷媒の組成を分析するに際して、気化後の混合冷媒ガスをガス均質化手段を有するバッファ容器に流通させ、このバッファ容器内で均質化された混合冷媒ガスをガス分析装置に導入するものとされ、
    前記ガス均質化手段が、気化後の混合冷媒ガスを前記バッファ容器に導入する際に通過させる多孔体、前記バッファ容器内に設置された攪拌羽根、又は前記バッファ容器と外部ポンプとを環状に結ぶガス循環系の何れか1以上であることを特徴とする非共沸混合冷媒の分析方法。
  2. バッファ容器の容量が、0.005〜2リットルの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の非共沸混合冷媒の分析方法。
  3. バッファ容器を流通する混合冷媒ガスの空間速度が、100〜2000hr−1の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非共沸混合冷媒の分析方法。
  4. 非共沸混合冷媒が、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロカーボン(HC)、フルオロカーボン(FC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、フルオロエーテル(FE)及びフルオロヨードカーボン(FIC)の群から選ばれた2種以上からなることを特徴とする請求項1〜請求項の何れかに記載の非共沸混合冷媒の分析方法。
  5. 非共沸混合冷媒が、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)の群から選ばれた2種以上からなることを特徴とする請求項1〜請求項の何れかに記載の非共沸混合冷媒の分析方法。
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