JP3670913B2 - ポリ乳酸系収縮フィルムまたはシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はポリ乳酸を主成分とした収縮性を有するフィルムまたはシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
収縮包装や収縮結束包装、収縮ラベル等に利用される熱収縮性シート又はフィルムとして、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のシートやフィルムが知られており、また、産業界で広く利用され、消費されている。しかし、これらのシートやフィルムは自然環境下に棄却されると、その安定性のため分解されることなく残留し、景観を損ない、魚、野鳥等の生活環境を汚染する等の問題を引き起こす。
【0003】
そこで、これらの問題を生じない分解性重合体からなる材料が要求されており、実際多くの研究、開発が行われている。その一例として、ポリ乳酸があげられる。ポリ乳酸は、土壌中において自然に加水分解が進行し、土中に原形が残らず、次いで微生物により無害な分解物となることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリ乳酸は、素材が本来有する脆性のため、これをシートやフィルムにしても十分な強度が得られず、実用に供し難い。特に実質一軸延伸して一軸収縮性のフィルムをポリ乳酸から製造することにおいて、延伸しない方向の脆性は改良されないので、その方向に衝撃を受けた場合裂け易い。
【0005】
また、特開平5−212790号公報には、ポリ乳酸からなるラベル用の熱収縮フィルムが開示されている。しかし、この熱収縮フィルムは、収縮温度が140〜150℃と高く、ガラス瓶等のラベルとして用いることができる高温収縮性フィルムである。このため、生鮮食品や紙箱、あるいは食品や薬品の入った各種容器類等の熱変形を生じやすい被包装体を収縮包装したり収縮結束包装する場合、60〜120℃程度の低温収縮加工を行う必要があり、この条件では十分な熱収縮性を有さない。さらに、高温収縮性のラベルとしても収縮仕上りが悪く、被収縮物に接触せずに浮いた部分などができ、十分な性能を発揮し得ない場合がある。さらに、ポリ乳酸の結晶性を考慮しないと、公報に記載されているような温度での延伸は非常に困難なものとなる。すなわち、延伸中にフィルムが結晶化して白化したり、あるいは融点の低いポリ乳酸では延伸中にフィルムが溶融し、破断するなどの問題を起こしやすく、実質安定して製造するのは困難である。
【0006】
また、特開平7−256753号公報には、所定の要件を満たすポリ乳酸系重合体からなる低温収縮性の熱収縮性フィルムが開示されている。しかし、この熱収縮フィルムは収縮仕上がりが悪く、被収縮物に接触せずに浮いた部分が出来る場合がある。
【0007】
ところで、本発明者らは、ポリ乳酸系重合体及び他の脂肪族ポリエステルの混合体からなる延伸フィルムを特開平9−157408号公報に開示した。この延伸フィルムは、所定のポリ乳酸系重合体と所定の生分解性脂肪族ポリエステルの混合樹脂の延伸フィルムを熱固定したものであり、滑り性、ヒートシール性能及び溶断シール性能や熱寸法安定性に優れることを示したものである。しかし、この延伸フィルムは、熱固定を施すことにより熱寸法安定性等が向上することが開示されているが、熱固定を施す前の延伸フィルムについては、収縮性、収縮仕上り性、融着性等の熱収縮フィルムとしての特性については開示されていない。
【0008】
一方、特開平9−169896号公報には上記ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの組成物からなる収縮フィルムについて開示されている。ポリ乳酸に脂肪族ポリエステルを混合することで収縮曲線をなめらかにし、収縮時に発生するしわの抑制を目的としている。しかし本発明で開示されている方法や実施例に基づくフィルムでは必ずしも透明性に優れたフィルムを得るとは限らない。混合する脂肪族ポリエステルを吟味して選ばないと、フィルムの透明性は著しく低下し、実用上問題となる。特に収縮ラベルのような用途はフィルムの裏面に印刷されフィルムを通して文字・図柄を読み取ることになるので、フィルムが曇っていたり、光沢度が低いとラベルの美麗感が損なわれる。
【0009】
そこで、この発明は、十分な収縮率を有し、耐衝撃性(耐破断性)そして特に透明性に優れ、延伸時の厚みのバラツキのない生分解可能な包装用ポリ乳酸系収縮シート状物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の要旨は、D乳酸とL乳酸の構成割合が100:0〜92:8または0:100〜8:92であるポリ乳酸系重合体(A)100重量部に対し、下記▲1▼式で表される脂肪族ポリエステル(B)10〜60重量部の混合体であり、かつ、
(1)脂肪族ポリエステルの結晶融解熱量ΔHmが55J/g以下であり、
(2)見かけのせん断速度が102(1/sec)のときの上記重合体AおよびBの 見かけの溶融粘度をそれぞれSVa、SVbとすると、その関係が
1≦(SVa/SVb)≦2
であるプラスチック材料を成形してなるフィルムまたはシートにおいて、
(3)ポリ乳酸系重合体(A)を主成分とするスキン層を設け、
(4)少なくとも、一軸方向の熱収縮率が80℃/10秒での温水中で10%以上
であることを特徴とする熱収縮フィルムまたはシートにより上記課題を解決したものである。
【0011】
【化1】
(式中、R1およびR2は、炭素数2〜10のアルキレン基またはシクロアルキレン基である。nは、重量平均分子量が2万〜30万となるのに必要な重合度である。n個のR1またはR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、式中には、エステル結合残基に代えて、ウレタン結合残基および/またはカーボネート結合残基を重量平均分子量の5%まで含有することができる。)
また、第2の要旨として、当該フィルムは延伸温度70〜95℃で、少なくとも一軸方向に延伸倍率2.5〜6.0で延伸されたフィルムまたはシートであることで上記課題を解決した。
【0012】
加えて当該フィルムまたはシートのヘーズが10%以下であることが重要となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
【0014】
この発明にかかる包装用ポリ乳酸系フィルムまたはシート(以下「シート状物」とすることもある)は、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性樹脂組成物から成形されるシート状物である。
【0015】
上記生分解性樹脂組成物は、生分解性、すなわち最終的に微生物によって分解される重合体をいう。
【0016】
上記ポリ乳酸系重合体とは、乳酸、具体的にはD−乳酸又はL−乳酸の単独重合体又はそれらの共重合体をいう。すなわち、構成単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)がある。また、これらの混合体も含まれる。
【0017】
上記ポリ乳酸系重合体は、縮重合法、開環重合法等、公知の方法で製造することができる。例えば、縮重合法では、D−乳酸、L−乳酸又はこれらの混合物を直接脱水宿重合して任意の組成を持つポリ乳酸が得られる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合して任意の組成を持つポリ乳酸が得られる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるLーラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性を持つポリ乳酸系重合体を得ることができる。
【0018】
上記生分解性脂肪族ポリエステルは、上記ポリ乳酸系重合体を除く、生分解性を有する脂肪族ポリエステルである。この生分解性脂肪族ポリエステルは、ガラス転移点(以下、「Tg」と略する。)が0℃以下であることが好ましい。
【0019】
Tgが高すぎる場合は耐破断性が低く、シート状物の引張り試験を行っても、伸びが10%を越えることはない。耐破断性に優れるということは、衝撃を受けても容易に破断しないことであり、これはシート状物の引張り試験での伸びで代用できる。伸びが10%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは伸びがおよそ100%以上あることが重要で、これを実現させるためには配合する脂肪族ポリエステルの(配合量にもよるが)Tgが0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下であり、混合する量もポリ乳酸系重合体100重量部に10重量部〜100重量部、好ましくは20〜60重量部である。
【0020】
一方、混合する脂肪族ポリエステルが多くなると、室温下で使用者が意図せずフィルムが徐々に収縮する、いわゆる自然収縮がおこり、使用前シート状物の平面性が失われることがあるので好ましくない。さらに、シート状物の透明性も低下する。特に配合量が50重量部をこえると収縮ラベル用としての透明性が確保できなくなる。
【0021】
また、シート状物の透明性を左右する重要な要素が他にある。すなわち、可能なかぎりの透明な脂肪族ポリエステルを使用して、ポリ乳酸系重合体に混合することである。あてはまる脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステル等がある。この内、最も透明性に優れるものは脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールを縮合して得られる脂肪族ポリエステルである。
【0022】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が例としてあげられ、また、上記脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。これらの任意の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをエステル化することにより、上記脂肪族ポリエステルが製造される。ここで、上記ジカルボン酸とジオールの選択は重要である。Tgが0℃以下の脂肪族ポリエステルでは結晶化がおこり、特に高結晶性になると球晶となり光の乱反射を起こして失透する。シート状物を透明にするためには結晶を低めることであり、その目安は脂肪族ポリエステルを昇温したときの融解熱量ΔHmが55J/g以下であることである。ΔHmが55J/gを越えると脂肪族ポリエステルは不透明となり、ポリ乳酸に混合しても、ラベルとして使用可能な程度の透明感は得られない。上記ジカルボン酸とジオールの好ましい組み合わせは、ジカルボン酸成分にコハク酸およびアジピン酸を使用し、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールと縮重合したものである。特に、結晶性ならびにTgを低めたい場合は後者にすることがより好ましい。
【0023】
上記、各種重合工程において、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ジフェニル化合物、酸無水物などを使用できる。上記のポリ乳酸系重合体又は生分解性脂肪族ポリエステルの重量平均分子量の好ましい範囲としては6万〜100万であり、6万を下回ると得られたシート状物の物性は低く、100万を越えると成形加工性に劣る。
【0024】
ここで、重量平均分子量に依存する溶融粘度について言及する。溶融粘度とは樹脂を加熱して溶融させ、流動状態であるときの粘度のことを言う。溶融粘度の測定法にはいくつかあるが、ここでは(JIS K 7199)に記載されている「熱可塑性プラスチックのキャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法」によって求められる「見かけのせん断粘度」で表す。これは、溶融樹脂を細い円管内をとおす時のせん断速度とせん断応力から算出される数値で、一般的にはせん断速度との対比で表される。本発明では、混合するポリ乳酸系重合体の溶融粘度(見かけのせん断粘度)と脂肪族ポリエステルの溶融粘度(見かけのせん断粘度)の差異によってシート状物の透明性が著しく異なることを見出し、透明なシート状物を得る時の関係を導き、完成させた。
【0025】
すなわち、見かけのせん断速度が102(1/sec)のときのポリ乳酸系重合体および脂肪族ポリエステルの見かけの溶融粘度をそれぞれSVa、SVbとすると、その関係が
1≦(SVa/SVb)≦2
のときシート状物の透明性が向上する。特に収縮ラベルとして一般的に使用されるに最も厚い方である100μmでさえシート状物のヘーズを10%以下にすることができる。収縮ラベルの好ましいヘーズは10%以下であり、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。かかる範囲で鋭意検討すれば、このような範囲に収めることができる。
【0026】
上記の(SVa/SVb)が1を下回っても、あるいは2を上回っても透明なフィルムを得ることはできなくなる。透明なシート状物を達成するためには使用するポリ乳酸系重合体に応じて、上記式を満足するような溶融粘度をもつ脂肪族ポリエステルを選択しなければならない。
【0027】
さらに本発明の最も重要な点は、上記シート状物の片面もしくは両表面上に、上記シート状物の構成成分であるポリ乳酸系重合体のスキン層を設けたことにある。上記シート状物を構成するポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルは延伸時の変形挙動が異なるので、表面あれを起こす。ヘーズは、下記▲2▼式
【数1】
ヘーズ(%)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100 …▲2▼
で求められる。含まれる脂肪族ポリエステルの量が多いほど表面あれは起りやすく、透過光の拡散が起るためヘーズが上昇し、透明感が低下する。
【0028】
このシート状物表面上の透過光の拡散を抑制する方法は、表面あれを抑えることであり、透明性の高いポリ乳酸系重合体を積層することにより解決され、積層しないときのシート状物に比較して、よりいっそうの透明性をシート状物に与えることになる。
【0029】
スキン層は少なくとも表面あれの凸凹の大きさよりも上回る程度の厚みを設けることが必要であり、具体的には1μm以上、好ましくは2μm以上設ける。上限は特に限定しないが、シート状物の厚み構成比上スキン層が厚くなりすぎると脂肪族ポリエステルを混合した効果が薄れることになり、耐破断性が低下する。50μm厚のシート状物ではスキン層の厚みを2〜10μm程度に設定することが好ましい。スキン層はシート状物の片面のみに設けてもシート状物全体のヘーズを低下させる効果があるが、好ましくは両表層に設ける方がよい。
【0030】
上記シート状物とは、シート又はフィルムをいう。JISにおける定義上、シートとは、薄く、一般にその厚さが長さと幅の割りには小さな平らな製品をいい、フィルムとは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K 6900)。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえる。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、明確に区別しにくいので、本願においては、上記のとおり、シートとフィルムの両方を含んだ概念として「シート状物」の用語を使用する。
【0031】
上記ポリ乳酸系重合体のL乳酸とD乳酸の構成割合が100:0〜92:8または0:100〜8:92がよく、98:2〜94:6または6:94〜2:98が好ましい。上記の範囲を外れると、延伸時に厚みのバラツキが生じやすく、奇麗に印刷できなかったりする。また、シート状物の延伸倍率は、少なくとも一軸方向の延伸倍率2.5〜6.0に延伸することがよく、3.0〜5.0倍が好ましい。この範囲外ではフィルムの厚みムラが生じやすくなる。
【0032】
得られるシート状物の収縮率は、80℃、10秒間において、10%以上であることがよく、20〜100%が好ましい。収縮率が10%未満であると、収縮包装や収縮結束包装に使用するためには、不十分となりやすいからである。一般的に、収縮包装や収縮結束包装には、上記ポリ乳酸系収縮シート状物の収縮率は、10%程度でよく、ペットボトル等のラベル等の場合には、30%以上の収縮率がよい。
【0033】
次に、この発明にかかる包装用ポリ乳酸系収縮シート状物の製膜方法について説明する。ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルの混合は、同一の押出機にそれぞれの原料を投入して行う。そのまま口金より押出して直接シート状物を作製する方法、あるいはストランド形状に押し出してペレットを作製し、再度押出機にてシート状物を製造する方法がある。いずれも、分解による分子量の低下を考慮しなければならないが、均一に混合させるには後者を選択する方がよい。ポリ乳酸系重合体および脂肪族ポリエステルを充分に乾燥し、水分を除去した後押出機で溶融する。ポリ乳酸系重合体は、L−乳酸構造とD−乳酸構造の組成比によって融点が変化することや、脂肪族ポリエステルの融点と混合の割合を考慮して、適宜溶融押出温度を選択する。実際には100〜250℃の温度範囲が通常選ばれる。
【0034】
これらの混合物には、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加することもできる。
【0035】
積層方法としては、通常に用いられる方法を採用することができる。例えば複数の押出機からフィードブロック式あるいはマルチマニホールド式にひとつの口金に連結するいわゆる共押出をする方法、巻き出した混合フィルムの表面上に別種のシート状物をロールやプレス板を用いて加熱圧着する方法がある。
【0036】
シート状に溶融成形された生分解性樹脂組成物は、回転するキャスティングドラム(冷却ドラム)に接触させて急冷するのが好ましい。混合するポリマーの性質と割合もよるがキャスティングドラムの温度は60℃以下が適当である。これより高いとポリマーがキャティングドラムに粘着し、引き取れない場合が生じる。また、ポリ乳酸部分の結晶化が促進されて、延伸できなくなるため、60℃以下に設定して急冷し、ポリ乳酸部分を実質上非晶性にすることが好ましい。
【0037】
得られたシート状物は少なくとも一方向に延伸される。シート状物の延伸倍率は、例えば、横(幅)方向の延伸倍率は2.5〜6倍の範囲で、縦(長手)方向の延伸倍率を1〜3倍の範囲で、延伸温度は70〜95℃の範囲で適宜選択することができる。延伸工程はシート状物を周速差のある2個のロール間で延伸するロール延伸および/または、テンターを用いクリップでシート状物を把持しながらクリップ列の列間隔を拡大させて延伸するテンター延伸によって行われる。二軸延伸する場合においては、特に限定されるものではなく、同時あるいは逐次延伸法、どちらでも構わない。
【0038】
この発明によって得られるポリ乳酸系収縮シート状物は、包装材や収縮ラベル材として使用することができる。この包装材や収縮ラベル材が使用される被包装物としては、容器、生鮮食品等の食品等があげられる。上記容器としては、ガラス瓶、ガラス容器、硬質プラスチック容器等の硬度の高い容器、又は、紙や、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックから成形される容器等があげられる。これらの容器は食品用、飲料用、薬品用等任意の用途に使用されるものである。
【0039】
上記被包装物は、上記包装材によって、収縮包装又は収縮結束包装される。このとき、上記包装材がポリ乳酸系収縮シート状物が充分な収縮率を有し、延伸時の厚みムラがないので、収縮包装したときの仕上りがよく、包装されて状態において見栄えがよい。さらに、包装後に、加熱処理を行っても、包装材が互いに融着しないので、取り扱いが容易となる。また、上記ポリ乳酸系収縮シート状物は、透明性に優れ、シート状物の裏面に印刷した後、表面から読み取る際に印刷文字・図柄の鮮明さに優れている。被包装材に収縮させて密着させることにより、ラベルとして効果よく使用することができる。
【0040】
この積層延伸フィルムの製造方法としては、Tダイ、Iダイ、丸ダイ等から押し出ししたシート状物または円筒状物を冷却キャストロールや水、圧空等により急冷し非結晶に近い状態で固化させた後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により1軸もしくは2軸に延伸する方法が挙げられる。通常1軸延伸フィルムの製造においてはテンター法が、2軸延伸フィルムの製造においては縦延伸をロール法で、横延伸をテンター法で行う逐次2軸延伸法、また縦横同時にテンターで延伸する同時2軸延伸法が一般的である
【0041】
【実施例】
評価方法
・見かけの溶融粘度(SVa、SVb)
(JIS K7199)に基づいて測定した。測定装置内にサンプルを挿入し、測定温度200℃で加熱して溶融させた。このときの加熱時間は5分間とした。
【0042】
・結晶化融解熱量△Hm
パーキンエルマー製DSC−7を用い、(JIS K 7122)に基づいて、融解熱を測定した。すなわち、フィルムからの試験片10mgを、標準状態で状態調節を行った後、窒素ガス流量25ml/分、加熱温度10℃/分で200℃まで昇温する間に描かれるDSC曲線から、吸熱ピーク面積を読みとり△Hm(J/g)とした。
【0043】
・ヘーズ
(JIS K 7105)に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を求め、以下の▲2▼式で算出した。
【0044】
【数1】
ヘーズ(%)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100 …▲2▼
・耐破断性
(JIS K 7127)に基づいて、引張り試験を行い、そのときのシート状物の伸びを測定し、耐破断性の代用評価とした。試験条件は2号試験片、引張り速度200mm/minで5回測定し、その平均値を求めた。シート状物の伸びが低いものは耐破断性が低く、伸びが高ければ耐破断性が高いことを示す。伸びが50%以上のものは良好な結果で○と表記した。また、これ未満で10%以上のものはやや良好で△、10%未満のものは不適として×と表記した。
【0045】
なお「伸び」は、以下▲3▼式で表される。
【0046】
【数2】
・収縮率
シート状サンプルを、試験方向を長手として長さ140mm、幅は10mmに切り出し、その試験方向に長さ100mm間の評線を入れ、80℃の温水バスに10秒間浸漬した後、その評線間の寸法を計り、▲4▼式にしたがって熱収縮率を算出した。
【0047】
【数3】
・厚みのバラツキ
得られたシート状物を幅方向に、等間隔で10点、長さ方向には500mm間隔で20点の合計200点の厚みをダイヤルゲージで測定し、その厚みの平均値(X)と標準偏差(σ)を求め、(3σ/X)×100(%)を求めた。この値が15%を未満のものは良好な厚みをもつものとして(○)と表記し、15%以上のものは(×)と表記した。
【0048】
実施例1
L−乳酸:D−乳酸=99.5:0.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃、融点175℃のポリ乳酸重合体100重量部と、ガラス転移点(Tg)が−45℃で、融点94℃の生分解性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/アジペート10重量部を各々乾燥した後、混合して溶融押出しにてペレット形状にした。得られたペレットから40mmφ単軸押出機にて、210℃でマルチマニホールド式の口金より中間層として押出し、また、上記ポリ乳酸系重合体100重量部に乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ0.1重量部混合して25mmφの同方向二軸押出機にて上記口金より表裏層として210℃で押出した。この共押出シートを約43℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に65℃で1.02倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターで延伸した。テンターでの熱処理ゾーンの温度は50℃と一定にし、実質熱固定しないシート状物を製造した。シート状物の延伸温度、延伸倍率は表2のとおりで、実質幅方向に延伸した一軸延伸フィルムである。フィルムの厚みはおおよそ平均が50μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。ライン速度はおよそ6〜17m/min、得られたフィルムの幅も幅方向の延伸倍率によって異なりフィルムの両耳約100mmずつ落として300mm幅から1200mm程度までのフィルムを得た。
【0049】
実施例2〜5、比較例3〜7
表2に示すポリ乳酸系重合体及び生分解性脂肪族ポリエステルを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系積層収縮シート状物を得た。シート状物の厚みはおおよそ平均が40〜60μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。使用した樹脂の詳細については表1に示す。なお、実施例5で使用したポリ乳酸を無乾燥状態で220℃で溶融させ、押出しペレット化することで分子量を低下させることで得たポリ乳酸を使用している。脂肪族ポリエステルとの混合は、乾燥状態で実施例1と同様に行った。
【0050】
比較例1、2
実施例2において、脂肪族ポリエステルを配合しない単層シート状物、また配合した場合の単層シート状物について比較例1、2に記す。単層用の口金を使用し、40mmφ単軸押出機のみを使用して、あとは実施例2と同様にしてシート状物を作製した。
【0051】
得られたポリ乳酸系収縮シート状物の透明性、耐衝撃性(耐破断性)、厚みバラツキを測定した。その結果を表2に示す。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、十分な収縮率を有し、耐衝撃性(耐破断性)そして特に透明性に優れ、延伸時の厚みムラのない生分解可能な包装用ポリ乳酸系収縮シート状物を提供することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
Claims (3)
- D乳酸とL乳酸の構成割合が100:0〜92:8または0:100〜8:92であるポリ乳酸系重合体(A)100重量部に対し下記一般式<1>であらわされる脂肪族ポリエステル(B)10〜60重量部の混合体であり、
かつ、(1)脂肪族ポリエステル(B)の結晶融解熱量ΔHmが55J/g以下であり、
(2)見かけのせん断速度が102(1/sec)のときの上記重合体AおよびBの見かけの溶融粘度をそれぞれSVa、SVbとすると、その関係が
1≦(SVa/SVb)≦2
であるプラスチック材料を成形してなるフィルムまたはシートであり、
(3)ポリ乳酸系重合体(A)を主成分とするスキン層を上記フィルムまたはシートの両表層に設け、
(4)少なくとも、一軸方向の熱収縮率が80℃/10秒での温水中で10%以上であり、
かつ、(5)ヘーズが10%以下であることを特徴とする熱収縮フィルムまたはシート。
- 延伸温度70〜95℃で、少なくとも一軸方向に延伸倍率2.5〜6.0で延伸されたことを特徴とする請求項1記載の熱収縮フィルムまたはシート。
- 上記ポリ乳酸系重合体(A)のD乳酸とL乳酸の構成割合が98:2〜94:6または2:98〜6:94である請求項1又は2に記載の熱収縮フィルムまたはシート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33565999A JP3670913B2 (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | ポリ乳酸系収縮フィルムまたはシート |
Applications Claiming Priority (1)
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JP33565999A JP3670913B2 (ja) | 1999-11-26 | 1999-11-26 | ポリ乳酸系収縮フィルムまたはシート |
Publications (2)
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