JP3669305B2 - 燃料蒸気ガス処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料蒸気ガス処理装置、特に故障診断装置を備えた燃料蒸気ガス処理装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば特開平07−317611号公報に記載の燃料蒸気ガス処理装置がある。これは、燃料タンクとキャニスタとを連通するエバポ通路の途中に絶対圧センサを設置し、また基準圧として大気圧を測定することで、基準圧とエバポ通路内の圧力との差圧に基づいて燃料蒸気ガス処理装置内の故障診断を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記燃料蒸気ガス処理装置には絶対圧センサと大気圧センサの2つのセンサを設置する必要があり、コスト高を招いていた。
【0004】
大気圧センサを廃止した場合には、内燃機関の始動によってインテークマニホールド内の負圧によって燃料ガス蒸気処理装置内に圧力変動が生じることになるが、その際に絶対圧センサが検出する圧力値が正常値であるのか、またはキャニスタに備えられたドレンカットバルブが閉状態で固着した場合の圧力値であるのかの判別ができないと言う問題がある。
【0005】
また、エンジン始動後に基準圧を計測しようとしても、ドレンカットバルブが閉状態で故障した場合には前述のようにインテークマニホールド内の負圧によってパージ配管内には負圧が生じており、基準圧を設定することができない。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決するドレンカットバルブの故障を診断する燃料蒸気ガス処理装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、燃料タンクと、前記燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着するキャニスタと、前記キャニスタへの空気の導入を制御するドレンカットバルブと、前記キャニスタとキャニスタからの蒸発燃料が流入する吸気通路との途中に配置されるパージバルブと、前記燃料タンクとキャニスタとを連通する第1の配管と、前記キャニスタとパージバルブとを連通する第2の配管と、前記パージバルブと吸気通路とを連通する第3の配管と、前記第1または第2の配管内の絶対圧を検出するセンサとからなる燃料蒸気ガス処理装置において、前記ドレンカットバルブの故障診断に適用する基準圧を前記パージバルブが閉じた状態で設定し、この基準圧とパージ開始後に前記センサが検出した配管内の絶対圧との差圧を求め、この差圧から前記ドレンカットバルブの故障を判断する故障診断装置を備える。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記基準圧は、前記吸気通路へのパージ開始直前の前記センサが検出する通路内の絶対圧から設定される。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記故障診断装置は、前記基準圧とパージ開始後に前記センサが検出した配管内の絶対圧との差圧を求め、この差圧から前記ドレンカットバルブの故障を判断する。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記基準圧が設定された後、所定時間内に前記差圧が算定される。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、吸気通路へのパージが中断されているとともに、ドレンカットバルブの開状態が所定時間以上の場合に、基準圧を順次書き換える。
【0012】
第5の発明は、第3の発明において、吸気通路へのパージが中断されているとともに、ドレンカットバルブの開状態が所定時間より短い場合に、基準圧を維持する。
【0013】
【発明の効果】
第1と2の発明では、前記ドレンカットバルブの故障診断に適用する基準圧を前記パージバルブが閉じた状態、つまり前記吸気通路へのパージ開始直前の前記センサが検出する通路内絶対圧から設定するので、大気圧センサを用いることなく基準圧を設定することが確実かつ正確にできる。
【0014】
また、基準圧とパージ開始後の配管内の絶対圧との差圧を求め、この差圧から前記パージバルブの故障を判断することで、パージ経路中に1つ設置した絶対圧センサのみで、ドレンカットバルブの故障を診断することができる。
【0015】
第3の発明では、前記基準圧が設定された後、所定時間内に前記差圧が算定されるので、車両の移動に伴う大気圧の変動に伴う基準圧の変化による故障診断の誤診断を防止することができる。
【0016】
第4の発明では、吸気通路へのパージが中断されているとともに、ドレンカットバルブの開状態が所定時間以上の場合に、基準圧を順次書き換えるので、故障診断の頻度を向上することができる。
【0017】
第5の発明では、吸気通路へのパージが中断されているとともに、ドレンカットバルブの開状態が所定時間より短い場合に、基準圧を維持するので、故障診断の頻度を向上し、精度を高めることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は燃料蒸発ガス処理装置の構成を示している。
【0019】
燃料蒸発ガス処理装置は、エンジン1の燃料タンク2内で発生する蒸発燃料を処理するためのものであり、燃料吸着剤(活性炭)を内蔵したキャニスタ3と、キャニスタ3と燃料タンク2をつなぐ第1パージ配管4と、キャニスタ3とエンジン1のスロットルバルブ5下流の吸気通路6をつなぐ第2、第3パージ配管7a、7bとを備える。
【0020】
第2、第3パージ配管7a、7bの間には、パージ配管7a、7bを開閉するパージバルブ8と、燃料タンク2とパージバルブ8の間にパージ配管内の圧力(絶対圧)および後述するように大気圧(絶対圧)を測定する絶対圧センサ9が設けられる。なお絶対圧センサ9は第1パージ配管4に設置してもよい。
【0021】
キャニスタ3には大気開放口10が備えられ、大気開放口10には大気開放口10を閉じるドレンカットバルブ11が設けられる。
【0022】
燃料タンク2内で発生した蒸発燃料は、第1パージ配管4を介してキャニスタ3に導かれ、燃料成分だけがキャニスタ3内の活性炭に吸着され、残りの空気は大気開放口10より外部に放出される。そして、活性炭に吸着された燃料を処理するには、パージバルブ8を開き、スロットルバルブ5下流の吸入負圧を利用して大気開放口10からキャニスタ3内に新気を導入する。この新気によって活性炭に吸着されていた燃料が離脱し、新気と共に第2、第3パージ配管7a、7bを介してエンジン1の吸気通路6内に導入される。
【0023】
絶対圧センサ9が検出した圧力値は、コントローラ(故障診断装置)15に出力される。
【0024】
コントローラ15は、エンジンの運転条件を検出する各種センサ(図示しない)、車速センサ16、燃料温度センサ17等からのエンジンの回転数、吸入空気量、スロットル開度、冷却水温、吸入空気温度、車速、燃料温度および燃料噴射量等に基づき、所定の運転域(定常走行時等)にパージバルブ8を開くと共に、パージバルブ8の開度を制御するパージ制御(通常パージ処理)を行う。
【0025】
一方、コントローラ15は、エンジンの回転数、吸入空気量、スロットル開度、冷却水温、吸入空気温度、車速、燃料温度、燃料噴射量および大気圧(絶対圧センサ9による)等に基づき、燃料タンク2からパージバルブ8間の系20のリーク診断の許可条件を判定して、許可の場合にリーク診断を行う。
【0026】
コントローラ15には、さらに吸気通路6内のブースト圧の出力信号、イグニッションスイッチのオンオフ信号、スタータモータを起動するスタータスイッチのオンオフ信号、バッテリ電圧信号、さらにエンジン回転数信号等が入力される。これらの入力値に基づいて、ドレンカットバルブ11の故障診断を行う。
【0027】
次に図2に示すフローチャートを用いて、コントローラ15が行うドレンカットバルブ11の故障診断について説明する。
【0028】
コントローラ15で実施される制御は、一定間隔、例えば10msecごとに行われるものである。
【0029】
ステップ101では、ドレンカットバルブ11の開閉状態を判断する。フラグが1であれば閉状態であり、0であれば開状態と判断する。初期状態ではフラグは0と設定する。開状態であればステップ102に進み、閉状態であれば、ステップ103に進む。
【0030】
ステップ103でドレンカットバルブ11が閉じているので故障診断を中止するため、基準圧(大気圧)としての絶対圧センサ9の電圧VSを維持し、続くステップ104で、基準圧設定後の時間をカウントするタイマの経過時間TSを初期化して制御を終了する。なお、基準圧に相当する絶対圧センサ9の電圧VSの初期値は予めコントローラ15に記憶しておく。
【0031】
ステップ102ではパージの実施状態を判断するため、パージバルブ8の開閉状態を判断し、閉じている場合(キャニスタ3から蒸発燃料が吸気通路6に導入されていないパージカット状態の場合)にステップ105に進み、基準圧設定後の経過時間TSが0(ゼロ)かどうか判断する。0でない、基準圧設定から時間が経過している場合にはステップ106で、タイマの経過時間TSが所定時間TD(150sec)より短いかどうかを判断し、短い場合にステップ107で絶対圧センサ9の電圧VSを維持し、基準圧設定後の経過時間TSをインクリメントして制御を終了する(ステップ108)。このようにパージカット状態が所定時間TDより短い場合には、基準圧を保持し、その保持時間は車速や道路勾配によって定められ、例えば、車速150km/h以上で150secである。経過時間TSが所定時間TDより短い場合にステップ107で絶対圧センサ9の電圧VSを維持することで、故障診断の頻度を向上し、精度を高めることが可能となる。
【0032】
ステップ105で基準圧設定後の経過時間TSが0の場合、ステップ109に進み、基準圧に相当する電圧VSとして、最新の絶対圧センサ9が検出した電圧VAを用いる。またステップ106で経過時間TSが所定時間TD以上経過している場合には、ステップ109に進み、基準圧に相当する電圧VSとして、最新の絶対圧センサ9が検出した電圧VAを用いる。このように経過時間TSが所定時間TDより長い場合には、大気圧の変化による誤診断を起こす恐れがあり、続くステップ110で経過時間TSを0に保持して制御を終了する。
【0033】
このようにパージカット状態で、基準圧の経過時間が条件を満たしていない場合には基準圧VSを検出した圧力VAに書き換える(ステップS109)ことで大気圧変化による誤診断を防止することができる。
【0034】
ステップ102でパージバルブ8が開状態である場合(キャニスタ3から蒸発燃料が吸気通路6に導入されるパージ状態の場合)には、ステップ111に進み、経過時間TSが所定時間TD(例えば、150secの時間)より短いかどうかを判断し、経過時間TSが所定時間TD以上経過している場合には、ステップ113に進み、大気圧の変化による誤診断が起こる恐れがあり、診断を中止し、基準圧に相当する電圧VSを保持する。続くステップ114で経過時間TSをインクリメントして制御を終了する。パージ状態で、基準圧の経過時間TSが条件を満たしていない場合、つまり時間が経過しすぎた場合には、大気圧の変化に伴う誤診断が考えられるので故障診断を中止し、時間をインクリメントするのみとする。
【0035】
経過時間TSが所定時間TDより短い場合に故障診断に進み、ステップ112で絶対圧センサ9の電圧VSを維持し、基準圧設定後の経過時間TSをインクリメントする(ステップ115)。
【0036】
続くステップ116では、基準圧に相当する電圧VSと絶対圧センサ9が検出した電圧VAとの差を求め、この電圧差を所定電圧VTと比較する。または基準圧に相当する電圧VSと絶対圧センサ9が検出した電圧VAとの差を圧力に換算し、この圧力PQを所定圧PTと比較してもよい。圧力PQが所定圧PT(例えば、−70mmHg程度)より小さいときにはドレンカットバルブ11が正常に開いているとして制御を終了し、圧力PQが所定圧PT以上のときにはステップ117に進んで、ドレンカットバルブ11が閉状態で固着していると判断し、パージバルブ8を閉じるとともに、異常をドライバー等に警告する。
【0037】
図3に示すタイミングチャートは、各構成の作動状態を時系列に示したものである。
【0038】
時刻t0に代表される初期状態について説明すると、この状態ではまだキャニスタ3から蒸発燃料は吸気通路6に導入されておらず(パージカット状態)、つまりパージバルブ8が閉じており、基準圧と判定圧との差圧も略0となる(正確にはドレンカットバルブ11が正常状態(全開状態)であっても、図示したように−10mmHg程度の差圧は生じるものである)。なおこの状態では通常、ドレンカットバルブ11は正常時には開状態(点線で示す)であるが、説明のため、異常状態、つまり閉状態に固着しているとする(実線で示す)。
【0039】
時刻t1でパージバルブ8が開き(ステップ102)、キャニスタ3から蒸発燃料が吸気通路に導入される。パージが開始されるとともに、パージ配管内の圧力が低下し、差圧は徐々に大きくなり、時刻t2までに所定圧PT(例えば、−70mmHg)に達した場合(ステップ116)、ドレンカットバルブ11が閉状態に固着した異常状態と判断する(ステップ117)。異常が判断された場合にはパージバルブ8を閉じてパージを終了する。
【0040】
基準圧は時刻t1の直前、つまりパージ開始直前に検出されることで確実に精度よく基準圧(=大気圧)を設定することができる。
【0041】
時刻t2でパージバルブ8を閉じないと破線で示すように差圧がさらに大きくなり−500mmHg程度になる。
【0042】
したがって、燃料蒸発ガス処理装置に1つの絶対圧センサ9を設けるのみで、大気圧センサを用いることなく、ドレンカットバルブ11の故障診断を行うことができ、大気圧センサを廃し、コストダウンを図ることができる。
【0043】
また、基準圧を設定後、所定圧に達するまでの所定時間TDを設定したことで、車両の移動等に伴う基準圧(大気圧)変化による差圧の変化を抑制し、誤診断を防止することができる、
次にドレンカットバルブ11の異常診断後に行われる燃料タンク2からパージバルブ8までの経路中のリーク診断について説明する。
【0044】
このコントローラ15のリーク診断の制御内容を図4〜図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0045】
図4のように、ステップ1にて、リーク診断の許可条件が成立しているかどうかを見る。これは、パージバルブ8を閉じる所定の運転域にあり、冷却水温、吸入空気温度、燃料温度、大気圧等が所定範囲にあり、かつその他の診断において異常がないときに、許可条件成立とする。
【0046】
リーク診断の許可条件が成立した場合、ステップ2に進み、リーク診断前の大気圧1を測定する診断前大気圧計測処理を行う。
【0047】
診断前大気圧計測処理は、図5のように、ステップ21にてドレンカットバルブ11が開状態にあるか否か、ステップ22にてパージバルブ8が閉状態にあるか否かを見る。
【0048】
ドレンカットバルブ11が開状態にあり、パージバルブ8が閉状態にあれば、ステップ23にてそのときの絶対圧センサ9の出力値を大気圧として読み込む。
【0049】
即ち、パージ制御を行なっているときは、ドレンカットバルブ11は開状態にあり、運転条件等に応じてパージバルブ8の開度操作を行うため、絶対圧センサ9が配置されている配管7内の圧力は導入されるエンジンの吸入負圧によって負圧になっているが、この状態からパージバルブ8を閉じると、エンジンの吸入負圧が遮断されて配管7内は大気圧となり、これによって絶対圧センサ9によりリーク診断前の大気圧1が検出される。
【0050】
次に、ステップ3に進み、ドレンカットバルブ11を閉じて、パージバルブ8を開いてエンジンの吸入負圧によって系20内の圧力を所定負圧に減圧(プルダウン)する減圧処理を行う。
【0051】
この減圧処理を終えると、ステップ4に進み、パージバルブ8を閉じて系20を閉塞して、絶対圧センサ9により系20内の圧力変化を検出するリークダウン処理(リーク診断)を行う。
【0052】
このリーク診断では、系20内の圧力が一定時間でどの程度増加するかを測定する。
【0053】
このリーク診断を終えると、ステップ5からステップ6に進み、ドレンカットバルブ11を開状態にして、リーク診断後の大気圧2を測定する診断後大気圧計測処理を行う。
【0054】
診断後大気圧計測処理は、図6のように、ステップ31にてパージバルブ8が閉状態にあるか否か、ステップ32にてドレンカットバルブ11が開状態にあるか否かを見る。
【0055】
パージバルブ8が閉状態にないあるいはドレンカットバルブ11が開状態にない場合は、ステップ34にて時間を計測するタイマをクリアする。
【0056】
パージバルブ8が閉状態にあり、ドレンカットバルブ11が開状態にあれば、ステップ33にてこの状態を継続している時間をタイマによりカウントして、ステップ35に進む。
【0057】
ステップ35では、タイマにより所定時間をカウントすると、つまりパージバルブ8が閉、ドレンカットバルブ11が開の状態のまま所定時間経過すると、ステップ36にてそのときの絶対圧センサ9の出力値を大気圧として読み込む。
【0058】
即ち、リーク診断後、ドレンカットバルブ11を開くことで、絶対圧センサ9が配置されている配管7内に大気が流入し、パージバルブ8が閉、ドレンカットバルブ11が開の状態を所定時間継続すると、配管7内が大気圧となり、これによって絶対圧センサ9によりリーク診断後の大気圧2が検出される。
【0059】
次に、ステップ7に進み、リーク診断前の大気圧1とリーク診断後の大気圧2との差から大気圧の変化を演算する。
【0060】
そして、ステップ8では大気圧の変化を所定のしきい値と比較して、大気圧の変化がしきい値以下であれば、ステップ9にてリーク判定を行う。
【0061】
リーク判定では、ステップ4で測定したデータ(系20内の圧力の一定時間における増加度)を所定値と比較して、所定値以下のときは正常、所定値を超えたときは異常と判定する。
【0062】
一方、大気圧の変化がしきい値を超えたときは、ステップ10にてリーク判定を禁止つまりステップ4で測定したデータをキャンセルする。
【0063】
図7、図8に、このリーク診断制御のタイミングチャートを示す。図7は、大気圧の変化がないときのもので、リーク診断にて、リークが無い場合は系20内(燃料タンク2内)の圧力は変わらないが、系20内の圧力の一定時間における増加度が所定値を超えた場合、異常(リーク有り)と判定する。図8は、リーク診断の前後に大気圧が変化したときのもので、大気圧の変化が所定値を超えた場合、リーク判定を禁止する。
【0064】
このように、系20に1つの絶対圧センサ9を配置して、系20内の圧力状態と大気圧とを検出することができるのであり、複数の圧力センサを備えずにすみ、コストを低減できる。
【0065】
また、ドレンカットバルブ11が開、パージバルブ8が閉の状態のときに大気圧を検出するので、大気圧を精度良く検出できると共に、1つの絶対圧センサ9で系20内の圧力状態と大気圧とを検出する構成によって、診断装置の構造が複雑になることはなく、コストを一層低減できる。
【0066】
一方、リーク診断制御において、リーク診断の前後に、絶対圧センサ9により大気圧を検出して、大気圧の変化が所定値を超えた場合、リーク判定を禁止するので、大気圧の変化を確実に検出でき、リーク診断を誤診断することを防止できる。
【0067】
リーク診断を開始した後、例えば車両の登坂走行等によって大気圧が下降した場合、図8のように系20内の圧力と大気圧との相対圧が小さくなるため、リークが有っても、系20内の圧力の増加度は小さくなってしまうが、大気圧が所定値を超えて変化た場合、リーク判定を禁止するので、誤診断を防止できる。
【0068】
また、リーク診断を終えた場合、パージバルブ8を閉状態のままドレンカットバルブ11を開いた直後は、系20内に負圧が残っているが、ドレンカットバルブ11を開いて所定時間経過したときに、リーク診断後の大気圧を検出するため、大気圧の変化を一層確実に検出できる。
【0069】
なお、リーク診断に入る前は、パージバルブ8を閉じて所定時間経過したときに、リーク診断前の大気圧を検出するようにできる。
【0070】
図9は本発明の第3の実施の形態を示す。これは、絶対圧センサ9により大気圧を検出する代わりに、車速と、道路の勾配とにより、大気圧の変化を推定するものである。
【0071】
リーク診断の許可条件が成立すると、スタートする。
【0072】
ステップ41では、車速を読み込む。
【0073】
ステップ42では、道路の勾配を推定する。これは、予め記憶した平地走行でのエンジン回転数とエンジン負荷(スロットル開度等)の状態に対して、現在のエンジン回転数とエンジン負荷(スロットル開度等)の状態を比較し、その大小およびその差で勾配を推定する。
【0074】
ステップ43では、車速に勾配推定値を掛けて時間当たりの高度変化率を求める。登り坂のときは勾配推定値、高度変化率は正、降り坂のときは勾配推定値、高度変化率は負とする。
【0075】
ステップ44では、高度変化率を演算タイミング毎に積算して、高度変化を得る。
【0076】
ステップ45では、高度変化に大気圧変化係数を乗じることで、大気圧変化を得る。大気圧変化係数は、例えば高度変化100m当たり、9mmHgとすればよい。
【0077】
ステップ46以降では、その大気圧変化に基づき、リーク診断のリーク判定、判定禁止を行う。
【0078】
このようにすれば、リーク診断前後の大気圧の変化の監視結果を待つ必要がなく、リアルタイムにリーク診断のキャンセルを行える。
【0079】
図10は本発明の第4の実施の形態を示す。これは、リーク診断中の系20内の圧力と、大気圧との差が、燃料タンク2のフィラーキャップ12に設けているリリーフ弁(図示しない)の開弁圧以上の場合、リーク判定を禁止するものである。
【0080】
ステップ51では、リークダウン処理(リーク診断)開始の判定を行なう。
【0081】
リークダウン処理を開始すると、ステップ52でリークダウン処理中の絶対圧センサ9による系20内の圧力の最小値をリークダウン中圧力として、メモリにストアする。
【0082】
リークダウン処理を終了すると、ステップ53からステップ54に進み、ドレンカットバルブ11を開状態にして、絶対圧センサ9によるリーク診断後の大気圧をメモリにストアする。
【0083】
ステップ55では、リーク診断後の大気圧とリークダウン中圧力との差(リークダウン中相対圧)を求める。
【0084】
そして、ステップ56では、リークダウン中相対圧を燃料タンク2のフィラーキャップ12に設けているリリーフ弁の開弁圧(しきい値)と比較して、リークダウン中相対圧がその開弁圧よりも小さければ、ステップ57にてリーク判定を行う。
【0085】
一方、リークダウン中相対圧がその開弁圧以上であれば、ステップ58にてリーク判定を禁止する。
【0086】
図11に、このリーク診断制御のタイミングチャートを示す。
【0087】
リーク診断を開始した後、例えば車両の降坂走行等によって大気圧が上昇した場合、系20内の圧力と大気圧との相対圧が大きくなると、リークが無くても、フィラーキャップ12のリリーフ弁が作動して系20内に大気が流入して、系20内の圧力が増加する可能性があるが、この場合、系20内の圧力と、大気圧との差が、フィラーキャップ12のリリーフ弁の開弁圧以上の場合、リーク判定を禁止するので、フィラーキャップ12のリリーフ弁の作動に起因する誤診断を防止できる。
【0088】
図12は本発明の第5の実施の形態を示す。これは、リーク診断開始時とリーク診断終了時に系20内の圧力を測定して、これらの圧力と、大気圧との差が、燃料タンク2のフィラーキャップ12のリリーフ弁の開弁圧以上の場合、リーク判定を禁止するものである。
【0089】
ステップ61では、リークダウン処理(リーク診断)開始の判定を行なう。
【0090】
リークダウン処理を開始すると、ステップ62で絶対圧センサ9による系20内の圧力をリークダウン開始圧として、メモリにストアする。
【0091】
ステップ63では、リークダウン時間を計測する。
【0092】
リークダウン時間が経過すると、ステップ64で絶対圧センサ9による系20内の圧力をリークダウン終了圧として、メモリにストアする。
【0093】
リークダウン処理を終了すると、ステップ65からステップ66に進み、ドレンカットバルブ11を開状態にして、絶対圧センサ9によるリーク診断後の大気圧をメモリにストアする。
【0094】
ステップ67では、リーク診断後の大気圧とリークダウン開始圧との差(リークダウン開始時相対圧)を求め、ステップ68では、リーク診断後の大気圧とリークダウン終了圧との差(リークダウン終了時相対圧)を求める。
【0095】
そして、ステップ69、70では、リークダウン開始時相対圧、リークダウン終了時相対圧を燃料タンク2のフィラーキャップ12のリリーフ弁の開弁圧(しきい値)と比較して、いずれもその開弁圧よりも小さければ、ステップ71にてリーク判定を行う。
【0096】
一方、リークダウン開始時相対圧、リークダウン終了時相対圧のいずれかがその開弁圧以上であれば、ステップ72にてリーク判定を禁止する。
【0097】
このようにすれば、前記第4の実施の形態のように系20内の圧力の最小値を検出する場合に比べて、圧力の測定を容易に行える。なお、リークダウン開始圧のみ検出して、用いるようにしても良い。
【0098】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料蒸発ガス処理装置の構成図である。
【図2】同じくパージバルブの故障を判定するための制御フローチャートである。
【図3】同じく本発明の各構成の作動状態を示すタイミングチャートである。
【図4】第2の実施の形態の制御フローチャートである。
【図5】第2の実施の形態の制御フローチャートである。
【図6】第2の実施の形態の制御フローチャートである。
【図7】同じくリーク診断制御のタイミングチャートである。
【図8】同じくリーク診断制御のタイミングチャートである。
【図9】第3の実施の形態の制御フローチャートである。
【図10】第4の実施の形態の制御フローチャートである。
【図11】同じくリーク診断制御のタイミングチャートである。
【図12】第5の実施の形態の制御フローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 燃料タンク
3 キャニスタ
4 配管
6 吸気通路
7 配管
8 パージバルブ
9 絶対圧センサ
10 大気開放口
11 ドレンカットバルブ
15 コントローラ
Claims (5)
- 燃料タンクと、
前記燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
前記キャニスタへの空気の導入を制御するドレンカットバルブと、
前記キャニスタとキャニスタからの蒸発燃料が流入する吸気通路との途中に配置されるパージバルブと、
前記燃料タンクとキャニスタとを連通する第1の配管と、
前記キャニスタとパージバルブとを連通する第2の配管と、
前記パージバルブと吸気通路とを連通する第3の配管と、
前記第1または第2の配管内の絶対圧を検出するセンサと
からなる燃料蒸気ガス処理装置において、
前記ドレンカットバルブの故障診断に適用する基準圧を前記パージバルブが閉じた状態で設定し、この基準圧とパージ開始後に前記センサが検出した配管内の絶対圧との差圧を求め、この差圧から前記ドレンカットバルブの故障を判断する故障診断装置を備えた
ことを特徴とする燃料蒸気ガス処理装置。 - 前記基準圧は、前記吸気通路へのパージ開始直前の前記センサが検出する通路内の絶対圧から設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸気ガス処理装置。 - 前記基準圧が設定された後、所定時間内に前記差圧が算定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料蒸気ガス処理装置。 - 吸気通路へのパージが中断されているとともに、ドレンカットバルブの開状態が所定時間以上の場合に、基準圧を順次書き換える
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料蒸気ガス処理装置。 - 吸気通路へのパージが中断されているとともに、ドレンカットバルブの開状態が所定時間より短い場合に、基準圧を維持する
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料蒸気ガス処理装置。
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