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JP3673357B2 - めっき用の前処理洗浄剤 - Google Patents

めっき用の前処理洗浄剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、プリント基板のスルーホール等におけるめっきの前処理に用いる前処理洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、プリント基板は非導電性の基材の両面に銅薄膜を形成した積層構造を有しており、スルーホール内には基材面が露出している。このようなプリント基板上への配線形成およびスルーホールにおける導通の一例として、以下のような工程が行われている。まず、予めパラジウム等の触媒金属核を付与した後、無電解めっきにより銅薄膜をスルーホール内を含めて形成した後、電気銅めっきによって厚い銅被膜を形成する。この銅被膜の形成は、電気銅めっきを行わずに無電解めっきのみで行われる場合もある。次に、感光性ドライフィルムをラミネートして露光、現像し銅被膜上に所望の配線パターンの逆パターンでめっきレジスト層を形成した後、露出している銅被膜上に電気銅めっきにより銅めっきパターンを形成する。次いで、はんだめっき等により銅めっきパターン上に保護層を形成した後、レジスト層を剥離除去し、エッチングにより銅めっきパターンの形成されていない箇所の銅被膜の除去が行われる。
【0003】
しかし、スルーホールに気体が残留している場合、スルーホール内の銅被膜上へのはんだめっきの析出が阻害されて保護層の非形成箇所が生じ、後工程のエッチングにより保護層非形成箇所の銅被膜が溶解してボイドが発生し、導通に欠陥を生じることになる。プリント基板に設けられた複数のスルーホールの1個にでも上記のような欠陥が生じると、そのプリント基板は使用不可能になるため、スルーホール内の気体の除去が極めて重要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、スルーホール内の気体の除去手段として、減圧、揺動、ショッキング(衝撃)等の手段が用いられているが、スルーホールの小径化、アスペクト比(基板厚み:スルーホール径)の増大、高密度化に伴って、スルーホール内の気体除去が難しくなっている。このため、上記の気体除去手段に加えて、脱脂等の前処理において化学的にスルーホール内に残存する気体を除去する方法がとられている。ところで、上述のレジスト層はアルカリ現像タイプが一般的であるため、使用する前処理洗浄剤は中性あるいは酸性のものに限定される。しかし、従来から使用されている中性あるいは酸性の前処理洗浄剤は、小径のスルーホール内への浸透性が低く、スルーホール内の気体除去が十分に行えないという問題があった。
【0005】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、プリント基板の小径で高アスペクト比のスルーホール内への浸透性に優れ、めっきによるスルーホールの欠陥発生を著しく低減することが可能なめっき用の前処理洗浄剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、スルーホールを含むプリント基板めっき用の前処理洗浄剤において、無機酸および有機酸のなかの1種または2種以上の酸を0.01〜16重量%の範囲で含有し、ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤のなかの1種または2種以上の界面活性剤を0.01〜5重量%の範囲で含有し、アルコールを0.01〜10重量%の範囲で含有する水溶液であるような構成とした。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の最適な実施形態について説明する。
【0011】
本発明の前処理洗浄剤に含有される酸は、無機酸および有機酸の1種あるいは2種以上の組み合わせである。無機酸としては硫酸、リン酸等を使用することができ、また、有機酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸等を使用することができる。このような酸の含有量は0.01〜16重量%の範囲内で使用する酸に応じて適宜設定することができる。酸の含有量が0.01重量%未満であると、組み合わせて使用する界面活性剤によっては、基板表面のレジスト残渣の除去能力や脱脂力の低下を生じ、さらに、小径スルーホール内への前処理洗浄剤の浸透性の低下を生じることがある。また、16重量%を超えると、レジストへのアタックが強くなってレジストと下地(例えば、銅被膜)との密着性が低下するとともに、浸透性の更なる向上は望めずコスト増大を来すので好ましくない。
【0012】
また、本発明の前処理洗浄剤に含有される界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせである。ノニオン系界面活性剤としては従来公知のノニオン系界面活性剤を使用することができ、例えば、三洋化成工業(株)製ノニポール95、花王(株)製エマルゲン810、日華化学(株)製サンモールWL−3等を挙げることができる。また、アニオン系界面活性剤としては従来公知のアニオン系界面活性剤を使用することができ、例えば、花王(株)製ペレックスSS−H、n−ドデシル硫酸ナトリウム等を挙げることができる。このような界面活性剤の含有量は0.01〜5重量%の範囲内で、使用する界面活性剤に応じて適宜設定することできる。界面活性剤の含有量が0.01重量%未満であると、前処理洗浄剤の脱脂力や洗浄力等が不十分となり、また、5重量%を超えると、界面活性剤添加による更なる効果は望めずコスト増大を来すとともに、使用する界面活性剤によっては完全に溶解しない場合もあり好ましくない。
【0013】
さらに、本発明の前処理洗浄剤に含有されるアルコールは、飽和アルコールおよび不飽和アルコールのなかの1種または2種以上の組み合わせである。飽和アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の飽和アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、D−ソルビトール、キシリット等の多価の飽和アルコールを挙げることができる。また、不飽和アルコールとしては、2−プロピン1−オール等の1価の不飽和アルコール、2−ブチン1,4ジオール等の多価の不飽和アルコールを挙げることができる。このようなアルコールの含有量は0.01〜10重量%の範囲内で、使用するアルコールに応じて適宜設定することができる。アルコールの含有量が0.01重量%未満では、小径(例えば、0.3mm)で高アスペクト比(10以上)のスルーホール内への前処理洗浄剤の浸透性が低下し、また、10重量%を超えると更なる効果は望めずコスト増大を来すので好ましくない。
【0014】
上述のような酸、界面活性剤およびアルコールを含有させて本発明の前処理洗浄剤とするための溶媒としては水が好ましく、一般の水道水あるいは純水等を用いることができる。
【0015】
本発明の前処理洗浄剤を用いたスルーホール等への電気銅めっきの前処理工程における浴温度は20〜60℃、浸漬時間は2〜10分の範囲で適宜設定することができる。但し、実用的ではないが、10分を超える浸漬時間でも前処理洗浄液としての性能に問題はない。このような前処理によって、脱脂等の洗浄が行われるとともに、スルーホール内に前処理洗浄液が浸透して、残留している気体を有効に除去することができる。
【0016】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
(1) テスト基板の作製
まず、厚み3.2mmのガラス−エポキシ基材の両面銅張積層基板(松下電工(株)製FR−4)にスルーホール(穴径0.3mm)を形成した。このスルーホールは1行に14個形成し、全部で30行形成した。次いで、無電解銅めっき、電気銅めっき(パネルめっき)を施して銅被膜(厚み25μm)を形成した。その後、この銅被膜上にドライフィルムフォトレジスト(モートンインターナショナル(株)製DFR)をラミネートし、露光現像して回路部以外の銅被膜をレジスト層で被覆してテスト基板とした。
(2) 前処理洗浄剤の調製
溶媒としての水に下記の成分を含有させた前処理洗浄剤(試料1〜試料11)を調製した。但し、使用した硫酸の含有量A(重量%)、ノニオン系界面活性剤の含有量B(重量%)およびエチレングリコールの含有量C(重量%)は下記の表1に示されるものとした。
【0017】
前処理洗浄剤の組成
・98%精製硫酸 … A 重量%
・ノニオン系界面活性剤 … B 重量%
(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)
(花王(株)製エマルゲン810)
・エチレングリコール … C 重量%
また、比較として、溶媒としての水に下記の成分を含有させた従来の酸性前処理洗浄剤(比較試料1)を調製した。
【0018】
従来の前処理洗浄剤の組成
・有機酸(ギ酸) …2.5重量%
・ポリエチレングリコール(分子量3400) …1.0重量%
(3) 前処理洗浄剤の評価
上記のように調製した各前処理洗浄剤の評価を以下のようにして行った。
【0019】
まず、45℃に保った前処理洗浄剤の浴にテスト基板を5分間浸漬して前処理を行った。この前処理工程において、テスト基板のスルーホールに対する各前処理洗浄剤の浸透性に応じてスルーホール内の残留気体の除去が行われ、後述する導通率にその結果が現れる。尚、前処理洗浄剤のみによる残留気体の除去効果を確認するために、この前処理工程および後工程において揺動等の従来の気体除去操作はまったく行わなかった。
【0020】
次に、水洗した後、溶媒としての水に下記の成分を含有させたはんだめっき浴を使用してスルーホール内の銅被膜を含む露出している銅被膜上にはんだめっきを行い保護層を形成した。この場合、浴温度は25℃、電流密度は2A/dm2 、めっき時間は12分とした。
【0021】
はんだめっき浴組成
・金属錫 … 16g/l
・金属鉛 … 11g/l
・遊離酸 …210ml/l
次いで、洗浄後、テスト基板を3%水酸化ナトリウム浴(25℃)に1分間以上浸漬してレジスト層を剥離し、洗浄した。次に、溶媒としての水に下記の成分を含有させたエッチング液にテスト基板を浸漬して銅被膜のエッチングを行った。この場合、エッチング液の温度は50℃、pHは8.3(20℃において)、エッチング時間は1分で、エッチング速度は35μm/分とした。
【0022】
エッチング液の組成
・銅 … 140g/l
・塩素 … 160g/l
・全アンモニア … 9.0N
次に、4端子法によるスルーホールの導通抵抗値の測定を行い、導通抵抗値がオーバーロードとなった行をスルーホール内で断線あるいはボイドが発生したものとみなして導通率(導通率=(断線のない行/30行)×100)を算出して下記の表1に示した。
【0023】
【表1】
Figure 0003673357
表1に示されるように、硫酸の含有量が0.01〜16重量%の範囲、ノニオン系界面活性剤の含有量が0.01〜5重量%の範囲、エチレングリコールの含有量が0.01〜10重量%の範囲である前処理洗浄剤(試料1〜7)を使用した場合は、いずれも導通率が50%以上であり、これらの前処理洗浄剤がスルーホール内に浸透して残留気体を有効に除去することが確認された。尚、試料8、9はスルーホール内の導通率が100%であるが、試料8は基板表面のレジスト残渣の除去能力や脱脂力が不十分であり、試料9はレジストへのアタックが強くなってレジストと銅被膜との密着性に低下を来し、ともに実用に供し得ないものであった。
【0024】
これに対して、従来の酸性前処理洗浄剤(比較試料1)を使用した場合は、導通率が33.3%と極めて低く、前処理における残留気体の除去作用がほとんど得られないことが確認された。
(実施例2)
エチレングリコールに代えてグリセリンを使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料A)を調製した。
【0025】
また、エチレングリコールに代えてD−ソルビトール(70%)を使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料B)を調製した。
【0026】
また、エチレングリコールに代えて2−プロピン1−オールを使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料C)を調整した。
【0027】
また、エチレングリコールに代えてメタノールを使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料D)を調整した。
【0028】
さらに、エチレングリコールに代えて2−ブチン1,4ジオールを使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料E)を調整した。
【0029】
これらの前処理洗浄剤(試料A、B、C、D、E)を使用し、実施例1と同様にしてプリント配線板のスルーホール内へのはんだめっき、エッチングを行い、4端子法によるスルーホールの導通抵抗値を測定した。その結果、スルーホールの導通率は、
試料Aを使用した場合:100%
試料Bを使用した場合:96.7%
試料Cを使用した場合:93.3%
試料Dを使用した場合:83.3%
試料Eを使用した場合:96.7%
であり、これらの前処理洗浄剤がスルーホール内に浸透して残留気体を有効に除去することが確認された。
(実施例3)
ノニオン系界面活性剤(エマルゲン810)に代えてノニオン系界面活性剤(三洋化成工業(株)製ノニポール95)を使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料I)を調製した。
【0030】
また、ノニオン系界面活性剤(エマルゲン810)に代えてノニオン系界面活性剤(日華化学(株)製サンモールWL−3)を使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料II)を調製した。
【0031】
また、ノニオン系界面活性剤(エマルゲン810)に代えてアニオン系界面活性剤(花王(株)製ペレックスSS−H)を使用した他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料III)を調製した。
【0032】
さらに、ノニオン系界面活性剤(エマルゲン810)に代えてアニオン系界面活性剤(n−ドデシル硫酸ナトリウム)を使用し含有量を0.2重量%とした他は、実施例1の試料1と同様に前処理洗浄剤(試料IV)を調製した。
【0033】
これらの前処理洗浄剤(試料I、II、III、 IV)を使用し、実施例1と同様にしてプリント配線板のスルーホール内へのはんだめっき、エッチングを行い、4端子法によるスルーホールの導通抵抗値を測定した。その結果、スルーホールの導通率は、
試料Iを使用した場合:96.7%
試料IIを使用した場合:56.7%
試料III を使用した場合:90.0%
試料IVを使用した場合:80.0%
であり、これらの前処理洗浄剤がスルーホール内に浸透して残留気体を有効に除去することが確認された。
【0034】
【発明の作用および効果】
以上詳述したように、本発明によれば酸として無機酸および有機酸のなかの1種または2種以上の酸、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤のなかの1種または2種以上の界面活性剤、および、アルコールとを少なくとも含有する前処理洗浄剤とするので、例えば、高アスペクト比のプリント基板の小径スルーホールに対しても、従来の酸性の前処理洗浄剤に比べて本発明の前処理洗浄剤は優れた浸透性を発揮し、スルーホール内の残留気体を有効に除去することが可能であり、これにより、従来から用いられている減圧、揺動、ショッキング(衝撃)等の残留気体除去手段を併用することによって、めっきによるスルーホールの導通において発生する欠陥を著しく低減することができる。

Claims (1)

  1. スルーホールを含むプリント基板めっき用の前処理洗浄剤において、
    無機酸および有機酸のなかの1種または2種以上の酸を0.01〜16重量%の範囲で含有し、ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤のなかの1種または2種以上の界面活性剤を0.01〜5重量%の範囲で含有し、アルコールを0.01〜10重量%の範囲で含有する水溶液であることを特徴とするめっき用の前処理洗浄剤。
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