JP3669208B2 - ヌクレオチドブロックの製造方法、ヌクレオチドおよびヌクレオチドブロック - Google Patents
ヌクレオチドブロックの製造方法、ヌクレオチドおよびヌクレオチドブロック Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はヌクレオチドブロックの製造方法、ならびに該製造方法で作られた新規なヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックに関するものであり、該ヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックは、例えば、DNAオリゴマーの中間原料として有機合成化学、生化学および医薬産業上、有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
これまで、DNAオリゴマーの中間原料であるヌクレオチドブロックとしては、前記式(5)においてR1'およびR2'のいずれも水素原子で、n=0である化合物が知られており、この化合物を合成する方法として、前記式(1)においてR1'およびR2'のいずれも水素原子、n=0、Xがジアルキルアミノ基であるホスホルアミダイト化合物を、前記式(2)における3'−位水酸基を適当な保護基で保護した下記式(9)で表されるヌクレオシド誘導体と反応させ、生成したヌクレオチドのヌクレオチド結合を酸化し、得られたヌクレオチド誘導体から3'−位水酸基の保護基を除去する工程からなる下記式(10)に示される製造法が知られている(特表平08−507752号公報参照)。
【0003】
【化7】
【0004】
{式中、B3およびA3は前記式(2)と同じであり、R4はヌクレオチド化学における通常の保護基を示す。}
【0005】
【化8】
【0006】
{式中、B1、B3、R3、A1およびA3は前記式(5)と同じであり、R4は前記式(9)と同じであり、Yはジアルキルアミノ基を示す。}
【0007】
上記方法によれば、原料である前記式(9)で表されるヌクレオシド誘導体を、下記式(11)に示した反応に従って製造しなければならず、さらにヌクレオチドの二量化反応後にヌクレオチドブロック誘導体から保護基R4を除去しなければならない。
このため、純度良く目的のヌクレオチドブロックを得るためには、合成工程が多段階に渡り、また、生成する副生物あるいは不純物を除去することが必要であり、それにより操作上の煩雑さが生じ、コストが嵩む等の問題がある。
【0008】
【化9】
【0009】
{式中、B3、R3およびA3は前記式(5)と同じであり、R4は前記式(9)と同じである。}
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、DNAオリゴマーの調製に有用なヌクレオチドブロックを、合成工程および単離精製工程を経ることなく、簡便に該ヌクレオチドを製造する方法、および該製造方法によって調製された新規なヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、前記式(1)で表されるアゾリル基を有し、特にR1、R2、R1'またはR2'にかさ高い置換基を有するヌクレオチド誘導体を、前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護で、ヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させ{下記式(7)もしくは下記式(8)}、前記式(3)または前記式(4)で表される構造を有する新規なヌクレオチドを経て、前記式(5)で表される構造を有する新規なヌクレオチドブロックを合成することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1発明は前記式(5)で表されるヌクレオチドブロックの製造方法であり、第3発明は前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドであり、第4発明は前記式(5)で表されるヌクレオチドブロックに関するものである。
【0012】
【化10】
【0013】
{式中、B1、B2、B 3 、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A 3 、Zおよびnは前記式(5)と同じであり、Xは前記式(1)と同じである。}
【0014】
【化11】
【0015】
{式中、B1、B2、B3、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A3、Z'およびnは前記式(5)と同じであり、Xは前記式(1)と同じである。}
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明におけるヌクレオチドブロックの製造方法は、前記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体を、前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させて得られた、前記式(3)または前記式(4)で表されるヌクレオチドの三価のリン原子を五価へ酸化または硫化することを特徴とし、その反応式は前記式(7)または前記式(8)で例示される製造方法である。また、ヌクレオチドブロックは前記式(5)で表される化合物であり、その前駆体であるヌクレオチドは前記式(3)または前記式(4)のいずれかにより表される化合物である。
前記式におけるB1、B2およびB3で表される塩基は、周知のものが挙げられ、プリン誘導体、例えば、アデニン、グアニンおよびヒポキサンチンの誘導体、ならびにピリミジン誘導体、例えば、シトシン、チミンおよびウラシルの誘導体などが挙げられる。具体的には、1−チミニル基、1−(N−3−ベンゾイルチミニル)基、1−(N−4−ベンゾイルシトシニル)基、1−(N−4−アニソイルシトシニル)基、9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、9−(N−6,N−6−ビスベンゾイルアデニニル)基、または9−(N−2−イソブチリルグアニニル)基などが挙げられる。
また、前記式におけるR1、R2、R1'およびR2'としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、1−エチルプロピル基、シクロヘキシル基、ノルマルノニル基、2−フェニルエチル基、2−(メチルチオ)エチル基、フェニル基、1,1−ジエチル−3−ブテニル基および/または1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基などである。ただし、(R 1 とR 2 )および(R 1 ’とR 2 ’)の組み合わせが、それぞれ(水素原子と水素原子)、(水素原子とメチル基)、(水素原子とエチル基)、(メチル基とメチル基)、(メチル基とエチル基)または(エチル基とエチル基)である場合を除く。また、R3としては、トリチル基、4−メトキシトリチル基および4,4’−ジメトキシトリチル基などが挙げられる。
また、前記式(1)におけるXとしては、イミダゾリル基、2−メチルイミダゾリル基、4−メチルイミダゾリル基または2,4−ジメチルイミダゾリル基などが挙げられる。
また、A1、A2およびA3で表されるアルコキシ基としてはメトキシ基およびエトキシ基などが挙げられ、同様にトリアルキルシリルオキシ基としてはターシャリーブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0017】
本発明の第4発明におけるヌクレオチドブロックは、前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドの三価のリン原子を五価へ酸化もしくは硫化することにより{下記式(12)または下記式(13)}、容易に製造することができる。
【0018】
【化12】
【0019】
{式中、B1、B2、B3、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A3、Z、Z'およびnは前記式(5)と同じである。}
【0020】
【化13】
【0021】
{式中、B1、B2、B3、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A3、Z、Z'およびnは前記式(5)と同じである。}
【0022】
また、前記式(1)で表されるヌクレオチドは、下記式(14)で表される反応に従って容易に製造することができる。
【0023】
【化14】
【0024】
{式中、B1、B2、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、Zおよびnは前記式(5)と同じであり、Xは前記式(1)と同じである。}
【0025】
上記反応は、まず、出発原料である前記式(14)中の式[I]で表されるオルガノオキシジクロロホスフィンに、同式[II]で表されるN−トリメチルシリルアゾール化合物を反応させて、同式[III]で表されるオルガノオキシビスアゾリルホスフィンを得、次に、式(14)中の式[IV]で表される5’−O,塩基保護−ヌクレオシド誘導体または5’−O,塩基保護−ヌクレオチド誘導体を減圧乾燥するか、あるいはピリジンもしくは1,4−ジオキサン等の有機溶媒に溶解してから共沸脱水した後、トルエン、ピリジン、テトラヒドロフラン、クロロホルムまたはアセトニトリル等の有機溶媒溶液中、前記5’−O,塩基保護−ヌクレオシドまたは5’−O,塩基保護−ヌクレオチド誘導体に対し0.8〜1.2当量の前記オルガノオキシビスアゾリルホスフィンを−80℃〜室温で混合させて反応させることにより達成される。低温で反応させた方が、目的の前記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体の収率は良い。有機溶媒は乾燥剤で乾燥後、蒸留精製したものを用いた方が良い。有機溶媒としてクロロホルムを用いると、目的のヌクレオチドの収率はより向上する。この反応溶液の31P−NMRスペクトルを測定して反応が完了したことを確認すれば良い。この反応は、出発原料である前記式[I]で表されるオルガノオキシジクロロホスフィンから、目的のヌクレオチドに至るまで高選択的に進行するため、単離精製することなくin situで合成することができ、かつ、この反応溶液をそのままin situで前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドの合成に用いることができる。
【0026】
前記式(7)または前記式(8)のいずれの反応も、前記式(1)で表されるヌクレオチドに対して1〜2当量の前記式(2)で表される3’−O,5’−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体を、減圧乾燥するか、あるいはピリジン等の有機溶媒に溶解してから共沸脱水した後、ピリジン、クロロホルムまたはアセトニトリル等の有機溶媒溶液中、前記ヌクレオチド誘導体を−80℃〜室温で混合させて反応させることにより、3’−O,5’−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体の5’−位水酸基が選択的に反応し、達成される。有機溶媒は乾燥剤で乾燥後、蒸留精製したものを用いた方が良い。有機溶媒としてはピリジンを用いると、目的の前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドの収率はより向上する。この反応溶液の31P−NMRスペクトルを測定して反応が完了したことを確認すれば良い。この反応において、前記式(3)および前記式(4)における置換基R1、R2、R1'およびR2'がかさ高いほど反応性に優れ、特にR1およびR2、ならびにR1'およびR2'のファンデルワールス(van der Waals)体積の和がそれぞれ49(オームストロング)3以上のものが反応性に優れる。
○ファンデルワールス(van der Waals)体積の計算方法
下記式(6)で表されるオルガノオキシビス(4−メチルイミダゾリル)ホスフィンにおいて、まず、 SPARTAN TM Version 4.1.1( Wavefunction , Inc. )により三次元分子構造を決定し、MM力場を使って立体的エネルギーの最適化を行った後、半経験的分子軌道法( AM1 )により立体構造を確定した。次に、AM1により得られた立体構造に基づいて、 TSAR TM 3.0( Oxford Molecular Group )の分子体積計算プログラムにより置換基R 1 およびR 2 なファンデルワールス( van der Waals )体積を求めた。このようにして求めた置換基のファンデルワールス体積を式(2)のn=0で表されるヌクレオシド誘導体または式(1)、式(2)のn=1、式(3)および式(4)で表されるヌクレオチド誘導体の置換基R 1 、R 2 、R 1' およびR 2' に外挿した。
【化28】
(式(6)中、R 1 およびR 2 は前記式(1)と同じである。)
【0027】
前記式(12)および前記式(13)のいずれの反応も、前述のようにして合成したヌクレオチドを単離精製することなく、その反応溶液に、前記ヌクレオチドに対して1〜3当量の、例えば、単体イオウを混合させて反応させることにより達成される。この反応溶液の31P−NMRスペクトルを測定して反応が完了したことを確認すれば良い。このようにして生成したヌクレオチドブロックは、分液抽出およびカラムクロマトグラフィーにより簡便かつ純度良く単離精製することができる。
【0028】
さらに、ヌクレオチドの製造におけるもう一方の原料である前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオチド誘導体は、前記式(5)で表されるヌクレオチドブロックを酸で処理して、保護基R3を除去することにより、容易に製造することができる。
上記の方法で製造されるヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックは、DNAオリゴマーを化学合成する場合の中間原料として有用である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
前記式(5)において、n=0、R1'=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B3=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、A1=A3=水素原子、およびZ'=イオウ原子である下記式(15)で表されるヌクレオチドダイマーブロックの製造。
【0030】
【化15】
【0031】
a)前記式(1)において、n=0、R1'=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、A1=水素原子、およびX=イミダゾリル基である下記式(16)で表されるヌクレオチドの合成。
【0032】
【化16】
【0033】
トルエン(3ml)溶液中、アルゴン雰囲気下、室温の条件で、2−シアノ−1−(1,1−ジエチル−3−ブテニル)エトキシジクロロホスフィン0.578g(2.05mmol)と1−(トリメチルシリル)イミダゾール0.632g(4.50mmol)を加え、10分間反応させた。副生したクロロトリメチルシランおよびトルエンを室温で25分間減圧留去した後、残留トルエンおよび過剰の1−(トリメチルシリル)イミダゾールを55℃の条件で2時間減圧留去し、無色透明、油状の2−シアノ−1−(1,1−ジエチル−3−ブテニル)エトキビスイミダゾリルホスフィンを得た。このものを重クロロホルムおよびクロロホルムの混合溶液4.1mlに溶解した溶液(0.5M)を、1,4−ジオキサン5mlに溶解後、室温で1時間共沸脱水したN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2'−デオキシアデノシン1.414g(2.15mmol)に、アルゴン雰囲気下、−3.5℃で加えた。均一になった後、4℃で一晩静置して反応させ、目的のヌクレオチド誘導体を得た。31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3}δ;129.5,130.3,131.1,134.3ppm. ( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
【0034】
b)前記式(3)において、n=0、R1'=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B3=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、およびA1=A3=水素原子である下記式(17)で表されるヌクレオチドの合成。
【0035】
【化17】
【0036】
前記式(2)において、n=0、B3=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、およびA3=水素原子である、N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン0.841g(2.37mmol)をピリジン9mlに溶解後、室温で1.2時間共沸脱水した。この操作を2回繰り返した後、このN6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンをピリジン9.6mlに溶解した溶液に、前述のa)で合成したヌクレオチド誘導体の重クロロホルムおよびクロロホルムの混合反応溶液をアルゴン雰囲気下、−42℃で加えた。この反応溶液を4℃まで徐々に戻した後、4℃で一晩静置して反応させ、目的のヌクレオチドダイマーブロック前駆体を得た。31P−NMR{部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;140.0,141.1,141.3,141.7ppm. ( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
【0037】
c)前記式(15)で表されるヌクレオチドダイマーブロックの製造。
前述のb)で合成したヌクレオチドダイマーブロック前駆体の反応溶液に、単体イオウ0.099g(3.09mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温でかき混ぜて反応させた。反応系の 31P−NMRスペクトルを測定して、反応が完了したことを確認した後、クロロホルムにより分液抽出し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて脱水した。硫酸ナトリウムをろ別後、溶媒を減圧留去して得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー{展開溶媒;クロロホルム:メタノール=100:1→100:5(容積比)の混合溶媒}により単離精製した。単離収率88%。31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;65.2、65.5,65.8,65.9ppm.(31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
Rf値0.48{リカゲルプレート、展開溶媒;クロロホルム:メタノール=7:1(容積比)}
【0038】
d)前記式(16)で表されるヌクレオチド誘導体の、N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンの5'−位水酸基との選択的反応性。
前述のb)に従ってヌクレオチドブロック前駆体を製造する場合、N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンの3'−位水酸基が、前記ヌクレオチド誘導体(16)と反応する、下記式(18)で表される副反応が進行し、下記式(19)で表される化合物が副生する。
【0039】
【化18】
【0040】
【化19】
【0041】
そこで、前述のb)において、反応完了後の反応溶液の 31P−NMRスペクトルを測定し、下記式(E)のように、5'−位水酸基との選択的反応性(以下「5'選択性」という)を定義して求めた。
[5'選択性](%)={〔17〕/(〔17〕+〔19〕)}×100(E)
(式中、〔17〕および〔19〕は、31P−NMRスペクトルにより求めた化合物(17)および(19)の反応溶液中でのモル組成率をそれぞれ表す。)
その結果、5'選択性は94%であった。
【0042】
(実施例2〜19)
実施例1と同様の操作により、下記表1および表2に示した実施例2〜19のヌクレオチドダイマーブロックおよびその前駆体であるヌクレオチドを合成した。なお、前記式(7)におけるXとして、イミダゾリル基を用いた。
実施例2〜19に示したヌクレオチドダイマーブロックは、前記式(5)において、n=0、A1およびA3が水素原子、Z'がイオウ原子、R3が4,4’−ジメトキシトリチル基である下記式(20)で表される化合物であり、同ヌクレオチドは、前記式(3)において、n=0、A1およびA3が水素原子、R3が4,4’−ジメトキシトリチル基である下記式(21)で表される化合物である。表1および表2中のR1'およびR2'の構造を表3に示す。表1および表2のB1およびB3欄中の( )内の値は、同欄中のヌクレオシドの、仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対する反応当量比を示し、二量化反応溶媒欄のCDCl3+Pyは重クロロホルム:ピリジン=1:2.3(容積比)の混合溶媒を、 CHCl3+Pyはクロロホルム:ピリジン=1:.2.3(容積比)の混合溶媒を、Py−d5+Pyはピリジン−d5とピリジンの混合溶媒を、CD3CN+CH3CNはアセトニトリル−d5とアセトニトリルの混合溶媒をそれぞれ示す。また、化合物(3)の31P−NMRのδ値(ppm)欄の値は、実施例1〜6、9〜11、および13〜14についてはCDCl3溶液中で、実施例7についてはPy−d5溶液中で、および実施例8についてはCD3CN溶液中でそれぞれ測定した値である。化合物(5)の31P−NMRのδ値(ppm)欄の値は、実施例1〜4、および実施例11〜14については二量化反応溶媒溶液中で、実施例15−19については二量化反応溶媒を減圧留去後、 得られた残さをCDCl3に溶解してそれぞれ測定した値である。化合物(5)のRf値は、いずれもシリカゲルプレート上でクロロホルム:メタノール=7:1(容積比)の混合溶媒で展開したときの値である。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
{表1および表2のなかで、B1およびB3欄のTは1−チミニル基を、TBzは1−(N−3−ベンゾイルチミニル)基を、CBzは1−(N−4−ベンゾイルシトシニル)基を、CAnは1−(N−4−アニソイルシトシニル)基を、ABzは9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基を、ABz2は9−(N−6,N−6−ビスベンゾイルアデニニル)基を、およびGiBuは9−(N−2−イソブチリルグアニニル)基をそれぞれ表す。}
【0046】
【表3】
【0047】
【化20】
【0048】
{式中、DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を示し、B1、B3、R1'およびR2'は前記式(5)と同じである。}
【0049】
【化21】
【0050】
{式中、DMTrは前記式(20)と同じであり、B1、B3、R1'およびR2'は前記式(5)と同じである。}
【0051】
(実施例20)
前記式(5)において、n=1であり、R1=R1'=水素原子、R2=ターシャリーブチル基、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B2=B3=1−チミニル基、A1=A2=A3=水素原子、およびZ=Z'=イオウ原子である下記式(22)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの製造
【0052】
【化22】
【0053】
{式中、Tは1−チミニル基を示し、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0054】
a)前記式(1)で表されるヌクレオチド前駆体の合成
反応前に、仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対して1.2当量の前記式(14)の[IV]で表されるヌクレオチドダイマーブロックを、1,4−ジオキサンに溶解後共沸脱水する操作を2回繰り返し、反応溶液の濃度を0.3Mとした他は、実施例1と同様にして合成した。前記式(7)におけるXとして、イミダゾリル基を用い、下記式(23)で表されるヌクレオチド誘導体を合成した。
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3}δ;126.8,127.4,128.1,128.9,129.2,129.5,129.8,131.6,132.2,132.6,132.9,133.7ppm.( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。前記δ値は、3’−末端の三価のリン原子に関するものである。)
【0055】
【化23】
【0056】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0057】
b)前記式(3)で表されるヌクレオチドの合成
仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対して前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオシド誘導体(本実施例においてはチミジン)を1.2当量以上反応させ、反応濃度を0.1M以下(重クロロホルム:ピリジン=1:2以上(容積比))とした他は、実施例1と同様にして下記式(24)で表されるヌクレオチドトリマーブロック前駆体を合成した。
なお、この縮合反応におけるの5’選択性は>94%であった。
【0058】
【化24】
【0059】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0060】
c)前記式(22)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの合成
実施例1と同様にして合成した。
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3};65.7−66.7ppmの範囲に9本のピークとして観測された。(31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
Rf値0.43{シリカゲルプレート、展開溶媒;クロロホルム:メタノール=7:1(容積比)}。
【0061】
(実施例21)
前記式(5)において、n=1であり、R1=R1''=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R2''=ターシャリーブチル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B2=B3=1−チミニル基、A1=A2=A3=水素原子、およびZ=Z'=イオウ原子である下記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの製造
【0062】
【化25】
【0063】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0064】
仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対して前記式(14)の[IV]で表される5’−O,塩基保護−ヌクレオシド誘導体を1.03当量、および前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオチド誘導体を1.2当量それぞれ反応させた他は、実施例1と同様の操作により製造した。前記式(8)におけるXとして、イミダゾリル基を用いた。
【0065】
a)下記式(26)で表されるヌクレオチドトリマーブロック前駆体の合成
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;140.3−142.2ppmの範囲に13本のピークとして観測された。{31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。前記δ値は、2つあるインターヌクレオチド結合のうち、3’−末端側の三価のリン原子(ホスファイト)に関するものである。}
【0066】
【化26】
【0067】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0068】
b)前記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの合成
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;65.0−66.3ppmの範囲に13本のピークとして観測された。( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
Rf値0.44{シリカゲルプレート、展開溶媒;クロロホルム:メタノール=7:1(容積比)}。
c)前記b)に従って合成した前記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロックのリン酸保護基を除去して得られた下記式(27)で表されるホスホロチオエート型ヌクレオチドトリマーのHPLC分析
【0069】
【化27】
【0070】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0071】
前記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロック約1mgを、数滴のピリジンに溶解後、さらに数滴の30%アンモニア水を加えて室温で一晩静置して、リン酸保護基を除去して前記式(27)で表されるホスホロチオエート型ヌクレオチドトリマーを得た。アンモニアおよび溶媒を減圧留去して得られた残さを、0.1N−pH7.2−トリエチルアミン−酢酸緩衝溶液に溶解して、逆相HPLC分析を行った。
HPLC分析には、逆相カラム(ODSカラム)としてWakopakws−DNAカラム{和光純薬(株)製}の4.6mmφ×150mmを用い、展開溶媒としては、0.1N−pH7.2−トリエチルアミン−酢酸緩衝溶液とアセトニトリルを用いた。分析に用いたグラディエントは、アセトニトリル/緩衝溶液=5/95→45/55(20min)とし、分析に用いたUVディテクタの検出波長は260nmとし、分析温度は40℃とした。
得られた化合物の保持時間(tR)=21.6(先端は2本に分裂)、22.1min(ジアステレオマーが混在するため計3本に分裂した)。このHPLC分析結果は、通常のアミダイト法に従って合成した前記式(27)で表されるホスホロチオエート型ヌクレオチドトリマーのそれと一致した。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、前記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体を、前記式(2)で表される3'−O,5'−0−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させ{前記式(7)または前記式(8)}、前記式(3)または前記式(4)で表される構造を有するヌクレオチドを収率良く製造することができ、さらに、該ヌクレオチドから、その製造工程において合成工程および単離精製工程が省けるので、前記式(5)で表される構造を有するヌクレオチドブロックを簡便に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はヌクレオチドブロックの製造方法、ならびに該製造方法で作られた新規なヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックに関するものであり、該ヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックは、例えば、DNAオリゴマーの中間原料として有機合成化学、生化学および医薬産業上、有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
これまで、DNAオリゴマーの中間原料であるヌクレオチドブロックとしては、前記式(5)においてR1'およびR2'のいずれも水素原子で、n=0である化合物が知られており、この化合物を合成する方法として、前記式(1)においてR1'およびR2'のいずれも水素原子、n=0、Xがジアルキルアミノ基であるホスホルアミダイト化合物を、前記式(2)における3'−位水酸基を適当な保護基で保護した下記式(9)で表されるヌクレオシド誘導体と反応させ、生成したヌクレオチドのヌクレオチド結合を酸化し、得られたヌクレオチド誘導体から3'−位水酸基の保護基を除去する工程からなる下記式(10)に示される製造法が知られている(特表平08−507752号公報参照)。
【0003】
【化7】
【0004】
{式中、B3およびA3は前記式(2)と同じであり、R4はヌクレオチド化学における通常の保護基を示す。}
【0005】
【化8】
【0006】
{式中、B1、B3、R3、A1およびA3は前記式(5)と同じであり、R4は前記式(9)と同じであり、Yはジアルキルアミノ基を示す。}
【0007】
上記方法によれば、原料である前記式(9)で表されるヌクレオシド誘導体を、下記式(11)に示した反応に従って製造しなければならず、さらにヌクレオチドの二量化反応後にヌクレオチドブロック誘導体から保護基R4を除去しなければならない。
このため、純度良く目的のヌクレオチドブロックを得るためには、合成工程が多段階に渡り、また、生成する副生物あるいは不純物を除去することが必要であり、それにより操作上の煩雑さが生じ、コストが嵩む等の問題がある。
【0008】
【化9】
【0009】
{式中、B3、R3およびA3は前記式(5)と同じであり、R4は前記式(9)と同じである。}
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、DNAオリゴマーの調製に有用なヌクレオチドブロックを、合成工程および単離精製工程を経ることなく、簡便に該ヌクレオチドを製造する方法、および該製造方法によって調製された新規なヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、前記式(1)で表されるアゾリル基を有し、特にR1、R2、R1'またはR2'にかさ高い置換基を有するヌクレオチド誘導体を、前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護で、ヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させ{下記式(7)もしくは下記式(8)}、前記式(3)または前記式(4)で表される構造を有する新規なヌクレオチドを経て、前記式(5)で表される構造を有する新規なヌクレオチドブロックを合成することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1発明は前記式(5)で表されるヌクレオチドブロックの製造方法であり、第3発明は前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドであり、第4発明は前記式(5)で表されるヌクレオチドブロックに関するものである。
【0012】
【化10】
【0013】
{式中、B1、B2、B 3 、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A 3 、Zおよびnは前記式(5)と同じであり、Xは前記式(1)と同じである。}
【0014】
【化11】
【0015】
{式中、B1、B2、B3、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A3、Z'およびnは前記式(5)と同じであり、Xは前記式(1)と同じである。}
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明におけるヌクレオチドブロックの製造方法は、前記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体を、前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させて得られた、前記式(3)または前記式(4)で表されるヌクレオチドの三価のリン原子を五価へ酸化または硫化することを特徴とし、その反応式は前記式(7)または前記式(8)で例示される製造方法である。また、ヌクレオチドブロックは前記式(5)で表される化合物であり、その前駆体であるヌクレオチドは前記式(3)または前記式(4)のいずれかにより表される化合物である。
前記式におけるB1、B2およびB3で表される塩基は、周知のものが挙げられ、プリン誘導体、例えば、アデニン、グアニンおよびヒポキサンチンの誘導体、ならびにピリミジン誘導体、例えば、シトシン、チミンおよびウラシルの誘導体などが挙げられる。具体的には、1−チミニル基、1−(N−3−ベンゾイルチミニル)基、1−(N−4−ベンゾイルシトシニル)基、1−(N−4−アニソイルシトシニル)基、9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、9−(N−6,N−6−ビスベンゾイルアデニニル)基、または9−(N−2−イソブチリルグアニニル)基などが挙げられる。
また、前記式におけるR1、R2、R1'およびR2'としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、1−エチルプロピル基、シクロヘキシル基、ノルマルノニル基、2−フェニルエチル基、2−(メチルチオ)エチル基、フェニル基、1,1−ジエチル−3−ブテニル基および/または1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基などである。ただし、(R 1 とR 2 )および(R 1 ’とR 2 ’)の組み合わせが、それぞれ(水素原子と水素原子)、(水素原子とメチル基)、(水素原子とエチル基)、(メチル基とメチル基)、(メチル基とエチル基)または(エチル基とエチル基)である場合を除く。また、R3としては、トリチル基、4−メトキシトリチル基および4,4’−ジメトキシトリチル基などが挙げられる。
また、前記式(1)におけるXとしては、イミダゾリル基、2−メチルイミダゾリル基、4−メチルイミダゾリル基または2,4−ジメチルイミダゾリル基などが挙げられる。
また、A1、A2およびA3で表されるアルコキシ基としてはメトキシ基およびエトキシ基などが挙げられ、同様にトリアルキルシリルオキシ基としてはターシャリーブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0017】
本発明の第4発明におけるヌクレオチドブロックは、前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドの三価のリン原子を五価へ酸化もしくは硫化することにより{下記式(12)または下記式(13)}、容易に製造することができる。
【0018】
【化12】
【0019】
{式中、B1、B2、B3、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A3、Z、Z'およびnは前記式(5)と同じである。}
【0020】
【化13】
【0021】
{式中、B1、B2、B3、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、A3、Z、Z'およびnは前記式(5)と同じである。}
【0022】
また、前記式(1)で表されるヌクレオチドは、下記式(14)で表される反応に従って容易に製造することができる。
【0023】
【化14】
【0024】
{式中、B1、B2、R1、R2、R1'、R2'、R3、A1、A2、Zおよびnは前記式(5)と同じであり、Xは前記式(1)と同じである。}
【0025】
上記反応は、まず、出発原料である前記式(14)中の式[I]で表されるオルガノオキシジクロロホスフィンに、同式[II]で表されるN−トリメチルシリルアゾール化合物を反応させて、同式[III]で表されるオルガノオキシビスアゾリルホスフィンを得、次に、式(14)中の式[IV]で表される5’−O,塩基保護−ヌクレオシド誘導体または5’−O,塩基保護−ヌクレオチド誘導体を減圧乾燥するか、あるいはピリジンもしくは1,4−ジオキサン等の有機溶媒に溶解してから共沸脱水した後、トルエン、ピリジン、テトラヒドロフラン、クロロホルムまたはアセトニトリル等の有機溶媒溶液中、前記5’−O,塩基保護−ヌクレオシドまたは5’−O,塩基保護−ヌクレオチド誘導体に対し0.8〜1.2当量の前記オルガノオキシビスアゾリルホスフィンを−80℃〜室温で混合させて反応させることにより達成される。低温で反応させた方が、目的の前記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体の収率は良い。有機溶媒は乾燥剤で乾燥後、蒸留精製したものを用いた方が良い。有機溶媒としてクロロホルムを用いると、目的のヌクレオチドの収率はより向上する。この反応溶液の31P−NMRスペクトルを測定して反応が完了したことを確認すれば良い。この反応は、出発原料である前記式[I]で表されるオルガノオキシジクロロホスフィンから、目的のヌクレオチドに至るまで高選択的に進行するため、単離精製することなくin situで合成することができ、かつ、この反応溶液をそのままin situで前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドの合成に用いることができる。
【0026】
前記式(7)または前記式(8)のいずれの反応も、前記式(1)で表されるヌクレオチドに対して1〜2当量の前記式(2)で表される3’−O,5’−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体を、減圧乾燥するか、あるいはピリジン等の有機溶媒に溶解してから共沸脱水した後、ピリジン、クロロホルムまたはアセトニトリル等の有機溶媒溶液中、前記ヌクレオチド誘導体を−80℃〜室温で混合させて反応させることにより、3’−O,5’−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体の5’−位水酸基が選択的に反応し、達成される。有機溶媒は乾燥剤で乾燥後、蒸留精製したものを用いた方が良い。有機溶媒としてはピリジンを用いると、目的の前記式(3)または前記式(4)のいずれかによって表されるヌクレオチドの収率はより向上する。この反応溶液の31P−NMRスペクトルを測定して反応が完了したことを確認すれば良い。この反応において、前記式(3)および前記式(4)における置換基R1、R2、R1'およびR2'がかさ高いほど反応性に優れ、特にR1およびR2、ならびにR1'およびR2'のファンデルワールス(van der Waals)体積の和がそれぞれ49(オームストロング)3以上のものが反応性に優れる。
○ファンデルワールス(van der Waals)体積の計算方法
下記式(6)で表されるオルガノオキシビス(4−メチルイミダゾリル)ホスフィンにおいて、まず、 SPARTAN TM Version 4.1.1( Wavefunction , Inc. )により三次元分子構造を決定し、MM力場を使って立体的エネルギーの最適化を行った後、半経験的分子軌道法( AM1 )により立体構造を確定した。次に、AM1により得られた立体構造に基づいて、 TSAR TM 3.0( Oxford Molecular Group )の分子体積計算プログラムにより置換基R 1 およびR 2 なファンデルワールス( van der Waals )体積を求めた。このようにして求めた置換基のファンデルワールス体積を式(2)のn=0で表されるヌクレオシド誘導体または式(1)、式(2)のn=1、式(3)および式(4)で表されるヌクレオチド誘導体の置換基R 1 、R 2 、R 1' およびR 2' に外挿した。
【化28】
(式(6)中、R 1 およびR 2 は前記式(1)と同じである。)
【0027】
前記式(12)および前記式(13)のいずれの反応も、前述のようにして合成したヌクレオチドを単離精製することなく、その反応溶液に、前記ヌクレオチドに対して1〜3当量の、例えば、単体イオウを混合させて反応させることにより達成される。この反応溶液の31P−NMRスペクトルを測定して反応が完了したことを確認すれば良い。このようにして生成したヌクレオチドブロックは、分液抽出およびカラムクロマトグラフィーにより簡便かつ純度良く単離精製することができる。
【0028】
さらに、ヌクレオチドの製造におけるもう一方の原料である前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオチド誘導体は、前記式(5)で表されるヌクレオチドブロックを酸で処理して、保護基R3を除去することにより、容易に製造することができる。
上記の方法で製造されるヌクレオチドおよびヌクレオチドブロックは、DNAオリゴマーを化学合成する場合の中間原料として有用である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
前記式(5)において、n=0、R1'=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B3=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、A1=A3=水素原子、およびZ'=イオウ原子である下記式(15)で表されるヌクレオチドダイマーブロックの製造。
【0030】
【化15】
【0031】
a)前記式(1)において、n=0、R1'=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、A1=水素原子、およびX=イミダゾリル基である下記式(16)で表されるヌクレオチドの合成。
【0032】
【化16】
【0033】
トルエン(3ml)溶液中、アルゴン雰囲気下、室温の条件で、2−シアノ−1−(1,1−ジエチル−3−ブテニル)エトキシジクロロホスフィン0.578g(2.05mmol)と1−(トリメチルシリル)イミダゾール0.632g(4.50mmol)を加え、10分間反応させた。副生したクロロトリメチルシランおよびトルエンを室温で25分間減圧留去した後、残留トルエンおよび過剰の1−(トリメチルシリル)イミダゾールを55℃の条件で2時間減圧留去し、無色透明、油状の2−シアノ−1−(1,1−ジエチル−3−ブテニル)エトキビスイミダゾリルホスフィンを得た。このものを重クロロホルムおよびクロロホルムの混合溶液4.1mlに溶解した溶液(0.5M)を、1,4−ジオキサン5mlに溶解後、室温で1時間共沸脱水したN6−ベンゾイル−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2'−デオキシアデノシン1.414g(2.15mmol)に、アルゴン雰囲気下、−3.5℃で加えた。均一になった後、4℃で一晩静置して反応させ、目的のヌクレオチド誘導体を得た。31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3}δ;129.5,130.3,131.1,134.3ppm. ( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
【0034】
b)前記式(3)において、n=0、R1'=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B3=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、およびA1=A3=水素原子である下記式(17)で表されるヌクレオチドの合成。
【0035】
【化17】
【0036】
前記式(2)において、n=0、B3=9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基、およびA3=水素原子である、N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン0.841g(2.37mmol)をピリジン9mlに溶解後、室温で1.2時間共沸脱水した。この操作を2回繰り返した後、このN6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンをピリジン9.6mlに溶解した溶液に、前述のa)で合成したヌクレオチド誘導体の重クロロホルムおよびクロロホルムの混合反応溶液をアルゴン雰囲気下、−42℃で加えた。この反応溶液を4℃まで徐々に戻した後、4℃で一晩静置して反応させ、目的のヌクレオチドダイマーブロック前駆体を得た。31P−NMR{部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;140.0,141.1,141.3,141.7ppm. ( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
【0037】
c)前記式(15)で表されるヌクレオチドダイマーブロックの製造。
前述のb)で合成したヌクレオチドダイマーブロック前駆体の反応溶液に、単体イオウ0.099g(3.09mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温でかき混ぜて反応させた。反応系の 31P−NMRスペクトルを測定して、反応が完了したことを確認した後、クロロホルムにより分液抽出し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて脱水した。硫酸ナトリウムをろ別後、溶媒を減圧留去して得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー{展開溶媒;クロロホルム:メタノール=100:1→100:5(容積比)の混合溶媒}により単離精製した。単離収率88%。31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;65.2、65.5,65.8,65.9ppm.(31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
Rf値0.48{リカゲルプレート、展開溶媒;クロロホルム:メタノール=7:1(容積比)}
【0038】
d)前記式(16)で表されるヌクレオチド誘導体の、N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンの5'−位水酸基との選択的反応性。
前述のb)に従ってヌクレオチドブロック前駆体を製造する場合、N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンの3'−位水酸基が、前記ヌクレオチド誘導体(16)と反応する、下記式(18)で表される副反応が進行し、下記式(19)で表される化合物が副生する。
【0039】
【化18】
【0040】
【化19】
【0041】
そこで、前述のb)において、反応完了後の反応溶液の 31P−NMRスペクトルを測定し、下記式(E)のように、5'−位水酸基との選択的反応性(以下「5'選択性」という)を定義して求めた。
[5'選択性](%)={〔17〕/(〔17〕+〔19〕)}×100(E)
(式中、〔17〕および〔19〕は、31P−NMRスペクトルにより求めた化合物(17)および(19)の反応溶液中でのモル組成率をそれぞれ表す。)
その結果、5'選択性は94%であった。
【0042】
(実施例2〜19)
実施例1と同様の操作により、下記表1および表2に示した実施例2〜19のヌクレオチドダイマーブロックおよびその前駆体であるヌクレオチドを合成した。なお、前記式(7)におけるXとして、イミダゾリル基を用いた。
実施例2〜19に示したヌクレオチドダイマーブロックは、前記式(5)において、n=0、A1およびA3が水素原子、Z'がイオウ原子、R3が4,4’−ジメトキシトリチル基である下記式(20)で表される化合物であり、同ヌクレオチドは、前記式(3)において、n=0、A1およびA3が水素原子、R3が4,4’−ジメトキシトリチル基である下記式(21)で表される化合物である。表1および表2中のR1'およびR2'の構造を表3に示す。表1および表2のB1およびB3欄中の( )内の値は、同欄中のヌクレオシドの、仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対する反応当量比を示し、二量化反応溶媒欄のCDCl3+Pyは重クロロホルム:ピリジン=1:2.3(容積比)の混合溶媒を、 CHCl3+Pyはクロロホルム:ピリジン=1:.2.3(容積比)の混合溶媒を、Py−d5+Pyはピリジン−d5とピリジンの混合溶媒を、CD3CN+CH3CNはアセトニトリル−d5とアセトニトリルの混合溶媒をそれぞれ示す。また、化合物(3)の31P−NMRのδ値(ppm)欄の値は、実施例1〜6、9〜11、および13〜14についてはCDCl3溶液中で、実施例7についてはPy−d5溶液中で、および実施例8についてはCD3CN溶液中でそれぞれ測定した値である。化合物(5)の31P−NMRのδ値(ppm)欄の値は、実施例1〜4、および実施例11〜14については二量化反応溶媒溶液中で、実施例15−19については二量化反応溶媒を減圧留去後、 得られた残さをCDCl3に溶解してそれぞれ測定した値である。化合物(5)のRf値は、いずれもシリカゲルプレート上でクロロホルム:メタノール=7:1(容積比)の混合溶媒で展開したときの値である。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
{表1および表2のなかで、B1およびB3欄のTは1−チミニル基を、TBzは1−(N−3−ベンゾイルチミニル)基を、CBzは1−(N−4−ベンゾイルシトシニル)基を、CAnは1−(N−4−アニソイルシトシニル)基を、ABzは9−(N−6−ベンゾイルアデニニル)基を、ABz2は9−(N−6,N−6−ビスベンゾイルアデニニル)基を、およびGiBuは9−(N−2−イソブチリルグアニニル)基をそれぞれ表す。}
【0046】
【表3】
【0047】
【化20】
【0048】
{式中、DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を示し、B1、B3、R1'およびR2'は前記式(5)と同じである。}
【0049】
【化21】
【0050】
{式中、DMTrは前記式(20)と同じであり、B1、B3、R1'およびR2'は前記式(5)と同じである。}
【0051】
(実施例20)
前記式(5)において、n=1であり、R1=R1'=水素原子、R2=ターシャリーブチル基、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B2=B3=1−チミニル基、A1=A2=A3=水素原子、およびZ=Z'=イオウ原子である下記式(22)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの製造
【0052】
【化22】
【0053】
{式中、Tは1−チミニル基を示し、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0054】
a)前記式(1)で表されるヌクレオチド前駆体の合成
反応前に、仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対して1.2当量の前記式(14)の[IV]で表されるヌクレオチドダイマーブロックを、1,4−ジオキサンに溶解後共沸脱水する操作を2回繰り返し、反応溶液の濃度を0.3Mとした他は、実施例1と同様にして合成した。前記式(7)におけるXとして、イミダゾリル基を用い、下記式(23)で表されるヌクレオチド誘導体を合成した。
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3}δ;126.8,127.4,128.1,128.9,129.2,129.5,129.8,131.6,132.2,132.6,132.9,133.7ppm.( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。前記δ値は、3’−末端の三価のリン原子に関するものである。)
【0055】
【化23】
【0056】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0057】
b)前記式(3)で表されるヌクレオチドの合成
仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対して前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオシド誘導体(本実施例においてはチミジン)を1.2当量以上反応させ、反応濃度を0.1M以下(重クロロホルム:ピリジン=1:2以上(容積比))とした他は、実施例1と同様にして下記式(24)で表されるヌクレオチドトリマーブロック前駆体を合成した。
なお、この縮合反応におけるの5’選択性は>94%であった。
【0058】
【化24】
【0059】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0060】
c)前記式(22)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの合成
実施例1と同様にして合成した。
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3};65.7−66.7ppmの範囲に9本のピークとして観測された。(31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
Rf値0.43{シリカゲルプレート、展開溶媒;クロロホルム:メタノール=7:1(容積比)}。
【0061】
(実施例21)
前記式(5)において、n=1であり、R1=R1''=水素原子、R2'=1,1−ジエチル−3−ブテニル基、R2''=ターシャリーブチル基、R3=4,4'−ジメトキシトリチル基、B1=B2=B3=1−チミニル基、A1=A2=A3=水素原子、およびZ=Z'=イオウ原子である下記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの製造
【0062】
【化25】
【0063】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0064】
仕込みのオルガノオキシジクロロホスフィン[I]に対して前記式(14)の[IV]で表される5’−O,塩基保護−ヌクレオシド誘導体を1.03当量、および前記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオチド誘導体を1.2当量それぞれ反応させた他は、実施例1と同様の操作により製造した。前記式(8)におけるXとして、イミダゾリル基を用いた。
【0065】
a)下記式(26)で表されるヌクレオチドトリマーブロック前駆体の合成
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;140.3−142.2ppmの範囲に13本のピークとして観測された。{31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。前記δ値は、2つあるインターヌクレオチド結合のうち、3’−末端側の三価のリン原子(ホスファイト)に関するものである。}
【0066】
【化26】
【0067】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0068】
b)前記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロックの合成
31P−NMR{外部標準;(CH3O)3P =140ppm, CDCl3:py=1:2.3(容積比)}δ;65.0−66.3ppmの範囲に13本のピークとして観測された。( 31P−NMRスペクトルは161.7MHzNMR測定装置で測定した。)
Rf値0.44{シリカゲルプレート、展開溶媒;クロロホルム:メタノール=7:1(容積比)}。
c)前記b)に従って合成した前記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロックのリン酸保護基を除去して得られた下記式(27)で表されるホスホロチオエート型ヌクレオチドトリマーのHPLC分析
【0069】
【化27】
【0070】
{式中、Tは前記式(22)と同じであり、DMTrは前記式(20)と同じである。}
【0071】
前記式(25)で表されるヌクレオチドトリマーブロック約1mgを、数滴のピリジンに溶解後、さらに数滴の30%アンモニア水を加えて室温で一晩静置して、リン酸保護基を除去して前記式(27)で表されるホスホロチオエート型ヌクレオチドトリマーを得た。アンモニアおよび溶媒を減圧留去して得られた残さを、0.1N−pH7.2−トリエチルアミン−酢酸緩衝溶液に溶解して、逆相HPLC分析を行った。
HPLC分析には、逆相カラム(ODSカラム)としてWakopakws−DNAカラム{和光純薬(株)製}の4.6mmφ×150mmを用い、展開溶媒としては、0.1N−pH7.2−トリエチルアミン−酢酸緩衝溶液とアセトニトリルを用いた。分析に用いたグラディエントは、アセトニトリル/緩衝溶液=5/95→45/55(20min)とし、分析に用いたUVディテクタの検出波長は260nmとし、分析温度は40℃とした。
得られた化合物の保持時間(tR)=21.6(先端は2本に分裂)、22.1min(ジアステレオマーが混在するため計3本に分裂した)。このHPLC分析結果は、通常のアミダイト法に従って合成した前記式(27)で表されるホスホロチオエート型ヌクレオチドトリマーのそれと一致した。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、前記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体を、前記式(2)で表される3'−O,5'−0−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させ{前記式(7)または前記式(8)}、前記式(3)または前記式(4)で表される構造を有するヌクレオチドを収率良く製造することができ、さらに、該ヌクレオチドから、その製造工程において合成工程および単離精製工程が省けるので、前記式(5)で表される構造を有するヌクレオチドブロックを簡便に製造することができる。
Claims (4)
- 下記式(1)で表されるヌクレオチド誘導体を、下記式(2)で表される3'−O,5'−O−無保護のヌクレオシド誘導体またはヌクレオチド誘導体と反応させて得られた、下記式(3)または下記式(4)で表されるヌクレオチドの三価のリン原子を五価へ酸化または硫化することを特徴とする下記式(5)で表されるヌクレオチドブロックの製造方法。
- 下記式(6)で表されるオルガノオキシビス(4−メチルイミダゾリル)ホスフィンを用いて計算した請求項1記載の式(2)のn=0で表されるヌクレオシド誘導体または式(1)、式(2)のn=1、式(3)および式(4)で表されるヌクレオチド誘導体のR1およびR2のファンデルワールス(van der Waals)体積の和、ならびにR1'およびR2'のファンデルワールス(van der Waals)体積の和がそれぞれ49(オングストローム)3以上であり、かつXがイミダゾリル基、2−メチルイミダゾリル基もしくは4−メチルイミダゾリル基である請求項1記載のヌクレオチドブロックの製造方法。
- 請求項1または請求項2記載の式(3)または式(4)によって表されるヌクレオチド(ただし、式中、B 1 、B 2 、B 3 、R 1 、R 2 、R 1' 、R 2' 、R 3 、A 1 、A 2 、A 3 、Z、Z’及びnは請求項1で定義したとおりであり、R1、R2およびR1'、R2'の組み合わせにおいて、いずれかはヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基である)。
- 請求項1記載の式(5)で表されるヌクレオチドブロック(ただし、式中、B 1 、B 2 、B 3 、R 1 、R 2 、R 1' 、R 2' 、R 3 、A 1 、A 2 、A 3 、Z、Z’及びnは請求項1で定義したとおりであり、R1、R2およびR1'、R2'の組み合わせにおいて、いずれかはヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基である)。
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