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JP3674336B2 - 可視光重合性組成物 - Google Patents

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JP3674336B2
JP3674336B2 JP28133698A JP28133698A JP3674336B2 JP 3674336 B2 JP3674336 B2 JP 3674336B2 JP 28133698 A JP28133698 A JP 28133698A JP 28133698 A JP28133698 A JP 28133698A JP 3674336 B2 JP3674336 B2 JP 3674336B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物を含む可視光重合性組成物に係り、特に、長波長域における感光速度の大きき、さらに光硬化後は無色透明に近くなる可視光重合性組成物の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より光重合を利用したフォトポリマーやフォトレジストは数多く知られており、印刷版や半導体の製造等様々な分野で利用されている。これら光重合性組成物においては、その重合開始剤としてベンゾイン誘導体、芳香族キノン化合物、芳香族ケトン化合物などが主に用いられてきた。ところで、これらの光重合開始剤を用いた場合、光重合性組成物の感光速度が遅いため、画像形成における露光に長時間を有した。このため、長時間露光による多大なエネルギー照射によって発生する発熱や操作中の僅かな振動による影響を常に考慮する必要があった。更に、熱による組成物の変質も生じやすい問題も有していた。また、これらの光重合開始剤は、400nm以下の紫外線領域には感光性を有するもののこれより長波長の可視光線領域においてはほとんど感光性を示さない。このため、従来の光重合性組成物はその用途が著しく限定されるという問題を有していた。
【0003】
一方、近年においては、レーザ技術の進歩に伴い、レーザ製版、プリント回路基板、光ディスク、光メモリ、ホログラム、レーザリソグラフィー用のレーザ記録材料の開発が求められている。そして、現在、安定な出力が得られるレーザ光源としては、アルゴン、ヘリウム−ネオン、YAG、更に半導体レーザ等がある。しかし、これら光源の発振波長はいずれも約500nm以上で赤外に及ぶものまであり、上述の光重合開始剤が含まれた従来の光重合性組成物をそのまま上記レーザ記録材料に適用することは困難であった。このため、現在、可視光に対して高い感度を有する光重合開始剤の開発が盛んになされている。そして、米国特許第2850445号において、ローズベンガル、エオシンあるいはエリスロシン等の光還元性染料を添加した光重合性組成物が良好な可視光感光性を示すことが報告されている。また、改良技術として、染料とアミンの複合開始剤系(特公昭44−20189号公報参照)、ヘキサアリールビイミダゾールと染料の系(特公昭45−37377号公報参照)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特開昭47−2528号公報、特開昭54−155292号公報参照)、3−ケトクマリンと活性ハロゲン化物の系(特開昭58−15503号公報参照)、置換トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号公報参照)、クマリン系色素とジアリールヨードニウム塩の系(特公平3−62162号公報参照)、ローダニン誘導体とジアリールヨードニウム塩の系(特公平3−62164号公報参照)、ポルフィリン錯体とジアリールヨードニウム塩の系(特公平3−55483号公報参照)等の提案がなされてきた。
【0004】
更に、色素や染料等を増感剤として用いたことに起因して皮膜形成されたものにこれらの色が残留してしまうことを防止するため、皮膜形成後に強い光を照射されることにより退色もしくは脱色する増感剤としてシアニン色素を用いる提案も多くなされている。このような提案として、有機カチオン染料の有機ホウ素化合物アニオン塩(特開昭62−143044号公報、特開昭64−13141号公報、特開平2−3052号公報参照)が報告されている。また、幅広い染料の利用及び操作性の簡便化の観点からの改良技術として、有機カチオン性染料とホウ素酸塩とを錯体の形ではなく別個に添加する系(特開平2−4804号公報、特開平5−194619号公報参照)も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これら上記のように提案された従来のレーザ記録材料用の光重合性組成物は、その感光領域および操作性の面では満足できるものであるが、感光速度の面や硬化物の残留する色素に起因する色については未だ十分ではなかった。
【0006】
このため、露光時間の大幅な短縮が図れない問題を有しており、かつ、露光中の振動の影響を受けやすいホログラム等の撮影には適さない問題を有していた。さらに、400nm以下の紫外光を吸収してしまう様な樹脂板を光重合組成物で硬化させながら同一組成の樹脂板や別組成の樹脂板に貼り合せようとした場合、従来の高圧水銀灯に代表される光源では硬化しないという問題も有していた。
【0007】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、長波長域において感光性が高くしかも感光速度の大きく、光硬化後に無色透明に近い可視光重合性組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ある特定の光重合開始剤を添加することによって、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物を含む光重合性組成物が400nm以上の可視光照射により効率よく光重合することを見いだし本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、請求項1記載の発明は、(A)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物と、
(B)化学作用放射線に露光されるとラジカル重合を活性化させるラジカル種及びカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸もしくはルイス酸を発生する芳香族オニウム塩と、(C)ジアルキルアミノ基と共役した分子構造を有し、芳香族オニウム塩(B)を分光増感可能な色素と、(D)下記一般式(1)で表されるホウ素酸塩を含有するホログラム用可視光重合成組成物において、
【0010】
【化6】
Figure 0003674336
【0011】
(式中、R 、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アリル基、アルコシル基、シリル基、複素環、ハロゲン原子を示し、Yは4級アンモニウムカチオン、4級ピリジニウムカチオン、4級キノリウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、オキソスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンまたは金属カチオンを示す)
前記ジアルキルアミノ基と共役した分子構造を有し、芳香族オニウム塩(B)を分光増感可能な色素(C)が、下記一般式(4)で表されるp−アミノ不飽和ケトン化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の可視光重合性化合物であることを特徴とするホログラム用可視光重合性組成物。
【化9】
Figure 0003674336
(式中、m、nはそれぞれ0または1であり、R 10 、R 11 は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基、またはCH COOR 15 (但し、R15は水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルカリ金属、アンモニウム、アミン、を示す)、または、C CF 、C I、C Br、C Cl、C F、C CN、C N0 を示す。R 12 はメチリジン基または、R 13 と結合してカルボニル基とともに環を形成することができる炭素原子数1〜5のアルキレン−イリジン基、R 13 は炭素原子、置換基または非置換基フェニル基、もしくはR 12 とカルボニル基とともにインダノンまたはテトラノンを形成する基を示す。R 14 は下記一般式(5)で表される基(但し、R 16 、R 17 は水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、またはCH COOR 18 (但し、R 18 は水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基、アルカリ金属、アンモニウム、アミン、を示す)、または、C CF 、C I、C Br、C Cl,C F、C CN、C NO である。)を示す。)
【化10】
Figure 0003674336
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の可視光重合性組成物において、(E)溶媒可溶性で、かつ常温、常圧において固体であり、(A)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物と可溶性のある高分子重合体を含有することを特徴とする。
また本願発明では、前記可視光重合性組成物において、化学作用放射線に露光されるとラジカル重合を活性化させるラジカル種及びカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸もしくはルイス酸を発生するオニウム塩(B)がジアリールヨードニウム塩であることを特徴とする。
また本願発明では、前記可視光重合性組成物において、ジアルキルアミノ基と共役した分子構造を有し、芳香族オニウム塩(B)を分光増感可能な色素(C)が、下記一般式(2)で示される3−置換クマリン化合物であることを特徴とする。
【化4】
Figure 0003674336
(式中、R5、R6、R7及びR8は水素、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、または2つで縮合環系または縮合複素環系を形成してもよい。Zはアリール基、複素環基、または、下記一般式(3)で表される基を示す、R9はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基を示す。)
【化5】
Figure 0003674336
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明で用いる成分(A)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物としては、構造単位中にエチレン性の不飽和結合を少なくとも1個以上含むものであり、1官能であるビニルモノマーの他に多官能ビニルモノマーを含むものであり、またこれらの混合物であってもよい。具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の高沸点ビニルモノマー、さらには、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどのジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル類、あるいは、脂環式ポリヒドロキシ化合物、例えば、ジシクロペンタノール、ジシクロペンテノール、トリシクロデカンジメチロール等のモノ或いはジ(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられるが、好ましくは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の成分(B)化学作用放射線に露光するとラジカル重合とカチオン重合を活性化する光開始剤系としては、光照射によってラジカル種およびブレンスッテド酸またはルイス酸を同時に発生する芳香族オニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩などが好ましい。本発明で用いられるジフェニルヨードニウム塩のとしては、Macromolecules,10,1307(1977).に記載の化合物、例えば、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p−アニシル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、ビス(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウムのクロリド、ブロミド、あるいはテトラフルオロボレート塩、テトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)ボレート塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本発明の成分(C)である前記一般式(2)で示される3−置換クマリン化合物として、具体的には7−ジエチルアミノ−3−(2−ベンゾチアジル)−クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(2−ベンゾイミダゾリル)−クマリン、7−ジエチルアミノ−3−ベンゾイルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、7−ジエチルアミノ−3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、9,9’−カルボニルビス(1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H[I]ベンゾピラノ[9,9a,1−gh]キノラジン−10−オン)などを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。これらの化合物の合成方法は、Chemical Reviews 361(1945)およびTetrahedron 38(9)1203〜1211(1982)に記載されている。
【0026】
本発明の成分(C)である前記一般式(4)で示されるp−アミノフェニル不飽和ケトン化合物として、具体的には2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,5−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,5−ビス(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)シクロヘキサノン、1,3−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、2−(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−1−インダノン、2−(9’−ジュロリリデン)−1−インダノン、2−(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−1−テトラロン、4’−ジエチルアミノ−2’−メチルベンジリデン−アセトフェノン、2,5−ビス(4’−N−エチル−N−カルボメトキシメチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、およびそのナトリウム塩、2,5−ビス(4’−N−メチル−N−シアノエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,5−ビス(4’−N−エチル−N−クロルエチルアミノシンナミリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−N−シアノエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2−(4’−N−エチル−N−カルボキシメチルアミノベンジリデン)−1−インダノン、2−(4’−N−エチル−N−カルボキシメチルアミノベンジリデン)−1−テトラロン、2−(4’−エチル−N−シアノエチルアミノベンジリデン)−1−インダノン、およびそのナトリウム塩などを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の成分(D)である前記一般式(1)で示される4級ホウ素化合物として、アニオン部の具体例としては、n−ブチルトリフェニルボレート、n−オクチルトリフェニルボレート、n−ドデシルトリフェニルボレート、sec−ブチルトリフェニルボレート、t−ブチルトリフェニルボレート、ベンジルトリフェニルボレート、n−ブチルトリアニシルボレート、n−オクチルトリアニシルボレート、n−ドデシルトリアニシルボレート、n−ブチルトリ(4−トリル)ボレート、n−ブチルトリ(2−トリル)ボレート、n−ブチルトリ(4−t−ブチルフェニル)ボレート、n−ブチルトリ(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ボレート、n−ブチルトリ(4−フルオロフェニル)ボレート、n−ブチルトリナフチルボレート、トリフェニルシリルトリフェニルボレート、ジフェニルメチルシリルトリフェニルボレート、ジメチルフェニルシリルトリフェニルボレート、トリメチルシリルトリフェニルボレート、テトラ−n−ブチルボレート、ジ−n−ブチルジフェニルボレート、テトラベンジルボレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、カチオン部の具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、メチルキノリニウム、エチルキノリニウム、メチルピリジニウム、エチルピリジニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム、トリメチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリメチルスルホキソニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのアニオン部とカチオン部は任意に組み合わせて本発明に使用することができる。
【0029】
本発明の成分(E)である高分子重合体としてはラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物と相溶性を有しているものを選択しなければならない。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物と相溶性のある線状有機高分子重合体である限り特に制限はないが、具体的にはポリアクリレート類、ポリ−α−アルキルアクリレート類、ポリアミド類、ポリビニルアセタール類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリビニルエステル類等に代表されるような熱可塑性樹脂や、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールB、ビスフェノールAF、ビスフェノールS、ノボラック、o−クレゾールノボラック、p−アクリルフェノールノボラック等の各種エポキシ樹脂に代表されるような熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒可溶性で、常温、常圧において固体である熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、必要に応じて2種類以上混合して適用することも可能である。特に、本発明に係る可視光重合組成物が感光性印刷版や表面レリーフ型ホログラム等の製造に適用される場合、水或いは弱アルカリ水溶液に溶解若しくは膨潤するような高分子重合体を用いればよい。このような高分子重合体としては、側鎖にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボン酸を適当量含有する共重合体が挙げられる。
【0030】
本発明の可視光重合組成物を支持体上に塗設する場合には、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシプロパノール、3−メトキシプロピルアセテート、メチルエチルケトン、アセトンなどの適当な溶剤の単独またはこれらを適当に組み合わせた混合溶媒に溶解させて用いることができる。
【0031】
さらに本発明の可視光重合組成物には、実用上における種々の問題点を解決するために、各種添加剤を併用することが可能である。例えば、保存時の熱重合を防止する目的で、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、カテコール、フェノチアジンなどの熱重合禁止剤の添加、重合を促進する目的で、アミン、チオール、ジスルフィド等の連鎖移動剤の添加、あるいは消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、ハレーション防止剤などの添加が可能である。
【0032】
このように、これらの各成分を適宜選択し、任意の割合で混合して得た感光液をスピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ディスペンサーなどの公知の塗工手段を用いて、ガラス板やポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ポリエステルフィルムなどの基板塗布或いは滴下して用いる。さらに光重合組成物上には酸素遮断膜として保護層を設けても良い。保護層には例えば上記基板2と同等な物、あるいはポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールまたはポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック、ガラスなどの光学的に透明な物を用いて、感光層を狭持する貼り合わせ、押し出し機などによる積層、溶液の塗工などにより形成される。なお、感光液を塗布する際には、必要に応じて適当な溶剤で希釈しても良いが、その場合には基板上に塗布した後に、乾燥を要する。また、撮影時の照射光の透過率が1%以上となるように調製することが望ましい。さらに、本発明に係る可視光重合組成物は、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、高圧水銀灯、アルゴンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−ネオンレーザ、SHGレーザ及び半導体レーザ等の可視光領域から近赤外光領域(400〜650nm)に発振源をもつ光源に対して良好な感度を有している。
【0033】
また、本発明に係る光重合性組成物の各成分の配合割合は基本的に任意であるが、より好ましくは以下のように設定すると良い。まず、芳香族オニウム塩の配合割合は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも一つ以上有する化合物100重量部に対して0.1重量部〜30重量部、好ましくは1重量部〜15重量部である。0.1重量部未満であると、可視光線による十分な重合を起こさないことがあり、また30重量部を超えると溶解性等の問題が生ずるからである。また、芳香族オニウム塩を可視光領域にて増感可能な増感色素の配合割合は、上記エチレン性不飽和結合を少なくとも一つ以上有する化合物100重量部に対して0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.1重量部〜5重量部である。0.01重量部未満であると可視光線による十分な重合を起こさないことがあり、また、10重量部を超えると溶解性等の問題が生じたり、製膜して用いる場合に内部フィルター効果により厚膜での硬化が困難となることがあり、さらに、コストが割高となることから増感色素は必要最小限の量で適用することが好ましい。他方、ホウ素酸塩の配合割合については、上記カチオン性色素増感剤1重量部に対して0.05重量部〜20重量部、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。0.05重量部未満であると光重合時にその添加効果が認められず感光速度が低下してしまうことがあり、他方、20重量部を越えた場合には溶解性等の問題を生じる。要するに、溶解性が良好なホウ素酸塩であれば20重量部以上配合しても良い。また、高分子重合体を配合する場合には、適宜配合割合を調整して用いればよい。
【0034】
本発明の原理としては、重合開始のメカニズムは必ずしも明確ではないが、本発明において使用されるオニウム塩、4級ホウ素塩は、その分子特性上、オニウム塩が電子受容性であり、4級ホウ素塩が電子供与性の性質を有していると考えられる。吸収した光エネルギーによって励起された増感色素へ4級ホウ素塩から電子移動が生じ、さらに一電子移動によってラジカルとなったホウ素化合物からアルキル(あるいはアリール)ラジカルが解裂して重合開始種として機能する、または、励起された増感色素からオニウム塩への電子移動が生じ、ホウ素化合物と同様に、アルキル(あるいはアリール)ラジカルが解裂して重合開始種として機能すると考えられる。つまり、光照射によって電子供与反応によるフリーラジカル発生および電子受容反応によるフリーラジカル発生が同時に生じせしめ、その結果、非常に優れた光重合開始剤として機能することが可能となると考えられる。さらに、開始剤から同時に発生したルイス酸或いはブレンステッド酸が増感色素のアミノ基と反応して4級化することにより、助色団としての機能を失い、色素の消色が起こるものと考える。
【0035】
【実施例】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明する。また併せて参考例を併記する。
実施例1−4
以下に示す組成から成る混合物を均一になるまで攪拌した後、ガラス基板上にその膜厚が約5μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0036】
次に、500Wのキセノン灯を光源に用い、カットフィルター[東芝硝子(株)社製 商品名:Y−43]を通して得た可視光を上記ガラス基板上の皮膜へ照射した。
【0037】
そして、タルク粉末を使用し皮膜表面がタックフリーになるまでの露光時間を求めて各実施例の感度とした。また、同一条件で硬化させた皮膜面を島津製作所製分光光度計UV−160Aで400〜600nmの透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
アクリルモノマー 70重量部
[東亜合成化学工業(株)社製 商品名:アロニックスM−305]
ウレタンアクリレート 100重量部
[東亜合成化学工業(株)社製 商品名:アロニックスM−1600]
芳香族オニウム塩 表1に表示
増感色素 表1に表示
ホウ素酸アンモニウム塩 表1に表示
メチルエチルケトン 50重量部
【0039】
【表1】
Figure 0003674336
【0040】
O−1;ビス(p−tertブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート
O−2;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート
O−3;4−オクチルオキシフェニル(フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート
D−1;3,3‘−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)
D−2;7−ジエチルアミノ−3−(2−ベンゾイミダゾリル)クマリン
D−3;2,5−ビス[[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メチレン]−シクロペンタノン
D−4;2−ベンゾイル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−プロペンニトリル
D−5;4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル−p−メトキシフェノン
D−6;2−(p−ジメチルアミノフェニル)エテニル−p−メトキシフェノン
B−1;テトラメチルアンモニウム−n−ブチルトリフェニルボレート
B−2;テトラメチルアンモニウム−n−ブチルトリアニシルボレート
B−3;テトラメチルアンモニウム−n−オクチルトリフェニルボレート
【0041】
実施例5−6
以下に示す組成の混合物を均一になるまで攪拌して感光液を調整した。更にこの感光液を陽極酸化及び砂目立てしたアルミ板上にスピンコータを用いてその乾燥膜厚が約2μmになるように塗布し、乾燥機にて70℃で2分間乾燥させて感光層を形成した。
【0042】
次に、この感光層上に空気を遮断するためのオーバーコート層を設けた。なお、このオーバーコート層は、6%ポリビニルアルコール水溶液をスピンコータを用いて約2μmとなるように感光層上に塗布し、乾燥機にて70℃で15分間乾燥することによって形成されている。
【0043】
得られた各感光板の可視光に対する感度を以下のようにして測定した。すなわち、感光性樹脂組成物試験板(各実施例にかかる感光板)上にステップタブレット(コダック社製 商品名:ステップタブレットNo.2)を密着させ、この上から514.5nmのアルゴンレーザによる光を照射した後、0.1%の水酸化ナトリウム水溶液で現像し、その硬化段数から感光層の硬化に要する可視光の光量を計算することにより求めた。この結果を表2に示す。
【0044】
アクリルモノマー 140重量部
[東亜合成化学工業(株)社製 商品名:アロニックスM−305]
バインダ樹脂 100重量部
[通常のラジカル重合にて合成されたメチルメタクリレート、
2−エチルヘキシルアクリレート及びメタクリル酸の共重合体]
芳香族オニウム塩 表2に表示
増感色素 表2に表示
ホウ素酸アンモニウム塩 表2に表示
メチルエチルケトン 800重量部
【0045】
【表2】
Figure 0003674336
【0046】
実施例7
以下に示す組成の混合物を均一になるまで攪拌して感光液を調整した。更にこの感光液を1mm厚ポリカーボネート板上に滴下し、2mm厚ポリカーボネート板を載せて加圧しながら感光液を均一に広げた。次に、160W/cmの高圧水銀灯を光源に用い、熱線カットフィルターを介して前記ポリカーボネート板上から照射したところ、すべて実施例において硬化が認められた。透過率の測定結果を表3に示す。
【0047】
アクリルモノマー 100重量部
[大阪有機化学工業(株)社製 商品名:ビスコートHPA]
ウレタンアクリルオリゴマー 100重量部
[東亜合成化学工業(株)社製 商品名:アロニックスM1600]
芳香族オニウム塩 表3に表示
増感色素 表3に表示
ホウ素酸アンモニウム塩 表3に表示
【0048】
【表3】
Figure 0003674336
【0049】
<比較例1〜4>
ホウ素酸アンモニウム塩を加えず、増感色素量を変える以外は実施例1,2と同様に操作した結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
Figure 0003674336
【0051】
<比較例5〜8>
ホウ素酸アンモニウム塩を加えず、増感色素量を変える以外は実施例22、23と同様に操作した結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
Figure 0003674336
【0053】
[確認]
比較例1〜8に係る可視光重合組成物の硬化に要する時間及び硬化後の透過率のデータから明らかなように、無色透明である硬化物を得るためには、増感色素量を増やすことができず、増感剤量を減らすと感光速度の大幅な改善が図れないことが確認された。
【0054】
【発明の効果】
本発明の可視光重合性組成物によれば、芳香族オニウム塩、増感色素、及び、上記一般式(1)で示されたホウ素酸アンモニウム塩を適用したことにより400nm以上の長波長域において感光性を有し、かつ、その感光速度の向上が図れるとともに、無色透明に近い硬化物が得られる。
【0055】
従って、レーザダイレクト用印刷版、プリント回路基板、光ディスク、光メモリ、ホログラム、フォトレジスト等の記録材料、或いは光硬化型接着剤として適用できる効果を有する。

Claims (2)

  1. (A)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物と、
    (B)化学作用放射線に露光されるとラジカル重合を活性化させるラジカル種及びカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸もしくはルイス酸を発生する芳香族オニウム塩と、(C)ジアルキルアミノ基と共役した分子構造を有し、芳香族オニウム塩(B)を分光増感可能な色素と、(D)下記一般式(1)で表されるホウ素酸塩を含有するホログラム用可視光重合成組成物において、
    Figure 0003674336
    (式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アリル基、アルコシル基、シリル基、複素環、ハロゲン原子を示し、Yは4級アンモニウムカチオン、4級ピリジニウムカチオン、4級キノリウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、オキソスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンまたは金属カチオンを示す)
    前記(C)ジアルキルアミノ基と共役した分子構造を有し、芳香族オニウム塩(B)を分光増感可能な色素が、下記一般式(4)で表されるp−アミノ不飽和ケトン化合物であることを特徴とするホログラム用可視光重合性組成物。
    Figure 0003674336
    (式中、m、nはそれぞれ0または1であり、R10、R11は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基、またはCHCOOR15(但し、R15は水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルカリ金属、アンモニウム、アミン、を示す)、または、CCF、CI、CBr、CCl、CF、CCN、CN0を示す。R12はメチリジン基または、R13と結合してカルボニル基とともに環を形成することができる炭素原子数1〜5のアルキレン−イリジン基、R13は炭素原子、置換基または非置換基フェニル基、もしくはR12とカルボニル基とともにインダノンまたはテトラノンを形成する基を示す。R14は下記一般式(5)で表される基(但し、R16、R17は水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、またはCHCOOR18(但し、R18は水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基、アルカリ金属、アンモニウム、アミン、を示す)、または、CCF、CI、CBr、CCl,CF、CCN、CNOである。)を示す。)
    Figure 0003674336
  2. (E)溶媒可溶性で、かつ常温、常圧において固体であり、(A)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ以上有する化合物と相溶性のある高分子重合体を含有することを特徴とする請求項1記載の可視光重合性組成物。
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