JP3673727B2 - 反響消去方法、その装置、そのプログラム及びその記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば多チャネル音響再生系を有する通信会議システムに適用され、ハウリングの原因及び聴覚上の障害となる音響エコーを消去する多チャネル反響消去方法、その装置、そのプログラム及びその記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のデジタルネットワークと音声、画像の高能率符号化技術の進展により、複数の人が容易に参加でき、より自然な通話環境を提供できる多チャネルの拡声通話方式が研究されはじめている。その実現のためには、複数のスピーカからマイクロホンへの音響的回り込みを消去する多チャネル音響エコー消去の技術的課題と解決策の検討が必要となる。
N(≧2)チャネルの再生系とM(≧1)チャネルの収音系とで構成される通信会議システムは、図1に示すような構成により音響エコーの消去を行う。即ち各受話端子11 〜1N からの受話信号は各スピーカ21 〜2N で音響信号として再生され、各N個の音響エコー経路101 〜10N を経て各マイクロホン3m (m=1,…,M)に回り込む。受話側の全Nチャネルの受話端子11 〜1N と、Mチャネル送話側の送話端子51 〜5M それぞれとの間にNチャネルエコーキャンセル部41 〜4M を接続して音響エコーを消去する。
【0003】
上記Nチャネルエコーキャンセル部4m は、各収音チャネル毎に再生側の全Nチャネルと収音側の1チャネルとの間のN入力1出力時系列信号を処理する構成をとる。このNチャネルエコーキャンセル部4m (m=1,…,M)の構成を図2に示す。Nチャネルの各受話信号x1 (k)…xN (k)は疑似エコー信号生成部41に入力されて疑似エコー信号が生成され、減算器42により疑似エコー信号とマイクロホン3m からの収音信号y(k)との差である残留信号(誤差信号)が取り出され、この残留信号がエコー経路推定部43に帰還され、推定エコー経路が逐次修正される。疑似エコー信号生成部41は一般にフィルタで構成され、そのフィルタの係数がエコー経路推定部43により逐次修正される。これら疑似エコー信号生成部41、およびエコー経路推定部43は適応フィルタを構成しており、以後、これら全体を適応フィルタと記すこともある。
【0004】
実際の通信会議では、多くの場合1人の話者音声が対地から多チャネルで送出されて多チャネル受話信号となる。この受話信号のチャネル間相互相関は非常に高いために、エコーが消去されている状態であっても、推定されたエコー伝達特性と真のエコー伝達特性は必ずしも一致しないことが知られており、文献M.M. Sondhi,D.R.Morgan,andJ.L.Hall,“Stereo-phonic Acoustic Echo Cancellation - An Overview of the Fundamental Problem,”IEEE Signal Processing Letters, vol.2, no.8,pp.148-151(1995)に詳細に解析されている。推定されたエコー伝達特性と真のエコー伝達特性が一致していないと、対地で話者が交代して受話信号のチャネル間相互相関が変化すると突然音響エコーが消去されなくなり、送話信号として対地に送出される現象が生じる。
【0005】
このことを、図1の第m収音チャネルに接続されているNチャネルエコーキャンセル部4m について見てみる。Nチャネル入力信号をx1 (k)…xN (k)、収音された信号をy(k)、第nチャネル(n=1,…,N)の再生器2n から収音器3m までの音響エコー経路10n のインパルス応答をhn (k)、その長さをLとする。Nチャネル入力信号と収音信号の間には次の関係がある。
y(k)=Σi=0 L-1h1(i)x1(k−i)+…+Σi=0 L-1hN(i)xN(k−i)
各チャネルのインパルス応答と入力信号を
h n=[hn(0)…hn(L−1)]T
x n(k) =[xn(k)…xn(k−L+1)]T
のようにベクトル化し、さらに全Nチャネルのインパルス応答と入力信号を
h =[h 1 T…h N T]T
x(k)=[x 1 T(k)…x N T(k)]T
のように1つのベクトルにまとめると、Nチャネル入力信号と収音信号の関係は次のように記述される。
【0006】
y(k)=h T x(k)=h 1 T x 1(k)+…+h N T x N(k)
第m収音チャネルに接続されているNチャネル・エコーキャンセル部4m は、図2に示すように構成されており、収音される信号y(k)をNチャネル入力信号xn T(k) から疑似エコー信号生成部41により予測する。実際に収音された信号と予測された信号の差eおよび過去のNチャネル入力信号に基づいて、収音信号と予測信号の差が小さくなるようにエコー経路推定部43で、疑似エコー信号生成部41と構成するフィルタの係数w(k)が逐次修正される。
【0007】
過去のNチャネル入力信号ベクトルをどこまで考慮するかにより、NLMS法、射影法、RLS法などの適応アルゴリズムがある。射影法では、
【0008】
【数1】
【0009】
のように修正ベクトルdw(k)が過去p個の入力信号ベクトルの線形和である、という制約条件のもとで、過去p個の入力信号の関係
y(k)=w T(k+1)x(k)
:
y(k−p+1)=w T(k+1)x(k−p+1)
を満たす適応フィルタ係数w(k+1)=w(k)+dw(k)を求める。この修正ベクトルdw(k)は
X(k)=[x(k)…x(k−p+1)]
e T(k)=[y(k)…y(k−p+1)]−w T(k)X(k)
c=(XT(k)X(k))-1 e(k)
dw(k)=X(k)c
なる計算により得られる。X(k)は入力信号ベクトルからなる入力信号行列であり、e(k)は収音信号と疑似エコー信号との誤差からなるベクトル、cは修正ベクトルを構成するための修正係数である。エコーキャンセル後の残留信号y(k)−w T(k)x(k)を用いて、図2及び図3に示すように多チャネルエコーキャンセラ4m を構成できる。実際には推定を安定にするために0〜2の値をとるステップサイズμを用いて
w(k+1)=w(k)+μX(k)c
により、適応フィルタの係数を更新する。
【0010】
以上の適応信号処理が、図2中の音響エコー経路推定部43で行われる。音響エコー経路推定部43内では、図3に示すように、入力信号行列生成部431にて入力信号x1 (k)…xN (k)から入力信号行列X(k)が生成される。誤差ベクトル生成部434では、これまでの残留信号から誤差ベクトルを生成し、修正係数算出部432では誤差信号ベクトルeと入力信号行列X(k)から修正係数cを算出する。フィルタ係数更新部433では、修正係数cと入力信号行列X(k)とから修正ベクトルdw(k)を求め、適応フィルタ係数w(k)を更新する。なお3次以上の射影アルゴリズムを用いる場合は誤差ベクトル生成部434にこれまでの入力信号と修正係数も入力する必要がある。
ところで適応フィルタ係数の修正法としてのNLMS法(学習同程法)は射影法をp=1とした時と一致する。実際に収音された信号y(k)と適応フィルタにより予測された信号との差e(k)は、
e(k)=y(k)−Σn=1 N w n T(k)x n(k)
により計算される。この誤差をもちいて修正ベクトル
dw n(k)=e(k)x n(k)/Σn=1 N x n T(k)x n(k)(n=1,…,N)
を求め、各チャネルの適応フィルタを
w n(k+1)=w n(k)+μdw n(k)(n=1,…,N)
により更新する。ただしw n(k)は要素数Lのベクトルであり、第nチャネルの適応フィルタ係数のベクトルである。またμは推定を安定にするために設定されるステップサイズである。
NLMS法では、疑似エコーを生成するための畳み込み演算と適応フィルタの修正を逐次行うために、演算量が非常に大きくなる。文献E.R.Ferrara,“Fast Implementation of LMS adaptive filters,”IEEE Trans.Acoust,Speech,Signal Processing,vol.ASSP-28,pp.474-475(1980)で提案されている適応アルゴリズム(以下FLMS法と記す)は、適応フィルタの更新を逐次処理からLサンプル毎のブロック処理に変更し、FFTをもちいてブロック信号処理を行うことで演算量を大幅に削減している。このアルゴリズムは、時刻kで適応フィルタが更新されるとき
dw n(k)=Σi=0 L-1e(k−i)x n(k−i)(n=1,…,N)
のような畳込み演算により修正ベクトルdw n(k)を計算する。この部分と疑似エコー生成部分の畳込み演算は、チャネル毎にFFT(高速離散フーリエ変換)をもちいて効率よく実行できるので、演算量が大幅に減少する。
このFLMS法に、さらに文献D.Mansour and A.H.Gray,“Unconstrained Frequency-Domain Adaptive Filter,”IEEE Trans.on Acoust,Speech,Signal Processing,vol.ASSP-30,No.5,pp.726-734(1982)で提案されている白色化処理を組み合わせることによって、音声信号のようにスペクトルに偏りのある信号が入力されても、適応フィルタの収束特性は劣化しなくなる。
ここでは、多入力1出力適応フィルタに白色化処理付きのFLMS法を適用する従来方法について説明する。このアルゴリズムでは、適応フィルタ長がLのとき、Overlap-save方式をもちいてLサンプル毎に長さ2Lの信号ベクトルをFFTして処理することで、効率の高い畳込み演算処理を実現している。このアルゴリズムは、以下のステップからなる。
【0011】
ステップ1
各チャネルの入力信号xn(k)(n=1,…,N)を、Lサンプル毎に長さ2Lの入力信号ベクトルにブロック化してFFTにより周波数領域に変換し、ベクトルの要素を対角成分に持つ行列X nf(k)を算出する。数式を用いると、
X nf(k)=diag(FFT([xn(k−2L+1),…,xn(k)]T))(n=1,…,N)
と記述される。ただし関数FFT(x)はベクトルxをFFT変換する関数である。また関数diag(x)によって、ベクトルxはその要素を対角成分とする行列に変換される。すなわち x=[x(1)…x(2L)]T のとき
【数2】
である。
【0012】
ステップ2
周波数領域でX nf(k)とw nf(k)を掛けることで、入力信号ベクトルをチャネルごとにフィルタ処理する。そして計算結果を逆FFT(IFFT)処理し、時間領域での信号ベクトルy^n(k)(n=1,…,N)を得る。
y^n(k)=[I L 0 L]IFFT(X nf(k)w nf(k))
ただしw nf(k)(n=1,…,N)は要素数2Lの複素数ベクトルであり、
逆FFT変換して前半L個を取り出すと、第nチャネル適応フィルタのインパルス応答になる。また0 L はL×Lの零行列、I L はL×Lの単位行列である。
ステップ3
信号ベクトルy^n(k)(n=1,…,N)を加算して、疑似エコー信号のベクトルy^(k)を得る。
y^(k)=Σn=1 N y^n(k)
ステップ4
時間領域にて収音信号ベクトルy(k)と疑似エコーの信号ベクトルy^(k)との差から誤差信号ベクトルを求め、FFTにより周波数領域に変換する。
e f(k)=FFT([0,…,0,y T(k)−y^T(k)]T )
ただし y(k)=[y(k−L+1)…y(k)]T であり、FFT[ ]内の0の数はL個であり、e f(k)の要素数を2L個にするためである。
【0013】
ステップ5
誤差信号と入力信号を周波数領域で処理し、修正ベクトルdw nf(k)(n=1,…,N)を求める。
先ず以下のようにX * nf(k)とe f(k)の積を逆FFTし、その結果の前半のL個を取出しv nf(k)を求める。
v nf(k)=[I L 0 L]IFFT(X * nf(k)e f(k))
ただし行列X * nf(k)の各成分は行列X nf(k)各成分の複素共役である。
次にv nf(k)Tの後にL個の0を埋めてFFTを行う。
dw nf(k)=FFT([v nf T(k),0,…,0]T )
ステップ6
各チャネルの適応フィルタを次式で更新する。
w nf(k+L)=w nf(k)+P(k)dw nf(k)
行列P(k)は、修正ベクトルdw nf(k)を補正しており、
【数3】
により計算される。μは0〜1の値をとるステップサイズである。関数T(X nf(k),i)は行列X nf(k)の(i,i)要素を引き出す。行列P(k)の対角要素の分母に含まれるp(k,i)は、周波数成分ごとに第1〜Nチャネルの入力信号パワーの短時間平均の総和を求めたものである。δは分母が0になることを防止するための微小な正定数である。βは前回の短時間平均パワーの総和p(k−L,i)と今回の短時間パワーとの短時間平均をとるための平滑化定数であり、0〜1の値をとる。入力信号が音声のように有色性信号のとき、dw nf(k)に行列P(k)をかけることは入力信号の白色化処理に対応し、有色信号が入力されたときの適応フィルタの収束速度を向上させることが知られている。
エコー経路の特性は、周波数領域でw nf(k)(n=1,…,N)として推定される。このベクトルを逆フーリエ変換することで、各エコー経路インパルス応答の推定値が得られる。
N入力1出力適応フィルタについてチャネル当りの適応フィルタ長をLとするとき、Lサンプル分の疑似エコー信号を算出するのに必要となる積算の演算量は、NLMS法では、NL(2L+4)である。一方、FLMS法で必要となる積算の演算量はNL(10logL+8)である。チャネル当りの適応フィルタ長をL=1024とするとき、FLMS法の演算量はNLMS法の約5.3%になり、演算処理が非常に効率的になる。
【0014】
図1中のNチャネルエコーキャンセル部4mは、FLMS法では図4に示す構成で実現される。第nチャネルの入力信号xn(k)(n=1,…,N)は、TF変換部44nにてステップ1のようにブロック化され周波数領域に変換される。ステップ2のように入力信号がフィルタ係数により周波数領域でフィルタ処理部(疑似反響経路)45nによりフィルタ処理され、その処理結果がFT変換部46n(n=1,…,N)により時間領域に変換されて時間領域の信号ベクトルy^n(k)が得られる。信号ベクトル加算部47では各信号ベクトルy^n(k)がステップ3のように加算されて時間領域での疑似エコーy^(k)が算出される。収音信号y(k)は、ブロック化部48にてL個のサンプル(要素)にブロック化される。TF変換部44nおよび収音信号のブロック化部48は、各入力信号と収音信号の間に時間のズレが発生しないように信号をブロック化して、それぞれ信号ベクトルを生成する。
信号ベクトル減算部49では、ステップ4のように収音信号ベクトルy(k)から疑似エコーの信号ベクトルy^(k)が引かれ、誤差信号ベクトルe(k)が求められ、これはTF変換部51にて周波数領域の誤差信号ベクトルe f(k)へ変換される。フィルタ係数更新部52n(n=1,…,N)では、TF変換部44nからのX nf(k)とFT変換部51からのe f(k)を用いて、ステップ5及び6にしたがって周波数領域でフィルタ(疑似反響経路)を更新する。更新されたフィルタはフィルタ処理部45n(n=1,…,N)に反映される。なおステップ6での行列P(k)の計算には全チャネル分のX nf(k)(n=1,…,N)を必要とするが、見やすくするために図4ではこの信号流れを省略している。
【0015】
ところで入力信号のチャネル間の相互相関が一定で大きい場合には入出力信号の関係y(k)=w T(k)x(k)を満たすw(k)が複数存在することが知られている。このため上記適応アルゴリズムにより推定されたインパルス応答が、対応する音響エコー経路のインパルス応答と一致するとは限らない。
このようなエコー伝達特性の誤推定を防ぐために、図5に示すように相関変動処理部61 ,…,6Nを設けて、チャネル毎に受話信号を乱数で振幅変調して元の受話信号に付加して相互相関が絶えず変動している信号を生成し、各スピーカから再生すると同時に多チャネル・エコーキャンセラへの入力信号とする手法が特願平7−50002,文献S.Shimauchi and S.Makino,“Stereo Projection Echo Canceller with True Echo Path Estimation,”Proc.ICASSP95,vol.5,pp.3059-3062(1995)にて提案されている。その後、より効率的に相互相関が変動する信号を生成する手法として、文献J.Benesty,D.R.Morgan,and M.M.Sondhi,“A Better Understanding and an Improved Solution to the Problems of Stereophonic Acoustic Echo Cancellation, ”Proc.ICASSP97,vol.1,pp.303-306(1997)では、受話信号を非線形関数で処理して元の受話信号に付加する方法が提案されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし受話信号に付加信号を加えてスピーカから再生したとき、元の受話信号と比較して聴感上違和感のない範囲におさめなければならないため、付加信号の信号パワーは制限され、受話信号のチャネル間の相互相関は依然高い。そのため真のエコー伝達特性を推定するにはRLS法のように計算量が大きくてノイズに敏感な適応アルゴリズムを用いる必要があると考えられており、NLMS法や射影法、FLMS法のように低演算量の適応アルゴリズムを用いた場合には、チャネル間相互相関の高い受話信号から修正ベクトルが生成されるための相互相関変動処理によるエコー経路インパルス応答推定性能の改善幅は小さい。
【0017】
実際に数値シミュレーションを行った結果を図6に示す。この数値シミュレーションでは、サンプリング周波数を8kHzに設定し、音響エコー経路として残響時間200msの部屋で実測した室内伝達関数を700タップに打ち切って音響エコーを生成した。相互相関一定の2チャネル受話信号u1 (k),u2 (k)は、2本のマイクロホンで単一話者の音声を収音している状況を模擬することで生成した。適応フィルタのタップ数は1チャネル当り600タップに設定し、適応アルゴリズムとして2次射影(p=2)をステップサイズμ=0.5で適用した。
【0018】
相関変動処理には、文献P.Eneroth,T.Gaensler,S.Gay and J.Benesty,“Studies of a wideband stereophonic acoustic echo canceller,”Proc.1999 IEEE Workshop on Applications of Signal Processing to Audio and Acoustics,pp.207-210(1999)で用いられている半波整流方式
g1(u(k))=d(u(k)+|u(k)|)/2
g2(u(k))=d(u(k)−|u(k)|)/2
を、聴感上違和感のほとんどないd=0.26で適用した。2チャネルエコーキャンセル部への入力は
x1(k)=u1(k)+g1(u1(k))
x2(k)=u2(k)+g2(u2(k))
になる。x1(k),x2(k)を以後再生信号と呼ぶ。またこれ以降、受話信号と付加信号をそれぞれ
u(k)=[u1(k)…u1(k−L+1)u2(k)…u2(k−L+1)]
g(k)=[g1(u1(k))…g1(u1(k−L+1)g2(u2(k)…g2(u2(k−L+1)]
とベクトル化して取り扱う。
【0019】
相関変動処理を適用した場合(B)と適用しなかった場合(A)の適応フィルタの推定性能を図6に示す。推定性能は、音響エコー経路のインパルス応答からなるベクトルhと、適応フィルタの各インパルス応答の後ろに0詰めしてhとサイズをそろえたベクトルw′(k)との相対誤差
|h−w′(k)|/|h|
で評価した。図6のグラフによれば、相関変動処理を適用しない場合、はじめのls間は係数推定誤差がすばやく減少しているが、すぐに飽和し約−4.5dBにとどまる。一方相関変動処理を用いた場合、係数推定誤差は飽和しないが減少は緩やかであり、10s後でも−7dB程度にとどまる。
【0020】
この発明の第1の目的は従来よりも係数推定誤差を速く小さくすることができ、エコー消去性能を向上させた反響消去方法、その装置、そのプログラム及びその記録媒体を提供することにある。
この発明の第2の目的は第1の目的を達成しかつ演算量を大幅に減らすことができる反響消去方法、その装置、そのプログラム及びその記録媒体を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
まずこの発明に至る考え方を説明する。
所で先の数値シミュレーションにおける条件で元の受話信号に由来する誤差e0 (k)と相互相関変動のための付加信号に由来する誤差ea(k)、つまり
e0(k)=(h−w′(k))T u(k)
ea(k)=(h−w′(k))T g(k)
の信号パワーをプロットすると図7のようになっている。点線がe0 (k)、実線がea (k)である。付加信号gn(un (k))(n=1,2)の信号パワーは元の受話信号un(k)(n=1,2)から約−18dBと小さなものであるが、このグラフによれば、付加信号に由来する誤差信号のパワーea (k)は受話信号に由来する誤差信号のパワーe0 (k)とほぼ同等である。すなわち、誤差y(k)−w T(k)x(k)への付加信号ベクトルの寄与は受話信号ベクトルとほぼ同等である。
【0022】
しかし、射影法をp=1で適用したとき、すなわちNLMS法では適応フィルタの係数は
w(k+1)=w(k)+μe(k)[(u(k)+g(k))/|u(k)+g(k)|2 ]
のように更新されている。この更新式によれば、付加信号の修正ベクトルへの寄与は受話信号の約−18dBに過ぎず、付加信号ベクトルの情報は適応フィルタ係数の更新に対して過小評価されていることになる。
【0023】
そこでこの発明では、付加信号と受話信号の修正ベクトルへの寄与が、各信号の誤差信号への寄与を反映するように、付加信号の比率が再生信号よりも多い修正用基本ベクトルz(k)を受話信号と付加信号から生成する。そしてこのベクトルから適応フィルタの修正ベクトルを構成する。付加信号の比率が再生信号よりも多い修正用基本ベクトルz(k)の一例としては、
z(k)=au(k)+g(k), 0<a<1
のようにすることが考えられる。
このように付加信号を強調した修正用基本ベクトルz(k)を疑似反響経路のインパルス応答の修正ベクトルに反映させればチャネル間相互相関の小さい修正ベクトルを生成できる。つまり、受話信号un(k)に付加信号gn(un(k))が付加された信号を
xn(k)=un(k)+gn(un(k))
とし、前記付加信号が強調された修正用信号を
zn(k)=aun(k)+gn(un(k))
とし、これらを下記のようにベクトル化する。
x n(k)=[x n(k)…x n(k−L+1)]T (n=1,…,N)
z n(k)=[z n(k)…z n(k−L+1)]T (n=1,…,N)
この時、疑似反響経路により予測された信号と収音信号y(k)との誤差信号e(k)は次式で求められる。
e(k)=y(k)−Σn=1 N w n T(k)x n(k)
この誤差信号を修正用基本ベクトルから修正ベクトルを次式により求められる。
dw n(k)=e(k)z n(k) (n=1,…,N)
この修正ベクトルにより各チャネルの疑似反響経路のインパルス応答を次式により更新すればよい。
w n(k+1)=w n(k)+μdw n(k)(n=1,…,N)
ここでステップサイズμは毎回の繰り返しにおける補正の大きさを制御するパラメータである。
【0024】
また再生信号より付加信号情報の比率が大きいベクトルz(k)により、次のように修正ベクトルdw(k)を求めてもよい。つまりdw(k)がベクトルz(k)…z(k−p+1)の線形和という制約条件のもとで、過去p個の入出力信号の関係
y(k)=w T(k+1)x(k)
:
y(k−p+1)=w T(k+1)x(k−p+1)
を満たす修正ベクトルは、
X(k)=[x(k)…x(k−p+1)]
Z(k)=[z(k)…z(k−p+1)]
e T(k)=[y(k)…y(k−p+1)]−w T(k)X(k)
c=(XT(k)Z(k))-1 e(k)
dw(k)=Z(k)c
より求められる。実際にはステップサイズμを用いて
w(k+1)=w(k)+μZ(k)c
により、適応フィルタ係数を更新する。
【0025】
つまりこの発明によれば
(A)Nチャネルにおける受話信号に対して、それぞれ付加信号が付加された再生信号をそれぞれ生成し、
(B)この再生信号をN個のエコー経路を模擬した疑似反響経路に印加して疑似エコーを生成し、
(C)Nチャネルの再生信号がエコー経路を介して収音された音響エコーから疑似エコーを差し引くことで音響エコー消去を行い、
(D)音響エコーと疑似エコーの差、Nチャネルの受話信号および付加信号から修正ベクトルを求め、
(E)その修正ベクトルを用いて疑似反響経路のインパルス応答を逐次修正する
というステップにより多チャネル音響エコー消去を行い、
特にこの発明の1形態では上記ステップ(D)は
(D1)付加信号ベクトルと受話信号ベクトルから、再生信号よりも付加信号情報をより多く含む修正用基本ベクトルを生成し、
(D2)その修正用基本ベクトルの線形和を修正ベクトルとし、
(D3)その線形和に用いる各修正用基本ベクトルの係数を、音響エコーと疑似エコーの差、再生信号および修正用信号から決定する、
というステップを含むことがよい。さらにステップ(D1)において、受話信号ベクトルをa倍(aは0〜1の値)して付加信号ベクトルに加算して修正用基本ベクトルとする処理、もしくは
(D1−a)付加信号ベクトルと受話信号ベクトルから生成された再生信号ベクトルを、受話信号ベクトルの線形和とその受話信号ベクトルに直交するベクトルに分解して、再生信号ベクトルから受話信号ベクトルの線形和ベクトルのb倍(bは0〜1の値)を差し引いたベクトルを修正用基本ベクトルとする処理を行うとよい。
【0026】
この発明の他の実施形態によれば前記付加信号を強調した信号zn(k)を用いる考えをFLMS法に導入する。この場合は
再生信号xn(k)=un(k)+gn(un(k))を短時間区間ごとに周波数領域に変換し、周波数領域でM×N個の疑似反響経路によるフィルタ処理を行ない、時間領域に再変換してM個の疑似エコーを生成し(Nは受話チャネル数、Mは収音チャネル数)、
音響エコー信号と疑似エコー信号の誤差信号を短時間区間ごとに周波数領域に変換し、
修正用信号zn(k)を短時間区間ごとに周波数領域に変換し、
周波数領域において変換された誤差信号と変換された修正用信号を処理して修正ベクトルを求め、
その修正ベクトルをもちいて周波数領域で疑似反響経路を更新する。
ここで短時間区間は疑似反響経路のタップ数Lと対応した時間又はこれより短かい時間である。
【0027】
【発明の実施の形態】
実施例1
N(≧2)チャネルの再生系とM(≧1)チャネルの収音系とで構成される通信会議システムは、収音チャネル毎に図8のような再生側の全Nチャネルと収音側1チャネルとの間のN入力1出力時系列信号を処理するNチャネルエコーキャンセル部7m を備える。
Nチャネルエコーキャンセル部7m には、受話信号と、その相関変動処理を経た受話信号が図9に示すように別々に入力され、これらから生成される再生信号
xn(k)=un(k)+gn(un(k))(n=1,…,N)
が疑似エコー信号生成部(疑似反響経路)71に入力されて疑似エコー信号が生成され、減算器72により疑似エコー信号とマイクロホン3m からの収音信号y(k)との差である誤差信号e(k)が求められ、この誤差信号e(k)がエコー経路推定部73に帰還される。
【0028】
エコー経路推定部73内は、図10のようになっている。Z(k)生成部731では、受話信号un(k)と付加信号gn(un(k))から、各un(k)に対しa(0<a<1)を乗算し、修正基本ベクトルとして
z(k)=au(k)+g(k)
Z(k)=[z(k)…z(k−p+1)]
のように付加信号情報に対する受話信号情報の比率が再生信号よりも小さい信号ベクトルz(k)を生成し、更に修正用信号行列Z(k)を生成する。X(k)生成部732では
x(k)=u(k)+g(k)
X(k)=[x(k)…x(k−p+1)]
のように受話信号ベクトルと付加信号ベクトルから再生信号行列X(k)を生成する。ただし、aはあらかじめ設定された0より大きく1より小さい値であり、実験により良い値を決めておく。
【0029】
誤差ベクトル生成部735では、これまでの残留信号から誤差ベクトル
e T(k)=[y(k)…y(k−p+1)]−w T(k)X(k)
を生成し、修正係数算出部733ではZ(k),X(k)と誤差ベクトルから修正用の係数からなるベクトル
c=(XT(k)Z(k))-1 e(k)
を算出する。フィルタ係数更新部734では、修正係数cとこれまでの修正用信号行列Z(k)から修正ベクトルZ(k)cを求め
w(k+1)=w(k)+μZ(k)c
により適応フィルタの係数を更新する。ただしμはステップサイズである。このときの計算量は、通常の射影アルゴリズムとほとんど変わらない。なお誤差ベクトル生成部735では、3次以上の射影アルゴリズムの場合は、これまでの再生信号及びこれまでの修正係数も用いて誤差ベクトルを生成する。
実施例2
N(≧2)チャネルの再生系とM(≧1)チャネルの収音系とで構成される通信会議システムは、収音チャネル毎に図8に示すように再生側の全Nチャネルと収音側1チャネルとの間のN入力1出力時系列信号を処理するNチャネルエコーキャンセル部7m を備える。Nチャネルエコーキャンセル部の内部は図9、図10に示したようになっている。
【0030】
図9のNチャネルエコーキャンセル部7mにおいて、疑似エコー信号生成部71への入力信号のベクトルは、
x(k)=u(k)+g(k)
のように生成される。
この入力信号ベクトルは、受話信号成分および受話信号と直交する成分に分離できる。一例として受話信号成分として2時点の受話信号ベクトルu(k),u(k−1)を考慮に入れた場合に、
【0031】
【数4】
【0032】
のように再生信号ベクトルに含まれu(k),u(k−1)のなす平面に直交するベクトルとしてv(k)が求められる。U(k)=[u(k) u(k−1)]とおき、上式に左からUT(k)をかけると
【0033】
【数5】
の関係から、s0 ,s1 は
【0034】
【数6】
【0035】
により求まる。各ベクトルu(k),u(k−1),v(k)の関係は図11に示すようになる。つまり再生信号ベクトルx(k)は受話信号ベクトルの線形和s0 u(k)+s1 u(k−1)と、これに直交するベクトルv(k)に分解できる。
このとき受話信号ベクトルの線形和からなる成分を1−b倍することで、付加情報に対する受話信号情報の比率が小さい修正基本ベクトル
【0036】
【数7】
【0037】
が生成できる。この式の右辺の第1項は受話信号ベクトルであり、第2項以下の項は受話信号ベクトル線形和のb倍の信号である。以上の式は2時点の受話信号ベクトルを用いる場合であるが、U(k)をr時点の受話信号ベクトルから構成すれば、受話信号情報の付加信号情報に対する比率が再生信号よりも小さい修正基本ベクトルz(k)は式(3)の右辺から求められる。ただし、bはあらかじめ設定された0〜1の範囲の値であり、実験により良い値を求めておく。
この処理がZ(k)生成部731にて行われたのち、
X(k)=[x(k)…x(k−p+1)]
Z(k)=[z(k)…z(k−p+1)]
e T(k)=[y(k)…y(k−p+1)]−w T(k)X(k)
c=(XT(k)Z(k))-1 e(k)
w(k+1)=w(k)+μZ(k)c
により適応フィルタの係数を更新する。ただしμはステップサイズである。
【0038】
実施例3
図8中のNチャネルエコーキャンセル部7mの処理に、FFTを用いるブロック信号処理を適用する疑似反響経路のインパルス応答の更新処理の手順の例を以下に示す。
ステップ1
各チャネルの受話信号un(k)と相関変動処理のための付加信号gn(un(k))(n=1,…,N)から、再生信号xn(k)と修正用信号zn(k)を
xn(k)=un(k)+gn(un(k))
zn(k)=aun(k)+gn(un(k)) (n=1,…,N)
により生成する。ただしaは0より大きく1以下の値である。これら信号xn(k),zn(k)を、Lサンプル毎に長さ2Lの信号ベクトルにブロック化し、FFTをもちいて
X nf(k)=diag(FFT([xn(k−2L+1),…,xn(k)]T ))
Z nf(k)=diag(FFT([zn(k−2L+1),…,zn(k)]T ))
(n=1,…,N)
のように周波数領域に変換する。
ステップ2
周波数領域でX nf(k)とw nf(k)を掛けることで、チャネルごとに入力信号ベクトルを、疑似反響経路でフィルタ処理する。このフィルタ処理結果を逆FFT処理し、時間領域での信号ベクトルy^n(k)(n=1,…,N)を得る。
y^n(k)=[I L 0 L]IFFT(X nf(k)w nf(k))
ただし、0 L はL×Lの零行列、I L はL×Lの単位行列である。
ステップ3
信号ベクトルy^n(k)(n=1,…,N)を加算して、疑似エコー信号のベクトルy^(k)を得る。
y^(k)=Σn=1 N y^n(k)
ステップ4
時間領域にて収音信号ベクトルy(k)と疑似エコーのベクトルy^(k)から誤差信号ベクトルを求め、その誤差信号ベクトルをFFTにより周波数領域に変換する。
e f(k)=FFT([0,…,0,y T(k)−y^T(k)]T )
ただし
y(k)=[y(k−L+1)…y(k)]T
であり、FFT[ ]中の0の数はL個である。
【0039】
ステップ5
誤差信号ef(k)と修正用信号zn(k)を周波数領域で処理し、修正ベクトルdw nf(k)を求める。
周波数領域でZ * nf (k)とe f(k)を乗算し、その結果を逆FFTして時間領域に変換し、その前半のL個を取出してv * nf (k)とする。
v nf(k)=[I L 0 L]IFFT(Z * nf(k)e f(k))
更にこのv nf(k)にL個の0を後詰めして、FFTにより周波数領域に変換する。
dw nf(k)=FFT([v nf T(k),0,…,0]T )
ただし行列Z * nf(k)の各成分は修正用信号zn(k)から生成された行列
Z nf(k)各成分の複素共役である。
ステップ6
各チャネルの適応フィルタを次式で更新する。
w nf(k+L)=w nf(k)+P(k)dw nf(k)
ただし行列P(k)は、
【数8】
により計算される。μは0〜1の値をとるステップサイズである。関数T(X nf(k),i)は行列X nf(k)の(i,i)番目の要素を引き出している。δは分母が0になることを防止するための微小な正定数である。行列P(k)中のp(k,i)は、入力信号スペクトルX nf(k)と修正信号スペクトルZ nf(k)のクロススペクトル短時間平均になっている。つまり前回の修正用信号と再生信号のクロススペクトルの短時間平均の全チャネル分の総和と、今回の修正用信号と再生信号のクロススペクトルの短時間の全チャネル分の総和とをβで重み付け加算して、今回の短時間平均総和を求める。
【0040】
Nチャネルエコーキャンセル部7mの機能構成は、図12に示すようになる。受話信号および付加信号をTF変換する81nは、図4中のTF変換部44nに対応している。受話信号un(k)には加算器811nにより付加信号gn(un(k))が加算されて再生信号xn(k)が生成され、再生信号xn(k)はTF変換部812nによってX nf(k)に変換される。また受話信号un(k)は減衰器813nによりa倍(ただしaは0から1の値)され、加算器814nにより付加信号gn(un(k))が加算されて修正用信号zn(k)が生成される。修正用信号zn(k)はTF変換部815nによりZ nf(k)に変換される。X nf(k)はフィルタ処理部(疑似エコー信号生成部)82nに、Z nf(k)はフィルタ更新部88nにそれぞれ渡される。フィルタ処理部82n、FT変換部83n、ベクトル加算部84では、ステップ2,3の処理を行い疑似エコー信号が生成される。マイクロホン3mからの収音信号y(k)は、ブロック化部85でLサンプルごとにブロック化され、ステップ4にしたがってベクトル減算部86にて疑似エコー信号ベクトルとの誤差がとられ、その誤差ベクトルはTF変換部87で周波数領域へ変換される。フィルタ更新部88n(n=1,…,N)は、ステップ5,6にしたがって周波数領域でw nf(k)を更新することで、適応フィルタを更新する。
フィルタ更新部88nは、図13Aに示すように、誤差信号ef(k)と修正用基本ベクトルZ nf(k)が修正ベクトル生成部881nに入力されて周波数領域で処理されて修正ベクトルdw nf(k)が出力され、この修正ベクトルdw nf(k)により逐次更新部882nにおいて周波数領域で疑似反響経路のインパルス応答がw nf(k)からw nf(k+L)に更新される。
【0041】
この際に、入力信号の白色化処理を行う場合は、dw nf(k)に対し、行列P(k)により補正部883nで補正して、逐次更新部882nへ供給する。行列P(k)の生成は、図13Bに示すようにX nf(k),Z nf(k)の各i番目の要素(スペクトル)(i=1,…,2L)ごとに乗算部884nで乗算してクロススペクトルを求め、これらクロススペクトルを加算部885で全チャネル分を加算し、この加算値p′(k,i)と、前回の対応する(i番目の)クロススペクトルの短時間平均値p(k−L,i)とが平均化部886で荷重平均され、今回のi番目のクロススペクトル短時間平均p(k,i)とする。この荷重平均は例えばβp(k−L,i)+(1−β)p′(k,i)=p(k,i)とする。βは0〜1の値であり、p(k,i)の値が平滑化される。更にこれら各i番目のクロススペクトル短時間平均の逆数にステップサイズμが乗算された各値を要素とする対角行列P(k)が補正行列生成部889で生成される。
【0042】
実施例4
FLMS法および実施例3の手法は、適応フィルタ(疑似反響経路)長がLのとき、Lサンプル毎に過去2Lサンプル分の信号ブロックをもちいて、計算効率よく適応信号処理を行う手法である。この手法では、信号がLサンプル分蓄積してから1フレーム分の適応信号処理が開始されるために、信号処理にLサンプルの処理遅延が生じる。会議室用エコーキャンセラでは適応フィルタ長が部屋の残響時間と同等の例えば300ms以上になるため、処理遅延が無視できない影響を持つ。またフィルタの更新頻度も低くなるために、例えばマイクロホンが動くなどしてエコー経路の特性が変動すると、エコーがすぐには消去されない問題が生じる。
文献J.S.Soo and K.K.Pang,“Multidelay Block Frequency Domain Adaptive Filter,”IEEE Trans.on ASSP,vol.ASSP 38,no.2,pp.373-376(1990)では、マルチディレイ・フィルタ(以下MDFと略す)をもちいて、処理遅延が大きく更新レートが低いというFLMS法の問題を解決している。
周波数領域の信号処理では、畳み込み処理はオーバーラップセーブ法により実現されている。MDFは、この畳み込み処理がより小さいブロック同士のオーバーラップセーブ処理に分割できることを利用する。適応フィルタのタップ長をL、分割数をD(ただしLはDで割り切れる)、L′=L/Dとすると、MDF法ではL′サンプル毎に畳み込み処理が可能なため、L′サンプル毎に適応信号処理を適用することが可能になる。
実施例3の手法も、以下のステップのようにMDF法と組合わせることで、処理遅延と低更新レートの問題が解決される。
【0043】
ステップ1
各チャネルの受話信号un(k)と相関変動処理のための付加信号gn(un(k))(n=1,…,N)から、再生信号xn(k)と修正用信号zn(k)を
xn(k)=un(k)+gn(un(k))
zn(k)=aun(k)+gn(un(k)) (n=1,…,N)
により生成する。ただしaは0より大きく1以下の値である。これらxn(k),zn(k)をL′サンプル毎に長さ2L′の信号ベクトルにブロック化し、FFTをもちいて
X nf(k,D)=diag(FFT([xn(k−2L′+1),…,xn(k)]T ))
Z nf(k,D)=diag(FFT([zn(k−2L′+1),…,zn(k)]T )) (n=1,…,N)
のように周波数領域に変換する。また、疑似反響経路(適応フィルタ)長はLであり、D−1個前まで計算結果を用いて、各L′についてフィルタ処理する必要があるから、
X nf(k,d)=X nf(k−L′,d+1)(d=1,…,D−1)
Z nf(k,d)=Z nf(k−L′,d+1)(d=1,…,D−1)
とする。
ステップ2
チャネルごとに周波数領域で掛け算処理を行うことで、入力信号ベクトルをフィルタ処理する。計算結果を逆FFT処理し、時間領域での信号ベクトルy^n(k)を得る。
y^n(k)=[I L' 0 L']IFFT(Σd=1 D X nf(k,d)w nf(k,d))
ただし、0 L'はL′×L′の零行列、I L'はL′×L′の単位行列である。
ステップ3
信号ベクトルy^n(k)(n=1,…,N)を加算して、疑似エコー信号のベクトルy^(k)を得る。
y^(k)=Σn=1 N y^n(k)
ステップ4
収音信号と疑似エコーの誤差信号のベクトルを
e f(k)=FFT([0,…,0,y T(k)−y^T(k)]T )
で算出する。ただし
y(k)=[y(k−L′+1)…y(k)]T
であり、FFT([…])内の0の数はL′個である。
【0044】
ステップ5
誤差信号と修正用信号を周波数領域で処理し、修正ベクトルdw nf(k)を求める。
v nf(k,d)=[I L' 0 L']IFFT(Z * nf(k,d)e f(k))
dw nf(k,d)=FFT([v nf T(k,d),0,…,0]T )
(d=1,…,D)
ただし行列Z * nf(k)の各成分は行列Z nf(k)各成分の複素共役であり、
FFT([ ])内の0の数はL′個である。
ステップ6
各チャネルの適応フィルタを次式で更新する。
w nf(k+L′,d)=w nf(k,d)+P(k)dw nf(k,d)
(d=1,…,D)
ただし、行列P(k)は、
【数9】
により計算され、μは0〜1の値をとるステップサイズである。またδは分母が0になることを防止するための微小な正定数である。
【0045】
実施例4のNチャネルエコーキャンセル部7m内部は、実施例3と同様に図12に示したような機能構成をとる。受話信号un(k)には加算器811nにより付加信号gn(un(k))が加算されて、再生信号xn(k)が生成され、更にTF変換部812nによってX nf(k)に変換される。また受話信号un(k)は減衰器813nによりa倍(ただしaは0から1の値)され、加算器814nにより付加信号gn(un(k))が加算されて、修正用信号zn(k)が生成される。zn(k)はTF変換部815nによりZ nf(k)に変換される。X nf(k)はフィルタ処理部82nへ、Z nf(k)はフィルタ更新部88nに渡される。
フィルタ処理部82n、FT変換部83n、ベクトル加算部84では、ステップ2,3の処理を経て疑似エコー信号が生成される。マイクロホン3mからの収音信号y(k)は、ブロック化部85でブロック化され、ステップ4にしたがってベクトル加算部86にて疑似エコー信号ベクトルとの誤差がとられ、TF変換部87で周波数領域へ変換される。フィルタ更新部88nではステップ5,6にしたがって適応フィルタが更新される。N入力1出力適応フィルタについて、チャネル当りの適応フィルタ長をLとすると、Lサンプル分の疑似エコー信号を算出するのに必要となる積算の演算量は、NLMS法では、NL(2L+4)である。一方、実施例4の方法で必要となる積算の演算量はNL((4D+8)log2 (L/D)+15D+5)である。チャネル当りの適応フィルタタップ数をL=1024とするとき、実施例4の方法で適応フィルタをL/4タップ毎に更新する場合の演算量はNLMS法の約12.5%であり、L/8タップ毎に更新する場合の演算量は約20%である。このように演算量をNLMS法と比較して低く抑えたまま、FLMS法と比較して、処理遅延を大幅に小さくすることができる。
【0046】
以上述べたようにこの発明は再生信号xn(k)と比較して付加信号gn(un(k))の比率が大きい修正用信号を用いて、疑似反響経路のインパルス応答を逐次更新するための修正ベクトルdw(k)を作る点に特徴がある。よってこの基本構成を図14に示すと共に以下にその処理手順を説明する。
第1〜第Nチャネルの各受話信号を
u1(k)…uN(k)
第1〜第Nチャネルの各付加信号を
g1(u1(k))…gN(uN(k))
第1〜第Nチャネルの適応フィルタ(疑似反響経路)のフィルタ係数(インパルス応答)を
w n =[wn(0)…wn(L−1)]T (n=1,…,N)
とする。ただし、Lは適応フィルタのチャネル当りのタップ数である。
第1〜第Nチャネルの受話信号に付加信号を付加して再生信号
xn(k)=un(k)+gn(un(k))(n=1,…,N)
とし、第1〜第Nチャネルの修正用信号を
zn(k)=aun(k)+gn(un(k))(n=1,…,N)
とし、それぞれx n(k)生成部91、z n(k)生成部92で
x n(k)=[x n(k)…x n(k−L+1)]T (n=1,…,N)
z n(k)=[z n(k)…z n(k−L+1)]T (n=1,…,N)
のようにベクトル化する。
【0047】
実際に収音された信号y(k)と適応フィルタ(疑似エコー信号生成部)93により予測された信号y^(k)との差e(k)を、減算部94により
e(k)=y(k)−Σn=1 N w n T(k)x n(k)
と求める。この誤差信号e(k)と修正用基本ベクトルz n(n=1,…,N)とを用いて修正ベクトル生成部95で
dw n(k)=e(k)z n(k)(n=1,…,N)
を求める。各チャネルの適応フィルタ93の係数を逐次更新部96により
w n (k+1)=w n(k)+μdw n(k)(n=1,…,N)
と更新する。μは毎回の繰り返しにおける補正の大きさを制御するパラメータであり、ステップサイズと呼ばれる。なお修正用信号の生成はzn(k)=un(k)+bgn(un(k))(n=1,・・・,N),b>1としてもよい。
【0048】
効果の実証例(1)
再生チャネル数N=2、収音チャネル数M=1の音響系と多チャネル・エコーキャンセラに実施例1の手法を適用して数値シミュレーションを行った。サンプリング周波数を8kHzに設定し、音響エコー経路として残響時間200msの部屋で実測した室内伝達関数を700タップに打ち切って使用した。相互相関一定の2チャネル受話信号は、2本の40dBSNRのマイクロホンで単一話者の音声を収音している状況をシミュレートして生成した。適応フィルタのタップ数は1チャネル当り600タップに設定し、適応アルゴリズムに2次射影アルゴリズムを用いた。
【0049】
相関変動処理として、半波整流方式
g1(u(k))=d(u(k)+|u(k)|)/2
g2(u(k))=d(u(k)−|u(k)|)/2
を、d=0.26として用いた。
推定性能は、音響エコー経路のインパルス応答からなるベクトルhと適応フィルタの各インパルス応答後部に0詰めしてhとサイズをそろえたベクトルw′(k)との相対誤差
|h−w′(k)|/|h|
で評価した。
【0050】
付加信号なしで従来の2次射影アルゴリズムをμ=0.5で適用した場合(A)、付加信号を加えて従来の2次射影アルゴリズムをμ=0.5で適用した場合(B)、この発明の実施例1の手法をp=2,a=0.1,μ=0.5で適用した場合(C)の適応フィルタの推定性能を図15に示す。
このグラフによれば、従来の2次射影アルゴリズムでは、係数誤差は飽和しないものの減少は緩やかで、10s後の係数誤差は−7.0dB程度にとどまる。しかしこの発明法によれば、10s後の係数誤差は−13.6dBまで減少し、この発明が優れていることがわかる。
【0051】
効果の実証例(2)
実際に数値シミュレーションを行った結果を図16に示す。この数値シミュレーションでは、サンプリング周波数を8kHzに設定し、音響エコー経路として残響時間200msの部屋で実測した室内伝達関数を700タップに打ち切って音響エコーを生成した。相互相関一定の2チャネル受話信号u1(k),u2(k)は、2本のマイクロホンで単一話者の音声を収音している状況を模擬することで生成した。適応フィルタのタップ数は1チャネル当り512タップに設定し、従来適応アルゴリズムとしてNLMS法とFLMS法を適用した場合と、この発明の実施例4の方法とを比較した。
相関変動処理には、文献P.Eneroth,T.Gaensler,S.Gay and J.Benesty,“Studies of a wideband stereophonic acoustic echo canceler,”Proc.1999 IEEE Workshop on Applications of Signal Processing to Audio and Acoustics,pp.207-210(1999)でもちいられている半波整流方式
g1(u(k))=d(u(k)+|u(k)|)/2
g2(u(k))=d(u(k)−|u(k)|)/2
を、聴感上違和感のほとんどないd=0.26で適用した。2チャネルエコーキャンセル部への入力は
x1(k)=u1(k)+g1(u1(k))
x2(k)=u2(k)+g2(u2(k))
とした。
推定性能は、音響エコー経路のインパルス応答からなるベクトルhと適応フィルタの各インパルス応答後部に0詰めしてhとサイズをそろえたベクトルw′(k)との相対誤差
|h−w′(k)|/|h|
で評価した。
付加信号を加えて従来のNLMSアルゴリズムをμ=0.5で適用した場合(A)、付加信号を加えてFLMSアルゴリズムをμ=0.5で適用した場合(B)とこの発明の実施例4の手法を分割数D=4,a=0.1,μ=0.5で適用した場合(C)の適応フィルタの推定性能を図15に示す。
このグラフによれば、従来のNLMSアルゴリズムでは、係数誤差は飽和しないものの減少は緩やかで、10s後の係数誤差は−6.0dB程度にとどまり、FLMS法をもちいると白色化処理により係数誤差は約−12dBまで減少する。この発明実施例2の方法によれば、10s後の係数誤差はさらに低下し約−18dBにまで減少する。
【0052】
上述においては受話信号に付加信号を付加して再生信号としたが、受話信号を処理して再生信号を得てもよい。この場合は、再生信号から受話信号を引算して付加信号を求めて、前述したこの発明の方法を行えばよい。また付加信号は受話信号を処理したものに限らず、受話信号とは独立に生成したものでもよい。
上述したこの発明による多チャネルエコー消去はコンピュータにより機能させることもできる。つまり例えば図17に示すように、受話信号u1(k),…,uN(k)は入力部21より入力され、音響エコー信号y(k)は入力部22より入力され、これら入力信号はデータ記憶部24に一時格納され、記憶部24から読み出されて、付加信号の生成、再生信号行列X(k)の生成、修正用基本ベクトル行列Z(k)の生成、疑似反響経路の生成、疑似エコー信号の生成、音響エコー信号から疑似エコー信号の除去、その誤差信号、修正用基本ベクトルから修正ベクトルの算出、修正ベクトルにより疑似反響経路のインパルス応答の逐次修正などを、ワーク用メモリ25を必要に応じて用いて、プロセッサ26によりメモリ27に格納されているプログラムを実行させることにより行わせる。エコー消去された信号は出力部23から出力される。この場合プロセッサを複数用いて、それぞれに処理を分担させると共に1つのプロセッサにより統括的処理を行うように、それぞれプロセッサに対応したプログラムを各別のメモリに格納してもよい。このプログラムはCD−ROM、磁気ディスクあるいは通信回線からインストールされて用いられる。
【0053】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、付加信号情報に対する受話信号情報の比率を小さくした信号から適応フィルタの修正ベクトルを求める新しい適応アルゴリズムにより、多チャネル・エコー消去方法の推定性能を向上させている。特に適応フィルタ更新処理を周波数領域で行う場合は演算量を大幅に減少できる。これにより、対地で話者が交代し受話信号の相互相関が変化しても、エコーの増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多チャネルエコー消去装置の一般的構成を示す図。
【図2】図1中のNチャネルエコーキャンセル部4m の機能構成を示す図。
【図3】図2中のエコー経路推定部43の機能構成を示す図。
【図4】周波数領域で適応フィルタ更新処理を行う従来機能を示す機能構成図。
【図5】受話信号に付加信号を加えた、多チャネルエコー消去装置の構成を示す図。
【図6】従来の方法による疑似エコー経路のインパルス応答係数推定誤差の時間経過を示す図。
【図7】受話信号による誤差信号パワー(点線)と、付加信号による誤差信号パワー(実線)の時間変化を示す図。
【図8】この発明が適用された多チャネルエコー消去装置の構成例を示す図。
【図9】図7中のこの発明によるNチャネルエコーキャンセル部7m の機能構成例を示す図。
【図10】図9中のエコー経路推定部73の機能構成例を示す図。
【図11】再生信号ベクトルを受話信号ベクトルの線形和と、これに直交するベクトルとに分解した様子を示す図。
【図12】適用フィルタの更新処理を周波数領域で行うこの発明の実施例の機能構成を示す図。
【図13】Aは図12中のフィルタ更新部を更に具体化した例を示す図、Bは図12中のフィルタ更新部における白色化処理のための機能構成を示す図である。
【図14】この発明の基本的な機能構成を示す図。
【図15】従来法とこの発明方法(実施例1)による疑似エコー経路のインパルス応答係数推定誤差の時間経過を示す図。
【図16】従来法とこの発明方法(実施例4)による疑似エコー経路のインパルス応答係数推定誤差の時間経過を示す図。
【図17】この発明装置をコンピュータにより実行させる場合の構成例を示す図。
Claims (16)
- Nチャネル(Nは2以上の整数)の受話信号に対して、それぞれ再生信号のチャネル間の相互相関が絶えず変動するような付加信号を加算して上記再生信号を生成し、
上記再生信号を、N個の反響経路を模擬した疑似反響経路に印加して疑似エコー信号を生成し、
上記N個の反響経路から得られたエコー信号から疑似エコー信号を差し引いてエコー信号を消去して誤差信号を求め、
再生信号よりも、付加信号をより多く含む修正用基本ベクトルを、付加信号ベクトルと受話信号ベクトルから生成し、
その修正用基本ベクトルと、上記誤差信号とから修正ベクトルを求め、
その修正ベクトルを用いて疑似エコー経路のインパルス応答を逐次更新する
各ステップを含む反響消去方法。 - 請求項1記載の方法において、
受話信号ベクトルをa倍(0<a<1)して付加信号ベクトルに加算して上記修正用基本ベクトルとすることを特徴とする反響消去方法。 - 請求項1記載の方法において、
上記修正用基本ベクトルの生成は、
再生信号ベクトルを、受話信号ベクトルの線形和のベクトルと受話信号ベクトルに直交するベクトルとに分解し、
再生信号ベクトルから、受話信号ベクトルの線形和ベクトルのb倍(0<b<1)を差し引いて上記修正用基本ベクトルとすることを特徴とする反響消去方法。 - 請求項1乃至3の何れかに記載の方法において、
上記修正ベクトルを求めるステップは、
各修正用基本ベクトルの係数を、上記誤差信号、Nチャネルの再生信号および修正用基本ベクトルから決定し、
その決定した係数を対応する修正用基本ベクトルに与えて修正用基本ベクトルの線形和を求めて上記修正ベクトルとすることを特徴とする反響消去方法。 - 請求項1乃至2の何れかに記載の方法において、
上記疑似エコー信号生成ステップは上記再生信号を周波数領域に変換し、その周波数領域の再生信号に対し、周波数領域で上記疑似反響経路によるフィルタ処理を行い、その処理結果を時間領域に変換して上記疑似エコー信号を生成し、
上記修正ベクトルを求めるステップは上記誤差信号及び上記修正用基本ベクトルをそれぞれ周波数領域に変換して、周波数領域の上記修正ベクトルを求め、上記インパルス応答の逐次更新ステップは周波数領域で行うことを特徴とする反響消去方法。 - 請求項5記載の方法において、
上記周波数領域での上記疑似反響経路の更新ステップは、
A.周波数領域で対応スペクトルごとに再生信号と修正用基本信号のクロススペクトルの全チャネルの総和を求め、
B.周波数領域で各クロススペクトルの総和の逆数をそれぞれ修正ベクトルにかけて修正ベクトルを補正し、
C.その補正された修正ベクトルを用いて周波数領域で疑似反響経路のインパルス応答を更新する
ことを特徴とする反響消去方法。 - 請求項6記載の方法において、
前回求めたスペクトルごとの再生信号と修正用信号のクロススペクトルの短時間平均の総和と、今回求めた対応スペクトルの再生信号と修正用基本信号のクロススペクトルの総和とを重み付け加算して今回のクロススペクトルの短時間平均の総和を求め、この短時間平均の総和を上記ステップAで求める総和とすることを特徴とする反響消去方法。 - Nチャネル(Nは2以上の整数)の受話信号を入力し、それぞれ再生 信号のチャネル間の相互相関が絶えず変動するような付加信号を加算した上記再生信号を生成する手段と、
上記N個の再生信号を入力し、N個の反響経路を模擬した疑似反響経路を備え、疑似エコー信号を生成出力する疑似エコー信号生成手段と、
上記N個の反響経路から得られたエコー信号から上記疑似エコー信号を差し引いてエコー信号を消去して誤差信号を求める消去手段と、
再生信号よりも、付加信号をより多く含む修正用基本ベクトルを、付加信号ベクトルと受話信号ベクトルとから生成する手段と、
上記修正用基本ベクトルと、上記誤差信号とを入力して修正ベクトルを求める手段と、
上記修正ベクトルを用いて、上記疑似エコー信号生成手段の疑似反響経路のインパルス応答を逐次更新する逐次更新手段と
を具備する反響消去装置。 - 請求項8記載の装置において、
上記修正用基本ベクトルを求める手段は受話信号ベクトルをa倍(0<a<1)して付加信号ベクトルと加算する手段であることを特徴とする反響消去装置。 - 請求項8記載の装置において、
上記修正用基本ベクトルを求める手段は
再生信号ベクトルを、受話信号ベクトルの線形和のベクトルと、受話信号ベクトルと直交するベクトルとに分解する手段と、
上記再生信号ベクトルから、受話信号ベクトルの線形和ベクトルのb倍(0<b<1)を差し引いて上記修正用基本ベクトルを出力する手段とよりなることを特徴とする反響消去装置。 - 請求項8乃至10のいずれかに記載の装置において、
上記修正ベクトル生成手段は、上記誤差信号と、Nチャネルの再生信号および修正用基本ベクトルから上記各修正用基本ベクトルの係数を求める手段と、
上記求めた係数を対応する修正用基本ベクトルに与えて、これらの線形和を求めて修正ベクトルとして出力する手段とを備えることを特徴とする反響消去装置。 - 請求項8乃至9の何れかに記載の装置において、
上記疑似エコー信号生成手段は、上記再生信号を周波数領域に変換する手段と、その変換された周波数領域の再生信号に対し、上記疑似反響経路によるフィルタ処理を周波数領域で行う手段と、そのフィルタ処理された結果を時間領域に変換して上記疑似エコー信号を出力する手段とを備え、
上記修正ベクトルを求める手段は、上記誤差信号を周波数領域に変換する手段と、上記修正用基本ベクトルを周波数領域に変換する手段と、これら周波数領域に変換された誤差信号と修正用基本ベクトルにより周波数領域で上記修正ベクトルを求める手段とを備え、
上記逐次更新手段は上記周波数領域で求められた上記修正ベクトルが入力され、上記疑似反響経路のインパルス応答の逐次更新を周波数領域で行う手段であることを特徴とする反響消去装置。 - 請求項12記載の装置において、
上記逐次更新手段は対応スペクトルごとに、周波数領域の再生信号と周波数領域の修正用基本信号とが入力され、これらのクロススペクトルの全チャネルの総和を求めて出力する第1手段と、
上記スペクトルごとのクロススペクトルの総和と上記周波数領域の修正ベクトルが入力され、各クロススペクトルの総和の逆数を修正ベクトルにかけて修正ベクトルを補正する第2手段と、
上記周波数領域の補正された修正ベクトルが入力され、上記疑似反響経路のインパルス応答を周波数領域で更新する第3手段とを備えることを特徴とする反響消去装置。 - 請求項13記載の装置において、
上記第1手段は、前回求めたスペクトルごとのクロススペクトルの短時間平均の総和と、今回求めた対応スペクトルの再生信号と修正用基本信号のクロススペクトルの全チャネルの総和とを重み付け加算して、今回のクロススペクトルの短時間平均の総和を求めて上記出力する総和とする手段であることを特徴とする反響消去装置。 - 請求項1乃至7の何れかに記載の反響消去方法をコンピュータにより実行する反響消去プログラム。
- 請求項15記載の反響消去プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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